特許第6971689号(P6971689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6971689-移動型X線診断装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971689
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】移動型X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   A61B6/00 311
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-150428(P2017-150428)
(22)【出願日】2017年8月3日
(65)【公開番号】特開2019-25220(P2019-25220A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 利多
(72)【発明者】
【氏名】石井 誠
(72)【発明者】
【氏名】有川 信弘
(72)【発明者】
【氏名】植松 博明
(72)【発明者】
【氏名】伊東 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】野地 隆史
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−508011(JP,A)
【文献】 特開2015−156896(JP,A)
【文献】 特開2016−036670(JP,A)
【文献】 特開2006−087595(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/174554(WO,A1)
【文献】 特開2009−183368(JP,A)
【文献】 特開2004−041698(JP,A)
【文献】 特開2014−213091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に操作されて移動する時に用いられる収納形状とX線による撮像の時に用いられる展開形状との2つの形状のいずれかで用いられる移動型X線診断装置であって、
装置本体に設けられた駆動輪と、
前記駆動輪に対し、前記使用者による操作を補助する補助駆動力を印加する駆動部と、
前記装置本体の進行方向の前方の障害物までの距離を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記障害物までの距離に応じて、前記移動型X線診断装置と前記障害物との衝突を防止するよう前記補助駆動力を変化させる駆動力制御部と、
を備えた移動型X線診断装置。
【請求項2】
前記駆動力制御部は、
前記駆動輪の回転量から現在の速度を求め、前記現在の速度と、前記検出部により検出された前記障害物までの距離と、にもとづいて、前記移動型X線診断装置と前記障害物との衝突までの時間が短いほど前記補助駆動力を小さくする、
請求項1記載の移動型X線診断装置。
【請求項3】
前記収納形状において進行方向の前方を撮像するカメラを更に備え、
前記検出部は、前記カメラが撮像したカメラ画像にもとづいて前記障害物までの距離を検出する、
請求項に記載の移動型X線診断装置。
【請求項4】
前記カメラ画像を表示する表示装置、
をさらに備えた請求項記載の移動型X線診断装置。
【請求項5】
前記撮像時に被検体にX線を照射するX線管と、
前記装置本体の前記進行方向の前側に立設され、前記カメラが設けられた支柱と、
一端が前記支柱に支持されるとともに、他端で前記X線管を支持するアームと、
前記進行方向の後側に握持部分が位置するよう設けられたハンドルと、
をさらに備え、
前記X線管は、
前記収納形状において前記装置本体の前記ハンドル側に位置するとともに前記ハンドルよりも鉛直方向の上方に位置し、
前記表示装置は、
前記X線管の筐体外面または前記X線管のカバー外面に位置する、
請求項記載の移動型X線診断装置。
【請求項6】
前記表示装置は、表示部および入力部を有するタブレットコンピュータであり、
前記収納形状において前記タブレットコンピュータを着脱自在に載置可能なように、前記X線管の筐体外面または前記X線管のカバー外面に取り付けられた端末ホルダ、
をさらに備えた請求項記載の移動型X線診断装置。
【請求項7】
前記端末ホルダは、
前記収納形状において前記タブレットコンピュータを着脱自在に載置可能なように、前記収納形状における前記X線管の筐体外面の前記進行方向の後側の位置または前記X線管のカバー外面の前記進行方向の後側の位置に取り付けられた、
請求項記載の移動型X線診断装置。
【請求項8】
前記タブレットコンピュータは、
前記撮像時には前記端末ホルダから取り外されて利用される、
請求項または記載の移動型X線診断装置。
【請求項9】
前記タブレットコンピュータの前記入力部は、
