特許第6971760号(P6971760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6971760-撮像光学系及びそれを有する撮像装置 図000005
  • 特許6971760-撮像光学系及びそれを有する撮像装置 図000006
  • 特許6971760-撮像光学系及びそれを有する撮像装置 図000007
  • 特許6971760-撮像光学系及びそれを有する撮像装置 図000008
  • 特許6971760-撮像光学系及びそれを有する撮像装置 図000009
  • 特許6971760-撮像光学系及びそれを有する撮像装置 図000010
  • 特許6971760-撮像光学系及びそれを有する撮像装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971760
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】撮像光学系及びそれを有する撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/02 20060101AFI20211111BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   G02B13/02
   G02B13/18
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-196646(P2017-196646)
(22)【出願日】2017年10月10日
(65)【公開番号】特開2018-87965(P2018-87965A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2020年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2016-225810(P2016-225810)
(32)【優先日】2016年11月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】森 健太朗
【審査官】 森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−97212(JP,A)
【文献】 特開2015−96915(JP,A)
【文献】 特開2016−126086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、開口絞り、第3レンズ群より構成され、フォーカシングに際して前記第2レンズ群が移動して前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間隔および前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の間の間隔が変化する撮像光学系において、
前記第1レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1aレンズ要素、前記第1aレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された負の屈折力の第1bレンズ要素、前記第1bレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された正の屈折力の第1cレンズ要素より構成され、
前記第1aレンズ要素、前記第1bレンズ要素、前記第1cレンズ要素はいずれも空気間隔を有さず、
前記第1bレンズ要素の焦点距離をf1b、全系の焦点距離をf、前記第1aレンズ要素と前記第1bレンズ要素との間隔をd1a、前記第1aレンズ要素の焦点距離をf1aとするとき、
−0.65<f1b/f<−0.05
0.43<d1a/f1a<0.80
なる条件式を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項2】
前記第1bレンズ要素と前記第1cレンズ要素との間隔をd1b、前記第1bレンズ要素の焦点距離をf1bとするとき、
0.07<d1b/|f1b|<0.35
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項3】
前記第1bレンズ要素は回折光学部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像光学系。
【請求項4】
前記第1aレンズ要素の像側の面は非球面形状であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項5】
前記第1bレンズ要素は正レンズと負レンズが接合された接合レンズからなることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項6】
前記負レンズは両凹形状であることを特徴とする請求項に記載の撮像光学系。
【請求項7】
前記負レンズの物体側の面の曲率半径をra、前記負レンズの像側の面の曲率半径をrbとするとき、
−0.20<(ra+rb)/(ra−rb)<0.20
なる条件式を満足することを特徴とする請求項に記載の撮像光学系。
【請求項8】
無限遠から至近へのフォーカシングに際し、前記第2レンズ群は像側へ移動することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項9】
前記撮像光学系が無限遠に合焦している時において、前記第1cレンズ要素と前記第2レンズ群との間隔をd1c、前記第1cレンズ要素の焦点距離をf1cとするとき、
0.12<d1c/f1c<0.45
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項10】
前記第1bレンズ要素の最も物体側のレンズ面の有効径をea1bとするとき、
10.4<f/ea1b<16.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項11】
前記第2レンズ群の最も物体側のレンズ面の有効径をea2とするとき、
17.0<f/ea2<24.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項12】
前記第1bレンズ要素は回折光学部を有し、前記回折光学部における1次回折光の焦点距離をfC2とするとき、
5.0<fC2/f<16.5
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項13】
.20<f1a/f<0.60
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項14】
前記第1cレンズ要素の焦点距離をf1cとするとき、
0.10<f1c/f<0.30
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項15】
物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、開口絞り、第3レンズ群より構成され、フォーカシングに際して前記第2レンズ群が移動して前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間隔および前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の間の間隔が変化する撮像光学系において、
前記第1レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1aレンズ要素、前記第1aレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された負の屈折力の第1bレンズ要素、前記第1bレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された正の屈折力の第1cレンズ要素より構成され、
