特許第6971725号(P6971725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971725
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】帯電装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   G03G15/02 103
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-171595(P2017-171595)
(22)【出願日】2017年9月6日
(65)【公開番号】特開2019-45801(P2019-45801A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 正史
(72)【発明者】
【氏名】深澤 俊也
【審査官】 小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−186269(JP,A)
【文献】 特開2013−231762(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0104315(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体の表面に面して配置され、前記感光体に対向する面に開口部が形成された筐体と、
前記筐体内に配置され、前記感光体の表面を帯電する放電電極と、
前記感光体と前記放電電極との間に配置され、前記感光体表面の帯電量を制御する制御電極と、
前記放電電極に面した前記制御電極の第一面に摺動して前記第一面を清掃する第一清掃部材と、
前記感光体に面した前記制御電極の第二面に向かう方向に可撓性を有する本体部と、前記本体部に設けられて前記第二面に摺動して前記第二面を清掃する摺動部と、を有する第二清掃部材と、
前記制御電極に対し前記第二清掃部材を移動させる移動手段と、を備え、
前記第一清掃部材と前記第二清掃部材は、前記第一清掃部材の前記制御電極に対する侵入量をL1、前記第二清掃部材の前記制御電極に対する侵入量をL2とした場合に、
L1>L2の関係を満たす、
ことを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記第一清掃部材と前記第二清掃部材は、前記第一清掃部材の前記第一面に対する単位面積当たりの接触面積率をS1、前記第二清掃部材の前記第二面に対する単位面積当たりの接触面積率をS2とした場合に、
S2>S1の関係を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記開口部が開口された開位置と前記開口部が遮蔽された閉位置とに移動自在なシャッタを備え、
前記第二清掃部材は、前記シャッタが前記開位置から前記閉位置に移動される際に、前記摺動部が前記第一清掃部材による前記制御電極の摺動位置よりも移動方向の上流側で前記制御電極に摺動する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電装置。
【請求項4】
前記シャッタと前記第一清掃部材並びに前記第二清掃部材は、前記移動手段により一緒に移動される、
ことを特徴とする請求項に記載の帯電装置。
【請求項5】
前記第二清掃部材は、前記シャッタに配置され、
前記移動手段は、前記シャッタを移動することにより前記第二清掃部材を移動させる、
ことを特徴とする請求項又はに記載の帯電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリあるいは複合機などの画像形成装置に用いて好適な帯電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置では、感光ドラムの表面を所定の極性、電位に一様に帯電するために、帯電装置としてコロナ帯電器が用いられている。コロナ帯電器は感光ドラムに非接触に対向配置されており、感光ドラムはコロナ放電器が発生する荷電粒子(コロナイオン)によって帯電される。コロナ帯電器として、スコロトロン方式のものが知られている。スコロトロン方式のコロナ帯電器は、荷電粒子を発生し感光ドラムの表面を帯電する放電電極と、感光ドラム表面の帯電量を制御する制御電極とを有している。放電電極にはワイヤ状に形成されたもの(放電ワイヤと呼ぶ)が用いられ、制御電極には板状部材にエッチング処理により多数の孔がメッシュ状に形成されたもの(グリッド電極と呼ぶ)が用いられる。
【0003】
スコロトロン方式の場合、コロナ放電の際に荷電粒子と共に発生される放電生成物、あるいはトナーやトナーの外添剤などの付着物がグリッド電極に付着しやすい。グリッド電極に付着した付着物は、グリッド電極を酸化して錆を生じさせ得る。グリッド電極に錆が生じると、感光ドラムを所定電位に一様に帯電し難くなり、帯電ムラが生じやすくなる。そこで、グリッド電極に付着した付着物を除去するために、グリッド電極に摺動してグリッド電極を清掃する清掃部材を備えた帯電装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−186269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載の装置は、グリッド電極の放電ワイヤに面した側の表面(ワイヤ面と呼ぶ)と、感光ドラムに面した側の表面(ドラム面と呼ぶ)の両面を清掃可能な清掃部材を備えている。そして、グリッド電極の清掃時、ドラム面を清掃するドラム面清掃パッドは可動保持部材によりグリッド電極に加圧される。こうすることで、繰り返しの清掃動作に伴いドラム面清掃パッドが摩耗しても、その付着物の除去能力(清掃力)を維持でき、もってドラム面清掃パッドの交換サイクルをできる限り長くし得る。