(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分散樹脂(A)、硫黄化合物固体電解質(B)、及び溶媒(C)を含有する硫黄化合物固体電解質分散ペーストであって、該分散樹脂(A)が、少なくとも一種の重量平均分子量3000以上のアクリル樹脂(a)を含有し、
アクリル樹脂(a)が、炭素数が4未満のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)として、溶解性パラメーターが9(J/mol)1/2以上の高極性重合性不飽和モノマー(a2−1)を含有することを特徴とする二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
アクリル樹脂(a)が、炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a1)20〜99質量%、炭素数が4未満のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)0〜50質量%、及び官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3)1〜30質量%を含む原料モノマーの共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
アクリル樹脂(a)が、官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3)として、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミノ基、4級塩基、アミド基、水酸基、ポリアルキレングリコール基、アルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の高極性官能基を有する高極性重合性不飽和モノマー(a3−1)を含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
溶媒(C)が、下記式(1)で表されるエステル系溶媒、及び/又は炭化水素系溶媒であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
R1COOR2・・・(1)
(式中、R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよく、炭素数2以上の炭化水素を示す。)
分散樹脂(A)及び硫黄化合物固体電解質(B)、ならびに任意選択でバインダー(D)を含有する二次電池用硫黄化合物固体電解質層であって、該分散樹脂(A)が、少なくとも一種の重量平均分子量3000以上のアクリル樹脂(a)を含有し、かつ
該アクリル樹脂(a)が以下の要件の一方又は両方を満たすことを特徴とする二次電池用硫黄化合物固体電解質層:
・該アクリル樹脂(a)が、炭素数が4未満のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)として、溶解性パラメーターが9(J/mol)1/2以上の高極性重合性不飽和モノマー(a2−1)を含有すること
・アクリル樹脂(a)の溶解性パラメーターが、9(J/mol)1/2未満であること。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、硫黄化合物固体電解質分散ペーストにおいて、硫黄化合物固体電解質の沈降を抑制しつつ、かつ当該ペーストをより低粘度下すること(すなわち、高固形分含量化を実現すること)である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる状況の下、本発明者らは鋭意検討した結果、二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペーストにおいて、硫黄化合物固体電解質の分散樹脂として、少なくとも一種のアクリル樹脂(a)を含むものを用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる新規の知見に基づくものである。
【0009】
従って、本発明は、以下に示す発明を提供する:
項1.分散樹脂(A)、硫黄化合物固体電解質(B)、及び溶媒(C)を含有する硫黄化合物固体電解質分散ペーストであって、該分散樹脂(A)が、少なくとも一種の重量平均分子量3000以上のアクリル樹脂(a)を含有することを特徴とする二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
項2.硫黄化合物固体電解質分散ペーストの固形分質量を基準として、分散樹脂(A)を、0.01〜10質量%含有することを特徴とする項1に記載の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
項3.アクリル樹脂(a)が、炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a1)20〜99質量%、炭素数が4未満のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)0〜50質量%、及び官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3)1〜30質量%を含む原料モノマーの共重合体であることを特徴とする項1又は2に記載の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
項4.アクリル樹脂(a)が、官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3)として、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミノ基、4級塩基、アミド基、水酸基、ポリアルキレングリコール基、アルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の高極性官能基を有する高極性重合性不飽和モノマー(a3−1)を含有することを特徴とする項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
