(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記不完全ネジ山部が、前記完全ネジ山部の両端に存在し、前記外周面からの突出距離が漸減して、前記完全ネジ山部から前記ネジ筒部の外周面へと収束するネジ山部である、請求項1に記載の可撓性容器。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器に充填された内容物を最後まで使い切りたいというユーザーの要望は多い。
【0003】
内容物が充填された容器は、使用開始直後には、容器いっぱいに内容物が詰まっており、胴部を押すことによって容易に内容物を取り出すことができる。しかし、使用を継続して内容物が少なくなると、胴部を潰し切り、内容物が容器の肩部から口頸端の開口部にかけての先端部分に残ることになる。
【0004】
するとユーザーは、この先端部分を押し潰して内容物を更に絞り出そうと試みる。しかし、容器の先端部分は、胴部に比べて硬い材料が用いられているか、同種の材料であっても肉厚に構成されていることが多く、一般に胴部よりも剛性が高くて潰し難い箇所である。
【0005】
そのため、容器内に残った内容物を使い切ろうとするユーザーは、例えば、「先端部分を力ずくで押し潰して内容物を絞り出す」、「胴部を切断して内容物を掬い取る」、「胴部に空気を入れて内容物を空気とともに押し出す」等の措置をとることがある。
【0006】
先端部分を力ずくで押し潰すことは、指先の痛みを伴うことがあり、場合によっては負傷しかねない。胴部を切断すると、再密封ができなくなり、内容物の劣化が懸念される。胴部に空気を入れると、内容物の酸化劣化が懸念される。
【0007】
このような事情のもと、先端部分が押し潰し易い容器の開発が行われている。
【0008】
例えば、特許文献1及び2には、それぞれ、肩部が押し潰し易い可撓性容器に関する。
【0009】
特許文献1には、胴部と、該胴部より細い口頸部と、前記胴部と前記口頸部との間の肩部とを有し、前記口頸部の先端開口から内容物を押し出す可撓性容器であって、前記肩部は、軸方向高さが前記胴部の径の0.5〜0.7倍の範囲であり、前記胴部から前記口頸部に向かって曲率半径が前記胴部の径の0.9〜1.2倍の連続曲面を有し、その上端径が前記胴部の径の0.5〜0.7倍となるドーム形状部を有することを特徴とする可撓性容器が記載されている。
【0010】
特許文献2には、胴部と胴部より細い口頸部を有し、該口頸部の先端の開口部より内容物を押出す可撓性容器であって、前記胴部と前記口頸部の間の肩部を有し、該肩部は、ドーム形状部を有し、該ドーム形状部の下方に周方向にリング状の肩部溝が設けられ、かつ、該ドーム形状部に縦方向の外側に盛り上がった肩部リブが設けられていることを特徴とする可撓性容器が記載されている。
【0011】
一方、可撓性容器のうち、特に練りワサビ、練りカラシ等の香辛料を充填するためのブローチューブ容器においては、容器口頸部のうちのネジが突出するネジ筒部に溝又は欠損部を形成してネジを分断し、又はネジを多条化することによって、ネジ筒部を押し潰し易くする技術が知られている。即ち、通常の1条ネジの場合には、外表面から突出するネジが容器口頸部周りを1周超の周回数で周回しており、押し潰す際の「折り線」となる部分がないからネジ筒部の剛性が高く、極めて押し潰し難い。これに対して、分断されたネジ又は多条ネジは、分断部又は隣接する他のネジとの間隙を「折り線」とすることとができ、押し潰し易い構成のネジ筒部とすることが可能となる。
【0012】
例えば特許文献3には、容器本体の首部外周面には雄ネジ部を有し、蓋の周壁内周面には雌ネジ部を有する容器において、容器本体の首部の円周方向に対して交差する方向に延長する凹溝を、円周方向に間隔をあけて形成し、隣り合う凹溝同士の間であって円周方向に偏心する位置に外向凸部を設けてあることを特徴とする容器が記載されている。この容器では、ネジ筒部の外周面に形成された雄ネジが凹溝によって分断され、この凹溝部を折り線としてネジ筒部を容易に押し潰すことができる。
