(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1取付板と前記第2取付板は同一の形状であり、前記モータの回転方向において互いに位相を変えて配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の防振マウント。
前記ボスは、前記第1取付板と前記第2取付板の少なくてもいずれか一方に対して、複数形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の防振マウント。
前記第1取付板と前記第2取付板は金属製であり、前記ボスはエンボス加工により形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の防振マウント。
【背景技術】
【0002】
複写機の紙送り機構やパソコン用プリンタの印字ヘッド等の機体には、ステッピングモータが使用される。このステッピングモータは、駆動することで振動を発生させる加振源であるため、前述したような機体のフレームに対して防振マウントを介して取り付けられることがある。
【0003】
図14(a)は、従来の防振マウント100の装着状態を示す断面図であり、
図14(b)は、
図14(a)における矢印X方向の矢視図である。
図14に示す様に、防振マウント100は、フレーム200に取り付けられる取付板101と、ステッピングモータ300に取り付けられる取付板102との間に、ゴム状弾性材料からなる弾性層103を一体的に設けた構成である。これによりステッピングモータ300駆動時に発生する振動は、弾性層103の変形動作により吸収され、フレーム200側への振動伝達が低減される。
【0004】
ここでステッピングモータ300の駆動トルクは、回転軸301からピニオンギア302、これと噛み合う被駆動ギア303を介して従動側へ伝達される。従って、ステッピングモータ300には、トルク伝達の反力によりこじり変位(軸心上の一点を中心とする揺動)が発生する。例えば
図15(a)に示す様に、ステッピングモータ300の回転軸301が矢印R1方向に回転した場合、ピニオンギア302から被駆動ギア303へのトルク伝達に伴う矢印F1方向の反力により、回転軸301に矢印S1方向のこじり変位が発生する。この場合、防振マウント100にこじり変位が生じて、弾性層103は圧縮方向と引張方向の荷重を受けて変形する。
【0005】
これに対し、防振マウント100のこじり変位に対する剛性を高めるためには、弾性層103として硬度の高いゴム状弾性材料を用いることが有効である。しかし、その場合には弾性層103の捻り方向(円周方向)の剪断ばね定数も高くなってしまう。また一般にゴム状弾性材料は、硬度が高いほど、動倍率が高くなる(静ばねに対して動ばねが高くなる)傾向にある。このため、硬度の高いゴム状弾性材料を用いた場合、こじり変位に対する剛性は向上しても、動的な入力である捻り振動を抑制する効果が低減して振動が伝わりやすくなってしまう。
【0006】
そこで特許文献1では、防振マウントにおいて、捻り振動を抑制する効果を確保するとともに、こじり変位に対する剛性を高めるための構成が提案されている。
図15(b)は、特許文献1に係る防振マウント100の断面図である。
図15(b)に示す様に、防振マウント100は、取付板101、102の間に形成された弾性層103に嵌着されるとともに、取付板111、112と接触可能、且つ、非接着で配置されたゴム状弾性材料からなる環状弾性体114を有する。これにより防振マウント100にこじり変位が生じた場合、取付板111、112が互いに接近する側では、弾性層113がある程度圧縮された時点で環状弾性体114も共に圧縮されるため、こじり変位に対する剛性が高くなる。また捻り方向の剪断ばねは実質的に弾性層113のみが担うので、捻り振動を抑制する効果が確保されて防振性能が確保される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
<画像形成装置>
以下、まず本発明の第1実施形態に係る防振マウントを備える画像形成装置Aの全体構成を画像形成時の動作とともに図面を参照しながら説明する。なお、記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
