【文献】
MOON, Soo-Jin et al.,Laser-Scribing Patterning for the Production of Organometallic Halide Perovskite Solar Modules,IEEE JOURNAL OF PHOTOVOLTAICS,2015年,Vol.5,pp.1087-1092
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の各例ならびに各種変形例を図面に基づいて説明する。なお、図面においては同様な構成及び機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また、図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズ及び位置関係などは適宜変更され得る。
【0010】
<太陽電池モジュール>
図1から
図3は、太陽電池モジュール100の構成の一例を概略的に示す図である。
図1は、太陽電池モジュール100の構成の一例を概略的に示す平面図であり、
図2は、太陽電池モジュール100の構成の一例を概略的に示す断面図であり、
図3は、太陽電池モジュール100の構成の一部を拡大して概略的に例示する断面図である。
【0011】
太陽電池モジュール100は薄膜型の太陽電池モジュールであって、基板51と複数の光電変換セル10と配線31,32とを備えている。基板51は例えば平板状の形状を有している。
【0012】
図1から
図3には、XYZ座標が付記されている。このXYZ座標において、X軸およびY軸は基板51の表面(一主面)51aに平行に配置され、Z軸は基板51の一主面51aに垂直に配置されている。X軸、Y軸およびZ軸は互いに直交する。以下では、Z軸方向の一方側を+Z側とも呼び、Z軸方向の他方側を−Z側とも呼ぶ。X軸およびY軸についても同様である。
【0013】
基板51の+Z側の一主面51aの上には、複数の光電変換セル10が位置している。太陽電池モジュール100が、基板51の−Z側の一主面を外光側(例えば太陽側)に向けた姿勢で設置される場合、基板51としては、透光性を有する基板を採用する。ここでいう透光性とは、太陽電池モジュール100が光電変換の対象とする光の波長帯域についての透光性である。この波長帯域に可視光が含まれている場合には、基板51は透明基板となる。この基板51に含まれる主な材料としては、例えばガラスなどの透光性の絶縁材料が採用され得る。外光は−Z側から基板51を透過して、光電変換セル10へと入射される。光電変換セル10は後に詳述するように、入射された外光を電力に変換する。
【0014】
一方で、太陽電池モジュール100が、基板51の−Z側の一主面を外光とは反対側(例えば地面側)に向けた姿勢で設置される場合、基板51は透光性を有していてもよく、あるいは、透光性を有していなくてもよい。外光は基板51を経由せずに光電変換セル10に入射されるからである。
【0015】
基板51の厚さは、例えば、1[mm]以上で且つ3[mm]以下程度であってよい。
図1に例示するように、基板51は平面視において(つまり、Z軸方向から見て)、矩形状(具体的には長方形)の形状を有していてもよい。
図1の例においては、X軸は基板51の長辺に沿って配置されている。
【0016】
複数の光電変換セル10は基板51の一主面51aの上において所定方向(例えばY軸方向)に並んで形成されている。光電変換セル10の数は特に制限されず、適宜に設定され得る。光電変換セル10の各々は、外部から入射された外光を電力に変換し、当該電力を出力する。
【0017】
この光電変換セル10は積層半導体12と電極11,13とを有している(
図2を参照)。積層半導体12はいわゆる光電変換層であって、例えば、第1導電型(例えばn型)の半導体および第1導電型とは反対の第2導電型(例えばp型)の半導体を含んでいる。これらの半導体の接合部では、光電変換が行われ、発生した電子および正孔がそれぞれ電極11,13へと流れる。あるいは、積層半導体12は、例えば、第1導電型の半導体、第2導電型の半導体および真性半導体(i型の半導体)を含んでいてもよい。真性半導体は第1導電型の半導体と第2導電型の半導体との間に位置する。真性半導体では、光電変換が行われ、発生した電子および正孔がそれぞれ第1導電型の半導体および第2導電型の半導体を経由してそれぞれ電極11,13へと流れる。この場合、第1導電型の半導体および第2導電型の半導体は輸送層として機能できる。
