(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記相似領域に含まれる前記細胞または前記細胞構成要素を抽出して、抽出した前記細胞または前記細胞構成要素の情報を出力する抽出部を備える請求項4に記載の観察システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の観察システムのように、2次元的な蛍光画像を用いた解析では、スフェロイドのように3次元的な組織構造を有する細胞の計測に対しては精度が得られないという不都合がある。また、特許文献1は、標的部位の認識結果を2次元的な蛍光観察画像と合成して、認識結果を検証する手段が記載されているが、3次元的な蛍光画像を用いて、標的部位の認識結果を検証する手段については言及されていない。したがって、特許文献1の観察システムでは、3次元的な構造を有するサンプルの外周部や内周部の一定の領域を選択的に精度よく解析することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、3次元的な構造を有するサンプルの外周部や内周部の一定の領域を選択的に精度よく解析することができる観察システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、蛍光標本の3次元画像から観察対象の3次元形状を認識する形状認識部と、該形状認識部により認識された前記3次元形状の外接面の全域に亘って該外接面からの径方向の距離が一定で、かつ前記外接面に形状が相似する相似領域を設定する相似領域設定部と、該相似領域設定部により設定された前記相似領域内に含まれる細胞または該細胞を構成する細胞構成要素を識別する識別部とを備える観察システムである。
【0008】
本態様によれば、形状認識部により蛍光標本の3次元画像から認識される観察対象の3次元形状に形状が相似する相似領域が相似領域設定部により設定され、その相似領域内に含まれる細胞または細胞構成要素が識別部により識別される。相似領域設定部により設定される相似領域は、観察対象の3次元形状の外接面の全域に亘って外接面からの径方向の距離が一定なので、その一定の距離に存在する細胞または細胞構成要素を、それ以外の位置に存在する細胞または細胞構成要素と区別することができる。したがって、3次元的な構造を有する蛍光標本の観察対象における外周部や内周部の一定の領域を選択的に精度よく解析することができる。
【0009】
ここで、蛍光標本に対して外部に薬剤を投与した場合は、その薬剤が蛍光標本の内側に向かって浸潤していくことから、観察対象の外接面から一定の距離に存在する細胞または細胞構成要素に対する薬剤の効果を、それ以外の位置に存在する細胞または細胞構成要素に対する薬剤の効果と区別して正しく評価することができる。
【0010】
上記態様においては、前記相似領域設定部により設定される前記相似領域の前記径方向の厚さをユーザに指定させる厚さ指定部を備え、前記相似領域設定部が、前記厚さ指定部によりユーザが指定した前記厚さに従って前記相似領域を設定することとしてもよい。
このように構成することで、ユーザが厚さ指定部によって指定する所望の厚さの相似領域内に存在する細胞または細胞構成要素を選択的に解析することができる。
【0011】
上記態様においては、前記相似領域設定部により設定される前記相似領域を形成する前記外接面からの前記径方向の距離をユーザに指定させる距離指定部を備え、前記相似領域設定部が、前記距離指定部によりユーザが指定した前記距離に従って前記相似領域を設定することとしてもよい。
このように構成することで、ユーザが距離指定部によって指定する径方向の所望の位置の相似領域内に存在する細胞または細胞構成要素を選択的に解析することができる。
【0012】
上記態様においては、前記3次元画像を構成する互いに交差する3つの断面画像を互いに対応付けて同時に表示可能な表示部と、該表示部により表示される各前記断面画像上に、前記相似領域と該相似領域内に含まれる前記細胞または前記細胞構成要素とを重ね合わせて表示させるとともに、前記相似領域内に含まれる前記細胞または前記細胞構成要素と前記相似領域外に含まれる前記細胞または前記細胞構成要素とを区別可能に表示させる表示制御部とを備えることとしてもよい。
【0013】