前記第1aレンズ要素、前記第1bレンズ要素、前記第1cレンズ要素はいずれも空気間隔を有さず、
前記第1bレンズ要素の焦点距離をf1b、全系の焦点距離をf、前記第1bレンズ要素と前記第1cレンズ要素との間隔をd1b、前記第1bレンズ要素の焦点距離をf1bとするとき、
−0.65<f1b/f<−0.05
0.07<d1b/|f1b|<0.35
なる条件式を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項16】
物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、開口絞り、第3レンズ群より構成され、フォーカシングに際して前記第2レンズ群が移動して前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間隔および前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の間の間隔が変化する撮像光学系において、
前記第1レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1aレンズ要素、前記第1aレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された負の屈折力の第1bレンズ要素、前記第1bレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された正の屈折力の第1cレンズ要素より構成され、
前記第1aレンズ要素、前記第1bレンズ要素、前記第1cレンズ要素はいずれも空気間隔を有さず、
前記第1bレンズ要素は回折光学部を有し、
前記第1bレンズ要素の焦点距離をf1b、全系の焦点距離をfとするとき、
−0.65<f1b/f<−0.05
なる条件式を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項17】
物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、開口絞り、第3レンズ群より構成され、フォーカシングに際して前記第2レンズ群が移動して前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間隔および前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の間の間隔が変化する撮像光学系において、
前記第1レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1aレンズ要素、前記第1aレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された負の屈折力の第1bレンズ要素、前記第1bレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された正の屈折力の第1cレンズ要素より構成され、
前記第1aレンズ要素、前記第1bレンズ要素、前記第1cレンズ要素はいずれも空気間隔を有さず、
前記第1bレンズ要素の焦点距離をf1b、全系の焦点距離をf、前記第1cレンズ要素の焦点距離をf1cとするとき、
−0.65<f1b/f<−0.05
0.10<f1c/f<0.30
なる条件式を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載の撮像光学系と該撮像光学系によって形成される像を受光する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像光学系に関し、例えばデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視用カメラ、TVカメラ、銀塩フィルム用カメラ等の撮像装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長焦点距離の撮像光学系として、物体側から像側へ順に、正の屈折力の前方レンズ群と、負の屈折力の後方レンズ群より成る、所謂、望遠タイプの撮像光学系(望遠レンズ)が知られている。
【0003】
一般的に焦点距離の長い望遠タイプの撮像光学系では、焦点距離が延びる(長くなる)にしたがって光学系全体が大型化し、高重量になってくる。特に開口絞りより物体側に配置された前方レンズ群の重量の増加が著しい。また諸収差のうち、特に球面収差や色収差のうち軸上色収差が多く発生してくる。この色収差を、蛍石等の異常部分分散性を持った低分散材料を用いて色消しを行った撮像光学系が種々提案されている。
【0004】
撮像光学系の色収差を含めた諸収差を良好に補正しつつ、レンズ重量を軽減する方法として、撮像光学系の一部に、回折作用を有する回折光学部を用いる方法が知られている。回折作用を利用し、従来収差補正に必要であった前方レンズ群のレンズ枚数を削減しつつ、前方レンズ群を蛍石等の異常部分分散性を持った低分散材料よりも屈折率の高い硝材で構成し全系の小型、軽量化を図った撮像光学系が知られている(特許文献1,2)。
【0005】
特許文献1では、正の屈折力の前方レンズ群に回折光学部(回折面)を設けた焦点距離600mm前後の望遠レンズを開示している。特許文献2では、正の屈折力の前方レンズ群に回折光学部を設け、前方レンズ群を構成するレンズの材料の比重を適切に設定することで全系の軽量化を図った焦点距離400mm前後の望遠レンズを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−88427号公報
【特許文献2】特開2014−56195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
望遠タイプの撮像光学系は一般に、焦点距離が長くなるにつれて全系が大型化し重量が増加する。このため、望遠タイプの撮像光学系はレンズ系全体の小型化及び重量の低減を図ることが重要になってくる。さらに、望遠タイプの撮像光学系は一般に、焦点距離が長くなるにつれて色収差等の諸収差が多く発生してくる。
【0008】
一般に望遠タイプの撮像光学系は、正の屈折力の前方レンズ群が大型化しやすいため、全系の小型化及び軽量化を図りつつ、色収差を良好に補正し、高い光学性能を得るためには前方レンズ群のレンズ構成を適切に設定することが重要になってくる。前方レンズ群のレンズ構成が不適切であると、全系が大型化し、かつ諸収差が増大し、高い光学性能を得るのが困難になる。
【0009】
本発明は、全系の小型化及びレンズ重量の軽減化を図りつつ、高い光学性能が容易に得られる撮像光学系の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の撮像光学系は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、開口絞り、第3レンズ群より構成され、フォーカシングに際して前記第2レンズ群が移動して前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間隔および前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の間の間隔が変化する撮像光学系において、
