(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971703
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】放電ランプ、放電ランプ用電極および放電ランプ用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 61/073 20060101AFI20211111BHJP
H01J 9/02 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
H01J61/073 B
H01J9/02 L
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-155634(P2017-155634)
(22)【出願日】2017年8月10日
(65)【公開番号】特開2019-36423(P2019-36423A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】林 武弘
(72)【発明者】
【氏名】酒井 規行
【審査官】
大門 清
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−096965(JP,A)
【文献】
特開2003−331780(JP,A)
【文献】
特開2006−221934(JP,A)
【文献】
特開2014−071941(JP,A)
【文献】
特開平11−097166(JP,A)
【文献】
特開2003−234083(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0284335(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/00−61/28
H01J 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管と、
前記放電管内に対向配置される一対の電極とを備え、
少なくとも一方の電極が、軸方向に沿った筒状凹部を有し、前記筒状凹部の凹み部分に空間が形成されるとともに、前記筒状凹部の所定の表面から電極表面まで延びる貫通孔が形成され、
前記筒状凹部の所定の表面において、前記貫通孔に向けて前記電極表面へ近づく方向に傾斜している傾斜面が、設けられ、
前記筒状凹部の所定の表面が、前記傾斜面と連続的に繋がる平面を有することを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記傾斜面が、前記貫通孔の端部を、傾斜面端部としていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記傾斜面が、前記貫通孔の端部を囲むように前記貫通孔の周囲に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記平面が、前記筒状凹部の所定の表面に垂直な表面と繋がっていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記傾斜面の電極軸方向もしくは電極軸垂直方向に沿った長さが、前記平面の電極軸方向もしくは電極軸垂直方向に沿った長さよりも長いことを特徴とする請求項1または4に記載の放電ランプ。
【請求項6】
前記貫通孔が、前記筒状凹部の底面から電極後端面まで延び、
前記傾斜面が、前記筒状凹部の底面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項7】
電極支持棒が、前記貫通孔に挿入されていることを特徴とする請求項6に記載の放電ランプ。
【請求項8】
放電管と、
前記放電管内に対向配置される一対の電極とを備え、
少なくとも一方の電極が、軸方向に沿った筒状凹部を有し、前記筒状凹部の凹み部分に空間が形成されるとともに、前記筒状凹部の所定の表面から電極表面まで延びる貫通孔が形成され、
前記筒状凹部の所定の表面において、前記貫通孔に向けて前記電極表面へ近づく方向に傾斜している傾斜面が、設けられ、
前記貫通孔が、前記筒状凹部の側面から電極側面まで延び、
前記傾斜面が、前記筒状凹部の側面に形成されていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項9】
放電管と、
