特許第6971716号(P6971716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971716
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】シート給送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20211111BHJP
   B65H 11/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B65H3/06 350A
   B65H11/00 G
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-164718(P2017-164718)
(22)【出願日】2017年8月29日
(65)【公開番号】特開2019-43683(P2019-43683A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 弘之
【審査官】 沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−189344(JP,A)
【文献】 特開2007−031093(JP,A)
【文献】 特開2017−095190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00− 3/68
B65H 11/00−11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを支持する第1トレイと、前記第1トレイに支持されて上方に湾曲したシートの後端部を支持する第2トレイと、前記第1トレイと前記第2トレイとの間でシートが上方に湾曲するように案内する中間ガイドと、を有する支持部と、
前記支持部に支持されたシートを給送する給送部と、
前記給送部によって給送されたシートを1枚ずつに分離する分離部と、
前記支持部に支持されているシートを検知するシート検知部と、
前記給送部が前記支持部に支持されたシートに接触する接触状態と、前記給送部が前記支持部に支持されたシートから離間する離間状態と、に切換えるように前記給送部及び前記支持部のいずれか一方をいずれか他方に対して移動させる移動部と、
ート給送ジョブの最後のシートの給送が終わった後に前記シート検知部がシートを検知しているか否かに拘わらず、前記給送部が前記離間状態となるように前記移動部を制御する第1のモードと、シート給送ジョブの最後のシートの給送が終わった後に前記シート検知部がシートを検知している場合、前記給送部が前記接触状態を維持するように前記移動部を制御する第2のモードと、を実行可能である制御部と
前記第2トレイを着脱可能に支持する装置本体と、
前記第2トレイが前記装置本体に装着されている装着状態と、装着されていない非装着状態と、検知するトレイ検知部と、を備え、
前記制御部は、前記トレイ検知部が前記第2トレイの前記非装着状態を検知すると、前記第1のモードを実行し、前記トレイ検知部が前記第2トレイの前記装着状態を検知すると、前記第2のモードを実行する、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
シートを支持する支持部と、
前記支持部に支持されたシートを給送する給送部と、
前記給送部によって給送されたシートを1枚ずつに分離する分離部と、
前記支持部に支持されているシートを検知するシート検知部と、
前記給送部が前記支持部に支持されたシートに接触する接触状態と、前記給送部が前記支持部に支持されたシートから離間する離間状態と、に切換えるように前記給送部及び前記支持部のいずれか一方をいずれか他方に対して移動させる移動部と、
シート給送ジョブの最後のシートの給送が終わった後に前記シート検知部がシートを検知しているか否かに拘わらず、前記給送部が前記離間状態となるように前記移動部を制御する第1のモードと、シート給送ジョブの最後のシートの給送が終わった後に前記シート検知部がシートを検知している場合、前記給送部が前記接触状態を維持するように前記移動部を制御する第2のモードと、を実行可能である制御部と、
前記給送部によって給送されるシートの、シート給送方向における長さを取得する取得部と、を備え、
前記制御部は、前記取得部が取得したシートの長さが所定長さ未満であれば、前記第1のモードを実行し、前記取得部が取得したシートの長さが所定長さ以上であれば、前記第2のモードを実行する、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項3】