このように構成することで、ユーザは、表示部により同時に表示される3次元画像の3つの断面画像により、観察対象の互いに交差する3方向の各断面形状を同時に視認することができる。この場合において、表示制御部により各断面画像上に相似領域とその中に含まれる細胞または細胞構成要素とが重ね合わせられて表示されることで、ユーザは、相似領域内に細胞または細胞構成要素がどれくらいの量含まれるか一見して把握することができる。さらに、表示制御部により各断面画像上に相似領域内と相似領域外とで細胞または細胞構成要素が区別可能に表示されることで、ユーザは、観察対象の外接面から一定の距離に存在する細胞または細胞構成要素をそれ以外の領域に存在する細胞または細胞構成要素と容易かつ正確に区別して観察することができる。
【0014】
上記態様においては、前記相似領域に含まれる前記細胞または前記細胞構成要素を抽出して、抽出した前記細胞または前記細胞構成要素の情報を出力する抽出部を備えることとしてもよい。
このように構成することで、抽出部により、ユーザは、観察対象の外接面から一定の距離に存在する細胞または細胞構成要素の情報を容易に収集することができる。
【0015】
上記態様においては、前記形状認識部が、複数の前記細胞が集合してなる細胞集塊を前記観察対象として前記細胞集塊の前記3次元形状を認識し、前記相似領域設定部が、前記細胞集塊の前記外接面の内側に前記相似領域を設定し、前記識別部が、前記相似領域内に含まれる前記細胞を識別することとしてもよい。
このように構成することで、細胞集塊内の一定の領域に存在する細胞を選択的に精度よく解析することができる。
【0016】
上記態様においては、前記形状認識部が、前記細胞の核を前記観察対象として前記細胞の核の前記3次元形状を認識し、前記相似領域設定部が、前記細胞の核の前記外接面の外側に前記相似領域を設定し、前記識別部が、前記相似領域内に含まれる前記細胞構成要素を識別することとしてもよい。
このように構成することで、個々の細胞内の一定の領域に存在する細胞構成要素を選択的に精度よく解析することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、3次元的な構造を有するサンプルの外周部や内周部の一定の領域を選択的に精度よく解析することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る観察システムについて図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察システム1は、
図1に示されるように、レーザ走査型顕微鏡3と、レーザ走査型顕微鏡3を制御したり画像を構築したりする制御装置5と、制御装置5により構築された画像を表示するモニタ(表示部)7と、PC(Personal Computer)9と、ユーザが各種入力を行うマウスやキーボード等の入力部(厚さ指定部)11とを備えている。
【0020】
レーザ走査型顕微鏡3は、
図2,3に示すような複数の細胞(蛍光標本)Sにより構成されるスフェロイド(細胞集塊)Wを収容するシャーレ等の透明な容器(不図示)を搭載する電動ステージ13と、レーザ光を出射するレーザ光源部15と、レーザ光源部15から出射されたレーザ光を2次元的に走査するスキャナ17と、スキャナ17により走査されたレーザ光を細胞Sに集光する対物レンズ19と、対物レンズ19によるレーザ光の照射により細胞Sにおいて発生する蛍光を検出して細胞Sの画像を取得する画像取得部21と、これらを収容する暗箱23とを備えている。
【0021】
電動ステージ13は、図示しない3個のモータを備え、相互に直交するX,Y,Z方向の移動軸に沿って独立して移動して、搭載した容器を3次元方向に移動させることができるようになっている。
【0022】
暗箱23内は、電動ステージ13を含んだ上方領域25Aと、それよりも下方の下方領域25Bとに区画されている。上方領域25Aにはヒータ27が配置され、上方領域25A内の温度が所定の培養条件(例えば、27℃±0.5℃)となるように調整されている。また、上方領域25A内には、電動ステージ13に位置決め状態に搭載されるサンプルホルダ29が配置されている。
【0023】
サンプルホルダ29は、電動ステージ13上で容器を位置決め状態に保持することができるようになっている。サンプルホルダ29により保持された容器は、簡易型インキュベータ31内に収容されてその培養条件(例えば、湿度100%およびCO
