(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に係るサーマルヘッド1について図面を参照して説明する。なお、図面には、便宜上、D1軸、D2軸及びD3軸からなる直交座標系を付す。サーマルヘッド1は、いずれの方向が上方又は下方とされてもよいが、便宜上、D3軸の正側を上方として、上面等の用語を用いることがある。
【0017】
(サーマルヘッドの全体構成)
図1は、サーマルヘッド1の概略構成を示す分解斜視図である。
【0018】
サーマルヘッド1は、そのD3軸正側においてD2方向(例えば+D2側)へ搬送される記録媒体に印刷を行うように構成されている。記録媒体は、例えば、感熱紙であり、サーマルヘッド1のD3軸正側に面する主面1aから熱が付与されることにより印刷が行われる。又は、例えば、記録媒体は、感熱紙以外の紙であり、当該紙に重ねられたインクフィルムにサーマルヘッド1の主面1aから熱が付与されて熱転写が行われることにより印刷が行われる。なお、以下では、記録媒体として感熱紙を例に取ることがある。また、主面は、板状部材の最も広い面(表面又は裏面)を指す。
【0019】
サーマルヘッド1は、例えば、その主面1aを構成するヘッド基体3と、ヘッド基体3の背面に位置する放熱板5と、ヘッド基体3と放熱板5との間に介在する接着部材7と、ヘッド基体3に接続されたコネクタ9とを有している。
【0020】
ヘッド基体3は、主面1a側に感熱紙(又はインクフィルム)に熱を付与する加熱ライン3bを有している。加熱ライン3bは、D1方向に配列された複数の加熱部3cによって構成されている。なお、
図1では、複数の加熱部3cの境界を図示しているが、当該境界は、必ずしもヘッド基体3の外観に現れるとは限らない。感熱紙がD2方向(厳密にはD3方向の成分を含んでよい。)へ加熱ライン3bを摺動しているときに複数の加熱部3cの温度が個別に制御されることによって、感熱紙に任意の2次元画像が形成される。
【0021】
ヘッド基体3は、例えば、平面視して、D1方向に延びる長辺及びD2方向に延びる短辺を有する長方形状に形成されている。加熱ライン3bは、例えば、ヘッド基体3の中心よりも1辺(図示の例では一方の長辺)側に位置し、当該1辺に沿って(例えば平行に)延びている。ヘッド基体3の、加熱ライン3bが沿う1辺とは反対側(図示の例では他方の長辺側)は、コネクタ9が接続される端子側とされている。
【0022】
放熱板5は、直方体形状をなしている。放熱板5は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、ヘッド基体3の加熱ライン3bで発生した熱のうち、印画に寄与しない熱を放熱する機能を有している。接着部材7は、ヘッド基体3と放熱板5とを接着している。
【0023】
コネクタ9は、ヘッド基体3とサーマルヘッド1の外部の電子回路とを電気的に接続している。外部の電子回路からコネクタ9を介してヘッド基体3へ電気信号(電圧)が入力されることによって、複数の加熱部3cの温度が個別に制御される。コネクタ9は、例えば、ヘッド基体3の複数の端子3d(
図2参照)に当接する複数のピン9aを有している。複数のピン9aは、例えば、樹脂封止される。なお、このような構成のコネクタ9に代えて、フレキシブルプリント配線板(FPC)が用いられてもよい。
【0024】
(ヘッド基体の構成)
図2は、ヘッド基体3の要部構成を示す平面図である。
図3は、
図2のIII−III線における断面図である。なお、
図2及び
図3において、一部の部材(後述)は、図示が省略され、又は実線以外の線で示されている。また、
図2において、一部の部材(後述)については、図解を容易にするために表面(断面ではない面)にハッチングを付している。また、
図3において、D2軸負側の部分は、その細部を正確に反映すると図解が困難になることから、省略乃至は模式化されている。
【0025】
ヘッド基体3は、基板11と、その表面上に積層される種々の層とを有している。以下、ヘッド基体3を構成する各部材について説明する。
【0026】
(基板)
基板11は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料、あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。基板11の形状は、概略、ヘッド基体3の形状と同様である。すなわち、本実施形態では、基板11の形状は、概略、D3方向を厚さ方向とする板状であり、その平面視における形状は、D1方向に延びる長辺及びD2方向に延びる短辺を有する長方形である。
【0027】
(補強導体層)
基板11上には、補強導体層13(
図3)が設けられている。補強導体層13は、例えば、後述する共通電極27等に重なって当該電極が厚くされたのと同様の作用を奏し、ひいては、配線抵抗を低減することに寄与する。その平面視における位置は適宜に設定されてよい。補強導体層13の材料は、適宜な金属とされてよく、例えば、銀(Ag)若しくは銅(Cu)又はこれらの合金である。補強導体層13は、例えば、Ag又はCu等の金属粉末に有機溶剤等を添加混合して得た所定の導電性ペーストをスクリーン印刷等によって基板11の上面に塗布し、これを焼成することによって形成される。
