(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、一実施形態の光源の制御装置の構成を示す回路図である。図示の制御装置2は、直列に接続された複数の発光素子(LED)10を含んで構成された光源1の点灯状態を制御するためのものである。この光源1は、例えば車両用灯具として用いられるものである。
【0010】
点灯開始トリガー信号源21は、光源1の点灯を開始させるトリガーとなるパルス信号を発生する。
【0011】
MOSトランジスタ22は、ゲート(制御端子)が点灯開始トリガー信号源21と接続され、ソースが抵抗素子26とコンデンサ27の間の節点と接続されており、ドレインが基準電位端(接地端)と接続されている。すなわち、ソース・ドレイン間の電流経路がコンデンサ27と並列に接続されている。
【0012】
なお、点灯開始トリガー信号源21、MOSトランジスタ(第1スイッチ素子)22、抵抗素子26、コンデンサ27を含んで第1回路部が構成されている。
【0013】
PNPトランジスタ23は、ベース(制御端子)が抵抗素子26とコンデンサ27の間の節点と接続されており、エミッタがNPNトランジスタ24のエミッタと接続されており、コレクタが基準電位端と接続されている。
【0014】
NPNトランジスタ24は、ベース(制御端子)が三角波信号源28と接続されており、エミッタがPNPトランジスタ24のエミッタと接続されており、コレクタが抵抗素子29と接続されている。すなわち、PNPトランジスタ23とNPNトランジスタ24は、互いの電流経路(エミッタ・コレクタ間)が直列に接続されている。
【0015】
抵抗素子26とコンデンサ27は、直列接続されており、抵抗素子26の一端が定電圧源25と接続され、コンデンサ27の一端が基準電位端と接続されている。これらの抵抗素子26とコンデンサ27は、RC直列回路を構成しており、その時定数に応じて点灯時間を設定するためのものである。
【0016】
なお、PNPトランジスタ(第3スイッチ素子)23、NPNトランジスタ(第2スイッチ素子)24を含んで第2回路部が構成されている。
【0017】
三角波信号源28は、NPNトランジスタ24のベース(制御端子)と接続されており、当該ベースに三角波信号を供給する。なお、この三角波信号源28が特定波形発生部に対応する。
【0018】
抵抗素子29、30は、直列接続されており、抵抗素子29の一端がNPNトランジスタ24のコレクタに接続され、抵抗素子30の一端が電源33と接続されている。
【0019】
PNPトランジスタ31は、ベース(制御端子)が抵抗素子29と抵抗素子30の間の節点に接続されており、エミッタが電源33に接続されており、コレクタが光源1の各発光素子10からなる直列回路の一端に接続されている。なお、このPNPトランジスタ(第4スイッチ素子)31と抵抗素子29、30を含んで第3回路部が構成されている。
【0020】
抵抗素子32は、光源1の各発光素子10からなる直列回路の他端と基準電位端との間に接続されている。
【0021】
なお、抵抗素子29、30、32と、NPNトランジスタ31と、電源33により、光源駆動回路が構成されている。
【0022】
図2は、本実施形態の光源による点灯パターンを説明するための図である。同図では、光源1の点灯率の時間変化の様子が示されている。本実施形態では、光源の制御回路2によって光源1を駆動することにより、光源1から周期的に点滅を繰り返すように光を出射させている。そして、
図2では周期的な点滅を繰り返す光の1周期分の光度変化を示している。図示のように、1周期の光度変化パターンは、A、B、C、Dの4つの区間を含んで構成されている。
【0023】
区間Aは、1周期中の始点(0秒時)から実質的に瞬時に光度が0%から100%へ変化する区間である。詳細には、区間Aとは、回路動作上のタイムラグなどの要因で、光源2の出射光の光度が0%から100%へ達するまでの間に必然的に発生する立ち上がり時間に対応している。
【0024】
区間Aに要する時間は、主に光源1に含まれるLEDの発光時の立ち上がり時間に対応した時間であるため、1周期に対応する時間よりも極めて短い。具体的には、本実施形態では、例えば光の繰り返し周波数として1Hz〜2Hzの範囲を想定しており、この場合における1周期は0.5秒間〜1秒間(500ミリ秒間〜1000ミリ秒間)となる。これに対して、区間Aの時間は、例えば数百マイクロ秒間〜1ミリ秒間程度となる。すなわち、区間Aの時間は、周期に対して少なくとも周期の1/500以下の長さに設定される。
【0025】
