特許第6971675号(P6971675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6971675電気モータ用の螺着式ステータフレームおよび関連する製造プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971675
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】電気モータ用の螺着式ステータフレームおよび関連する製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/04 20060101AFI20211111BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H02K5/04
   H02K15/14 Z
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-141645(P2017-141645)
(22)【出願日】2017年7月21日
(65)【公開番号】特開2018-19591(P2018-19591A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2020年6月22日
(31)【優先権主張番号】1657056
(32)【優先日】2016年7月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】313011906
【氏名又は名称】アルストム トランスポート テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ・ラガン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ピエール・ランバール
(72)【発明者】
【氏名】ガエタン・トリマイユ
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第10129172(DE,A1)
【文献】 中国実用新案第206962583(CN,U)
【文献】 特開2006−141118(JP,A)
【文献】 特開2006−271061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
H02K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳鉄製の2つのプレート(12)と、
両プレート(12)を連結する、2つのねじ山付き端部(30)をそれぞれが有する少なくとも1つの鋼棒(14)と
を備える、モータステータフレーム(10)において、
前記フレーム(10)は、少なくとも1つのねじ山付きブシュ(22)をさらに備えることと、前記プレート(12)のそれぞれが、各ねじ山付きブシュ(22)を受けるための少なくとも1つのオリフィス(20)を備え、各棒(14)の前記ねじ山付き端部(30)は、前記ねじ山付きブシュ(22)に係入されることとを特徴とする、モータステータフレーム(10)。
【請求項2】
鋳鉄製の各プレート(12)の各オリフィス(20)が、貫通オリフィスであり、前記プレート(12)の内側面(19A)および外側面(19B)上へと開口する、請求項1に記載のフレーム(10)。
【請求項3】
各オリフィス(20)が、前記プレート(12)の前記内側面(19A)上へと開口する内側セグメント(23)と、前記プレート(12)の前記外側面(19B)上へと開口する外側セグメント(24)とを備え、前記内側セグメント(23)は、前記外側セグメント(24)の直径よりも小さな直径を有し、前記オリフィス(20)に係入される前記ねじ山付きブシュ(22)は、前記オリフィス(20)に対して相補的なショルダ(28)を有する、請求項2に記載のフレーム(10)。
【請求項4】
各ねじ山付きブシュ(22)が、前記オリフィス(20)を備える前記プレート(12)の前記外側面(19B)と同一平面に位置する、請求項1から3のいずれか一項に記載のフレーム(10)。
【請求項5】
各棒(14)の各端部(30)が、前記外側面(19B)と同一平面に位置する、請求項4に記載のフレーム(10)。
【請求項6】
各棒(14)の各端部(30)が、端部フランジを装着するためのねじを受けるねじ山付きオリフィス(32)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のフレーム(10)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のフレーム(10)を製造するための方法であって、