2濃度0.5%)が維持されるようになっている。図中符号33は、位相差観察用の位相差コンデンサである。
【0024】
レーザ光源部15は、異なる波長のレーザ光を発生する複数のレーザダイオード35と、これら複数のレーザダイオード35から発せられたレーザ光を単一の光路に合流させるミラー37およびダイクロイックミラー39とを備えている。
スキャナ17は、例えば、相互に直交する軸線回りに揺動させられる2枚のガルバノミラーを対向させて構成されたいわゆる近接ガルバノミラーである。
【0025】
対物レンズ19は、ドライ観察用の対物レンズ19Aと、油浸または水浸観察用の対物レンズ19Bとがレボルバ41によって切り替え可能に設けられている。また、対物レンズ19にはオートフォーカス機能が備えられていて、定期的にまたは必要に応じて合焦位置を検出し、対物レンズ19が光軸に沿う方向に移動させられることにより、対物レンズ19の焦点位置を細胞Sの表面に一致させることができるようになっている。
【0026】
図中符号43は、対物レンズ19Bと容器底面との間に油浸用のエマージョンオイルまたは水浸用の水を供給するポンプであり、図中符号45は、水またはエマージョンオイルを除去するためのエアブラシである。
スキャナ17と対物レンズ19との間には、スキャナ17により走査されたレーザ光を集光する瞳投影レンズ47および結像レンズ49が配置されている。
【0027】
画像取得部21は、レーザ光源部15とスキャナ17との間に挿入されて、細胞Sから発せられ対物レンズ19、結像レンズ49、瞳投影レンズ47およびスキャナ17を介して戻る蛍光をレーザ光の光路から分岐するビームスプリッタ51と、ビームスプリッタ51により分岐された蛍光を集光するコンフォーカルレンズ53と、可変ピンホール55と、コリメートレンズ57と、コリメートレンズ57により略平行光とされた蛍光を回折させて波長ごとに分離するグレーティング59と、グレーティング59により分離された蛍光を集光する集光レンズ61と、集光された蛍光を波長ごとに分岐するビームスプリッタ63と、ビームスプリッタ63により分岐された蛍光をそれぞれ検出する光検出器65とを備えている。可変ピンホール55は、対物レンズ19の焦点位置と光学的に共役な位置関係に配置されている。符号67はピンホールである。
【0028】
制御装置5は、電動ステージ13およびスキャナ17の駆動を制御し、光検出器65から出力される輝度情報に基づいて画像を構築するようになっている。例えば、制御装置5は、ステージ8を対物レンズ19に対して3次元的に移動させることによってスフェロイドWを対物レンズ19の焦点位置に対して3次元的に移動させながら、各焦点位置においてスキャナ17によりレーザ光を2次元的に走査させ、細胞Sから発せられる蛍光を検出した光検出器65から出力される輝度信号に基づいて対物レンズ19の焦点位置に配置されている細胞Sのスライス画像(撮像画像)を構築していくことにより、各細胞Sについて複数枚のスライス画像を取得するようになっている。
【0029】
そして、制御装置5は、各細胞Sの複数枚のスライス画像を画像処理することにより、スフェロイドW全体の3次元画像を構築するようになっている。制御装置5により取得された複数枚のスライス画像および3次元画像のデータはPC9に送られるようになっている。
【0030】
制御装置5は、PC9との間でデータ通信するための第1の通信I/F回路(不図示)と、電動ステージ13、スキャナ17、光検出器65などを制御するためにレーザ走査型顕微鏡3とデータ通信するための第2の通信I/F回路(不図示)と、CPU(Central Processing Unit、不図示)と、メモリ(不図示)などとで構成されている。なお、3次元画像を効率よく作成するために、CPUとは別にGPU(Graphics Processing Unit:不図示)を備えていてもよい。
【0031】
PC9は、各種プログラムや画像データ、グラフデータ等を記憶するディスク(HDD:Hard Disk Drive)69と、ディスク69に記憶されているプログラムを実行するCPU(形状認識部、相似領域設定部、識別部、表示制御部、抽出部)71と、CPU71によるプログラムの実行により得られた細胞Sの認識結果や解析結果を記憶するRAM(Random Access Memory)等のメモリ73とを備えている。
【0032】
