【実施例1】
【0017】
以下、
図2〜
図11を用いて第1の実施例に係るシート給送装置100の構成及び動作について説明する。なお、必要に応じて、
図1における左右方向をX軸方向とし、画像形成装置200の奥行方向をY軸方向とし、上下方向をZ軸方向として座標軸の方向を図示している。
【0018】
図2(a)は載置板111が下限位置にある状態、
図2(b)は載置板111が給送位置にある状態を示すシート給送装置100の概略図である。
図3はシート給送装置100を上方から視た概略図であり、
図4は給送ユニット100Bを上側から視た概略図である。
【0019】
図2(a)に示すように、シート給送装置100は、シートSを収納するシート収納部100Aと、シートSを1枚ずつ分離して給送する給送ユニット100Bとを備える。シート収納部100Aは、収納庫(カセット)110と、収納庫110の底部110aに対して昇降可能な載置板111と、載置板111を昇降させる昇降板112と、を含む。載置板111は、シート給送方向(図中右方向)の上流端に設けられた回動中心部111aを中心にして上下方向に回動可能な板状部材であり、上側の載置面111cに載置されたシートSを支持する。載置板111は、第1面である載置面111cの反対側の第2面として、収納庫110の底部110aに当接可能な当接面111bを有し、当接面111bを昇降板112に押圧されることで昇降する。昇降板112は、収納庫110によって回転可能に支持された回動軸113に取付けられ、回動軸113と一体となって回動する回動部材である。
【0020】
載置板111は、シートが積載されるシート積載部に相当し、収納庫110はシート積載部を昇降可能に支持する支持手段に相当する。また、昇降板112及び回動軸113は、シート積載部を昇降させる昇降手段に相当する。
【0021】
シート収納部100Aは、さらに後端規制部114と、一対の側端規制部と、保持部110c,110cと、を備える。後端規制部114は、シート給送方向に沿った方向V1に移動可能であり、シートSの後端つまりシート給送方向における上流端の位置を規制する。不図示の側端規制部は、上方から視てシート給送方向に直交する方向(幅方向)に移動可能であり、シートSの側端の位置を規制する。保持部110c,110cは、収納庫110のX軸方向における両外側に突設され、画像形成装置200の装置本体201に固定されたカセットレール115L,115RによってY軸方向に移動可能に支持されている。これにより、収納庫110は、装置本体201に対して引出可能に装着されたカセットとして構成されている。
【0022】
図3に示すように、昇降板112が取付けられる回動軸113の軸方向の端部には扇形状の昇降ギヤ116が固定され、昇降ギヤ116に後述の駆動ユニットから駆動力が伝達されることで昇降板112が回動する構成である。載置板111は、昇降板112の回動に伴って、当接面111bの少なくとも一部が収納庫110の底部110aに当接する下限位置(第1位置、
図2(a))と、下限位置より上方の給送位置(第2位置、
図2(b))とに移動する。
【0023】
本実施例において、収納庫110のシート給送方向における下流側の端部には、載置板111の回動中心部111aより上流側でシートSを支持する上流側載置面110eと等しい高さで当接面111bに当接する載置板支持部110dが設けられている。載置板111が下限位置にある場合、載置板111に載置されたシートSの重量は上流側載置面110e及び載置板支持部110dを介して収納庫110に支持される。さらにシートSを含む収納庫110の重量は、カセットレール115L,115Rを介して装置本体201に支持される。
【0024】
次に、
図2(a)、(b)及び
図4を用いて給送ユニット100Bについて説明する。
図4は給送ユニット100Bを上側から見た概略図である。
【0025】