前記第1レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1aレンズ要素、前記第1aレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された負の屈折力の第1bレンズ要素、前記第1bレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された正の屈折力の第1cレンズ要素より構成され、前記第1aレンズ要素、前記第1bレンズ要素、前記第1cレンズ要素はいずれも空気間隔を有さず、前記第1bレンズ要素の焦点距離をf1b、全系の焦点距離をf、前記第1aレンズ要素と前記第1bレンズ要素との間隔をd1a、前記第1aレンズ要素の焦点距離をf1aとするとき、
−0.65<f1b/f<−0.05
0.43<d1a/f1a<0.80
なる条件式を満足することを特徴としている。
本発明の他の撮像光学系は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、開口絞り、第3レンズ群より構成され、フォーカシングに際して前記第2レンズ群が移動して前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間隔および前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の間の間隔が変化する撮像光学系において、前記第1レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1aレンズ要素、前記第1aレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された負の屈折力の第1bレンズ要素、前記第1bレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された正の屈折力の第1cレンズ要素より構成され、前記第1aレンズ要素、前記第1bレンズ要素、前記第1cレンズ要素はいずれも空気間隔を有さず、前記第1bレンズ要素の焦点距離をf1b、全系の焦点距離をf、前記第1bレンズ要素と前記第1cレンズ要素との間隔をd1b、前記第1bレンズ要素の焦点距離をf1bとするとき、
−0.65<f1b/f<−0.05
0.07<d1b/|f1b|<0.35
なる条件式を満足することを特徴とする。
本発明の他の撮像光学系は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、開口絞り、第3レンズ群より構成され、フォーカシングに際して前記第2レンズ群が移動して前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間隔および前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の間の間隔が変化する撮像光学系において、前記第1レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1aレンズ要素、前記第1aレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された負の屈折力の第1bレンズ要素、前記第1bレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された正の屈折力の第1cレンズ要素より構成され、前記第1aレンズ要素、前記第1bレンズ要素、前記第1cレンズ要素はいずれも空気間隔を有さず、前記第1bレンズ要素は回折光学部を有し、前記第1bレンズ要素の焦点距離をf1b、全系の焦点距離をfとするとき、
−0.65<f1b/f<−0.05
なる条件式を満足することを特徴とする。
本発明の他の撮像光学系は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、開口絞り、第3レンズ群より構成され、フォーカシングに際して前記第2レンズ群が移動して前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間隔および前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の間の間隔が変化する撮像光学系において、前記第1レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1aレンズ要素、前記第1aレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された負の屈折力の第1bレンズ要素、前記第1bレンズ要素と空気間隔を隔てて配置された正の屈折力の第1cレンズ要素より構成され、前記第1aレンズ要素、前記第1bレンズ要素、前記第1cレンズ要素はいずれも空気間隔を有さず、前記第1bレンズ要素の焦点距離をf1b、全系の焦点距離をf、前記第1cレンズ要素の焦点距離をf1cとするとき、
−0.65<f1b/f<−0.05
0.10<f1c/f<0.30
なる条件式を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、全系の小型化及びレンズ重量の軽減化を図りつつ、高い光学性能が容易に得られる撮像光学系が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1のレンズ断面図
図2】実施例1の物体距離無限遠時における収差図
図3】実施例2のレンズ断面図
図4】実施例2の物体距離無限遠時における収差図
図5】実施例3のレンズ断面図
図6】実施例3の物体距離無限遠時における収差図
図7】本発明の撮像装置の要部概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。本発明の撮像光学系は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、開口絞り、第3レンズ群より構成される。フォーカシングに際して第2レンズ群が移動する。
【0014】
図1は本発明の実施例1の撮像光学系のレンズ断面図である。図2は本発明の実施例1の撮像光学系の縦収差図である。実施例1はFナンバー5.80、撮像画角3.18度の撮像光学系である。図3は本発明の実施例2の撮像光学系のレンズ断面図である。図4は本発明の実施例2の撮像光学系の縦収差図である。実施例2はFナンバー5.80、撮像画角3.18度の撮像光学系である。
【0015】
図5は本発明の実施例3の撮像光学系のレンズ断面図である。図6は本発明の実施例3の撮像光学系の縦収差図である。実施例3はFナンバー5.80、撮像画角3.18度の撮像光学系である。図7は本発明の撮像装置の要部概略図である。
【0016】
レンズ断面図において、左側が物体側、右側が像側である。L0は撮像光学系、L1は正の屈折力の第1レンズ群、L2は負の屈折力の第2レンズ群、L3は第3レンズ群である。L1aは正の屈折力の第1aレンズ要素、L1bは負の屈折力の第1bレンズ要素、L1cは正の屈折力の第1cレンズ要素である。ここでレンズ要素とは単一レンズ、又は複数のレンズを接合した接合レンズより構成されるレンズ系をいう。
【0017】
DOEは回折光学部(回折面)、SPは開口絞りである。IPはCCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面に相当する像面である。また、Gはローパスフィルター等の平行平板を表し、必要に応じて撮像面の前方に配置している。
【0018】
球面収差図において、FnoはFナンバーである。また実線のdはd線(波長587.6nm)、一点鎖線のgはg線(波長435.8nm)である。非点収差図で点線のΔMはd線におけるメリディオナル像面、実線のΔSはd線におけるサジタル像面である。歪曲収差図はd線について示している。倍率色収差図はg線について示している。ωは半画角(度)である。
【0019】
以下に、本発明の軽量かつ高画質が容易に得られる撮像光学系L0のレンズ構成について説明する。
【0020】