ディスク69には、CPU71が実行するプログラムとして、例えば、認識プログラム、表示プログラム、3DMask生成プログラム(不図示)および計測プログラムが記憶されている。また、ディスク69には、制御装置5により取得された各細胞Sの複数枚のスライス画像およびスフェロイドW全体の3次元画像等の画像データが記憶されるようになっている。
【0033】
CPU71は、認識プログラムの実行により、3次元画像上の個々の細胞SやスフェロイドWに対して認識処理を行うようになっている。認識処理においては、例えば、サイズが異なる複数のLoG(Laplacian Of Gaussian)フィルタを採用して、これらLoGフィルタの出力値から局所的なピーク位置およびそのサイズを検出し、これをシード(細胞Sの中心位置)とする。そして、2次元的および3次元的にLoGフィルタを適用し、その結果を組み合わせる。次いで、シード周辺の近傍領域をそのサイズに基づいてトリミングおよび適応的に2値化処理を行い、
図2に示すように、認識した細胞Sの領域を形成する。また、認識した複数の細胞Sの集合を1つの塊(スフェロイドW)として認識し、
図3に示すように、それら複数の細胞Sに外接する領域、すなわち認識したスフェロイドWの領域を形成する。なお、
図4に示すように、細胞質Cを認識して、認識した各細胞質Cの集合を1つのスフェロイドWとして認識することとしてもよい。
【0034】
また、CPU71は、認識した個々の細胞SおよびスフェロイドWをそれぞれ互いに異なるラベルを付して特定し、例えば
図5に示すようなラベル画像と、
図6に示すような個々の細胞Sのテーブルと、
図7に示すようなスフェロイドWのテーブルを作成するようになっている。
【0035】
ラベル画像は、
図5に示すように、認識された細胞SごとにラベルとしてオブジェクトID(例えば、1、2、3、4、・・・k・・・n。)が付与されるとともに、認識されていないバックグラウンドには0が付与されて表された2次元的な画像である。細胞Sのテーブルは、
図6に示すように、細胞Sごとに付されたラベル(オブジェクトID)とその中心位置情報とその外接矩形とが関連付けられた情報である。スフェロイドWのテーブルは、
図7に示すように、スフェロイドWに付されたラベル(オブジェクトID)とその重心位置情報とその外接矩形とが関連付けられた情報である。CPU71により作成されたラベル画像およびテーブルはメモリ73に記憶されるようになっている。
【0036】
また、CPU71は、3DMask生成プログラムの実行により、
図8に示すように、認識したスフェロイドWの3次元形状における外接面Pの全域に亘って、外接面Pからの径方向の距離が一定で、かつ、外接面Pに形状が相似する3DMask(相似領域)10を設定するようになっている。具体的には、CPU71は、入力部11によりユーザが指定した3DMask10の径方向の厚さに従って、スフェロイドWの内側に、外接面Pの全域に亘って外接面Pからその厚さの分だけ内側に広がる3DMask10を設定するようになっている。
【0037】
また、CPU71は、計測プログラムの実行により、
図9に示すように、設定した3DMask10内に含まれる細胞S、すなわち3DMask10と重複する細胞Sを識別して、該当する細胞Sを抽出するようになっている。例えば、CPU71は、3DMask10内に核の重心が含まれる細胞Sを抽出することとしてもよい。また、CPU71は、抽出した細胞Sのデータ(情報)を作成するようになっている。細胞Sのデータとしては、例えば、細胞数、輝度値、長軸長などである。そして、CPU71は、作成したデータを示すグラフを作成してモニタ7に表示させるようになっている。グラフとしては、例えば、ヒストグラム、散布図、ライングラフ等が挙げられる。CPU71により作成されたグラフはディスク69に記憶されるようになっている。
【0038】
また、CPU71は、表示プログラムの実行により、例えば
図10に示すように、3次元画像を構成する互いに直交する3つの断面画像、すなわち、XY断面画像、XZ断面画像およびYZ断面画像を対応付けてモニタ7に同時に表示させるようになっている(3面表示)。各断面画像は、XY方向の撮像画像と、3次元画像をXZ方向およびYZ方向に切断した断面により作成される2次元的な画像である。
【0039】
また、CPU71は、