図4に示すように、ピックアップローラ101は給送アーム104に固定された駆動軸125に回転可能に支持されており、ピックアップギヤ121から不図示のカップリングを介して駆動伝達されて回転する。給送ローラ102は、給送アーム104に回転可能に支持された給送軸126に回転可能に支持されており、給送ギヤ122から不図示のカップリングを介して駆動伝達されて回転する。また、給送ギヤ122と給送軸126は相対回転不能に固定されており、一体となって回転する。ピックアップローラ101及び給送ギヤ122には、給送アーム104に固定されたアイドラ軸127によって回転可能に支持されたアイドラギヤ123を介して駆動連結されている。
【0026】
図2(a)に示すように、給送アーム104は、装置本体201の枠体に固定された不図示の給送フレームによって、給送軸126を中心として上下方向に回動可能に支持されている。給送アーム104は、給送フレームに一端を固定された給送アーム加圧ばね105によって下方へ付勢され、図示した位置(給送アームの待機位置)で待機する。
【0027】
図2(b)に示すように、駆動源である給送モータの駆動力が給送軸126に伝達されると、給送ギヤ122によって給送ローラ102がシート給送方向に沿った回転方向R2に回転駆動される。また、給送ギヤ122がアイドラギヤ123を介してピックアップギヤ121を回転させることで、ピックアップローラ101が給送ローラと同じ回転方向R1に回転駆動される。
【0028】
さらに給送ユニット100Bは、給送ローラ102に対向する位置に、分離軸128に回転可能に支持された分離ローラ103を備えている。分離軸128は分離フレーム106によって回転可能に支持され、この分離フレーム106は分離フレーム軸129を介して給送フレームに対して回動可能に支持されている。分離フレーム106は、給送フレームに一端を固定された分離加圧ばね107によって上方へ加圧され、分離ローラ103が給送ローラ102を押圧するように構成されている。また、分離軸128には不図示のトルクリミッターが固定されており、給送モータからシート給送方向に逆らう回転方向R3の駆動力が入力される。これにより、分離ローラ103は給送ローラ102によって給送される最上位のシートSを他のシートSから分離することができる。
【0029】
図2(b)に示すように、昇降板112が上方に回動して載置板111を持ち上げ、シートSを上昇させるリフトアップ動作が行われると、最上位のシートSの上面がピックアップローラ101を上方へ押し上げる。これに伴って、給送アーム104は給送軸126を中心に上方に回動し、給送アーム加圧ばね105の弾発力によってピックアップローラ101がシートSに圧接する。最上位のシートSの上面が所定の位置まで給送アーム104が移動したことをシート高さ検知手段が検知すると、昇降板112のリフトアップ動作が停止される。所定の位置とは、ピックアップローラ101がシートSを給送するために最上位のシートSに対して適切な加圧力で当接するように設定された位置であり、載置板111が給送位置にある場合のシートSの上面の高さを指す。シート高さ検知手段は、給送動作の実行中も継続的にシート高さを検知している。シートSの消費によって給送アーム104が所定の位置から一定量下降すると、検知信号の変化に対応して再びリフトアップ動作が行われ、シート高さが所定の位置に維持されるよう制御されている。なお、シート高さ検知手段は、例えば給送アーム104に突設された遮光部を検出することで給送アーム104の回動角度を検知可能な光電センサを用いることができる。
【0030】
次に、昇降板112の駆動機構について
図5〜
図9を用いて説明する。
図5は、装置本体201に収納庫110が装着された状態における収納庫110及び昇降板112に駆動力を供給する駆動ユニット131の側面図である。
図6は駆動ユニット131の概略図である。
図7は駆動ユニット131に設けられるカップリングの構成を示す斜視図である。
図8(a)、(b)は駆動ユニット131を構成する回転部材の回転方向を示す模式図である。
図9はカップリングギヤが離脱した状態の駆動ユニットを示す概略図である。
【0031】