本発明の撮像光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、開口絞りSP、正または負の屈折力の第3レンズ群L3よりなる、所謂、望遠型のレンズ配置としている。これにより、全系のレンズ全長を短縮しつつ、良好な光学性能を得ている。また第1レンズ群L1は、1枚の正レンズからなる第1aレンズ要素L1a、正レンズと負レンズを接合した接合レンズからなる第1bレンズ要素L1b、正レンズからなる第1cレンズ要素L1cから構成されている。
【0021】
全系を軽量化するには、物体側のレンズ群のレンズ枚数を少なくしつつ、有効径を小径化することが重要である。最も物体側に配置された第1aレンズ要素L1aは1枚の正レンズよりなる。
【0022】
一般に望遠型の撮像光学系の前玉有効径はFナンバーにより決定され、撮像光学系の中で最も有効径の大きいレンズとなる。全系の軽量化のためには有効径の大きいレンズの枚数を少なくすることが重要であり、この構成は撮像光学系の軽量化に有効である。
【0023】
第1aレンズ要素L1aを1枚の正レンズより構成すると、色収差が発生しやすくなる。そこで第1bレンズ要素L1bは負の屈折力で構成している。この構成により、第1aレンズ要素L1aより発生する色収差を効果的に補正している。
【0024】
また、第1cレンズ要素L1cは正の屈折力としている。第1bレンズ要素L1bは負の屈折力(パワー)であり、第2レンズ群L2を小径化し軽量化を図るには軸上光束を収斂させる必要がある。この構成は撮像光学系の軽量化に有効である。また、前記第1bレンズ要素L1bの焦点距離をf1b、全系の焦点距離をfとする。このとき、
−0.65<f1b/f<−0.05 ・・・(1)
なる条件式を満足する。
【0025】
条件式(1)は全系の軽量化を図りつつ、高画質を得るためのものである。条件式(1)の上限値を超えて第1bレンズ要素L1bの負の焦点距離が短くなりすぎると(負の焦点距離の絶対値が小さくなりすぎると)、球面収差や色収差等の諸収差が増加し高画質を得ることが困難になる。条件式(1)の下限値を超えて第1bレンズ要素L1bの負の焦点距離が長くなりすぎると(負の焦点距離の絶対値が大きくなりすぎると)、第1bレンズ要素L1bの有効径が大きくなり全系の軽量化が困難となる。
【0026】
各実施例では、以上の構成により、全系が軽量でかつ高画質を得ることが容易な撮像光学系を得ている。各実施例において好ましくは条件式(1)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
−0.45<f1b/f<−0.13 ・・・(1a)
更に好ましくは条件式(1a)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
−0.34<f1b/f<−0.17 ・・・(1b)
【0027】
各実施例において更に好ましくは、次に述べる条件のうち1つ以上を満足するのが良い。第1aレンズ要素L1aと第1bレンズ要素L1bの間隔をd1aとする。第1aレンズ要素L1aの焦点距離をf1aとする。第1bレンズ要素L1bと第1cレンズ要素L1cの間隔をd1bとする。無限遠合焦時における第1cレンズ要素L1cと第2レンズ群L2の間隔をd1cとする。第1cレンズ要素L1cの焦点距離をf1cとする。第1bレンズ要素L1bの最も物体側のレンズ面の有効径をea1bとする。第2レンズ群L2の最も物体側のレンズ面の有効径をea2とする。
【0028】
このとき次の条件式のうち1つ以上を満足するのが良い。
0.43<d1a/f1a<0.80 ・・・(2)
0.07<d1b/|f1b|<0.35 ・・・(3)
0.12<d1c/f1c<0.45 ・・・(4)
10.4<f/ea1b<16.0 ・・・(5)
17.0<f/ea2<24.0 ・・・(6)
【0029】
次に前述の各条件式の技術的意味について説明する。条件式(2)は全系の軽量化を図りつつ、高画質を得るためのものである。条件式(2)の上限値を超えて間隔d1aが広くなりすぎると、第1bレンズ要素L1bに入射する軸上光束の光軸からの入射高さが低くなりすぎ球面収差等の諸収差を補正することが困難となる。条件式(2)の下限値を超えて間隔d1aが狭くなりすぎると、物体側に位置するレンズを小径化するのが困難となり、全系の軽量化が困難となる。
【0030】
条件式(3)は高画質を得るためのものである。条件式(3)の上限値を超えて間隔d1aが広くなりすぎると、レンズ全長(第1レンズ面から像面までの長さ)が長くなりすぎるので良くない。条件式(3)の下限値を超えて間隔d1aが狭くなりすぎると、第1bレンズ要素L1bによる軸外光束の縮小作用を十分に活用するのが難しくなり、片絞りが顕著になる。ここで片絞りとは、軸外子午光束の主光線が上光線と下光線の中心位置と一致しないことをさす。片絞りになるとFナンバーを大きくしたとき、画面外の光量減少が顕著になり画質上良くない。
【0031】
条件式(4)は全系の軽量化を得るためのものである。条件式(4)の上限値を超えて間隔d1cが広くなりすぎると、レンズ全長が長くなりすぎるので良くない。条件式(4)の下限値を超えて間隔d1cが狭くなりすぎると、第2レンズ群L2を小径化するのが困難となり、全系の軽量化が困難となる。
【0032】
条件式(5)は全系の軽量化を図りつつ、高画質を得るためのものである。条件式(5)の上限値を超えて第1bレンズ要素L1bの最も物体側のレンズ面の有効径が小さくなりすぎると、第1bレンズ要素L1bによる色収差や球面収差、コマ収差等の収差補正作用が弱くなり、高画質を得ることが困難となる。条件式(5)の下限値を超えて第1bレンズ要素L1bの最も物体側のレンズ面の有効径が大きくなりすぎると、全系の軽量化が困難となる。
【0033】
条件式(6)は全系の軽量化を図りつつ、高画質を得るためのものである。条件式(6)の上限値を超えて第2レンズ群L2の最も物体側のレンズ面の有効径が小さくなりすぎると、第2レンズ群L2の色収差や球面収差等の収差補正作用が弱くなりすぎ高画質を得ることが困難となる。条件式(6)の下限値を超えて第2レンズ群L2の最も物体側のレンズ面の有効径が大きくなりすぎると全系の軽量化が困難となる。
【0034】
好ましくは条件式(2)乃至(6)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
0.45<d1a/f1a<0.65 ・・・(2a)
0.09<d1b/|f1b|<0.28 ・・・(3a)
0.17<d1c/f1c<0.37 ・・・(4a)
11.3<f/ea1b<15.0 ・・・(5a)
17.5<f/ea2<22.5 ・・・(6a)
【0035】
更に好ましくは条件式(2a)乃至(6a)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
0.46<d1a/f1a<0.55 ・・・(2b)
0.11<d1b/|f1b|<0.20 ・・・(3b)
0.19<d1c/f1c<0.30 ・・・(4b)
12.0<f/ea1b<14.0 ・・・(5b)
18.5<f/ea2<21.0 ・・・(6b)
【0036】
また、各実施例において第1bレンズ要素L1bの接合面に回折光学部(回折面)DOEを有するのが良い。第1bレンズ要素L1bに回折光学部を設定することで色収差を良好に補正することが容易となり、高画質化が容易になる。また、各実施例において、第1aレンズ要素L1aの像側のレンズ面を非球面形状とするのが良い。第1aレンズ要素L1aに非球面を設定することで球面収差やコマ収差を良好に補正でき高画質が容易に得られる。
【0037】
また、各実施例において第1bレンズ要素L1bは正レンズと負レンズから成ると良い。第1bレンズ要素L1bを2枚のレンズより構成することで全系の軽量化が容易になる。また、各実施例において無限遠から至近へのフォーカシングに際し、第2レンズ群L2を物体側から像側へ移動させるのが良い。これによれば開口絞りSPの有効径が小さくなり、光学系の軽量化が容易に得られる。