図11に示すように、モニタ7により表示されている各断面画像上に、3DMask10と3DMask10内に含まれる細胞Sとを重ね合わせて表示させるとともに、3DMask10内に含まれる細胞Sと3DMask10外に含まれる細胞Sとを区別可能に表示させるようになっている。例えば、CPU71は、スフェロイドWにおける3DMask10が設定された領域と、スフェロイドWにおける3DMask10が設定されていない領域と、3DMask10内に含まれる細胞Sと、3DMask10外に含まれる細胞Sとをそれぞれ異なる色に分けて表示するようになっている。
【0040】
モニタ7は、
図12に示すように、3次元画像を構成する互いに直交する3つの断面画像と、ヒストグラムやスキャッタグラム等のグラフとを並列に表示させることができるようになっている。
【0041】
入力部11は、
図13に示すように、CPU71により設定しようとする3DMask10におけるスフェロイドWの径方向に沿う方向の厚さ(Width。以下、本実施形態において3DMask10の厚さという。)をユーザが指定することができるようになっている。3DMask10の厚さは、例えば、ピクセル数や距離で示すこととしてもよい。
図13は、3DMask10の厚さをピクセル数で指定する場合を例示している。
【0042】
このように構成された観察システム1の作用について説明する。
最初に、本実施形態に係る観察システム1により、細胞Sの3次元画像を取得する場合について説明する。
まず、サンプルホルダ29により容器を保持させて、容器を電動ステージ13上に搭載し、レーザ光源部15からレーザ光を発生させる。
【0043】
レーザ光源部15から発せられたレーザ光は、スキャナ17によって2次元的に走査され、瞳投影レンズ47、結像レンズ49および対物レンズ19を介して容器内の細胞Sに集光される。レーザ光の照射位置においては、細胞S内に存在している蛍光物質が励起されて蛍光が発生する。発生した蛍光は、対物レンズ19、結像レンズ49、瞳投影レンズ47およびスキャナ17を介してレーザ光の光路を戻り、ビームスプリッタ51によって分岐されて画像取得部21に入射する。
【0044】
画像取得部21に入射した蛍光は、コンフォーカルレンズ53によって集光され、可変ピンホール55を通過した蛍光のみがコリメートレンズ57によって略平行光とされた後、グレーティング59によって分光されて集光レンズ61およびビームスプリッタ63を介して波長毎に異なる光検出器65により検出される。そして、制御装置5において、光検出器65から出力される輝度信号に基づいて細胞Sのスライス画像が構築され、構築された複数枚のスライス画像が画像処理されて3次元画像が構築される。
【0045】
この場合において、可変ピンホール55を十分に絞っておくことにより、対物レンズ19の焦点位置から発生した蛍光のみを通過させて光検出器65により検出し、鮮明な共焦点蛍光画像を取得することができる。
【0046】
次に、本実施形態に係る観察システム1により、所望のスフェロイドWを観察する場合について説明する。
まず、CPU71により、表示プログラムが実行され、スフェロイドWの3次元画像を構成するXY断面画像、XZ断面画像およびYZ断面画像とグラフとが相互に対応付けられてモニタ7に並列に表示される。
【0047】
また、
図14のフローチャートに示すように、CPU71により、認識プログラムが実行される。具体的には、ディスク69に記憶されているスフェロイドWの3次元画像のノイズが除去され(ステップSA1)、3次元画像に対して二値化による基点が抽出される(ステップSA2)。次いで、抽出した基点が統合されて(ステップSA3)、各細胞Sの領域が形成され(ステップSA4)、形成された細胞Sの領域が分割されてその分割結果が出力される(ステップSA5)。
【0048】
そして、CPU71により、3次元画像上の個々の細胞Sが認識されて互いに異なるラベルを付されて特定され、
図5に示すようなラベル画像と
図6に示すような細胞Sのテーブルが作成される。また、CPU71により、複数の細胞Sの集合が1つのスフェロイドWとして認識されてラベルが付され、
図7に示すようなスフェロイドWのテーブルが作成される。
【0049】
続いて、
図15のフローチャートに示すように、CPU71により、3DMask生成プログラムが実行される。具体的には、まず、ユーザが、入力部11により、3DMask10の厚さを指定すると(ステップSB1)、CPU71により、ユーザが指定した厚さに従って、