図5に示すように、収納庫110は、保持部110cがレール115Rに摺動するようにして、装置本体201に対してY軸に平行な方向V2に挿入及び引出可能である。収納庫110の挿入方向における下流側の側面110fが装置本体201に設けられた位置決め部に当接すると、収納庫110が装置本体201の所定の装着位置に装着された状態となる。また、装置本体201には、収納庫110が装着位置にあることを検知可能な収納庫センサが設けられている。装置本体201に搭載される駆動ユニット131は、駆動力を出力するためのリフター駆動ギヤ132を有し、収納庫110が装着位置にある場合にリフター駆動ギヤ132と上述の昇降ギヤ116とが噛合うように構成される。
【0032】
図6に示すように、駆動ユニット131は、駆動源であるリフターモータ136と、入力ギヤ135と、カップリングギヤ133と、リフター駆動ギヤ132とを備え、装置本体201の枠体に固定されたカバー137に収容されている。入力ギヤ135は、カバー137に取付けられた第1軸部137bに回転可能に支持され、リフターモータ136から入力される駆動力によって回転する。カップリングギヤ133及びリフター駆動ギヤ132は、いずれもカバー137に第1軸部137bと平行に取付けられた第2軸部137aによって回転可能に支持される。カップリングギヤ133は入力ギヤ135に噛合っており、リフター駆動ギヤ132はカップリングギヤ133から受取る駆動力によって回転するように構成される。
【0033】
ここで、カップリングギヤ133(第1部材)及びリフター駆動ギヤ132(第2部材)からなるカップリング140は、リフターモータ136と昇降板112との間で駆動力を伝達し、かつ一定条件下で駆動伝達を解除可能な連結部として構成されている。まず、カップリングギヤ133の軸穴133cは第2軸部137aに対して軸方向に摺動可能であり、リフター駆動ギヤ132は軸方向に位置決めされた状態で第2軸部137aに支持されている。つまり、カップリングギヤ133は、リフター駆動ギヤ132に対して接近及び離間するように移動可能である。またカップリングギヤ133は、一端をカバー137に固定されたカップリングばね134によってリフター駆動ギヤ132に向けて付勢されている。
【0034】
図6及び
図7に示すように、カップリングギヤ133及びリフター駆動ギヤ132の互いに対向する側面には、駆動伝達面132a,133a及び退避面132b,133bが設けられている。駆動伝達面132a,133aは各ギヤの回転方向に垂直(第2軸部137aに平行)な面であり、退避面132b,133bは各ギヤの回転方向に対して同一角度で傾斜した面である。この構成により、カップリングギヤ133はリフター駆動ギヤ132に対して離脱可能に係合する。即ち、カップリング140はラチェット機構として作用し、載置板111が昇降板112を下方に押圧する力に対抗する方向の力を昇降ギヤ116に伝達可能である。なお、カップリング140は連結部の一例であり、ラチェット機構以外のワンウェイクラッチや電磁クラッチ等を用いてもよい。
【0035】
図8(a)に示すように、リフターモータ136が第1方向に回転(正転)してカップリングギヤ133が図中時計回り方向(CW方向とする)に回転する場合、駆動伝達面132a,133aが当接した状態でリフター駆動ギヤ132がCW方向に回転する。すると、昇降ギヤ116が図中反時計回り方向(CCW方向とする)に回転駆動され、昇降板112は上方に回動して載置板111を上昇させる。
【0036】
一方、
図8(b)に示すように、リフターモータ136が第1方向の反対の第2方向に回転(逆転)すると、カップリングギヤ133がCCW方向に回転する。このとき、カップリング140による駆動伝達の状態は載置板111の位置に応じて変化する。載置板111が下限位置より上方に位置している場合、載置板111及び載置板111に載置されたシートSの重量は、昇降ギヤ116をCW方向に回転させようとする方向、つまり駆動伝達面132a,133aの当接を維持する方向に作用する。この場合、リフター駆動ギヤ132は、カップリングギヤ133に係合した状態のままでカップリングギヤ133と共にCCW方向に回転する。また、載置板111の下降速度は、リフターモータ136によって規制される。
【0037】
載置板111が下限位置(
