特許第6971690号(P6971690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6971690可撓性マンドレル、複合材部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971690
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】可撓性マンドレル、複合材部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/54 20060101AFI20211111BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20211111BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20211111BHJP
【FI】
   B29C70/54
   B29C70/06
   B29K105:08
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-150649(P2017-150649)
(22)【出願日】2017年8月3日
(65)【公開番号】特開2019-25869(P2019-25869A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年5月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆之
(72)【発明者】
【氏名】奥田 晃久
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 了太
(72)【発明者】
【氏名】真能 翔也
(72)【発明者】
【氏名】清水 正彦
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−521645(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/055524(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/033741(WO,A1)
【文献】 特開平10−244598(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0129989(US,A1)
【文献】 特表平10−506329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00−70/88,
43/00−43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を含む複合材を成形するための可撓性マンドレルであって、
成形時に前記複合材に接触する接触面及び前記複合材に接触しない非接触面を含む本体と、
前記非接触面から前記本体の内側に向けて前記本体の熱容量を低減するように形成され少なくとも一つの穴部と、
を備え、
前記少なくとも一つの穴部の分布は、所定の温度分布又は応力分布が実現されるように、前記複合材の形状に応じて設定され
前記穴部は前記非接触面上の少なくとも一領域において、前記非接触面に沿った複数の方向に沿って均一に複数形成される、可撓性マンドレル。
【請求項2】
前記穴部は前記接触面の反対側に位置する前記非接触面に形成される、請求項1に記載の可撓性マンドレル。
【請求項3】
前記少なくとも一つの穴部は、前記非接触面のうち縁部を含む非形成領域を除いて設けられる、請求項1又は2に記載の可撓性マンドレル。
【請求項4】
前記非形成領域は、前記複合材部品の長手方向に垂直な平面に沿った厚さ方向において、前記非接触面の全体厚さの10%以上の厚さを有する、請求項に記載の可撓性マンドレル。
【請求項5】
前記穴部は、前記接触面及び前記非接触面間の距離の60%〜90%の深さを有する有底穴である、請求項1からのいずれか一項に記載の可撓性マンドレル。
【請求項6】
前記穴部に充填された充填材を更に備える、請求項1からのいずれか一項に記載の可撓性マンドレル。
【請求項7】
前記充填材は、前記本体に比べて高い熱伝導率を有する、請求項に記載の可撓性マンドレル。
【請求項8】
前記充填材は金属発泡体である、請求項又はに記載の可撓性マンドレル。
【請求項9】
前記少なくとも一つの穴部は、前記非接触面上の少なくとも一領域において、熱容量が一定の割合で減少するように分布する複数の穴部を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の可撓性マンドレル。
【請求項10】