前記放電管内に対向配置される一対の電極とを備え、
少なくとも一方の電極が、軸方向に沿った筒状凹部を有し、前記筒状凹部の凹み部分に空間が形成されるとともに、前記筒状凹部の所定の表面から電極表面まで延びる貫通孔が形成され、
前記筒状凹部の所定の表面において、前記貫通孔に向けて前記電極表面へ近づく方向に傾斜している傾斜面が、設けられ、
前記少なくとも一方の電極が、前記筒状凹部に対して同軸的に配置される柱状部を有することを特徴とする放電ランプ。
【請求項10】
軸方向に沿った筒状凹部を有する後端側部材と、
前記筒状凹部に対し同軸的な柱状部を有し、前記後端側部材もしくは前記後端側部材と接合する中間部材と接合する先端側部材とを備え、
前記筒状凹部の凹み部分に放熱空間が形成されるとともに、前記筒状凹部の所定の表面から電極表面まで延びる貫通孔が形成され、
前記筒状凹部の所定の表面において、前記貫通孔に向けて前記電極表面へ近づく方向に傾斜している傾斜面が、設けられていることを特徴とする放電ランプ用電極。
【請求項11】
軸方向に沿った筒状凹部を有する後端側部材の凹部底面もしくは凹部側面に対して、前記後端側部材の表面まで延びる貫通孔と、前記貫通孔の周囲に傾斜面を形成し、
前記後端側部材もしくは前記後端側部材と接合する中間部材と、柱状部を有する先端側部材とを固相接合することを特徴とする放電ランプ用電極の製造方法。
【請求項12】
固相接合した前記電極を洗浄し、
洗浄した電極に対して乾燥処理を行い、
乾燥処理後の電極に対して熱処理を行うことを特徴とする請求項11に記載の放電ランプ用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極を備えた放電ランプに関し、特に、電極の内部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
放電ランプは、点灯中に電極先端部が高温となり、タングステンなどの電極材料が溶融、蒸発し、放電管が黒化して、ランプ照度低下を招く。電極先端部の過熱を防ぐため、耐久性のある金属から成る電極先端部と、熱伝導性のより高い金属から成る胴体部とを別々に成形し、固相接合などによって接合する。
【0003】
例えば、SPSなどの固相接合によって電極を構成することができる(特許文献1参照)。複数の部材を接合して電極を構成することによって、電極が大型化しても耐久性を持たせることができると同時に、熱伝導性の優れた電極を構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5472915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、露光対象物の大型化、スループット向上のためにランプの高出力化(大電力化)が求められている。これに伴ってランプ点灯中の電極温度も高くなる。そこで、先端側部材と胴体部側部材とを固相接合するとき、部材間に隙間(空間)を設け、その隙間を放熱空間として機能させることが考えられる。
【0006】
しかしながら、このような空間を形成した場合、電極製造工程に含まれる電極洗浄に問題が生じる。電極洗浄に使用される洗浄液が空間に入り込むと、その後の乾燥時において洗浄液が排出されにくく、電極内部に洗浄液が残りやすい。このまま後工程の熱処理を行って放電ランプに組み込むと、残った洗浄液によって放電管が汚れ、照度低下が生じてしまう。
【0007】
したがって、放電ランプの点灯中に放電管を汚さずに、電極の温度上昇を効果的に抑えることができる電極構造が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放電ランプは、放電管と、放電管内に対向配置される一対の電極とを備え、少なくとも一方の電極が、軸方向に沿った筒状凹部を有し、筒状凹部の凹み部分に空間が形成されるとともに、筒状凹部の所定の表面から電極表面まで延びる孔(以下では、貫通孔という)が形成されている。
【0009】
そして、筒状凹部の所定の表面において、貫通孔に向けて電極表面へ近づく方向に傾斜している傾斜面が設けられている。所定の表面は、電極軸垂直方向に沿った筒状凹部底面、あるいは、電極軸方向に沿った筒状凹部側面であってもよい。
【0010】