前記撮像時において、X線撮像の撮像条件の設定を受け付け、
前記装置本体は、
前記撮像条件の設定にもとづいてX線撮像を行なうよう前記X線管を制御する、
請求項記載の移動型X線診断装置。
【請求項10】
前記タブレットコンピュータの前記表示部は、
前記撮像時において、X線撮像にもとづくX線画像を表示する、
請求項または記載の移動型X線診断装置。
【請求項11】
前記タブレットコンピュータの前記表示部は、
外部装置から取得された医用画像を表示する、
請求項ないし10のいずれか1項に記載の移動型X線診断装置。
【請求項12】
前記タブレットコンピュータの前記表示部は、
前記撮像時において、X線撮像の準備が完了したか否かを含むX線撮像の進捗状況を表示する、
請求項ないし11のいずれか1項に記載の移動型X線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、移動型X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置には、検査室に固設されず、自由に移動可能に構成された移動型X線診断装置がある。移動型X線診断装置は、固設型のX線診断装置にとは異なり、病室で利用することができるため、ユーザにとって非常に利便性が高い。
【0003】
しかし、移動型X線診断装置は、所定のサイズを有する。このため、ユーザが移動型X線診断装置を後ろから押して移動させる場合、移動型X線診断装置そのものによって、ユーザの前方の視野に死角が生じてしまう。したがって、たとえば病院内で移動型X線診断装置を移動させるユーザは、死角に存在しうる人などの障害物に細心の注意を払わなければならず、大きな負担を強いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−183368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、移動型X線診断装置の移動時において安全な移動を支援することができる移動型X線診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る移動型X線診断装置は、上述した課題を解決するために、使用者に操作されて移動する時に用いられる収納形状とX線による撮像の時に用いられる展開形状との2つの形状のいずれかで用いられる移動型X線診断装置であって、装置本体に設けられた駆動輪と、前記駆動輪に対し、前記使用者による操作を補助する補助駆動力を印加する駆動部と、前記装置本体の進行方向の前方の障害物を検出する検出部と、前記検出部による検出結果にもとづいて前記補助駆動力を制御する駆動力制御部と、を備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る移動型X線診断装置の収納形状の一例を示す概略的な外観図、(b)は展開形状の一例を示す概略的な外観図。
図2】タブレットの内部構成例および処理回路のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図。
図3】移動型X線診断装置の移動時において、障害物の検出に応じてモータの駆動力を自動制御することにより、安全な移動を支援する際の手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る移動型X線診断装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本発明の一実施形態に係る移動型X線診断装置は、使用者に操作されて移動する時に用いられる収納形状と、X線による撮像の時に用いられる展開形状と、の2つの形状のいずれかで用いられる。
【0009】
図1(a)は本発明の一実施形態に係る移動型X線診断装置10の収納形状の一例を示す概略的な外観図であり、(b)は展開形状の一例を示す概略的な外観図である。
【0010】
図1(a)および(b)に示すように、移動型X線診断装置10は、支柱11、アーム12、X線管13、X線可動絞り14、前輪15、後輪16、ハンドル17および装置本体18を有する。
【0011】
支柱11は、たとえば棒状部材により形成され、装置本体18の進行方向の前側(前輪15側)に立設される。
【0012】
アーム12は、樹脂や金属などにより形成され、一端を支柱11に支持されるとともに、他端でX線管13およびX線可動絞り14を支持する。アーム12は、図1(a)に示す収納形状と、図1(b)に示す展開形状のそれぞれに対応する2つの位置でX線管を位置決め可能なように、支柱11に支持される。X線管13は、収納形状では支柱11よりも後側に位置する一方、展開形状では支柱11よりも前側に位置する。
【0013】