図1に示す様に、画像形成装置Aは、記録媒体であるシートにトナー像を転写して画像を形成する画像形成部と、画像形成部に向けてシートを供給するシート給送部と、シートにトナー像を定着する定着部を備える。
【0015】
画像形成に際しては、不図示の制御部がプリント信号を発すると、ステッピングモータ3(
図5参照)により駆動される給紙ローラ79(搬送部材)及び搬送ローラ78(搬送部材)によってシート積載部80に積載されたシートSが画像形成部に送り出される。
【0016】
なお、本実施形態では、ステッピングモータ3は、画像形成装置Aの装置本体であるフレーム2に対して、
図2に示す防振マウント1を介して取り付けられている。防振マウント1の構成については後に詳しく説明する。
【0017】
一方、画像形成部においては、帯電ローラ72にバイアスが印加されることで感光体ドラム71の表面が帯電させられる。その後、レーザスキャナユニット73が不図示の光源からレーザ光を出射し、画像情報に応じてレーザ光を感光体ドラム71に照射する。これにより感光体ドラム71の電位が部分的に低下して画像情報に応じた静電潜像が感光体ドラム71の表面上に形成される。
【0018】
その後、現像装置74が備える現像スリーブ76にバイアスが印加されることで現像スリーブ76から感光体ドラム71表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像が形成される。
【0019】
次に、感光体ドラム71表面に形成されたトナー像は、感光体ドラム71と転写ローラ75との間に形成された転写ニップ部に送り込まれる。トナー像が転写ニップ部に到着すると、転写ローラ75にトナーの帯電極性と逆極性のバイアスが印加されてトナー像がシートSに転写される。
【0020】
その後、トナー像が転写されたシートSは定着装置88に送られ、定着装置88によりトナー像が加熱・加圧されてシートSに定着される。その後、シートSは排出ローラ82によって排出部83に排出される。
【0021】
<防振マウント>
次に、防振マウント1の構成について説明する。
【0022】
図2は、防振マウント1の斜視図であり、
図3は、
図2におけるA−A断面で切断したときの断面図である。
図4は、防振マウント1が備える取付板11、12の斜視図である。
【0023】
図2〜4に示す様に、防振マウント1は、画像形成装置Aのフレーム2に取り付けられる鋼鈑で形成された取付板11(第2取付板)と、ステッピングモータ3に取り付けられる鋼鈑で形成された取付板12(第1取付板)を備える。また取付板11、12の間でこれらと一体的に設けられたゴム状の弾性材料から成る弾性層13を備える。なお、このゴム状の弾性層13の硬度は、Hs40〜85(JISスプリング式)の範囲にあるのが好ましい。
【0024】
取付板11には、円形の内周開口部11aが形成される。内周開口部11aの開口にはステッピングモータ3の回転によって回転する回転軸31が挿入される。また、外縁部に沿って2つのネジ挿通孔11bが適当な間隔で設けられている。さらに、内周開口部11aの周りには、取付板12に向けて突出した4つのボス11cが90°毎に設けられている。ボス11cは、その先端部と取付板12との間で0.5mm程度の間隔(距離)をもって配置されており、外周面は弾性層13に覆われている。なお、本実施形態では、ボス11cはエンボス加工により形成されている。
【0025】
なお、複数のボス11cそれぞれの先端部と取付板12との間隔はすべて同一でも良いし、それぞれの間隔が異なっても良い。また本実施形態では、ボス11cの先端部と取付板12との間の間隔に弾性層13が充填されているものの、この間隔に弾性層13を設けずに空間(間隙)としてもよい。また本実施形態では取付板11のみにボス11cを形成する構成を例示するが、実施の形態はこれに限られるものではない。ボス11cを取付板12のみに設けても良いし、後述する
図12に示すように取付板11および取付板12の両方に設けても良い。
【0026】
また取付板12には、円形の内周開口部12aが形成されるとともに、外縁部に沿って2つのネジ挿通孔12bが適当な間隔で設けられている。なお、本実施形態では、取付板11、取付板12の材料として鋼鈑を用いたものの、他の金属製の材料や、合成樹脂などを用いてもよい。
【0027】