【0018】
積層半導体12としては、例えば、シリコン系の太陽電池、化合物系の太陽電池またはその他のタイプの太陽電池で用いられる光電変換層が採用され得る。シリコン系の太陽電池には、例えば、アモルファスシリコンを用いた太陽電池が含まれ得る。化合物系の太陽電池には、例えば、CIS、CIGS、カドミウムテルル(CdTe)またはペロブスカイト構造を有する化合物等の化合物半導体が用いられた太陽電池が含まれ得る。その他のタイプの太陽電池には、例えば有機系または色素増感系などの太陽電池が含まれ得る。
【0019】
積層半導体12を構成する各種の半導体層は、物理的気相法および化学的気相法などの気相成長法、または、塗布法およびスピンコート法などの液相成長法などによって適宜に形成され得る。また、各種の半導体層の形状はフォトリソグラフィ法またはレーザスクライブ法などのパターン形成によって形成され得る。
【0020】
積層半導体12において生成された電力は、電極11,13から出力される。
図2に示すように、電極11,13は積層半導体12をZ軸方向において互いに反対側から挟んでいる。具体的には、電極11は積層半導体12の−Z側の一主面と接しており、電極13は積層半導体12の+Z側の一主面と接している。なお
図2の例においては、電極11は基板51の+Z側の一主面51aに形成されている。
【0021】
外光が−Z側から太陽電池モジュール100へと入射される場合には、電極11は、光電変換セル10の光電変換の対象となる光の波長帯域についての透光性を有する電極(例えば透明電極(TCO: Transparent Conductive Oxide))である。具体的な一例として、電極11はITO(Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛または酸化スズなどの透明導電材料で形成され得る。外光は基板51および電極11を透過して積層半導体12へと入射され、積層半導体12は当該外光を電力に変換する。電極13は透光性を有する電極であってもよく、透光性を有さない電極であってもよい。例えば電極13として、透光性を有する電極(例えば透明電極)または金属の電極等を採用し得る。このような電極11,13は、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法などの成膜方法を用いて形成され得る。
【0022】
外光が+Z側から太陽電池モジュール100へと入射される場合には、電極13は透光性を有する電極である。これにより、外光が電極13を透過して積層半導体12へと入射され、積層半導体12は当該外光を電力に変換する。この場合、電極11は透光性を有する電極であってもよく、透光性を有さない電極であってもよい。
【0023】
図2の例においては、各光電変換セル10の電極13は、その光電変換セル10に対して−Y側で隣り合う光電変換セル10の電極11と、電気的に接続されている。つまり、複数の光電変換セル10は電極11,13によって、相互に直列に接続される。
【0024】
上述の構成において、複数の光電変換セル10はY軸方向に沿って並んで配置されるので、この複数の光電変換セル10に属する複数の電極11もY軸方向に沿って並んで配置される。つまり、複数の電極11の相互間には、これらを分離するための分離溝P1が形成される。分離溝P1は電極11の−Z側の一主面から+Z側の一主面までの領域に形成されており、X軸方向に沿って延在する。これにより、分離溝P1は、隣り合う電極11を分離している。言い換えれば、電極11は分離溝P1を介してY軸方向において互いに隣り合っている。
【0025】
また、複数の光電変換セル10に属する複数の積層半導体12もY軸方向に沿って並んで配置される。つまり、複数の積層半導体12の相互間には、これらを分離するための分離溝P2が形成されている。分離溝P2は積層半導体12の−Z側の一主面から+Z側の一主面までの領域に形成されており、X軸方向に沿って延在している。これにより、分離溝P2は、隣り合う積層半導体12を分離している。言い換えれば、積層半導体12は分離溝P2を介してY軸方向において互いに隣り合っている。
【0026】
図2に例示するように、分離溝P2は電極11とZ軸方向において対向する位置に形成されている。つまり、Y軸方向において隣り合う2つの分離溝P2の間に一つの分離溝P1が位置する。よって、隣り合う2つの分離溝P2によって挟まれる積層半導体12は分離溝P1の内部にも配置される。つまり、積層半導体12の一部は分離溝P1の内部を充填する。