また、アーム12は、支柱11に沿って上下に自在にスライド可能に連結されてもよい。たとえば、支柱11がレールを有し、アーム12の一端がレールと連結されてレール上を移動することにより、アーム12を上下にスライドさせることができる。また、アーム12は、支柱11の長軸に直交する方向に伸縮可能に構成されてもよい。この場合、アーム12は、収納形状においてX線管13が後側に突き出ないように、支柱11の長軸に直交する方向に収縮させて収納形状とすることができるとともに、X線画像の撮影時にはX線管13をより遠くに到達させるように、伸張させて展開形状とすることができる。なお、スライド動作および伸縮動作は、収納形状においては禁止されることが好ましい。
【0014】
たとえば、病室に移動すると、ユーザは、長手方向を軸に支柱11を旋回させて、X線管13およびX線可動絞り14を装置本体18の前方に向ける(図1(b)参照)。そして、アーム12が支柱11の長軸に直交する方向に伸縮可能に構成される場合は、ユーザは、アーム12を伸ばし、被検体(患者など)の撮影部位にX線が照射される位置にX線管13を配置することにより、移動型X線診断装置10を展開形状とする。また、ユーザは、X線可動絞り14に備えられたスイッチやつまみなどを用いて、撮影部位が照射野に入るように調節する。そして、FPD(Flat Panel Detector)や、カセッテなどの画像記録媒体が患者の撮像部位とベッドとの間にセットされ、X線撮像が実行される。
【0015】
このように、移動型X線診断装置10は、収納形状で病室や手術室などに移動され、展開形状で撮影部位に対してX線管13の位置および照射野が調整されてX線画像を撮像する。
【0016】
X線管13は、装置本体18に含まれる高電圧発生装置により電圧を印加されてX線を発生する。X線可動絞り14は、X線管13によって発生されたX線の照射野を調整する機構を有する。具体的には、X線可動絞り14は、たとえば2対の可動羽根を有し、各対の可動羽根が開閉することでX線の照射野を調整する。
【0017】
支柱11には、装置本体18の進行方向の前方の障害物を検出するための、レーダーやソナー、カメラ21などのデバイスが設けられる。この種のデバイスとしてカメラ21を備える場合、ユーザは、装置本体18の進行方向の前方の様子を画像で確認することができる。
【0018】
図1には、装置本体18の進行方向の前方を撮像するカメラ21が支柱11に設けられる場合の例を示した。カメラ21は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサにより構成され、移動型X線診断装置10の進行方向前方の画像を撮像する。
【0019】
また、カメラ21には、広画角撮像を可能とするよう広角レンズや魚眼レンズが取り付けられてもよい。また、複数のカメラ21を用いることにより、広範な周囲画像を取り込むようにしてもよい。また、後述する障害物検出方法として、ステレオカメラによる視差値にもとづいて画像内の特徴点までの距離を検出する方法を用いる場合には、カメラ21としてステレオカメラを用いてもよい。
【0020】
また、カメラ21を備える場合、移動型X線診断装置10は、カメラ21の撮像した前方の画像を表示する表示装置を備えてもよい。カメラ21の撮像画像を表示する表示装置は、カメラ21と直接通信することにより、あるいは装置本体18の処理回路30を介して、カメラ21の撮像画像を取得可能に構成され、取得した画像を表示するディスプレイを備えた装置であれば、どのような装置を用いてもよい。
【0021】
図1(a)に示すように、アーム12の端部に設けられたX線管13は、収納形状においてハンドル17側、すなわちユーザ側に位置するとともに、ハンドル17よりも鉛直方向の上方に位置する。このため、カメラ21の撮像画像を表示する表示装置をX線管13の筐体外面に設けることで、ハンドル17を利用するユーザのカメラ21の撮像画像の視認性が向上する。なお、X線管13がカバーにより覆われている場合は、表示装置はX線管13のカバー外面に設けられるとよい。
【0022】
本実施形態では、移動型X線診断装置10がカメラ21を備え、X線管13のカバー外面上の、収納形状における進行方向の後側に取り付けられた端末ホルダ22を備え、この端末ホルダ22に着脱自在に載置されるタブレットコンピュータ(以下、タブレットという)23のディスプレイが、カメラ21の撮像した前方の画像を表示する表示装置として動作する場合の例を示す。
【0023】
ハンドル17は、ユーザが移動型X線診断装置10を移動させる際にユーザによって握持される握持部分を有し、この握持部分が収納形状において進行方向の後側に位置するよう装置本体18に設けられる。ユーザは、たとえばハンドル17の握持部を両手で持って押したり引いたりすることによって、進行方向の前方に移動型X線診断装置10を移動させる。
【0024】
前輪15および後輪16は、装置本体18の下部に設けられた車輪である。前輪15は、旋回自在の車輪であり、例えば、一対のキャスターなどにより構成される。後輪16は、モータ19などの駆動装置に連結された駆動輪であり、ユーザによる操作に応じて駆動する。