図2(a))まで下降すると、載置板111及びシートSの重量が載置板支持部110dによって支持される。このとき、昇降ギヤ116をCW方向へ回転させようとする力が作用しなくなり、昇降ギヤ116の回転が停止する。ここで、カップリングギヤ133がさらにCCW方向へ回転を続けた場合、
図9に示すように、カップリングギヤ133の退避面133bがリフター駆動ギヤ132の退避面132bに当接し、斜面を滑りながら退避する(
図9)。これにより、カップリングギヤ133は、カップリングばね134の付勢力に抗して、入力ギヤ135に噛合った状態のままリフター駆動ギヤ132から離間する方向に移動し、リフター駆動ギヤ132から離脱する。
【0038】
なお、載置板111を下限位置まで下降させる際のリフターモータ136の駆動量は、後述のシート残量検知センサの検知信号に基づいて、載置板111が確実に下限位置に到達するように余裕をもって設定されている。リフターモータ136の駆動量の余裕分(マージン)は、載置板111が下限位置に到達した後に、上述の退避動作によってカップリングギヤ133がリフター駆動ギヤ132から退避して空転することで吸収される。
【0039】
次に、載置板111に積載されたシートSの残量を検知する構成及び、検知結果に基づく載置板111の昇降制御について説明する。
図10はシートSの残量を検知するための残量検知センサ117の拡大図である。透過型の光電センサである残量検知センサ117は、装置本体201に取付けられており、収納庫110が装着位置にある状態で昇降ギヤ116に設けられた被検知部116aを検知可能に構成されている。残量検知センサ117及び被検知部116aは、昇降ギヤ116が所定の角度を通過する場合、つまり載置板111が下限位置から所定量以上の回動量で上方に回動する場合に検知結果が変化するように構成される。従って、例えば、残量検知センサ117の検知結果がOFF(透過状態)である場合は載置板111に積載されたシートSの残量が少なく、残量検知センサ117の検知結果がON(遮光状態)である場合はシートSの残量が多いと判断される。
【0040】
図11はシート給送装置の制御構成を示すブロック図である。中央演算装置(CPU)301及びメモリ302を有する制御部300は、残量検知センサ117の他に、タイマ304及び操作部305等に接続されている。操作部305は、画像形成装置200のユーザインターフェースであり、画像形成ジョブの開始を指示する印刷ボタン、画像形成装置200を休止状態とするスリープボタン、及び液晶パネル等のデバイスを備える。また、操作部305は、ユーザ操作による入力信号の受付及び画面表示の出力を行う制御構成を含む。制御部300は、CPU301がメモリ302に記憶されたプログラムを読出して実行可能であり、リフターモータM1、給送モータM2及びその他のアクチュエータを制御することにより、シート給送装置100の動作を制御する。
【0041】
以下、載置板111の昇降動作に関するシート給送装置100の制御方法について、
図12のフローチャートに沿って説明する。なお、以下のフローチャートの各工程は、制御手段としての制御部300によって実行される。また、以下の制御プロセスは、装置本体201に収納庫110が装着される度に開始され、収納庫110が引き出されるとリセットされる。
【0042】
装置本体201に対する収納庫110の装着が検知されると(
図12(a)のS101)と、載置板111のリフトアップ動作が開始される(S102)。シート高さ検知手段からの検知信号によって載置板111が給送位置まで上昇したことが検知されると、リフトアップ動作が終了してシート給送装置100は給送指令を待機する(S103)。この状態で、所定の時間(第1の時間)の間に給送指令があった場合(S104:Yes)、給送ユニット100BにシートSを給送させる給送処理が実行される(S106)。なお、給送指令とは、シートSの給送開始を要求する信号であり、画像形成ジョブを実行する場合に発せられる。所定の時間内に給送指令がなかった場合、後述の待機処理(S105、
図12(b))が実行される。
【0043】