少なくとも1つのオリフィス(20)を有する鋳鉄製の2つのプレート(12)を用意するステップと、
2つのねじ山付き端部(30)を有する少なくとも1つの鋼棒(14)を用意するステップと、
ねじ山付きブシュ(22)を用意するステップと、
各プレート(12)の各オリフィス(20)に前記ねじ山付きブシュ(22)の中の1つを挿入するステップと、
前記プレート(12)の前記オリフィス(20)の中の1つに配置された前記ねじ山付きブシュ(22)の中の1つの中に各棒(14)の各ねじ山付き端部(30)を螺入するステップと
を含む、方法。
【請求項8】
各オリフィス(20)に外側セグメント(24)を形成するために各プレートの前記外側面(19B)に穿孔するステップであって、前記外側セグメント(24)は、前記ねじ山付きブシュ(22)を定位置に維持するために各ねじ山付きブシュ(22)のショルダ(28)と協働することが可能である、ステップを含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ねじ山付きブシュ(22)および前記棒(14)の前記端部(30)を前記プレート(12)の前記外側面(19B)と同一平面におくために、各ねじ山付きブシュ(22)の締め付けヘッド(29)を均一高さにするステップを含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
少なくとも1つの棒(14)の各端部(30)に端部フランジを装着するためのねじを受けるためにねじ山付きオリフィス(32)を穿孔するステップを含む、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳鉄製の2つのプレートと、両プレートを連結する、2つのねじ山付き端部をそれぞれが有する少なくとも1つの鋼棒とを備えるモータステータフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
このステータフレームは、電気モータ、特に鉄道車両の推進に関与する電気モータのロータを受けるように意図される。
【0003】
一般的に、鉄道車両は、ボギー台車上に位置決めされ車輪を駆動するこのタイプの複数のモータを備える。車輪を駆動するために、電気モータは、車両の発電機により生成されたまたは電源ケーブルから直接供給された電力を回転運動へと変換する。
【0004】
一般的に、これらのモータは、回転部分すなわちロータと、フレーム内に装着された固定部分すなわちステータとから構成され、フレームは、保護的役割および絶縁的役割を果たし、モータを冷却するための回路を受ける。
【0005】
フレームは、一般的には強度を最大化するために鉄合金製、例えば鋳鉄製または鋼製の金属ケーシングである。かかるモータフレームを製造するための複数の方法が知られている。
【0006】
第1の方法は、一般的には鋳鉄製である単一パーツにフレームを鋳造することからなり、これは、特にコストに関して有利となる。さらに、単一パーツのフレームは、より剛性かつ硬質である。しかし、このように得られた構造物は、重くかさばる。
【0007】
フレームの質量を軽減するために、特に平行棒により連結された2つの端部プレートを備える、相互に溶接された複数のパーツからなる構造物を使用することが知られている。かかる構造物の抵抗がより低くなる点を補償するために、鋼がその構造物の作製のために一般的に使用されるが、これは、フレームの製造コストを大幅に増加させる。さらに、複数の溶接されたパーツから構成されるフレームは、溶接領域の冷却により発生する内部拘束効果の下で歪みを被る可能性がより高い。これらの歪みは、ステータに伝播する場合があり、これが、高温箇所の形成または磁気アンバランスにより電気モータの適切な動作に対して有害となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、かさばりを少なく保ちつつ、耐歪性がより高くより安価なモータステータフレームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これを目的として、本発明は、前述のタイプのモータステータフレームであって、少なくとも1つのねじ山付きブシュをさらに備えることと、プレートのそれぞれが、各ねじ山付きブシュのための座部として使用される少なくとも1つのオリフィスを備え、各棒のねじ山付き端部が、ねじ山付きブシュに係入されることとを特徴とする、モータステータフレームに関する。
【0010】