ここでの「空間」は、例えば放熱機能をもたせる空間として形成することが可能であり、筒状凹部に同軸的に柱状部を配置し、その隙間を放熱空間として形成することが可能である。また、ここでの貫通孔は、電極表面から電極内の空間に跨って形成されている孔を表し、孔が塞がれた状態、塞がれていない状態いずれも含まれる。したがって、電極使用時に電極内の空間と電極外部とを空間的に繋げる(連通させる)構造を持ってもよく、あるいは、製造工程において電極内の空間と電極外部とを連通させ、その後、電極支持棒などの部材によって塞がれたような構成にしてもよい。
【0011】
本発明では、電極洗浄工程において、空間に残る洗浄液などの液体が、傾斜面に沿って電極外部に排出される。貫通孔付近で溜まることなく洗浄液が貫通孔を通るようにすることを考慮すると、貫通孔の端部を傾斜面端部とするように傾斜面を形成することができる。
【0012】
傾斜面を設ける加工処理を容易にすること等を考慮すれば、貫通孔が形成される筒状凹部の表面において、傾斜面と連続的に繋がる平面を設けるのがよい。傾斜面と平面が連続的に繋がっていれば、平面に溜まった残留液が、傾斜面に移動した後そのまま貫通孔から排出される。
【0013】
平面については、所定表面のいずれにおいても形成可能であるが、筒状凹部の角側に形成することによって、角側に溜まる残留液が電極外部へ容易に排出される。一方で、できる限り残留液を速やかに電極外部へ排出させることを考慮すれば、傾斜面の形成された方向(電極軸方向もしくは電極軸垂直方向)に沿った長さを、平面の電極軸方向もしくは電極軸垂直方向に沿った長さよりも長くすることが可能である。
【0014】
例えば、貫通孔は、筒状凹部の底面から電極後端面まで延びるように形成することが可能であり、傾斜面は、筒状凹部の底面に形成される。この場合、電極支持棒に熱輸送を効率よく行うことを考慮すれば、電極支持棒の挿入される孔を貫通孔とすることも可能である。また、貫通孔を、筒状凹部の側面から電極側面まで延びるように形成することも可能であり、傾斜面は、筒状凹部の側面に形成される。この場合、電極外部と電極内部の空間とが空間的に繋がるように構成することも可能である。
【0015】
本発明の他の態様における放電ランプ用電極は、軸方向に沿った筒状凹部を有する後端側部材と、筒状凹部に対し同軸的な柱状部を有し、後端側部材もしくは後端側部材と接合する中間部材と接合する先端側部材とを備え、筒状凹部の凹み部分に放熱空間が形成されるとともに、筒状凹部の所定の表面から電極表面まで延びる貫通孔が形成され、筒状凹部の所定の表面において、貫通孔に向けて電極表面へ近づく方向に傾斜している傾斜面が設けられている。
【0016】
本発明の他の態様における放電ランプ用電極の製造方法は、軸方向に沿った筒状凹部を有する後端側部材の凹部底面もしくは凹部側面に対して、後端側部材の表面まで延びる貫通孔と、貫通孔の周囲に傾斜面を形成し、後端側部材もしくは後端側部材と接合する中間部材と、柱状部を有する先端側部材とを固相接合する。固相接合の後には、例えば、固相接合した電極を洗浄し、洗浄した電極に対して乾燥処理を行い、乾燥処理後の電極に対して熱処理を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放電ランプにおいて、放電管を汚すことなく、効果的に放熱を行って電極温度を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態である放電ランプの平面図である。
【
図4】電極の製造工程の一部を簡略して示した図である。
【
図5】第2の実施形態である電極の概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、第1の実施形態である放電ランプの平面図である。
【0021】
ショートアーク型放電ランプ10は、高輝度の光を出力可能な大型放電ランプであり、透明な石英ガラス製の略球状放電管(発光管)12を備え、放電管12内には、タングステン製の一対の電極20、30が対向配置される。放電管12の両側には、石英ガラス製の封止管13A、13Bが放電管12と連設し、一体的に形成されている。放電管12内の放電空間DSには、水銀とハロゲンやアルゴンガスなどの希ガスが封入されている。
【0022】
陰極である電極20は電極支持棒17Aによって支持されている。封止管13Aには、電極支持棒17Aが挿通されるガラス管(図示せず)と、外部電源と接続するリード棒15Aと、電極支持棒17Aとリード棒15Aを接続する金属箔16Aなどが封止されている。陽極である電極30についても同様に、電極支持棒17Bが挿通されるガラス管(図示せず)、金属箔16B、リード棒15Bなどのマウント部品が封止されている。また、封止管13A、13Bの端部には、口金19A、19Bがそれぞれ取り付けられている。