熱硬化性樹脂を含む複合材を成形するための可撓性マンドレルであって、
成形時に前記複合材に接触する接触面及び前記複合材に接触しない非接触面を含む本体と、
前記非接触面から前記本体の内側に向けて形成された少なくとも一つの穴部と、
前記穴部に充填された充填材と、
を備え、
前記充填材は、前記本体に比べて高い熱伝導率を有する、可撓性マンドレル。
【請求項11】
熱硬化性樹脂を含む複合材を成形するための可撓性マンドレルであって、
成形時に前記複合材に接触する接触面及び前記複合材に接触しない非接触面を含む本体と、
前記非接触面から前記本体の内側に向けて形成された少なくとも一つの穴部と、
前記穴部に充填された充填材と、
を備え、
前記充填材は金属発泡体である、可撓性マンドレル。
【請求項12】
一対の可撓性マンドレルを用いて熱硬化性樹脂を含む複合材を成形することにより、複合材部品を製造するための方法であって、
前記複合材に接触する接触面及び前記複合材に接触しない非接触面を含む前記可撓性マンドレルの本体を形成する工程と、
前記本体のうち前記非接触面に前記本体の内側に向けて少なくとも一つの穴部を前記本体の熱容量を低減するように形成する工程と、
前記穴部が形成された一対の前記可撓性マンドレルの間に前記複合材を配置し、熱硬化処理を実施する工程と、
を備え、
前記少なくとも一つの穴部の分布は、所定の温度分布又は応力分布が実現されるように、前記複合材の形状に応じて設定され
前記穴部は前記非接触面上の少なくとも一領域において、前記非接触面に沿った複数の方向に沿って均一に複数形成される、複合材部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CFRP等の複合材を含む複合材部品を成形するために用いられる可撓性マンドレル及び、当該可撓性マンドレルを用いた複合材部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化プラスティック(CFRP:carbon fiber reinforced plastic)に代表される複合材は、一般的な金属材に比べて強度・剛性に優れており、軽量化が要求される航空機や宇宙機器等の構造に多く利用されている。CFRPでは主にエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂が使用されており、複合材を高温高圧のオートクレーブと呼ばれる容器内で熱硬化することにより、成形が行われる。
【0003】
このような複合材部品の一例として、航空機に使用される板材を補強するためのストリンガがある。ストリンガは機体設計によって輪郭やねじりを含む複雑な形状を有しており、例えばI型の断面形状を有する。このようなストリンガは、型材である一対のマンドレルの間に半硬化状態の柔らかいCFRPシート(複合材)を積層した後に、真空バッグで全体を囲うことで内部の空気を排除し、複合材とマンドレルとを密着させて熱硬化処理を行うことで成形される。
【0004】
特許文献1では、このようなストリンガを成形するために用いられる金属製のマンドレルにおいて、深さ方向に溝を形成することで良好な可撓性を実現し、複雑な形状(輪郭やねじり)に対応可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4896035号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のように熱硬化性樹脂を含む複合材の成形に用いられるマンドレルは、成形対象である複合材に比べて熱容量も大きくなる。そのため、成形対象である複合材に対して熱硬化処理を実施する際に、十分に昇温するために多くの時間を要しており、部品製造レートの低下や、熱硬化処理で消費される電力増加によってコスト増を招く要因となっている。
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、熱硬化性樹脂を含む複合材を熱硬化処理する際の昇温を促進することにより、部品製造レートを向上させ、コスト低減を達成可能な可撓性マンドレル及び複合材部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る可撓性マンドレルは上記課題を解決するために、熱硬化性樹脂を含む複合材を成形するための可撓性マンドレルであって、成形時に前記複合材に接触する接触面及び前記複合材に接触しない非接触面を含む本体と、前記非接触面から前記本体の内側に向けて形成された少なくとも一つの穴部と、を備える。
【0009】