【0013】
特許文献4には、口頸部の先端の開口部より内容物を押出す可撓性容器であって、口頸部(ネジ筒部)の外周に設けられた雄ネジの周方向に対向させた対となる雄ネジ欠損部を、周方向に等間隔になるように2対、3対、あるいは、4対設けて、該雄ネジを、短い短雄ネジ部が断続する雄ネジとし、それによって対向する前記雄ネジ欠損部を押して前記口頸部を扁平にして、前記雄ネジ欠損部を挟んで隣り合った前記短雄ネジ部どうしが接触したときに、対向する前記雄ネジ欠損部の距離が、前記口頸部の内径の1/3から2/3になることを特徴とする可撓性容器が記載されている。この容器では、隣接する多条ネジの間隙を折り線としてネジ筒部を容易に押し潰すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に記載された可撓性容器は、肩部が押し潰し易く、押し潰した状態が維持される。しかし、肩部を押し潰した後の容器の再密封については、「口頸部の先端開口を塞ぐキャップの開口下端部の径と肩部の外周との寸法関係を適宜に設定することで、肩部を押し潰した状態で先端開口を密封することができる」との記載があるのみであり、確実な再密封を可能にするための具体的態様については記載されていない。
【0016】
特許文献2に記載された可撓性容器は、肩部を簡単に押し潰すことができるとともに、押し潰すのをやめると肩部が元の状態に復元すると説明されている。しかし、容器のネジ筒部については、押し潰した後の形状復元は考慮されていない。
【0017】
特許文献3の容器では、凹溝によって分断された雄ネジを有する容器のネジ筒部を押し潰した後の復元については考慮されていない。
【0018】
特許文献4の可撓性容器は、隣接する多条ネジの間隙を折り線として容器のネジ筒部を押し潰すことができ、再度キャップをすることが可能であると説明されている。しかしながら、ネジ筒部を押し潰した後の復元については、「元に戻せば」ネジ筒部の断面が扁平のままにならないと記載されており、再密封時には、押し潰されたネジ筒部をユーザーが自分で元の形状に戻すことが要求されている。
【0019】
以上のように、可撓性容器の分野では、内容物を最後まで使い切るために、容器の口頸部〜肩部の領域を押し潰し易くする構成が知られている。しかし、容器の当該部分を押し潰したとき、内容物を1回で最後まで使い切ることは稀であり、多くの場合には、内容物の乾燥、酸化劣化等を回避するために、再密封を必要とする。この点について従来技術では、容器を一旦押し潰して内容物を取り出した後、確実な再密封を行うために必要な、ネジ筒部の形状復元については、全く考慮されていないか、ユーザー自身が自分で元の形状に戻すことが要求されている。
【0020】
本発明は、従来技術における上記の事情を考慮してなされたものである。従って本発明の目的は、ネジ筒部が押し潰し易く、内容物を最後まで使い切ることが容易でありながら、押し潰すのをやめると押し潰されたネジ筒部が自然に元の形状に復元し、キャップによる確実な再密封が可能な可撓性容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は以下のとおりである。
【0022】
[1]胴部、口頸部、及び前記口頸部と前記胴部とを連結する肩部を有し、前記口頸部の先端開口から内容物を押し出す可撓性容器であって、
前記口頸部は、外周面から雄ネジが突出するネジ筒部を有し、
前記雄ネジは、完全ネジ山部と不完全ネジ山部とを有し、
前記完全ネジ山部は、前記ネジ筒部の外周面からの突出距離が略一定に維持されたネジ山部であり、
前記不完全ネジ山部は、
前記完全ネジ山部の端部に存在し、前記外周面からの突出距離が漸減する部分を有するネジ山部であり、且つ
前記外周面からの突出距離が前記完全ネジ山部から漸減する部分の最外周として現れる前記不完全ネジ山部の形状が、前記ネジ筒部の半径方向内側に凹んでいるか、又は直線状であり、