給送処理においては、給送モータM2によって給送ユニット100Bが駆動され、画像形成ジョブの内容に応じて必要な枚数のシートSが画像形成部20へ向けて給送される。給送処理の実行中にシートSが減少してシート高さ検知手段の検知結果が変化した場合、最上位シートのシート高さを所定の位置に保つように追加のリフトアップ動作が適宜行われる。CPU301は、残量検知センサ117の検知結果に基づいて、給送処理の実行中に昇降板112が所定の角度を超えたか否か、つまりシート残量が所定量以下になったかどうかを監視する。
【0044】
給送処理の実行後、所定の時間(第2の時間)の間に次の給送指令があった場合(S107:Yes)、次の給送処理が開始される(S106)。一方、所定の時間内に給送指令がなかった場合、待機処理(S108)が開始される。
【0045】
図12(b)に示すように、待機処理においては、載置板111に載置されているシートSの残量に応じて待機状態における載置板111の位置が決定される。即ち、シートSの残量が多い場合(S111:Yes)、リフターモータ136の逆転駆動によって載置板111が下限位置まで下降し(S112)、次の給送指令が入るまで待機する状態となる(S113)。その後、給送指令があった場合、載置板111が給送位置までリフトアップされ(S114)、給送処理が開始される(S106)。一方、シートSの残量が少ない場合(S111:No)、リフターモータ136の回転が停止され、載置板111が給送位置に保持された状態で待機する状態となる(S115)。その後、給送指令があった場合、載置板111が給送位置に保持された状態のままで給送処理が開始される(S106)。
【0046】
このように、本実施例では、待機状態における載置板111の位置が下限位置(第1位置)と給送位置(第2位置)とで異なるモードを選択可能であり、載置板111に載置されたシートSの残量に応じてモード選択(S111)が行われる。載置板111に第1の量のシートSが積載されている場合、載置板111が収納庫110の底部110aによって支持される下限位置にある状態で次の給送処理を待機するモードが選択される。言い換えると、シート積載部が第1位置にある状態で給送処理の開始を待機する第1モードが選択される。これにより、待機状態において昇降手段が常に載置板111を給送位置に保持する場合に比べて、昇降手段に作用する負荷が低減され、昇降板112及びその回動軸113の変形等の不都合を回避することができる。
【0047】
一方、載置板111に第1の量より少ない第2の量のシートSが積載されている場合、載置板111が給送位置に保持された状態で次の給送処理を待機するモードが選択される。言い換えると、昇降手段にシート積載部を第2位置に保持させた状態で給送処理の開始を待機する第2モードが選択される。この場合、昇降手段に作用する負荷が小さいため、載置板111を給送位置に保持し続けたとしても変形が発生する可能性は小さい。そして、載置板111を給送位置に保持したままで次の給送処理が開始されることから、給送指令が発せられてから最初のシートSが給送されるまでの待ち時間が最小限に抑えられ、生産性向上に寄与することができる。
【0048】
ここで、載置板111の下限位置から給送位置までの移動距離はシートSの残量によって変化し、シートSの残量が多いほど移動距離が短くなる。従って、シートSの残量が多い場合は、給送処理を開始する前に載置板111を待機状態の下限位置から給送位置に移動させる工程(S114)が必要となるが、生産性への影響は比較的小さい。一方、シートSの残量が少ない場合は、載置板111を給送位置に保持しておくことで得られる生産性向上の利点が比較的大きなものとなる。
【0049】
ところで、シートSの昇降動作を長期間に亘って安定して行うための構成として、昇降手段を構成する部材や昇降手段に駆動力を伝達する歯車等の剛性を高めたり、モジュール性を高めて部材間の位置決め精度向上を図ったりすることが考えられる。また、他の方法として、装着状態における収納庫と装置本体の位置決め精度を高めるための嵌合部(例えば、収納庫110に突設したピンを装置本体201の凹部に挿入する構成)が考えられる。しかしながら、これらの方法はコスト低減及び省スペース化の妨げとなる場合があり、嵌合部を設ける場合には嵌合部自体の強度が必要となるため設計の自由度が損なわれる場合がある。また、昇降手段や歯車の剛性を高めたとしても、長期間使用する間にクリープ変形が生じる可能性がある。一方、本実施例の構成によれば、待機状態において昇降手段に作用する負荷が低減されるため、このような不都合を回避しつつシートSの昇降動作を長期間に亘って安定して行うことができる。