上記(1)の構成によれば、可撓性マンドレルの本体には、少なくとも一つの穴部が設けられる。このように穴部を設けることで可撓性マンドレルの熱容量を低減できる。また穴部は、成形時に複合材に接触しない非接触面に形成されるため、複合材との接触状態は良好に確保できる。このようにして、熱硬化処理時に必要な昇温時間を効果的に短縮でき、良好な部品製造レート及びコスト低減を達成できる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では上記(1)の構成において、前記穴部は前記接触面の反対側に位置する前記非接触面に形成される。
【0011】
上記(2)の構成によれば、穴部は接触面の反対側に位置する非接触面に形成されるため、複合材との接触状態は良好に確保できる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の構成において、前記穴部は前記非接触面上の少なくとも一領域において均一に複数形成される。
【0013】
上記(3)の構成によれば、穴部が均一に分布する領域では、その領域全体に亘って熱容量が一定の割合で減少するため、熱硬化処理時に複合材に対して均一な熱量供給ができ、良好な品質の成形ができる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の構成において、前記穴部は前記非接触面上の少なくとも一領域において不均一に複数形成される。
【0015】
上記(4)の構成によれば、例えば可撓性マンドレルが目的物の形状に応じて変形された際に、所定の温度分布、応力等が複合材に対して与えられるように、少なくとも一領域で不均一に分布してもよい。これにより、熱硬化処理時の複合材の形状に応じた熱硬化処理を実施でき、良好な品質の複合材部品を製造できる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では上記(1)から(4)のいずれか一構成において、前記少なくとも一つの穴部は、前記非接触面のうち縁部を含む非形成領域を除いて設けられる。
【0017】
上記(5)の構成によれば、穴部が形成されない非形成領域を縁部近傍に設けることで、マンドレルの可撓性を確保しつつ、十分な強度を得ることにより、変形時の破損を好適に防止できる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では上記(5)の構成において、前記非形成領域は、前記複合材部品の長手方向に垂直な平面に沿った厚さ方向において、前記非接触面の全体厚さの10%以上の厚さを有する。
【0019】
上記(6)の構成によれば、穴部が形成されない非形成領域を当該範囲に設定することで、マンドレルの可撓性を確保しつつ、十分な強度が得られる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では上記(1)から(6)のいずれか一構成において、前記穴部は、前記接触面及び前記非接触面間の距離の60%〜90%の深さを有する有底穴である。
【0021】
上記(7)の構成によれば、穴部の深さを当該範囲に設定することで、マンドレルの熱容量を的確に低減しつつ、可撓性及び強度を好適に確保できる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では上記(1)から(7)のいずれか一構成において、前記穴部に充填された充填材を更に備える。
【0023】
上記(8)の構成によれば、穴部に充填材が充填されることで、穴部を有する本体の表面を平坦にできる。これにより、例えば、熱硬化処理時に真空バッグ処理がなされた場合に、バッグ材が穴部に引き込まれることで破損することを防止できる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では上記(8)の構成において、前記充填材は、前記本体に比べて高い熱伝導率を有する。
【0025】
上記(9)の構成によれば、充填材として本体部に比べて高い熱伝導率を有する材料を用いることで、可撓性マンドレルの熱伝導性を更に向上させ、より迅速な昇温が可能となる。
【0026】
(10)幾つかの実施形態では上記(8)又は(9)の構成において、前記充填材は金属発泡体である。
【0027】
上記(10)の構成によれば、充填材として、例えば発泡アルミニウムのように、軽量であり、且つ、熱伝導率に優れた金属発泡体を採用するとよい。
【0028】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る複合材部品の製造方法は上記課題を解決するために、一対の可撓性マンドレルを用いて熱硬化性樹脂を含む複合材を成形することにより、複合材部品を製造するための方法であって、前記複合材に接触する接触面及び前記複合材に接触しない非接触面を含む前記可撓性マンドレルの本体を形成する工程と、前記本体のうち前記非接触面に前記本体の内側に向けて少なくとも一つの穴部を形成する工程と、前記穴部が形成された一対の前記可撓性マンドレルの間に前記複合材を配置し、熱硬化処理を実施する工程と、を備える。
