特許第6971739号(P6971739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971739
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】輸送用冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   F04B39/00 102Q
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-182632(P2017-182632)
(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公開番号】特開2019-56355(P2019-56355A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 渉
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 政和
(72)【発明者】
【氏名】外薗 寿幸
【審査官】 嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−110144(JP,A)
【文献】 特開2016−173042(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102562520(CN,A)
【文献】 実開昭57−164342(JP,U)
【文献】 特開平06−323253(JP,A)
【文献】 特開2017−066943(JP,A)
【文献】 特開平07−096736(JP,A)
【文献】 実開昭58−175244(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/08
F04B 39/00−39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された輸送用コンテナを冷却するための冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機の重心よりも下方を本体に対して支持し、下部弾性体を有する下部防振支持部材と、
前記圧縮機の前記重心よりも上方を前記本体に対して支持し、上部弾性体を有する上部防振支持部材と、
を備え、
前記上部弾性体のバネ定数は、前記下部弾性体のバネ定数よりも大きい輸送用冷凍機。
【請求項2】
前記圧縮機の上部に接続された配管を備えている請求項1に記載の輸送用冷凍機。
【請求項3】
前記上部防振支持部材は、前記圧縮機の外周に設けられたバンドと、該バンドと前記本体または該バンドと前記圧縮機との間に設けられた前記上部弾性体と、を備えている請求項1又は2に記載の輸送用冷凍機。
【請求項4】
前記上部弾性体のバネ定数は、前記車両の走行時を代表する代表振動数よりも大きい固有振動数となるように設定されている請求項1から3のいずれかに記載の輸送用冷凍機。
【請求項5】
前記下部弾性体のバネ定数は、前記代表振動数よりも大きい固有振動数となるように設定されている請求項4に記載の輸送用冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送用冷凍機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、冷媒を圧縮するための圧縮機が搭載される。圧縮機は、所定の姿勢でブラケットに対して支持される。例えば、特許文献1には、圧縮機の下部に複数の支持脚を設けてブラケットに対して固定するとともに、圧縮機の上部に複数のフランジを設けてブラケットに対して固定している。各フランジは、弾性体を介してブラケットに対して固定されており、圧縮機の駆動に伴う振動がブラケットに伝達されることが抑制されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−191277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように圧縮機が発生する振動を防振して圧縮機を支持する必要がある一方で、車両の走行振動による強制加振に対して十分な固定強度を持たせて圧縮機を支持する必要がある。このように、十分な防振性能を確保した上で、走行振動に対する固定強度を確保することが難しい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、防振性能を有するとともに走行振動に対する固定強度を有するように圧縮機を支持する輸送用冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の輸送用冷凍機は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる輸送用冷凍機は、車両に設置された輸送用コンテナを冷却するための冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機の重心よりも下方を本体に対して支持し、下部弾性体を有する下部防振支持部材と、前記圧縮機の前記重心よりも上方を前記本体に対して支持し、上部弾性体を有する上部防振支持部材とを備え、前記上部弾性体のバネ定数は、前記下部弾性体のバネ定数よりも大きい。
【0007】