【0050】
なお、本実施例では、収納庫110の装着後所定の時間内に給送処理が行われない場合と、給送処理の実行後所定の時間内に次の給送処理が行われない場合との両方において、シートSの残量に応じた載置板111の昇降制御が行われるものとして説明した。しかしながら、いずれか一方の場合にのみこのような昇降制御を行う構成としてもよい。また、収納庫110の装着後に昇降制御が開始されるまでの時間(第1の時間)と、給送処理の実行後に昇降制御が開始されるまでの時間(第2の時間)とが異なる設定としてもよい。
【0051】
また、シートSの残量が多いか少ないかの判断を行うための閾値は、昇降手段として用いる部材の耐久性や、シート積載部に対する積載容量等を考慮して、適宜変更することが好ましい。さらに、本実施例では、収納庫110を装着した場合に載置板111が給送位置までリフトアップされる構成としたが、収納庫110が装着された段階でシートSの積載量に応じて載置板111を上昇させるか否かを判断する構成としてもよい。この場合、最上位シートの上面を直接的に検知可能なセンサ等、載置板111が下限位置にある状態で載置板111に積載されたシートの量を検知可能な構成を用いると好適である。
【実施例2】
【0052】
次に、第2の実施例に係るシート給送装置について説明する。本実施例では、画像形成装置の休止状態において載置板を下限位置まで移動させる動作が行われる。ただし、休止状態とは、所謂省電力モード又はスリープモード等、通常モードに比べて画像形成動作を行っていない状態(スタンバイ状態)の消費電力が小さくなるように設定された電力モードである。休止状態においては、例えば定着装置40の熱源42に対する電力供給が抑制又は遮断され、また、残量検知センサ117等のセンサ類への通電が停止される。
【0053】
休止状態は、例えば画像形成ジョブの入力がない状態で一定の時間が経過したことをトリガーとして、又はユーザによってスリープボタン等が押圧されたことをトリガーとして開始される。また、例えば休止状態で画像形成ジョブの入力を検知した場合、又はスリープボタンが再度押圧された場合に、画像形成装置は休止状態から通常モードへと復帰する。
【0054】
以下、本実施例におけるシート給送装置の制御方法について、
図13のフローチャートに沿って説明する。なお、以下のフローチャートの各工程は、実施例1と同様に画像形成装置200に搭載された制御部300によって実行される。また、シート給送装置を構成する部材等、実施例1と共通する要素には実施例1と同符号を付して説明を省略する。
【0055】
実施例1と同様に、ユーザがシートSを収納庫110に積載して装置本体201に装着する度に以下の制御プロセスが開始され、収納庫110が装置本体201から引出されると制御プロセスがリセットされる。装置本体201のセンサによって収納庫110の装着が検知(S201)されると、載置板111のリフトアップ動作が開始され(S202)、載置板111が給送位置まで上昇した状態で待機する(S203)。載置板111のリフトアップが行われてから所定の時間内に給送指令があった場合(S205:Yes)、給送指令に基づいて給送処理が開始される(S206)。給送処理の実行後、所定の時間内に次の給送指令があった場合、給送指令に基づいて次の給送処理が開始される。
【0056】
なお、給送処理の実行中にシートSが減少してシート高さ検知手段の検知結果が変化した場合、実施例1と同様に、最上位シートのシート高さを所定の位置に保つように追加のリフトアップ動作が適宜行われる。CPU301は、残量検知センサ117の検知結果に基づいて、給送処理の実行中に昇降板112が所定角度を超えたか否か、つまりシート残量が所定量以下になったかどうかを監視する。
【0057】
