(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の金属板とこれに重ねられた第2の金属板とを有するワークに対し、前記第1の金属板に当接する溶接電極と、前記第2の金属板に当接するアース電極と、前記溶接電極の近傍に配置されて前記第1の金属板を前記第2の金属板側に押圧する押圧手段と、を備え、前記溶接電極及び前記アース電極の間を通電して前記第1の金属板と前記第2の金属板とを溶接する片側スポット溶接装置において、
溶接位置における前記第1の金属板と前記第2の金属板との間の隙間の状態を検出する検出手段と、
前記押圧手段又は前記溶接電極により所定の加圧力を前記ワークに付与した際に前記検出手段が検出した隙間の状態に基づいて、スポット溶接を実行するか否かを判定する制御部と、を備え、
前記検出手段は、前記押圧手段又は前記溶接電極が前記ワークから受ける反力に基づいて前記第1の金属板と前記第2の金属板との間の隙間の状態を検出することを特徴とする片側スポット溶接装置。
第1の金属板とこれに重ねられた第2の金属板とを有するワークに対し、前記第1の金属板に当接する溶接電極と、前記第2の金属板に当接するアース電極と、前記溶接電極の近傍に配置されて前記第1の金属板を前記第2の金属板側に押圧する押圧手段と、を備え、前記溶接電極及び前記アース電極の間を通電して前記第1の金属板と前記第2の金属板とを溶接する片側スポット溶接装置において、
溶接位置における前記第1の金属板と前記第2の金属板との間の隙間の状態を検出する検出手段と、
前記押圧手段又は前記溶接電極により所定の加圧力を前記ワークに付与した際に前記検出手段が検出した隙間の状態に基づいて、スポット溶接を実行するか否かを判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出手段の検出結果に基づき、
前記押圧手段及び前記溶接電極が前記ワークから離れた状態で前記第1の金属板と前記第2の金属板との間に隙間が無いと判定した場合に、前記押圧手段を前記第1の金属板から離した状態でスポット溶接を実行し、
前記押圧手段及び前記溶接電極が前記ワークから離れた状態で前記第1の金属板と前記第2の金属板との間に隙間が有り、さらに、前記押圧手段又は前記溶接電極が当接して前記ワークに前記所定の加圧力を付与した際に該隙間の状態が予め設定した規定範囲内であると判定した場合に、前記押圧手段によって前記第1の金属板に加圧力を付与した状態でスポット溶接を実行し、
前記押圧手段及び前記溶接電極が前記ワークから離れた状態で前記第1の金属板と前記第2の金属板との間に隙間が有り、さらに、前記押圧手段又は前記溶接電極が当接して前記ワークに前記所定の加圧力を付与した際に該隙間の状態が前記規定範囲外であると判定した場合に、スポット溶接の実行を禁止することを特徴とする片側スポット溶接装置。
第1の金属板とこれに重ねられた第2の金属板とを有するワークに対し、溶接電極を前記第1の金属板に当接するとともに、アース電極を前記第2の金属板に当接し、前記溶接電極及び前記アース電極の間を通電して前記第1の金属板と前記第2の金属板とを溶接する片側スポット溶接方法において、
前記溶接電極の近傍に配置されて前記第1の金属板を前記第2の金属板側に押圧する押圧手段又は前記溶接電極により、前記ワークに所定の加圧力を付与して、検出手段により溶接位置における前記第1の金属板と前記第2の金属板との間の隙間の状態を検出する隙間検出工程と、
前記検出手段にて検出した隙間の状態に基づいて、スポット溶接を実行するか否かを判定する判定工程と、を含み、
前記隙間検出工程において、前記検出手段は、前記押圧手段又は前記溶接電極が前記ワークから受ける反力に基づいて前記第1の金属板と前記第2の金属板との間の隙間の状態を検出することを特徴とする片側スポット溶接方法。
第1の金属板とこれに重ねられた第2の金属板とを有するワークに対し、溶接電極を前記第1の金属板に当接するとともに、アース電極を前記第2の金属板に当接し、前記溶接電極及び前記アース電極の間を通電して前記第1の金属板と前記第2の金属板とを溶接する片側スポット溶接方法において、