【0038】
さらに、各実施例において第1bレンズ要素L1bの接合面に回折光学素子DOEを設け、回折光学部DOEの光路差関数による1次回折光の基準波長(d線)での焦点距離をfC2とするとき以下の条件式を満足するのが良い。
5.00<fC2/f<16.50 ・・・(7)
ここで焦点距離fC2は回折光学部DOEにおける回折による集光作用の焦点距離である。fC2は光路差関数の位相係数C2を用いて以下の式で表される。
fC2=−1/(2×C2)
条件式(7)は高画質化を図るためのものである。条件式(7)の上限値を超えてfC2が長くなりすぎると色収差を容易に補正することが困難となる。条件式(7)の下限値を超えてfC2が短くなりすぎると回折フレアが多く発生しやすくなり良くない。
【0039】
好ましくは条件式(7)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
7.00<fC2/f<14.00 ・・・(7a)
更に好ましくは条件式(7a)の範囲を次の如く設定するのが良い。
9.00<fC2/f<12.00 ・・・(7b)
【0040】
さらに、各実施例の光学系は以下の条件式(8)、(9)の少なくとも一方を満足することが好ましい。
0.20<f1a/f<0.60 ・・・(8)
0.10<f1c/f<0.30 ・・・(9)
【0041】
条件式(8)は第1aレンズ要素L1aの焦点距離に関する。条件式(8)の下限値を超えて焦点距離f1aが小さくなりすぎると、第1aレンズ要素L1aにおいて生じる収差を第1aレンズ要素L1aより像側に配置されたレンズで十分に補正することが困難となる。また、条件式(8)の上限値を超えて焦点距離f1aが大きくなりすぎると、第1bレンズ要素L1bを十分に小径化することが困難となる。
【0042】
条件式(9)は第1cレンズ要素L1cの焦点距離に関する。条件式(9)の下限値を超えて焦点距離f1cが小さくなると、球面収差や色収差等の諸収差が増大してしまう。条件式(9)の上限値を超えて焦点距離f1cが大きくなると、第2レンズ群L2を十分に小径化することが困難となる。
【0043】
好ましくは条件式(8)、(9)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
0.27<f1a/f<0.50 ・・・(8a)
0.13<f1c/f<0.30 ・・・(9b)
より好ましくは条件式(8)、(9)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
0.32<f1a/f<0.45 ・・・(8a)
0.15<f1c/f<0.25 ・・・(9b)
【0044】
さらに、第1bレンズ要素L1bは両凹形状である負レンズを含んで形成されていることが好ましい。これによって第1bレンズ要素L1bの焦点距離を適切な大きさにしつつ第1bレンズ要素L1bを小型に構成することができる。またこの場合、第1bレンズ要素L1bに含まれる両凹形状の負レンズは以下の条件式(10)を満足することが好ましい。
−0.20<(ra+rb)/(ra−rb)<0.20 ・・・(10)
【0045】
条件式(10)において、raは第1bレンズ要素L1bに含まれる両凹形状の負レンズの物体側のレンズ面の曲率半径である。rbは第1bレンズ要素L1bに含まれる両凹形状の負レンズの像側のレンズ面の曲率半径である。条件式(10)は第1bレンズ要素L1bに含まれる両凹形状の負レンズのシェープファクタに関する。式(10)の上限値または下限値を超える場合、第1bレンズ要素L1bの焦点距離を適切な長さにしつつ第1bレンズ要素L1bを小型に構成することが困難となる。
【0046】
好ましくは条件式(10)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
−0.15<(ra+rb)/(ra−rb)<0.15 ・・・(10a)
【0047】
より好ましくは条件式(10)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
−0.12<(ra+rb)/(ra−rb)<0.12 ・・・(10b)
【0048】
各実施例は、いずれかのレンズもしくはレンズ要素またはセンサを光軸と垂直方向の成分を有するように移動させて像ぶれを補正するようにしても良い。また、歪曲収差については、各種公知の手法を適用し電子的に補正しても良い。
【0049】
次に、各実施例における各レンズ群のレンズ構成に関して説明する。
[実施例1]
実施例1は焦点距離780.00mm、Fナンバー5.80程度の撮像光学系である。第1レンズ群L1は物体側から像側へ順に配置された正の屈折力の第1aレンズ要素L1a、負の屈折力の第1bレンズ要素L1b、正の屈折力の第1cレンズ要素L1cにより構成されている。
【0050】
第1aレンズ要素L1aは両凸形状の正レンズからなり、像側のレンズ面は非球面形状である。この非球面により球面収差等の諸収差を良好に補正している。第1bレンズ要素L1bは両凸形状の正レンズと両凹形状の負レンズを接合した接合レンズより構成されている。接合レンズの接合面は回折光学部(回折面)である。これにより色収差を良好に補正している。
【0051】
第1cレンズ要素L1cは両凸形状の正レンズより構成されている。これにより後述する第2レンズ群L2、第3レンズ群L3の小径化を図っている。負の屈折力の第2レンズ群L2は両凸形状の正レンズと両凹形状の負レンズを接合した接合レンズより構成されている。無限遠から至近へのフォーカシングに際し、第2レンズ群L2は物体側から像側へ移動する。
【0052】
第3レンズ群L3は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズと両凸形状の正レンズを接合した接合レンズ、両凸形状の正レンズと両凹形状の負レンズを接合した接合レンズ、両凹形状の負レンズで構成されている。
【0053】
更に、両凸形状の正レンズと両凹形状の負レンズを接合した接合レンズ、両凸形状の正レンズと像側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズを接合した接合レンズ、両凹形状の負レンズより構成されている。更に、両凸形状の正レンズと像側に凸面を向けたメニスカスレンズ形状の負レンズを接合した接合レンズで構成されている。これにより像面湾曲や倍率色収差等を良好に補正している。
【0054】
[実施例2]
実施例2は焦点距離780.00mm、Fナンバー5.80程度の撮像光学系である。第1レンズ群L1は物体側から像側へ順に配置された正の屈折力の第1aレンズ要素L1a、負の屈折力の第1bレンズ要素L1b、正の屈折力の第1cレンズ要素L1cにより構成されている。
【0055】
第1aレンズ要素L1aは両凸形状の正レンズからなり、像側のレンズ面は非球面形状である。この非球面により球面収差等の諸収差を良好に補正している。第1bレンズ要素L1bは両凹形状の負レンズと両凸形状の正レンズを接合した接合レンズより構成されている。接合レンズの接合面は回折光学部(回折面)である。これにより色収差を良好に補正している。
【0056】
第1cレンズ要素L1cは両凸形状の正レンズより構成されている。これにより後述する第2レンズ群L2、第3レンズ群L3の小径化を図っている。第2レンズ群L2のレンズ構成は実施例1と同じである。第3レンズ群L3は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズと両凸形状の正レンズを接合した接合レンズ、両凸形状の正レンズと両凹形状の負レンズを接合した接合レンズ、両凹形状の負レンズで構成されている。