しかし、グリッド電極の非清掃時、可動保持部材によりドラム面清掃パッドを待機位置に退避させておく必要があり、可動保持部材の配置スペースやドラム面清掃パッドの退避スペースを確保するために装置が大型化しやすく、これは昨今の小型化の要望に反する。また、可動保持部材を設ける分、コスト高になりやすい。そこで、グリッド電極のワイヤ面とドラム面の両面を清掃でき、特にドラム面の付着物の除去能力を比較的に長く維持できる、簡易な構成の装置が従来から望まれていたが、未だそのようなものは提案されていない。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、グリッド電極のワイヤ面とドラム面の両面を清掃でき、特にドラム面の付着物の除去能力を比較的に長く維持できる、簡易な構成の帯電装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る帯電装置は、感光体の表面に面して配置され、前記感光体に対向する面に開口部が形成された筐体と、前記筐体内に配置され、前記感光体の表面を帯電する放電電極と、前記感光体と前記放電電極との間に配置され、前記感光体表面の帯電量を制御する制御電極と、前記放電電極に面した前記制御電極の第一面に摺動して前記第一面を清掃する第一清掃部材と、前記感光体に面した前記制御電極の第二面に向かう方向に可撓性を有する本体部と、前記本体部に設けられて前記第二面に摺動して前記第二面を清掃する摺動部と、を有する第二清掃部材と、前記制御電極に対し前記第二清掃部材を移動させる移動手段と、を備え、前記第一清掃部材と前記第二清掃部材は、前記第一清掃部材の前記制御電極に対する侵入量をL1、前記第二清掃部材の前記制御電極に対する侵入量をL2とした場合に、L1>L2の関係を満たす、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御電極の感光体に面した第二面を清掃する第二清掃部材に関して、第二面に摺動させる摺動部を可撓性を有する本体部に設けた簡易な構成で、第二清掃部材による第二面の付着物の除去能力を比較的に長く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の帯電装置を適用可能な画像形成装置の構成を示す概略図。
図2】画像形成部を示す概略図。
図3】本実施形態の帯電装置を示す外観斜視図。
図4】本実施形態の帯電装置を示す断面図。
図5】グリッド電極について説明する模式図。
図6】本実施形態の帯電装置を示す側面図であり、(a)はシャッタが開いた状態、(b)はシャッタが閉じた状態を示す。
図7】清掃部材の移動制御系の制御ブロック図。
図8】引き込み部材を示す部分拡大斜視図であり、(a)はグリッド電極を引き込む前、(b)はグリッド電極を引き込んだ後を示す。
図9】グリッド電極の清掃範囲について説明する図であり、(a)は帯電装置を示し、(b)は感光ドラムに流れる帯電電流分布を示す。
図10】ワイヤ面清掃ブラシを示す図であり、(a)はグリッド電極側から視た下面図、(b)は側面図。
図11】ワイヤ面清掃ブラシの侵入量について説明する模式図。
図12】ワイヤ面清掃ブラシの突出量について説明する模式図。
図13】ワイヤ面清掃ブラシによるグリッド電極の清掃について説明する模式図。
図14】ワイヤ面清掃ブラシとドラム面清掃ブラシとによるグリッド電極の清掃態様について説明する図であり、(a)は往路時、(b)は復路時を示す。
図15】ドラム面清掃ブラシをシャッタに配置した他の実施形態の帯電装置を示す部分拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<画像形成装置>
本実施形態の画像形成装置の概略構成について、図1及び図2を用いて説明する。本実施形態の画像形成装置100は、電子写真方式のタンデム型のフルカラープリンタである。画像形成装置100は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部PY、PM、PC、PKを有する。画像形成装置100は、装置本体100Aに接続された原稿読取装置(不図示)又は装置本体100Aに対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等の外部機器からの画像信号に応じてトナー像を記録材に形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。
【0011】
図1に示すように、画像形成部PY、PM、PC、PKは、中間転写ベルト8の移動方向に沿って並べて配置されている。中間転写ベルト8は複数のローラに張架されて、矢印R2方向に走行するように構成されている。そして、中間転写ベルト8は後述するようにして一次転写されたトナー像を担持して搬送する。中間転写ベルト8を張架するローラ9と中間転写ベルト8を挟んで対向する位置には、二次転写ローラ10が配置され、中間転写ベルト8上のトナー像を記録材に転写する二次転写部T2を構成している。二次転写部T2の記録材搬送方向下流には、定着装置11が配置されている。
【0012】
画像形成装置100の下部には、記録材が収容されたカセット12が配置されている。記録材は、搬送ローラ13によりカセット12からレジストレーションローラ14に向けて搬送される。その後、レジストレーションローラ14が中間転写ベルト8上のトナー像と同期して回転開始されることにより、記録材は二次転写部T2に搬送される。
【0013】
画像形成装置100が備える4つの画像形成部PY、PM、PC、PKは、現像色が異なることを除いて実質的に同一の構成を有する。従って、ここでは代表して画像形成部PKについて説明し、その他の画像形成部については説明を省略する。
【0014】