また弾性層13は、取付板11、取付板12の内周開口部11a、12aに沿って円周方向へ環状に連続して延びている。なお、弾性層13は、取付板11と取付板12とが対向した状態となるように取付板11と取付板12とがセットされた型にゴム状の弾性材料が流し込まれることで、取付板11と取付板12との間に弾性層13が形成される。弾性層13は取付板11と取付板12とを連結する。
【0028】
図5は、画像形成装置A本体のフレーム2に対して、防振マウント1を介してステッピングモータ3を装着した状態の斜視図であり、
図6は、その断面図である。なお、説明の便宜上、
図5においてフレーム2は透明化して表示する。
【0029】
図5、6に示す様に、フレーム2には、ステッピングモータ3の取付位置に対応して、円形窓部2aが設けられている。取付板11は、ネジ挿通孔11b(
図4(a)参照)に挿通したネジ15によって、内周開口部11aがフレーム2の円形窓部2aと重合するようにフレーム2に取り付けられる。また取付板12は、ネジ挿通孔12b(
図4(b)参照)に挿通したネジ16によってステッピングモータ3に取り付けられる。
【0030】
またステッピングモータ3の回転軸31は、取付板11、取付板12の内周開口部11a、12aを通ってフレーム2の円形窓部2aに挿通されている。また回転軸31の先端に取り付けられたピニオンギア32は、被駆動ギア33と噛合している。このようにしてステッピングモータ3は防振マウント1を介してフレーム2に取り付けられる。
【0031】
次に、ステッピングモータ3駆動時の防振マウント1の動作について説明する。
【0032】
まずステッピングモータ3が駆動すると、その駆動トルクは回転軸31からピニオンギア32、被駆動ギア33を介して従動側へと伝達される。このとき、ステッピングモータ3の駆動に伴って捻り方向の振動(円周方向の振動)が発生する。またステッピングモータ3には、トルク伝達の反力によってこじり変位(軸心上の一点を中心とする揺動)が発生する。
【0033】
例えばステッピングモータ3の回転軸31が、
図5に示す矢印R2方向に回転した場合、ピニオンギア32から被駆動ギア33へのトルク伝達に伴う
図6に示す矢印F2方向の反力によって、回転軸31には
図6に示す矢印S2方向のこじり変位が発生する。このこじり変位が防振マウント1に生じると、弾性層13は圧縮方向と引張方向の荷重を受けて変形する。
【0034】
ここで弾性層13が圧縮方向に変形すると、取付板12と取付板11に形成されたボス11cとの間で弾性層13が圧縮されて、取付板12が弾性層13を介してボス11cに突き当たる。これにより弾性層13にかかる圧縮方向の荷重の大部分は、弾性層13より剛性が大幅に高いボス11cに伝わる。この結果、弾性層13の圧縮方向の変形は大幅に抑制される。なお、弾性層13は、圧縮方向の変形が抑制されることで引張方向の変形も抑制される。つまりボス11cにより、ステッピングモータ3のこじり変位に対する防振マウント1の剛性が向上し、耐久性も向上する。
【0035】
またステッピングモータ3の駆動に伴って発生する捻り方向の振動に関しては、取付板11と取付板12との間で弾性層13が捻り方向の剪断変形を受けることで吸収され、フレーム2側への振動の伝達が低減される。
【0036】
このように本実施形態の構成によれば、新たな部材を追加することなく、安価で簡易な構成で、ステッピングモータ3の駆動に伴って発生する捻り振動に対する防振性能を確保するとともに、こじり変位に対する防振マウント1の剛性を高めることができる。
【0037】
またボス11cの外周面が弾性層13に覆われているため、取付板12が弾性層13を介してボス11cに突き当たった際にボス11cの振動が抑制され、取付板11を介してフレーム2に振動が伝わるのを抑制することができる。またボス11cと取付板12との間に間隔があるため、取付板11と取付板12の間隔をボス11cの高さのばらつきによらず均一化することができ、さらに取付板11と取付板12との平行度の精度を向上させることができる。
【0038】
なお、
図7に示す様に、防振マウント1において、ボス11cを取付板12まで延在させて当接させる構成にしてもよい。これにより、この当接部分からフレーム2に対して捻り振動が伝達され易くなって防振性能が多少低下するものの、ステッピングモータ3のこじり変位が発生しようとする際に、ボス11cが荷重を直接受けるため、こじり変位そのものが大幅に抑制される。このため、防振マウント1のこじり変位に対する剛性を向上させるだけでなく、ステッピングモータ3の回転軸31やピニオンギア32の傾きを大幅に抑えて歯筋の傾きを抑制でき、ピニオンギア32と被駆動ギア33との噛み合い精度を維持することができる。