前記溶接電極の近傍に配置されて前記第1の金属板を前記第2の金属板側に押圧する押圧手段又は前記溶接電極により、前記ワークに所定の加圧力を付与して、検出手段により溶接位置における前記第1の金属板と前記第2の金属板との間の隙間の状態を検出する隙間検出工程と、
前記検出手段にて検出した隙間の状態に基づいて、スポット溶接を実行するか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程の判定結果に基づいて、スポット溶接を実行又は禁止する溶接工程と、を含み、
前記溶接工程では、
前記押圧手段及び前記溶接電極が前記ワークから離れた状態で前記第1の金属板と前記第2の金属板との間に隙間が無いと判定された場合に、前記押圧手段を前記第1の金属板から離した状態でスポット溶接を実行し、
前記押圧手段及び前記溶接電極が前記ワークから離れた状態で前記第1の金属板と前記第2の金属板との間に隙間が有り、さらに、前記押圧手段又は前記溶接電極が当接して前記ワークに前記所定の加圧力を付与した際に該隙間の状態が予め設定した規定範囲内であると判定された場合に、前記押圧手段によって前記第1の金属板に加圧力を付与した状態でスポット溶接を実行し、
前記押圧手段及び前記溶接電極が前記ワークから離れた状態で前記第1の金属板と前記第2の金属板との間に隙間が有り、さらに、前記押圧手段又は前記溶接電極が当接して前記ワークに前記所定の加圧力を付与した際に該隙間の状態が前記規定範囲外であると判定された場合に、スポット溶接の実行を禁止することを特徴とする片側スポット溶接方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施の形態である片側スポット溶接装置10を示す側面図である。片側スポット溶接装置10は、例えば、自動車等の車両の製造工程(例えば、アウタパネルとリンフォースの接合など)において用いられ、少なくとも一部が重ねられた複数の金属板51,52からなるワーク(被溶接部材)50に溶接電極13とアース電極15とを当接し、これらの間を通電することで金属板51,52間を接合する。
【0020】
本実施の形態ではワーク50の一例として、2枚の金属板51,52を積層したものを記載しているが、金属板の枚数は2枚に限られず、3枚以上であってもよい。以下の説明では、片側スポット溶接装置10に対してワーク50をセットした状態において、溶接電極13が当接する金属板を第1の金属板51とし、アース電極15が当接する金属板を第2の金属板としている。本実施の形態では、第1の金属板51の板厚が、第2の金属板52よりも薄くなっている。なお、第1の金属板51と第2の金属板52とは、それぞれ、溶接された複数枚の金属板で構成されていてもよい。
【0021】
片側スポット溶接装置10は、溶接ロボットのロボットアーム2に取付けられた支持ブラケット3を有しており、支持ブラケット3に固定された第1加圧機構11及び第2加圧機構12と、第1加圧機構11に接続された溶接電極13と、第2加圧機構12に接続された押圧部材(押圧手段)14と、アース電極15と、溶接トランス16と、検出手段17と、制御部18と、アラーム装置19とを備える。
【0022】
第1加圧機構11は、第1アクチュエータ21と、第1アクチュエータ21に連結されて上下方向に延びるロッド22とを備える。第2加圧機構12は、第2アクチュエータ25と、第2アクチュエータ25に連結されて上下方向に延びるロッド26とを備える。
【0023】
第1アクチュエータ21及び第2アクチュエータ25は、それぞれ、支持ブラケット3の下部に位置するベース部3aの下面に固定されており、例えば、エアシリンダ、サーボシリンダ、又はサーボモータ等によりそれぞれ構成することができる。ロッド22及び26は互いに平行に延びており、それぞれ、第1アクチュエータ21及び第2アクチュエータ25のそれぞれの駆動力により軸方向である上下方向に進退移動する。
【0024】
第1加圧機構11のロッド22の先端部には、シャンク23を介して溶接電極13が設けられる。溶接電極13は、第1加圧機構11の作動により、上方側へ移動した退避位置と、下方側へ移動してワーク50の第1の金属板51の表面に当接し、第1の金属板51に加圧力を付与する加圧溶接位置との間を移動する。
【0025】