【0029】
上記(11)の方法によれば、上述の可撓性マンドレル(上記各種形態を含む)を用いることで、熱硬化性樹脂を含む複合材において熱硬化処理の実施時の昇温を促進できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、熱硬化性樹脂を含む複合材を熱硬化処理する際の昇温を促進することにより、部品製造レートを向上させ、コスト低減を達成可能な可撓性マンドレル及び複合材部品の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の少なくとも一実施形態に係る可撓性マンドレルを示す斜視図である。
図2図1の断面図である。
図3図1の変形例である。
図4図2の変形例である。
図5】本発明の少なくとも一実施形態に係る複合材部品の製造方法を工程毎に示すフローチャートである。
図6】I型断面を有する複合材部品を成形するためのCFRPシートの組み合わせパターンを示す模式図である。
図7】熱硬化処理時における可撓性マンドレルの内部温度とオートクレープ内の雰囲気温度の時間経過を示す測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0033】
以下の実施形態では、複合材として、炭素繊維を樹脂で強化された炭素繊維強化プラスティック(CFRP:carbon fiber reinforced plastic)であって、主にエポキシ樹脂をはじめ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、シアネートエステル、ポリイミドのような熱硬化性樹脂を含むことにより、熱硬化処理によって成形が可能な材料を例に説明する。
尚、複合材の強化繊維は、炭素繊維以外にもガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維なども同様に適用可能である。
【0034】
また以下の実施形態では、複合材を成形することで得られる複合材部品として、航空機に使用される板材を補強するためのストリンガを例示するが、技術的思想が共通する範囲において、種々の部品に適合可能である。特に、強度・剛性とともに軽量化が要求される航空機や宇宙機器等の構造に利用可能である。
【0035】
(可撓性マンドレル)
まず複合材部品の成形に用いられる可撓性マンドレルの構成について説明する。図1は本発明の少なくとも一実施形態に係る可撓性マンドレル1を示す斜視図であり、図2図1の断面図である。図1及び図2では、同形状を有する一対の可撓性マンドレル1(以下、それぞれを区別して述べる場合には、それぞれ「第1の可撓性マンドレル1A」及び「第2の可撓性マンドレル1B」と称する)とともに、成形対象物である複合材部品2がともに示されている。
【0036】
可撓性マンドレル1は、複合材部品2を成形するための型材であり、成形対象物である複合材部品2に対応する形状を有する。本実施形態では、複合材部品2の一例としてI型断面を有し、長手方向に延在する形状を有する航空機ストリンガが示されている。第1の可撓性マンドレル1A及び第2の可撓性マンドレル1Bは同形状を有しており、図1では、それらの間に複合材部品2の材料となる複合材を配置して成形が行われる様子が示されている。
【0037】
可撓性マンドレル1の本体3は、略正方形の断面形状を有する。本体3は、熱硬化処理を実施する際に、外部から供給される熱量を複合材部品2に対して伝達するために、熱伝導性材料を含む。また本体3の材料は、複合材部品2の仕様形状に応じて変形可能な可撓性を有する。このような可撓性マンドレル1に用いられる材料として、例えば、金属やプラスティック、複合材(CFRP、特にコスト的にPAN系CFRPが好ましいがPITCH系CFRPも使用可能である)が使用可能である。
【0038】
図2に示されるように、複合材部品2の成形時において、可撓性マンドレル1の本体3は、複合材部品2に接触する接触面4、及び、複合材部品2に接触しない非接触面6を含む。このうち接触面4は、上述したように、複合材部品2を成形するために複合材部品2に対応する形状を有するが、非接触面6は任意の形状を有してもよい。
【0039】
この種の可撓性マンドレルは、典型例には、中実のバルク体が使用されるが、この場合、成形対象物である複合材部品2に比べて可撓性マンドレルの熱容量が大きなってしまうため、熱硬化処理時に昇温時間が長くなってしまい、部品製造レートやコスト低減の妨げ要因となっている。特に本体が金属材料から形成される場合には、その重量も大きくなるため取り扱いが難しくなる。
【0040】
