(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971742
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20211111BHJP
B29D 30/60 20060101ALI20211111BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20211111BHJP
B29D 30/30 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
B29D30/06
B29D30/60
B60C11/00 Z
B29D30/30
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-183681(P2017-183681)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-59043(P2019-59043A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 亨
【審査官】
弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−069130(JP,A)
【文献】
特開2001−063311(JP,A)
【文献】
特開2006−176078(JP,A)
【文献】
特開2011−136669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/06
B29D 30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボンゴムを途切れることなくタイヤ回転軸回りに巻き付けることにより形成されるゴム部材を備え、
前記ゴム部材は、単一の前記リボンゴムで形成され、タイヤの接地面を構成するキャップゴム又はタイヤの空気圧を保持するインナーライナーゴムのいずれかであり、
前記ゴム部材は、前記ゴム部材のタイヤ幅方向第1側となる端においてリボンゴムがタイヤ周方向に平行となる第1平行部位と、前記ゴム部材の前記タイヤ幅方向第1側とは反対のタイヤ幅方向第2側にある端においてリボンゴムがタイヤ周方向に平行となる第2平行部位と、前記第1平行部位からリボンゴムが前記第2平行部位に向かい且つリボンゴムがタイヤ周方向に対して傾斜し、前記第2平行部位に接続される傾斜部位と、を有し、
前記第1平行部位と前記第2平行部位の間に巻きつけられる全てのリボンゴムがタイヤ周方向に傾斜して前記傾斜部位を形成し、
前記第1平行部位及び前記第2平行部位を形成するリボンゴムは、それぞれタイヤ周方向に360°巻き付けられず、N°(N=210〜300)巻き付けられている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1平行部位のタイヤ周上の位置は、0°から前記N°であり、
前記第2平行部位のタイヤ周上の位置は、(360−N)°から360°である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記リボンゴムは、前記タイヤ幅方向第1側の端に位置する始点からタイヤ幅方向他方側に向けて巻き付けられ、前記タイヤ幅方向第2側の端に位置する終点に至る、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記リボンゴムは、タイヤ幅方向中央部に位置する始点から前記タイヤ幅方向第1側の端に至り、次いで前記タイヤ幅方向第1側の端で折り返して前記タイヤ幅方向第2側の端に至り、次いで前記タイヤ幅方向第2側の端で折り返してタイヤ幅方向中央部に位置する終点に至る、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
単一のリボンゴムで形成され、タイヤの接地面を構成するキャップゴム又はタイヤの空気圧を保持するインナーライナーゴムのいずれかであるゴム部材を、前記リボンゴムを途切れることなくタイヤ回転軸回りに巻き付けて形成する工程を含み、
前記ゴム部材を形成する工程において、前記ゴム部材のタイヤ幅方向第1側となる端においてリボンゴムがタイヤ周方向に平行となる第1平行部位と、前記ゴム部材の前記タイヤ幅方向第1側とは反対のタイヤ幅方向第2側にある端においてリボンゴムがタイヤ周方向に平行となる第2平行部位と、前記第1平行部位からリボンゴムが前記第2平行部位に向かい且つリボンゴムがタイヤ周方向に対して傾斜し、前記第2平行部位に接続される傾斜部位と、を形成し、
前記第1平行部位と前記第2平行部位の間に巻きつけられる全てのリボンゴムがタイヤ周方向に傾斜して前記傾斜部位を形成し、
前記第1平行部位及び前記第2平行部位を形成するリボンゴムを、タイヤ周方向に360°巻き付けず、N°(N=210〜300)巻き付ける、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記第1平行部位のタイヤ周上の位置は、0°から前記N°であり、