項5.アクリル樹脂(a)が、炭素数が4未満のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)として、溶解性パラメーターが9(J/mol)
1/2以上の高極性重合性不飽和モノマー(a2−1)を含有することを特徴とする項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
項6.アクリル樹脂(a)の溶解性パラメーターが、9(J/mol)
1/2未満であることを特徴とする項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
項7.溶媒(C)が、下記式(1)で表されるエステル系溶媒、及び/又は炭化水素系溶媒であることを特徴とする項1〜6のいずれか1項に記載の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
R
1COOR
2・・・(1)
(式中、R
1及びR
2は、同一であっても異なっていてもよく、炭素数4以上の炭化水素を示す。)
項8.溶媒(C)の溶解性パラメーターが、7.3〜8.5(J/mol)
1/2であることを特徴とする項1〜7のいずれか1項に記載の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
項9.さらに、バインダー(D)を含有することを特徴とする項1〜8のいずれか1項に記載の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト。
項10.項1〜9のいずれか1項に記載の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペーストの乾燥物である二次電池用硫黄化合物固体電解質層。
項11.分散樹脂(A)及び硫黄化合物固体電解質(B)、ならびに任意選択でバインダー(D)を含有する二次電池用硫黄化合物固体電解質層であって、該分散樹脂(A)が、少なくとも一種の重量平均分子量3000以上のアクリル樹脂(a)を含有することを特徴とする二次電池用硫黄化合物固体電解質層。
項12.項10又は11に記載の硫黄化合物固体電解質層、正極、及び負極を具備することを特徴とする全固体二次電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硫黄化合物固体電解質の沈降を抑制しつつ、かつ低粘度化(もしくは高固形分含量化)した二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「樹脂がその原料となるモノマーXを含有する」とは、相反する内容を別途明記しない限り、上記樹脂が、上記モノマーXを含む原料モノマーの(共)重合体であることを意味する。また、本明細書において、(共)重合体とは重合体又は共重合体を意味する。
【0012】
尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味する。
【0013】
1.二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペースト
本発明は、分散樹脂(A)、硫黄化合物固体電解質(B)、及び溶媒(C)を含有する硫黄化合物固体電解質分散ペーストであって、該分散樹脂(A)が、少なくとも一種の重量平均分子量3000以上のアクリル樹脂(a)を含有することを特徴とする二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペーストを提供する。
【0014】
分散樹脂(A)
本発明の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペーストで用いることができる分散樹脂(A)は、少なくとも一種の重量平均分子量3000以上のアクリル樹脂(a)を含有することを特徴とする。上記分散樹脂(A)は、アクリル樹脂(a)と共に必要に応じて従来既知の樹脂を含有することができ、具体的には、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブタジエンゴム、及びこれらの変性樹脂や複合樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせてアクリル樹脂(a)と共に含有することができる。
【0015】
本発明の硫黄化合物固体電解質分散ペーストに含まれる上記分散樹脂(A)の含有量としては、固体電解質分散ペーストの固形分質量を基準として、分散樹脂(A)の固形分質量が、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜2質量%であることが特に好ましい。
【0016】
アクリル樹脂(a)
本発明で用いることができるアクリル樹脂(a)は、重合性不飽和モノマーとして、(メタ)アクリロイル基含有モノマーを通常50%以上、好ましくは70%以上含有する共重合体である。(メタ)アクリロイル基含有モノマー以外の重合性不飽和モノマーとしては、それ自体既知のものを制限なく用いることができ、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリルニトリルなどが挙げられ、これらは通常50%未満、好ましくは30%未満含有することができる。
上記アクリル樹脂(a)は、重合性不飽和モノマーを共重合して得られ、下記式(1)で示される繰り返し単位からなり、不飽和炭化水素骨格を主鎖中に有さない重合体である。
【0018】
(式中、Xは少なくとも1個以上の炭素を有する有機基である。Rはメチル基または水素原子である。)
【0019】
