特許第6971708号(P6971708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971708
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】シート給送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/52 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   B65H3/52 310B
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-159736(P2017-159736)
(22)【出願日】2017年8月22日
(65)【公開番号】特開2019-38636(P2019-38636A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤島 史弥
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−124626(JP,A)
【文献】 特開2013−252913(JP,A)
【文献】 特開2012−201443(JP,A)
【文献】 特開2005−008416(JP,A)
【文献】 実開平03−062035(JP,U)
【文献】 特開2016−052950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00− 3/68
G03G 15/00
B41J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載される積載面を有する積載部と、
前記積載面とのなす角が鈍角となる傾斜面を有する分離斜面部と、
前記積載面に積載されたシートを前記分離斜面部に向けて給送する給送部と、
前記積載面に積載されるシートの先端が当接する当接面を有し、前記当接面の少なくとも一部が前記分離斜面部より前記給送部に近い位置に位置する第1位置と、前記当接面が前記分離斜面部より前記給送部に遠い位置に位置する第2位置と、に移動可能な当接部材と、
駆動力を発生させる駆動源と、
1回転毎に停止制御される回転体を有し、前記回転体を介して前記給送部に前記駆動源の駆動力を伝達可能な伝達機構と、
前記回転体と連動して、前記回転体が停止している際に前記当接部材を前記第1位置に位置させ、前記回転体が回転する際に前記当接部材を前記第1位置から前記第2位置に移動させた後、前記第2位置から前記第1位置に向けて移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記給送部によって給送されたシートが前記当接部材に到達する前に前記当接部材を前記第1位置から前記第2位置に移動させ、シートが前記当接部材を通過中に前記当接部材を前記第2位置から前記第1位置に移動させる、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記回転体が1回転することで前記給送部は前記積載面に積載されたシートを1枚給送する
ことを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記回転体に設けられる位置決め部と、前記位置決め部に係合可能な係合部を有し、前記当接部材に接続されるリンク部材と、前記当接部材が前記第2位置に向けて移動するように前記リンク部材を付勢する付勢部と、を有し、
前記当接部材は、前記位置決め部が前記リンク部材の前記係合部に係合することで、前記付勢部の付勢力に抗して前記第1位置に保持される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記回転体が停止している際に前記係合部に係合する、
ことを特徴とする請求項3に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記位置決め部は、前記回転体の回転中心に対して径方向に異なる位置に配置される、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記リンク部材は、前記位置決め部に押圧されるカム部を有し、
前記位置決め部は、前記回転体が1回転する際に、前記係合部との係合が解除され、前記カム部を押圧し、前記係合部に係合する動作を行う、
ことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記リンク部材は、前記位置決め部と前記係合部との係合が解除されることにより前記当接部材を前記第2位置に位置させるように前記付勢部の付勢力によって移動し、かつ前記カム部が前記位置決め部によって前記付勢部の付勢力に抗して押圧される際に、前記当接部材を前記第2位置から前記第1位置に向けて移動させ、
前記カム部は、前記位置決め部によって押圧されることで、前記付勢部の付勢力によって前記リンク部材が移動する速度よりも遅い速度で前記リンク部材を移動させる、
ことを特徴とする請求項6に記載のシート給送装置。
【請求項8】
前記分離斜面部は、前記第2位置に位置する前記当接部材が格納される開口部及び前記傾斜面を有する本体部と、前記傾斜面に沿って配置され複数の凹凸を有する分離部材と、を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項9】
前記積載面と前記第1位置に位置する前記当接部材の前記当接面とのなす角は鋭角である、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項10】
前記駆動源は、一方向にのみ回転するモータである、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置によって給送されたシートに画像を形成する画像形成部と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを給送するシート給送装置及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給紙ローラによって給送されたシートを1枚ずつ分離するための傾斜面部材を有するシート給送装置が提案されている(特許文献1参照)。傾斜面部材は、シートが積載される給紙トレイに対して鈍角をなす傾斜面を有し、給紙ローラによって給送されたシートは、この傾斜面を通過する際に1枚ずつ分離される。傾斜面部材には、開口が形成されており、この開口からは、シートの先端が突き当たる突き当て部材が突出している。給紙トレイに挿入されるシートは、突出位置に位置する突き当て部材に先端が突き当たることで適正なセット位置にセットされる。
【0003】
突き当て部材は、傾斜面から退避する退避位置に向けてバネ部材によって付勢されており、バネ部材の付勢力に抗して、カム部材によって押し出されることによって突出位置に位置決めされる。カム部材は、モータによって駆動し、モータが正逆駆動することで、カム部材を突出位置又は退避位置に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−052950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシート給送装置は、複数枚のシートに連続して画像形成するジョブにおいて、ジョブの初めに突き当て部材を退避位置に位置させ、かつジョブの終了時に突き当て部材を突出位置に位置させるようにカム部材を制御する。このため、ジョブの途中で傾斜面にもたれかかったシートを突き当て部材が押し戻すことがなく、給送不良を起こす虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、シートの画像不良を低減可能なシート給送装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シート給送装置において、シートが積載される積載面を有する積載部と、前記積載面とのなす角が鈍角となる傾斜面を有する分離斜面部と、前記積載面に積載されたシートを前記分離斜面部に向けて給送する給送部と、前記積載面に積載されるシートの先端が当接する当接面を有し、前記当接面の少なくとも一部が前記分離斜面部より前記給送部に近い位置に位置する第1位置と、前記当接面が前記分離斜面部より前記給送部に遠い位置に位置する第2位置と、に移動可能な当接部材と、駆動力を発生させる駆動源と、1回転毎に停止制御される回転体を有し、前記回転体を介して前記給送部に前記駆動源の駆動力を伝達可能な伝達機構と、前記回転体と連動して、前記回転体が停止している際に前記当接部材を前記第1位置に位置させ、前記回転体が回転する際に前記当接部材を前記第1位置から前記第2位置に移動させた後、前記第2位置から前記第1位置に向けて移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記給送部によって給送されたシートが前記当接部材に到達する前に前記当接部材を前記第1位置から前記第2位置に移動させ、シートが前記当接部材を通過中に前記当接部材を前記第2位置から前記第1位置に移動させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、給送部に接続され1回転毎に停止制御される回転体と連動して、当接部材が第1位置と第2位置との間で移動するので、シートを1枚給送する毎に当接部材を第1位置に位置させることができ、シートの画像不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】プリンタを示す全体概略図。