前記支持部は、シートを支持する第1トレイと、前記第1トレイに支持されて上方に湾曲したシートの後端部を支持する第2トレイと、前記第1トレイと前記第2トレイとの間でシートが上方に湾曲するように案内する中間ガイドと、を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2のモードにおいて、前記シート検知部がシートを検知しなくなった場合、前記給送部が前記離間状態となるように前記移動部を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記第1のモードと前記第2のモードとを切換え可能な操作部を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記移動部は、前記給送部を前記支持部に対して昇降可能に支持し、前記給送部を昇降させることで前記接触状態と前記離間状態とを切換える、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記移動部は、前記支持部を前記給送部に対して昇降可能に支持し、前記支持部を昇降させることで前記接触状態と前記離間状態とを切換える、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート給送装置と、
前記分離部によって1枚ずつに分離されたシートに画像を形成する画像形成部と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを給送するシート給送装置及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタ等の画像形成装置は、複数のサイズのシートを給送可能に構成されており、A4やB5等の定型サイズのシートはカセットに収納し、搬送方向に長い長尺のシート(以下、長尺シートという)は手差しトレイに載置するように構成されている。
【0003】
従来、手差しトレイを、長尺シートの前部を保持する第1保持部と、長尺シートの後部を保持する第2保持部と、から構成すると共に、第1保持部に長尺シートの中部の姿勢を定めるガイド部を一体的に設けた画像形成装置が提案されている(特許文献1参照)。長尺シートは、これら第1保持部、第2保持部及びガイド部によって上方にカールした姿勢で収容され、装置をコンパクト化することができる。しかし、長尺シートがカールすることで発生する反力と長尺シートの自重の影響により、長尺シートの先端には、長尺シートを給送ローラ対に押し込む力(以下、押込み力とする)が作用する。押込み力が強いと、長尺シートの先端が給送ローラ対のニップを超えてしまい、給送不良の原因となる虞がある。このため、長尺シートの前部を保持する第1保持部材に凹部を設け、凹部において長尺シートを下方に湾曲させることにより押込み力を緩和する画像形成装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−031093号公報
【特許文献2】特開2010−013276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の画像形成装置は、特に剛性の高い長尺シートの場合、凹部においてほとんど湾曲せずに押込み力の緩和が十分でなく、給送不良を起こす虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、シートの給送が終わった後も給送部がシートに接触する接触状態を維持させ、上述した課題を解決したシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シート給送装置において、シートを支持する第1トレイと、前記第1トレイに支持されて上方に湾曲したシートの後端部を支持する第2トレイと、前記第1トレイと前記第2トレイとの間でシートが上方に湾曲するように案内する中間ガイドと、を有する支持部と、前記支持部に支持されたシートを給送する給送部と、前記給送部によって給送されたシートを1枚ずつに分離する分離部と、前記支持部に支持されているシートを検知するシート検知部と、前記給送部が前記支持部に支持されたシートに接触する接触状態と、前記給送部が前記支持部に支持されたシートから離間する離間状態と、に切換えるように前記給送部及び前記支持部のいずれか一方をいずれか他方に対して移動させる移動部と、シート給送ジョブの最後のシートの給送が終わった後に前記シート検知部がシートを検知しているか否かに拘わらず、前記給送部が前記離間状態となるように前記移動部を制御する第1のモードと、シート給送ジョブの最後のシートの給送が終わった後に前記シート検知部がシートを検知している場合、前記給送部が前記接触状態を維持するように前記移動部を制御する第2のモードと、を実行可能である制御部と、前記第2トレイを着脱可能に支持する装置本体と、前記第2トレイが前記装置本体に装着されている装着状態と、装着されていない非装着状態と、検知するトレイ検知部と、を備え、前記制御部は、前記トレイ検知部が前記第2トレイの前記非装着状態を検知すると、前記第1のモードを実行し、前記トレイ検知部が前記第2トレイの前記装着状態を検知すると、前記第2のモードを実行する、ことを特徴とする。