前記第2平行部位のタイヤ周上の位置は、(360−N)°から360°である、請求項5に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記リボンゴムを、前記タイヤ幅方向第1側の端に位置する始点から前記タイヤ幅方向第2側に向けて巻き付け、前記タイヤ幅方向第2側の端に位置する終点に至るように巻き付ける、請求項5又は6に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記リボンゴムを、タイヤ幅方向中央部に位置する始点から前記タイヤ幅方向第1側の端に至り、次いで前記タイヤ幅方向第1側の端で折り返して前記タイヤ幅方向第2側の端に至り、次いで前記タイヤ幅方向第2側の端で折り返してタイヤ幅方向中央部に位置する終点に至るように巻き付ける、請求項5又は6に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻き付けられたリボンゴムにより形成されるゴム部材を有する空気入りタイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、略円筒状の回転支持体の外周面に、未加硫のリボンゴムをその側縁を重ねながらタイヤ回転軸回りに巻き付けることによって、タイヤを構成するゴム部材(例えばキャップゴム)を形成する、いわゆるリボン巻き工法が提案されている。リボン巻き工法には、いわゆる傾斜巻きとピッチ送り巻きと呼ばれる2つの工法が知られている。
【0003】
傾斜巻き工法は、特開2002−178415公報の
図4及び特開2006−69130号公報の
図8に開示されている。リボンゴムを始点から終点までタイヤ周方向に対して傾斜する姿勢で巻き付けると、タイヤ幅方向両端にリボンゴムが巻かれない空白部分が生じてしまう。ゴムがない部分が存在すれば、断面によってタイヤの構造が異なることになり、好ましくない。そこで、タイヤ幅方向端部となる部分においてリボンゴムをタイヤ周方向に平行となるように1周巻き付けることにより、ゴムが巻かれない空白部分が生じることを回避している。しかしながら、傾斜巻き工法を用いると、
図11に示すように、リボンゴムが重なる部位が多い重い部位Hがタイヤの対角線上に対となって発生し、リボンゴムの重なりが少ない軽い部位Lがタイヤの対角線上に対となって発生してしまう。このような重量アンバランスは、ダイナミックアンバランス(カップルアンバランス)と呼ばれ、ユニフォミティの悪化を招来する。
【0004】
ピッチ送り巻き工法は、特開2006−69130号公報の
図1〜4、6及び特開2013−111864号公報に開示されている。この工法は、リボンゴムをタイヤ周方向に平行な姿勢のまま1周巻き付け、1周巻き付ける毎にタイヤ幅方向にリボンゴムをシフトさせる。ピッチ送り巻き工法は、リボンゴムをタイヤ周方向に平行な姿勢で1周巻き付けるので、上記カップルアンバランスが生じない。その反面、リボンゴムをシフトさせる部分だけがゴム量が増えるので、タイヤ周方向でシフト部分だけが重くなる。このような重量アンバランスは、スタティックアンバランスと呼ばれ、ユニフォミティの悪化を招来する。なお、上記傾斜巻き工法は、カップルアンバランスが発生するが、スタティックアンバランスがでない。
【0005】
スタティックアンバランスは、タイヤ周方向で180度反対側に重りを配置すれば、容易に調整可能であるが、カップルアンバランスは調整が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−178415公報
【特許文献2】特開2006−69130号公報
【特許文献3】特開2013−111864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、いわゆる傾斜巻き工法による構造を有するタイヤにおいて重量アンバランスを低減した空気入りタイヤ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0009】
すなわち、本開示の空気入りタイヤは、
リボンゴムを途切れることなくタイヤ回転軸回りに巻き付けることにより形成されるゴム部材を備え、
前記ゴム部材は、タイヤ幅方向外側となる端部においてリボンゴムがタイヤ周方向に平行となる平行部位と、前記平行部位からリボンゴムがタイヤ幅方向内側に向かい且つリボンゴムがタイヤ周方向に対して傾斜する傾斜部位と、を有し、
前記平行部位を形成するリボンゴムは、タイヤ周方向に360°巻き付けられず、N°(N=210〜300)巻き付けられている。
【0010】
このように平行部位を形成するにあたり、リボンゴムをタイヤ周方向に360°巻き付けず、N°(N=210〜300)巻き付ければ、従来のようにリボンゴムを360°巻き付ける場合に比べて、周上の重量アンバランスを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係る空気入りタイヤを示すタイヤ子午線断面図。
【
図2】ゴム部材の成形工程で用いられる製造設備を示す図。
