(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重合性組成物を得る工程において、前記ポリイソシアナート成分と前記添加剤を混合し、その後、これらとポリチオール成分を混合する、請求項1に記載の光学部材用樹脂の製造方法。
前記重合性組成物を得る工程において、前記添加剤の総添加量が、ポリチオール成分とポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下である、請求項1又は2に記載の光学部材用樹脂の製造方法。
前記ポリイソシアナート成分が、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート及びイソホロンジイソシアナートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の光学部材用樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[光学部材用樹脂の製造方法]
本開示の一実施形態に係る光学部材用樹脂の製造方法は、
ポリチオール成分とポリイソシアナート成分と添加剤とを混合し、重合性組成物を得る工程、及び
重合性組成物を重合する工程を含む。
ここで、当該製造方法では、添加剤の混合前の水分含有量の総量が、ポリイソシアナート成分の量に対して1.0質量ppm以上10質量ppm以下である。
以上の構成により、得られる光学部材の異物及び白濁の発生が抑制される。
【0011】
本開示の一実施形態に係る光学部材用樹脂の製造方法は、例えば、
ポリチオール成分とポリイソシアナート成分と添加剤とを混合し、重合性組成物を得る工程(以下、「混合工程」ともいう)、
重合性組成物を脱気する工程(以下、「脱気工程」ともいう)、
重合性組成物を成形型内に注入する工程(以下、「注入工程」ともいう)、及び
重合性組成物を重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)
を含む。
【0012】
一実施形態に係る製造方法は、添加剤の混合前の水分含有量の総量は、得られる光学部材の異物及び白濁の発生を抑制する観点から、ポリイソシアナート成分の量に対して1.0質量ppm以上10質量ppm以下である。
添加剤の混合前の水分含有量の総量は、ポリイソシアナート成分の量に対して、好ましくは1.5質量ppm以上、より好ましくは2.0質量ppm以上、更に好ましくは2.5質量ppm以上である。水分含有量の総量は、1.0質量ppm以上とすることで、添加剤の水分を低減させる処理の負担が軽減すると共に、水分低減後の添加剤が使用可能な期間を延長することができる。
また添加剤の混合前の水分含有量の総量は、光学部材の異物及び白濁の発生をより顕著に抑制する観点から、ポリイソシアナート成分の量に対して、好ましくは8.0質量ppm以下、より好ましくは7.0質量ppm以下、更に好ましくは6.0質量ppm以下、更に好ましくは5.0質量ppm以下、更に好ましくは4.0質量ppm以下、更に好ましくは3.0質量ppm以下である。
水分含有量を減少させる方法としては、例えば、加熱乾燥又は減圧加熱乾燥が挙げられ、添加剤の性質を損ねない温度範囲において加熱することが可能である。
【0013】
「添加剤の混合前の水分含有量の総量」は、混合に使用する添加剤の水分含有量と、その添加量から算出する。各添加剤の水分含有量は実施例に記載の測定方法による。
上記水分含有量の総量として、算入対象となる添加剤としては、例えば、重合性組成物に添加される添加剤であって、ポリチオール成分とポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対して、1質量ppm以上(好ましくは50質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上)添加される添加剤が挙げられる。
添加剤としては、例えば、重合触媒、離型剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤が挙げられる。
【0014】
添加剤の総添加量は、ポリチオール成分とポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上である。
添加剤の総添加量は、ポリチオール成分とポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0015】
<混合工程>
混合工程では、ポリチオール成分とポリイソシアナート成分と添加剤との混合順序はいかなる順序であってもよいが、光学部材の異物及び白濁の発生をより顕著に抑制する観点から、ポリイソシアナート成分と添加剤を混合し(i)、その後、これらとポリチオール成分を混合する(ii)ことが好ましい。
(i)では、ポリイソシアナート成分は、一般的に粘度が低く、溶解性が良好であるため、添加剤が溶解しやすい。(i)では、溶解時間を短縮するため、ポリイソシアナート成分全量に対して、添加剤の全量を添加し、溶解させることが好ましい。
【0016】
〔重合性組成物〕
混合工程において得る重合性組成物は、ポリチオール成分、ポリイソシアナート成分、及び添加剤を含有する。以下、各成分について説明する。
【0017】
(ポリチオール成分)
ポリチオール成分としては、例えば、ポリオール化合物とメルカプト基含有カルボン酸化合物とのエステル化合物、直鎖又は分岐の脂肪族ポリチオール化合物、脂環構造を有するポリチオール化合物、芳香族ポリチオール化合物が挙げられる。
【0018】
ポリオール化合物とメルカプト基含有カルボン酸化合物とのエステル化合物において、ポリオール化合物としては、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物が挙げられる。
ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが挙げられる。
メルカプト基含有カルボン酸化合物としては、例えば、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸化合物、チオサリチル酸が挙げられる。