【0025】
駆動装置の一例としてのモータ19は、装置本体18の処理回路30により制御されて、ユーザによる移動型X線診断装置10の移動操作を補助するよう、駆動輪である後輪16に対して補助駆動力を印加する。モータ19は、たとえばステータコイルとロータとを有し、装置本体18の内部に支持される。この場合、ロータはたとえばモータ軸に回転一体に設けられ、モータ軸は、後輪16の車輪軸と共通軸をなすように軸方向に並んで設けられる。モータ19のロータの回転駆動力は、モータ軸からたとえば遊星ギアで減速されて車輪軸に伝達され、さらに、動力伝達部材を介してホイールハブに伝達され、後輪16を駆動させる。
【0026】
たとえば、ハンドル17に設けられた圧力センサによって所定の圧力が検知された場合や、ハンドル17付近に配置された駆動ボタンが押下された場合に、装置本体18の処理回路30に制御されて、モータ19が後輪16の回転を補助するように駆動され、このモータ19の補助駆動力が後輪16に印加される。一般に移動型X線診断装置10は重量が大きいが、このようにモータ19の補助駆動力によって押引き操作が補助されるため、ユーザは小さな力で移動型X線診断装置10を動かすことができる。
【0027】
装置本体18は、移動型X線診断装置10の各部を制御するプロセッサにより構成される処理回路30、各種データを記憶する記憶回路31、外部から供給される電力を蓄電し各部材に電力供給するためのバッテリ32、種々の操作を受け付ける入力回路33、種々の情報を表示するディスプレイ34、および通信回路35などを有する。ディスプレイ34は、カメラ21の撮像した前方の画像を表示するための表示装置として用いられてもよい。
【0028】
記憶回路31は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。バッテリ32は、2次電池により構成され、たとえば移動型X線診断装置10の待機時においてバッテリ32の蓄電容量に応じて充電される。入力回路33は、たとえばキーボード、タッチパネル、トラックボール、テンキー、音声入力回路、視線入力回路などの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に応じた入力信号を処理回路30に出力する。ディスプレイ34は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、処理回路30の制御に従ってX線画像などの各種情報を表示する。通信回路35は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装し、この各種プロトコルに従って移動型X線診断装置10とタブレット23や外部の画像サーバとを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続などを適用することができる。ここで電子ネットワークとは電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線LAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。たとえば、処理回路30はネットワークを介して画像サーバなどから医用画像を取得してディスプレイ34やタブレット23に表示させてもよい。
【0029】
なお、入力回路33およびディスプレイ34は、その機能をタブレット23に実行させる場合には、不要である。
【0030】
装置本体18の処理回路30は、移動型X線診断装置10の駆動輪である後輪16のアシスト量制御処理およびX線画像の撮影に関する各種処理の制御を実行するプロセッサである。たとえば、処理回路30は、ユーザの指示に従って、画像データ生成処理や、画像処理、あるいは解析処理などを制御する。また、処理回路30は、ハンドル17に備えられた圧力センサによって検知された圧力や、押下ボタンによって受け付けられた操作に応じて、後輪16に印加されるモータ19の補助駆動力を制御することで後輪16の回転を補助する量(後輪16のアシスト量)を変化させる。
【0031】
図2は、タブレット23の内部構成例および処理回路30のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図である。
【0032】
図2に示すように、タブレット23は、入力回路41、ディスプレイ42、記憶回路43、通信回路44および処理回路45を有する。
【0033】
タブレット23の入力回路41は、たとえばタッチセンサにより構成される。タッチセンサは、ユーザによるタッチセンサ上の指示位置の情報をタブレット23の処理回路45に与える。たとえば投影型の静電容量方式のパネルにより構成される場合、タッチセンサは、縦横に配置した電極列を有する。この場合、タッチセンサは、接触物の接触位置付近の静電容量の変化に応じた電極列の出力変化にもとづいて接触位置を取得することができる。入力回路41は、たとえば展開形状におけるX線撮像時に、X線撮像の撮像条件の設定を受け付ける。この場合、処理回路30は、タブレット23を介して受け付けた撮像条件の設定にもとづいてX線撮像を行なうようX線管13を制御する。