【0027】
また、複数の光電変換セル10に属する複数の電極13もY軸方向に沿って並んで配置される。つまり、複数の電極13の相互間には、これらを分離するための分離溝P3が形成されている。
図2の例では、この分離溝P3は分離溝P2の一部に相当している。以下に説明する。
【0028】
電極13は積層半導体12の+Z側の一主面の上に形成されるとともに、その−Y側の端部から積層半導体12の−Y側の側面に沿って延在しており、その−Z側の端部において電極11と接続されている。この構造において、電極13のうち積層半導体12の側面に沿って延在する一部は分離溝P2の内部に位置している。具体的には、電極13の当該一部は分離溝P2のうち+Y側の空間を占めている。そして、分離溝P2のうち残りの空間(−Y側の空間)が分離溝P3として機能している。この分離溝P3は電極11の+Z側の一主面から電極13の+Z側の一主面までの領域に形成されており、X軸方向に沿って延在する。これにより、分離溝P3は、隣り合う電極13を分離する。言い換えれば、電極13は分離溝P3を介して互いに隣り合っている。
【0029】
積層半導体12および電極11,13の各々は、平面視において、例えば長方形の形状を有していてもよく、また、その長手方向がX軸方向に沿う姿勢で形成されてもよい。光電変換セル10のサイズはその太陽電池の種類によって相違するものの、例えば、積層半導体12の幅(Y軸方向に沿う幅)は1[mm]以上且つ100[mm]以下程度に設定され得る。積層半導体12の厚みは、例えば、0.3[μm]以上且つ5[μm]以下程度に設定され得る。電極11および電極13の幅(Y軸方向に沿う幅)も、例えば、1[mm]以上且つ100[mm]以下程度に設定され得る。また、積層半導体12同士の間隔(隙間)の幅(Y軸方向に沿う幅)は、例えば1[μm]以上且つ500[μm]以下程度に設定され得る。
【0030】
配線31は、−Y側の端に位置する光電変換セル10の電極13と電気的に接続されている。
図2の例においては、配線31は接続用電極14を介して当該電極13に接続されている。この接続用電極14は基板51の一主面51aの上に形成されており、−Y側の端の光電変換セル10の電極11とY軸方向において隣り合っている。言い換えれば、接続用電極14と当該電極11との間には、これらを分離する分離溝P11が形成されている。分離溝P11は基板51の一主面51aから接続用電極14の+Z側の一主面(あるいは電極11の+Z側の一主面)までの領域に形成されており、X軸方向に沿って延在する。これにより、分離溝P11は接続用電極14と当該電極11とを分離する。言い換えれば、接続用電極14および当該電極11は分離溝P11を介して互いに隣り合う。接続用電極14は例えば電極11と同じ材料で形成される。これによれば、電極11と接続用電極14とを同じ工程で形成することができる。
【0031】
−Y側の端の光電変換セル10の電極13は接続用電極14に接続されており、配線31はこの接続用電極14の+Z側の一主面の上に配置されている。これにより、配線31は接続用電極14を介して当該電極13に接続される。配線31と接続用電極14との間の固定は、例えば、半田または導電性接着剤などを用いて行われ得る。
【0032】
配線32は、+Y側の端に位置する光電変換セル10の電極11と電気的に接続されている。具体的には、当該電極11は当該光電変換セル10に属する積層半導体12よりも+Y側に延在しており、配線32は電極11のうちその+Y側に延在した部分の+Z側の主面の上に配置されている。配線32と電極11との間の固定は、例えば、半田または導電性接着剤などを用いて行われ得る。
【0033】
配線31,32は例えば帯状の板形状を有していてもよい。ここでは、配線31,32の形状として、例えば、0.1[mm]以上かつ0.5[mm]以下の程度の厚みと、2[mm]以上かつ10[mm]以下程度の幅とを有する帯状の板形状が採用され得る。配線31,32はその長手方向がX軸方向に沿う姿勢で配置されている(
図1参照)。
【0034】
配線31,32は金属ペーストによって形成されてもよい。金属ペーストは例えば導電性の粒子(例えば銀の微粒子)、バインダーおよび溶剤によって構成される。金属ペーストはそれぞれ接続用電極14および電極11の上に塗布され、乾燥等によって硬化して配線31,32を形成する。