上記アクリル樹脂(a)は、樹脂の極性の観点から、炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a1)が20〜99質量%、炭素数が4未満のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)が0〜50質量%、及び官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3)が1〜30質量%を含む原料モノマーの共重合体であることが好ましい。
【0020】
また、同じく樹脂の極性の観点から、アクリル樹脂(a)の溶解性パラメーターが、9(J/mol)
1/2未満であることが好ましく、8.5(J/mol)
1/2未満であることがより好ましい。
【0021】
ここで、溶解性パラメーターとは、一般にSP値(ソルビリティ・パラメーター)とも呼ばれるものであって、溶媒や樹脂の親水性又は疎水性の度合い(極性)を示す尺度である。また、溶媒と樹脂、樹脂間の溶解性や相溶性を判断する上で重要な尺度となるものであり、溶解性パラメーターの値が近い(溶解性パラメーターの差の絶対値が小さい)と、一般的に溶解性や相溶性が良好となる。
【0022】
溶媒の溶解性パラメーターは、J.BrandrupおよびE.H.Immergut編“Polymer Handbook”VII SolubilityParament Values,pp519−559(John Wiley& Sons社、第3版1989年発行)に記載される方法に従って求めることができる。2種以上の溶媒を組合せて混合溶媒として用いる場合、その溶解性パラメーターは、実験的に求めることができ、また、簡便な方法として、個々の液状溶媒のモル分率と溶解性パラメーターとの積の総和により求めることもできる。
【0023】
また、樹脂の溶解性パラメーターは、当業者に公知の濁度測定法をもとに数値定量化されるものであり、具体的には、K.W.SUH、J.M.CORBETTの式(Journal of Applied PolymerScience,12,2359,1968)に準じて求めることができる。
【0024】
本発明のアクリル樹脂(a)が、低極性のモノマーを高い割合で含有し、溶解性パラメーターの値が小さく(極性が低く)なることで、溶媒(C)やバインダー(D)との溶解性や相溶性が高まり、貯蔵安定性が向上すると考えられる。
【0025】
炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a1)
上記炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a1)としては、炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーであり、かつ後述する官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3)以外の重合性不飽和モノマーであれば特に制限なく用いることができる、具体的には、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基含有(メタ)アクリレートを挙げることができ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記モノマー(a1)を構成成分とするアクリル樹脂(a)によって分散して得られる硫黄化合物固体電解質分散ペーストは、粘性及び貯蔵安定性を向上することができる。
【0027】
炭素数が4未満のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)
上記炭素数が4未満のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)としては、炭素数が4未満のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーであって、かつ後述する官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3)以外の重合性不飽和モノマーであれば特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数3以下のアルキル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
なかでも、炭素数が4未満のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a2)として、溶解性パラメーターが9(J/mol)
1/2以上の高極性重合性不飽和モノマー(a2−1)を含有するが好ましく、具体的には、例えば、メチルアクリレート(SP:9.38)、メチルメタクリレート(SP:9.23)などが挙げられる。
【0029】
官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3)
上記官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3)としては、アルキル基以外の官能基を有する重合性不飽和モノマーであって、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等のウレタン結合を含まない含窒素重合性不飽和モノマー;イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと水酸基含有化合物との反応生成物又は水酸基含有重合性不飽和モノマーとイソシアネート基含有化合物との反応生成物等のウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等、これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;メトキシ(メタ)アクリレート、エトキシ(メタ)アクリレート、ブトキシ(メタ)アクリレート等のアルコキシ(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0030】