【0028】
(グレーズ層)
基板11上には、(補強導体層13の配置位置においてはその上から)グレーズ層15(
図3)が設けられている。グレーズ層15は、加熱ライン3bの内部側を構成する第1グレーズ17と、第1グレーズ17から離れて比較的広い範囲に広がっている第2グレーズ19とを有している。第1グレーズ17は、例えば、蓄熱に寄与したり、及び/又は加熱ライン3bの表面を適宜な形状にすることに寄与したりしている。第2グレーズ19は、例えば、基板11の表面よりも平坦に形成されることにより、その上に形成される導電層の断線及び/又は短絡のおそれを低減する。
【0029】
第1グレーズ17は、例えば、一定の幅でD1方向に沿って(例えば平行に)直線状に延びている。第1グレーズ17のD1軸に直交する断面の形状は、例えば、ドーム状(外側に突出する曲線状)である。その高さ、幅及び曲率は適宜に設定されてよい。また、曲線は、円弧であってもよいし、楕円の弧のように曲率が変化するものであってもよい。
【0030】
なお、第1グレーズ17の断面形状は、ドーム状の他、例えば、上面が平坦な形状(例えば矩形又は台形)であってもよいし、ドーム状と概念できる形状よりも突出した形状(例えば上底が平面又は曲面の錐台状)であってもよいし、ドーム形状の上面から突部が突出する形状(2段の形状)であってもよい。
【0031】
第1グレーズ17の表面が曲面であることから、第1グレーズ17上の層も曲面状となる。以下において、第1グレーズ17上の層について平面形状(単に形状ということもある。)という場合、例えば、D3方向に見た形状(基板11の主面上に投影した形状)を指すものとする。ただし、平面形状は、曲面を平面状に展開した形状と捉えられても構わない。
【0032】
第2グレーズ19は、例えば、基板11の主面の略全域にわたって設けられており、また、第1グレーズ17から離間している。
【0033】
第1グレーズ17および第2グレーズ19の厚みは適宜に設定されてよい。例えば、第1グレーズ17および第2グレーズ19の厚みは、30μm以上80μm以下である。
【0034】
第1グレーズ17および第2グレーズ19は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストをそれぞれ印刷した後、ガラスペーストを焼成することにより作製することができる。
【0035】
(下地層)
グレーズ層15上には、下地層21(
図3)が設けられている。下地層21は、例えば、ヘッド基体3の製造過程において、下地層21よりも上の層をエッチングするときに、下地層21よりも下の層がエッチングされるおそれを低減することに寄与する。下地層21は、例えば、基板11の主面の概ね全面に亘って設けられており、グレーズ層15の非配置領域においては基板11の主面上に直接に重なっている。
【0036】
下地層21は、例えば、SiC、SiN、あるいはSiALON等の材料を用いて、スパッタリング等の薄膜形成技術により形成することができる。下地層21の厚みは、適宜に設定されてよく、例えば、0.01μm以上1μm以下である。なお、下地層21は必ずしも設けられる必要はない。
【0037】
(発熱体層)
下地層21上には、発熱体層23が設けられている。
図2において、発熱体層23の表面には、ハッチングが付されている。発熱体層23は、加熱ライン3b内(第1グレーズ17上)に複数の発熱部23aを含んでいる(発熱体層23のうち後述する導電層25から露出している部分)。この発熱部23aにおいて生じた熱が記録媒体又はインクフィルムに付与される。
【0038】
発熱体層23の全体の平面形状(パターン)は、例えば、複数の発熱部23aを除いて、後述する導電層25の平面形状と同一である。なお、発熱体層23は、複数の発熱部23aのみ、又は発熱部23a及びその周囲の部分のみから構成されていてもよい。発熱体層23の厚さは適宜に設定されてよいが、例えば、0.01μm以上0.5μm以下である。
【0039】
複数の発熱部23aは、例えば、D1方向に沿って(例えば平行に)直線状に1列で配列されている。複数の発熱部23aのピッチ(複数の加熱部3cのピッチ)は、例えば、一定である。複数の発熱部23aの数及び密度は適宜に設定されてよい。例えば、密度は、100dpi(dot per inch)以上2400dpi以下である。本実施形態の図面では、発熱部23aは、第1グレーズ17の頂点に示されているが、発熱部23aは、第1グレーズ17の頂点に対して−D2側又は+D2側にずれていてもよい。
【0040】
発熱体層23は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、発熱部23aに電圧が印加されたときに、ジュール発熱によって発熱部23aが発熱する。
【0041】
発熱体層23は、例えば、スパッタリング法等の薄膜成形技術によって薄膜を形成した後、フォトエッチング等を用いて前記薄膜を所定のパターンに加工することにより形成される。なお、発熱体層23のエッチングは、導電層25のエッチング(発熱部23a上のエッチングを除く)と共に行われてもよい。