ここで、本明細書において「光度100%」とは、光源1の通常の点消灯動作時において最大値と設定している光度が出射している状態をいい、例えば光源1の各LEDの定格における最大光度が出射している状態をいう。また、本明細書において「光度0%」とは、光源1の点消灯動作時において消灯している状態をいい、例えば光源1の各LEDの光度が0となっている状態をいうが、これ以外にも人間の目で点灯を感得できない程度に光度が低くなった状態であってもよい。
【0026】
区間Bは、区間Aに続く区間であり、光源1の出射光の光度が100%へ達した後、その状態(光度100%の状態)が維持される区間である。区間Bは、1周期の始点である時刻0から始まり区間Aを挟んで予め定めた終点である時刻t1まで継続する。なお、光度については、実際には電源電圧の増減などの影響により光度が増減する場合も考えられるが、そのような本来意図していない光度の増減がある場合も含めて光度100%の状態が維持されているものとみなす。具体的には、例えば、光源1の点消灯動作時において最大値と設定している光度を基準に±10%の範囲内で光度が保たれている場合には、光度100%の状態が維持されているものとする。
【0027】
区間Cは、区間Bに続く期間であり、光源の出射光の光度が100%から0%へ漸減する区間である。区間Cは、区間Bの終点である時刻t1を始点とし、予め定めた終点である時刻t2まで継続する。図示のように、この区間Cは区間A,Bの合計時間よりも時間が長いことが好ましく、例えば区間A,Bの合計時間よりも区間Cの時間を3倍以上とすることが好ましい。なお、図示の例では、区間Cにおける光度変化は、区間Cの始点からの光度の減少率が大きく、区間Cの終点に向かうにつれて光度の減少率が小さくなる曲線状の変化であるが、これに限定されない。例えば、区間Cの始点からの光度の減少率が小さく、区間Cの終点に向かうにつれて光度の減少率が大きくなる曲線状の変化であってもよいし、光度が一定割合で減少する直線状の変化であってもよい。
【0028】
区間Dは、区間Cに続く期間であり、光源1の出射光の光度が0%に達した後、その状態(光度0%の状態)が維持される区間である。区間Dは、区間Cの終点である時刻t2を始点とし、1周期の終わりまで継続する。この区間Dが終了した後は、次の1周期の区間Aへ続く。
【0029】
上記した1周期の光度変化の特徴は以下の通りである。まず、区間A〜Bでは、光源1に含まれる各LEDの本来的な特徴である発光の立ち上がりの急峻さを活かして、速やかに光度100%の状態とし、その状態が維持される。それにより、従来の一般的なLEDを用いたターンランプと同等の視認性を得られるようにすることができる。すなわち他者がターンランプにより早く気づくことができるようにすることができる。
【0030】
ここで、単純な矩形波を用いた駆動方法によってLEDを駆動するターンランプでは、光度100%の状態が点灯時から消灯時まで継続するため、1周期内での全体的な光量(積分値としての光量)が大きくなり、観察者へ鋭い眩しさを感じさせてしまう。これに対して、区間Cでは、光度を100%から0%へ漸減させているので、眩しさが低減される。さらに、区間Dとして光度を0%の状態で維持する期間を設けているので、次周期の区間A(瞬時に点灯が開始される区間)がより際だち、点滅が分かりやすくなる。これらにより、観察者の目に優しい点滅状態を実現することができる。
【0031】
また、区間A〜Dの全体として見れば、光度が急峻に立ち上がった後、相対的に長い時間をかけて光度が漸減するので、従来の単純にLEDを用いたターンランプの光度変化とは異なり、またバルブランプを用いたターンランプやそれを模したターンランプの光度変化とも異なる新規な点滅発光表現が実現される。なお、上記した光度変化における時刻t1、t2の基準値は、例えばそれぞれ100ミリ秒、460ミリ秒に設定し、1周期を667ミリ秒間(周波数1.5Hzに対応)に設定することができる。
【0032】
図3は、
図1に示した光源の制御装置の動作を説明するための波形図である。三角波発生源28から三角波が出力され、NPNトランジスタ24のベースに入力される。このとき、三角波発生源28とNPNトランジスタ24の間のノード41における電圧V1は、図示のように三角波となる。また、MOSトランジスタ22のソースとPNPトランジスタ23のベースとの間のノード42における電圧をV2とし、PNPトランジスタ23およびNPNトランジスタ24のそれぞれがオンとなるベース・エミッタ間電圧をそれぞれVbe1、Vbe2とすると、NPNトランジスタ24がオンとなるために必要なノード41の電圧V1は次式のようになる。