また、ポリアルキレングリコールマクロモノマーは、下記式(2)で示される非イオン性の重合性不飽和モノマーであり、そのようなモノマーの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、特に、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが好適である。
CH
2=C(R
1)COO(C
nH
2nO)
m−R
2 ・・・式(2)
〔式中、R1は水素原子またはCH3を表し、R2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは4〜60、特に4〜55の整数であり、nは2〜3の整数であり、ここで、m個のオキシアルキレン単位(CnH2nO)は同じであっても又は互いに異なっていてもよい。〕
【0031】
上記官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3)としては、特に、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミノ基、4級塩基、アミド基、水酸基、ポリアルキレングリコール基、アルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の高極性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3−1)であることが好ましい。
【0032】
上記高極性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3−1)を構成成分とすることで、アクリル樹脂(a)は樹脂の側鎖に好適な数の高極性官能基を有することができる。側鎖に好適な数の高極性官能基を有することができる利点としては、高極性官能基が樹脂末端だけであれば樹脂と固体電解質が点で吸着することになるが、複数の側鎖に高極性官能基があれば固体電解質に対し線または面で接することができるため、より強力な吸着力が得られ、固体電解質の分散性及び固体電解質分散ペーストの貯蔵安定性が向上すると考えられる。
【0033】
分散樹脂中の高極性官能基濃度としては、0.05〜3.0mmol/gの範囲内が好ましく、0.1〜2.0mmol/gの範囲内がより好ましい。濃度が3.0mmol/gより高くなると樹脂極性が上がるため相溶性及び/又は溶解性が悪化する可能性があり、0.05mmol/gより低くなると分散性及び/又は貯蔵安定性が悪化する可能性がある。
【0034】
分散樹脂1分子中の高極性官能基の個数としては、1〜30個の範囲内が好ましく、3〜20個の範囲内がより好ましい。
【0035】
本発明で用いることができるアクリル樹脂(a)は、樹脂の極性の観点から、上記高極性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3−1)が1〜30質量%含有することが好ましく、1〜25質量%含有することがより好ましく、1〜15質量%含有することが特に好ましい。
【0036】
上記高極性官能基を有する重合性不飽和モノマー(a3−1)は、含有量が多いとアクリル樹脂(a)の極性が高くなり過ぎるため、溶媒(C)やバインダー(D)との溶解性や相溶性が劣ることになる。逆に含有量が少ないと固体電解質との吸着が弱くなるため、分散性や貯蔵安定性が劣ることになる。
【0037】
また、上記アクリル樹脂(a)は、樹脂に含まれる吸着官能基を塩基性化合物又は酸性化合物で中和したものであってもよい。
【0038】
中和に用いられる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン化合物;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン化合物;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン化合物;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミン化合物等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
一方、中和する際に使用することができる酸性化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、アジピン酸などの有機酸類や、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、及び、塩酸、硫酸、硝酸、オルトリン酸、ポリリン酸、ポリメタリン酸、オルト亜リン酸、硼酸、フッ酸等の無機酸等を使用することができる。これらの酸は単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
中和反応は、吸着官能基を有するモノマーに対して行っても、重合後の樹脂に対して行ってもいずれであっても差し支えない。
【0041】
上記の通り得られるアクリル樹脂(a)は、酸基を有する場合は酸価が50mgKOH/g以下、好ましくは6〜50mgKOH/gの範囲内であり、アミノ基を有する場合はアミン価が50mgKOH/g以下、好ましくは3〜30mgKOH/gの範囲内であり、水酸基を有する場合は水酸基価が100mgKOH/g以下、好ましくは50mgKOH/g以下の範囲内であることができる。
【0042】
上記アクリル樹脂(a)の重合方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、重合性不飽和モノマーを有機溶媒中で溶液重合することにより製造することができるが、これに限られるものではなく、例えば、バルク重合や乳化重合や懸濁重合等でもよい。溶液重合を行う場合には、連続重合でもよいしバッチ重合でもよく、重合性不飽和モノマーは一括して仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
【0043】