【0042】
(導電層)
発熱体層23の上には、導電層25が設けられている。導電層25は、例えば、複数の発熱部23aに電圧を印加する共通電極27及び複数の個別電極29と、各種の電気的接続を行う複数の配線31(
図2)と、グランド電位(基準電位)が付与されるグランド電極33(
図2)とを含んでいる。
【0043】
共通電極27は、複数の発熱部23aに共通に接続されており、複数の発熱部23aに互いに同一の電位を付与する。複数の個別電極29は、複数の発熱部23aに別々に(例えば1つずつ別々に)接続されており、互いに独立に複数の発熱部23aに電位を付与する。これにより、平面視において複数の共通電極27と複数の個別電極29とに挟まれた複数の発熱部23aに互いに独立に電圧が印加され、任意の画像の印刷が可能になる。
【0044】
共通電極27は、例えば、コネクタ9から所定の電位が付与される。複数の個別電極29は、後述する駆動IC45(
図2)から駆動信号(電位)が付与される。より具体的には、例えば、複数の個別電極29(複数の発熱部23a)は、複数の群に分けられており、各群の個別電極29は、各群に対応して設けられた駆動IC45から駆動信号が入力される。
【0045】
複数の配線31は、駆動IC45とコネクタ9との接続、又は複数の駆動IC45同士の接続を担っており、画像の内容に応じた信号を駆動IC45に入力することに寄与している。グランド電極33は、例えば、駆動IC45とコネクタ9とを接続しており、基準電位を駆動IC45に付与することに寄与している。
【0046】
導電層25は、例えば、アルミニウム(Al)又はアルミニウム合金等の適宜な金属により構成されている。その厚さは、適宜に設定されてよいが、例えば、0.5μm以上2.0μm以下である。導電層25は、例えば、スパッタリング法等の薄膜成形技術によって薄膜を形成した後、当該薄膜をフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、エッチングは、発熱体層23及び導電層25を共にエッチングする工程と、その後に発熱部23a直上の導電層25をエッチングする工程との2段階に亘って行われてよい。
【0047】
(共通電極)
共通電極27は、
図2に符号を付すように、複数の発熱部23a(第1グレーズ17)に対してヘッド基体3の端子側とは反対側(+D2)側に位置している主配線部27aと、主配線部27aからヘッド基体3の端子側へ延びる副配線部27bと、主配線部27aから延びて複数の発熱部23aに個別に接続されている複数のリード部27cとを有している。
【0048】
主配線部27aは、例えば、第1グレーズ17に重ならない位置にて、第1グレーズ17に沿って(例えば平行に)一定の幅で直線状に延びている。
【0049】
副配線部27bは、例えば、主配線部27aの端部から延び出て、第1グレーズ17の端部外側(D1方向外側)を経由して、基板11の−D2側の縁部に隣接する位置まで延びている。副配線部27bの−D2側の端部の一部は、コネクタ9のピン9aが接続される端子3dを構成している。なお、共通電極27は、コネクタ9に代えて、駆動IC45から電位が付与されるように構成されても構わない。
【0050】
複数のリード部27cは、例えば、複数の発熱部23aに対して1対1で設けられており、主配線部27aからD2方向に沿って(例えば平行に)一定の幅で直線状に延び、発熱部23aの+D2側に接続されている。なお、リード部27cは、その全体が第1グレーズ17上に位置していてもよいし、先端側の一部が第1グレーズ17上に位置していてもよい。
【0051】
(個別電極)
複数の個別電極29は、例えば、複数の発熱部23aに対して1対1で設けられている。また、複数の個別電極29は、例えば、まず、基板11の中央側から第1グレーズ17側へ徐々に幅及びピッチを広げつつ延びている。その後、複数の個別電極29(そのうちの接続部29a)は、例えば、D2方向に沿って(例えば平行に)一定の幅で直線状に延びて複数の発熱部23aの−D2側に接続されている。接続部29aは、その全体が第1グレーズ17上に位置していてもよいし、先端側の一部が第1グレーズ17上に位置していてもよい。なお、図示の例とは異なり、1の個別電極29に対して互いに隣接する2以上の発熱部23aが接続されていてもよい。複数の個別電極29の複数の発熱部23aとは反対側の端部は、駆動IC45を表面実装するためのパッド3e(
図2)を構成している。
【0052】
(配線及びグランド電極)
駆動IC45とコネクタ9とを接続する複数の配線31は、一端は駆動IC45が表面実装されるパッド3eを構成しており、他端は、コネクタ9が接続される端子3dを構成している。駆動IC45同士を接続する複数の配線31は、一端が駆動IC45が表面実装されるパッド3eを構成しており、他端が他の駆動IC45が表面実装されるパッド3eを構成している。なお、ヘッド基体3は、駆動IC45同士を接続する配線31が設けられない回路構成とされてもよい。
【0053】
グランド電極33は、例えば、個別電極29と、共通電極27及び複数の配線31に囲まれる領域にベタ状に形成されている。グランド電極33の一部は、駆動IC45が表面実装されるパッド3eを構成しており、他の一部は、コネクタ9が接続される端子3dを構成している。
