(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971669
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1333 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
G02F1/1333
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-136390(P2017-136390)
(22)【出願日】2017年7月12日
(65)【公開番号】特開2019-20477(P2019-20477A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100091340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 敬四郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141302
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 伸一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 宜久
【審査官】
近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−055825(JP,A)
【文献】
特開2009−042315(JP,A)
【文献】
特開2010−113269(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/098341(WO,A1)
【文献】
特開2008−282059(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/162995(WO,A1)
【文献】
特開2007−256682(JP,A)
【文献】
特開2009−229896(JP,A)
【文献】
実開平06−010975(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドットマトリクス表示をおこなえる複数の画素を含み、それぞれの画素がカラーフィルタを備えた複数の副画素の組を備え、液晶層に印加する電圧を制御できるアクティブ素子を各副画素に備えるアクティブ駆動型液晶表示素子と、
前記アクティブ駆動型液晶表示素子の裏面側に積層配置され、液晶層を挟んで対向配置された、共通電位に接続されるコモン電極と設定電位に接続されてセグメント形状を表示するセグメント表示電極とを有するパッシブ駆動型液晶表示素子と、
前記アクティブ駆動型液晶表示素子の表面側に配置された表面側偏光子と、
前記パッシブ駆動型液晶表示素子の裏面側に配置され、前記表面側偏光子と直交配置された裏面側偏光子と、
前記裏面側偏光子の裏面側に配置されたバックライトと、
前記アクティブ駆動型液晶表示素子の各副画素に印加する電圧を制御する第1制御部と、前記パッシブ駆動型液晶表示素子の各セグメント表示電極とコモン電極間に印加する電圧を制御する第2制御部とを含む制御回路と、
を備え、
前記アクティブ駆動型液晶表示素子、前記パッシブ駆動型液晶表示素子、前記表面側偏光子、前記裏面側偏光子の特性が電圧無印加状態でノーマリブラック状態になるように設定されており、
前記セグメント表示が行われる時に、駆動されるセグメント表示電極の外側の領域に重なる前記アクティブ駆動型液晶表示素子の画素に含まれる副画素を部分的に駆動し、部分的に駆動しないことによって前記駆動されるセグメント表示電極の外側の領域に重なる画素を駆動しない時と比べ、異なるカラーないし中間階調を表示できることを特徴とし、
前記セグメント表示が行われる時に、前記アクティブ駆動型液晶表示素子において駆動される画素は、前記セグメント電極の境界の外側領域に含まれる画素と前記セグメント表示電極の境界を跨ぐ画素である、
液晶表示装置。
【請求項2】