第2加圧機構12のロッド26の先端部には、押圧部材14が設けられる。押圧部材14は、上面がロッド26に連結されて溶接電極13側へ延びる平板状の基部31と、基部31の下面から下方へ突出する加圧部32を有する。押圧部材14は、加圧部32a,32bと検出手段17との間が絶縁されるように、少なくとも一部が絶縁性の材料で形成される。なお、
図1に示すように押圧部材14の絶縁性を確保するために検出手段17と押圧部材14との間に絶縁性部材34を介在させるものであってもよく、この場合、前記加圧部32a,32bの材質をワーク加圧時における当該加圧部32a,32bの摩耗・耐熱性を考慮して任意の材質のものが選定可能になる。
【0026】
加圧部32は、ワーク50の第1の金属板51に当接して、第1の金属板51を第2の金属板52側に押圧する部位であり、本実施の形態では、
図3に示すように溶接電極13の近傍位置に一対の加圧部32a,32bが、溶接電極13を挟んでその両側で第1の金属板51を押圧可能となるように、溶接電極13の近傍に配置されている。
【0027】
押圧部材14は、第2加圧機構12の作動により、上方側へ移動した退避位置と、下方側へ移動してワーク50の第1の金属板51の表面に当接し、第1の金属板51に加圧力を付与する加圧位置との間を移動する。
【0028】
溶接トランス16は、溶接電極13とアース電極15との間に電流を流すための溶接電源であり、溶接電極13は、シャンク23及びケーブル41を介して溶接トランス16の出力端子に電気的に接続され、アース電極15は、ケーブル42を介して溶接トランス16のアース端子に電気的に接続される。なお、図示例のアース電極15は、アクチュエータを備えた第3加圧機構43のロッド44の先端部に取付けられており、ロッド44が進退移動することで、セットされたワーク50の第2の金属板52に当接・離間可能に構成されている。
【0029】
検出手段17は、溶接位置における第1の金属板51と第2の金属板52との間の隙間の状態を検出するものである。ここで、溶接位置とは、溶接電極13が当接する溶接打点位置及び又はその近傍位置をいう。また、隙間の状態とは、隙間の有無や隙間の大きさ、また、これらを推定可能な隙間に関する情報等を含む意味である。本実施の形態では検出手段17の一例としてロードセルを用いており、このロードセルは、押圧部材14の上面に取付けられ、押圧部材14の加圧部32a,32bが第1の金属板51に当接して所定の加圧力を付与した際に、第1の金属板51から受ける反力を検出し、この検出結果に基づいて、金属板51及び52の間の隙間の有無及び隙間の大きさ等の隙間の状態を推定し検出する。なお、本実施形態では検出手段17としてロードセルを用いることで、ワーク50からの反力を測定するものであるため、ワーク形状が段違い、切欠きなどで第1の金属板51と第2の金属板52がずれて配置されている場合などに左右されず測定可能となる。また、検出手段17はロードセルに限られず、前述したようなワーク形状が段違い、切欠き等で第1の金属板51と第2の金属板52がずれて配置されている場合などは、例えば、ダイヤルゲージやレーザーセンサやカメラ等を適宜設置して隙間の有無及び隙間の大きさを検出してもよい。
【0030】
制御部18は、例えばCPU等の情報処理部、RAMやROM等の記憶部、入出力インターフェイス等を有して構成され、第1加圧機構11、第2加圧機構12、溶接トランス16、検出手段17及びアラーム装置19と接続されている。制御部18は、記憶部に記憶されたプログラム(例えば、各タイミングにおける溶接電極13及び押圧部材14の上下位置及び加圧力、各タイミングにおける溶接電極13の通電電流など)に基づいて、第1加圧機構11及び第2加圧機構12による溶接電極13及び押圧部材14の進退移動やワーク50に対する加圧力、溶接トランス16により溶接電極13に供給される溶接電流の電流値などを制御する。また、記憶部には、スポット溶接を実行するか否かの判定に用いられる、第1の金属板51と第2の金属板52との間の隙間の状態を判定するための一つ以上の閾値(所定値)が設定されている。なお、本実施形態では、閾値として事前に対象ワークを用いた場合における溶接処理が適正に行える反力値N
th(所定範囲を持つものでもよい)を設定しておく。