【
図4】インナーライナーゴムのリボン巻き付け位置の移動経路を示す概念図。
【
図5】キャップゴムのリボン巻き付け位置の移動経路を示す概念図。
【
図7】リボンゴムの巻き付け状態を平面上に展開して模式的に示す説明図。
【
図8】リボンゴムの巻き付け状態を周方向断面にて模式的に示す説明図。
【
図9】リボンゴムの巻き付け状態を平面上に展開して模式的に示す説明図。
【
図10】他の実施形態のリボンゴムの巻き付け過程を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、本開示の空気入りタイヤの構成を説明し、次いで、本開示に係る空気入りタイヤの製造方法について説明する。
【0013】
[空気入りタイヤの構成]
図1に示した空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、そのビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3とを備えている。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配設されている。
【0014】
一対のビード部1の間にはトロイド状のカーカス層7が配され、その端部がビードコア1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス層7は、少なくとも1枚(本実施形態では2枚)のカーカスプライにより構成され、該カーカスプライは、タイヤ周方向に対して略90°の角度で延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成されている。カーカス層7の内周には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム5が配されている。
【0015】
ビード部1では、カーカス層7の外側に、リム装着時にリム(不図示)と接するリムストリップゴム4が設けられている。また、サイドウォール部2では、カーカス層7の外側にサイドウォールゴム9が設けられている。
【0016】
トレッド部3では、カーカス層7の外側に、複数枚(本実施形態では2枚)のベルトプライにより構成されたベルト層6が配されている。各ベルトプライは、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成され、該コードがプライ間で互いに逆向きに交差するように積層されている。
【0017】
トレッド部3では、ベルト層6の外周側にトレッドゴム10が設けられている。トレッドゴム10は、接地面を構成するキャップゴム12と、キャップゴム12のタイヤ径方向内側に設けられたベースゴム11とを有する。ベースゴム11は、キャップゴム12とは異種のゴムからなる。
【0018】
上述したゴム層等の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。また、これらのゴムはカーボンブラックやシリカ等の充填材で補強されると共に、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等が適宜配合される。
【0019】
タイヤを構成する複数のゴム部材のうちの少なくとも1つのゴム部材は、いわゆるリボン巻き工法により成形される。リボン巻き工法は、
図3に示す小幅で未加硫のリボンゴム20をタイヤ回転軸回りに巻き付けて(
図2及び
図6参照)、所望の断面形状を有するゴム部材を成形する工法である。リボン巻き工法で形成可能なゴム部材は、インナーライナーゴム5、トレッドゴム10(キャップゴム12、ベースゴム11)、サイドウォールゴム9、リムストリップゴム4等が挙げられる。これらの全てのゴム部材がリボン巻き工法で成形されてもよいし、一部のゴム部材をリボン巻き工法で成形してもよく、適宜選択可能である。
【0020】
ここでは、説明の便宜上、インナーライナーゴム5及びキャップゴム12のリボン巻き工法を例として説明する。リボン巻き工法で成形されたゴム部材5、12は、
図4,5に示すように、リボンゴム20の巻き付け始点S1及び巻き付け終点E1を有する。これら巻き付け始点S1及び巻き付け終点E1、巻き付け位置の移動経路は、タイヤ子午線断面において確認することができる。詳細は後述する。
【0021】
また、トレッドゴム10の表面には、加硫処理が施されることにより、タイヤ周方向に延びる主溝15が形成されている。加硫処理に使用されるタイヤモールドには突起が設けられており、その突起をトレッドゴム10に押し付けることで主溝15が形成される。図示しないが、トレッドゴム10には、主溝15に交差する方向に延びる横溝なども適宜に設けられる。
【0022】
[空気入りタイヤの製造方法]
次に、空気入りタイヤTを製造する方法について説明する。
【0023】
タイヤを構成する複数のゴム部材のうち少なくとも1つのゴム部材(例えばキャップゴム12、インナーライナーゴム5)は、上記リボン巻き工法によって成形される。リボン巻き工法によるゴム部材5、12の成形工程は、