図2】シート給送装置を示す斜視図。
図3】シート給送装置を示す断面図。
図4】(a)は突出位置に位置する突き当て部材を示す断面図であり、(b)は退避位置に位置する突き当て部材を示す断面図。
図5】伝達機構及び移動機構を示す斜視図。
図6】(a)は制御ギヤが待機位置に位置している状態を示す背面図であり、(b)は制御ギヤが待機位置から所定量回転した状態を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔全体構成〕
以下、本実施の形態について説明する。画像形成装置としてのプリンタ10は、電子写真方式のモノクロレーザビームプリンタである。プリンタ10は、図1に示すように、シートSに画像を形成する画像形成部14と、シート給送装置13と、定着器15と、排出ローラ対6と、を有している。
【0011】
シート給送装置13は、シート給送装置13の各部を含むプリンタ10の各部を制御する制御部80を有している。プリンタ10は、制御部80の制御の下、コンピュータ等の外部機器から入力される画像情報に基づいて、シート給送装置13によって給送されたシートSに画像を形成する。本実施の形態では、制御部80はプリンタ10を制御する制御基板に設けられているが、シート給送装置13をユニットで構成し、このシート給送装置のユニットに制御部80を設け、プリンタ10の制御部と電気信号により接続しても良い。
【0012】
画像形成部14は、着脱可能なプロセスカートリッジ11と、露光装置3と、転写ローラ12と、を有しており、プロセスカートリッジ11は、感光ドラム1と、帯電ローラ2と、現像ローラ4と、を有している。感光ドラム1は、円筒部材と、円筒部材の表面上に配置された感光層とを有し、不図示のモータの駆動により回転可能となっている。帯電ローラ2は、印加された帯電電圧によって感光ドラム1の表面を一様な電位に帯電させる。露光装置3は、レーザ光を走査して感光ドラム1の表面に画像の静電潜像を形成する。現像ローラ4は、トナーを担持して感光ドラム1へ供給し、感光ドラム1の静電潜像をトナー像として現像する。
【0013】
画像形成部14による画像形成プロセスに並行して、シート給送装置13からはシートSが給送され、搬送ローラ対17のニップN1に搬送される。そして、シートSは、搬送ローラ対17によって、感光ドラム1と転写ローラ12とで形成される転写ニップN2に向けて搬送される。なお、搬送ローラ対17と転写ニップN2との間に、転写ニップN2における転写タイミングに合わせてシートSを搬送するレジストレーションローラ対を設けてもよい。
【0014】
感光ドラム1に担持されたトナー像は、転写ローラ12にバイアス電圧が印加されることにより、転写ニップN2においてシートSに転写される。なお、シートSに転写されずに感光ドラム1に残留した転写残トナー等の付着物は、不図示のクリーナによって除去される。未定着画像が形成されたシートSは、定着器15の定着ローラ対5によって加圧されながら加熱される。これにより、シートSに転写されたトナー像が溶融・固着する。定着器15により画像が定着されたシートSは、排出ローラ対6によって、排出トレイ18に排出され、プリント動作が完了する。
【0015】
[シート給送装置]
シート給送装置13は、図1に示すように、積載部としての給送トレイ8を有しており、給送トレイ8は、シートSが積載される積載面8aを有する。給送トレイ8には、引き出し可能な補助トレイ7が設けられている。積載面8aに積載されたシートSは、不図示の1対のサイド規制板によってシート給送方向と直交する幅方向における位置が規制されている。図1において、右側がプリンタ10の正面(操作側)であり、プリンタ10の正面には、シートSをシート給送装置13に挿入するための挿入口81が形成されている。
【0016】