【0034】
ディスプレイ42は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、処理回路45に制御され、収納形状においてカメラ21の撮像した前方の画像を表示する。また、ディスプレイ42は、展開形状におけるX線撮像時に、X線画像にもとづくX線画像や画像サーバなどの外部装置から取得された医用画像などを表示してもよい。
【0035】
記憶回路43は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。通信回路44は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装し、この各種プロトコルに従って、上述の電子ネットワークを介してタブレット23と移動型X線診断装置10や外部の画像サーバとを接続する。
【0036】
処理回路45は、プロセッサおよび記憶回路を少なくとも有し、この記憶回路に記憶されたプログラムに従って、収納形状においてカメラ21の撮像した前方の画像をディスプレイ42に表示させる。
【0037】
また、図2に示すように、装置本体18の処理回路30のプロセッサは、カメラ画像取得機能51、障害物検出機能52、駆動力制御機能53、およびX線撮像制御機能54を実現する。これらの各機能51−54は、それぞれプログラムの形態で記憶回路に記憶されている。
【0038】
カメラ画像取得機能51は、カメラ21からカメラ21の撮像した前方の画像を取得する。また、カメラ画像取得機能51は、この取得したカメラ画像を、カメラ21の撮像した前方の画像を表示する表示装置に表示させる。この表示装置は、図2に示す例では、装置本体18のディスプレイ34およびタブレット23のディスプレイ42の少なくとも一方である。なお、移動型X線診断装置10が装置本体18の進行方向の前方の障害物を検出するためのデバイスとしてレーダーやソナーなどを備え、カメラ21を備えない場合は、カメラ画像取得機能51は省略されてもよい。
【0039】
障害物検出機能52は、移動型X線診断装置10の進行方向の前方の障害物を検出する。このとき、障害物検出機能52は、障害物の有無に加え、障害物までの距離を検出してもよい。
【0040】
この種の対象物検出方法としては、たとえば移動型X線診断装置10がカメラ21を備える場合は、カメラ21の画像から特徴点を抽出し、車両からの距離等の属性(特徴量)が同一の特徴点をグルーピングする方法などが挙げられる。特徴量を検出する方法としては、レーダーやソナーなどのセンサで距離を検出する方法や、画像の画素値から検出する方法などがある。
【0041】
以下の説明では、移動型X線診断装置10がカメラ21を備え、障害物検出機能52が、カメラ21により取得された画像から特徴量を検出する場合の例を示す。画像から特徴量を検出する方法としては従来各種のものが知られており、これらのうち任意のものを使用することが可能である。たとえば、画像から特徴量を検出する方法として、ステレオカメラによる視差値にもとづいて画像内の特徴点までの距離を検出する方法や、画像内の特徴点に対応する動きベクトルを検出する方法が知られている。また、動きベクトルの検出方法は、勾配法や、ブロックマッチング等の画像処理による方法が知られている。
【0042】
駆動力制御機能53は、ユーザの操作に応じてモータ19を制御することにより、走行のアシストを行なう機能を有する。たとえば、ハンドル17に圧力センサが設けられ、ユーザがハンドル17を持って押したり、引いたりした場合には、装置が押された方向、あるいは引かれた方向への走行を補助することができるように、駆動力制御機能53には、モータ19が後輪16に印加する補助駆動力を制御する、すなわち後輪16のアシスト量を変化させるパワーアシスト制御機能が備えられる。
【0043】
また、駆動力制御機能53は、障害物検出機能52による検出結果にもとづいて後輪16に印加されるモータ19の補助駆動力を制御し、アシスト量を変化させる。具体的には、障害物検出機能52が障害物を検出した旨の信号を出力すると、駆動力制御機能53は、自動的にモータ19の補助駆動力を制御する。
【0044】
また、障害物検出機能52が障害物までの距離を出力する場合は、駆動力制御機能53は、現在の後輪16の回転量から現在の速度を求め、現在の速度と障害物までの距離にもとづいて、移動型X線診断装置10と障害物との衝突を未然に防止するように、モータ19の補助駆動力制御を行なうとよい。この場合、駆動力制御機能53は、移動型X線診断装置10と障害物との距離が閾値より離れていればアシスト機能オンにして移動型X線診断装置10の走行を補助する一方、閾値以下であればアシスト機能をオフにして移動型X線診断装置10の走行の補助を中止してもよい。また、駆動力制御機能53は、移動型X線診断装置10と障害物との距離に応じてアシスト量を変化させてもよい。