【0057】
更に両凸形状の正レンズと像側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズを接合した接合レンズ、像側へ凸面を向けたメニスカス形状の正レンズと像側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズを接合した接合レンズ、両凹形状の負レンズで構成されている。更に両凸形状の正レンズと両凹形状の負レンズを接合した接合レンズで構成されている。これにより像面湾曲や倍率色収差等を良好に補正している。
【0058】
[実施例3]
実施例3は焦点距離780.00mm、Fナンバー5.80程度の撮像光学系である。第1レンズ群L1のレンズ構成は実施例1と同じである。負の屈折力の第2レンズ群L2は両凹形状の負レンズより構成されている。無限遠から至近へのフォーカシングに際し、第2レンズ群L2は物体側から像側へ移動する。第3レンズ群L3のレンズ構成は、実施例1と同じである。
【0059】
次に本発明の撮像光学系を撮像装置(カメラシステム)に適用した実施例を説明する。
図7は一眼レフカメラの要部概略図である。図7において、10は実施例1乃至3のいずれか1つの撮像光学系1を有する撮像レンズである。撮影光学系1は保持部材である鏡筒2に保持されている。20はカメラ本体である。カメラ本体は撮像レンズ10からの光束を上方に反射するクイックリターンミラー3、撮像レンズ10の像形成位置に配置された焦点板4、焦点板4に形成された逆像を正立像に変換するペンタダハプリズム5を有している。更に、その正立像を観察するための接眼レンズ6等によって構成されている。
【0060】
7は感光面であり、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(光電変換素子)や銀塩フィルムが配置される。撮影時にはクイックリターンミラー3が光路から退避して、感光面7上に撮像レンズ10によって像が形成される。撮像素子7は撮像光学系1によって形成される像を受光する。
【0061】
本発明の撮像装置としては、クイックリターンミラー3のないミラーレスの一眼レフカメラにも同様に適用できる。
【0062】
各実施例における回折光学部DOEの回折格子の形状は、その2i次項の位相係数をC2iとした時、光軸からの距離Hにおける位相φ(H)は次式で表される。ただしmは回折次数、λは基準波長である。
【0063】
【数1】
一般に、レンズ、プリズム等の屈折光学材料のアッベ数(分散値)νは、d、C、F線の各波長における屈折力をN、N、Nとした時、次式で表される。
【0064】
ν=(N−1)/(N−N)>0 ・・・(b)
一方、回折光学部のアッベ数νはd、C、F線の各波長をλ、λ、λとした時
ν=λ/(λ−λ) ・・・(c)
と表され、ν=−3.45となる。
【0065】
これにより、任意波長における分散性は、屈折光学素子と逆作用を有する。また、回折光学部の基準波長における近軸的な一時回折光(m=1)の屈折力φは、回折光学部の位相を表す前式(a)から2次項の係数をCとしたとき、φ=−2×Cと表される。さらに、任意波長をλ、基準波長をλとしたとき、任意波長の基準波長に対する屈折力変化は、次式となる。
【0066】
φ’=(λ/λ)×(−2×C) ・・・(d)
これにより、回折光学部の特徴として、前式(a)の位相係数Cを変化させることにより、弱い近軸屈折力変化で大きな分散性が得られる。これは色収差以外の諸収差に大きな影響を与えることなく、色収差の補正を行うことを意味している。また位相係数C以降の高次数の係数については、回折光学部の光線入射高の変化に対する屈折力変化は非球面と類似した効果を得ることができる。
【0067】
それと同時に、光線入射高の変化に応じて基準波長に対し任意波長の屈折力変化を与えることができる。このため、倍率色収差の補正に有効である。さらに本発明の撮像光学系の第1レンズ群L1のように、軸上光線がレンズ面を通過する際、光軸からの高さが高い位置を通過する面に回折光学部を配置すれば、軸上色収差の補正にも有効である。
【0068】
以下に本発明の実施例1乃至3に対応する数値データ1乃至3を示す。各数値データにおいて、iは物体側からの面の順序を示し、rは物体側より第i番目の面の曲率半径、dは物体側より第i番目と第i+1番目の間隔、ndとνdは第i番目の光学部材の屈折率とアッベ数である。無限遠に焦点を合わせたときの全系の焦点距離、Fナンバー、半画角(度)、像高、レンズ全長、バックフォーカスを示す。
【0069】
バックフォーカスBFは最終レンズ面から像面までの空気換算距離である。レンズ全長は第1レンズ面から最終レンズ面までの距離にバックフォーカスを加えた値である。回折光学部(回折面)は前述(a)式の位相関数の位相係数を与えることで表している。非球面形状は光軸方向にX軸、光軸と垂直方向にH軸、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径、kを離心率、A4、A6、A8、A10、A12を各々非球面係数としたとき、
【0070】
【数2】
なる式で表している。例えば「e−z」の表示は「10-Z」を意味している。前述の各条件式と数値データにおける諸数値との関係を表1に示す。
【0071】
[数値データ1]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 155.316 19.75 1.48749 70.2 134.48
2* -11936.522 149.66 133.10
3 141.692 11.62 1.43875 94.7 63.51
4(回折) -129.418 2.95 1.85478 24.8 61.55
5 138.580 25.24 59.24
6 148.568 6.77 1.80810 22.8 57.68
7 -430.938 36.30 57.05
8 376.152 3.64 1.80810 22.8 38.04
9 -341.903 2.41 1.91082 35.3 37.19
10 81.473 37.49 35.74
11(絞り) ∞ 5.00 30.10
12 59.113 1.51 1.95375 32.3 29.02
13 32.603 5.41 1.48749 70.2 28.08
14 -132.255 7.19 27.87
15 144.910 2.87 1.85478 24.8 25.20
16 -73.159 1.31 1.76385 48.5 24.89
17 60.985 1.97 23.89
18 -103.864 1.26 1.76385 48.5 23.87
19 101.074 3.51 23.85
20 44.068 6.16 1.65412 39.7 24.93
21 -221.182 1.26 1.59522 67.7 25.11
22 43.719 5.06 25.26
23 111.425 7.42 1.65412 39.7 27.09
24 -32.515 1.36 1.43875 94.9 27.68
25 -71.229 0.32 27.85
26 -65.657 1.36 1.49700 81.5 27.83
27 91.771 0.10 28.15
28 70.818 6.82 1.65412 39.7 28.27
29 -36.701 1.38 1.80810 22.8 28.28
30 -1117.363 66.61 28.59
31 ∞ 2.20 1.51633 64.1 50.00
32 ∞ 60.71 50.00
像面 ∞
【0072】
非球面データ
第2面
K = 0.00000e+000 A 4= 1.33317e-008 A 6=-2.16396e-013 A 8= 1.24478e-017 A10=-7.29012e-022