給送トレイ8のシート給送方向における下流には、搬送ガイド21が設けられており、搬送ガイド21は、回動軸33を中心に回動可能なフラグ部材19を支持している。フラグ部材19は、自然状態において、搬送ガイド21からプリンタ10の手前側(図1の右側)に突出するように配置されており、ユーザがシートSを給送トレイ8に挿入すると、シートSの先端によって押圧されて回動する。フラグ部材19が回動することで、フォトセンサ20が遮光され、シートSが給送トレイ8に積載されていることを検知することができる。
【0017】
図2は、シート給送装置13を示す斜視図であり、図3及び図4は、シート給送装置13を示す断面図である。なお、これら図2乃至図4においては、フラグ部材19の図示を省略している。シート給送装置13は、図2に示すように、給送機構23と、駆動源としてのモータMの駆動力を給送機構23に伝達可能な伝達機構40と、後述する突き当て部材52を移動可能な移動機構60と、を有している。
【0018】
給送機構23は、回転軸25と、回転軸25に揺動可能に支持されるホルダ24と、ホルダ24の先端に回転可能に支持される給送部としてのピックアップローラ26と、を有している。ホルダ24は、回転軸25とピックアップローラ26との間にギヤ等から構成される駆動列27を有しており、回転軸25の回転は、駆動列27を介してピックアップローラ26に伝達される。ホルダ24は、給送トレイ8の積載面8a(図1参照)に積載されたシート束の高さに応じて揺動可能である。そして、最上位のシートSにピックアップローラ26が当接した状態でピックアップローラ26が回転することで、シートSが搬送ガイド21に向けて給送される。
【0019】
本体部としての搬送ガイド21は、図3に示すように、給送トレイ8の積載面8aとのなす角が鈍角である角度θ1となる傾斜面21aを有している。傾斜面21aの表面には、シートSを滑らかに搬送ローラ対17へ案内するように、搬送抵抗の低い斜面カバー49が設けられている。また、搬送ガイド21には、傾斜面21a及び斜面カバー49からピックアップローラ26側に突出するように分離バネ51によって付勢された分離部材50が支持されている。分離部材50及び分離バネ51は、幅方向における搬送路中心を対称に3つ設けられている。これら分離部材50、斜面カバー49及び搬送ガイド21は、分離斜面部70を構成している。
【0020】
分離部材50の表面50aは、傾斜面21aに沿って複数の凹凸が形成されており、また分離部材50は、傾斜面21a及び斜面カバー49からピックアップローラ26側に突出する突出位置と、傾斜面21aの内方に退避する退避位置と、に移動可能である。シートSがピックアップローラ26によって給送されると、分離部材50が突出位置から退避位置へ分離バネ51の付勢力に抗して移動するが、分離部材50の表面に凹凸が形成されているため、効果的にシートSを1枚ずつ分離することができる。
【0021】
シートの進行方向Dにおいて分離部材50の下流には、搬送ローラ対17が配置されている。搬送ローラ対17は、駆動ローラ29と従動ローラ30とを有しており、従動ローラ30は、不図示のバネによって駆動ローラ29に向けて所定の圧力で付勢されている。駆動ローラ29の回転軸29aは、軸受31によって回転可能に支持されており、軸受31は、搬送ガイド21に嵌合されている。
【0022】
[突き当て部材]
図2及び図3に示すように、傾斜面21aには、開口部21bが形成されており、開口部21bには、当接部材としての突き当て部材52が格納されている。なお、開口部21b及び突き当て部材52は、幅方向における搬送路中心を対称に2つ設けられている。左右の突き当て部材52,52は、図5に示すように、回動軸52a上に設けられており、左右の突き当て部材52,52の間には、コ字状に折曲されたストッパ部56が設けられている。
【0023】
突き当て部材52は、回動軸52aが回動することで、図4(a)に示す突出位置と、図4(b)に示す退避位置と、の間で回動可能であり、ストッパ部56が搬送ガイド21又はその他のフレームに突き当たることで、退避位置で移動規制される。突き当て部材52は、シートSの先端に当接可能な当接面57を有しており、当接面57は、複数の曲面を有する段形状に形成されている。このため、突き当て部材52の当接面57にシートSの先端が勢いよく当接した場合でも、シートSに作用する力を分散し、シートSが受けるダメージを低減できる。
【0024】