前記ネジ筒部は、その直径方向に対向する易折り曲げ領域を少なくとも一対有し、前記易折り曲げ領域は、前記ネジ筒部を軸方向に観察したときに、前記完全ネジ山部が存在せず、且つ前記不完全ネジ山部が存在する領域である、
可撓性容器。
[2]前記不完全ネジ山部が、前記完全ネジ山部の両端に存在し、前記外周面からの突出距離が漸減して、前記完全ネジ山部から前記ネジ筒部の外周面へと収束するネジ山部である、[1]に記載の可撓性容器。
[3]前記雄ネジが2条ネジであり、前記易折り曲げ領域の数が一対である、[1]又は[2]に記載の可撓性容器。
[4]前記雄ネジが4条ネジであり、前記易折り曲げ領域の数が二対である、[1]又は[2]に記載の可撓性容器。
[5]前記不完全ネジ山部が、
前記完全ネジ山部の両端に存在し、前記外周面からの突出距離が漸減して、前記完全ネジ山部から前記ネジ筒部の外周面へと収束するネジ山部、及び
前記雄ネジの途中に存在し、前記外周面からの突出距離が漸減した後に漸増して元の突出距離に戻るネジ山部
の双方から成る、[1]に記載の可撓性容器。
[6] 前記口頸部が、前記ネジ筒部よりも開口端側に、前記ネジ筒部よりも直径の小さい口筒部を更に有する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の可撓性容器。
[7]食品のチューブ容器又はボトル容器として用いられる、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の可撓性容器。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ネジ筒部が押し潰し易く、内容物を最後まで使い切ることが容易でありながら、押し潰すのをやめると押し潰されたネジ筒部が自然に元の形状に復元し、キャップによる確実な再密封が可能な可撓性容器が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の可撓性容器は、
口頸部、胴部、及び前記口頸部と前記胴部とを連結する肩部を有し、前記口頸部の先端開口から内容物を押し出す可撓性容器であって、
前記口頸部は、外周面から雄ネジが突出するネジ筒部を有し、
前記雄ネジは、完全ネジ山部と不完全ネジ山部とを有し、
前記完全ネジ山部は、前記ネジ筒部の外周面からの突出距離が略一定に維持された完全ネジ山部であり、
前記不完全ネジ山部は、
前記完全ネジ山部の端部に存在し、前記外周面からの突出距離が漸減する部分を有するネジ山部であり、且つ、
前記外周面からの突出距離が前記完全ネジ山部から漸減する部分の最外周として現れる前記不完全ネジ山部の形状が、前記ネジ筒部の半径方向内側に凹んでいるか、又は直線状であり、
前記ネジ筒部は、その直径方向に対向する易折り曲げ領域を少なくとも一対有し、前記易折り曲げ領域は、前記ネジ筒部の外周面を前記ネジ筒部の軸方向に観察したときに、前記完全ネジ山部が存在せず、且つ前記不完全ネジ山部が存在する領域である、
可撓性容器である。
【0026】
本発明の可撓性容器は、口頸部において、外周面から雄ネジが突出するネジ筒部を有する。ネジ筒部は、直径方向に対向する易折り曲げ領域を少なくとも一対有する。ネジ筒部の軸方向に観察したときに、この易折り曲げ領域には、完全ネジ山部は存在せず、不完全ネジ山部が存在する。完全ネジ山部は、キャップが滑動するための軌道を規定するために、外周面からの突出距離が略一定に維持されており、比較的大きな折り曲げ抵抗を示す部分である。これに対して不完全ネジ山部は、ネジ山が規定する軌道方向に沿って観察したときに、外周面からの突出距離が漸減する部分を有し、且つ、漸減する部分の形状が、ネジ筒部の半径方向内側に凹んでいるか、又は直線状であり、外周面からの突出距離が比較的小さいから、折り曲げ抵抗が比較的小さい部分である。
【0027】