【0054】
(保護層)
導電層25上には、保護層35(
図3)が設けられている。なお、
図2では、保護層35の図示を省略している。保護層35は、例えば、発熱体層23及び導電層25の記録媒体との接触による摩耗、及びこれらの層の酸化・腐食を抑制することに寄与する。
【0055】
保護層35は、少なくとも複数の発熱部23aを覆うように形成されている。具体的には、例えば、保護層35は、第1グレーズ17の全体を覆う広さを有している。また、図示の例では、保護層35は、第1グレーズ17のさらに外側まで広がっている。保護層35は、例えば、第1グレーズ17に沿って(例えば平行に)一定の幅で直線状に延びている。
【0056】
保護層35は、SiN、SiO、SiON、SiC、SiCN、あるいはダイヤモンドライクカーボン等を用いて形成することができる。保護層35は、本実施形態のように単層で構成してもよく、複数の層を積層して構成してもよい。保護層35はスパッタリング法等の薄膜形成技術あるいはスクリーン印刷等の厚膜形成技術を用いて作製することができる。保護層35の厚さは適宜に設定されてよいが、例えば、発熱体層23及び導電層25の厚さの合計よりも厚く、また、3μm以上20μm以下である。
【0057】
(被覆層)
保護層35の非配置領域には、被覆層37(
図3)が設けられている。なお、
図2では、被覆層37は図示が省略されている。また、被覆層37は、保護層35の一部に重なっていてもよい。被覆層37は、例えば、導電層25とヘッド基体3外部との絶縁、及び導電層25の酸化・腐食の抑制に寄与する。
【0058】
被覆層37は、例えば、加熱ライン3b、複数のパッド3e及び複数の端子3dを露出させつつ、基板11の概ね全面に設けられている。被覆層の厚さは、5μm以上30μm以下である。被覆層37の材料は、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、あるいはシリコーン系樹脂等の樹脂材料である。被覆層37は、例えば、スクリーン印刷又はフォトリソグラフィーによって形成される。
【0059】
(駆動IC)
駆動IC45は、各発熱部23aの通電状態を制御する機能を有している。駆動IC45としては、例えば、内部に複数のスイッチング素子を有する切替部材を用いてよい。駆動IC45は、複数のパッド3eに不図示のバンプを介して表面実装され、ハードコート47(
図7参照)によって封止されている。ハードコート47は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる。
【0060】
(保護層の表面形状)
図4(a)及び
図4(b)は、ヘッド基体3の一部を拡大して示す斜視図である。
図4(a)は、
図4(b)に対して、保護層35の図示が省略されている。
【0061】
既述のように、複数の発熱部23aは、D1方向に配列されている。各発熱部23aの+D2側には、共通電極27の複数のリード部27cが接続されている。各発熱部23aの−D2側には、個別電極29の接続部29aが接続されている。
【0062】
リード部27c、発熱部23a及び接続部29aは、例えば、これら3つ全体として、概略、D2方向に沿って(例えは平行に)一定の幅で直線状に延びる突条(符号省略)を構成している。別の観点では、D2方向に延びる複数の下溝51(
図4(a))が形成されている。
【0063】
既述のように、発熱体層23の平面形状(パターン)は、発熱部23aを除いて導電層25(共通電極27及び個別電極29)のパターンと同一である。従って、下溝51は、複数のリード部27c間、及び複数の接続部29a間となる位置においては、発熱体層23の厚さ及び導電層25の厚さの合計に相当する深さを有している。
【0064】
その上に重なる保護層35においては、概略、下溝51と重なる位置に、第1凹部53、第2凹部55及び第3凹部57が形成されている。第1凹部53は、平面視において、互いに隣り合うリード部27cの間に少なくとも一部が位置する凹部である。第2凹部55は、平面視において、互いに隣り合う接続部29aの間に少なくとも一部が位置する凹部である。第3凹部57は、平面視において、互いに隣り合う発熱部23aの間に少なくとも一部が位置する凹部である。
【0065】
なお、特に図示しないが、保護層35は、発熱部23aに概ね重なる凹部を有していてもよい。当該凹部は、第3凹部57とD1方向においてつながっていてもよいし、つながっていなくてもよい。また、当該凹部の深さは、第3凹部57の深さに対して、浅くてもよいし、同程度でもよいし、深くてもよい。
【0066】
図5は、保護層35の上面を拡大して示す平面図である。この図では、リード部27c、発熱部23a及び接続部29aも点線で示している。また、発熱部23aには、ハッチングを付している。
図6(a)〜
図6(c)は、保護層35の上面部分の模式的な断面図であり、
図6(a)は
図5のVIa−VIa線に対応しており、
図6(b)は
図5のVIb−VIb線に対応しており、
図6(c)は