一方、給送指令の待機中にスリープボタンが押圧された場合(S204:Yes)、休止状態への移行が決定する(S207)。また、載置板111のリフトアップから所定の時間が経過しても給送指令がなかった場合、又は給送処理の実行後、所定の時間内に次の給送指令がなかった場合にも(S205:No)、休止状態への移行が決定する(S207)。この場合、リフターモータ136の逆転駆動によって載置板111が下限位置へと下降し(S208)、定着装置40に対する電力供給の停止等と合わせて休止状態に入る。画像形成ジョブの入力等、休止状態からの復帰トリガーとなる信号があった場合(S209:Yes)、リフターモータ136の正転駆動によって載置板111が給送位置までリフトアップされる(S202,S203)。その後、所定の時間内に給送指令があった場合には給送処理が実行されるが、給送指令がない場合には、再び休止状態へ移行する。
【0058】
このように、本実施例では、通常状態から休止状態に切換わった際に載置板111を下限位置へと下降させ、通常状態に復帰する際に載置板111を給送位置まで上昇させる制御(S207〜S209)が行われる。言い換えると、シート積載部が第2位置にある状態で第1状態から消費電力の小さい第2状態に切換わる場合、昇降手段によってシート積載部を第2位置から第1位置に移動させる処理が行われる。また、第2状態から第1状態に切換わる場合、昇降手段によってシート積載部を第1位置から第2位置へ移動させる処理が行われる。
【0059】
これにより、実施例1と同様に、給送指令が行われずに待機する休止状態において昇降手段に作用する負荷が低減されるため、昇降板112及びその回動軸113の変形等の不都合を回避することができる。これにより、長期間に亘ってシートの昇降を安定して行う構成を実現することができる。
【0060】
(他の実施形態)
以上の実施例1,2で説明した制御方法は、互いに組み合わせて用いても構わない。例えば、通常状態と休止状態とを切換可能なシート給送装置において、実施例1で説明した制御方法を通常状態においてのみ実行し、シートSの残量に関わらず休止状態では載置板を下限位置に移動させる構成が考えられる。また、通常状態から休止状態から切換わる際に、シートSの残量に応じて下限位置に移動させるか否かを決定する構成としてもよい。
【0061】
また、以上の実施例1,2では、シート給送装置として画像形成装置200の内部に収容される収納庫110を有する構成を例示したが、本技術は他の構成を有するシート給送装置にも適用可能である。即ち、手差し給送装置60や、あるいは画像形成装置200にオプションとして接続される大容量デッキ等にも本技術を適用することで、上記実施例と同様の効果を得ることができる。例えば、支持手段の他の例である手差しトレイ61(
図1参照)に、シート積載部として昇降可能な昇降板を取付け、シートの残量に応じて昇降板の位置を制御する構成とすればよい。
【0062】
また、上記実施例1,2では画像形成装置として中間転写型カラー方式の電子写真装置を例に挙げて説明したが、例えば、直接転写型モノクロ方式の電子写真装置、及びインクジェット方式の画像形成手段を備える装置にも本技術は適用可能である。また、シート給送装置は、記録媒体であるシートを画像形成手段へ給送するものに限らず、画像読取装置において原稿となるシートを画像読取部へ給送するものであってもよい。画像読取部とは、シートを光学的に走査し、画像読取装置に搭載される光電変換素子によってシートからの反射光を電気信号に変換することを可能とする光学ユニットである。
【0063】
また、上記実施例1,2では、リフターモータ136の逆転動作時の回転量について、載置板111が確実に下限位置へ下降するようにマージンを設定し、モータの駆動時間を長めに設定している。しかし、例えば残量検知センサ117がシートSの残量を複数の検知レベルで検知可能な構成とし、又は載置板111の位置を直接的に検知可能なセンサを配置して、リフターモータ136の回転量をより精密に制御する構成としてもよい。その場合、上述のカップリング140のようにリフターモータ136と昇降板112との駆動連結を解除する構成を省略可能である。
【0064】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。