【0023】
一対の電極20、30に電圧が印加されると、電極20、30の間でアーク放電が発生し、放電管12の外部に向けて光が放射される。ここでは、1kW以上の電力が投入される。放電管12から放射された光は、反射鏡(図示せず)によって所定方向へ導かれる。例えば露光装置に放電ランプ10が組み込まれた場合、放射光はパターン光となって基板などに照射される。
【0024】
図2は、本実施形態の電極(陽極)30の概略的断面図である。なお、電極(陰極)20についても同様の構造にすることが可能である。
【0025】
電極30は、電極支持棒17Bと繋がる後端側部材32と、電極先端面30Sを有する先端側部材34からなり、後端側部材32と先端側部材34を接合することで電極30が構成されている。ここでは、後端側部材32と先端側部材34がSPSなどの固相接合によって接合されている。接合の際、先端側部材34と後端側部材32との間にレニウム、タンタル、モリブデン、あるいはこれらの合金といった中間部材(インサート材)を挟んでもよく、接合面間を密着化できる。
【0026】
後端側部材32は、軸方向X(以下では、電極軸Xともいう)に沿って厚さ一定の円柱状部材であり、電極先端側に向けて筒状凹部40が同軸的に形成されている。先端側部材34では、円錐台部分から電極支持棒側に向けて柱状部50(ここでは円柱状)が筒状凹部40に対して同軸的に形成、位置されている。後端側部材32は、その端部32Eにおいて、先端側部材34の端部34Eと固相接合している。
【0027】
筒状凹部40と柱状部50との間には、電極軸方向Xおよびそれに垂直な電極軸垂直方向に沿って、隙間(放熱空間)60が柱状部50の周囲全体に渡って形成されている。ここでは、電極軸垂直方向に沿った隙間部分を60D、軸方向Xに沿った隙間部分を60Vとしている。隙間部分60D、60Vは空間的に繋がっている。隙間60は、電極30内に形成されて密閉空間となっており、有底管状の空間を形成している。隙間60には、伝熱体のような部材は設けられていない。
【0028】
ランプ点灯中、先端側部材34の温度が上昇し、先端側部材34の熱が柱状部50に伝わる。柱状部50の熱は、柱状部50の側面50S、端面50Eから隙間60に対して放射される。その結果、先端側部材34の熱は、後端側部材32に対して電極軸方向Xだけでなく電極軸垂直方向にも伝わることとなる。後端側部材32に移動した熱は、電極外表面30Mから放電空間DSへ、また電極支持棒17B側へ伝わる。
【0029】
電極30には、筒状凹部40(後端側部材32)の電極軸垂直方向に沿った表面(以下、底面という)40Sから電極支持棒側の電極外表面(以下、電極後端面という)32Sに渡って延びる径方向断面円状の貫通孔90が形成されており、電極後端面32Sから電極支持棒17Bが貫通孔90に挿入固定された構造となっている。電極支持棒17Bの先端面17Sは、隙間60に露出している。
【0030】
本実施形態では、筒状凹部40の底面40Sにおいて、傾斜面70が貫通孔90の端部を囲むようにその周囲に形成されている。傾斜面70は、貫通孔90に向けて電極支持棒側に近づく方向、すなわち柱状部50から離れる方向に傾斜している。以下、傾斜面70について説明する。
【0031】
図3は、
図2の一部を示した電極断面図である。ただし、
図3では、
図2の上下方向を逆にして描いており、そのため電極支持棒側が下方に位置する。また、電極支持棒17Bはここでは図示していない。
【0032】
後端側部材32に形成される筒状凹部40は、電極軸Xに関して対称的形状であり、筒状凹部40の底面40Sも、電極軸Xに関して対称的である。底面40Sは、平面72と傾斜面70から構成されており、傾斜面70は、筒状凹部40の電極軸Xに沿った内側側面(以下、側面という)40Vと繋がる平面72と連続的に繋がっている。
【0033】
傾斜面70は、貫通孔90の円状端部90T周りの環状面として形成され、ここでは底面40Sに対する傾きθが一定である。ただし、電極支持棒側への傾きをθとしている。また、傾斜面70の電極軸垂直方向に沿った長さ(A1+A2)は、平面72の電極軸垂直方向に沿った長さ(B1+B2)よりも長い。傾斜面70と繋がる平面72は、筒状凹部40の側面40Vと繋がっているが、その繋がる部分には所定の曲率をもつ湾曲面が形成されている。