かかるフレームは、単体片で製造されず、それによりあまり大きくない構造体を有するため、鋳鉄製の鋳造フレームに比べてかさばりの点で有利である。また、フレームは、プレートなどの殆どの大型パーツが鋳鉄製であるため、共に溶接された鋼パーツから作製されたフレームよりも安価である。
【0011】
特定の実施形態によれば、本発明によるモータステータフレームは、以下の特徴の中の1つまたは複数を個別にまたは任意の技術的に可能な組合せにしたがって有する。
鋳鉄製の各プレートの各オリフィスが、貫通オリフィスであり、プレートの内側面および外側面上へと開口する。
各オリフィスが、プレートの内側面上へと開口する内側セグメントと、プレートの外側面上へと開口する外側セグメントとを備え、内側セグメントは、外側セグメントの直径よりも小さな直径を有し、オリフィスに係入されるねじ山付きブシュは、オリフィスに対して相補的なショルダを有する。
各ねじ山付きブシュが、オリフィスを備えるプレートの外側面と同一平面に位置する。
各棒の各端部が、外側面と同一平面に位置する。
各棒の各端部が、端部フランジを装着するためのねじを受けるねじ山付きオリフィスを有する。
【0012】
また、本発明は、フレームを製造するための方法であって、
少なくとも1つのオリフィスを有する鋳鉄製の2つのプレートを用意するステップと、
2つのねじ山付き端部を有する少なくとも1つの鋼棒を用意するステップと、
ねじ山付きブシュを用意するステップと、
各プレートの各オリフィスにねじ山付きブシュの中の1つを挿入するステップと、
プレートの1つのオリフィスの中の1つに配置されたねじ山付きブシュの中の1つの中に各棒の各ねじ山付き端部を螺入するステップと
を含む、方法に関する。
【0013】
特定の実施形態によれば、本発明による方法は、以下の特徴の中の1つまたは複数を個別にまたは任意の技術的に可能な組合せにしたがって有する。
本方法は、各オリフィスに外側セグメントを形成するために各プレートの外側面に穿孔するステップであって、前記外側セグメントが、前記ねじ山付きブシュを定位置に維持するために各ねじ山付きブシュのショルダと協働することが可能である、ステップを含む。
本方法は、ねじ山付きブシュおよび棒の端部をプレートの外側面と同一平面におくために、各ねじ山付きブシュの締め付けヘッドを均一高さにするステップを含む。
本方法は、少なくとも1つの棒の各端部に端部フランジの装着ねじを受けるためのねじ山付きオリフィスを穿孔するステップを含む。
【0014】
本発明は、専ら一例として提示され添付の図面を参照とする以下の説明を読むことによりさらによく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明によるモータステータフレームの斜視図である。
図2】ねじ山付きブシュを受ける図1のフレームのプレートの部分の断面図である。
図3】鋼棒を受ける図2のねじ山付きブシュの断面図である。
図4】ヘッドが均一高さにされた、図2のねじ山付きブシュの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すモータステータフレーム10は、2つの実質的に平行なプレート12と、両プレート12を連結する少なくとも1つの棒14とを備える。有利には、フレーム10は、2つのプレート12間をクランプ固定することにより組み付けられ、電気モータのステータ18を収容および保護することが可能な側壁部16を備える。
【0017】
これらのプレート12は、鋳鉄で鋳造され、実質的に平坦状であり、内側面19Aおよび外側面19Bを有する。さらに、両プレート12は、少なくとも1つの貫通オリフィス20を備える。貫通オリフィスは、各オリフィス20が、その両端部にて開口し、プレート12の内側面19A上へとおよび外側面19B上へと開口していることを意味する。さらに、各プレート12は、ほぼ円形の中央開口部21を備え、それによりフレーム10内へのロータの通過を可能にする。
【0018】
各オリフィス20は、プレート12に穿孔され、円形断面を有する。さらに、各オリフィス20は、ねじ山付きブシュ22を受ける。さらに、各オリフィス20は、プレート12の内側面19A上へと開口する内側セグメント23と、プレート12の外側面19B上へと開口する外側セグメント24とから構成される。内側セグメント23の直径は、外側セグメント24の直径よりも小さい。内側セグメント23および外側セグメント24は、同軸状であり、それらの接合は、両セグメントの軸に対して実質的に直交するエッジ25上において実現される。
【0019】