【0031】
また、制御部18は、押圧部材14により所定の加圧力が付与された状態において、検出手段17により検出された第1及び第2の金属板51,52間の隙間の状態に基づいて、スポット溶接を実行するか否かを判定する判定部を有する。本実施の形態では、ワーク50を片側スポット溶接装置10にセットして溶接電極13をワーク50から離間させた状態で、押圧部材14を退避位置から加圧位置まで所定の速度で移動させてワーク50に所定の押圧力を付与し、この際に押圧部材14が第1の金属板51や第2の金属板52から受ける反力を検出手段17により測定する。制御部18は、例えば、押圧部材14による所定の加圧力と検出された反力との関係や、記憶部に予め記憶された基準となる反力の波形データと検出された反力の波形データとの比較などにより、第1及び第2の金属板51、52間の隙間の状態を第1〜第4のパターンに区分する。
【0032】
具体的には、
図2(a),(b)に示すように、溶接電極13及び押圧部材14がワーク50から離れた状態及び押圧部材14によりワーク50に所定の押圧力を付与した状態において、第1の金属板51と第2の金属板52との間に隙間が無いと判定した場合に、第1のパターンに区分する。なお、
図2〜
図4において、一点鎖線Bは、ワーク50をセットした状態(ワーク50に加圧力が付与されていない状態)における、ワーク50の上下方向の基準位置を示している。本実施の形態では、ワーク50の溶接位置において、第2の金属板52の下面側にこれを支持する設置台を配置しておらず、ワーク50は加圧力を付与することで基準位置Bから下方に僅かに沈み込む。
【0033】
また、判定部は、
図3(a),(b)に示すように、溶接電極13及び押圧手段14がワーク50から離れた状態で第1の金属板51と前記第2の金属板52との間に隙間dが有ると判定し、さらに、押圧手段14が当接してワーク50に所定の加圧力を付与した際に、所定条件で検出されたワーク50からの反力が閾値n
th以下であると判定した場合に、第2のパターンに区分する。第2のパターンでは、加圧力付与により、隙間dが所定範囲内まで潰れた状態となり、隙間dの状態が予め設定した規定範囲内と判定される。
【0034】
また、判定部は、
図4(a),(b)に示すように、溶接電極13及び押圧手段14がワーク50から離れた状態で隙間dが有ると判定し、さらに、押圧手段14が当接してワーク50に所定の加圧力を付与した際に、所定条件下で検出された反力が閾値n
thを超える、又は、加圧力を付与しても隙間dが所定範囲内まで潰れないと判定した場合に、第3又は第4のパターンに区分する。第3及び第4のパターンでは、隙間dの状態が予め設定した規定範囲外と判定される。
【0035】
図5は、押圧部材14がワーク50から受ける反力の時間変化を示すグラフである。第1のパターンでは、
図5(a)に示すように、押圧部材14を退避位置から加圧位置まで移動させると、時間閾値T
thまでの間、押圧部材14がワーク50に接触せず、反力値(単位:N)は零(又は零に近い値)となる。ここで、閾値T
thは所定範囲を持つものでもよい。時間閾値T
thでは、第1及び第2の金属板51,52による反力を受けてほぼ一定の傾斜角度θ1で直線的に反力が増加する。なお、ここで「直線的」とは、例えば、
図5の点X
2、点X
4などのように時間軸に対して反力値の傾向が大きく変化する変化点が発生しないという意味であり、
図5(a)〜(c)では便宜的に変化点X
2,X
4,X
5,X
7,X
8の前後を直線的に図示しているが、実際の計測値では必ずしも直線的になるとは限らない。ワーク50が下方へ沈み込んで押圧部材14の加圧力が所定の値に達すると(
図5(a)の点X
2)、これと同等のほぼ一定の反力を受ける。
【0036】
第2のパターンでは、
図5(b)に示すように、時間閾値T
thまでの間に、押圧部材14が第1の金属板51に接触して、第1の金属板51の反力を受ける。時間閾値T
thまでの間、反力はほぼ一定の傾斜角度θ2で直線的に増加する。ここで傾斜角度の大きさは、θ1>θ2である。時間閾値T
thでは、第1及び第2の金属板51,52の反力を受けて、傾斜角度θ3が大きくなる。押圧部材14の加圧力が所定値に達すると(