前記セグメント表示が行われる時に、前記セグメント電極の境界を跨ぐ画素は中間調表示に制御される請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記アクティブ駆動型液晶表示素子の液晶層と、前記パッシブ駆動型液晶表示素子の液晶層とは、共にツイステッドネマチック液晶層であり、ねじれ方向が逆方向である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記アクティブ駆動型液晶表示素子の液晶層の厚さ方向中央の分子配向方位と、前記パッシブ駆動型液晶表示素子の厚さ方向中央の分子配向方位とは、直交する、請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記アクティブ駆動型液晶表示素子と前記パッシブ駆動型液晶表示素子の一方はインプレーンスイッチング型の液晶素子で形成され、他方は垂直配向型の液晶素子で形成されている、請求項1〜2のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記インプレーンスイッチング型の液晶素子の電圧印加時の液晶分子の配向方向と前記垂直配向型の液晶表示素子の配向方向とは交差する、請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記アクティブ駆動型液晶表示素子と前記パッシブ駆動型液晶表示素子は共に垂直配向型の液晶素子であり、配向方向が交差する方向である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車載用の液晶表示装置(LCD)として、ドットマトリクスの各画素にアクティブ素子であるスイッチング用薄膜トランジスタ(TFT)を備えたアクティブマトリクス型液晶表示装置の搭載が進んでいる。ナビゲーションシステム、情報表示システム等の表示に用いられている。アクティブ素子をオンにして信号電圧を供給し、アクティブ素子をオフにすると、蓄積された信号電圧が保持され、ほぼ全周期に亘る表示をおこなうことができる。ドットマトリクス表示は、ドットを任意に選択するアクティブ駆動により種々の形状を表示することができる。
【0003】
水平方向、垂直方向にドットを配列したドットマトリクスの場合、水平方向、垂直方向の線はほぼ好適に表示できるが、斜め方向の線や曲線は水平方向の線と垂直方向の線との混合として表示され、エッジにギザギザ感が生じ易い。
【0004】
セグメント電極を用いたセグメント表示は、固定パターンであるが、滑らかな輪郭(エッジ)を表示することができる。セグメント表示は、通常表示素子数が限られる。例えば、液晶層を挟んで配置された、交差する2組の電極の各1電極を選んで、1セグメントを駆動するパッシブ(ダイレクトマルチプレックス、単純マトリクス)駆動で駆動される。パッシブ駆動では、1周期内の各セグメントの駆動時間は短くなる。
【0005】
アクティブマトリクス型のドットマトリクス液晶表示素子の表面側にセグメント表示型のパッシブ駆動型液晶表示素子を積層した積層構造を有し、裏面側にバックライトを備えた液晶表示装置も提案されている(例えば特許文献1)。
【0006】
図6に示されるように、アクティブマトリクス型のドットマトリクス液晶表示素子102の前面側にセグメント表示型のパッシブ駆動型液晶表示素子103が配置され、積層型の液晶表示装置101が構成されている。ドットマトリクス液晶表示素子102は、バックライトで照明可能なように、透過型のTFT駆動型液晶表示素子で構成する。セグメント液晶表示素子103がドットマトリクス表示を遮光しないように、セグメント液晶表示素子103はノーマリホワイトモードの透過型液晶表示素子で構成する。ドットマトリクスを用いて例えば順次変化するナビゲーション画面を表示し、その上に走行速度、ターンシグナル、警告表示等をセグメント表示することが開示されている。
【0007】