従って、不完全ネジ山部が存在し、完全ネジ山部が存在しない易折り曲げ領域は、折り曲げ抵抗が小さく、折り曲げ易い領域である。このような易折り曲げ領域を、直径方向に対向する位置に少なくとも一対有するネジ筒部は、これらの易折り曲げ領域を折り線として、一対の易折り曲げ領域が楕円の長径となる方向に押し潰し易い。
【0028】
しかしながら不完全ネジ山部は、不完全ながら外周面から突出したネジを有するから、折り曲げられると有意の反発力を示す。この反発力によって、押し潰すのをやめたとき、ネジ筒部の形状は自然に元の形に復元することとなる。
【0029】
以上の作用機構により、本発明の可撓性容器は、ネジ筒部を押し潰し易いとともに、押し潰すのをやめると、容易且つ速やかに、キャップによる確実な再密封が可能な状態に戻ることができるのである。
【0030】
本発明の可撓性容器は、口頸部、胴部、口頸部と胴部とを連結する肩部を有し、口頸部の先端開口から内容物を押し出す可撓性容器である。以下、本発明の可撓性容器の構成について、その好ましい形態を例として、詳細に説明する。
【0031】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態は、不完全ネジ山部が、完全ネジ山部の両端に存在し、外周面からの突出距離が漸減して、完全ネジ山部からネジ筒部の外周面へと収束するネジ山部である、可撓性容器に関する。
【0032】
図1及び
図2に、本実施形態の可溶性容器の形状を説明するための概略図を示した。
【0033】
図1(a)は本実施形態の可撓性容器の形状を示す概略斜視図であり、
図1(b)はその部分拡大図である。
【0034】
図1(a)に示した可撓性容器は、口頸部1と胴部2とを有し、口頸部1の先端開口から内容物を押し出す可撓性容器である。口頸部1の直径は、胴部2よりも小さくてよく、口頸部1と胴部2との間に、胴部2から直径が漸減して口頸部1に至る肩部3を有している。口頸部1は、ネジ筒部1aを有し、このネジ筒部1aよりも開口端側に、口筒部1bを更に有していてよい。口筒部1bの直径は、ネジ筒部1aの直径と同じであってもよく、ネジ筒部1aの直径より小さくてもよい。
【0035】
図1(b)は、
図1(a)に示した可撓性容器のネジ筒部1aの部分拡大図である。ネジ筒部1aでは、外周面10から雄ネジ11が突出している。雄ネジ11は、外周面10からの突出距離が略一定に維持された完全ネジ山部11aと、完全ネジ山部11aの両端に存在し、外周面10からの突出距離が漸減して、完全ネジ山部11aから外周面10へと収束する不完全ネジ山部11bとを有する。
【0036】
図2(a)は、
図1(a)の可撓性容器を矢印の方向から見た概略上面図であり、
図2(b)はその部分拡大図である。
【0037】
本実施形態の可撓性容器のネジ筒部1aは、その直径方向に対向する位置に、一対の易折り曲げ領域4を有している(
図2(a))。この易折り曲げ領域4は、ネジ筒部1aを前記ネジ筒部の軸方向に観察したときに、完全ネジ山部11aが存在せず、且つ不完全ネジ山部11bが存在する領域である。
【0038】
可撓性容器のネジ筒部1aが、このような易折り曲げ領域4を少なくとも一対有することにより、ネジ筒部1aを含む口頸部1は、押し潰すときには易折り曲げ領域4を折り線として折り曲げ易く、且つ、押し潰すのをやめたときに復元し易いとの利点を有する。
【0039】
第1の実施形態では、ネジ筒部における不完全ネジ山部は、完全ネジ山部の両端に存在し、外周面からの突出距離が漸減して、完全ネジ山部から外周面へと収束する領域である。ネジ筒部の軸方向から観察したときに、完全ネジ山部から外周面に至る部分のネジ山の最外周として現れる不完全ネジ山部の形状は、ネジ筒部の半径方向内側に凹んでいるか、又は直線状である。不完全ネジ山部の形状は、具体的には例えば、
図3(a)に示したように、最外周が傾斜の大きい直線と傾斜の小さい直線とから成る「く」の字形状であってよく;
図3(b)に示したように、最外周がネジ筒部の半径方向内側に凹んだ円弧状であってよく;
図3(c)に示したように、最外周が略直線状であってよい。しかしながら、