【0008】
また、シート給送装置において、シートを支持する支持部と、前記支持部に支持されたシートを給送する給送部と、前記給送部によって給送されたシートを1枚ずつに分離する分離部と、前記支持部に支持されているシートを検知するシート検知部と、前記給送部が前記支持部に支持されたシートに接触する接触状態と、前記給送部が前記支持部に支持されたシートから離間する離間状態と、に切換えるように前記給送部及び前記支持部のいずれか一方をいずれか他方に対して移動させる移動部と、シート給送ジョブの最後のシートの給送が終わった後に前記シート検知部がシートを検知しているか否かに拘わらず、前記給送部が前記離間状態となるように前記移動部を制御する第1のモードと、シート給送ジョブの最後のシートの給送が終わった後に前記シート検知部がシートを検知している場合、前記給送部が前記接触状態を維持するように前記移動部を制御する第2のモードと、を実行可能である制御部と、前記給送部によって給送されるシートの、シート給送方向における長さを取得する取得部と、を備え、前記制御部は、前記取得部が取得したシートの長さが所定長さ未満であれば、前記第1のモードを実行し、前記取得部が取得したシートの長さが所定長さ以上であれば、前記第2のモードを実行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、給送部を接触状態に維持することでシートを押さえ、シートの押込み力が分離部に強く作用することを抑制するので、給送不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係るプリンタを示す全体概略図。
図2】手差し給送装置を示す斜視図。
図3】手差し給送装置を示す側面図。
図4】第1の実施の形態に係る制御ブロック図。
図5】長尺シートをセットするための構成を示す側面図。
図6】第1のモードにおけるジョブ終了制御を示すフローチャート。
図7】第2のモードにおけるジョブ終了制御を示すフローチャート。
図8】第2の実施の形態に係る制御ブロック図。
図9】第2の実施の形態に係るジョブ終了制御を示すフローチャート。
図10】他の実施の形態に係る手差し給送装置を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施の形態>
以下、図面に沿って第1の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、画像形成装置を正面から視た状態(図1の視点)を基準にして上下左右及び手前奥の位置関係を表すものとする。
【0012】
[画像形成装置]
本実施の形態に係るプリンタ201は、電子写真方式のフルカラーレーザビームプリンタである。プリンタ201は、図1に示すように、装置本体であるプリンタ本体201Aと、プリンタ本体201Aの上方に設けられ、原稿の画像データを読み取る読取装置202と、を備えている。
【0013】
プリンタ本体201Aは、シートPに画像を形成する画像形成部201B及びシートPに画像を定着させる定着部220等を備えている。読取装置202とプリンタ本体201Aとの間にはシートPが排出される排出空間が形成されており、この排出空間には、排出されたシートPが積載される排出トレイ230が設けられている。また、プリンタ本体201Aには、画像形成部201BにシートPを給送するシート給送部201Eが設けられている。シート給送部201Eは、プリンタ本体201Aの下部に配置されてシートPをカセット103に収納するカセット給送装置100A,100B,100C,100Dと、プリンタ本体201Aの右側部に配置される手差し給送装置100Mと、を有している。カセット給送装置100A,100B,100C,100D及び手差し給送装置100Mのそれぞれは、シートPを給送するピックアップローラ2と、シートPを1枚ずつ分離しながら搬送するフィードローラ3及びリタードローラ4と、を有している。
【0014】