図2に示すように、回転支持体31を回転させながら、リボンゴム成形装置30から供給されたリボンゴム20を回転支持体31に巻き付ける工程を含む。巻き付け時には、
図3の下側が、回転支持体31に対向する内周側となる。リボンゴム(ゴムストリップともいう)の幅、厚みは特に限定されないが、好ましくは、幅が15〜40mm、厚みが0.5〜3.0mmであることが望ましい。
【0024】
図2に示すように、リボンゴム成形装置30は、ゴムを押出してリボンゴム20を成形可能に構成されている。回転支持体31は、軸31aを中心としたR方向の回転と、軸方向への移動とが可能に構成されている。制御装置32は、リボンゴム成形装置30及び回転支持体31の作動制御を行う。本実施形態では、リボンゴム20の断面は三角形状であるが、これに限られず、楕円形や四角形などの他の形状でも構わない。また、回転支持体31は軸方向へ移動可能に構成されているが、回転支持体31に対しリボンゴム成形装置30を移動させてもよい。すなわち、回転支持体31が、リボンゴム成形装置30に対して軸方向に沿って相対移動可能に構成されていればよい。
【0025】
図6に示すように、リボンゴム20の巻き付けピッチP20は、リボンゴム20のリボン幅W20よりも小さく設定されている。これにより、隣り合うリボンゴム20・20同士が相互に接する状態で螺旋状に巻き付けられる。矢印Dは、リボン巻き付け位置の移動方向を示し、この方向に沿って隣り合うリボンゴム20が相互に縁部を重ねている。本実施形態では、巻き付けピッチP20は、リボン幅W20の半分としているが、適宜変更可能である。
【0026】
ここでは説明の便宜上、タイヤ子午線断面においてタイヤ幅方向WDの一方側(図では左方)をWD1とし、他方側をWD2(図では右方)とする。
【0027】
図4は、インナーライナーゴム5の成形工程におけるリボンゴム20の巻き付け位置の移動経路を概念的に示している。同図に示すように、リボンゴム20は、タイヤ幅方向一方側WD1の端5aに位置する始点S1からタイヤ幅方向他方側WD2に向けて巻き付けられ、タイヤ幅方向他方側WD2の端5bに位置する終点E1に至る。
【0028】
図7は、リボンゴム20の巻き付け状態を平面上に展開して模式的に示す説明図である。
図7の上部においては、リボンゴム20の重なり数を図示している。同図にて左下と右上にリボンゴム20が巻かれない空白領域が存在する。全体の大半の領域が2枚巻き付けられ、一部に3枚巻き付けられる領域があり、1枚巻き付けられる領域がある。
【0029】
図7及び
図6に示すように、リボンゴム20は、タイヤ幅方向一方側WD1の端5aに位置する始点S1から巻き付けが開始される。リボンゴムがタイヤ周方向CDに平行な姿勢でタイヤ周方向CDに360°巻き付けられず、N°(本実施形態では、270°)巻き付けられることで、平行部位20aが形成される。次に、リボンゴム20をタイヤ周方向CDに対して傾斜する姿勢で巻き付けることにより、傾斜部位20bが形成される。傾斜部位20bは、平行部位20aからリボンゴム20がタイヤ幅方向WD内側に向かう。傾斜部位20bがタイヤ幅方向他方側WD2の端5bに到達すると、リボンゴム20がタイヤ周方向CDに平行な姿勢に変更され、平行部位20aがタイヤ周方向CDにN°巻き付けられ、終点E1にて巻き付けが終了する。
【0030】
このように巻き付けると、
図6〜8に示すように、平行部位20a及び傾斜部位20bが、1つのゴム部材においてタイヤ幅方向一方側WD1及び他方側WD2の両側に設けられる。タイヤ幅方向一方側WD1にある平行部位20aのタイヤ周上の位置は、0°からN°である。タイヤ幅方向他方側WD2にある平行部位20aのタイヤ周上の位置は、(360−N;本実施形態では90)°から360°である。
【0031】
本実施形態では、N=270°としているが、N=210〜300であれば、適宜変更可能である。N=210〜300とする理由は、次の通りである。
【0032】
図9に示すように、平行部位20aを360°巻き付けないので、リボンゴム20が巻き付けられない空白領域Ar1が生じる。タイヤ幅方向一方側WD1において、リボンゴム20が3枚に重なっている領域Ar2,Ar3が存在する。ここで、周上0°〜180°を上側、180〜360°を下側と分けてみた場合に、領域Ar1とAr2の面積が同一であるので、“領域Ar2×3枚−領域Ar1×1枚”により、下側は領域Ar2の2枚分の面積となる。これに対して、上側は領域Ar3の3枚分の面積となる。領域Ar3とAr2の面積の差が小さくなれば、上側領域と下側領域の周上重量アンバランスが小さくなる。そこで、N=0°〜360°において、Nを30°毎変化させ、領域Ar2と領域Ar3の面積を算出した。相対比較を可能にするために、
図9の下に示すように、30°分の三角領域Ar4の面積を1として、表1に表す。巻き付けピッチP20は、リボン幅W20の半分である。
【0034】
表1によれば、平行部位20aを360°巻き付けた従来の構造では、面積差が18であるのに対して、N=210〜300では、面積差が18よりも小さくなっており、周上の重量アンバランスが低減していることが理解できる。更に好ましくは、N=210〜270であり、最も好ましいのは、N=240±10である。面積差の最小点がこの範囲にあると想定されるからである。