ポリオール化合物とメルカプト基含有カルボン酸化合物とのエステル化合物としては、例えば、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0019】
直鎖又は分岐の脂肪族ポリチオール化合物としては、例えば、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメチルオキシブタン−1,2−ジチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2−(2−メルカプトエチルチオ)プロパン−1,3−ジチオール、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトエチルチオ)エタン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトエチルチオ)プロパン、3−メルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン、テトラキス(メルカプトエチルチオ)プロパン、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2−メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、4,7−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、5,7−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオールが挙げられる。
【0020】
脂環構造を有するポリチオール化合物としては、例えば、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、メチルシクロヘキサンジチオール、ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、4,8−ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチアンが挙げられる。
【0021】
芳香族ポリチオール化合物としては、例えば、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、4,4’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビベンジル、2,5−トルエンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、9,10−アントラセンジメタンチオール、1,3−ジ(p−メチルオキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタンが挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0022】
ポリチオール成分は、好ましくは、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、4,7−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、5,7−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオールトリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトアセテート)、及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、より好ましくは、4,7−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、5,7−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0023】
ポリチオール成分の添加量は、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは43質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは53質量%以下である。
ポリチオール成分中の水分含有量は、好ましくは1質量ppm以上、より好ましくは10質量ppm以上、更に好ましくは100質量ppm以上、更に好ましくは150ppm以上、更に好ましくは200ppm以上であり、そして、好ましくは600質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm以下、更に好ましくは400質量ppm以下、更に好ましくは350質量ppm以下、更に好ましくは300質量ppm以下である。
【0024】
(ポリイソシアナート成分)
ポリイソシアナート成分としては、例えば、芳香環を有するポリイソシアナート化合物、脂環式ポリイソシアナート化合物、直鎖又は分岐鎖の脂肪族ポリイソシアナート化合物が挙げられる。
【0025】
芳香環を有するポリイソシアナート化合物としては、例えば、ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアナート)、4,4’−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアナート)、ビベンジル−4,4’−ジイソシアナート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ビス(イソシアナトメチルフェニル)エーテル、2−イソシアナトフェニル−4−イソシアナトフェニルスルフィド、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(2−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチル−6−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチルオキシ−4−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチルオキシ−3−イソシアナトフェニル)ジスルフィドが挙げられる。