【0045】
また、駆動力制御機能53は、障害物検出機能52による検出結果にもとづいて、ディスプレイ42に警告画像を表示させ、あるいはスピーカから警告音や警告の内容を知らせる音声を出力させてもよい。この場合、障害物が人か否かなど、障害物の種別によって異なる警告内容としてもよい。また、たとえば障害物までの距離が第1の所定距離以上の場合と、第1の所定距離より近い場合であって自動補助駆動力制御を行なうまでもない場合と、第1の所定距離より短い第2の所定距離より近いためにモータ19の自動補助駆動力制御をする場合とで、すなわち障害物までの距離に応じて異なる警告内容としてもよい。
【0046】
また、駆動力制御機能53は、装置本体18の入力回路33またはタブレット23の入力回路41を介して、モータ19の自動補助駆動力制御のオンとオフを切り替えられてもよい。
【0047】
X線撮像制御機能54は、装置本体18の入力回路33およびタブレット23の入力回路41の少なくとも一方を介して設定された撮像条件にもとづいてX線撮像を行なうようX線管13を制御する。また、X線撮像制御機能54は、X線撮像にもとづくX線画像を、装置本体18のディスプレイ34およびタブレット23のディスプレイ42の少なくとも一方に表示させてもよい。
【0048】
また、X線撮像制御機能54は、通信回路35を制御して画像サーバなどの外部装置からネットワークを介して医用画像や電子カルテ情報などの医用情報を取得し、この医用情報を装置本体18のディスプレイ34およびタブレット23のディスプレイ42の少なくとも一方に表示させる。このとき、X線撮像制御機能54は、装置本体18のディスプレイ34およびタブレット23のディスプレイ42の少なくとも一方に、X線撮像にもとづくX線画像と外部装置から取得された医用画像とを並べて表示させてもよい。
【0049】
また、X線撮像制御機能54は、X線撮像時において、装置本体18のディスプレイ34およびタブレット23のディスプレイ42の少なくとも一方に、X線撮像の準備が完了したか否かを含むX線撮像の進捗状況を表示してもよい。X線撮像の進捗状況をタブレットに表示する場合、ユーザはX線管13から離れた位置でX線撮像のタイミングを知ることができるため、不意な被ばくを未然に防ぐことができる。
【0050】
なお、タブレット23が用いられる場合は、処理回路30の各機能51−54の一部または全部は、タブレット23の処理回路45により実現されてもよい。
【0051】
図3は、移動型X線診断装置10の移動時において、障害物の検出に応じてモータ19の補助駆動力を自動制御することにより、安全な移動を支援する際の手順の一例を示すフローチャートである。図3において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0052】
なお、図3に示す例は、移動型X線診断装置10の支柱11に、装置本体18の進行方向の前方の障害物を検出するためのデバイスとして、カメラ21が設けられる場合の例である。以下、「カメラ21の撮像した前方の画像を表示する表示装置」がタブレット23のディスプレイ42である場合の例を説明する。
【0053】
まず、ステップS1において、カメラ画像取得機能51は、移動型X線診断装置10が収納形状か否かを判定する。収納形状であると、ステップS2に進む。収納形状ではなく展開形状である場合は、一連の手順は終了となる。
【0054】
次に、ステップS2において、カメラ画像取得機能51は、カメラ21の撮像した前方の画像を取得する。次に、ステップS3において、カメラ画像取得機能51は、この取得したカメラ画像をタブレット23のディスプレイ42に表示させる。このカメラ画像を確認することにより、ユーザは、移動型X線診断装置10そのものにより生じる死角を含む前方の状況を容易に把握することができる。
【0055】
次に、ステップS4において、障害物検出機能52は、カメラ21が撮像した画像にもとづいて、前方の障害物を検出する。次に、ステップS5において、駆動力制御機能53は、障害物検出機能52による検出結果にもとづいて駆動輪である後輪16に印加されるモータ19の補助駆動力を制御し、アシスト量を変化させる。
【0056】
なお、移動型X線診断装置10は、障害物を検出するためのデバイスとしてカメラ21を備えず他のデバイスを備えてもよい。この場合は、ステップS4において当該他のデバイスによって前方の障害物が検出されるとともに、ステップS2およびステップS3は省略される。
【0057】
次に、ステップS6において、駆動力制御機能53は、障害物検出機能52による検出結果にもとづいて、ディスプレイ42に警告画像を表示させ、あるいはスピーカから警告音や警告の内容を知らせる音声を出力させる。