このような課題を解決するために、本実施形態の可撓性マンドレル1は、少なくとも一つの穴部8を有する。穴部8は非接触面6から本体3の内側に向けて形成されるため(非接触面6に開口されるため)、複合材部品2の形状に対しては影響を与えない。このように本体3に穴部8を設けることで、可撓性マンドレル1の熱容量を低減でき、熱硬化処理時の昇温時間を短縮できる。また穴部8は、成形時に複合材部品2と接触しない非接触面6に形成されるため、接触面4では複合材部品2との接触状態が確保され、複合材部品2に対して良好な熱伝達が可能となる。
【0041】
本実施形態の穴部8は、有底の非貫通穴として形成されている。穴部8の深さは任意でよいが、例えば、接触面4及び非接触面6間の距離Lの60%〜90%の深さを有する。穴部8の深さを当該範囲に設定することで、可撓性マンドレル1の熱容量を的確に低減しつつ、可撓性及び剛性を好適に確保できる。
【0042】
尚、穴部8は貫通穴として形成されてもよい。この場合、穴部8の2つの開口(入口側及び出口側)はそれぞれが非接触面6に位置するとよい。また本実施形態の穴部8は略ストレート形状を有しているが、例えば本体3の湾曲形状を有してもよい。
【0043】
本実施形態では、穴部8は複数設けられている。このように複数の穴部8を設けることにより、穴部8が単一しか設けられていない場合に比べて、可撓性マンドレル1の可撓性及び剛性を的確に確保しつつ、熱容量を効果的に低減できる。
【0044】
また複数の穴部8は、図1及び図2に示されるように、非接触面6上の少なくとも一領域において均一に分布してもよい。このように穴部8が均一に分布する領域では、その領域全体に亘って熱容量が一定の割合で減少するため、熱硬化処理時に複合材に対して均一に熱量を供給でき、良好な品質の成形が可能となる。
【0045】
穴部8は、非接触面6のうち本体3の縁部を含む非形成領域10を除いて設けられる。このような非形成領域10を、成形時に応力が集中しやすい縁部近傍に設けることで、マンドレルの可撓性を確保しつつ、十分な強度を得ることにより、変形時の破損を好適に防止できる。
【0046】
非形成領域10は、複合材部品2の長手方向に垂直な平面に沿った厚さ方向において、例えば、非接触面6の全体厚さの10%以上の厚さを有するように設けられる。非形成領域10を当該範囲に設定することで、より効果的に、マンドレルの可撓性を確保しつつ、十分な強度を得ることができる。
【0047】
図3図1の変形例である。本変形例では、複数の穴部8は非接触面6上の少なくとも一領域において不均一に複数形成されている。このような穴部8の分布はランダムでもよいが、例えば可撓性マンドレル1が複合材部品2の形状に応じて変形された際に、所定の温度分布、応力分布等が実現されるように、複合材部品2の形状に応じて設定されてもよい。これにより、熱硬化処理時に、複合材部品2に対して伝達される熱量をコントロールすることができ、良質な品質の成形が可能となる。
【0048】
図4図2の変形例である。本変形例では、穴部8に充填された充填材12を更に備える。穴部8に充填材12が充填されることで、穴部8が形成された非接触面6の表面を平坦にできる。そのため、例えば、熱硬化処理の実施時に真空バッグ処理がなされた場合に、バッグ材が穴部8に引き込まれて破損することを防止できる(図5のステップS5を参照)。
【0049】
穴部8に充填される充填材12は、本体3に比べて高い熱伝導率を有する材料を含んでもよい。この場合、充填材12によって本体3の熱伝導性を更に向上でき、より迅速な昇温が可能となる。充填材12の材料としては、例えば金属発泡体が有用であり、具体的には発泡アルミニウムのように、軽量であり、且つ、熱伝導率に優れた材料が好ましい。
【0050】
(複合剤部品の製造方法)
続いて上記構成を有する可撓性マンドレル1を用いた複合材部品2の製造方法について説明する。図5は、本発明の少なくとも一実施形態に係る複合材部品2の製造方法を工程毎に示すフローチャートである。
【0051】
まず所定の材料を用いて可撓性マンドレル1の本体3を形成する(ステップS1)。ここで本体3の材料は、上述したように、熱硬化処理時に、外部から供給される熱量を複合材部品2に伝達可能な熱伝導性を有するとともに、複合材部品2の仕様形状に応じて変形可能な可撓性を有する材料であり、例えば、金属や複合材(CFRP、特にコスト的にPAN系CFRPが好ましいがPITCH系CFRPも使用可能である)が用いられる。
このような本体3は、例えば略直方体形状の中実なバルク体として形成される。
【0052】