図5(b)の点X
5)、ほぼ一定の反力を受ける。特に、第2のパターンでは、傾斜角度がθ2からθ3に変化する変化点X
4において、反力値が反力閾値n
th以下となる。このような反力データを有するワーク50は、押圧部材14により予め設定した加圧力(すなわち、閾値n
thと等しい加圧力n
th)が付与されることで、隙間dが所定範囲内(すなわち、隙間d≦閾値d
th)になることが推定され、隙間dの状態が予め設定した規定範囲内と判定される。
【0037】
一方、変化点X
4における反力値が閾値n
thを超える場合(
図5(b)の第3のパターンの範囲にある場合)、押圧部材14により加圧力n
thを付与しても隙間dが所定範囲外(すなわち、隙間d>閾値d
th)であったり、隙間d≦閾値d
thであっても溶接時の接触面積が不足したりすることが推定される。このような反力データを有するワーク50は、隙間dを所定範囲内とするのに要する加圧力が加圧力n
thを超えることから、隙間dの状態が予め設定した規定範囲外と判定され、第3のパターンに区分される。
【0038】
第4のパターンでは、
図5(c)に示すように、まず、押圧部材14が第1の金属板51の反力を受けて、反力がほぼ一定の傾斜角度θ4(θ4<θ1)で直線的に増加し、時間閾値T
thに達する前に(変化点X
7)、第1及び第2の金属板51,52の反力を受けて傾斜角度θ5(θ5>θ4)で直線的に反力が増加する。押圧部材14の加圧力が所定値に達すると(点X
8)、ほぼ一定の反力を受ける。このような反力データを有するワーク50は、金属板51,52間に異物が存在することにより、所定の加圧力を付与しても隙間dが潰せない状態(すなわち、隙間d>閾値d
th)となり、隙間dの状態が予め設定した規定範囲外と判定される。
【0039】
このように、反力の波形データから、第1の金属板51が当接するタイミング、傾斜角度θ、傾斜角度θが変化する変化点が発生するタイミング及び変化点における反力値などを検出することで、隙間dの状態を検出し、ワーク50を第1〜第4のパターンに区分することができる。なお、本実施の形態では、第3のパターンと第4のパターンとを予め設定した規定範囲外としているが、第4のパターンのみを予め設定した規定範囲外としてもよい。
【0040】
制御部18は、第1のパターンの場合、
図2(c)に示すように押圧部材14による加圧力を解放してスポット溶接を実行する制御を行う。また、第2のパターンの場合、
図3(c)に示すように押圧部材14によって所定の加圧力を付与した状態でスポット溶接を実行する制御を行う。また、第3及び第4のパターンの場合、スポット溶接の実行を禁止する制御を行う。
【0041】
アラーム装置19は、制御部18からの指示信号に基づいて作動し、視覚的なアラーム(例えば、ランプの点灯等)及び又は聴覚的なアラーム(例えば、ブザー音等)を発生させる。
【0042】
片側スポット溶接装置10のロボットアーム2は、図示しないロボット制御部の作動制御により作動して三次元方向に移動可能であり、ロボットアーム2の移動に伴って、溶接電極13及び押圧部材14が次元方向に移動する。ロボット制御部には、ワーク50の溶接打点位置を順次スポット溶接するための作動プログラム等のデータが格納されている。
【0043】
次に、片側スポット溶接装置10を用いた溶接方法について説明する。
【0044】
まず、
図1に示すように、片側スポット溶接装置10のロボットアーム2を溶接位置まで移動させ、ワーク50を図示していない設置台にセットし、アース電極14を第2の金属板52に当接させる(ワーク設置工程)。ワーク設置工程において、溶接電極13及び押圧部材14は退避位置にある。
【0045】
次に、第2加圧機構12を作動させて、押圧部材14を退避位置から加圧位置へ移動させる。この際、検出手段17は、押圧部材14がワーク50から受ける反力を検出し、この検出結果に基づき、制御部18は第1の金属板51と第2の金属板52との間の隙間dの状態を検出する(隙間検出工程)。本実施の形態では、押圧部材14による加圧力付与の前後の隙間の状態から、ワーク50を第1〜第4のパターンのいずれかに区分けする。
【0046】
制御部18は、検出手段17にて検出した隙間の反力による波形データ(