図3(d)に示したように、最外周がネジ筒部の半径方向外側に膨らんでいる形状は、外周面からの突出距離が比較的大きく維持されている部分が多く、折り曲げ抵抗の低減の程度が小さいから、好ましくなく、本発明の範囲から除外される。
【0040】
不完全ネジ山部の形状は、易折り曲げ領域の折り曲げ抵抗をより低くする観点から、ネジ筒部の半径方向内側に凹んでいることが好ましく、傾斜の大きい直線と傾斜の小さい直線とから成る「く」の字形状であることがより好ましい。不完全ネジ山部における最外周の形状が「く」の字状であれば、この「く」の字の屈曲点が折り線となって、易折り曲げ領域の折り曲げ抵抗を極めて低くすることができるとの観点から、より好ましい。
【0041】
ネジ筒部が有する雄ネジは、偶数の条数を有する多条ネジであってよい。第1の実施形態において、易折り曲げ領域を構成する不完全ネジ山部は、雄ネジの完全ネジ山部の両端に存在するから、条数が偶数の多条ネジは、易折り曲げ領域をネジ筒部の直径方向に対向する2点に配置し、これらを一対の易折り曲げ領域とすることが容易となる。雄ネジは、例えば、2条ネジ、4条ネジ、又は6条ネジであってよい。口頸部の径が比較的大きい可撓性容器においては、雄ネジの条数を更に多くしてよく、例えば、8条ネジ、10条ネジ、12条ネジ等であってよい。
【0042】
雄ネジが、第1の雄ネジ及び第2の雄ネジから構成される2条ネジであるとき、易折り曲げ領域は、第1の易折り曲げ領域及び第2の易折り曲げ領域から構成される一対であってよい。ここで、各雄ネジの口頸部開口端側の端部を始点とし、反対側の端部を終点としたときに、2条ネジの場合、第1の易折り曲げ領域には、完全ネジ山部が存在せず、且つ、第1の雄ネジの終点側の不完全ネジ山部と、第2の雄ネジの始点側の不完全ネジ山部とが存在していてよく;第2の易折り曲げ領域には、完全ネジ山部が存在せず、且つ、第2の雄ネジの終点側の不完全ネジ山部と、第1の雄ネジの始点側の不完全ネジ山部とが存在していてよい。
【0043】
雄ネジが、ネジ筒部の円周上に第1〜第4の雄ネジがこの順に存在する4条ネジであるとき、易折り曲げ領域は、第1の易折り曲げ領域及び第3の易折り曲げ領域から構成される一対と、第2の易折り曲げ領域及び第4の易折り曲げ領域から構成される一対と、から成る二対であってよい。この場合、第1の易折り曲げ領域には、完全ネジ山部が存在せず、且つ、第1の雄ネジの終点側の不完全ネジ山部と、第2の雄ネジの始点側の不完全ネジ山部とが存在していてよく;第2の易折り曲げ領域には、完全ネジ山部が存在せず、且つ、第2の雄ネジの終点側の不完全ネジ山部と、第3の雄ネジの始点側の不完全ネジ山部とが存在していてよく;第3の易折り曲げ領域には、完全ネジ山部が存在せず、且つ、第3の雄ネジの終点側の不完全ネジ山部と、第4の雄ネジの始点側の不完全ネジ山部とが存在していてよく;第4の易折り曲げ領域には、完全ネジ山部が存在せず、且つ、第4の雄ネジの終点側の不完全ネジ山部と、第1の雄ネジの始点側の不完全ネジ山部とが存在していてよい。
【0044】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態は、不完全ネジ山部が、
前記完全ネジ山部の両端に存在し、前記外周面からの突出距離が漸減して、前記完全ネジ山部から前記ネジ筒部の外周面へと収束するネジ山部(第1の不完全ネジ山部)、及び
前記雄ネジの途中に存在し、前記外周面からの突出距離が漸減した後に漸増して元の突出距離に戻るネジ山部(第2の不完全ネジ山部)
の双方から成る、可撓性容器に関する。
【0045】
本実施形態の可撓性容器のネジ筒部は、その直径方向に対向する位置に、少なくとも一対の易折り曲げ領域を有する。この易折り曲げ領域は、ネジ筒部を軸方向に観察したときに、完全ネジ山部が存在せず、且つ第1の不完全ネジ山部及び第2の不完全ネジ山部のうちの少なくとも一方が存在する領域である。
【0046】