図2に示すように、画像形成部PKには、感光体として円筒型の感光ドラム1が配設されている。感光ドラム1は、矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には帯電装置2、露光装置3、現像装置4、一次転写ローラ5、クリーニング装置6が配置されている。
【0015】
上述した構成の画像形成装置100により、例えば4色フルカラーの画像を形成するプロセスについて説明する。まず、画像形成動作が開始すると、回転する感光ドラム1の表面(感光体表面)が帯電装置2によって一様に帯電される。帯電装置2は、コロナ放電に伴う荷電粒子を照射して感光ドラム1を一様な負極性の暗部電位に帯電させる。本実施形態の帯電装置2については、詳細を後述する。次いで、感光ドラム1は、露光装置3から発せられる画像信号に対応したレーザ光Lにより走査露光される。これにより、感光ドラム上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。感光ドラム上の静電潜像は、現像装置4内に収容されたトナーによって顕像化され、可視像となる。
【0016】
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト8を挟んで配置される一次転写ローラ5との間で構成される一次転写部T1にて、中間転写ベルト8に一次転写される。この際、一次転写ローラ5には一次転写バイアスが印加される。一次転写後に感光ドラム1の表面に残ったトナーなどは、クリーニング装置6によって除去される。
【0017】
このような動作をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各画像形成部で順次行い、中間転写ベルト8上で4色のトナー像を重ね合わせる。その後、トナー像の形成タイミングにあわせてカセット12に収容された記録材が二次転写部T2に搬送される。そして、二次転写ローラ10に二次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト8上の4色のトナー像を、記録材上に一括して二次転写する。
【0018】
次いで、記録材は定着装置11に搬送される。定着装置11は、搬送される記録材を加熱、加圧する。これにより、記録材上のトナーが溶融、混合されて、フルカラーの画像として記録材に定着される。その後、記録材は排出トレイ15に排出される。こうして、一連の画像形成プロセスが終了する。
【0019】
<帯電装置>
本実施形態の帯電装置2の構成について、図3乃至図5を用いて説明する。本実施形態の帯電装置2はスコロトロン方式のコロナ帯電器であり、図3には感光ドラム側から視た帯電装置2を示した。帯電装置2は画像形成装置100の装置本体100A(図1参照)に挿抜可能に設けられ、図3に示すように、感光ドラム1の回転軸線方向(長手方向)に沿って感光ドラム1に対向する位置に配置される。なお、図3では図示の都合上、後述する清掃部材250の図示を省略し、また図4では後述するシャッタ210の図示を省略している。
【0020】
図3に示すように、帯電装置2は、一対のシールド電極203と、帯電装置2の挿入方向(図中矢印X方向)の手前側に配置された前ブロック201と、帯電装置2の挿入方向の奥側に配置された奥ブロック202とを有する。シールド電極203はステンレス鋼(SUS)を用いて板状に形成され、感光ドラム1の回転軸線方向に交差する幅方向(短手方向)に所定間隔(例えば30mm)で互いに対向するように配置されている。シールド電極203と前ブロック201と奥ブロック202とは、断面が略コの字状の開口した筐体90を形成する。前ブロック201と奥ブロック202は、後述の放電ワイヤ205(図4参照)を感光ドラム1の回転軸線方向に張架し、またグリッド電極206を保持している。
【0021】
<放電ワイヤ>
図4に示すように、帯電装置2は、放電電極としての放電ワイヤ205と、制御電極としてのグリッド電極206とを有する。放電ワイヤ205は、一対のシールド電極203の内側(筐体内)に配置されている。放電ワイヤ205は、不図示の高圧電源から帯電電圧が印加されることによってコロナ放電を生じる。放電ワイヤ205は、例えばステンレススチール、ニッケル、モリブデン、タングステンなどが用いられ、これらがワイヤ状に形成されたものである。放電ワイヤ205は直径が小さくなるにつれ、放電に伴い発生するイオンの衝突により切断等しやすくなる。反対に、放電ワイヤ205は直径が大きくなるにつれ、安定したコロナ放電を生じさせるために帯電電圧をより高くする必要がある。しかしながら、帯電電圧を高くしすぎると、放電に伴いオゾンが発生しやすくなる。上記点に鑑み、放電ワイヤ205はその直径が40μm〜100μmに形成されていると好ましい。
【0022】
<グリッド電極>
グリッド電極206は、感光ドラム1の表面に近接されるように筐体90の開口部90aに、感光ドラム1と放電ワイヤ205との間に設けられている。グリッド電極206は、不図示の高圧電源から高圧電圧が印加されることに伴って感光ドラム側に流れる電流量を制御し得る。これにより、感光ドラム1の表面の帯電量が制御される。グリッド電極206は感光ドラム表面に近付けたほうが、感光ドラム表面を均一に帯電する効果を高くし得る。本実施形態では、グリッド電極206と感光ドラム1との最近接距離(GDギャップ)を「1.3±0.3mm」に設定した。なお、グリッド電極206と放電ワイヤ205との最近接距離は8mmに設定した。
【0023】
グリッド電極206は、例えば厚みが1mm以下の薄い板状の金属平板(薄板)の基材206cにエッチング処理を施すことによって多数の貫通孔が形成されたメッシュ状の部分を有した、所謂エッチンググリッドである。本実施形態では、基材206cとしてオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)からなる厚さ約0.1mmの薄板を用いた。なお、基材206cとしては他にも、マルテンサイト系ステンレス鋼あるいはフェライト系ステンレス鋼等を用いてよい。