【0039】
またピニオンギア32としてヘリカルギアを用い、ピニオンギア32が金属製で、被駆動ギア33が樹脂製の場合、振動による歯筋の傾きで被駆動ギア33の摩耗が促進されて耐久寿命が急激に低下する懸念がある。しかし
図7に示す構成によれば、振動による歯筋の傾きを抑制できるため、耐久寿命の低下を抑制することができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る防振マウントを備える画像形成装置の第2実施形態について図を用いて説明する。上記第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の図面、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図8は、本実施形態に係る防振マウント50の斜視図であり、
図9は、
図8におけるB−B断面で切断したときの断面図である。
図10は、防振マウント50が備える取付板51の斜視図である。
【0042】
図8〜10に示す様に、防振マウント50は、ステッピングモータ3と画像形成装置Aのフレーム2にそれぞれ取り付けられる鋼鈑で形成された2つの取付板51(第1取付板、第2取付板)を備える。また2つの取付板51の間でこれらと一体的に設けられたゴム状の弾性材料から成る弾性層53を備える。つまり本実施形態では、防振マウント50が備える2つの取付板51が同一の部材から構成されており、同一の形状となっている。なお、このゴム状の弾性層53の硬度は、Hs40〜85(JISスプリング式)の範囲にあるのが好ましい。
【0043】
取付板51には、円形の内周開口部51aが形成される。内周開口部51aの開口にはステッピングモータ3の回転によって回転する回転軸31が挿入される。また、外縁部に沿って2つのネジ挿通孔51bが適当な間隔で設けられている。さらに、内周開口部51aの周りには、対向する他方の取付板51に向けて突出した2つのボス51cが180°の間隔で設けられており、ボス51cはエンボス加工により形成されている。つまりボス51cは、防振マウント50が備える2つの取付板51の双方に形成されている。なお、本実施形態では、取付板51の材料として鋼鈑を用いたものの、他の金属製の材料や、合成樹脂などを用いてもよい。
【0044】
この2つの取付板51は、ステッピングモータ3の回転方向において90°位相を変えて配置される。このとき、ボス51cは、その先端部と対向する他方の取付板51との間で0.5mm程度の間隔(距離)をもって配置されており、外周面は弾性層53に覆われている。なお、ボス51cの先端部と、対向する他方の取付板51との間隔は、すべて同一でも良いし、それぞれの間隔が異なっても良い。また本実施形態では、ボス51cの先端部と、対向する他方の取付板51との間の間隔に弾性層53が充填されているものの、この間隔に弾性層53を設けずに空間(間隙)としてもよい。
【0045】
また弾性層53は、2つの取付板51の内周開口部51aに沿って円周方向へ環状に連続して延びている。なお、弾性層53は、2つの取付板51が互いに対向した状態となるように2つの取付板51がセットされた型にゴム状の弾性材料が流し込まれることで、2つの取付板51の間に弾性層53が形成される。弾性層53は2つの取付板51を連結する
【0046】
次に、ステッピングモータ3駆動時の防振マウント50の動作について説明する。
【0047】
ステッピングモータ3が駆動すると、その駆動トルクは回転軸31からピニオンギア32、被駆動ギア33を介して従動側へと伝達される。このとき、第1実施形態で述べた通り、ステッピングモータ3には、捻り方向の振動とこじり変位が発生する。このこじり変位が防振マウント1に入力されると、弾性層53は圧縮方向と引張方向の荷重を受けて変形する。
【0048】