本実施形態の可撓性容器のネジ筒部における雄ネジは、例えば、ネジ筒部外周回りの滑動行程角度が略1周(約360°)の1条ネジ、滑動行程角度が略1.5周(約540°)の1条ネジ、それぞれの滑動行程角度が約1周(360°)の2条ネジ等であってよい。口頸部開口端側の端部を始点とし、反対側の端部を終点としたときに、雄ネジは、始点側及び終点側にそれぞれ第1の不完全ネジ部を有していてよく、第2の不完全ネジ山部によって途中が1カ所以上中断されていてよい。
【0047】
本実施形態の可撓性容器のネジ筒部を軸方向から観察したときに、外周面からの突出距離が漸減した後に漸増して元の突出距離に戻る部分のネジ山の最外周として現れる第2の不完全ネジ山部の形状は、任意である。例えば、
図4(a)に示したように、外周面からの突出距離が、ネジ筒部の半径方向内側に凹んだ円弧状に漸減した後に、半径方向内側に凹んだ円弧状に漸増して元の突出距離に戻ってよく;
図4(b)に示したように、外周面からの突出距離が、直線状に漸減した後に、直線状に漸増して元の突出距離に戻ってよい。
図4(a)及び(b)の第2の不完全ネジ山部では、外周面からの突出距離が最も小さくなった地点は外周面に達していない。
【0048】
第2の実施形態の可撓性容器におけるネジ筒部は、ネジ筒部の直径方向に対向する位置に、第1の易折り曲げ領域及び第2の易折り曲げ領域から構成される一対の易折り曲げ領域を有していてよい。雄ネジが滑動行程角度略1周の1条ネジである場合、第1の易折り曲げ領域には、例えば、完全ネジ山部が存在せず、且つ、雄ネジの始点側の第1の不完全ネジ山部及び終点側の第1の不完全ネジ山部が存在していてよい。第2の易折り曲げ領域には、完全ネジ山部が存在せず、且つ、雄ネジの途中の第2の不完全ネジ山部を有していてよい。
【0049】
<可撓性容器の製造>
本実施態様の可撓性容器は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;等から選択される適宜の材料を用いて、例えば、射出成型、ブロー成形等の適宜の方法によって製造されてよい。
【0050】
<可撓性容器のキャップ>
本実施形態の可撓性容器は、ネジ筒部の雄ネジと螺合して容器を密閉するキャップと組み合わされて、例えば、食品のチューブ容器、ボトル容器等として用いられてよい。
【0051】
<可撓性容器の適用>
本実施形態の可撓性容器は、例えばブローチューブ容器、特に、練りワサビ、練りカラシ等の香辛料を充填するためのブローチューブ容器として好適である。
【実施例】
【0052】
以下の実施例では、3Dプリンタを用い、レーザー光照射による光造形法によってサンプルを試作して、評価を行った。光造形法は、寸法精度及び造形物の表面の滑らかさに優れており、可撓性容器のサンプル試作に適していると考えらえる。
【0053】
実施例用及び比較例用のサンプルは、胴部及び口頸部を有し、且つ口頸部が、先端開口、及び外周面から雄ネジが突出するネジ筒部を有する、チューブとしての基本形状を共通とし、雄ネジの不完全ネジ山部の形状、及びネジ筒部における凹溝の有無のみを変更して試作した。
【0054】
サンプルは、工業的にはブロー成形によって製造される練りワサビ用の容器の実寸と同サイズに設計し、ただし、容器壁の肉厚は、実寸の約2倍とした。この肉厚の修正は、ブロー成形材料と光造形材料との硬さの違いを考慮して、容器の押し潰し抵抗を実材料に近づけるためのものである。
【0055】
3Dプリンタを用いたサンプル製作の条件は、以下のとおりである。
3Dプリンタ装置:イタリア国、DSW Inc.社製
光造形用樹脂材料:イタリア国、DSW Inc.社製、品名「GM08」、アクリル系樹脂
光硬化層1層の厚み(光造形単位の厚み):0.05mm
サンプル作製方法: 3DCADを用いて3Dモデルを設計し、STL形式のファイルとした。このSTLファイルを、3Dプリンタの土台に対する光造形物の配置方向を設定するソフトにインポートして、光造形物の作製方向、即ちどの方向に光硬化層を重ねて行って光造形物を製造するか、を決定した。そして、3Dプリンタ装置のコントロールソフトを用い、サンプル作製条件を設定したうえで、サンプル試作を行った。