【0035】
このような太陽電池モジュール100において、複数の光電変換セル10は配線31,32の間において相互に直列に接続される。よって、配線31,32は複数の光電変換セル10の一組から電力を取りだすための出力用の配線として機能する。つまり、配線31,32は太陽電池モジュール100の電力取り出し用の配線(出力用の配線)として機能する。
【0036】
これらの配線31,32は太陽電池モジュール100の外部へと引き出される。例えば配線31,32は太陽電池モジュール100の周縁部(発電領域の外側)で適宜に屈曲してZ軸方向に延在し、太陽電池モジュール100の外側へと引き出される。配線31,32が金属ペーストである場合、配線31と接続される一端を有し、太陽電池モジュール100の周縁部で屈曲してZ軸方向に延在し、太陽電池モジュール100の外部へと引き出される別の配線が設けられてもよい。配線32についても同様である。
【0037】
<積層半導体12の表面>
図3に示すように、積層半導体12の−Z側の一主面(つまり基板51側の表面)12aは、電極11の上に位置する面121aと、分離溝P1に位置する面122aとを含んでおり、面122aは面121aの凹凸よりも高い凹凸形状を有している。なお、凹凸の高さとは、その凹凸形状における凸部の高さ(Z軸方向に沿う高さ)、言い換えれば、凹凸形状における凹部の深さ(Z軸方向に沿う深さ)をいう。
【0038】
図3の例においては、積層半導体12の一主面12aのうち電極11の上に位置する面121aは略平坦であり、理想的にはその凹凸の高さは零である。なお積層半導体12の面121aは電極11の+Z側の一主面11aと密着するので、電極11の一主面11aも略平坦となる。つまり、積層半導体12と電極11との界面は略平坦である。
【0039】
一方で、積層半導体12の一主面12aのうち基板51の上に位置する面122aは凹凸形状を有している。
図3の例においては、積層半導体12の面122aは、基板51の一主面51aのうち分離溝P1の底面を形成する面511aに密着しており、面511aと同じ形状を有する。要するに、積層半導体12と基板51との界面は凹凸形状を有している。言い換えれば、基板51の面511aも積層半導体12の面122aと同じ凹凸形状を有している。よって、この基板51の面511aにおける凹凸の高さは電極11の一主面11aにおける凹凸の高さ(ここでは理想的には零)よりも高い。
【0040】
図3の例においては、積層半導体12の面122aは、X軸方向に沿って見て、凹凸形状を呈している。つまり、積層半導体12の面122aの凹凸形状における複数の凸部はY軸方向に沿って並んで形成されている。
図3の例においては、積層半導体12の面122aの凹凸形状は、−Z側に凸となる円弧がY軸方向に沿って連続して並ぶ形状を有している。
【0041】
この凸部の各々はX軸方向に沿って延在していても構わない。例えば当該凸部は光電変換セル10の−X側の端から+X側の端まで延在していても構わない。このような凸部は平面視においてX軸方向に長い長尺状の形状を有する。このような凸部は例えばレーザスクライブ法によって形成しやすい。なぜなら、レーザをパルス状に照射しつつX軸方向に沿って走査することにより、基板51の面511aに凹凸を形成する場合、Y軸方向の各位置においてレーザの条件を変えることなく、X軸方向に沿ってレーザを走査させれば、長尺状の凸部を形成できるからである。
【0042】
複数の凸部のピッチ(例えば凸部の中点間のY軸方向における距離)は例えば1[μm]〜100[μm]程度に設定され得る。凸部の高さ(=凹凸の高さ=凹凸の深さ)は例えば0.1[μm]〜300[μm]程度に設定され得る。
【0043】
なお、積層半導体12の面122aの凹凸形状における複数の凸部は、XY平面において2次元的に配置されていてもよい。例えば複数の凸部が行列状に配置されていても構わない。複数の凸部のX軸方向におけるピッチは例えばY軸方向におけるピッチと同程度に設定され得る。なお、行列状に配置された凸部をレーザスクライブ法で形成する場合、例えばY軸方向における各位置でレーザをX軸方向に沿って走査することにより、Y軸方向に沿って離間する凸部を形成しつつ、この凸部に対応するY軸方向の各位置において、X軸方向の複数の位置のみにレーザを照射することにより、凸部をX軸方向で離間させればよい。かかる形成方法では、Y軸方向の位置に応じてレーザの照射条件(X軸方向の全領域に照射するのか、一部のみに照射するのか)を変更する必要がある。