画像形成部201Bは、レーザスキャナ210と、4個のプロセスカートリッジ211と、中間転写ユニット201Cと、を備えた、いわゆる4ドラムフルカラー方式の画像形成部である。これらプロセスカートリッジは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色のトナー画像を形成する。各プロセスカートリッジ211は、感光ドラム212、帯電器213、現像器214、及び不図示のクリーナ等を備えている。画像形成部201Bの上方には、各色のトナーを収容したトナーカートリッジ215が、プリンタ本体201Aに対して着脱自在に装着されている。
【0015】
中間転写ユニット201Cは、駆動ローラ216a及びテンションローラ216b等に巻き掛けられる中間転写ベルト216を有しており、中間転写ベルト216は、4つのプロセスカートリッジ211の上方に配置されている。中間転写ベルト216は、各プロセスカートリッジ211の感光ドラム212に接触するように配置されると共に、不図示の駆動部に駆動される駆動ローラ216aによって、反時計回り方向(矢印Qの方向)に回転駆動される。中間転写ユニット201Cは、各感光ドラム212と対向する位置において中間転写ベルト216の内周面に当接する1次転写ローラ219を備えており、中間転写ベルト216と感光ドラム212との間のニップ部として1次転写部TP1が形成されている。また、画像形成部201Bは、駆動ローラ216aと対向する位置において中間転写ベルト216の外周面に当接する2次転写ローラ217を備えている。この2次転写ローラ217と中間転写ベルト216との間のニップ部として、中間転写ベルト216に担持されたトナー像がシートPに転写される2次転写部TP2が形成されている。
【0016】
上述のように構成される各プロセスカートリッジ211において、感光ドラム212の表面には、レーザスキャナ210によって静電潜像が描き込まれた後、現像器214からトナーが供給されることで負極性に帯電した各色のトナー像が形成される。これらのトナー像は、1次転写ローラ219に正極性の転写バイアス電圧が印加されることで、各1次転写部TP1において順次中間転写ベルト216へと多重転写されて、中間転写ベルト216にフルカラーのトナー像が形成される。
【0017】
このような画像形成プロセスに並行して、シート給送部201Eから給送されたシートPはレジストレーションローラ対(以下、レジローラ対と称する)15へ向けて搬送され、このレジローラ対15によって斜行補正される。レジローラ対15は、中間転写ベルト216に形成されたフルカラーのトナー像の転写タイミングに合わせたタイミングで、シートPを2次転写部TP2に搬送する。中間転写ベルト216に担持されたトナー像は、2次転写ローラ217に正極性の転写バイアス電圧が印加されることで、2次転写部TP2においてシートPへと2次転写される。
【0018】
トナー像を転写されたシートPは、定着部220において加熱及び加圧され、カラー画像がシートPに定着させられる。画像が定着されたシートPは、排出ローラ対225によって排出トレイ230へと排出されて積載される。なお、シートPの両面に画像を形成する場合には、シートPは定着部220を通過した後、反転搬送部201Dに設けられる正逆転可能な反転ローラ対222によってスイッチバックされる。そして、シートPは再搬送通路Rを介して2次転写部TP2へと再度搬送され、裏面に画像を形成される。
【0019】
[手差し給送装置]
次に、図2及び図3を参照して、シート給送装置としての手差し給送装置100Mについて説明する。手差し給送装置100Mは、図2及び図3に示すように、手差しトレイ7と、ピックアップローラ2と、フィードローラ3と、リタードローラ4と、を有している。
【0020】
手差しトレイ7は、プリンタ本体201Aに開閉可能に支持されており、トレイアーム21によって開閉角度が規制されている。手差しトレイ7には、シート給送方向に直交する幅方向に移動可能な1対のサイド規制板22,23が設けられており、サイド規制板22,23は、互いに反対方向に移動するように連動する。そして、サイド規制板22,23は、ユーザによって移動されることで、手差しトレイ7に載置されたシートの幅方向における端部の位置を規制する。
【0021】
また、手差しトレイ7のシート給送方向における下流端部には、検知フラグ11a(図2参照)が回動可能に支持されており、検知フラグ11aは、手差しトレイ7の上面から上方に突出する突出位置に保持されている。検知フラグ11aは、シートによって押圧されることで回動し、例えばフォトセンサから構成されるシート検知部としてのシート有無検知センサ11(図4参照)の光路を遮蔽する。これにより、シート有無検知センサ11がONとなり、手差しトレイ7に支持されているシートが検知される。手差しトレイ7にシートが無くなると、検知フラグ11aは突出位置に戻り、シート有無検知センサ11がOFFとなる。