図5のVIc−VIc線に対応している。
【0067】
(第1凹部及び第2凹部)
第1凹部53及び第2凹部55それぞれは、例えば、平面視において、概略、D2方向に平行に一定の幅で直線状に延びる凹溝である。当該凹溝において、その発熱部23aとは反対側の端部は、第1グレーズ17上に位置していてもよいし、第1グレーズ17の長辺(縁部)に位置していてもよいし、第1グレーズ17よりも外側に位置していてもよい(図示の例)。また、発熱部23a側の端部は、上記の発熱部23aとは反対側の端部よりも発熱部23a側に位置してることを前提として、第1グレーズ17上に位置していてもよいし(図示の例)、第1グレーズ17のD2方向の縁部(長辺)に位置していてもよいし、第1グレーズ17の外側に位置していてもよい。また、発熱部23a側の端部は、D2方向において、発熱部23aの位置に到達していてもよいし、発熱部23aよりも外側に位置していてもよい(図示の例)。
【0068】
第1凹部53及び第2凹部55それぞれの断面形状(D2軸に直交する断面の形状。以下、同様。)は、適宜な形状とされてよく、例えば、概略矩形である。又は、例えば、当該断面形状は、深さ方向の全体に亘って、若しくは適宜な深さから底側において、底側ほど幅が狭くなる形状である。第1凹部53及び第2凹部55は、幅及び深さのいずれが他方よりも大きくてもよい。
【0069】
第1凹部53又は第2凹部55が第1グレーズ17の外側に位置する部分を有する場合、当該部分の断面形状は、例えば、D2方向の位置によらず一定である。第1凹部53又は第2凹部55が第1グレーズ17上に位置する部分を有する場合、当該部分の断面形状は、例えば、発熱部23a側に近づくほど、溝の上部が削られたかのように浅くなっていてもよい(例えば保護層35が薄くなっていてもよい。)。なお、
図4(b)及び
図5では、第1凹部53及び第2凹部55の第1グレーズ17の頂点側の縁部を明示しているが、これらの凹部は、第1グレーズ17の頂点に近づくほど徐々に浅くなり、頂点側の縁部が不明確となっていてもよい。
【0070】
第1凹部53の幅w1(
図6(a))は、保護層35の成膜状態にもよるが、例えば、概ね、リード部27c間の距離と同等である。同様に、第2凹部55の幅w2(
図6(c))は、保護層35の成膜状態にもよるが、例えば、概ね、接続部29a間の距離と同等である。幅w1及びw2は、例えば、互いに同等の大きさである。なお、凹部(53、55又は57等)の幅は、例えば、凹部の上方開口(保護層35の上面)と、その凹部の最も深い位置との中間位置において特定されてよい。幅w1及びw2は、例えば、1μm以上150μm以下である。
【0071】
第1凹部53の深さd1(
図6(a))及び第2凹部55の深さd2は、保護層35の成膜状態にもよるが、例えば、発熱体層23及び導電層25の合計厚さ以下である。深さd1及びd2は、例えば、互いに同等の大きさである。なお、凹部(53、55又は57等)の深さは、例えば、その凹部の最も深い位置、又は凹部の上方開口の幅の中央となる位置において特定されてよい。また、本実施形態のように保護層35が曲面状の場合においては、深さは、法線方向において特定されてもよいし、曲率が比較的小さい場合等においては、D3方向において特定されてもよい。深さd1及びd2は、例えば、0.5μm以上2μm以下である。
【0072】
(第3凹部)
第3凹部57は、例えば、平面視において、概略、D2方向に傾斜する方向に一定の幅で直線状に延びる凹溝である。当該凹溝において、第2凹部55側の端部は、例えば、第2凹部55の端部とD2方向につながっている。また、第1凹部53側の端部は、例えば、第1凹部53とD1方向に隣り合っている。
【0073】
なお、第2凹部55と第3凹部57とがD2方向につながっているという場合、例えば、そのつながっている位置における両者のD1方向における重複量が、第2凹部55の、第3凹部57とつながる直前部分におけるD1方向の長さの7割以上、及び/又は第3凹部57の、第2凹部55とつながる直前におけるD1方向の長さの7割以上である状態を含んでよい。
【0074】
また、第1凹部53と第3凹部57とがD1方向に隣り合っているという場合、例えば、両者のD2方向における配置範囲の一部が互いに重複していることを前提として、両者が離間している状態を含んでよく、また、両者がつながっている場合(図示の例)は、そのつながっている位置におけるD1方向における重複量が、第1凹部53の、第3凹部57と重複する直前部分におけるD1方向の長さの3割未満、かつ第3凹部57の、第2凹部55と重複する直前におけるD1方向の長さの3割未満である状態を含んでよい。
【0075】
第3凹部57の第2凹部55側(−D2側)の端部は、第2凹部55の第3凹部57側の端部とつながっているから、上述した第2凹部55の発熱部23a側の端部位置についての説明は、第3凹部57の第2凹部55側の端部位置についての説明として捉えてよい。すなわち、第3凹部57の第2凹部55側の端部は、第1グレーズ17上に位置していてもよいし(図示の例)、第1グレーズ17の−D2側の縁部(長辺)に位置していてもよいし、第1グレーズ17よりも外側(−D2側)に位置していてもよい。また、第3凹部57の第2凹部55側の端部は、D2方向において、発熱部23aの範囲内に収まっていてもよいし、発熱部23aよりも外側(−D2側)に位置していてもよい(図示の例)。