【0044】
また上述の例では、積層半導体12の一主面12aのうち分離溝P1に位置する面122aの形状について述べたものの、分離溝P11についても同様である。つまり、−Y側の端に位置する光電変換セル10において、積層半導体12の一主面12aは電極11の上に位置する部分よりも分離溝P11に位置する部分において高い凹凸形状を有していてもよい。
【0045】
<製造方法>
図4は、太陽電池モジュール100の製造方法の一例を示すフローチャートであり、
図5〜
図7は、それぞれ製造途中の状態の一例をそれぞれ概略的に示す断面図である。
【0046】
まずステップS1にて、基板51の一主面51aの上に複数の電極(具体的には電極11および接続用電極14)を形成する(
図5も参照)。具体的には、まず基板51の一主面51aの上にスパッタリング法または塗布法等により、電極膜を形成する。次に、この電極膜に対して分離溝P1,P11を形成する。例えばフォトリソグラフィ法またはレーザスクライブ法等により、電極膜の一部を除去して分離溝P1,P11を形成する。これにより、複数の電極11および接続用電極14が基板51の一主面51aの上に形成される。
【0047】
次にステップS2にて、基板51の一主面51aのうち分離溝P1,P11に対応する面において凹凸形状を形成する(
図6も参照)。凹凸形状の形成方法としては、例えば、レーザスクライブ法、サンドブラスト処理およびエッチング処理の少なくともいずれか一つを採用することができる。例えば基板51の当該面に対してレーザを照射することで、基板51の一部を適宜に溶融除去して当該面に凹凸形状を形成してもよい。
図6の例においては、基板51の面511aは、+Z側に向かうにしたがって先細となる複数の凸部が形成されている。
【0048】
なおステップS2は必ずしもステップS1の後に実行する必要は無く、ステップS1の前に実行してもよい。つまり、先に基板51の当該面に凹凸形状を形成し、その後、電極11および接続用電極14を基板51の一主面51aの上に形成してもよい。
【0049】
次にステップS3にて、複数の積層半導体12を形成する(
図7参照)。具体的には、基板51、電極11および接続用電極14を含む構造体の上に、各種の半導体層をスパッタリング法または塗布法等により順次に形成する。これにより、各種の半導体層からなる積層体が電極11の一主面11a、および、基板51の一主面51aのうち分離溝P1,P11に対応する面の上に形成される。よって、当該積層体の基板51側の面には、電極11の上に位置する部分よりも分離溝P1,P11に位置する部分において高い凹凸形状が形成される。次に、当該積層体に対して分離溝P2を形成して、複数の積層半導体12を形成する。例えば、フォトリソグラフィ法またはレーザスクライブ法等により、分離溝P2を形成する。
【0050】
次にステップS4にて、複数の積層半導体12の上にそれぞれ複数の電極13を形成する(
図3も参照)。具体的には、基板51、電極11、接続用電極14および積層半導体12を含む構造体の上に、電極膜をスパッタリング法または塗布法等により形成する。次にこの電極膜に対して分離溝P3を形成して、複数の電極13を形成する。例えばフォトリソグラフィ法またはレーザスクライブ法等により、分離溝P3を形成する。
【0051】
次にステップS5にて、配線31,32を配置する。例えば配線31を接続用電極14の+Z側の一主面の上に配置し、これらを固定する。同様に、配線32を+Y側の端の光電変換セル10の電極11の一主面の上に配置し、これらを固定する。例えば超音波半田等により、これらを固定してもよい。
【0052】
以上の製造工程を経て、太陽電池モジュール100を製造することができる。この太陽電池モジュール100において、分離溝P1および分離溝P11の各々において、積層半導体12の基板51側の表面は高い凹凸形状を呈しており、基板51の一主面51aに密着している。これによれば、積層半導体12と基板51との接触面積を向上することができ、積層半導体12と基板51との間の密着力を向上することができる。したがって、太陽電池モジュール100の信頼性を向上することができる。
【0053】
また例えば太陽電池モジュール100に対して−Z側から外光が入射されると、積層半導体12の凹凸形状を有する表面に入射した外光は、その凹凸によって屈折または散乱して、積層半導体12の内部を斜めに進む。