【0024】
グリッド電極206の形状について、図5を用いて説明する。図5には、グリッド電極206の形状を説明するために、便宜的に符号「a〜f」を付してある。貫通孔206aは、開口幅「0.3±0.03mm」となるように(図5中の符号a参照)、貫通孔206a以外の基材206c(図4参照)の残り部分が幅「0.07±0.03mm」となるように形成される(図5中の符号b参照)。また、貫通孔206aは、長手方向に延びる仮想線に対し角度「45±1°」(図5中の符号c参照)に形成される。貫通孔206aの部分と、貫通孔206a以外の残り部分との面積比が大きいほど、感光ドラム1の表面を均一に帯電する効果が高い。グリッド電極206の短手方向には、撓み防止のために「6.9±0.1mm」間隔毎に(図5中の符号e参照)、幅「0.1±0.03mm」(図5中の符号d参照)の梁206bが長手方向に設けられている。なお、グリッド電極206の幅方向の両端部には、幅「1.5±0.1mm」程度に基材206cを残しておくのが好ましい(図5中の符号f参照)。また、グリッド電極206はメッシュ状に形成されることに限られず、例えばハニカム状に形成されてもよい。
【0025】
なお、グリッド電極206の表面には、耐腐食性の向上を目的に表面処理(所謂、コーティング)が施されて、防錆効果のある保護層が形成されている。例えば、コロナ放電によって発生する放電生成物に対して化学的に不活性度が高い材料であるテトラヘデラルアモルファスカーボン(ta−C)の保護層が形成される。ta−Cは他の材料に比べると、常温で空気や水等に対して不活性、耐腐食性、低摩耗性、自己潤滑性、高硬度、表面平滑性に優れている。また、ta−Cは化学的吸着及び酸化反応等が起き難く、さらに磨耗や傷の発生による部分的な劣化が生じ難い。それ故、グリッド電極表面の保護層に用いるのに適している。
【0026】
<シャッタ>
また、帯電装置2は、図3に示すように、グリッド電極206と感光ドラム1との間を移動し得るシャッタ210を有する。シャッタ210は、グリッド電極206と感光ドラム1との間を長手方向に移動し、筐体90の開口部90a(図4参照)が開口された開位置と開口部90aが遮蔽された閉位置とに移動自在に設けられている。シャッタ210は、例えばレーヨン繊維などの柔らかい可撓性の不織布を用いて、厚み100μm程度の薄いシート状に形成されている。勿論、これに限られず、シャッタ210は薄いシート状に形成可能であれば、ナイロン繊維を編んだものや、ウレタンやポリエステル等のフィルムなどを用いて形成されていてもよい。シャッタ210は筐体90の開口部90aを覆い得るように、幅方向(短手方向)の長さが一対のシールド電極203の間隔よりも広めに形成されている。
【0027】
シャッタ210は、図6(a)及び図6(b)に示すように、長手方向の一端が巻き取り機構211に接続され、巻き取り機構211によって長手方向へ移動される。巻取り機構211は、シャッタ210をロール状に巻き取って収納する。図6(a)に示すように、シャッタ210が全て巻き取り機構211に巻き取られた位置(開位置)にある場合、筐体90の開口部90a(図4参照)は開口された状態である。反対に、図6(b)に示すように、シャッタ210が全て巻き取り機構211から引き出された位置(閉位置)にある場合、筐体90の開口部90aは遮蔽された状態にある。即ち、シャッタ210は、感光ドラム1の一端側(図6(b)の右側)に移動されることで筐体90の開口部90aを遮蔽し、他端側(図6(a)の左側)に移動されることで筐体90の開口部90aを開口する。
【0028】
巻取り機構211は、巻取り機構211を保持する保持ケース214とともに前ブロック201に保持されている。保持ケース214のシャッタ引出部近傍には、シャッタ210がグリッド電極206のエッジ、保持部207、つまみ208などと当接して、シャッタ210の引き出し動作が阻害されないように、シャッタ210を案内するガイドコロ215が配置されている。ここで、保持部207(209)は前ブロック201と奥ブロック202にそれぞれ配置されてグリッド電極206を保持するもので、つまみ208は使用者による操作に応じてグリッド電極206を保持部207、209から取り外すためのものである。
【0029】
巻き取り機構211と反対側のシャッタ210の他端は、板ばね212に保持されている。板ばね212はシャッタ210をグリッド電極側に向けて付勢すると共に、閉位置でシャッタ210をアーチ状に維持することができる。シャッタ210は閉位置で、幅方向(短手方向)の中央付近がグリッド電極側に向けて凸状となるように維持されることによって、筐体外へ放電生成物を漏れ難くしている。
【0030】
シャッタ210を保持する板ばね212は、キャリッジ213に接続されている。キャリッジ213は、駆動スクリュ217の回転により駆動される。駆動スクリュ217は、モータMにより回転駆動される。キャリッジ213が閉位置方向に移動するのに応じて、シャッタ210は巻取り機構211から引き出される。反対に、キャリッジ213が開位置方向に移動するのに応じて、シャッタ210は巻取り機構211により巻き取られる。なお、板ばね212は例えば厚さ0.10mmの金属を用いて形成され、薄いながらもシャッタ210を保持するに耐える強度が確保されている。
【0031】
<光学センサ>
上記のシャッタ210が開位置にあるか閉位置にあるかを検出するために、帯電装置2は第一の光学センサPS1、第二の光学センサPS2を有している。光学センサPS1、PS2はシャッタ210の位置検出、具体的にはシャッタ210が巻き取り機構211に巻き取られた状態(開位置)か巻き取られていない状態(閉位置)かを検出する。本実施形態の場合、光学センサPS1、PS2はシャッタ210が開位置にある場合と閉位置にある場合とでそれぞれ所定の信号を出力可能に、駆動スクリュ217の軸上方の二箇所に配置されている。