圧縮機の重心の下方を下部防振支持部材で本体に対して支持するとともに、圧縮機の重心の上方を上部防振支持部材で本体に対して支持する構成を採用することによって、圧縮機の重心を挟んで両端支持することとした。これにより、種々の振動方向に対して圧縮機の振動変位を抑制することができる。
上部防振支持部材の上部弾性体のバネ定数を、下部防振支持部材の下部弾性体のバネ定数よりも大きくすることで、圧縮機の上部の振動変位を圧縮機の下部に対して相対的に小さくすることができる。これにより、車両走行時の振動等が外部加振として入力されても、圧縮機の上部の振動変位を抑えることができ、圧縮機の所望の固定強度を得ることができる。
上部弾性体や下部弾性体としては、例えば、防振ゴムを用いることができる。
【0008】
さらに、本発明の輸送用冷凍機では、前記圧縮機の上部に接続された配管を備えている。
【0009】
圧縮機の上部に配管が接続されていると、圧縮機からの振動伝達によって加振されて破損するおそれがあるが、上述のように圧縮機の上部の振動変位が抑えられるので、配管の破損を抑えることができる。特に、圧縮機の上部には、吸入配管等に比べて配管径が小さい吐出配管やガスインジェクション配管等が接続されるので効果的である。
圧縮機の上部は、例えば圧縮機の重心より上方とされる。
【0010】
さらに、前記上部防振支持部材は、前記圧縮機の外周に設けられたバンドと、該バンドと前記本体または該バンドと前記圧縮機との間に設けられた前記上部弾性体と、を備えていても良い。
【0011】
さらに、本発明の輸送用冷凍機では、前記上部弾性体のバネ定数は、前記車両の走行時を代表する代表振動数よりも大きい固有振動数となるように設定されている。
【0012】
車両の走行時を代表する代表振動数よりも大きくなるように上部弾性体のバネ定数を設定することとしたので、車両の走行時の振動伝達によって圧縮機の上部が大きく加振されることを防止することができる。
なお、車両の走行時の代表振動数としては、日本工業規格(JIS)等の規格によって定められる値が用いられ、例えば20Hzが挙げられる。
【0013】
さらに、本発明の輸送用冷凍機では、前記下部弾性体のバネ定数は、前記代表振動数よりも大きい固有振動数となるように設定されている。
【0014】
下部弾性体のバネ定数を代表振動数よりも大きい固有振動数となるように設定することとしたので、さらに圧縮機の加振を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
圧縮機の重心よりも上方の上部弾性体のバネ定数を圧縮機の重心よりも下方の下部弾性体のバネ定数よりも大きくしたので、防振性能を有するとともに走行振動に対する固定強度を有するように圧縮機を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の輸送用冷凍機が搭載される車両を示した側面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る輸送用冷凍機の圧縮機の固定構造を示した斜視図である。
図3図2の振動モデルを示した概略構成図である。
図4】路面振動周波数に対する振動伝達率を示したグラフである。
図5】本発明の第1変形例を示した横断面図である。
図6】本発明の第2変形例を示した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、冷凍車1は、車両2にコンテナ(輸送用コンテナ)3を備えている。コンテナ3の前方でかつキャブ4の上方には、輸送用冷凍機5が設けられている。
【0018】
輸送用冷凍機5は、冷凍サイクルを構成する圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を備えている。輸送用冷凍機5の筐体6の内部に、圧縮機、凝縮器、送風ファン、電力変換装置などの電気回路を備えた制御ボックス、エンジンおよびエンジンで駆動する発電機等が収容されている。コンテナ3の庫内には、蒸発器が設けられており、蒸発器によって庫内を所望の温度に冷却する。
【0019】
図2には、筐体6内に収容された圧縮機10が示されている。圧縮機10は、上下方向に軸線を有する略円筒形状とされている。圧縮機10の内部には、スクロール圧縮機構等の圧縮機構と、圧縮機構を駆動するための電動モータとが収納されている。図示しないが、圧縮機構は上方に設けられ、電動モータは下方に設けられている。したがって、圧縮機10の重心Gは、圧縮機10の中間高さ位置よりも少し低い位置に位置している。電動モータには、外部から電力が供給されるようになっており、電力変換装置によって圧縮機構の回転数が可変とされている。
【0020】
圧縮機10の上部には、圧縮後の冷媒を吐出する吐出配管12が接続されている。また、圧縮機10の上部には、中間圧の冷媒を圧縮機構に供給するインジェクション配管(図示せず)も接続されている。吐出配管12やインジェクション配管は、圧縮機10に接続されて冷媒を吸い込む吸込配管(図示せず)よりも小さい配管径を有している。
【0021】
圧縮機10は、フレーム(本体)14に対して固定されている。フレーム14は、筐体6内に設けられた各機器を支持して構造的な強度を負担する強度部材とされている。図2では、フレーム14は、上面が水平面とされた下壁部14aと、下壁部14aに接続されて上方に立設された縦壁部14bとを備えている。
【0022】