図3の例においては、外光の進む方向の一例が模式的に矢印で示されている。
【0054】
ところで、積層半導体12はその全てが発電に寄与するわけではない。具体的には、積層半導体12のうち同じ光電変換セル10に属する電極11,13の両方とZ軸方向で対向する部分121(
図3も参照)が主として発電に寄与し、これ以外の部分は発電に寄与しにくい。よって、積層半導体12のうち、分離溝P1(あるいは分離溝P11)とZ軸方向において対向する部分122も発電に寄与しにくい。
【0055】
太陽電池モジュール100によれば、積層半導体12の部分122へ入射しようとする外光は、積層半導体12の凹凸形状を有する表面(例えば面122a)で屈折または散乱されて、積層半導体12の内部を斜めに進む。よって、その一部は積層半導体12の部分121に入射する。つまり、積層半導体12のうち発電に寄与する部分121へ入射される外光の量を向上することができる。これにより、太陽電池モジュール100の変換効率(単位面積当たりの変換効率)を向上することができる。
【0056】
また+Z側から太陽電池モジュール100に対して外光が入射する場合、積層半導体12の部分122を透過した外光は、分離溝P1(または分離溝P11)において凹凸形状を有する表面(例えば面122a)で反射または散乱し、その一部は積層半導体12の部分121へ入射される。よってこの場合でも、太陽電池モジュール100の変換効率を向上できる。
【0057】
一方で、積層半導体12の発電に寄与する部分121の面121aの凹凸は積層半導体の面122aよりも小さく、例えば略平坦である。よって、積層半導体12の部分121の厚みの均一性を向上させることができ、発電効率の低下を低減することができる。
【0058】
<太陽電池モジュール100A>
図8は、太陽電池モジュール100Aの一部の構成の一例を概略的に示す図である。太陽電池モジュール100Aは、基板51の一主面51aの形状および複数の突起体15の有無という点で、太陽電池モジュール100と相違している。
【0059】
太陽電池モジュール100Aにおいては、基板51の一主面51aは一様に略平坦である。つまり、基板51の一主面51aのうち分離溝P1に対応する面も略平坦であり、また分離溝P11に対応する面も略平坦である。
【0060】
複数の突起体15は、複数の電極11の相互間(つまり分離溝P1)において、基板51の一主面51aの上に配置されている。よって、突起体15は基板51の一主面51aから+Z側の突起している、ともいえる。これらの突起体15は基板51の一主面51aとともに凹凸形状を形成している。例えば複数の突起体15はY軸方向において互いに間隔を空けて並んで配置されている。つまり、基板51の一主面51aは、分離溝P1において、複数の突起体15によって覆われる部分と、複数の突起体15によって覆われない部分を有している。よって、基板51の一主面51aのうち分離溝P1において突起体15に覆われない面と、突起体15の+Z側の表面とを繋いだ面は凹凸形状を形成する。
【0061】
突起体15は
図8に例示するように、+Z側に向かうにしたがって先細となる形状を有していてもよい。また、突起体15はX軸方向に沿って延在していてもよい。例えば突起体15は光電変換セル10の−X側の端から+X側の端まで延在していてもよい。あるいは、複数の突起体15が分離溝P1において2次元的(例えば行列状)に配置されてもよい。
【0062】
複数の突起体15は任意の材料で形成されてもよいものの、例えば電極11と同じ材料で形成されてもよい。これによれば、電極11と同じ工程で突起体15を形成することができる。このように突起体15が導電性を有する場合には、複数の突起体15がY軸方向において相互に間隔を空けて配置されることにより、分離溝P1における絶縁性を確保することができる。つまり、複数の突起体15がY軸方向において分離していれば、複数の突起体15の相互間の距離を調整することで、隣り合う電極11の間の絶縁性を確保することができる。
【0063】
積層半導体12は分離溝P1において、基板51および突起体15を含む構造体の上に形成される。つまり、積層半導体12の面122aは突起体15と密着しつつ、分離溝P1において突起体15が配置されていない領域では基板51の一主面51aに密着する。よって、積層半導体12の面122aには、基板51および突起体15により形成された凹凸形状と同一の凹凸形状が形成される。