近年、優れた表示品位を有するノーマリブラックモード液晶表示素子が広く採用されている。例えば、垂直配向した液晶層と直交配置偏光子を組み合わせることにより、黒レベルの光透過率を低減し、高いコントラストを実現できる液晶表示素子が知られている。このような液晶素子は、非表示部が遮光性となる。もし、ドットマトリクス表示装置の上にノーマリブラックモードの表示素子を重ねると、非表示部の下方に配置されるドットマトリクスの表示状態が隠されてしまうことになる。このため、表示コンテンツに制限が加わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−043449号(特許4801291号)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ドットマトリクス表示とセグメント表示とを好適に組み合わせできる液晶表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施例によれば、
ドットマトリクス表示をおこなえる複数の画素を含み、それぞれの画素がカラーフィルタを備えた複数の副画素の組を備え、液晶層に印加する電圧を制御できるアクティブ素子を各副画素に備えるアクティブ駆動型液晶表示素子と、
前記アクティブ駆動型液晶表示素子の裏面側に積層配置され、液晶層を挟んで対向配置された、共通電位に接続されるコモン電極と設定電位に接続されてセグメント形状を表示するセグメント表示電極とを有するパッシブ駆動型液晶表示素子と、
前記アクティブ駆動型液晶表示素子の表面側に配置された表面側偏光子と、
前記パッシブ駆動型液晶表示素子の裏面側に配置され、前記表面側偏光子と直交配置された裏面側偏光子と、
前記裏面側偏光子の裏面側に配置されたバックライトと、
前記アクティブ駆動型液晶表示素子の各副画素に印加する電圧を制御する第1制御部と、前記パッシブ駆動型液晶表示素子の各セグメント表示電極とコモン電極間に印加する電圧を制御する第2制御部とを含む制御回路と、
を備え、
前記アクティブ駆動型液晶表示素子、前記パッシブ駆動型液晶表示素子、前記表面側偏光子、前記裏面側偏光子の特性が電圧無印加状態でノーマリブラック状態になるように設定されており、
前記セグメント表示が行われる時に、駆動されるセグメント表示電極の外側の領域に重なる前記アクティブ駆動型液晶表示素子の画素に含まれる副画素を部分的に駆動し、部分的に駆動しないことによって前記駆動されるセグメント表示電極の外側の領域に重なる画素を駆動しない時と比べ、異なるカラーないし
中間階調を表示できることを特徴と
し、
前記セグメント表示が行われる時に、前記アクティブ駆動型液晶表示素子において駆動される画素は、前記セグメント電極の境界の外側領域に含まれる画素と前記セグメント表示電極の境界を跨ぐ画素である、
液晶表示装置
が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1-1】
図1Aは基本構造による積層構造液晶表示装置において下側に配置されるセグメント表示部を有するパッシブ駆動液晶表示素子LCD1を示す平面図であり、
図1Bは基本構造による積層構造において上側に配置されるドットマトリクス表示部を有するアクティブ駆動液晶表示素子LCD2を示す平面図であり、
図1Cは矩形状画素が上下左右方向に規則的に配置されたドットマトリクス表示部の画素Pxの配列を示す平面図である。
【
図1-2】
図1Dはドットマトリクス表示部の各矩形状画素Px内の3色(R,G,B)カラーフィルタCFr、CFg、CFbを備えた副画素SPr、SPg、SPbの組を示す平面図、
図1Eは各副画素SPの構成を示す等価回路図、
図1Fは積層構造を含む液晶表示装置の断面構造を示す断面図、
図1Gは画素内の副画素組の配置が異なる他の例を示す平面図である。
【
図2】
図2Aは
図1Fに示す積層構造を簡略化して示す断面図、
図2Bは偏光子と液晶分子配向方向がなす角度および液晶層のリターデーションの関数として液晶表示素子の光透過率を示す数式である。
【
図3】
図3Aは、セグメント表示電極SEの例である電極「A」を示す平面図、
図3Bは、セグメント電極「A」と重ねて配置されるドットマトリクス電極DMEの構成例を示す平面図である。
【
図4-1】