圧縮機10の下方には、底板16を介して脚部18が設けられている。底板16は、圧縮機10の本体の下端に固定された板金構造とされており、四隅のそれぞれに脚部18が固定されている。各脚部18を介して、圧縮機10の下部がフレーム14の下壁部14aの上面に対して固定されている。なお、脚部18が底板16に固定される位置は四隅に限定されるものではなく、例えば下部中央の1カ所や周囲の3ヵ所あるいは5ヶ所以上であってもよい。
各脚部18は、図示しない下部防振ゴム(下部弾性体)を備えており、圧縮機10とフレーム14との間の振動を防振する防振支持部材(下部防振支持部材)となっている。
【0023】
圧縮機10の胴部には、金属バンド(バンド)20が巻回されている。金属バンド20の設置位置は、圧縮機10の重心Gよりも上方とされている。金属バンド20の端部20aは、上部防振ゴム(上部弾性体)22を介してフレーム14の縦壁部14bに対して固定されている。金属バンド20及び上部防振ゴム22によって、圧縮機10の上部を支持する上部防振支持部材が構成されている。図3には、上部防振支持部材による支持構造の振動モデルが示されている。同図に示すように、フレーム14の縦壁部14bに対して弾性体である上部防振ゴム22を介在させて柔構造で支持するようになっている。
【0024】
上部防振ゴム22のバネ定数は、脚部18に設けられた防振ゴムよりも大きくされている。なお、脚部18に設けられた防振ゴム(下部防振ゴム)が複数ある場合には、これら防振ゴムの合成バネ定数が用いられる。具体的には、上部防振ゴム22のゴムの種類を、脚部18に設けられた防振ゴムと材料や形状を異ならせることによってバネ定数を調整する。
【0025】
次に、図4を用いて、上部防振ゴム22のバネ定数の定め方について説明する。
上部防振ゴム22のバネ定数は、振動伝達率Trが1以下となるようなf0(Hz)に設定されている。例えば、所定値f1の2倍以上の固有振動数f0となるようにバネ定数が設定される。所定値f1は、冷凍車1の走行時を代表する代表振動数とされ、日本工業規格(JIS)等の規格によって定められる値が用いられ、例えば20Hzとされている。
また、脚部18に設けられた防振ゴム(下部防振ゴム)のバネ定数(合成バネ定数)についても、所定値f1よりも大きくしても良い。
【0026】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
圧縮機10の重心Gの下方を脚部18を介してフレーム14の下壁部14aに対して支持するとともに、圧縮機10の重心Gの上方を金属バンド20及び上部防振ゴム22でフレーム14の縦壁部14bに対して支持する構成を採用することによって、圧縮機10の重心Gを挟んで両端支持することとした。これにより、前述の車両走行時の振動や圧縮機自身の運転振動など種々の振動方向に対して圧縮機10の振動変位を抑制することができる。
【0027】
上部防振ゴム22のバネ定数を、脚部18に設けた下部防振ゴムのバネ定数よりも大きくすることで、圧縮機10の上部の振動変位を圧縮機10の下部に対して相対的に小さくすることができる。これにより、冷凍車1の走行時の振動等が外部加振として入力されても、圧縮機10の上部の振動変位を抑えることができ、圧縮機10の所望の固定強度を得ることができる。
【0028】
下部防振ゴムよりもバネ定数を大きくした上部防振ゴム22によって圧縮機10の上部の振動変位が抑えられるので、吐出配管12やインジェクション配管等の破損を抑えることができる。特に、吸入配管等に比べて吐出配管やガスインジェクション配管等は配管径が小さいので効果的である。
【0029】
冷凍車1の走行時を代表する代表振動数である所定値f1よりも固有振動数が大きくなるように上部防振ゴム22のバネ定数を設定することとしたので、冷凍車1の走行時の振動伝達によって圧縮機10の上部が大きく加振されることを防止することができる。
また、脚部18に設けられた防振ゴム(下部防振ゴム)のバネ定数(合成バネ定数)も所定値f1より大きくされていれば、さらに圧縮機10の加振を低減することができる。
【0030】
なお、本実施形態は、上部の固定支持構造を図5のように変形することができる。
図5に示すように、金属バンド20の内周側にバンド状の上部防振ゴム24を配置してもよい。上部防振ゴム24は、圧縮機10の胴部の周囲全体にわたって巻き付けられている。このようにバンド状の上部防振ゴム24を圧縮機10と金属バンド20との間に介在させることによって圧縮機10の上部を支持する。金属バンド20の端部20aは、フレーム14の縦壁部14bに固定された上部固定ブラケット26に対して固定されている。
【0031】
また、上述した実施形態では、圧縮機10の上部を金属バンド20を用いて固定し、圧縮機10の下部を脚部18を用いて固定することとしたが、本発明はこれらの固定方法に限定されるものではなく、所定のバネ定数を有する弾性体を用いて固定できる構造であれば良い。例えば、図6に示すように、圧縮機10の側壁に対して溶接や鋳造等によってブラケット21を固定し、ブラケット21とフレーム14の縦壁部14bとの間に上部防振ゴム22を設けることとしても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 冷凍車
2 車両
3 コンテナ(輸送用コンテナ)
4 キャブ
5 輸送用冷凍機
6 筐体
10 圧縮機
12 吐出配管
14 フレーム(本体)
14a 下壁部
14b 縦壁部
16 底板
18 脚部(下部防振支持部材)
20 金属バンド(バンド,上部防振支持部材)
20a 端部
21 ブラケット
22,24 上部防振ゴム(上部弾性体)
26 上部固定ブラケット
G 重心
図1
図2
図3
図4
図5
図6