【0035】
上記数値範囲が周上の重量アンバランスが低減できるので好ましい。更に、タイヤ幅方向一方側WD1にある平行部位20aのタイヤ周上の位置は、0°からN°であり、タイヤ幅方向他方側WD2にある平行部位20aのタイヤ周上の位置は、(360−N)°から360°であるのが好ましい。このような位置関係にあれば、カップルアンバランスを低減することが可能となる。
【0036】
上記のような、平行部位20aがN°(N=210〜300)となるように巻き付ける方法は、
図5に示すキャップゴム12の巻き付け方法にも適用である。
図5は、キャップゴム12の成形工程におけるリボンゴム20の巻き付け位置の移動経路を概念的に示している。同図に示すように、リボンゴム20は、タイヤ幅方向中央部CLに位置する始点S1からタイヤ幅方向一方側WD1の端12aに至り、次いでタイヤ幅方向一方側WD1の端12aで折り返してタイヤ幅方向他方側WD2の端12bに至り、次いでタイヤ幅方向他方側WD2の端12bで折り返してタイヤ幅方向中央部CLに位置する終点E1に至る。この場合は、
図10に示すように、タイヤ幅方向一方側WD1の折り返し部位において、リボンゴム20は、傾斜部位20bから平行部位20aになり、その後、再度傾斜部位20bになる。
図5に示す巻き方は、キャップゴム12の他、ベースゴム11に採用可能である。
【0037】
本実施形態においては、カップルアンバランスを低減するために、タイヤ幅方向一方側WD1にある平行部位20aのタイヤ周上の位置は、0°からN°であり、タイヤ幅方向他方側WD2にある平行部位20aのタイヤ周上の位置は、(360−N)°から360°であるが、カップルアンバランスを多少許容するのであれば、多少ずれていてもよい。
【0038】
以上のように本実施形態の空気入りタイヤは、
リボンゴム20を途切れることなくタイヤ回転軸回りに巻き付けることにより形成されるゴム部材5、12を備え、
ゴム部材5、12は、タイヤ幅方向外側となる端部においてリボンゴム20がタイヤ周方向CDに平行となる平行部位20aと、平行部位20aからリボンゴム20がタイヤ幅方向内側に向かい且つリボンゴム20がタイヤ周方向CDに対して傾斜する傾斜部位20bと、を有し、
平行部位20aを形成するリボンゴム20は、タイヤ周方向CDに360°巻き付けられず、N°(N=210〜300)巻き付けられている。
【0039】
本実施形態の空気入りタイヤの製造方法は、
リボンゴム20を途切れることなくタイヤ回転軸回りに巻き付けてゴム部材5、12を形成する工程を含む。ゴム部材5を形成する工程において、タイヤ幅方向外側となる端部においてリボンゴム20がタイヤ周方向CDに平行となる平行部位20aと、平行部位20aからリボンゴム20がタイヤ幅方向内側に向かい且つリボンゴム20がタイヤ周方向CDに対して傾斜する傾斜部位20bと、を形成する。平行部位20aを形成するリボンゴム20を、タイヤ周方向に360°巻き付けず、N°(N=210〜300)巻き付ける。
【0040】
このように平行部位20aを形成するにあたり、リボンゴム20をタイヤ周方向に360°巻き付けず、N°(N=210〜300)巻き付ければ、従来のようにリボンゴムを360°巻き付ける場合に比べて、周上の重量アンバランスを低減することが可能となる。
【0041】
本実施形態において、平行部位20a及び傾斜部位20bは、1つのゴム部材5、12においてタイヤ幅方向一方側WD1及び他方側WD2の両側に設けられており、タイヤ幅方向一方側WD1にある平行部位20aのタイヤ周上の位置は、0°からN°であり、タイヤ幅方向他方側WD2にある平行部位20aのタイヤ周上の位置は、(360−N)°から360°である。
【0042】
このように配置すれば、カップルアンバランスを低減することが可能となる。
【0043】
本実施形態において、リボンゴム20は、タイヤ幅方向一方側WD1の端5aに位置する始点S1からタイヤ幅方向他方側WD2に向けて巻き付けられ、タイヤ幅方向他方側WD2の端5bに位置する終点E1に至る。
【0044】
このような巻き付け経路であっても、重量アンバランスを低減可能である。
【0045】
本実施形態において、リボンゴム20は、タイヤ幅方向中央部CLに位置する始点S1からタイヤ幅方向一方側WD1の端12aに至り、次いでタイヤ幅方向一方側WD1の端12aで折り返してタイヤ幅方向他方側WD2の端12bに至り、次いでタイヤ幅方向他方側WD2の端12bで折り返してタイヤ幅方向中央部CLに位置する終点E1に至る。
【0046】
このような巻き付け経路であっても、重量アンバランスを低減可能である。
【0047】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
20…リボンゴム
20a…平行部位
20b…傾斜部位
5…インナーライナーゴム(ゴム部材)
12…キャップゴム(ゴム部材)
CD…タイヤ周方向
S1…始点
E1…終点