図4Aはパッシブ素子領域のセグメント表示電極外の領域をOFF状態と考え、OFF状態のセグメント表示電極SEと重なって配置されるドットマトリクス電極DMEのON/OFFによって変化する出射光を示す概略図、
図4Bはドットマトリクス電極の画素内のRGB副画素のON/OFF状態によって変化する出射光を示す概略図である。
【
図4-2】
図4Cはセグメント表示電極SEの境界を含む領域のドットマトリクス電極DMEの画素をOFFとした時の出射光を示す概略平面図である。
【
図5】
図5はセグメント表示電極SEの境界を含む領域のドットマトリクス電極DMEの画素を中間調表示とした時の出射光分布を示す概略平面図である。
【
図6】
図6は、従来技術による、アクティブマトリクス型のドットマトリクス電極液晶表示素子の前面側にパッシブ駆動型のセグメント液晶表示素子が配置された積層型の液晶表示装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0012】
LCD 液晶表示素子、 LCD1(PE) パッシブ駆動液晶表示素子、 DR1 パッシブ駆動回路、 LCD2(AE) アクティブ駆動液晶表示素子、 Px 画素、 CF カラーフィルタ、 DME ドットマトリクス電極、 CFr 赤色フィルタ領域、 CFg 緑色フィルタ領域、 CFb 青色フィルタ領域、 SP 副画素、 SPE 副画素電極、 TFT 薄膜トランジスタ、 C 蓄積容量、 SE セグメント表示電極、 P1,P2 偏光子、 DR2 アクティブ駆動回路、 10 セグメント表示部、 11,12 ガラス基板、 13 液晶層、 20 ドットマトリクス表示部、 21,22 ガラス基板、 23 液晶層、 24 共通電極、 25 TFTアレイ、 101 積層型の液晶表示装置、 102 ドットマトリクス液晶表示素子、 103 セグメント液晶表示素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、アクティブマトリクス型のドットマトリクス液晶表示素子の裏面側にセグメント表示型のパッシブ駆動型液晶表示素子を積層し、ノーマリブラックモードで動作する液晶表示装置を研究、開発している。積層した液晶表示素子間には偏光子は配置せず、積層した液晶表示素子の両側に直交配置した1対の偏光子を配置する。
【0014】
図1A〜1Fは、基本構造による液晶表示装置の構成を示す平面図、等価回路図、断面図である。
図1Aは、セグメント表示部10を有するパッシブ駆動液晶表示素子LCD1を示す平面図である。有効表示領域内のセグメント表示部10内に、固定形状のセグメント表示電極が配置されている。セグメント表示電極は滑らかに連続した境界を有する。コモン電極はセグメント表示部を内包する面積を有し、例えば共通電位に接続され、セグメント電極とコモン電極間電位により、セグメント表示電極に対応した表示をおこなう。エアコン用表示が例示され、中央部にエアコンの作動状態、左右両側に運転席領域、助手席領域の温度が示されている。
【0015】
セグメント表示電極SEをONにすると、セグメント表示電極SE領域内の液晶層の配向が変化し、リターデーションが変化して、入射光が直交配置した偏光子対を透過して白色表示を示す。セグメント表示電極SE領域外では液晶層の配向が変化せず、リターデーションの変化がなく、入射光は直交配置された偏光子対で遮光され、黒表示となる。従来、セグメント表示電極による表示の背景は黒のみであり、背景をカラー表示する機能はなかった。
【0016】
図1Bは、ドットマトリクス表示部20を有するアクティブ駆動液晶表示素子LCD2を示す平面図である。有効表示部全体にドットマトリクス表示部20が形成されている。ドットマトリクス表示部の一部領域上にセグメント表示部10がオーバーラップする。
【0017】
図1Cは、ドットマトリクス表示部20内の、上下左右方向に規則的に配列された多数の画素Pxの例を示す。矩形状の画素Pxが垂直方向、水平方向に配列されている。各画素はカラーフィルタを備えた複数の副画素を含む。
【0018】
図1Dは、各画素Px内の赤色フィルタ領域CFr、緑色フィルタ領域CFg、青色フィルタ領域CFbを含む副画素SPr、SPg、SPbの配列例を示す。各副画素に対応して副画素電極が配置される。