【0022】
フィードローラ3は、プリンタ本体201Aに設けられる回転軸3aに回転可能に支持されており、回転軸3aには、給送アーム5が回動可能に支持されている。給送アーム5の先端には、給送部としてのピックアップローラ2が回転軸2aを中心に回転可能に支持されている。
【0023】
フィードローラ3の回転軸3aには、給送モータM1(図4参照)から駆動力が入力されており、回転軸3aに入力されたモータMの駆動力は、給送アーム5に支持された不図示のギヤ列によってピックアップローラ2に伝達される。リタードローラ4は、不図示のトルクリミッタを介して回転軸4aに回転可能に支持されており、所定の当接圧でフィードローラ3に当接している。リタードローラ4の回転軸4aにも、給送モータM1から駆動力が入力されており、リタードローラ4は、シート給送方向と逆方向、すなわちシートを手差しトレイ7に戻す方向に駆動が入力されている。また、リタードローラ4と回転軸4aとの間には、不図示のトルクリミッタが介在している。
【0024】
給送アーム5は、例えばフィードローラ3の回転軸3aに嵌挿される不図示のねじりコイルバネによって、ピックアップローラ2が手差しトレイ7に近づく方向、すなわち下降する方向に付勢されている。そして、ピックアップローラ2によってシートを給送する際には、給送モータM1は第1回転方向に回転し、給送モータM1が第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転することで、給送アーム5は上昇する。給送モータM1が第1回転方向に回転する際にはねじりコイルバネのコイル部が緩まり、回転軸3aの回転が給送アーム5に伝達されない。一方で、給送モータM2が第2回転方向に回転する際にはねじりコイルバネのコイル部が締まり、回転軸3aの回転がねじりコイルバネを介して給送アーム5に伝達される。すなわち、ねじりコイルバネがバネクラッチとして機能する。
【0025】
このような給送モータM1の駆動によって、移動部としての給送アーム5が昇降し、ピックアップローラ2は、手差しトレイ7に支持されたシートに接触する接触状態と、手差しトレイ7に支持されたシートから離間する離間状態と、に切換えられる。なお、ねじりコイルバネの代わりに、カム等によって、給送アーム5を上昇可能に構成してもよく、給送アーム5を給送モータM1とは異なるモータやソレノイドによって駆動してもよい。
【0026】
手差し給送装置100Mを給送元とするシート給送ジョブとしての印刷ジョブの開始時には、ピックアップローラ2が離間状態から接触状態となるように下降して、手差しトレイ7に載置されたシートに当接する。手差しトレイ7に載置されたシートは、フィードローラ3とリタードローラ4によって形成される分離部としての分離ニップ34に向けてピックアップローラ2によって給送される。
【0027】
分離ニップ34にピックアップローラ2によってシートが1枚だけ給送された際には、回転軸4aとリタードローラ4との間に設けられたトルクリミッタが空転し、リタードローラ4がフィードローラ3に連れ回る。また、リタードローラ4は、ピックアップローラ2によってシートが2枚以上給送された際には、手差しトレイ7にシートを戻す方向に回転し、2枚目以降のシートが手差しトレイ7に戻される。なお、リタードローラ4には、駆動力が入力されなくてもよく、また、リタードローラ4に代えて分離パッドを設けてもよい。分離ニップ34によって1枚ずつに分離されたシートは、引き抜きモータM2によって駆動される引き抜きローラ対8によって、レジローラ対15(図1参照)に搬送される。
【0028】
[制御ブロック]
図4は、本実施の形態に係る制御ブロック図である。制御部9は、不図示のCPU、ROM及びRAM等を有しており、ROMに記憶されたプログラムをCPUが実行することができる。制御部9には、操作パネル10が接続されており、操作部としての操作パネル10は、プリンタ201の各種設定を行ったり、制御部9からの出力信号に基づく画面を表示したりすることができる。制御部9の入力側には、シート有無検知センサ11と、後述する後端トレイ検知センサ24が接続されている。制御部9の出力側には、給送モータM1及び引き抜きモータM2が接続されている。
【0029】
なお、制御部9は、手差し給送装置100Mに設けられても、プリンタ201の手差し給送装置100Mとは異なる場所に設けられてもよい。そして、制御部9が手差し給送装置100Mに設けられた場合には、手差し給送装置100Mはシート給送装置を構成し、制御部9がプリンタ201側に設けられた場合には、プリンタ201がシート給送装置を構成する。
【0030】
[長尺シートのセット]