ここで弾性層53が圧縮方向に変形すると、2つの取付板51にそれぞれ形成されたボス51cと、対向する他方の取付板51との間で弾性層53が圧縮されて、対向する他方の取付板51が弾性層53を介してボス51cに突き当たる。これにより弾性層53にかかる圧縮方向の荷重の大部分は、弾性層53より剛性が大幅に高いボス51cに伝わる。この結果、弾性層53の圧縮方向の変形は大幅に抑制される。また圧縮方向の変形が抑制されることで、弾性層53の引張方向の変形も抑制される。つまりボス51cにより、ステッピングモータ3のこじり変位に対する防振マウント50の剛性が向上し、耐久性も向上する。
【0049】
またステッピングモータ3の駆動に伴って発生する捻り方向の振動に関しては、2つの取付板51の間で弾性層53が捻り方向の剪断変形を受けることで吸収され、フレーム2側への振動の伝達が低減される。
【0050】
このように本実施形態の構成によれば、新たな部材を追加することなく、安価で簡易な構成で、ステッピングモータ3の駆動に伴って発生する捻り振動に対する防振性能を確保するとともに、こじり変位に対する防振マウント50の剛性を高めることができる。
【0051】
またボス51cの外周面が弾性層53に覆われているため、対向する他方の取付板51が弾性層53を介してボス51cに突き当たった際にボス51cの振動が抑制され、取付板51を介してフレーム2に振動が伝わるのを抑制することができる。また取付板51が同一の部材で構成されるため、製造コストを低減するとともに、ボス51cの高さのばらつきを低減させることができる。
【0052】
またボス51cと対向する他方の取付板51との間に間隔があるため、2つの取付板51の間隔をボス51cの高さのばらつきによらず均一化することができ、さらに2つの取付板51の互いの平行度の精度を向上させることができる。
【0053】
なお、第1実施形態と同様に、ボス51cを対向する他方の取付板51まで延在させて当接させる構成にすることで、上記同様の効果を得ることができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る防振マウントを備える画像形成装置の第3実施形態について図を用いて説明する。上記第1実施形態、第2実施形態と説明の重複する部分については、同一の図面、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
図11は、本実施形態に係る防振マウント60の斜視図であり、
図12は、
図11におけるC−C断面で切断したときの断面図である。
図13は、防振マウント60が備える取付板61の斜視図である。
【0056】
図11〜13に示す様に、防振マウント60は、ステッピングモータ3と画像形成装置Aのフレーム2にそれぞれ取り付けられる鋼鈑で形成された2つの取付板61(第1取付板、第2取付板)を備える。また2つの取付板61の間でこれらと一体的に設けられたゴム状の弾性材料から成る弾性層63を備える。つまり本実施形態では、防振マウント60が備える2つの取付板61が同一の部材で構成され、同一の形状となっている。なお、このゴム状の弾性層63の硬度は、Hs40〜85(JISスプリング式)の範囲にあるのが好ましい。
【0057】
取付板61には、円形の内周開口部61aが形成される。内周開口部61aの開口にはステッピングモータ3の回転によって回転する回転軸31が挿入される。また、外縁部に沿って2つのネジ挿通孔61bが適当な間隔で設けられている。さらに、内周開口部61aの周りには、対向する他方の取付板61に向けて突出した4つのボス61cが90°の間隔で設けられている。ボス61cはエンボス加工により形成されており、また先端部が平面形状となっている。つまりボス61cは、防振マウント60が備える2つの取付板61の双方に形成されている。なお、本実施形態では、取付板61の材料として鋼鈑を用いたものの、他の金属製の材料や、合成樹脂などを用いてもよい。
【0058】
この2つの取付板61は、各々に形成された4つのボス61cをそれぞれ対向させた状態で、ステッピングモータ3の回転方向において90°位相を変えて配置される。このとき、対向するボス61c同士は1mm程度の間隔(距離)をもって配置されており、且つ、それぞれのボス61cの外周面は弾性層63に覆われている。なお、ボス61cの先端部と、対向する他方の取付板61との間隔は、すべて同一でも良いし、それぞれの間隔が異なっても良い。また本実施形態では、ボス61cの先端部と、対向する他方の取付板61との間の間隔に弾性層63が充填されているものの、この間隔に弾性層63を設けずに空間(間隙)としてもよい。