【0034】
このような傾斜面70を筒状凹部40(後端側部材32)の底面に形成することによって、電極製造工程に含まれる洗浄工程のとき、洗浄液が隙間60に残留するのを防ぐことができる。以下、これについて説明する。
【0035】
図4は、電極の製造工程の一部を簡略して示した図である。
【0036】
まず、筒状凹部40を形成した後端側部材32の電極軸垂直方向に沿った底面40Sに対し、貫通孔90と傾斜面70を形成する。そして、柱状部50を有する先端側部材34と、後端側部材32とを固相接合する。電極には、固相接合によって金属粉末などが電極表面に残ったり、電極内部(筒状凹部40内)や電極表面に汚れが付着していたりする。これを除去するため、固相接合の後に電極洗浄を行う。具体的には、水やアルコール成分を含む洗浄液によって電極を洗う。例えば、超音波洗浄などが適用できる。この段階では、貫通孔90に電極支持棒17Bが挿入されていないため、隙間60が電極外部と貫通孔90を通じて空間的に繋がり、洗浄液は隙間60に入り込む。
【0037】
洗浄後、電極後端面32Sを下側にし、接合した電極に対して乾燥処理を行う。隙間60に残った洗浄液(
図4において符号“K”で示す)は、筒状凹部40の底面40Sに流れ落ち、傾斜面70によって貫通孔90に流れ込み、そのまま電極外部に流れていく。これによって、電極内部に残った洗浄液は電極外部に排出される。乾燥処理が終了すると、定められた時間、温度に従い、熱処理を行う。熱処理後、電極支持棒を貫通孔90に挿入する。なお、
図4においては、接合前に先端側部材34と後端側部材32を電極形状に加工しているが、接合後に円錐台部分を形成するなどの電極形状加工を実施してもよく、このときの金属粉末や汚れを洗浄するようにしてもよい。また、貫通孔90に対する電極支持棒の径に合わせた追加工も接合後に可能である。
【0038】
このように本実施形態によれば、筒状凹部40と柱状部50とを同軸的に対向配置させるように先端側部材34と後端側部材32とを固相接合することによって、隙間(空間)60を形成した電極30が構成される。そして、筒状凹部40の底面40Sにおいて、電極支持棒17Bが挿入される貫通孔90の周囲に傾斜面70が形成される。
【0039】
放熱空間として機能する隙間60を設けることにより、電極先端側の過熱を抑えることができる。特に、隙間60へ放熱する部分の形状を柱状部50として形成することによって表面積が増え、電極の温度上昇を効果的に抑えることができる。
【0040】
傾斜面70が、貫通孔90に近くなるほど電極後端面32S側に近くなるような方向に傾斜しているため、洗浄後に液体を確実に排出することができる。その結果、点灯中に放電管が汚れるのを防ぐことになり、放電ランプの寿命を延ばすことができる。
【0041】
また、底面40Sをすべて傾斜面70で構成せず、貫通孔90から離れた部分に傾斜面70と繋がる平面72を電極軸垂直方向に沿って形成している。これにより、傾斜面70を形成する加工が容易となる。また、筒状凹部40の側面40Vと底面40Sとの繋ぎ部分を湾曲面として加工することが容易となり、これによって、筒状凹部40のような肉厚が薄い部材を固相接合するときに生じやすい接合時の変形、割れなどを防止することができる。
【0042】
一方で、傾斜面70は、貫通孔端部90Tをその一端(傾斜面端部)として平面72まで延びている。すなわち、傾斜面70と貫通孔90との間に平面が形成されていない。これよって、残留液体がスムーズに電極外部に排出される。また、傾斜面70の長さ(A1+A2)が平面72の長さ(B1+B2)よりも長いため、隙間60の角(湾曲面)に溜まりやすい液体を電極外部へ効率よく排出することができる。
【0043】
傾斜面70は、筒状凹部40の底面40Sに形成されているため、柱状部50の形状などに制限されずに液体を排出することができる。また、電極支持棒17Bを挿入する貫通孔90を液体排出用孔として利用するため、電極支持棒17Bの径に合わせた孔の形状修正を行う追加工などが容易となる。一方、電極支持棒17Bを挿入するとき、貫通孔90に溜まっているガスを隙間60に逃すことになり、電極支持棒17Bの酸化、電極支持棒抜けを防ぐことができ、電極支持棒圧入の信頼性が向上する。
【0044】
一方、電極支持棒17Bの先端面17Sが隙間60に対して露出するため、隙間60の熱が直接的に電極支持棒17Bに伝達することになり、電極先端側過熱を防ぐことができる。また、先端面17Sと隙間60との間に形成される空間が、電極温度低下に寄与する。