【0058】
以上の手順により、移動型X線診断装置10の移動時において、障害物の検出に応じて駆動輪である後輪16に印加されるモータ19の補助駆動力を自動制御し、アシスト量を変化させることにより、安全な移動を支援することができる。
【0059】
たとえば、障害物を検出した場合に、その旨をユーザに報知する技術では、ユーザに対して障害物があることを伝えることはできるものの、ユーザがこの報知を受けてからブレーキ操作等を介して移動型X線診断装置10の適切な減速を行わなければ、衝突を回避することはできない。
【0060】
一方、本実施形態に係る移動型X線診断装置10は、移動時において、カメラ21等のデバイス障害物を検出し、障害物の検出結果に応じて後輪16に印加されるモータ19の補助駆動力を自動制御し、アシスト量を変化させることができる。たとえば、移動型X線診断装置10がカメラ21を備える場合は、移動型X線診断装置10は、カメラ21が撮像した前方の画像にもとづいて障害物を検出することができる。移動型X線診断装置10は、このため、ユーザがブレーキによって手動で制動する場合に比べ、より確実に移動型X線診断装置10と障害物との衝突を未然に防止することができる。
【0061】
なお、アシスト量の自動制御を行う場合には、カメラ21は必須の構成ではなく、カメラ21の撮像した前方の画像を表示する表示装置や端末ホルダ22もまた必須の構成ではない。
【0062】
他方、移動型X線診断装置10が駆動輪のアシスト量の自動制御を行わない場合であっても、移動型X線診断装置10が、カメラ21と、X線管13のカバー外面上の、収納形状における進行方向の後側に取り付けられた端末ホルダ22を備え、この端末ホルダ22に着脱自在に載置されるタブレット23のディスプレイが、カメラ21の撮像した前方の画像を表示する場合には、移動型X線診断装置10の移動時において、安全な移動を支援することができる。
【0063】
すなわち、アーム12の端部に設けられたX線管13は、収納形状においてユーザ側に位置するとともに、ハンドル17よりも鉛直方向の上方に位置する。このため、端末ホルダ22が、X線管13のカバー外面上の、収納形状における進行方向の後側に取り付けられる場合には(図1(a)参照)、ユーザは収納形状において端末ホルダ22にタブレット23を載置することで、タブレット23のディスプレイ42を介してカメラ21の撮像画像を容易に視認することができる。
【0064】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、移動型X線診断装置10の移動時において、安全な移動を支援することができる。
【0065】
なお、本実施形態におけるモータ19は、特許請求の範囲における駆動部の一例である。また、本実施形態における処理回路30の障害物検出機能52および駆動力制御機能53は、それぞれ特許請求の範囲における検出部および駆動力制御部の一例である。また、本実施形態における装置本体18のディスプレイ34およびタブレット23のディスプレイ42は、特許請求の範囲における表示装置の一例である。また、本実施形態に係るタブレット23の入力回路41およびディスプレイ42は、それぞれ特許請求の範囲における表示部および入力部の一例である。
【0066】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびFPGA)等の回路を意味するものとする。プロセッサは、記憶媒体に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。
【0067】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶媒体は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶媒体が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0068】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0069】
また、本発明の実施形態では、フローチャートの各ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理の例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別実行される処理をも含むものである。
【符号の説明】
【0070】
10…移動型X線診断装置
11…支柱
12…アーム
13…X線管
16…後輪(駆動輪)
17…ハンドル
18…装置本体
21…カメラ
22…端末ホルダ
23…タブレット
30…処理回路
33…入力回路
34…ディスプレイ
41…入力回路
42…ディスプレイ
45…処理回路
52…障害物検出機能
53…駆動力制御機能
図1
図2
図3