【0059】
また弾性層63は、2つの取付板61の内周開口部61aに沿って円周方向へ環状に連続して延びている。なお、弾性層63は、2つの取付板61が互いに対向した状態となるように2つの取付板61がセットされた型にゴム状の弾性材料が流し込まれることで、2つの取付板61の間に弾性層63が形成される。弾性層63は2つの取付板61を連結する
【0060】
次に、ステッピングモータ3駆動時の防振マウント60の動作について説明する。
【0061】
ステッピングモータ3が駆動すると、その駆動トルクは回転軸31からピニオンギア32、被駆動ギア33を介して従動側へと伝達される。このとき、第1実施形態で述べた通り、ステッピングモータ3には、捻り方向の振動とこじり変位が発生する。このこじり変位が防振マウント60に入力されると、弾性層63は圧縮方向と引張方向の荷重を受けて変形する。
【0062】
ここで弾性層63が圧縮方向に変形すると、2つの取付板61にそれぞれ形成されたボス61cの間で弾性層63が圧縮されて、弾性層63を介してボス61c同士が突き当たる。このとき、ボス61cの先端部が平面形状であるため、弾性層63を介してボス61c同士が精度よく突き当たる。これにより弾性層63にかかる圧縮方向の荷重の大部分は、弾性層63より剛性が大幅に高いボス61cに伝わる。この結果、弾性層63の圧縮方向の変形は大幅に抑制される。また圧縮方向の変形が抑制されることで、弾性層63の引張方向の変形も抑制される。つまりボス61cにより、ステッピングモータ3のこじり変位に対する防振マウント60の剛性が向上し、耐久性も向上する。
【0063】
またステッピングモータ3の駆動に伴って発生する捻り方向の振動に関しては、2つの取付板61の間で弾性層63が捻り方向の剪断変形を受けることで吸収され、フレーム2側への振動の伝達が低減される。
【0064】
このように本実施形態の構成によれば、新たな部材を追加することなく、安価で簡易な構成で、ステッピングモータ3の駆動に伴って発生する捻り振動に対する防振性能を確保するとともに、こじり変位に対する防振マウント60の剛性を高めることができる。
【0065】
また2つの取付板61に形成された、互いに対向するボス61cの間に間隔があるため、2つの取付板61の間隔をボス61cの高さのばらつきによらず均一化することができ、さらに2つの取付板61の互いの平行度の精度を向上させることができる。
【0066】
またボス61cの外周面が弾性層63に覆われているため、ボス61c同士が弾性層63を介して突き当たった際にボス61cの振動が抑制され、取付板61を介してフレーム2に振動が伝わるのを抑制することができる。また取付板61が同一の部材で構成されるため、製造コストを低減するとともに、ボス61cの高さのばらつきを低減させることができる。
【0067】
なお、初めから2つの取付板61にそれぞれ形成されたボス61c同士(ボス同士)を互いに当接させる構成としてもよい。これにより第1実施形態で述べた、ボス11cを取付板12まで延在させて当接させる構成と同様の効果を得ることができる。さらに、ボス61c同士を当接させるため、2つの取付板61の間隔を広くとることができ、弾性層63の厚みを大きくして振動に強くすることができる。
【0068】
なお、上記第1〜3実施形態において、防振マウントの取付板に形成されたボスの数は上述したものに限られず、適宜変更することができる。但し、2つの取付板を安定的に支える観点から、ボスを3つ以上形成する(複数形成する)のが好ましい。また2つの取付板の間に形成された弾性層に対する圧縮方向の荷重と引張方向の荷重が最も働く方向にボスを設ける構成がさらに好ましい。さらにボスは、2つの取付板の少なくてもいずれか一方に設けられていればよい。
【0069】
また上記第1〜3実施形態では、防振マウントを介してフレーム2に取り付けられるモータとしてステッピングモータ3を例示したものの、本発明はこれに限られず、DCモータやその他のモータでも上記同様の効果を得ることができる。
【0070】
また上記第1〜3実施形態では、ステッピングモータ3を支持する支持体として画像形成装置Aのフレーム2を例示したものの、本発明はこれに限られず、他の電子機器等にモータを取り付ける際に、本発明に係る防振マウントを用いてもよい。