図8に示すように、スフェロイドWの外接面Pの全域に亘って、外接面Pからその厚さの分だけ内側に広がる3DMask10が設定される(ステップSB2)。
【0050】
次いで、CPU71により、計測プログラムが実行され、ディスク69に記憶されているラベル画像と細胞SおよびスフェロイドWのテーブルにおいて、ラベルが付されている全ての細胞Sの核の検索が開始される(ステップSB3)。そして、
図9に示すように、設定した3DMask10と重複する細胞S、すなわち、3DMask10内に核の重心が含まれる細胞Sが抽出される(ステップSB4)。3DMask10と重複する全ての細胞Sが抽出されると、検索が終了する(ステップSB5)。
【0051】
次いで、CPU71により、表示プログラムが実行され、モニタ7により表示されているXY断面画像、XZ断面画像およびYZ断面画像上にそれぞれ3DMask10が合成される(ステップSB6)。そして、CPU71により、
図11に示すように、各断面画像において、3DMask10が設定されている領域と、3DMask10が設定されていない領域と、3DMask10に重複する細胞Sと、3DMask10に重複しない細胞Sとがそれぞれ区別可能に色分けされて表示される(ステップSB7)。
【0052】
また、CPU71により、計測プログラムが実行され、3DMask10と重複する細胞Sの計測結果、例えば細胞数等が計測されてモニタ7に表示される(ステップSB8)。また、
図16に示すように、3DMask10と重複する細胞Sの核(死んでいる細胞Sの核。)のみがグラフに表示されたり、3DMask10と重複する細胞Sの核(死んでいる細胞Sの核。)と重複しない細胞S(生きている細胞Sの核。)の核とが区別可能に色分けされてグラフに表示されたりすることとしてもよい。
図16において、縦軸は細胞Sの核のサイズ(長軸長、Length)を示し、横軸は細胞Sの核の輝度値(Intensity)を示している。また、
図16において、紙面右上のグラフは3DMask10と重複する細胞Sの核(死んでいる細胞Sの核。)のみを表示したものであり、紙面右下のグラフは3DMask10と重複する細胞Sの核(死んでいる細胞Sの核。)と重複しない細胞S(生きている細胞Sの核。)の核とを色分けして表示したものである。
【0053】
ここで、スフェロイドWは形状が必ずしも真球ではないため、例えば、スフェロイドWの重心を基準に周方向の全域に亘って重心から径方向に一定の領域内を3DMaskとして設定したのでは、その3DMaskに重複する細胞SごとにスフェロイドWの外接面Pからの距離にばらつきが生じることになる。
【0054】
これに対し、本実施形態に係る観察システム1によれば、スフェロイドWの3次元形状の外接面Pを基準として、外接面Pの全域に亘って外接面Pから内側に向かって径方向の距離が一定の3DMask10を設定し、3DMask10と重複する細胞Sを識別することで、外接面Pから一定の距離に存在する細胞Sをそれ以外の位置に存在する細胞Sと区別することができる。したがって、3次元的な構造を有するスフェロイドW内の一定の領域に存在する細胞Sを精度よく解析することができる。
【0055】
これにより、例えば、スフェロイドWに対して外部に薬剤を投与した場合は、その薬剤がスフェロイドWの内側に向かって浸潤していくことから、スフェロイドWの外接面Pから一定の距離に存在する細胞Sに対する薬剤の効果を、それ以外の位置に存在する細胞Sに対する薬剤の効果と区別して正しく評価することができる。
【0056】
本実施形態においては、ユーザが3DMask10の厚さのみを指定し、CPU71が、スフェロイドWの外接面Pからユーザが指定する厚さの分だけ内側に広がる3DMask10を設定する場合を例示して説明したが、これに代えて、ユーザが、
図17に示すように、3DMask10の厚さに加えて、3DMask10を設定しようとするスフェロイドWの外接面Pからの径方向の距離(Distance。以下、本変形例において3DMask10の距離という。)を指定し、CPU71が、ユーザが指定する厚さと距離に従って3DMask10を設定することとしてもよい。
【0057】
この場合、入力部11が厚さ指定部および距離指定部として機能することとすればよい。そして、
図18のフローチャートに示すように、ユーザが入力部11により距離と厚さを指定すると(ステップSB1´)、CPU71により、ユーザが指定した距離と厚さに従って、