V1≧V2+Vbe1+Vbe2=V3 …(1)
V3=V2+Vbe1+Vbe
2
【0033】
ここで、点灯トリガー信号源21の出力電圧43をV4とし、電圧V4がハイ(相対的に高電位)の場合にMOSトランジスタ22がオン、電圧V4がロー(相対的に低電位)の場合にMOSトランジスタ22がオフになるものとする。電圧V4がハイの状態でのノード42の電圧V2は0ボルトであり、その状態から電圧V4をローとすることでMOSトランジスタ22をオフ状態に切り替えると、ノード42の電圧V2は増加し、定電圧源25の電圧に近づいていく。
【0034】
ここで、ノード42の電圧V2が飽和するまでの時間は三角波信号源28の発振周期に対して十分長い時間となるよう設定する。ノード42の電圧V2が上昇する時定数は、抵抗素子26およびコンデンサ27の値を増減することによって設定できる。
【0035】
ノード41の電圧V1およびノード42の電圧V2は共に時間とともに変化するが、電圧V1および電圧V2の関係が上記した(1)式を満たす期間ではNPNトランジスタ31がオンとなり、光源1の各発光素子10に電流I1が流れ、その期間のみ発光する。
【0036】
実際の動作例として、
図3の波形の生成を考える。定電圧源25の電圧をV5、三角波信号源28のローレベル出力電圧およびハイレベル出力電圧をそれぞれV6、V7、三角波信号源28の発振周期をT11とする。
図4に、点灯時の動作波形を示す。
【0037】
光源1を点灯させる場合には、点灯開始トリガー信号源21より単発のパルスを印加する。すると、点灯開始トリガー信号源21の出力がハイの期間ではノード42の電圧V2は0ボルトとなり、その後、点灯開始トリガー信号源21の出力がローとなると、電圧V2は、抵抗素子26およびコンデンサ27の値により決定される時定数に従い、電圧V6へ近づいていく。
【0038】
電圧V3が電圧V6に達するまでの時間をT12とすると、全発光となる期間T13は以下の範囲となる。
T12≦T13≦T11+T12
【0039】
ここで、全発光の期間T13を100ミリ秒と設定しているのに対し、電圧V1の周期は人間の視覚が点滅を認識できない領域とする必要があるため、例えば10ミリ秒以下に設定される。従って、電圧V1の周期が全発光の期間に与える影響は10%以下であり、T12=T13とみなすことができる。期間T12については、電圧V6の大きさ、抵抗素子26およびコンデンサ27の値により決定される。この期間T12は、
図2における期間T1に相当する。
【0040】
V6<V3<V7の範囲では、電圧V3が上昇するに従い、点灯率は低下する。本例では、電圧V3は時間と共に上昇していくので、点灯率も時間と共に低下していく。電圧V3が上記したV6<V3<V7の範囲となる期間T14は、電圧V7と電圧V6の電位差、抵抗素子26およびコンデンサ27の値により決定される。この期間T14は、
図2における期間T2に相当する。
【0041】
さらに電圧V3が上昇し、V3>V7になると、発光素子は完全に消灯する。以上のプロセスにより、
図2に示した発光パターンなる動作の1周期分が実現される。
【0042】
図4は、本実施形態の光源の制御装置の動作をシミュレーションした結果を示す図(波形図)である。ノード41からは三角波発生源28により生成されたフリーランの信号が出力される。この状態で、ノード42から単発パルスが印加されると、発光素子に対し、100m秒程度全点灯となり、その後時間と共に点灯率が低下するような電流が注入される。このように、本実施形態の点灯の制御装置2では、光源1を点滅させる周期と等しい周期の単発パルスを印加するのみで、一定時間全点灯させたのち、時間と共に点灯率が低下する波形を生成できる。
【0043】
以上のような実施形態によれば、トランジスタを主体とした回路構成で発光素子の光強度を時間経過とともに漸減させる発光パターンを実現しているので、回路構成を簡略化することが可能となる。
【0044】
なお、本発明は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態においては三角波信号源から発生する三角波を利用していたが、三角波以外にも、出力電圧をある閾値によって二値化した場合、その閾値電圧よりデューティが変化する波形(例えば、サイン波、鋸波)であれば利用可能である。
【0045】
また、上記した実施形態ではバイポーラトランジスタと電界効果型トランジスタを併用していたが、バイポーラトランジスタをすべて電界効果型トランジスタに置き換えてもよい。その場合の光源の制御装置の回路構成例を
図5に示す。
図1の制御装置と比較して部品点数の削減が可能となる。