続いてステップS1で形成された本体3に対して、少なくとも一つの穴部8を形成する(ステップS2)。穴部8の形成は、バルク体である本体3に対して、例えば切削のような機械加工によってなされる。本実施形態では、本体3をバルク体として形成したのちに、穴部8を形成する場合について説明するが、ステップS1で本体3を形成する際に、穴部8を同時に形成してもよい(例えば本体3と穴部8とを一体的に形成してもよい)。
【0053】
穴部8は、本体3のうち複合材部品2と接触しない非接触面6に少なくとも一つ形成される。穴部8は、非接触面6のうち本体3の縁部を含む非形成領域10を除いて設けられてもよい。また穴部8を複数形成する場合には、その分布は均一であってもよいし、不均一であってもよい。
【0054】
このように形成された穴部8には、必要に応じて、充填材12が充填される。充填材12は、本体3に比べて高い熱伝導率を有する材料を含んでもよく、例えば発泡アルミニウムのような金属発泡体が使用可能である。
【0055】
続いて、このように完成した可撓性マンドレル1を用いて、複合材部品2の成形が進められる。上述の可撓性マンドレル1を一対用意し(ステップS3)、それらの間に複合材部品2の材料となる複合材を配置する(ステップS4)。ここで使用される複合材は、例えば半硬化状態の柔らかなCFRPシートであり、複合材部品2の形状に応じて組み合わされる。
【0056】
図6はI型断面を有する複合材部品2を成形するためのCFRPシートの組み合わせパターンを示す模式図である。図1に示されるようなI型断面を有する複合材部品2を成形する場合には、例えば、第1の可撓性マンドレル1Aの接触面4を覆う第1シート2Aと、第2の可撓性マンドレル1Bの接触面4を覆う第2シート2Bと、第1シート2A及び第2シート2Bにわたって上方から覆う第3のシート2Cと、第1シート2A及び第2シート2Bにわたって上方から覆う第4のシート2Dと、が組み合わされる。
【0057】
続いて、一対の可撓性マンドレル1の間に複合材を配置させた状態で、全体をバッグ材で覆い、内部の空気を排出することにより真空バッグ処理を実施する(ステップS5)。真空バッグ処理時には、負圧によって本体3に形成された穴部8にバッグ材が少なからず引き込まれるが、第2変形例(図4)のように、穴部8に充填材12が充填されていると、バッグ材が穴部8に引き込まれて破損する事態を効果的に防止できる。
【0058】
続いて真空バッグ処理が施された状態で、複合材が間に配置された一対の可撓性マンドレル1に対して熱硬化処理を行う(ステップS6)。熱硬化処理は高温高圧のオートクレープ内で行われる。オートクレープ内の雰囲気温度が上昇すると、可撓性マンドレル1を介して複合材に熱量が伝達されることにより加熱される。
【0059】
ここで図7は、熱硬化処理時における可撓性マンドレル1の内部温度とオートクレープ内の雰囲気温度の時間経過を示す測定結果である。図7では、破線はオートクレープ内の雰囲気温度を示しており、時間の経過とともに目標温度T0まで次第に増加する様子が示されている。このような雰囲気温度の変化に従って、可撓性マンドレル1の内部温度も追従するように増加する。測定結果(実線)は穴部8が形成されていない比較例(穴部8が形成されていないことを除いて、本実施形態の可撓性マンドレル1と同一のもの)に係る計測結果であり、測定結果(一点鎖線)は穴部8が形成された本実施形態の可撓性マンドレル1に係る計測結果である。図7に示されるように、本実施形態は比較例にくらべて目標温度T0に到達する時間が約53分ほど早い結果が得られた。これは、本実施形態に係る可撓性マンドレル1は穴部8を有することにより、熱容量が低下し、より迅速な昇温が可能になっていることを示している。
【0060】
ステップS6の熱硬化処理では、このように目標温度に昇温された状態が所定時間維持されることで、複合材の熱硬化が進行し、複合材部品2の成形が行われる。熱硬化処理が完了すると、バッグ材を解放し、内部から完成した複合材部品2が取り出される(ステップS7)。
【0061】
以上説明したように本発明の少なくとも一実施形態によれば、可撓性マンドレル1の本体に穴部8を形成することで、熱硬化性樹脂を含む複合材を熱硬化処理する際の昇温を促進することにより、部品製造レートを向上させ、コスト低減を達成できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の少なくとも一実施形態は、CFRP等の複合材を含む複合材部品を成形するために用いられる可撓性マンドレル及び、当該可撓性マンドレルを用いた複合材部品の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 可撓性マンドレル
2 複合材部品
3 本体
4 接触面
6 非接触面
8 穴部
10 非形成領域
12 充填材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7