【0045】
なお、電極支持棒17Bが挿入される貫通孔90とは別に、細径の貫通孔を貫通孔90に沿って形成することも可能である。この場合、細径の貫通孔の周囲に傾斜面を形成すればよい。残留液の排出とともに、点灯時に放電空間DS中の流体(希ガスやハロゲンガス、水銀蒸気)が細径の貫通孔を通じて流入、流出し、柱状部50や隙間60の熱を外部に逃すことができる。傾斜面70に関しては、その傾き角度を一定に限定する必要はなく、所定の曲率半径をもつ湾曲面など、傾き具合などを任意に定めた傾斜面を構成することが可能である。
【0046】
次に、
図5を用いて第2の実施形態である電極について説明する。第2の実施形態では、筒状凹部の電極軸方向に沿った側面に貫通孔と傾斜面が形成されている。
【0047】
陽極30’では、後端側部材32(筒状凹部40)の外周面において、放熱構造44が周方向全体に渡って形成されている。また、先端側部材34の柱状部50においても、放熱構造54が周方向全体に渡って形成されている。放熱構造44、54は、例えば熱による溶融や切削加工など既知の手段によって形成可能であり(例えば微細な凹凸などの表面積が増える構造)、また、放熱素材(例えば酸化膜の放熱層)などで側面を覆うようにしてもよく、カーボンナノチューブあるいはカーボンナノチューブを含む放熱性材料を適用してもよい。放熱構造の形成位置は限定されず、温度上昇を効果的に抑制する位置に形成する。
【0048】
陽極30’には、隙間(放熱空間)60と電極側面となる電極外表面30Mとを空間的に繋げる一対の貫通孔110A、110Bが、電極軸Xに関し対称的な位置に形成されている。一対の貫通孔110A、110Bは、電極軸垂直方向に沿って略平行な孔であり、放電空間DS中の流体(希ガスやハロゲンガス、水銀蒸気)が貫通孔110A、110Bを通じて流入、流出し、柱状部50や隙間60の熱を外部に逃す。
【0049】
筒状凹部40の電極軸Xに沿った側面40Vには、傾斜面70A、70Bが一対の貫通孔110A、110Bの周囲に形成されている。傾斜面70A、70Bは、一対の貫通孔110A、110Bにそれぞれ向けて電極外表面30Mに近づく方向、すなわち、柱状部50から離れる方向に傾斜している。したがって、電極製造工程の中で乾燥処理を行うとき、電極を横向きに設置することによって、隙間60の残留液を貫通孔110Aもしくは貫通孔110Bを通じて外部に排出することができる。
【0050】
なお、一対の貫通孔を複数設けてもよく、また、どちらか一方の電極外表面側に1つあるいは複数の貫通孔を設けてもよい。筒状凹部40の側面40Vには、貫通孔の形成に合わせて傾斜面が形成される。また、一対の貫通孔110A、110Bを電極軸垂直方向に対し傾斜するように形成してもよく、電極先端面側に貫通孔を設けてもよい。貫通孔の数、径、位置、孔形成角度などは、ランプサイズ、電極サイズなどに応じて適宜定めることが可能であり、内部の隙間側に対し、少なくとも一つの孔に合わせてその端部周囲に傾斜面を形成すればよい。例えば、第1実施形態に示した放電ランプに対し、第2実施形態で示した貫通孔110A、110Bと、放熱構造44、54を形成することが可能である。この場合、傾斜面70A、70Bを形成しない形態としてもよい。
【0051】
柱状部、筒状凹部の形状は第1、第2の実施形態に示した形状以外も適用可能であり、レニウム、タンタル、モリブデン、あるいはこれらの合金をインサート部材として筒状凹部と柱状部の間に設け、接合してもよい。また、柱状部を形成しない構成とすることもでき、例えば、筒状凹部の凹み部分を空間で占めるように構成してもよい。
【0052】
なお、ショートアーク型放電ランプ以外の放電ランプに対して適用することも可能であるが、電極の温度上昇を抑えることができることから、1kW以上の比較的大きな電力の放電ランプに好適である。また、接合方法は固相接合(SPS、HPなど)が好適だが、他の接合方法(例えば溶融接合)も適用できる。さらに、柱状部、先端側部材、後端側部材は、タングステンやモリブデン、あるいはこれらの合金、セラミックなどでもよく、またエミッターやドープ剤を含有させてもよく、適宜選択できる。
【符号の説明】
【0053】
10 放電ランプ
30 電極(陽極)
32 後端側部材
34 先端側部材
40 筒状凹部
50 柱状部
60 隙間(放熱空間)
70 傾斜面