次に、図5を参照して、手差し給送装置100Mに長尺シートLPをセットする場合について説明する。なお、長尺シートLPとは、例えばシート搬送方向における長さが457mm(18インチ)以上のシートを指すが、これに限定されない。
【0031】
手差し給送装置100Mは、プリンタ本体201Aに着脱可能な後端トレイ14と、手差しトレイ7の先端に着脱可能な中間ガイド13と、を有している。第1トレイとしての手差しトレイ7、中間ガイド13及び第2トレイとしての後端トレイ14は、支持部としてのトレイユニット12を構成している。後端トレイ14は、鉛直方向から視て手差しトレイ7に重なるように、手差しトレイ7の上方に設けられている。また、トレイ検知部としての後端トレイ検知センサ24(図4参照)によって、後端トレイ14がプリンタ本体201Aに装着されている装着状態と、装着されていない非装着状態と、が検知される。中間ガイド13は、後端トレイ14の先端からシート給送方向における上流に延びた後、上方に屈曲して構成されている。なお、手差しトレイ7及び中間ガイド13は、一体に構成してもよく、その場合、ユーザは、長尺シートLPをセットするにあたり、長尺シートLP用の手差しトレイをプリンタ本体201Aに取り付ける。
【0032】
長尺シートLPを手差し給送装置100Mにセットすると、長尺シートLPは、先端部が手差しトレイ7に支持され、かつ中間部が中間ガイド13によって上方に湾曲するように案内される。そして、中間ガイド13によって案内された長尺シートLPの後端部は、後端トレイ14によって支持される。長尺シートLPの重量は、後端側の一部が後端トレイ14によって保持され、残りが手差しトレイ7によって保持される。また、長尺シートLPの後端がプリンタ本体201Aに圧接すると、長尺シートLPが湾曲することによる反力が長尺シートLPの先端側に作用する。
【0033】
長尺シートLPの先端が分離ニップ34に突き当たった状態で、このような長尺シートLPの重量や反力の影響により、長尺シートLPの先端には、長尺シートLPを分離ニップ34に押し込む力(以下、押込み力とする)が作用する。この押込み力が分離ニップ34の摩擦抵抗より大きくなると、長尺シートLPの先端が分離ニップ34を超えてしまい、給送不良となる虞がある。
【0034】
[第1のモード]
次に、印刷ジョブが終了した際のピックアップローラの昇降制御(以下、ジョブ終了制御という)について説明するが、本実施の形態の制御部9は、第1のモードと、第2のモードと、のいずれかを実行する。まず、第1のモードにおけるジョブ終了制御について説明する。
【0035】
図6は、第1のモードにおけるジョブ終了制御を示すフローチャートである。印刷ジョブが終了すると(ステップS1)、制御部9は、ピックアップローラ2が離間状態となるように、給送アーム5を上昇させる(ステップS2)。すなわち、制御部9は、シート有無検知センサ11がシートを検知しているか否かに拘わらず、ピックアップローラ2が離間状態となるように、給送アーム5を制御する。そして、制御部9は、待機状態となる(ステップS3)。
【0036】
このようなジョブ終了制御により、印刷ジョブが終了することでピックアップローラ2が必ず手差しトレイ7から離間するので、手差しトレイ7に載置されたシートを容易に取り除くことができ、また手差しトレイ7へのシートのセットも容易となる。
【0037】
しかしながら、図5に示すように、後端トレイ14をプリンタ本体201Aに取り付けて手差し給送装置100Mに長尺シートLPをセットした際に、上述した第1のモードにおけるジョブ終了制御を実行すると、ピックアップローラ2が離間状態となる。すると、ピックアップローラ2によって手差しトレイ7に押し付けられていた残存する長尺シートLPが開放されて、長尺シートLPの押込み力が分離ニップ34に作用してしまう。このまま次の印刷ジョブを開始すると、分離ニップ34に押し込まれた長尺シートLPを搬送できずに、ジャム等の搬送不良が発生する虞がある。このため、本実施の形態では、第1のモードと異なる第2のモードを設けている。
【0038】
[第2のモード]
図7は、第2のモードにおけるジョブ終了制御を示すフローチャートである。なお、以下のフローチャートにおいて、「Y」はYESを、「N」はNOを意味する。印刷ジョブが終了すると(ステップS4)、制御部9は、シート有無検知センサ11がONであるか否かを判定する(ステップS5)。シート有無検知センサ11がOFFの場合(ステップS5:N)、制御部9は、第1のモードと同様に、ピックアップローラ2が離間状態となるように、給送アーム5を上昇させ、待機状態となる(ステップS6,S7)。
【0039】