突き当て部材52が第1位置としての突出位置に位置する際には、図4(a)に示すように、当接面57の少なくとも一部が分離斜面部70よりピックアップローラ26に近い位置に位置している。この時、図3に示すように、当接面57と給送トレイ8の積載面8aとがなす角である角度θ2は、鋭角となっている。このため、ユーザがシートSをシート給送装置13に挿入した際に、確実に当接面57によってシートSを突き当てることができる。これにより、シートSが傾斜面21aにもたれかかったり、傾斜面21aを乗り越えて搬送ローラ対17にニップされてしまったりすることを防止でき、給送不良を低減することができる。
【0025】
突き当て部材52が第2位置としての退避位置に位置する際には、図4(b)に示すように、当接面57が分離斜面部70よりピックアップローラ26に遠い位置に位置している。このため、シートSがピックアップローラ26によって給送し分離斜面部70を通過する際に、突き当て部材52の当接面57がシートSに当接することはない。これにより、シートSが分離斜面部70によって1枚ずつ分離される際に、突き当て部材52がシートSに干渉することが無く、確実にシートSを分離することができる。
【0026】
[伝達機構]
次に、図5を参照して伝達機構40について詳しく説明する。伝達機構40は、図5に示すように、入力ギヤ41と、制御ギヤ42と、出力ギヤ43と、ソレノイド44と、係止爪58と、を有しており、モータMが発生させた駆動力をピックアップローラ26(図2参照)に伝達可能である。
【0027】
モータMは、一方向にのみ回転し駆動力を発生させる。入力ギヤ41は、モータMに接続されており、出力ギヤ43は、ピックアップローラ26を回転させるための回転軸25(図2参照)に固定されている。入力ギヤ41及び出力ギヤ43の外周面には、全周に亘ってギヤ部が形成されている。回転体としての制御ギヤ42は、係止爪58の爪部58aが係止可能な被係止部42bと、外周面の一部のみにギヤ部が形成されない第1欠歯部59a及び第2欠歯部59bと、を有している。被係止部42b、第1欠歯部59a及び第2欠歯部59bは、互いに制御ギヤ42の軸方向に異なる位置に設けられている。なお、第1欠歯部59aを含む軸方向に直交する平面及び第2欠歯部59bを含む軸方向に直交する平面のそれぞれにおいては、第1欠歯部59a及び第2欠歯部59b以外の部分における制御ギヤ42の外周面にギヤ部が形成されている。
【0028】
図5に示すように、係止爪58の爪部58aが被係止部42bを係止した状態の制御ギヤ42の回転位置(位相)を待機位置とする。制御ギヤ42が待機位置に位置する状態では、入力ギヤ41は第1欠歯部59aに対向し、出力ギヤ43は第2欠歯部59bに対向している。このため、入力ギヤ41、制御ギヤ42及び出力ギヤ43の間で駆動力は互いに伝達されない。
【0029】
係止爪58は、不図示のバネによって被係止部42bを係止する方向に付勢されており、ソレノイド44が作動することで、バネの付勢力に抗して被係止部42bに対して非係止状態となるように移動する。すなわち、ソレノイド44が作動すると、係止爪58と制御ギヤ42の被係止部42bとの係止状態が解除される。また、制御ギヤ42には、不図示の圧縮バネが内蔵されており、係止爪58と被係止部42bとの係止状態が解除されると、圧縮バネの付勢力によって制御ギヤ42が所定量回転する。これにより、制御ギヤ42のギヤ部と入力ギヤ41とが噛合し、入力ギヤ41から制御ギヤ42に駆動力が伝達されるようになる。
【0030】
[移動機構]
次に、図5乃至図6(b)を参照して移動機構60について詳しく説明する。移動機構60は、図5乃至図6(b)に示すように、リンク部材53を有しており、リンク部材53には、突き当て部材52,52が固定された回動軸52aの一端からクランク状に延びる係合部52bに係合可能な係合孔部53aが形成されている。すなわち、係合部52bは、回動軸52aに対して径方向にずれて設けられている。リンク部材53は、矢印E1方向及び矢印E1方向と反対の矢印E2方向に移動可能であり、付勢部としてのリンクバネ54によって矢印E1方向に付勢されている。
【0031】
制御ギヤ42のリンク部材53と対向する側には、図6(a)に示すように、半月状の突起部62が設けられており、突起部62からは軸方向にボス部42aが延びている。ボス部42aは、制御ギヤ42の回転中心42cに対して径方向に異なる位置に配置されており、制御ギヤ42が回転することで、円運動するように構成されている。また、突起部62の平面部62aには、戻しレバー45が当接可能に構成されており、戻しレバー45は、回動軸45aを中心に回動可能に支持されている。戻しレバー45は、レバーバネ46によって平面部62aに向けて付勢されている。また、リンク部材53は、ボス部42aに係合可能な半円状のボス係合部53bと、突起部62に摺動しつつ押圧されるカム部53cと、を有している。位置決め部としてのボス部42aは、係合部としてのボス係合部53bに係合することで、突き当て部材52を突出位置に位置決めする。