重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物系重合開始剤;2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2´−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤を挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0044】
上記の重合又は希釈に使用される溶媒としては、特に制限はなく、水や有機溶剤、またはその混合物などを挙げることができる。有機溶剤としては、例えば、n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタンなどの炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酪酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等の等のアルコール系溶剤;エクアミド(商品名、出光興産株式会社製)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤など、従来公知の溶剤を挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。ただし、アクリル樹脂(a)の重合及び/又は希釈に使用された溶媒は、脱溶剤工程により除去しなかった場合、本発明の固体電解質分散ペースト中に持ち込まれる事になるため、後述する溶媒(C)の範囲内になることが好ましい。
【0045】
有機溶剤中での溶液重合において、重合開始剤、重合性不飽和モノマー成分、及び有機溶剤を混合し、攪拌しながら加熱する方法、反応熱による系の温度上昇を抑えるために有機溶剤を反応槽に仕込み、60℃〜200℃の温度で攪拌しながら必要に応じて窒素やアルゴンなどの不活性ガスを吹き込みながら、重合性不飽和モノマー成分と重合開始剤を所定の時間かけて混合滴下又は分離滴下する方法などが用いられる。
【0046】
重合は、一般に1〜10時間程度行うことができる。各段階の重合の後に必要に応じて重合開始剤を滴下しながら反応槽を加熱する追加触媒工程を設けてもよい。
【0047】
上記の通り得られるアクリル樹脂(a)の重量平均分子量は、3,000以上であり、好ましくは3,000〜100,000、より好ましくは3,000〜70,000、特に好ましくは3,000〜40,000の範囲内であることが好適である。
【0048】
尚、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0049】
硫黄化合物固体電解質(B)
本発明において、硫黄化合物固体電解質(B)としては、二次電池に硫化物固体電解質の材料として用いられ得るものを広く使用することができる。本発明においては、Liイオン伝導性の高さの観点から、硫黄化合物固体電解質が、Li
2SおよびP
2S
5を含有する原料組成物を用いてなるものであることが好ましい。また本発明においては、上記原料組成物におけるLi
2SおよびP
2S
5の割合が、モル比で、Li
2S:P
2S
5=70:30〜80:20の範囲内であることが好ましい。
【0050】
より具体的には、そのような硫黄化合物固体電解質としては、Li
2S−SiS
2、LiI−Li
2S−SiS
2、LiI−Li
2S−P
2S
5、LiI−Li
2S−P
2O
5、LiI−Li
3PO
4−P
2S
5、Li
2S−P
2S
5、Li
3PS
4等を例示することができる。これらの硫黄化合物固体電解質は、1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0051】
溶媒(C)
溶媒(C)としては、特に限定されないが、本発明においては、下記式(1)で表されるエステル系溶媒、及び/又は炭化水素系溶媒であることが好ましい:
R
1COOR
2・・・(1)
(式中、R
1及びR
2は、同一であっても異なっていてもよく、炭素数2以上の炭化水素を示す。)
【0052】
上記式(1)において、炭素数2以上の炭化水素としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基等のアリール基等が挙げられる。
【0053】
下記式(1)で表されるエステル系溶媒としては、例えば、酪酸ブチル、安息香酸エチル等が挙げられる。
【0054】
また、炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0055】
溶媒(C)として式(1)で表されるエステル系溶媒と炭化水素系溶媒との混合物を用いる場合、その割合は特に限定されないが、例えば、式(1)で表されるエステル系溶媒100質量部に対し、炭化水素系溶媒を、通常、0.1〜10000質量部、好ましくは5〜5000質量部、より好ましくは10〜1000質量部使用することができる。
【0056】
また、本発明においては、溶媒(C)の溶解性パラメーターが、7.3〜8.5(J/mol)
1/2であることが分散性と電解質の劣化抑制の両立の観点から好ましい。
【0057】
また、分解抑制の観点から、溶媒(C)中の水分含有量が、1%未満であることが好ましく、0.8%未満であることがより好ましく、0.4%未満であることが特に好ましい。
【0058】
本発明において、水分含有量は、カールフィッシャー電量滴定法にて測定することができる。具体的には、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業株式会社製、製品名:MKC−610)を用い、該装置に備えられた水分気化装置(京都電子工業株式会社製、製品名:ADP−611)の設定温度は130℃として測定することができる。
【0059】
バインダー(D)
本発明にかかるバインダーとしては、特に限定されず、例えば、アクリル系のバインダー、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素含有バインダー、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム等のゴムバインダー等を挙げることができる。また、ゴムバインダーとしては、特に限定されないが、水素添加したブタジエンゴムや、水素添加したブタジエンゴムの末端に官能基導入したものを好適に用いることができる。