図5参照)に基づいて、スポット溶接を実行するか否かを判定し(判定工程)、判定結果に基づいてスポット溶接を実行又は禁止する(溶接工程)。
【0047】
図6は、上述した隙間検出工程、判定工程及び溶接工程において、制御部18がワーク50を第1〜第4のパターンに区分してスポット溶接を実行又は禁止する際の動作を示したフローチャート図である。
【0048】
制御部18は、ワーク50がセットされると、押圧部材14を加圧位置に移動させて、ワーク50に所定の加圧力を付与し(ステップS1)、検出手段17から検出結果を取得する(ステップS2)。取得した検出結果(すなわち、ワーク50から受ける反力)に基づき、制御部18の判定部は、ワーク50に加圧力を付与する前の状態で、溶接位置において第1及び第2の金属板51,52の間に隙間dが有るか否かを判定する(ステップS3)。
【0049】
ステップS3において、検出手段17による押圧時の反力の波形データに基づいて隙間dが無い(すなわち、隙間dが略0)と判定した場合(ステップS3:Yes)、ワーク50を第1のパターンに区分する(
図2(a),(b)参照)。第1のパターンに区分されると、
図2(b),(c)に示すように、制御部18は、押圧部材14を加圧位置から退避位置に移動させて加圧力を解放する(ステップS4)。その後、溶接電極13を加圧溶接位置に移動させ、溶接電極13とアース電極15との間を通電し、スポット溶接を行う(ステップS5)。
【0050】
ステップS3において、隙間dが有る(すわなち、隙間dが略0より大きい値)と判定した場合(ステップS3:No)、制御部18の判定部は、検出手段17から取得した検出結果に基づき、押圧部材14により所定の加圧力を付与した際に隙間dが潰せるか否かを判定する(ステップS6)。隙間dが潰せる(すなわち、
図5(c)の波形データから外れる)場合(ステップS6:Yes)、時間閾値T
thで生じる変化点X
4において、ワーク50から受ける反力値nが閾値n
th以下であるか否かを判定する(ステップS7)。
【0051】
ステップS7において、反力値nが閾値n
th以下であると判定した場合(ステップS7:Yes)、ワーク50を第2のパターンに区分する(
図3(a),(b)参照)。第2のパターンに区分されると、制御部18は、
図3(c)に示すように、押圧部材14を加圧位置に維持してワーク50に所定の加圧力を付与したまま、溶接電極13を加圧溶接位置に移動させ、溶接電極13とアース電極15との間を通電し、スポット溶接を行う(ステップS5)。
【0052】
ステップS7において、反力値nが閾値n
thを超えると判定した場合(ステップS7:No)、ワーク50を第3のパターンに区分する。第3のパターンに区分されると、制御部18は、スポット溶接の実行を禁止する制御を行う。本実施の形態では、押圧部材14をワーク50から離間させて溶接電極13及び押圧部材14を退避位置とし、アラーム装置19を作動させてアラームを発生させる(ステップS8)。
【0053】
また、ステップS6において、隙間dが潰れないと判定した場合(ステップS6:No)、ワーク50を第4のパターンに区分し(
図4(a),(b)参照)、その後、ステップS8へ移行してスポット溶接の実行を禁止する制御を行う。
【0054】
なお、上述した片側スポット溶接方法において、アース電極15は、スポット溶接を実行する判定が行われた後に、ワーク50に当接させてもよい。また、反力を検出する際の所定の加圧力と、第2のパターンでスポット溶接を実行する際に押圧部材14が付与する所定の加圧力とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0055】
上述した片側スポット溶接装置10を用いた片側スポット溶接方法によれば、第1及び第2の金属板51,52の間に隙間dが有る場合に、押圧部材14によって加圧力を付与して隙間dを所定範囲内に潰した状態で、溶接電極13により加圧してスポット溶接を実行することができるので、量産で発生する板間の隙間の影響を考慮して溶接することで品質の安定化を図ることができる。また、加圧力を付与した状態で隙間dが異物介在などにより潰れない場合には、溶接不良が発生する確率が高いためスポット溶接を禁止することで溶接不良時の手直し作業を低減し、製造コストを低減することができる。さらに、ステップS7で反力値nが閾値n