【0032】
光学センサPS1、PS2としては、例えば光を照射する発光部と、発光部から照射された光を受光する受光部とが対向配置されたフォトインタラプタ式のセンサを用いるのが好ましい。フォトインタラプタ式のセンサの場合、遮蔽部材220がキャリッジ213に設けられる。遮蔽部材220は、キャリッジ213つまりはシャッタ210の移動に応じて移動される。遮蔽部材220が光学センサPS1、PS2を遮蔽した遮蔽位置にある場合、光学センサPS1、PS2は所定の信号(ここでは光量に応じた信号)を出力する。反対に、遮蔽部材220が光学センサPS1、PS2を遮蔽していない非遮蔽位置にある場合、光学センサPS1、PS2は所定の信号を出力しない。本実施形態では、図6(a)に示すように、巻取り機構211側に近い方に配置された光学センサPS1から所定の信号が出力されている場合、シャッタ210は開位置にある。他方、図6(b)に示すように、巻取り機構211側から遠い方に配置された光学センサPS2から所定の信号が出力されている場合、シャッタ210は閉位置にある。
【0033】
<清掃パットと清掃部材>
さらに、帯電装置2は、放電ワイヤ205を清掃する清掃パット216と、グリッド電極206を清掃する清掃部材250とを有する。本実施形態の場合、これら清掃パット216と清掃部材250は、キャリッジ213に保持されている。それ故、清掃パット216と清掃部材250は、モータMの駆動に応じてつまりはシャッタ210の開位置と閉位置間の移動にあわせて、長手方向に往復動される。清掃パット216は、例えばスポンジを用いて形成され、放電ワイヤ205を重力方向の上下から挟み込んだ状態で往復動することで放電ワイヤ205を清掃する。清掃部材250の詳しい構成については後述する。
【0034】
ここで、清掃部材250の移動制御について説明する。本実施形態の場合、上記のように、清掃部材250はシャッタ210の移動にあわせて往復動されることから、実質的にシャッタ210の移動制御に従って清掃部材250が移動される。シャッタ210は、制御部300(図1参照)による制御の下で移動される。制御部300における清掃部材250(実質的にはシャッタ210)の移動制御系の制御ブロックを、図7に示す。図7に示すように、制御部300にはメモリ301、モータM、光学センサPS1、PS2などが接続されている。なお、制御部300には図示した以外にも画像形成装置100を動作させるモータや電源等の各種機器が接続されるが、ここでは発明の本旨でないのでそれらの図示及び説明を省略している。
【0035】
制御部300は、画像形成動作などの画像形成装置100の各種制御を行うものであり、図示を省略したCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部300には、記憶手段としてのROMやRAMあるいはハードディスク装置などのメモリ301が接続されている。メモリ301には、画像形成装置100を制御するための各種プログラムやデータ等が記憶されている。制御部300はメモリ301に記憶されている画像形成ジョブを実行して、画像形成を行うよう画像形成装置100を動作させ得る。本実施形態の場合、制御部300は清掃部材250を動作させてグリッド電極206を清掃する清掃制御を実行可能である。なお、メモリ301には、各種制御プログラムの実行に伴う演算処理結果などが一時的に記憶され得る。
【0036】
本実施形態の場合、制御部300はカウンタ302により計時される記録材の累計枚数が所定の画像形成枚数(例えば6000枚)に達する毎に、グリッド電極206を清掃する清掃制御を行う。その際に、制御部300は駆動手段としてのモータMを制御し、上述した駆動スクリュ217及びキャリッジ213を介してシャッタ210を動作させることで、清掃部材250を移動させる。グリッド電極206に対する清掃部材250の移動は、光学センサPS1、PS2によって検出される。制御部300は、光学センサPS1、PS2から出力される信号を取得可能である。制御部300は清掃部材250の移動制御時、光学センサPS2から所定の信号が出力されるまで往路動作を行うようモータMを制御し、光学センサPS2から所定の信号が出力されると復路動作を行うようモータMを反転制御する。なお、制御部300は画像形成ジョブの実行後、画像形成ジョブ終了後からの経過時間が所定時間(例えば2時間)過ぎたらシャッタ210を閉める制御を行ってスリープモードに入る。また、制御部300はスリープモードから画像形成ジョブを開始させる場合、シャッタ210を開ける制御を行ってから画像形成を開始する。
【0037】
また、本実施形態の場合、清掃部材250にグリッド電極206を清掃させるため、清掃部材250の移動制御の開始前に、グリッド電極206は感光ドラム側から放電ワイヤ側に移動(引き込み)される。即ち、グリッド電極206は清掃前、感光ドラム側の清掃部材250に接触しない待機位置に待機している。そして、グリッド電極206は清掃時、キャリッジ213の短手方向両端に配置されている引き込み部材252(図5参照)によって、待機位置と清掃部材250に接触する清掃位置との間を移動されながら、清掃部材250によって清掃されていく。
【0038】
<引き込み部材>
引き込み部材252について、図8(a)及び図8(b)を用いて説明する。図8(a)及び図8(b)は感光ドラム側から視た帯電装置2を示し、図面上側が重力方向である。図8(a)及び図8(b)に示すように、引き込み部材252はキャリッジ213からシールド電極203よりも内側に向けて突出するように設けられている。引き込み部材252はキャリッジ213の移動方向に延設されて、テーパ部252aと摺擦部252bとを有する。テーパ部252aは、帯電装置2の挿入方向(図中矢印X方向)に進むにつれて感光ドラム側に近付くように形成された傾斜面である。他方、摺擦部252bはテーパ部252aよりも前ブロック201側に形成された水平面である。