【0032】
[給送動作]
次に、シートを給送する給送動作と共に、伝達機構40及び移動機構60の動作について説明する。以下では、複数枚のシートに対して連続して印刷する連続印刷ジョブが入力された場合について説明する。
【0033】
まず、連続印刷ジョブが入力される前には、制御ギヤ42は、待機位置に位置しており、図6(a)に示すように、ボス部42aがボス係合部53bに係合し、かつ平面部62aに戻しレバー45が当接している。また、ソレノイド44は、非作動状態であり、図5に示すように、係止爪58の爪部58aは、制御ギヤ42の被係止部42bを係止している。これにより、制御ギヤ42は、待機位置で確実に保持されている。この時、制御ギヤ42に第1欠歯部59a及び第2欠歯部59bは、それぞれ入力ギヤ41及び出力ギヤ43に対向している。また、突き当て部材52は、図4(a)に示すように、突出位置に位置している。ユーザは、このように突き当て部材52が突出位置に位置している状態で、シートSを挿入口81(図1参照)から挿入し、シートSの先端を突き当て部材52の当接面57に突き当てる。
【0034】
連続印刷ジョブが入力されると、制御部80(図1参照)は、モータMを一方向に駆動させ、かつソレノイド44を所定時間作動させて係止爪58を移動させる。すると、係止爪58の爪部58aと制御ギヤ42の被係止部42bの係止状態が解除され、制御ギヤ42に内蔵された不図示の圧縮バネによって制御ギヤ42が一方向に回転し始める。制御ギヤ42が回転することで、入力ギヤ41は、制御ギヤ42のギヤ部に噛合し、モータMの駆動力が入力ギヤ41を介して制御ギヤ42に伝達される。
【0035】
制御ギヤ42がモータMの駆動力によって回転することで、制御ギヤ42に設けられたボス部42aは、図6(b)に示すように、リンク部材53のボス係合部53bから離間し、ボス部42aとボス係合部53bとの係合が解除される。また、突起部62によって戻しレバー45がレバーバネ46の付勢力に抗して回動する。すると、リンクバネ54の付勢力によって、リンク部材53は矢印E1方向に移動し、図5に示すように、係合部52bに係合している係合孔部53aが矢印E1方向に移動することで、回動軸52aが回動する。これにより、回動軸52aに固定された突き当て部材52,52が突出位置から退避位置に移動する。リンク部材53は、ボス部42aとボス係合部53bとの係合が解除されることで、リンクバネ54の付勢力によって速やかに移動するため、比較的速く移動する。このため、突き当て部材52は、突出位置から退避位置に比較的速く移動する。具体的には、突き当て部材52は、突出位置から退避位置まで数10ミリ秒という素早い動きで移動する。
【0036】
突き当て部材52が退避位置に移動した後に、出力ギヤ43は、制御ギヤ42のギヤ部と噛合し始める。すなわち、制御ギヤ42の第2欠歯部59bは、第1欠歯部59aに比して広範囲に設けられており、待機位置から制御ギヤ42が所定角度だけ回転するまでは出力ギヤ43は第2欠歯部59bに対向したままである。このため、突き当て部材52が退避位置に移動するまでは、シートSは、ピックアップローラ26によって給送されない。
【0037】
出力ギヤ43が制御ギヤ42によって回転されることで、ピックアップローラ26が回転し、シートSが積載面8aから給送される。制御ギヤ42が待機位置から1回転する手前で、制御ギヤ42に設けられたボス部42aは、リンク部材53のカム部53cに摺接する。ボス部42aは、カム部53cに摺接しながら押圧し、リンク部材53は、図6(a)に示すように、リンクバネ54の付勢力に抗して矢印E2方向に移動する。このようにリンク部材53が矢印E2方向に移動することで、突き当て部材52は、徐々に退避位置から突出位置に向けて移動する。そして、ボス部42aは、制御ギヤ42が待機位置に位置する際に、ボス係合部53bに係合し、このとき突き当て部材52が突出位置に復帰する。
【0038】
以上が制御ギヤ42の1回転毎の停止制御、すなわち1回転制御であるが、制御ギヤ42が1回転することで、シートSは、少なくとも先端が搬送ローラ対17にニップされるまで移動される。搬送ローラ対17にニップされたシートSは、搬送ローラ対17によってシート搬送方向における下流に搬送されるが、この時、ピックアップローラ26は搬送されるシートSに当接して連れ回る。しかしながら、制御ギヤ42が待機位置に位置する状態では、制御ギヤ42の第2欠歯部59bと出力ギヤ43とが対向しているので、出力ギヤ43の回転が制御ギヤ42に伝達されることは無く、ギヤの歯飛びや破損を防止することができる。