【0060】
本発明においては、上述したバインダーのなかでも、水素添加したブタジエンゴムの末端に官能基導入したものを用いることが好ましい。官能基を有することにより、より高い接着性能が得られるからである。
【0061】
上記バインダーの重量平均分子量としては、特に限定されないが、50,000〜1,500,000の範囲内、なかでも100,000〜1,000,000の範囲内、特に100,000〜800,000の範囲内であることが好ましい。上記バインダーの重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、より実用的なスラリーとすることができる。
【0062】
なお、上記バインダーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、ポリスチレン換算したものである。
【0063】
その他の添加剤
本発明の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペーストには、上記成分(A)、(B)、(C)、及び(D)以外の成分(その他の添加剤と示すこともある)を配合してもよい。その他の添加剤としては、例えば、中和剤、顔料分散剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、硬化剤等を挙げることができる。
【0064】
顔料分散剤としては、例えば、上記分散樹脂(A)以外の樹脂等を挙げることができる。より具体的には、例えば、上記分散樹脂(A)以外のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0065】
硬化剤としては、分散樹脂(A)及び/又はバインダー(D)と架橋反応できるものであれば特に制限はなく、具体的には、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート樹脂等が挙げられ、該硬化剤によって、分散樹脂(A)及び/又はバインダー(D)を架橋せしめることができる。
【0066】
二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペーストの製法
本発明にかかる二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペーストは、前述した分散樹脂(A)、硫黄化合物固体電解質(B)、及び溶媒(C)、ならびに任意選択で、バインダー(D)及び/又はその他成分を混合することにより製造することができる。上記各成分の混合は、例えば、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、LMZミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、二軸混練機、薄膜旋回型高速ミキサー、超音波ホモジナイザー等の従来公知の分散機を用いて均一に混合、分散させることにより行うことができる。
【0067】
本発明において、分散樹脂(A)と硫黄化合物固体電解質(B)との配合割合は特に限定されないが、例えば、分散樹脂(A)100質量部に対して、硫黄化合物固体電解質(B)を、通常、100〜1000000質量部、好ましくは1000〜100000質量部、より好ましくは1000〜20000質量部使用することができる。また、溶媒(C)の使用量も特に限定されないが、例えば、硫黄化合物固体電解質(B)100質量部に対して、溶媒(C)を通常、50〜500質量部、好ましくは60〜400質量部、より好ましくは100〜300質量部使用することができる。また、バインダー(D)を使用する実施形態においては、バインダー(D)の配合量は特に限定されないが、例えば、硫黄化合物固体電解質(B)100質量部に対して、バインダー(D)を通常、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜8質量部、より好ましくは0.2〜4質量部使用することができる。
【0068】
また、バインダー(D)を使用する実施形態においては、前述した分散樹脂(A)、硫黄化合物固体電解質(B)、バインダー(D)及び任意選択でその他成分を全て溶媒(C)に分散してもよいが、好ましいし実施形態においては、分散樹脂(A)、硫黄化合物固体電解質(B)及び任意選択でその他成分を溶媒(C)に分散し、別途、バインダー(D)及び任意選択でその他成分を溶媒(C)に分散し、分散樹脂(A)及び硫黄化合物固体電解質(B)の分散体と、バインダー(D)の分散体とを混合することによっても本発明の二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペーストを製造することができる。
【0069】
2.二次電池用硫黄化合物固体電解質層
本発明は、前記二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペーストの乾燥物である二次電池用硫黄化合物固体電解質層を提供する。加熱乾燥の温度は特に限定されないが、例えば、通常、室温〜250℃、好ましくは50〜220℃、より好ましくは70〜190℃の範囲で適宜設定することができる。
【0070】
また、本発明においては、分散樹脂(A)及び硫黄化合物固体電解質(B)、ならびに任意選択でバインダー(D)及び/又はその他成分を混合したものを二次電池用硫黄化合物固体電解質層として用いてもよい。従って、本発明は、また、分散樹脂(A)及び硫黄化合物固体電解質(B)、ならびに任意選択でバインダー(D)を含有する二次電池用硫黄化合物固体電解質層であって、該分散樹脂(A)が、少なくとも一種の重量平均分子量3000以上のアクリル樹脂(a)を含有することを特徴とする二次電池用硫黄化合物固体電解質層を提供する。当該実施形態において、各成分の具体的な例、配合割合等は、前述と同様である。