【0039】
図8(a)に示すように、引き込み部材252は、キャリッジ213が閉位置方向に移動するのに応じて図中矢印X方向に移動する。引き込み部材252の移動に応じて、グリッド電極206はテーパ部252aに沿って感光ドラム側へ向け重力方向と反対側(図面上側)に押し上げられるようにして移動される。テーパ部252aにより重力に逆らって押し上げられたグリッド電極206は局所的に変形する。そして、図8(b)に示すように、摺擦部252bまで進むと、グリッド電極206は摺擦部252bにより放電ワイヤ側(図面下側)へ変位する力Fを受けて、変位した状態に保持される。即ち、グリッド電極206はキャリッジ213の移動に応じて、感光ドラム側から放電ワイヤ側へと押圧される。上述したように、キャリッジ213には清掃部材250が保持されていることから、清掃部材250はキャリッジ213が移動すると同様に移動する。その際に、清掃部材250は感光ドラム側から放電ワイヤ側へ押圧されたグリッド電極206に接触しながら移動され、グリッド電極206を清掃していく。
【0040】
上述のように、引き込み部材252はグリッド電極206と摺擦して移動されるため、清掃部材250による清掃回数が増えるにつれて、グリッド電極206は局所的に摩耗し得る。上述の図5には、引き込み部材252との摺擦により摩耗するグリッド電極206の箇所を示してある。図5に示すグリッド電極206の箇所gが、引き込み部材252と摺擦する箇所である。グリッド電極206の箇所hは、引き込み部材252と摺擦しない箇所である。図5に示すように、引き込み部材252はグリッド電極206のメッシュ部と接触しないように設けられている。これは、メッシュ部において貫通孔206a以外の基材206c(図4参照)の残りの部分は細いが故に、引き込み部材252に摺擦されると切断され得るからである。
【0041】
次に、清掃部材250によるグリッド電極206の清掃範囲について、図9を用いて説明する。図9(a)に記した符号「G」は、放電ワイヤ205とシールド電極203との間隔を示し、符号「H」は放電ワイヤ205とグリッド電極206との間隔を示している。また、図9(b)に記した符号「R」は、感光ドラム側に流れる帯電電流(Id)のピーク値に対し、半値以上の電流が流れる範囲を示している。また、符号「P」はグリッド電極206の幅方向中央を示す。ここでは、符号「R」で示す範囲が放電ワイヤ205と感光ドラム1の中心「O」を結んだ直線に対して、±(R/2)の範囲を示している。符号「R」で示す範囲は、以下に示す式1によって決まる範囲である。
=G+H ・・・ 式1
【0042】
そして、図9(b)に示すように、感光ドラム1に流れる帯電電流(Id)のピ−ク値は放電ワイヤ205の直下(P)で最も大きくなる。本実施形態の場合、清掃部材250によるグリッド電極206の清掃範囲は、上記式1に示したように、シールド電極203の間隔「G」とグリッド電極206の間隔「H」の2乗和平均に設定されている。これは、感光ドラム側に流れる帯電電流(Id)が大きいほど、グリッド電極206に付着物が付着しやすいからである。なお、放電ワイヤ205がどちらかのシールド電極203側に片寄って配置されている場合には、放電ワイヤ205との間隔が狭い方のシールド電極203との距離を上記間隔「G」として計算するのが望ましい。
【0043】
清掃部材250の構成について詳しく説明する。本実施形態の清掃部材250は、図4に示すように、第一清掃部材としてのワイヤ面清掃ブラシ500と、第二清掃部材としてのドラム面清掃ブラシ600とを有する。ワイヤ面清掃ブラシ500とドラム面清掃ブラシ600とは、それぞれがグリッド電極206の表裏それぞれの面を清掃する。即ち、ワイヤ面清掃ブラシ500は、放電ワイヤ205に面したグリッド電極206の表面(第一面、ワイヤ面と呼ぶ)に摺動してワイヤ面を清掃する。他方、ドラム面清掃ブラシ600は、感光ドラム1に面したグリッド電極206の表面(第二面、ドラム面と呼ぶ)に摺動してドラム面を清掃する。
【0044】
<ワイヤ面清掃ブラシ>
まず、ワイヤ面清掃ブラシ500について、図10(a)乃至図13を用いて説明する。図10(a)及び図10(b)に示すように、ワイヤ面清掃ブラシ500は樹脂ブラシを難燃処理して基布に織り込んだものであり、ブラシ部501と基布部502とで構成されている。ブラシ部501は自由長「L10」で、グリッド電極206の幅方向に関し、上述した符号「R」で示す領域(図9(b)参照)をカバーするように形成されている。本実施形態の場合、ブラシ部501は、太さが11デシテックスのアクリル製のパイルを6万本/インチの密度で、自由長「L10」が3.0mmとなるように織り込まれているものを用いた。なお、ブラシ部501は、ナイロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の樹脂ブラシを用いてもよい。こうしたワイヤ面清掃ブラシ500のサイズは、例えば幅方向長さが21mm、長手方向長さが5mmである。そして、ブラシ部501は、符号「Δg」で示す余白部が例えば1mmとなるように形成されている。
【0045】
図11に示すように、本実施形態の場合、ワイヤ面清掃ブラシ500がグリッド電極206に摺動していない静止状態における、ブラシ部501のグリッド電極206に対する侵入量(図中ΔX)は、例えば0.8mmに設定される。
【0046】
図12に示すように、ワイヤ面清掃ブラシ500が長手方向に移動しグリッド電極206に摺動している場合、ブラシ部501はグリッド電極206のワイヤ面を清掃するものと、貫通孔206aを清掃するものとに分かれる。図12中に記載のグリッド電極206の「撓み量」は、ワイヤ面を清掃しているブラシ部501がグリッド電極206を押し付けた量を示す。本実施形態の場合、グリッド電極206の撓み量は約0.1mmに抑制されている。また、ワイヤ面清掃ブラシ500がグリッド電極206に摺動している動作状態における、ブラシ部501のグリッド電極206に対する突出量(図中ΔL)は、例えば0.4〜0.6mmに設定される。「突出量ΔL」は、貫通孔206aを清掃しているブラシ部501がグリッド電極206から感光ドラム側に突出した長さである。