【0076】
第3凹部57の第1凹部53側(+D2側)の端部は、第1グレーズ17上に位置していてもよいし(図示の例)、第1グレーズ17の+D2側の縁部(長辺)に位置していてもよいし、第1グレーズ17よりも外側(+D2側)に位置していてもよい。また、第3凹部57の第1凹部53側の端部は、D2方向において、発熱部23aの範囲内に収まっていてもよいし、発熱部23aよりも外側(+D2側)に位置していてもよい(図示の例)。
【0077】
第3凹部57は、平面視において、傾斜していることにより、例えば、一部は発熱部23a間に位置しつつも、他の一部は、発熱部23aに重なっている。より詳細には、第3凹部57は、発熱部23aの−D2側の縁部(その少なくとも一部)上に位置している。第3凹部57の、発熱部23a間に位置する部分と発熱部23a上に位置する部分の面積比率、又は第3凹部57が発熱部23aと重なる面積が発熱部23aの面積に占める割合は、適宜に設定されてよい。例えば、第3凹部57が発熱部23aと重なる面積が発熱部23aの面積に占める割合は、10%以下又は5%以下である。なお、特に図示しないが、第3凹部57は、発熱部23aに重なっていなくてもよい。
【0078】
第3凹部57の断面形状(D2軸に直交する断面の形状。以下、同様。)は、適宜な形状とされてよく、例えば、概略矩形である。又は、例えば、当該断面形状は、深さ方向の全体に亘って、若しくは適宜な深さから底側において、底側ほど幅が狭くなる形状である。第3凹部57は、幅及び深さのいずれが他方よりも大きくてもよく、
図6(b)に示す例では、深さd3は、幅w3よりも小さい。第3凹部57は、少なくとも一部(図示の例では全部)が第1グレーズ17上に位置している。この第1グレーズ17上の部分の断面形状は、例えば、発熱部23a側に近づくほど、溝の上部が削られたかのように浅くなっていてもよい(例えば保護層35が薄くなっていてもよい。)。
【0079】
第3凹部57の幅w3(
図6(b)。ここではD1方向の長さとする。)は、例えば、概ね、第1凹部53の幅w1及び/又は第2凹部55の幅w2と同等である。例えば、幅w3と、幅w1又はw2との差は、後者の2割未満である。
【0080】
第3凹部57の深さd3(
図6(b))は、例えば、第1凹部53の深さd1及び第2凹部55の深さd2それぞれよりも浅い。例えば、深さd3は、深さd1及び深さd2それぞれの1/5以下、1/10以下又は1/20以下である。なお、前記において、各深さd1、d2又はd3に関して、D2方向の位置によって値が変化する場合は、例えば、最も大きい値を用いて比較がなされてもよいし、又は互いにつながる若しくは隣り合う位置における値を用いて比較がなされてもよい。
【0081】
第1凹部53と第3凹部57とでD2方向の範囲が互いに重複している領域において、相対的に深い部分(深さd1の部分)は、第1凹部53の一部であり、相対的に浅い部分(深さd3の部分)は、第3凹部57の一部である。従って、
図6(a)に示すように、第3凹部57のうち第1凹部53と隣り合っている部分が、第1凹部53とD1方向につながっている場合は、当該部分の幅w4(ここではD1方向の長さとする。)は、第3凹部57の他の部分の幅w3よりも狭くなる。ひいては、例えば、幅w4は、幅w1及び/又は幅w2よりも狭くなる。
【0082】
ヘッド基体3は、第3凹部57の形成を除いては、公知の種々の方法と同様の方法によって作製されてよい。また、基板11上の種々の層の形成方法については、既に言及したとおりである。第1凹部53及び第2凹部55は、例えば、保護層35を成膜したときに、下溝51によって保護層35の一部が陥没したかのように当該一部が下溝51内に成膜されることによって形成される。
【0083】
第3凹部57は、適宜な方法によって形成されてよい。例えば、特に図示しないが、上記のように公知の方法によってヘッド基体3を作製した後、ヘッド基体3を−D1側へ搬送しつつ、固定砥粒によって第2凹部55から+D2側へ第2凹部55の幅で研磨を行う。これにより、比較的浅く、かつ第2凹部55と同等の幅を有し、+D1側へ傾斜しつつ+D2側へ延びる第3凹部57が形成される。
【0084】
(サーマルプリンタ)
図7は、サーマルヘッド1を有するサーマルプリンタ101の構成を示す模式図である。
【0085】
サーマルプリンタ101は、サーマルヘッド1と、記録媒体P(感熱紙を例に取る)を搬送する搬送機構103と、記録媒体Pを加熱ライン3bに押し付けるプラテンローラ105と、これらに電力を供給する電源装置107と、これらの動作を制御する制御装置109とを備えている。
【0086】
サーマルヘッド1は、サーマルプリンタ101の筐体(不図示)に設けられた取付部材111の取付面111aに取り付けられている。サーマルヘッド1は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向(D1軸方向)に沿うようにして、取付部材111に取り付けられている。