【0071】
3.全固体二次電池
本発明は、さらに、前述の硫黄化合物固体電解質層、正極、及び負極を具備することを特徴とする全固体二次電池を提供する。正極及び負極としては、全固体二次電池の分野において公知のものを適宜使用することができる。また、全固体二次電池は、前述した本発明の硫黄化合物固体電解質層又はその原料成分を用いる以外、公知の方法を適宜使用することにより製造することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに説明する。
各種樹脂の合成方法、ペースト〜電解質層〜二次電池の製造方法、評価試験方法などは当該技術分野で従来公知の方法を用いている。
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能である。
また、各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0073】
アクリル樹脂(a)の製造
製造例1
攪拌加熱装置と冷却管を備えた反応容器に、酪酸ブチル30部を仕込み、窒素置換後、110℃に保った。この中に、以下に示すモノマー混合物を3時間かけて滴下した。
<モノマー混合物>
n−ブチルメタクリレート 39部
イソステアリルアクリレート 39部
エチルアクリレート 12部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 10部
t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 1.2部
滴下終了後から1時間経過後、この中に、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5部を酪酸ブチル10部に溶かした溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、これをさらに1時間110℃に保持したのち、酪酸ブチルで調整し、固形分70%のアクリル樹脂(a−1)溶液を得た。アクリル樹脂(a−1)は、重量平均分子量30,000であった。
【0074】
製造例2〜12
下記表1の種類、配合量、及び製造方法とする以外は、製造例1と同じ組成及び製造方法でアクリル樹脂(a−2)〜(a−12)溶液を製造した。
【0075】
【表1】
【0076】
尚、表中の略称は以下の通りである。
nBMA:n−ブチルメタクリレート
ISA:イソステアリルアクリレート
EA:エチルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
DMAEMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート
AAc:アクリル酸
MPEGMA:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート
DMAA:ジメチルアクリルアミド
MEA:2−メトキシエチルアクリレート
PBO:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート。
【0077】
二次電池用硫黄化合物固体電解質分散ペーストの製造
実施例1
硫化物固体電解質、溶媒、バインダー、及び分散樹脂を、それぞれ表2に示す分量で混合することにより、ペーストの作製を試みた。より具体的には、45mlのジルコニアポットに上記化合物を投入し、さらにジルコニアボール(φ1.0mm)を投入し、ポットを完全に密閉した。このポットを遊星型ボールミル機(フリッチュ社製)に取り付け、台盤回転数300rpmで、0.5時間処理した。
【0078】
実施例2〜16、比較例1〜4
下記表2の配合とする以外は、実施例1と同じ組成及び製造方法でペースト(X−2)〜(X−20)を製造した。
【0079】
【表2】
【0080】
評価試験
また、上記表2に、後述する評価試験の結果(粘度、貯蔵試験、導電性)を記載する。本発明においては、粘度、貯蔵試験、及び導電性の全ての性能に優れていることが重要であり、いずれか1つに不合格「E」の評価がある場合は不合格(総合評価が「E」)である。
【0081】
<粘度>
粘度測定には、E型粘度計(東機産業株式会社製、商品名:RE215)を使用し、常温にて周速38.3(1/s)の粘度を比較した。評価としては、A、B、C、Dが合格で、Eが不合格である。
A:粘度が、100mPa・s未満である。
B:粘度が、100mPa・s以上、かつ200mPa・s未満である。
C:粘度が、200mPa・s以上、かつ300mPa・s未満である。
D:粘度が、300mPa・s以上、かつ400mPa・s未満である。
E:粘度が、400mPa・s以上である。
【0082】
<貯蔵試験>
実施例又は比較例で得られたペーストを試験管に入れ、常温で3日間静置貯蔵した。スラリー全体の高さに対して、分離層の高さの割合を求めて評価した。評価としては、A、B、C、Dが合格で、Eが不合格である。
A:分離層が3%未満である。
B:分離層が3%以上、かつ、10%未満である。
C:分離層が10%以上、かつ、20%未満である。
D:分離層が20%以上、かつ、30%未満である。
E:分離層が30%以上である。
【0083】
<導電性>
ドクターブレード法でペーストをAl箔へ塗工して塗工膜を形成した後、その塗工膜を掻きとることにより得られた物質の0.1gをプレスすることによりペレットを作製した。そして、このペレットについてインピーダンス測定装置(ソーラトロン社製、商品名:1287/1255B)でインピーダンス測定を行うことにより、抵抗を特定した。評価としては、A、B、C、Dが合格で、Eが不合格である。
A:抵抗が、30Ω未満であり、導電性は非常に良好である。
B:抵抗が、30Ω以上、かつ35Ω未満であり、導電性は良好である。
C:抵抗が、35Ω以上、かつ40Ω未満であり、導電性はやや劣る。
D:抵抗が、40Ω以上、かつ45Ω未満であり、導電性はやや劣る。
E:抵抗が、45Ω以上であり、導電性は非常に劣る。