図19に示すように、スフェロイドWの外接面Pの全域に亘って、外接面Pからその距離の分だけ内側にずらした位置にその厚さの分だけ内側に広がる3DMask10が設定されることとすればよい(ステップSB2)。
【0058】
ステップSB3〜SB8については本実施形態と同様である。これにより、CPU71によって、
図20に示すように、設定した3DMask10と重複する細胞S、すなわち、3DMask10内に核の重心が含まれる細胞Sが抽出される(ステップSB4)。そして、
図21に示すように、CPU71によって、各断面画像において、3DMask10が設定されている領域と、3DMask10が設定されていない領域と、3DMask10に重複する細胞Sと、3DMask10に重複しない細胞Sとがそれぞれ区別可能に色分けされて表示される(ステップSB7)。
【0059】
このようにすることで、ユーザが指定する径方向の所望の位置に所望の厚さの3DMask10を設定して、その3DMask10内に存在する細胞Sを選択的に解析することができる。例えば、3DMask10の厚さを細胞S1つ分の大きさに合わせて設定し、その厚さは一定のままで3DMask10の大きさを徐々に小さくして位置をずらしていくことで、スフェロイドWの外接面Pから内側に向かってどの深さの層の細胞Sまで薬剤の効果があるかが分かる。つまり、薬剤の効果がある細胞Sの層と薬剤の効果がない細胞Sの層との境目が分かる。
【0060】
これにより、例えば、抗がん剤をスフェロイドWの外部から投与した場合にどの層まで細胞Sが死滅したかを正しく評価することができる。また、薬や化粧品等を皮膚に塗ったような場合に、どの層の細胞Sまで悪い影響を与えてしまうかなど、細胞Sに対する毒性を正しく評価して安全性を知ることもできる。
【0061】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る観察システムについて説明する。
本実施形態に係る観察システム1は、
図22に示すように、個々の細胞Sを観察対象として、細胞Sの核Nの外接面Rの外側に3DMask10を設定する点で第1実施形態と異なる。
以下、第1実施形態に係る観察システム1と構成を共通する箇所には、同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
CPU71は、認識プログラムの実行により、3次元画像上の個々の細胞SやミトコンドリアM等の小器官(細胞構成要素)に対して認識処理を行うようになっている。また、CPU71は、認識した個々の細胞Sおよび小器官をそれぞれ互いに異なるラベルを付して特定し、ラベル画像やテーブルを作成するようになっている。
【0063】
CPU71は、3DMask生成プログラムの実行により、認識した細胞Sの核Nの3次元形状における外接面Rの全域に亘って、外接面Rからの径方向の距離が一定で、かつ、外接面Rに形状が相似する3DMask(相似領域)10を細胞質C内に設定するようになっている。具体的には、CPU71は、入力部11によりユーザが指定した3DMask10の径方向の厚さに従って、細胞質C内において、核Nの外接面Rの全域に亘って外接面Rからその厚さの分だけ外側に広がる3DMask10を設定するようになっている。
【0064】
また、CPU71は、計測プログラムの実行により、設定した3DMask10内に含まれるミトコンドリアM等の小器官を識別して、該当する小器官を抽出するようになっている。例えば、CPU71は、3DMask10内に重心が含まれる小器官を抽出することとしてもよい。また、CPU71は、抽出した小器官のデータ(情報)を作成するようになっている。小器官のデータとしては、例えば蛍光強度などである。
【0065】
また、CPU71は、表示プログラムの実行により、モニタ7により表示されている各断面画像上に、3DMask10と3DMask内に含まれるミトコンドリアM等の小器官とを重ね合わせて表示させるとともに、3DMask10内に含まれるミトコンドリアM等の小器官と3DMask10外に含まれるミトコンドリアM等の小器官とを色分けにより区別可能に表示させるようになっている。また、CPU71は、作成したミトコンドリアM等の小器官のデータ、例えば蛍光輝度等を示すヒストグラムやスキャッタグラム等のグラフをモニタ7に各断面画像と並列に表示させるようになっている。