【0019】
尚、1つの画素Pxが垂直方向に延在する3つの副画素を含む例を示したが、
図1Gに示すように、水平方向に延在する副画素SPr、SPg、SPbの組み合わせとしてもよく、他の形状の副画素の組み合わせとすることもできる。
【0020】
図1Eに示すように、各副画素SPの副画素電極SPEは、蓄積容量Cを備え、画像信号をスイッチングする薄膜トランジスタTFTに接続されている。薄膜トランジスタTFTのゲート電極にスイッチング信号が供給され、オンの期間に画像信号を蓄積容量Cに蓄積し、オフの期間蓄積された画像信号を維持する。尚、副画素電極SPEはカラーフィルタCFで覆われる。ドットマトリクス表示部20の各画素のカラーは任意に設定できる。
【0021】
図1Fに示されるように、例えば単純マトリクス駆動されるセグメント電極を有するパッシブ駆動型液晶表示素子LCD1の上に、TFTを用いてアクティブ駆動されるアクティブ駆動型液晶表示素子LCD2が配置されて積層構造を構成している。パッシブ駆動型液晶表示素子LCD1は、一対のガラス基板11,12の間に液晶層13を備える。アクティブ駆動型液晶表示素子LCD2は、下側ガラス基板21の上に各副画素電極に接続されるTFTアレイ25を備え、上側ガラス基板22の上にカラーフィルタを備えた共通電極24を備え、液晶層23がTFTアレイ25に接続された副画素電極と共通電極24の間に配置されている。
【0022】
パッシブ駆動型液晶表示素子LCD1は、上方に外部接続端子群を有し、パッシブ駆動回路DR1に接続される。アクティブ駆動型液晶表示素子LCD2は、下方に外部接続端子群を備え、アクティブ駆動回路DR2に接続される。パッシブ駆動回路DR1は、パッシブ駆動型液晶表示素子の表示を制御する。アクティブ駆動回路DR2は、第1にパッシブ液晶表示素子のセグメント電極領域外のアクティブ駆動型液晶表示素子の表示を制御し、第2に、後述するように、セグメント表示電極領域と重なる画素内の副画素に印加する電圧を制御する。
【0023】
パッシブ駆動型液晶表示素子LCD1の裏面側に第1の偏光子P1,アクティブ駆動型液晶表示素子LCD2の表面側に第2の偏光子P2が配置されている。1対の偏光子P1,P2は直交配置を構成する。第1の偏光子P1の裏面側にバックライト2が配置されている。積層素子は、電圧無印加時に黒状態になるノーマリブラックモードになるように液晶層配向方向や偏光子配置が設定されている。
【0024】
パッシブ駆動液晶表示素子LCD1の液晶セルとアクティブ駆動液晶表示素子LCD2の液晶セルとして、例えば以下の様な組み合わせが考えられる:
(1)モノドメインまたは2ドメイン配向の90°ねじれTNモードで反対のねじれ方向を有し、液晶層中央の分子配向方位が互いに直交する2つの液晶セル;
(2)モノドメインまたは2ドメイン配向の垂直配向液晶セルで、液晶層中央の分子配向方位が互いに交差する2つの液晶セル;
(3)一方の液晶セルが基板面内で液晶分子がスイッチングするインプレーンスイッチング液晶セルで、他方の液晶セルがモノドメインまたは2ドメイン配向の垂直配向液晶セルで、インプレーンスイッチング液晶セル電圧印加時に両液晶層中央の分子配向方位が互いに交差する2つの液晶セル。
【0025】
パッシブ駆動液晶表示素子LCD1のみが駆動された時は、セグメント電極が駆動され、セグメント電極の表示を行う。アクティブ駆動液晶表示素子のみが駆動された時は、カラーフィルタ付ドットマトリクス電極の駆動された副画素がカラー表示を行う。選択されなかった副画素は入射光を透過させない。両液晶表示素子間に偏光子は配置されていないので、両液晶表示素子が駆動された時は、両液晶表示領域のリターデーションが統合された動作を行う。
【0026】
図2Aは、液晶表示装置の積層構造を示す概略断面図である。セグメント表示電極を有するパッシブ駆動型液晶表示素子LCD1がパッシブ素子PEを構成し、その上方でドットマトリクス電極を有するアクティブ駆動型液晶表示素子LCD2がアクティブ素子AEを構成し、さらにその上方にカラーフィルタCFが配置されている。パッシブ素子PE、アクティブ素子AEは共に液晶素子であり、偏光子を介在させることなく隣接配置されているので、液晶層の機能をまとめて考察することもできる。