【0047】
図13に、自由長「L10」のブラシ部501が貫通孔206aと接触して清掃する様子を示した。ブラシ部501による貫通孔206aの清掃力は、ブラシ部501が貫通孔206aに接触して移動した距離に比例する。このことから、「突出量ΔL」(図12参照)を大きくすれば、ブラシ部501と貫通孔206aとの接触移動距離を増加し得るので、ブラシ部501による貫通孔206aの清掃力を高めることができる。また、この「突出量ΔL」の値は、ブラシ部501の自由長「L10」と、ブラシ部501のグリッド電極206に対する侵入量(図11のΔX)で決まる。本実施形態では、グリッド電極206の清掃範囲(図9(b)のR領域)における突出量を上述した0.4〜0.6mmとし、それ以外の幅方向の両端部における突出量を0〜0.2mmとした。つまり、付着物が付着し難い幅方向両端部に比べて、付着物が付着しやすいR領域の清掃力を高くしている。そうなるように、ブラシ部501の自由長「L10」と、ブラシ部501のグリッド電極206に対する侵入量(図11のΔX)とが設定されると好ましい。
【0048】
ここで、グリッド電極206のワイヤ面と貫通孔206aの両方を清掃するには、突出量ΔL(図12参照)が0mm以上である必要がある。より好適には、グリッド電極206の板厚や撓み量を考慮して、突出量ΔLを0.1mm以上に設定するのが望ましい。また、突出量ΔLを、図13に示した貫通孔206aの長手方向の長さJと同等に設定するのが望ましい。例えば貫通孔206aの形成角度が45度、貫通孔206aの長手方向の長さJが0.3mmである場合には、突出量ΔLが0.4mm以上に設定される。なお、突出量ΔLの上限は、グリッド電極206の清掃時に、ブラシ部501の挙動が感光ドラム1との接触で変動しないように、グリッド電極206と感光ドラム1との間隔(GDギャップ)より小さくするのが望ましい。以上のようにすることで、グリッド電極206の撓み量を抑制しながら、好適にグリッド電極206のワイヤ面と貫通孔206aの両方を清掃できるようになる。
【0049】
<ドラム面清掃ブラシ>
次に、ドラム面清掃ブラシ600について説明する。図4に示すように、ドラム面清掃ブラシ600は、本体部601と、摺動部としての摺動ブラシ部602とを有する。本体部601は例えば厚み100μmのステンレス鋼(SUS)を用いて形成された板バネであり、グリッド電極206のドラム面に向かう方向に可撓性を有する。摺動ブラシ部602は、例えば自由長が1.5mmの難燃処理された樹脂ブラシが植毛された植毛シートを用い、本体部601に設けられている。摺動ブラシ部602は、図9(b)で示したR領域(放電ワイヤ205直下を含む所定領域)でグリッド電極206に接触可能に形成されている。摺動ブラシ部602は本体部601により、グリッド電極206に接触される。なお、摺動ブラシ部602は、アクリル、ナイロン(登録商標)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等に難燃処理したものを用いてよい。また、摺動ブラシ部602はブラシに限らず、スポンジやゴム、樹脂シートであってもよい。
【0050】
発明者らは、グリッド電極206に対するドラム面とワイヤ面の接触面積率を変えて実験したところ、「ドラム面の接触面積率(S2)>ワイヤ面の接触面積率(S1)」の関係にあると、グリッド電極206が良好に清掃されることがわかった。本実施形態では、ワイヤ面清掃ブラシ500のグリッド電極206に対する接触面積率(S1)よりも、ドラム面清掃ブラシ600のグリッド電極206に対する接触面積率(S2)が大きい。即ち、本実施形態の場合、ワイヤ面を清掃する清掃部材には、主たる目的としてワイヤ面に付着した付着物を落とす(除去する)ことが求められていることから、ワイヤ面清掃ブラシ500が用いられている。ただし、この場合、ワイヤ面に付着していた付着物を除去することができずに、貫通孔206aを介してドラム面側に移動させてしまう場合がある。そこで、ドラム面を清掃する清掃部材には、ドラム面に付着した付着物を除去することに加えて、ワイヤ面からドラム面に移動してきた付着物をワイヤ面清掃ブラシ500により除去可能な位置に移動させることが求められる。そこで、ドラム面を清掃する清掃部材としては、静電植毛したドラム面清掃ブラシ600、あるいはスポンジ、高密度ゴムなどが用いられる。そのため、グリッド電極206に対するドラム面とワイヤ面の接触面積率は、ドラム面を清掃する清掃部材の方がワイヤ面を清掃する清掃部材よりも大きくなる。なお、接触面積率は、清掃時のグリッド形状を模した透明ガラス板を準備し、上述の侵入量にてワイヤ面を清掃する清掃部材とドラム面を清掃する清掃部材とを透明ガラス板に当接し、その当接状態をカメラで撮影し算出した単位面積当たりの接触面積である。
【0051】
また、本実施形態では、ドラム面清掃ブラシ600(詳しくは摺動ブラシ部602)のグリッド電極206に対する侵入量を0.3mmに設定した。これは、ワイヤ面清掃ブラシ500(詳しくはブラシ部501)のグリッド電極206に対する侵入量「0.8mm」よりも小さい。発明者らは、ドラム面清掃ブラシ600とワイヤ面清掃ブラシ500の侵入量をそれぞれ0.05〜3.0mmの範囲で変えて実験した。その実験結果から、「ワイヤ面清掃ブラシ500の侵入量(L1)>ドラム面清掃ブラシ600の侵入量(L2)」の関係にあると、グリッド電極206が良好に清掃されることがわかった。そこで、本実施形態では上記のようにワイヤ面清掃ブラシ500の侵入量を0.8mm、ドラム面清掃ブラシ600の侵入量を0.3mmに設定した。