【0066】
入力部11は、3DMask10の厚さとして、CPU71により設定しようとする3DMask10における細胞Sの核Nの径方向に沿う方向の厚さ(以下、本実施形態において3DMask10の厚さという。)をユーザが指定することができるようになっている。3DMask10の厚さは、例えば、ピクセル数や距離で示すこととしてもよい。
【0067】
このように構成された観察システム1の作用について説明する。
本実施形態に係る観察システム1による細胞Sの3次元画像の取得については第1実施形態と同様であるので説明を省略し、所望の細胞Sを観察する場合について説明する。
【0068】
まず、CPU71により、表示プログラムが実行され、細胞Sの3次元画像を構成するXY断面画像、XZ断面画像およびYZ断面画像とグラフとが相互に対応付けられてモニタ7に並列に表示される。
【0069】
次いで、第1実施形態と同様に、CPU71により、認識プログラムが実行されて、3次元画像上の個々の細胞Sの核NとミトコンドリアM等の小器官が認識されてそれぞれ互いに異なるラベルを付されて特定され、ラベル画像とテーブルが作成される。
【0070】
続いて、3DMask生成プログラムが実行され、
図23のフローチャートに示すように、ユーザが、入力部11により、細胞質C内に納まるような3DMask10の厚さを指定すると(ステップSB1)、CPU71により、ユーザが指定した厚さに従って、
図22に示すように、細胞Sの核Nの外接面Rの全域に亘って外接面Rからその厚さの分だけ外側に広がる3DMask10が細胞質C内に設定される(ステップSB2)。
【0071】
次いで、CPU71により、計測プログラムが実行され、ディスク69に記憶されているラベル画像と細胞Sおよび小器官のテーブルにおいて、ラベルが付されている全てのミトコンドリアM等の小器官の検索が開始される(ステップSC3)。そして、設定した3DMask10と重複するミトコンドリアM等の小器官が抽出される(ステップSC4)。3DMask10と重複する全てのミトコンドリアM等の小器官が抽出されると、検索が終了する(ステップSC5)。
【0072】
次いで、CPU71により、表示プログラムが実行され、モニタ7により表示されているXY断面画像、XZ断面画像およびYZ断面画像上にそれぞれ3DMask10が合成され(ステップSB6)、各断面画像において、3DMask10が設定されている領域と、3DMask10が設定されていない領域と、3DMask10に重複するミトコンドリアM等の小器官と、3DMask10に重複しないミトコンドリアM等の小器官とがそれぞれ区別可能に色分けされて表示される(ステップSB7)。
【0073】
また、CPU71により、計測プログラムが実行され、3DMask10と重複するミトコンドリアM等の小器官の計測結果、例えば蛍光輝度等が抽出されてモニタ7に表示される(ステップSB8)。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る観察システム1によれば、個々の細胞S内の核Nを含まない一定の領域に存在するミトコンドリアM等の小器官を選択的に精度よく解析することができる。例えば、細胞Sの核Nの外側近辺における一定の距離内に存在するミトコンドリアM等の小器官の状態を計測することができる。
【0075】
本実施形態においては、第1実施形態の変形例と同様にして、ユーザが細胞Sの核Nを基準とする3DMask10の厚さと径方向の距離を指定し、CPU71が、ユーザが指定する厚さと径方向の距離に従って、細胞質C内において、核Nの外接面Rの全域に亘って外接面Rからその距離の分だけ外側にずらした位置にその厚さの分だけ外側に広がる3DMask10を設定することとしてもよい。
【0076】
また、第1実施形態と第2実施形態とに分けて説明したが、例えば、ユーザが、第1実施形態のようにスフェロイドWを観察対象とするか、第2実施形態のように個々の細胞Sの核Nを観察対象とするかを選択して、ユーザが選択した観察対象について、第1実施形態または第2実施形態と同様の処理を切り替えて行うこととしてもよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の各実施形態に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。