ねじ山付きブシュ22は、実質的に円筒状の鋼ブシュであり、オリフィス20内への導入に適合化された断面を有する。ブシュ22は、一方の第1の端部に開口した中央ねじ山付き導管26を、ならびに第2の端部にショルダ28および締め付けヘッド29を有する。ねじ山付き中央導管26の長さは、プレート12の厚さに少なくとも等しく、すなわちオリフィス20における内側面19Aと外側面19Bとの間の距離に少なくとも等しい。
【0020】
ブシュ22は、図2に示すように、オリフィス20の内側セグメント23と外側セグメント24との間の接合エッジ25上に支持されるようにブシュ22のショルダ28を配置するために、外側面19Bの側においてオリフィス20に係入される。
【0021】
各棒14は、円形断面を有する引抜機タイプのものであり、鋼製である。さらに、棒14は、2つのねじ山付き端部30を有し、各端部30は、ブシュ22のねじ山付き中央導管26に係入される。
【0022】
有利には、ねじ山付きブシュ22内に係入される端部30の螺合長さは、図3に示すように、棒14の端部30をプレート12の外側面19Bと同一平面におくために、中央導管26の長さと少なくとも等しい。
【0023】
したがって、各棒14の各端部30は、ねじ山付きブシュ22の中の1つのねじ山付き中央導管26に螺入され、前記ブシュは、外側セグメント24にブシュ22のショルダ28を相互作用させることによりオリフィス20内に固定される。
【0024】
各ねじ山付きブシュ22の締め付けヘッド29は、図4に示すように、ねじ山付きブシュ22および棒14の端部30がプレート12の外側面19Bと同一平面におかれるように、均一高さにされる。
【0025】
有利には、棒14の中の少なくとも1つの各端部30が、図4に示すように棒14に穿孔されたねじ山付き開口部32を有する。このねじ山付き開口部32は、プレート12の円形開口部を閉じそれによりフレーム10内に収容されたロータを保護する端部フランジを装着するためのねじを受けることが可能である。
【0026】
したがって、図1に示す例のフレーム10は、2つのプレート12を備え、各プレート12は、プレート12の角に位置するペア状に分布した8つのオリフィス20を備える。また、フレーム10は、両プレート12を連結する8つの棒14を備え、8つの棒14は、相互に実質的に平行であり、側壁部16の周囲に分布する。有利には、側壁部16は、図1に示すように棒14を貫通する長手方向導管を有する。
【0027】
次に、フレーム10を製造するための方法を説明する。
【0028】
この方法は、以下の予備ステップ、すなわち
鋳鉄で2つのプレート12を鋳造するステップであって、各プレート12が、内側面19Aおよび外側面19Bを有する、ステップと、
プレート12に少なくとも1つのオリフィス20を穿孔し、各オリフィス20に外側セグメント24を穿孔して、プレート12の外側面19B上へと開口させるステップと、
2つのねじ山付き端部30を有する少なくとも1つの鋼棒14を用意するステップと、
第1の端部に位置するねじ山付き導管26と、他方の端部に位置するショルダ28および締め付けヘッド29とを有する、オリフィス20内に配置され得る鋼製の少なくとも1つのねじ山付きブシュ22を用意するステップと
を含む。
【0029】
次いで、両プレート12は、側壁部16の両側に位置決めされる。各オリフィス20は、プレート12の外側面19Bの側から導入されるねじ山付きブシュ22を受け、ブシュ22のショルダ28は、オリフィス20の外側セグメント24と協働する。各棒14の各端部30は、ねじ山付きブシュに係入され、各ブシュ22のねじ山付き導管26内への各端部30の締め付けにより、側壁部16の各側における両プレート12のクランプ固定が確保される。
【0030】
有利な一実施形態によれば、次いで、プレート12の外側面19Bは、外側面19Bにおいてねじ山付きブシュ22および端部30が鋼製の棒14と同一平面におかれるように余剰材料を除去することにより、ねじ山付きブシュ22の締め付けヘッド29を均一高さにすることによって平坦化される。
【0031】
最後に、本方法は、各棒14の各端部28にねじ山付き開口部32を穿孔するためのステップを含み、ねじ山付き開口部32は、端部フランジを装着するためのねじを後に受ける。
【符号の説明】
【0032】
10 モータステータフレーム
12 プレート
14 鋼棒
16 側壁部
18 ステータ
19A 内側面
19B 外側面
20 貫通オリフィス
21 中央開口部
22 ねじ山付きブシュ
23 内側セグメント
24 外側セグメント
25 エッジ
26 中央ねじ山付き導管
28 ショルダ
29 締め付けヘッド
30 ねじ山付き端部
32 ねじ山付き開口部
図1
図2
図3
図4