一方、シート有無検知センサ11がONの場合(ステップS5:Y)、制御部9は、ピックアップローラ2が接触状態を維持するように、給送アーム5を制御する(ステップS8)。そして、制御部9は、再びシート有無検知センサ11がONであるか否かを判定する(ステップS9)。シート有無検知センサ11がONの場合(ステップS9:Y)、制御部9は、ステップS8に戻る。そして、シート有無検知センサ11がOFFの場合(ステップS9:N)、制御部9は、ピックアップローラ2が離間状態となるように、給送アーム5を上昇させ、待機状態となる(ステップS10,S11)。
【0040】
すなわち、手差しトレイ7上にシートが残っている限りは、ピックアップローラ2は接触状態となって、手差しトレイ7上の長尺シートLPの移動が規制される。このため、長尺シートLPの押込み力が分離ニップ34に強く作用することを抑制し、次の印刷ジョブにおいて給送不良を防止することができる。手差しトレイ7上のシートが取り除かれることなく次の印刷ジョブが入力された場合には、ピックアップローラ2は接触状態となったまま回転開始される。
【0041】
また、ピックアップローラ2が接触状態となって手差しトレイ7上のシートと接触している状態において、ユーザが手差しトレイ7上のシートを取り除いてシート有無検知センサ11がOFFとなると、ピックアップローラ2は離間状態となる。特に、検知フラグ11a(図2参照)は、手差しトレイ7のシート給送方向における下流端部に設けられているため、ユーザが長尺シートLSを手差しトレイ7から少し引き抜くだけでシート有無検知センサ11はOFFとなる。これにより、シートのセット性が大きく損なわれることはない。
【0042】
本実施の形態では、操作パネル10から上記第1のモード及び第2のモードのいずれかを選択することができる。よって、ユーザは、後端トレイ14をプリンタ本体201Aに装着した上で、操作パネル10を操作して第2のモードを選択する。これによって、制御部9は、第2のモードに係る制御を実行する。なお、制御部9は、後端トレイ検知センサ24の検知結果に応じて、後端トレイ14が非装着状態の場合に第1のモードを実行し、後端トレイ14が装着状態の場合に第2のモードを実行するように構成してもよい。
【0043】
以上のように、本実施の形態の制御部9は、手差しトレイ7に長尺シートLPを載置しない場合には第1のモードを選択し、長尺シートLPを載置する場合には第2のモードを選択することができる。そして、第2のモードを選択することによって、ジョブ終了制御において手差しトレイ7に長尺シートLPが残っている場合には、ピックアップローラ2を接触状態のままとなるように維持する。これにより、長尺シートLPの押込み力が分離ニップ34に強く作用することを抑制し、次の印刷ジョブにおいて給送不良を防止することができる。
【0044】
<第2の実施の形態>
次いで、本発明の第2の実施の形態について説明するが、第2の実施の形態は、第1の実施の形態の第2のモードにおけるジョブ終了制御を変更して構成したものである。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0045】
第1の実施の形態では、印刷ジョブの開始前に予め第1のモードか第2のモードのいずれかが選択されていたが、第2の実施の形態では、印刷ジョブにおいて搬送したシートの長さに応じて第1のモード及び第2のモードのいずれかに決定される。このため、本実施の形態では、図8に示すように、制御部9の入力側にシート長さ検知センサ30が接続されている。シート長さ検知部としてのシート長さ検知センサ30は、例えばシートによって押圧されるフラグ部材と、フラグ部材の位置に応じて検知信号を出力するフォトセンサと、により構成されており、プリンタ201のシート搬送路上に設けられている。そして、シート長さ検知センサ30によって、搬送されるシートのシート給送方向における長さ(以下、シート長さとする)が検知される。
【0046】
図9は、本実施の形態に係る第2のモードにおけるジョブ終了制御を示すフローチャートである。印刷ジョブが終了すると(ステップS12)、制御部9は、シート長さ検知センサ30の検知結果に基づいて、当該印刷ジョブで搬送されたシートのシート長さが457mm(18インチ)以上か否かを判断する(ステップS13)。なお、本実施の形態では、シート長さが457mm(18インチ)以上のシートを長尺シートとして定義しているが、これに限定されない。
【0047】
シート長さが457mm未満の場合(ステップS13:N)、制御部9は、上述した第1のモードと同様に、ピックアップローラ2が離間状態となるように、給送アーム5を上昇させ、待機状態となる(ステップS14,S15)。シート長さが457mm以上の場合(ステップS13:Y)、制御部9は、ステップS16以降の処理を行う。ステップS16〜S22の処理は、第1の実施の形態のステップS5〜S11の処理と同じであるため説明を省略する。