【0087】
搬送機構103は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ113,115,117,119とを有している。搬送機構103は、記録媒体Pを矢印S方向に搬送して、サーマルヘッド1の複数の発熱部23a上に位置する保護層35上に搬送する。駆動部は、搬送ローラ113,115,117,119を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ113,115,117,119は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体113a,115a,117a,119aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材113b,115b,117b,119bにより被覆して構成することができる。
【0088】
なお、図示しないが、記録媒体Pがインクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体Pとサーマルヘッド1の発熱部23aとの間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送する。
【0089】
プラテンローラ105は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部23a上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ105は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体105aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材105bにより被覆して構成することができる。
【0090】
電源装置107は、上記のようにサーマルヘッド1の発熱部23aを発熱させるための電流および駆動IC45を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置109は、サーマルヘッド1の発熱部23aを選択的に発熱させるために、駆動IC45の動作を制御する制御信号を駆動IC45に供給する。
【0091】
サーマルプリンタ101は、プラテンローラ105によって記録媒体Pをサーマルヘッド1の発熱部23a上に押圧しつつ、搬送機構103によって記録媒体Pを発熱部23a上に搬送しながら、電源装置107および制御装置109によって発熱部23aを選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
【0092】
以上のとおり、本実施形態では、サーマルヘッド1は、複数の発熱部23aと、複数の第1電極部(リード部27c)と、複数の第2電極部(接続部29a)と、保護層35とを有している。複数の発熱部23aは、所定面(例えば基板11の主面又は下地層21)上にて当該基板11の主面に沿う第1方向(D1方向)に配列されている。複数のリード部27cは、平面視において、複数の発熱部23aに対してD1方向に交差する第2方向(D2方向)の一方側(+D2側)に接続されている。複数の接続部29aは、平面視において、複数の発熱部23aに対してD2方向の他方側(−D2側)に接続されている。保護層35は、複数の発熱部23a、複数のリード部27c及び複数の接続部29aを覆っている。また、保護層35は、複数の第1凹部53、複数の第2凹部55及び複数の第3凹部57を有している。複数の第1凹部53は、平面視において複数のリード部27cの間に位置している。複数の第2凹部55は、平面視において複数の接続部29aの間に位置している。複数の第3凹部57は、平面視において複数の発熱部23aの間に位置しており、複数の第1凹部53及び複数の第2凹部55よりも浅い。
【0093】
従って、例えば、第3凹部57が発熱部23a間に位置していることから、記録媒体又はインクフィルムが保護層35のうちの発熱部23a上の領域に貼り付く(スティッキングが生じる)おそれが低減される。その一方で、第3凹部57は、相対的に浅くされていることから、例えば、摺動によって生じた紙屑(紙粉)等の塵が第3凹部57から排出されやすい。その結果、例えば、第3凹部57に堆積した塵によって加熱に係る特性が変化してしまうおそれが低減され、ひいては、画質が維持される。
【0094】
また、本実施形態では、第3凹部57は、平面視においてD2方向に対して傾斜する方向に延びている。
【0095】
従って、例えば、記録媒体のうちのD1方向に平行な線状領域について着目すると、当該領域がヘッド基体3に対してD2方向に摺動しているとき、保護層35に対する当接位置(逆に言えば第3凹部57の直上の位置)は、摺動に伴ってD1方向において変化する。すなわち、当接状態が変化する。その結果、例えば、記録媒体が保護層35から剥がれやすくなる。すなわち、スティッキングのおそれが低減される。
【0096】
また、本実施形態では、第3凹部57は、一部が発熱部23aのD1方向(−D1側)の縁部上に位置している。
【0097】