【0064】
上述の例では、分離溝P1において突起体15を配置しているものの、分離溝P11においても突起体15を配置するとよい。
【0065】
<製造方法>
図9は、太陽電池モジュール100Aの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図10および
図11は、製造途中の状態の一例を概略的に示す図である。
【0066】
まずステップS11にて、基板51の一主面51aの上に電極(具体的には電極11および接続用電極14)と突起体15とを形成する(
図10も参照)。具体的には、まずスパッタリング法または塗布法等により、基板51の一主面51aの上に電極膜を形成する。次に例えばフォトリソグラフィ法またはレーザスクライブ法等により、電極膜の一部を適宜に除去して、電極11、接続用電極14および突起体15を形成する。
【0067】
次にステップS12にて、複数の積層半導体12を形成する(
図11も参照)。具体的には、まず、基板51、電極11、接続用電極14および突起体15を含む構造体の+Z側の主面の上に、各種の半導体層をスパッタリング法または塗布法等により順次に形成する。次に、フォトリソグラフィ法またはレーザスクライブ法等により、分離溝P2を形成して、積層半導体12を形成する。
【0068】
次にステップS13,S14をこの順で実行する。ステップS13,S14はステップS4,S5とそれぞれ同一である。
【0069】
以上の製造工程を経て、太陽電池モジュール100Aを製造することができる。この太陽電池モジュール100Aにおいても、積層半導体12の面122aは凹凸形状を有している。よって、積層半導体12とその下地層(基板51および突起体15)との接触面積を向上することができる。したがってこれらの間の密着力を向上できる。
【0070】
また積層半導体12の面122aに入射される外光の一部は当該面122aの凹凸形状で反射、屈折または散乱して積層半導体12の部分121へと入射される。よって、太陽電池モジュール100と同様に、太陽電池モジュール100Aの変換効率を向上できる。
【0071】
また積層半導体12の面121aの凹凸の高さは面122aよりも小さく、例えば理想的には零であるので、太陽電池モジュール100と同様に、太陽電池モジュール100Aを薄くできる。
【0072】
<濡れ性>
太陽電池モジュール100Aにおいて、積層半導体12を液相成長法(例えば塗布法)により作成してもよい。例えば積層半導体12として、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、ペロブスカイト太陽電池または色素増感太陽電池等に用いられる積層半導体(光電変換層)を採用する場合に、液相成長法(例えば塗布法)を採用することができる。この液相成長法においては、電極11、接続用電極14および突起体15が形成された基板51へと原料溶液を塗布して半導体膜を析出させることにより、当該半導体膜を成膜する。
【0073】
この場合、積層半導体12の原料溶液に対する突起体15の濡れ性は基板51の濡れ性よりも高いことが望ましい。例えば突起体15および基板51の材料は次の組み合わせを採用することが望ましい。具体的には、例えば突起体15はITO(Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛または酸化スズなどで形成され、基盤51はガラスなどで形成されていればよい。
【0074】
突起体15の濡れ性が基板51の濡れ性よりも高い場合には、積層半導体12の最下層(−Z側の端に位置する半導体膜)の原料溶液が突起体15を良好に覆うことができる。よって、積層半導体12が突起体15に対して良好に被覆される。つまり、積層半導体12の最下層の被覆性を向上することができる。これにより、太陽電池モジュール100の性能および信頼性を向上することができる。
【0075】
なお上述の太陽電池モジュール100,100Aでは、光電変換セル10は相互に直列に接続されているものの、必ずしもこれに限らない。光電変換セル10は相互に並列に接続されてもよく、あるいは、相互に直列接続された光電変換セル10の組の複数が相互に並列に接続されてもよい。
【0076】
以上のように、太陽電池モジュールおよびその製造方法は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。