thを超える場合には、押圧部材14により加圧力を付与しても溶接品質が安定しない可能性があるとしてスポット溶接を禁止することで、より確実に溶接不良の発生を抑制することができる。
【0056】
また、加圧力が付与されていない状態で隙間dが実質的に無い場合に、押圧部材14による加圧力を解放してスポット溶接を実行することで、溶接位置において第1及び第2の金属板51,52の間の接触面積を増加させることなく、スポット溶接を実行することができる。接触面積が大きいと発熱の起点がなくなり、溶接打点位置にナゲットが形成され難くなるが、押圧部材14を解放して過度な接触面積にならないようにすることで良好なスポット溶接部を得ることができる。
【0057】
さらに、隙間dの有無によって押圧部材14を使用又は不使用とすることで、量産工程において片側スポット溶接装置10の電流値範囲を広く確保することができる。
図7は、スポット溶接の電流値を変化させた際のナゲット径の変化を示す表であって、第1のパターンに区分される「隙なし」のワーク50と、第1の金属板51と第2の金属板52が接触するのに必要な押し付け力(すなわち、閾値n
th)を60Nに設定した、第2のパターンに区分される「隙あり」のワーク50とを比較して示したものである。
図7(a)は、押圧部材14を使用しない場合を示し、
図7(b)は、押圧部材14により60Nの加圧力を付与した場合を示し、
図7(c)は、(a)の「隙間なし」と(b)の「隙間あり」を並べたものである。スポット溶接は、規定のナゲット径を満たしチリが発生しない状態(すなわち、
図7のドットで示した、規定のナゲット径を確保し、且つチリが発生する手前の範囲)であることが好ましい。
【0058】
図7(a)の押圧部材14を使用しない場合、「隙間なし」及び「隙間あり」の両方のワーク50に対して、溶接品質を確保できる適切な電流値範囲がなく、
図7(b)の60Nの加圧力を付与した場合、8.5〜9.5kAが適切な電流値範囲となる。本実施の形態のように「隙間なし」の第1のパターンと、「隙間あり」の第2のパターンとで押圧部材14の使用と不使用とを組み合わせた場合には、
図7(c)に示すように適切な電流値範囲は8〜9.5kAとなり、電流値範囲を広く確保して品質安定性を向上することができる。
【0059】
(変形例)
図8は、片側スポット溶接装置10の変形例を示す要部拡大斜視図である。なお、
図8及び
図9では、押圧部材14の加圧部32a,32bが第1の金属板51に当接する位置をドットで示している。片側スポット溶接装置10は、溶接電極13とアース電極15とをワーク50の上面側に配置してスポット溶接を行うものであってもよく、溶接電極13とアース電極15とが一つのガンに取付けられ、個々に進退移動(上下移動)可能なツインガン方式であってもよい。
【0060】
図9は、片側スポット溶接装置10の他の変形例を示す要部拡大斜視図である。本変形例では、ワーク50の第2の金属板52が溶接された2枚の金属板52a,52bにより構成されている。2枚の金属板52a,52bは閉断面を構成しており、アース電極15は、実線で示すように第1の金属板51の下面に接触する金属板52aに上方から当接する。なお、アース電極15はこの配置に代えて、仮想線で示すように、金属板52aと金属板52bとの積層部分や、金属板52bに当接してもよい。
【0061】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施の形態では、押圧部材14の一対の加圧部32a,32bにより溶接電極13の周囲の2点を加圧しているが、押圧部材14は、溶接電極13の近傍を複数点もしくは少なくとも1点を加圧する構成であればよく、押圧部材14の加圧部を筒状に形成して溶接電極13の全周囲を加圧する構成としてもよい。
【0062】
また、本発明は、前記押圧部材14側に検出手段17を設けた実施形態に限らず、例えば、溶接電極13側に検出手段17を設け、溶接電極13により所定の加圧力を付与し、溶接電極13が受ける反力から隙間の状態を検出するものであってもよい。