【0026】
脂環式ポリイソシアナート化合物としては、例えば、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、イソホロンジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−2−メチル−1,3−ジチオランが挙げられる。
【0027】
直鎖又は分岐の脂肪族ポリイソシアナート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアナト−2−イソシアナトメチル−3−ペンタン、1,2,3−トリス(イソシアナトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(イソシアナトエチルチオ)プロパン、3,5−ジチア−1,2,6,7−ヘプタンテトライソシアナート、2,6−ジイソシアナトメチル−3,5−ジチア−1,7−ヘプタンジイソシアナート、2,5−ジイソシアナトメチルチオフェン、4−イソシアナトエチルチオ−2,6−ジチア−1,8−オクタンジイソシアナート、1,2−ジイソチオシアナトエタン、1,6−ジイソチオシアナトヘキサンが挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0028】
ポリイソシアナート成分は、好ましくは、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート及びイソホロンジイソシアナートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、より好ましくは、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン及び1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0029】
ポリイソシアナート成分の添加量は、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは43質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは53質量%以下である。
【0030】
ポリチオール成分とポリイソシアナート成分との好適な組み合わせとしては、例えば、
(1)1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、及び、ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、
(2)1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、及び、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、
(3)2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、及び、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、
(4)1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、及び、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、
が挙げられる。
【0031】
(添加剤)
添加剤は、例えば、重合触媒、離型剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、着色防止剤、蛍光増白剤が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
添加剤は、好ましくは、重合触媒、離型剤、及び紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
上記各種成分を通常の方法により混合することで、光学部材用樹脂が得られる。
【0032】
(重合触媒)
重合触媒としては、例えば、スズ化合物、含窒素化合物が挙げられる。
スズ化合物としては、例えば、アルキルスズ化合物、アルキルスズハライド化合物が挙げられる。
アルキルスズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートが挙げられる。
アルキルスズハライド化合物としては、例えば、ジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライド、モノメチルスズトリクロライド、トリメチルスズクロライド、トリブチルスズクロライド、トリブチルスズフロライド、ジメチルスズジブロマイドが挙げられる。
これらの中でも、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライドが好ましく、ジメチルスズジクロライドがより好ましい。
【0033】
含窒素化合物としては、例えば、3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物が挙げられる。3級アミンは、好ましくはヒンダードアミンである。
3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリン、N,N'−ジメチルピペラジン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)が挙げられる。
ヒンダードアミンとしては、例えば、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシエチル−4−ピペリジノール、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとの混合物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレートが挙げられる。
4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
イミダゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、ベンジルメチルイミダゾール、2−エチル−4−イミダゾールが挙げられる。
ピラゾール系化合物としては、例えば、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾールが挙げられる。
これらの中でも、ヒンダードアミン等の3級アミン、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物が好ましく、より好ましくはヒンダードアミンがより好ましい。
【0034】
重合触媒の添加量は、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.007質量部以上であり、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下である。
重合触媒中の水分含有量は、好ましくは1質量ppm以上、より好ましくは10質量ppm以上、更に好ましくは20質量ppm以上であり、そして、好ましくは2000質量ppm以下、より好ましくは1000質量ppm以下、更に好ましくは800質量ppm以下、更に好ましくは500質量ppm以下、更に好ましくは300質量ppm以下である。
【0035】
(離型剤)
離型剤としては、例えば、酸性リン酸アルキルエステル等の酸性リン酸エステルが挙げられる。酸性リン酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは4以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは12以下である。
酸性リン酸エステルは、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルのいずれであってもよいが、リン酸モノエステル、及びリン酸ジエステルの混合物が好ましい。
酸性リン酸アルキルエステルとしては、例えば、イソプロピルアシッドフォスフェート、ブチルアシッドフォスフェート、オクチルアシッドフォスフェート、ノニルアシッドフォスフェート、デシルアシッドフォスフェート、イソデシルアシッドフォスフェート、トリデシルアシッドフォスフェート、ステアリルアシッドフォスフェート、プロピルフェニルアシッドフォスフェート、ブチルフェニルアシッドフォスフェート、ブトキシエチルアシッドフォスフェートが挙げられる。
離型剤の添加量は、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上であり、そして、好ましくは1.00質量部以下、より好ましくは0.50質量部以下、更に好ましくは0.30質量部以下である。
離型剤中の水分含有量は、光学部材の異物及び白濁の発生をより抑制する観点から、好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上、更に好ましくは300質量ppm以上であり、そして、好ましくは2000質量ppm以下、より好ましくは1500質量ppm以下、更に好ましくは1300質量ppm以下、更に好ましくは1000質量ppm以下、更に好ましくは800質量ppm以下である。
【0036】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ジベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン系化合物が挙げられる。これらの中でもベンゾトリアゾール系化合物、又はベンゾフェノン系化合物が好ましい。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−エチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾールが挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホニックアシッド、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンが挙げられる。
ジベンゾイルメタン系化合物としては、例えば、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンが挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
紫外線吸収剤の添加量は、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対し、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上、更に好ましくは0.30質量部以上、更に好ましくは0.40質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
紫外線吸収剤中の水分含有量は、好ましくは10質量ppm以上、より好ましくは30質量ppm以上、更に好ましくは50質量ppm以上であり、そして、好ましくは300質量ppm以下、より好ましくは200質量ppm以下、更に好ましくは150質量ppm以下である。
【0037】
<脱気工程>
混合工程で得られた重合性組成物は、光学部材の異物及び白濁の発生をより抑制する観点から、好ましくは脱気する工程を有する。
脱気は、例えば、重合性組成物を減圧条件で処理することで行われる。
脱気における圧力は、好ましくは10Pa以上、より好ましくは50Pa以上、更に好ましくは100Pa以上であり、そして、好ましくは1000Pa以下、より好ましくは800Pa以下、更に好ましくは500Pa以下である。
【0038】
<注入工程>
注入工程では、例えば、得られた重合性組成物を成形型内に注入する。
光学部材として眼鏡レンズを製造する場合、例えば、眼鏡レンズの両主面を形成する1対のモールドと、これらのモールドを所定間隔で離隔させて固定するテープ又はガスケットとを備える成形型が用いられる。なお上述のモールドは、ガラス製であっても、金属製であってもよい。