【0052】
ただし、繰り返し清掃動作を行うことにより、ドラム面清掃ブラシ600の摺動ブラシ部602は摩耗するため、摺動ブラシ部602の自由長は減少する。そうなると、上記した接触面積率や侵入量の関係が維持され難くなる。そこで、上述したように、摺動ブラシ部602を可撓性を有する本体部601に設け、摺動ブラシ部602をグリッド電極206のドラム面側に加圧させることで、摺動ブラシ部602の自由長が減少しても付着物を良好に清掃できるようにしている。
【0053】
さらに、本実施形態では、ワイヤ面清掃ブラシ500とドラム面清掃ブラシ600とが、長手方向の異なる位置でグリッド電極206に対し摺動するように、清掃部材250に設けられる。即ち、清掃部材250の清掃動作時に、ドラム面清掃ブラシ600の摺動ブラシ部602が移動方向に関し、ワイヤ面清掃ブラシ500のブラシ部501によるワイヤ面の摺動位置と異なる位置でグリッド電極206のドラム面に摺動されるようにしている。こうすることで、グリッド電極206に付着した付着物の清掃性を高めている。この点に関し、図14(a)及び図14(b)を用いて説明する。
【0054】
図14(a)に、シャッタ210が開位置から閉位置に移動する往路時における、ワイヤ面清掃ブラシ500とドラム面清掃ブラシ600とによるグリッド電極206の清掃態様を示す。図14(a)に示すように、往路時には、ドラム面清掃ブラシ600の摺動ブラシ部602が、ワイヤ面清掃ブラシ500のブラシ部501によるグリッド電極206の摺動位置よりも移動方向の上流側でグリッド電極206に摺動する。言い換えれば、ワイヤ面清掃ブラシ500のブラシ部501が、ドラム面清掃ブラシ600の摺動ブラシ部602より先にグリッド電極206の清掃を行う。この場合、ブラシ部501は、ワイヤ面に付着していた付着物を貫通孔206a(図11参照)を介してドラム面側に移動させる。その後、摺動ブラシ部602により、ドラム面側に移動された付着物と、元からドラム面に付着していた付着物とが一緒に清掃される。この際に、付着物が感光ドラム上に落ちて付着しないように、付着物はシャッタ210上に落下されるようにしている。このように、比較的に付着物が多いワイヤ面を先に清掃し、その後にドラム面を清掃することで、グリッド電極206に付着した付着物の清掃性を高めている。
【0055】
図14(b)に、シャッタ210が閉位置から開位置に移動する復路時における、ワイヤ面清掃ブラシ500とドラム面清掃ブラシ600とによるグリッド電極206の清掃態様を示す。図14(b)に示すように、復路時には、ドラム面清掃ブラシ600の摺動ブラシ部602が、ワイヤ面清掃ブラシ500のブラシ部501によるグリッド電極206の摺動位置よりも移動方向の下流側でグリッド電極206に摺動する。上記した往路時にグリッド電極206はほぼ清掃された状態であるが、僅かでも付着物が残留していれば、まずドラム面清掃ブラシ600の摺動ブラシ部602がグリッド電極206の清掃を行う。この場合、摺動ブラシ部602は、ドラム面に付着していた付着物を貫通孔206a(図11参照)を介してワイヤ面側に移動させる。その後、ブラシ部501により、ワイヤ面側に移動された付着物が清掃される。この際には、付着物が感光ドラム上に落ち得るが、往路時にほとんどの付着物が清掃され、この場合に感光ドラム上に落ちる付着物は非常に僅かであり、またその多くは回転する感光ドラム1の気流によって流されるので感光ドラム1に付着し難い。
【0056】
以上のように、本実施形態では、ワイヤ面清掃ブラシ500によりワイヤ面、ドラム面清掃ブラシ600によりドラム面の、グリッド電極206の両面を清掃できる。そして、ドラム面清掃ブラシ600に関し、摺動ブラシ部602を可撓性を有する本体部601に設け、摺動ブラシ部602をグリッド電極206のドラム面側に加圧させている。こうした装置の大型化を防ぎつつグリッド電極206の両面を清掃可能な簡易な構成で、例え摺動ブラシ部602が摩耗したとしても、ドラム面の付着物の除去能力を比較的に長く維持することができる。
【0057】
<他の実施形態>
上述した実施形態では、ワイヤ面清掃ブラシ500とドラム面清掃ブラシ600とを清掃部材250として一体的に設けたものを例に示したが、これに限らず、ドラム面清掃ブラシ600をシャッタ210に配置してもよい。こうした場合の帯電装置2を、図15に示す。図15に示す清掃部材250は図8と比較して、ドラム面清掃ブラシ600をシャッタ210に配置した点が異なり、その他の構成及び作用は上述の実施形態と同様であるため、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
図15に示すように、本実施形態において、シャッタ210の他端を保持する板ばね212を上述した本体部として、この板ばね212に上述した摺動ブラシ部602を貼り付けることで、ドラム面清掃ブラシ600はシャッタ210に配置される。こうした場合には、シャッタ210を感光ドラム1に接触させない一方で、ドラム面清掃ブラシ600の摺動ブラシ部602をグリッド電極206にしっかりと摺動させることができる。また、板ばね212を本体部として兼用することから、部品追加によるコストアップを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0059】
1…感光体(感光ドラム)、2…帯電装置、90…筐体、205…放電電極(放電ワイヤ)、206…制御電極(グリッド電極)、210…シャッタ、500…第一清掃部材(ワイヤ面清掃ブラシ)、600…第二清掃部材(ドラム面清掃ブラシ)、601…本体部、602…摺動部(摺動ブラシ部)、M…移動手段(モータ)
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15