【0039】
そして、連続印刷ジョブにおいては、ジョブが終了するまでモータMは回転し、各シートSの給送タイミングに合わせてソレノイド44が作動される。これにより、シートが1枚給送される毎に、ボス部42aは、ボス係合部53bとの係合が解除され、カム部53cを押圧し、ボス係合部53bに係合するという1連の動作を行う。このため、シートSが突き当て部材52に到達する前に、突き当て部材52は突出位置から退避位置に移動する。
【0040】
また、シートSが突き当て部材52を通過中に、突き当て部材52は、退避位置から突出位置に移動する。この時、突き当て部材52は、ボス部42aによってカム部53cに沿って押圧されるリンク部材53によって退避位置から突出位置に向けて移動されるが、突出位置から退避位置へ移動する際よりも動作が遅い。すなわち、突き当て部材52が突出位置から退避位置へ移動する際には、リンクバネ54の付勢力によってリンク部材53は比較的速く矢印E2方向に移動する。また、突き当て部材52が退避位置から突出位置へ移動する際には、リンク部材53は、リンクバネ54の付勢力によって移動する速度よりも遅い速度で、ボス部42aによってカム部53cに沿ってゆっくり矢印E1方向に押圧される。
【0041】
これにより、突き当て部材52が退避位置から突出位置へ移動する際に、突き当て部材52によるシートSの振動を低減することができ、画像不良を低減することができる。また、シートSが突き当て部材52を通過中に突き当て部材52が退避位置から突出位置へ移動するので、シートSの紙間を詰めることができ、生産性を向上することができる。更に、制御ギヤ42を小型化することができる。
【0042】
また、シートを1枚給送する毎に突き当て部材52が突出位置に復帰するので、ジョブの途中でシートSが分離斜面部70にもたれかかることを低減し、給送不良を低減することができる。更に、モータMは1方向にしか回転しないにも拘らず、簡易なメカ構成で突き当て部材52を突出位置と退避位置との間でシートSの給送に連動して移動させることができるので、コストダウン及び小型化することができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、制御ギヤ42の1回転制御をソレノイド44、第1欠歯部59a及び第2欠歯部59b等を用いて実現しているが、これに限定されない。例えば、制御ギヤ42の第1欠歯部59aを省き、入力ギヤ41を常に制御ギヤ42に噛合するように構成し、入力ギヤ41と入力ギヤ41の回転軸との間にトルクリミッタを設けてもよい。また、電磁クラッチや他のクラッチ機構によって、制御ギヤ42を1回転制御させる構成を適用してもよい。また、突き当て部材52が退避位置から突出位置へ移動する動作が、突出位置から退避位置へ移動する動作よりも遅くなるように構成されれば、制御ギヤ42を1回転制御しなくてもよい。
【0044】
また、給送トレイ8に昇降可能な中板を設け、制御ギヤ42の1回転制御に合わせて中板を昇降させてもよい。例えば、回転軸25にカムを設け、中板にカムに係合可能なカムフォロアを設けてもよい。また、ピックアップローラ26を昇降させるホルダ24をシート1枚毎に揺動させてもよい。
【0045】
また、本実施の形態では、電子写真方式のプリンタ10を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フルカラーの電子写真方式のプリンタや、複写機、ファクシミリ、複合機等の他の画像形成装置に本発明を適用してもよい。また、ノズルからインク液を吐出させることでシートに画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
8:積載部(給送トレイ)/8a:積載面/10:画像形成装置(プリンタ)/13:シート給送装置/14:画像形成部/21:本体部(搬送ガイド)/21a:傾斜面/21b:開口部/26:給送部(ピックアップローラ)/40:伝達機構/42:回転体(制御ギヤ)/42a:位置決め部(ボス部)/52:当接部材(突き当て部材)/53:リンク部材/53b:係合部(ボス係合部)/53c:カム部/54:付勢部(リンクバネ)/57:当接面/60:移動機構/70:分離斜面部/M:駆動源(モータ)/θ2:なす角(角度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6