第4面(回折面)
C2=-6.17761e-005 C4= 2.95632e-009 C6= 1.29493e-012 C8=-1.75952e-015
C10= 5.04522e-019

各種データ

焦点距離 780.00
Fナンバー 5.80
半画角(度) 1.59
像高 21.64
レンズ全長 485.85
BF 128.77

入射瞳位置 1529.20
射出瞳位置 -51.23
前側主点位置-1070.79
後側主点位置 -651.23

レンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 272.27 215.99 154.27 -159.51
2 8 -108.04 6.05 4.02 0.72
3 12 1845.10 56.25 68.75 25.59
1a 1 314.68 19.75 0.17 -13.11
1b 3 -168.62 14.56 14.30 4.24
1c 6 137.43 6.77 0.97 -2.80

単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 314.68
2 3 156.20
3 4 -78.66
4 6 137.43
5 8 222.14
6 9 -72.04
7 12 -78.41
8 13 54.24
9 15 57.22
10 16 -43.36
11 18 -66.88
12 20 56.70
13 21 -61.22
14 23 39.28
15 24 -137.82
16 26 -76.79
17 28 37.91
18 29 -46.99
【0073】
[数値データ2]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 155.647 21.59 1.48749 70.2 134.48
2* -1114.571 139.48 133.04
3 -161.207 2.84 1.85478 24.8 63.51
4(回折) 127.094 11.14 1.43875 94.7 62.79
5 -156.440 29.50 62.99
6 228.731 6.40 1.80810 22.8 59.19
7 -289.712 34.69 58.66
8 228.801 4.36 1.80810 22.8 40.00
9 -379.033 2.40 1.91082 35.3 38.94
10 73.684 37.82 37.21
11(絞り) ∞ 5.00 31.66
12 55.564 1.58 1.95375 32.3 30.54
13 32.399 6.06 1.48749 70.2 29.48
14 -207.155 3.88 29.16
15 154.516 4.01 1.85478 24.8 27.61
16 -66.541 1.36 1.76385 48.5 27.12
17 69.812 3.00 25.98
18 -106.915 1.29 1.76385 48.5 25.77
19 100.460 7.56 25.73
20 66.635 6.22 1.65412 39.7 27.37
21 -54.067 1.30 1.59522 67.7 27.67
22 -615.289 10.52 27.92
23 -256.386 4.46 1.65412 39.7 29.04
24 -38.652 1.38 1.43875 94.9 29.26
25 -74.872 2.52 29.27
26 -94.269 1.39 1.49700 81.5 28.79
27 44.161 0.42 28.75
28 50.666 7.24 1.65412 39.7 28.78
29 -34.245 1.40 1.80810 22.8 28.71
30 784.994 62.87 28.93
31 ∞ 2.20 1.51633 64.1 50.00
32 ∞ 60.71 50.00
像面 ∞
【0074】
非球面データ
第2面
K = 0.00000e+000 A 4= 2.09277e-008 A 6=-4.70861e-013 A 8= 1.93144e-017 A10=-8.69953e-022