従って、例えば、スティッキングを抑制する効果を発熱部23aの縁部において得ることができる。その結果、例えば、加熱ライン3bに対する記録媒体の摺動は、発熱部23a上において特に円滑になされ、ひいては、記録媒体上のD1方向におけるドットの間隔が安定する。すなわち、画質が向上する。
【0098】
また、本実施形態では、第3凹部57は、−D2側の部分が第2凹部55とD2方向につながっている。
【0099】
従って、例えば、第2凹部55に入り込んだ紙屑等の塵を第3凹部57へ排出することができる。上述のように、第3凹部57は、比較的浅いことから、塵を排出しやすい。その結果、第2凹部55から直接に外部へ塵を排出する場合に比較して、塵の排出が容易化される。当該効果は、第2凹部55が第3凹部57に対して、記録媒体のヘッド基体3に対する相対移動の上流側に位置しているときにさらに向上する。
【0100】
また、本実施形態では、第3凹部57は、+D2側の部分が第1凹部53とD1方向に隣り合っている。
【0101】
従って、例えば、記録媒体と保護層35との接触面積をより減じることができる。その結果、例えば、スティッキングを抑制する効果が向上する。
【0102】
また、本実施形態では、第1凹部53及び第3凹部57の、互いに隣り合っている部分のD1方向における幅の合計(w1+w4)は、第2凹部55のD1方向における幅w2よりも大きい。
【0103】
従って、記録媒体と保護層35との接触面積をより減じる作用と、記録媒体の摺動に伴って接触状態が変化する作用との双方が奏され、スティッキングを抑制する効果がより高くなる。
【0104】
また、本実施形態では、第3凹部57のD1方向における幅が、第1凹部53及び第2凹部55それぞれのD1方向における幅w1又はw2よりも小さい部分(例えば幅w4の部分)を含んでいる。
【0105】
従って、第3凹部57によって記録媒体と保護層35との接触面積を低減しつつも、第3凹部57自体は細くされている。これにより、例えば、第3凹部57を適切な位置に必要十分な面積で配置することが容易化される。
【0106】
本実施形態は、第3凹部57が平面視において発熱部23a間に位置しているとともに第1凹部53及び第2凹部55よりも浅いという観点とは別の観点で捉えることができる。例えば、第3凹部57は、平面視において第1凹部53とD1方向に隣り合っており、第1凹部53及び第2凹部55よりも浅い。
【0107】
この観点においては、例えば、第3凹部57によって実質的に第1凹部53をD1方向に拡張してスティッキングのおそれを低減できる。その一方で、第3凹部57は、相対的に浅くされていることから、例えば、紙屑等の塵が排出されやすい。
【0108】
(変形例)
図8は、変形例に係るサーマルヘッドの一部を拡大して示す斜視図であり、
図4(b)に対応している。
【0109】
この変形例では、実施形態の第3凹部57は、第1分割凹部57aと第2分割凹部57bとに分割されている。例えば、第1分割凹部57a及び第2分割凹部57bは、発熱部23a側ほど浅くなっており(例えば保護層35が薄くなっており)、その結果、発熱部23a側において途切れている。第1分割凹部57a及び第2分割凹部57bは、平面視において、隣り合う発熱部23a間に位置する部分を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0110】
当該変形においても、例えば、第1分割凹部57aは、実施形態の第3凹部57と同様に、平面視において第1凹部53とD1方向に隣り合っており、第1凹部53及び第2凹部55よりも浅いから、実施形態と同様の効果が奏される。例えば、第3凹部57によって実質的に第1凹部53をD1方向に拡張してスティッキングのおそれを低減できる。その一方で、第3凹部57は、相対的に浅くされていることから、例えば、紙屑等の塵が排出されやすい。
【0111】
なお、以上の実施形態及び変形例において、基板11の主面又は下地層21は所定面の一例である。D1方向は第1方向の一例である。D2方向は第2方向の一例である。リード部27cは第1電極部の一例である。接続部29aは第2電極部の一例である。第3凹部57及び第1分割凹部57aはそれぞれ第3凹部の一例である。
【0112】
本開示に係る技術は、上述した実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0113】
例えば、本実施形態では、加熱ライン3bが基板11の主面に設けられる態様を例示したが、基板11の側面(端面)に加熱ラインが形成されたり、主面と側面との角部を面取りした面取り面に加熱ラインが形成されたりしてもよい。なお、このことから理解されるように、発熱部及び電極部が設けられる所定面は、基板の主面に限定されない。
【0114】
実施形態では、第1凹部は発熱部に対して共通電極(リード部)側に位置し、第2凹部は発熱部に対して個別電極(接続部)側に位置したが、当該配置は逆であってもよい。別の観点では、第1凹部は発熱部に対して記録媒体の搬送方向(記録媒体の発熱部に対する相対移動)の下流側に位置し、第2凹部は発熱部に対して上流側に位置したが、当該配置は逆であってもよい。