成形型への注入前に、重合組成物を濾過してもよい。濾過方法は特に限定されないが、例えば、孔径1〜30μmのフィルターを用いて濾過を行ってもよい。
【0039】
<重合工程>
重合工程においては、例えば、加熱により重合性組成物を重合する。
重合条件は、重合性組成物、成形する光学部材の形状に応じて、適宜設定することができる。
重合開始温度は、通常0〜50℃、好ましくは5〜30℃である。重合開始温度から昇温し、その後、加熱して硬化形成することが好ましい。例えば、昇温後の最高温度は、通常110〜130℃である。重合開始から終了までの、重合時間は、例えば3〜96時間である。
重合終了後、光学部材を離型して、アニール処理を行ってもよい。アニール処理の温度は、好ましくは100〜150℃である。
上述の方法により、光学部材用樹脂が得られる。
【0040】
[光学部材]
光学部材用樹脂の用途としては、例えば、眼鏡レンズ、カメラレンズ、プリズム、光ファイバ、光ディスク若しくは磁気ディスク等に用いられる記録媒体用基板、コンピュータのディスプレイに付設する光学フィルタ等の光学部材が挙げられる。これらの中でも、眼鏡レンズが好ましい。
眼鏡レンズは、好ましくは、光学部材用樹脂からなるレンズ基材(以下、「眼鏡用レンズ基材」ともいう)を備える。
眼鏡用レンズ基材の表面形状は特に限定されず、平面、凸面、凹面等のいずれであってもよい。
眼鏡用レンズ基材は、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等のいずれであってもよい。例えば、一例として、累進屈折力レンズについては、通常、近用部領域(近用部)及び累進部領域(中間領域)が、下方領域に含まれ、遠用部領域(遠用部)が上方領域に含まれる。
眼鏡用レンズ基材は、フィニッシュ型眼鏡用レンズ基材であってもセミフィニッシュ型眼鏡用レンズ基材であってもよい。
眼鏡用レンズ基材の幾何学中心の厚さ及び直径は、特に限定されるものではないが、幾何学中心の厚さは通常0.8〜30mm程度、直径は通常50〜100mm程度である。
眼鏡用レンズ基材の屈折率(ne)は、例えば、1.53以上、1.55以上、1.58以上、1.60以上であり、上限は特に限定されないが、屈折率が高ければ高いほどレンズの厚さを薄くすることができる。
眼鏡用レンズ基材のアッベ数(νe)は、例えば、20以上、25以上、30以上、35以上であり、上限は特に限定されないが、高ければ高いほど色収差が少ないレンズとなる。
【0041】
眼鏡レンズは、好ましくは眼鏡用レンズ基材及びその眼鏡用レンズ基材の表面に機能層を備える。
機能層としては、例えば、ハードコート層、プライマー層、反射防止膜及び撥水膜からなる郡から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
ハードコート層は、耐擦傷性向上のために設けられ、好ましくは有機ケイ素化合物、酸化スズ、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の微粒子状無機物を含有するコーティング液を塗工して形成することができる。
プライマー層は、耐衝撃性を向上させるために設けられ、例えば、ポリウレタンを主成分とする。ここでポリウレタンの含有量は、プライマー層中、好ましくは50質量%以上である。
反射防止膜としては、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル等の無機物を積層した膜が挙げられる。
撥水膜としては、フッ素原子を有する有機ケイ素化合物を用いて形成することができる。
【0042】
[眼鏡]
本発明の一実施形態に係る眼鏡は、眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを取り付けたフレームとを有する。
フレームとしては、例えば、一対のリムと、当該リム間に設けられたブリッチと、当該リムの片端に設けられた一対のテンプルとを有する。
リムは、ハーフリムであってもよい。
フレームとしては、いわゆるリムレスフレームであってもよい。この場合、眼鏡は、例えば、一対の眼鏡レンズと、当該眼鏡レンズ間に設けられたブリッチと、当該眼鏡レンズの片端に設けられた一対のテンプルとを有する。
【実施例】
【0043】
以下、本開示の実施形態に関して、具体的な実施例を示すが、本特許請求の範囲は、以下の実施例によって限定されるものではない。
各種数値の測定及び評価は以下の方法により行った。
【0044】
[測定方法]
<水分含有量>
温度25℃、相対湿度6%以下の環境下としたグローブボックス内に、水分気化装置「ADP−611」(京都電子工業株式会社)に接続したカールフィッシャー水分計「MKC−610」(京都電子工業株式会社製)を配置した。当該水分気化装置及びカールフィッシャー水分計用いて、測定試料を投入せずに温度125℃にて20分間装置を運転し、カールフィッシャー水分計が示す数値を測定し、装置の運転を安定化させた。
次に、測定試料をセッティングしていないトレイを水分気化装置に投入し、水分量測定を20分間実施し、ブランク値とした。
続いて、測定試料をセッティングしたトレイを水分気化装置に投入し、水分量測定を20分間行い、測定試料の水分量測定値を得た。
測定試料の水分含有量は、下記の式から算出した。
水分含有量(質量ppm)=[測定物の水分量測定値-ブランク値]/測定試料の投入量
【0045】
<屈折率及びアッベ数>
精密屈折率計「KPR−2000型」(カルニュー光学工業株式会社製)を用いて、20℃でF’線(488.0nm)、C’線(643.9nm)及びe線(546.1nm)で、試料の屈折率を測定した。そして、下記の式からアッベ数を算出した。
アッベ数ν
e=(n
e−1)/(n
F’−n
C’)
n
eはe線で測定した屈折率であり、n
F’はF’線で測定した屈折率であり、n
C’はC’線で測定した屈折率である。
【0046】
[評価方法]
<異物発生率>
暗箱内で蛍光燈下に得られた眼鏡用レンズ基材を目視で観察し、幾何学中心から直径30mm以内に異物が確認できる眼鏡用レンズ基材の数を記録し、製造した眼鏡用レンズ基材の総数から、異物発生率(%)を算出した。
【0047】
<白濁発生率>