【0027】
図2Bは、偏光子を介して液晶素子に光が入射する時の、直交配置された偏光子対の一方の偏光板吸収軸とその間に配置された液晶層の液晶分子配向方向がなす角度φおよび液晶層のリターデーションΔndの関数として液晶素子の光透過率Tを示す数式である。λは光の波長を表す。
図2Aの構成において、パッシブ素子PEの液晶層とアクティブ素子AEの液晶層とのリターデーションは統合して検討してもよい。
【0028】
パッシブ素子PEに電圧を印加してリターデーションによる項がπ/2となれば、透過率Tは極大値を取る。アクティブ素子AEに電圧を印加してリターデーションによる項がπ/2となる時も同様である。但し、パッシブ素子PEとアクティブ素子AEに共に電圧を印加して、π/2ずつのリターデーションを生じさせると、統合したターデーションはπないし0となり、光透過率はゼロとなる。
【0029】
通常、セグメント電極駆動時、パッシブ素子PEのみにON電圧が印加され、アクティブ素子AEはOFF電圧とされる。セグメント電極領域内ではパッシブ素子PEのリターデーションがπ/2変化し、アクティブ素子AE内のリターデーションは変化しない。セグメント電極領域内の液晶層のリターデーションが変化して、入射光が直交偏光子を通過する条件になる。アクティブ素子は入射光を透過させ、カラーフィルタCFから出射光が生じる。パッシブ素子PEのセグメント表示電極領域内にアクティブ素子のRGB副画素が存在し、全副画素がOFFで光透過性の場合、RGBの透過光が生じ、出射光は白色光となる。通常、セグメント電極領域外では、パッシブ素子PEもアクティブ素子AEもリターデーションを変化させず、入射光は直交偏光子で遮光され、遮光性の黒表示となる。
【0030】
図3Aは、セグメント表示電極SEの例として形状Aの電極を示す。
図3Bは、このセグメント表示電極SEに重なって配置されるドットマトリクス電極DMEの一部領域を併せて示す。セグメント表示電極領域内では、電圧印加によりリターデーションが変化し、ドットマトリクス電極DMEは、赤色フィルタ領域CFr、緑色フィルタ領域CFg、青色フィルタ領域CFbに対応する副画素SPr、SPg、SPbを含むが、全ての副画素に電圧が印加されない場合、全副画素が透光性となり、出射光は白色光となる。
【0031】
通常、セグメント表示電極領域外は上述の様に黒表示となる。ドットマトリクス電極DMEの上方にはカラーフィルタCFは存在する。セグメント電極SEの領域外のドットマトリクス電極DME及びカラーフィルタCFを利用して、セグメント表示の外側の領域に色を付与することを考察する。ドットマトリクス電極の各画素は、RGB等の副画素を含む。全副画素に
OFF電圧を印加するとその画素の透過光はゼロになるが、一部の副画素にON電圧を印加し、他の一部の副画素はOFF電圧にすると、
ON電圧の副画素は光を透過し、付随するカラーフィルタの色が付与される。
【0032】
図4Aは、2つの動作状態を示している。左側ではパッシブ素子のセグメント表示電極SE領域外であり、ON電圧は印加されず、OFF電圧状態であり、アクティブ素子のドットマトリクス電極DMEもOFF電圧状態にされる。液晶層のリターデーションは変化せず直交偏光子によって遮光状態(黒表示)にされる。右側ではパッシブ素子のセグメント表示電極SE領域外であり、ON電圧は印加されず、OFF電圧状態であるが、アクティブ素子のドットマトリクス電極DMEではON電圧が印加される。一方の液晶素子のみに電圧が印加されているので、総合液晶層は入射光を透過させ、カラーフィルタCFから色を付与された光が出射する。
【0033】