サンプル作製時間:約4時間
【0056】
製造後のサンプルは、メタノールによって洗浄した後、遮光下で保存した。サンプルが日光等の紫外線を含む光線に長時間さらされると、硬化反応が進行して硬くなり、評価に支障をきたすので、これを避けるために保存は遮光下とした。
【0057】
サンプルは、温度23℃及び湿度50%RHの環境下に12時間以上静置して状態調節を行ったうえで、評価に供した。
【0058】
<実施例1>
図5の図面に示した形状及びサイズ(単位:mm)の容器サンプル(長さ:49.8mm)を、上記の光造形法によって作製し、一対の易折り曲げ領域が楕円の長径となる方向へ押し潰したときの圧縮荷重、及び容器の口頸部を押し潰した後の復元時間を評価した。
【0059】
実施例1の容器サンプルにおける雄ネジは2条ネジであり、不完全ネジ山部の形状は、完全ネジ山部から外周面に至る部分の最外周が、傾斜の大きい直線と傾斜の小さい直線とから成る「く」の字形状とした(
図6(a)参照)。
【0060】
[評価方法]
(1)圧縮荷重評価
引張試験機((株)東洋精機製作所製、型式名「VGS−05E」)を使用して、容器サンプルを2枚の金属板で挟み、一対の易折り曲げ領域が楕円の長径となる方向に押し潰したときの最大応力を測定した(
図7参照)。
【0061】
(2)復元時間評価
容器サンプルのネジ筒部を、一対の易折り曲げ領域が楕円の長径となる方向に、対向する内壁同士が接触するまで指で押し潰し、その状態を5秒間保持した。5秒後に指を離して、容器を横倒しにして静置した。指を離した時点を0秒として、押し潰した方向の口頸部外径を30秒ごとに測定した。この値から、押し潰す前の口頸部外径を減じた差分(外径差)の値が−0.1mm以内になれば、キャップによる確実な再密封を、容易且つ確実に行うことが可能と判断してよい。一方、この外径差の値が−0.1mmよりも小さい場合(即ち、押し潰す前の口頸部外径との差が大きい場合)には、例えば、口頸部へのキャップの捻じ込みが困難である、キャップが斜めに捻じ込まれる、口頸部の雄ネジとキャップの雌ネジとが異常接触して削れる、キャップが一旦密閉状態に至った後に弛む、等の不都合が起こる場合があり、キャップによる再密封が不確実となる懸念がある。
【0062】
<比較例1>
不完全ネジ山部の形状を、最外周が外側に膨らんだ円弧状とした他は、実施例1と同様の容器サンプルを作製し、評価した(
図8参照)。
【0063】
<比較例2>
ネジ筒部外周面のうちのネジ筒部の軸方向に雄ネジが存在しない部分(2条の雄ネジの間隙部)を形成し、この部分に、深さ0.7mm、開口幅1.5mmの軸方向の凹溝を形成した他は、比較例1と同様の容器サンプルを作製し、評価した。この容器サンプルにおける雄ネジの不完全ネジ山部付近の形状を、
図9(a)に概略斜視図、及び
図9(b)に概略上面図として示した。
【0064】
<評価結果>
以上の結果を表1にまとめた。圧縮荷重評価の結果については、比較例1の値を100とする相対値で示した。
【0065】
【表1】
【0066】
表1の結果によると、外側に膨らんだ円弧状の不完全ネジ山部を有する比較例1の容器は、圧縮荷重が高く、ネジ筒部の押し潰しをやめた後、キャップによる確実な再密封が可能な状態に復元するまでに、120秒の時間を要した。ネジ筒部に軸方向の凹溝を形成した比較例2の容器は、圧縮荷重は低かったが、押し潰しをやめた後、キャップによる確実な再密封が可能な状態に復元するまでに、90秒かかった。
【0067】
これらに対して、「く」の字形状の不完全ネジ山部を有する実施例1の容器は、圧縮荷重が比較例1の容器よりも低く、且つ、ネジ筒部の押し潰しをやめた後、30秒後にはキャップによる確実な再密封が可能な状態に復元した。
【0068】
雄ネジを4条ネジとした場合にも、上記2条ネジの場合と略同様の傾向が見られた。