暗箱内で蛍光燈下に眼鏡用レンズ基材の幾何学中心から直径30mm以内を目視で観察し、内部に白濁が確認できる眼鏡用レンズ基材の数を記録し、製造した眼鏡用レンズ基材の総数から、白濁発生率(%)を算出した。
【0048】
[各試料の調製方法]
<重合触媒>
実施例比較例で用いた試料は、120℃で加熱して水分量を調整した。
<離型剤>
実施例比較例で用いた試料は、60℃に加熱して、400Paの減圧下で、水分量を調整した。
<紫外線吸収剤>
実施例比較例で用いた試料は、120℃に加熱して水分量を調整した。
<ポリチオール>
実施例比較例で用いた試料は、60℃に加熱して、400Paの減圧下で、水分量を調整した。
【0049】
実施例1
(眼鏡用レンズ基材の作製)
ポリイソシアナート成分として、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン50.60質量部、重合触媒としてジメチルスズジクロライド(水分含有率:28質量ppm)0.012質量部、離型剤として酸性リン酸エステル「JP506H」(城北科学工業株式会社製、水分含有率:500質量ppm)0.15質量部、紫外線吸収剤「Seesorb707」(シプロ化成株式会社製)(水分含有率:143ppm)0.45質量部を加えた。各種添加剤によりポリイソシアナート成分に加えられた水分量はポリイソシアナート成分に対して2.76質量ppmとなった。
各種添加剤が十分に溶解するまで撹拌した後、ポリチオール成分として、4,7−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオールと4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオールと5,7−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオールとの混合物を49.40質量部加えて混合し、重合性組成物を得た。重合性組成物の組成を表1に示した。
この重合性組成物を300Paにて45分間脱気を行った後、孔径5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにて濾過を行った。続いて所望のレンズ形状を有したガラスモールドとガスケットからなる成形型へ注入した。重合性組成物が注入された成形型はそのレンズの形状に応じて10℃から120℃まで温度範囲で24時間かけてオーブンにて重合させた。
オーブンから成形型を取り出し、脱型して光学部材用樹脂からなる眼鏡用レンズ基材を得た。得られたレンズは120℃2時間のアニール処理を行った。得られた眼鏡用レンズ基材の屈折率及びアッベ数の測定を測定した。そして、当該方法により、レンズ500枚を製造し、上述の異物発生率及び白濁発生率の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0050】
実施例2〜8、比較例1〜6
表1に示した種類及び量の成分としたこと以外、実施例1と同様にして、眼鏡用レンズ基材を得た。屈折率及びアッベ数の測定、異物発生率及び白濁発生率の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
表1中の注釈及び略語は以下のとおりである。
*1 各成分中の水分含有量
*2 各成分の使用量
*3 イソシアナート成分の量に対する添加剤の混合前の水分含有量の総量(質量ppm)
〔ポリイソシアナート成分〕
A1:1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン
A2:2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンの混合物
A3:1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン
〔ポリチオール成分〕
B1:4,7−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオール、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオール、5,7−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオールの混合物
B2:4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン
B3:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
B4:2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン
B5:ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)
〔重合触媒〕
C1:ジメチルスズジクロライド(DMTDCl)
〔離型剤〕
D1:酸性リン酸エステル「JP506H」(城北化学工業株式会社製、ブトキシエチルアシッドホスフェート(ブトキシエチル基の置換数1又は2の混合物))
D2:酸性リン酸エステル「ZelecUN」(デュポン社製)
〔紫外線吸収剤〕
E1:2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール「Seesorb707」(シプロ化成株式会社製)
E2:2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール「Seesorb703」(シプロ化成株式会社製)
【0053】
【表2】
【0054】
最後に、本開示の実施の形態を総括する。
本開示の一実施の形態は、
ポリチオール成分とポリイソシアナート成分と添加剤とを混合し、重合性組成物を得る工程、及び
当該重合性組成物を重合する工程を含む光学部材用樹脂の製造方法であって、
添加剤の混合前の水分含有量の総量が、ポリイソシアナート成分の量に対して1.0質量ppm以上10質量ppm以下である、光学部材用樹脂の製造方法である。
上述した一実施例によれば、異物及び白濁の発生が抑制される、光学部材用樹脂の製造方法等を提供することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。