第4面(回折面)
C2=-5.93393e-005 C4= 3.90393e-010 C6= 1.88978e-012 C8=-6.92242e-016
C10=-5.02508e-021

各種データ

焦点距離 780.00
Fナンバー 5.80
半画角(度) 1.59
像高 21.64
レンズ全長 485.85
BF 125.03

入射瞳位置 1446.52
射出瞳位置 -54.97
前側主点位置-1153.47
後側主点位置 -654.97

レンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 272.72 210.96 173.29 -157.32
2 8 -111.83 6.75 5.14 1.41
3 12 3012.50 65.60 -45.25 -94.69
1a 1 281.73 21.59 1.79 -12.80
1b 3 -182.79 13.99 -3.89 -13.49
1c 6 159.05 6.40 1.57 -1.99

単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 281.73
2 3 -82.76
3 4 158.78
4 6 159.05
5 8 177.13
6 9 -67.56
7 12 -84.28
8 13 57.95
9 15 54.87
10 16 -44.41
11 18 -67.62
12 20 46.58
13 21 -99.67
14 23 69.02
15 24 -184.26
16 26 -60.31
17 28 32.33
18 29 -40.58
【0075】
[数値データ3]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 156.273 19.10 1.48749 70.2 134.48
2* -24883.763 151.56 133.26
3 135.673 11.87 1.43875 94.7 63.34
4(回折) -125.010 2.95 1.85478 24.8 61.36
5 132.968 20.35 59.01
6 140.658 5.93 1.80810 22.8 58.10
7 -461.544 37.23 57.68
8 -688.978 2.41 1.88300 40.8 38.71
9 125.930 40.18 37.75
10(絞り) ∞ 5.00 31.12
11 61.430 1.51 1.95375 32.3 29.95
12 32.808 5.81 1.48749 70.2 28.95
13 -110.302 1.15 28.74
14 187.739 3.10 1.85478 24.8 27.86
15 -71.920 1.31 1.76385 48.5 27.55
16 68.565 3.05 26.43
17 -113.322 1.26 1.76385 48.5 26.23
18 113.731 3.59 26.19
19 45.862 6.63 1.65412 39.7 26.94
20 -142.991 1.26 1.59522 67.7 26.35
21 45.848 6.33 25.75
22 117.974 7.03 1.65412 39.7 27.16
23 -36.165 1.36 1.43875 94.9 27.63
24 -88.833 4.25 27.73
25 -71.971 1.36 1.49700 81.5 27.36
26 61.745 0.11 27.65
27 62.183 7.70 1.65412 39.7 27.68
28 -37.559 1.38 1.80810 22.8 27.74
29 -638.763 68.94 28.07
30 ∞ 2.20 1.51633 64.1 50.00
31 ∞ 60.71 50.00
像面 ∞
【0076】
非球面データ
第2面
K = 0.00000e+000 A 4= 1.06987e-008 A 6=-1.34605e-013 A 8= 5.73865e-018 A10=-3.16749e-022

第4面(回折面)
C2=-6.27977e-005 C4= 2.74753e-009 C6=-1.32756e-012 C8= 5.75052e-016
C10=-2.69884e-019

各種データ

焦点距離 780.00
Fナンバー 5.80
半画角(度) 1.59
像高 21.64
レンズ全長 485.85
BF 131.10

入射瞳位置 1464.99
射出瞳位置 -48.92
前側主点位置-1134.88
後側主点位置 -648.91

レンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 273.02 211.77 136.38 -157.92
2 8 -120.41 2.41 1.08 -0.20
3 11 -8404.54 58.16 -119.87 -165.38
1a 1 318.65 19.10 0.08 -12.77
1b 3 -162.90 14.82 14.65 4.38
1c 6 133.40 5.93 0.77 -2.53

単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 318.65
2 3 150.38
3 4 -75.71
4 6 134.00
5 8 -120.41
6 11 -75.78
7 12 52.57
8 14 61.17
9 15 -45.77
10 17 -74.13
11 19 53.83
12 20 -58.18
13 22 43.09
14 23 -140.12
15 25 -66.64
16 27 36.92
17 28 -49.43
【0077】
【表1】
【符号の説明】
【0078】
L0 撮像光学系 L1 第1レンズ群 L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群 L1a 第1aレンズ要素 L1b 第1bレンズ要素
L1c 第1cレンズ要素 SP 開口絞り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7