【0048】
すなわち、本実施の形態では、制御部9は、ステップS13においてシート長さが所定長さである457mm未満であれば第1のモードを実行し、シート長さが457mm以上であれば第2のモードを実行する。このため、操作パネル10から第1のモード又は第2のモードを選択する必要が無く、ユーザの操作負担を軽減し、ユーザビリティを向上することができる。
【0049】
<他の実施の形態>
上述した第1及び第2の実施の形態では、図5に示すように、ピックアップローラ2を給送アーム5によって昇降させて、シートを手差しトレイ7に押えつけていたが、これに限定されない。すなわち、図10に示すように、給送アーム5(図5参照)を設けずにピックアップローラ2を昇降不能に構成し、手差しトレイ7に回動可能な中板43を設けてもよい。中板43は、トレイユニット12の一部を構成している。
【0050】
中板43は、回動軸43aを中心に手差しトレイ7に回動可能に支持されると共に、回動軸44aを中心に回動可能な移動部としてのリフトアーム44によって押圧されることで昇降する。そして、中板43が上昇し、中板43に載置されたシートがピックアップローラ2に接触することで、ピックアップローラ2は接触状態となる。また、中板43が下降し、中板43に載置されたシートがピックアップローラ2から離間することで、ピックアップローラ2は離間状態となる。なお、リフトアーム44によって中板43を昇降させずに、中板43の回動軸43aの直接、駆動源の駆動力を入力し、中板43を昇降可能に構成してもよい。
【0051】
ジョブ終了制御については、図6図7及び図9に示すフローチャートのピックアップローラの昇降を、中板の昇降に置き換えることで、適宜ピックアップローラ2を接触状態又は離間状態となるようにする。このように、シートを給送するピックアップローラ2とシートを支持する中板43(又は手差しトレイ7)のいずれか一方をいずれか他方に対して移動させて、ピックアップローラ2を接触状態又は離間状態とすればよい。これにより、上述した第1及び第2の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0052】
既述のいずれの形態においても、印刷ジョブが終了した後に第1のモード又は第2のモードのジョブ終了制御を行っていたが、これに限定されない。すなわち、シート給送ジョブとしての印刷ジョブの最後のシートの給送が終わった後であれば、いつでも上述したジョブ終了制御を行ってもよい。例えば、印刷ジョブの最後のシートの給送が終わったが、排出トレイ230に最後のシートを排出する前に上述したジョブ終了制御を行ってもよい。
【0053】
また、既述のいずれの形態においても、第1のモードと第2のモードを実行可能に構成していたが、第2のモードのみを実行可能に構成してもよい。また、シート有無検知センサ11は、手差しトレイ7に限らず、中間ガイド13や後端トレイ14、すなわちトレイユニット12のいずれかの場所に設けてもよい。また、シート有無検知センサ11を、非接触式のセンサから構成し、トレイユニット12とは異なる場所に設けてもよい。すなわち、シート有無検知センサ11は、トレイユニット12上に支持されたシートを検知できるのであれば、配置や構成は限定されない。
【0054】
また、既述のいずれの形態においても、電子写真方式のプリンタ201を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ノズルからインク液を吐出させることでシートに画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置にも本発明を適用することが可能である。また、画像形成部を有さない、大容量スタッカー等にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
2:給送部(ピックアップローラ)/5,44:移動部(給送アーム、リフトアーム)/7:第1トレイ(手差しトレイ)/9:制御部/10:操作部(操作パネル)/11:シート検知部(シート有無検知センサ)/12:支持部(トレイユニット)/13:中間ガイド/14:第2トレイ(後端トレイ)/24:トレイ検知部(後端トレイ検知センサ)/30:シート長さ検知部(シート長さ検知センサ)/34:分離部(分離ニップ)/100M,201:シート給送装置(手差し給送装置、プリンタ)/201A:装置本体(プリンタ本体)/201B:画像形成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10