図4Bは、セグメント表示電極SE領域外のパッシブ液晶層はOFF電圧状態であり、重なり合うドットマトリクス電極DMEの画素内の1組の副画素に印加される電圧が種々のパターンに変化する場合の透過光が形成する色を具体的に示す概略図である。RGB全副画素にOFF電圧が印加されると、出射光は生じない(黒表示となる)。R副画素にはON電圧が印加され、GB副画素にはOFF電圧が印加されると、R副画素のみから出射光が生じ、赤(R)表示となる。G副画素にはON電圧が印加され、RB副画素にはOFF電圧が印加されると、G副画素のみから出射光が生じ、緑(G)表示となる。B副画素にはON電圧が印加され、RG副画素にはOFF電圧が印加されると、B副画素のみから出射光が生じ、青(B)表示となる。
【0034】
2つの副画素を透光性にしてもよい。RG副画素にON電圧が印加され、B副画素にはOFF電圧が印加されると、RG副画素から出射光が生じ、赤(R)と緑(G)が合成されて黄(Y)表示となる。RB副画素にON電圧が印加され、G副画素にはOFF電圧が印加されると、RB副画素から出射光が生じ、赤(R)と青(B)が合成されてマゼンタ(M)表示となる。GB副画素にON電圧が印加され、R副画素にはOFF電圧が印加されると、GB副画素から出射光が生じ、緑(G)と青(B)が合成されてシアン(C)表示となる。尚、RGB全副画素にON電圧が印加されると、R、G、Bの出射光が生じ、白色(W)表示となる。
【0035】
セグメント表示電極の領域は滑らかな境界を有し、ドットマトリクスの画素は例えば矩形形状であるから、両者の境界は一般的に一致しない。ドットマトリクスの画素領域がセグメント表示電極の境界を跨ぐ場合、セグメント表示電極にON電圧が印加されても、セグメント表示電極領域外にはON電圧は印加されない。
【0036】
図4Cは、パッシブ素子のセグメント表示電極SEにON電圧が印加され、セグメント表示電極SEの外側領域に含まれるアクティブ素子のドットマトリクス電極DMEのB副画素にON電圧が印加された場合を示す概略平面図である。セグメント表示電極SEの領域は、ON電圧を印加されてπ/2のリターデーション変化を生じ、セグメント電極SEと重なるアクティブ素子のドットマトリクス電極はOFF状態に保たれリターデーション変化は起こさないので、統合液晶層のリターデーション変化はπ/2となり、図中横線ハッチングで示すセグメント電極SEの領域は透光性となり、白表示となる。セグメント表示電極SEの外側領域に含まれるアクティブ素子のドットマトリクス電極に対してはB副画素のみにON電圧が印加され、RG副画素は遮光性、B副画素は透光性となり、青表示が行われる。白表示のセグメント表示電極表示の背景として青表示が行われる。
【0037】
但し、セグメント電極の境界(エッジ)を跨ぐドットマトリクス電極には電圧が印加されない。セグメント表示電極内はセグメント表示電極SEへの電圧印加によってリターデーションが変化して白表示されるが、セグメント表示電極外はリターデーションの変化が生じず、遮光状態で暗領域化する現象が生じる。図中、この暗領域化表示を左下がりの斜めハッチングで示す。副画素の分解能が高ければ、外観上は暗領域化を目立たなくできる。
【0038】
図5は、セグメント電極SEの境界を跨ぐドットマトリクス電極の画素を中間調にてスイッチングした表示とする動作を示す。例えば、ドットマトリクス電極のR、G,B各副画素に中間調の電圧を印加する。セグメント電極SE領域内においては、右下がりのハッチングで示す領域で、白色表示の輝度が低下した中間調(灰色)表示となる。セグメント電極SE領域外においては、水平方向のハッチングで示す領域で、暗領域化に代えて中間調(灰色)の表示となり、透過率を向上できる。解像度が低い場合でも良好な表示状態が可能である。
【0039】
尚、中間調表示にカラーを付与することも可能である。セグメント表示領域内を白色表示する場合を説明したが、ドットマトリクス領域は個々に制御可能であり、単色で表示したり、種々の表示をすることも可能である。セグメント表示領域のエッジ付近にシェードをつけることや、セグメント表示領域内にカラーパターンを形成することや、ある方向に向かってグラデーションをつけることもできる。
【0040】
以上、実施例に沿って本願を説明したが、これらは制限的なものではない。例えば例示した形状、色などは例示であって、これらに限るものではない。その他種々の変形、置換、改良等が可能なことは当業者に自明であろう。