特許第6971768号(P6971768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971768
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】光学装置および光学モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20211111BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20211111BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   G02B26/10 104Z
   G02B26/08 E
   G01S7/481 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-200769(P2017-200769)
(22)【出願日】2017年10月17日
(65)【公開番号】特開2019-74651(P2019-74651A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】武井 裕介
【審査官】 鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−207126(JP,A)
【文献】 特開2010−175677(JP,A)
【文献】 特開2006−308761(JP,A)
【文献】 特開2002−190636(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0153351(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08 − 26/10
G01S 7/481
G01S 17/00 − 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の発光素子、可動反射面を有するMEMS素子およびそれぞれに反射面を有する複数の反射体を含んでいるとともに前記反射面が前記発光素子から放射されるレーザ光を前記MEMS素子の前記可動反射面に反射させるように位置している放射部と、
少なくとも1つの凹部を有する基体および前記凹部を塞ぐ蓋体を含んでいるとともに1つの前記凹部内における前記基体の内面および前記蓋体の下面に前記放射部の位置決め部を有しており、該位置決め部に近接して、前記発光素子、前記MEMS素子および前記反射体が位置決め固定されている容器部とを備え、
前記位置決め部は、前記発光素子、前記MEMS素子および前記反射体のそれぞれの固定位置を示すマーク、突出部および/または溝部を含んでおり、
前記発光素子、前記MEMS素子および前記反射体は、それぞれ、対応する前記固定位置に基づいて前記容器部に固定されている光学装置。
【請求項2】
前記複数の反射体が、前記発光素子に隣り合って位置しているとともに前記蓋体の方向に前記レーザ光を反射させる反射面を有する第1反射体と、前記蓋体の下面または上面に位置しており、前記第1反射体の前記反射面と斜めに対向している反射面を有する第2反射体とを含んでおり、
前記蓋体の上面に対向して見たときに、前記第2反射体の中央部が前記MEMS素子の可動反射面と前記第1反射体の反射面との間に位置している請求項1記載の光学装置。
【請求項3】
前記蓋体の上面に対向して見たときに、前記第2反射体の外縁が前記MEMS素子の可動反射面の外周部よりも外側に位置している請求項2記載の光学装置。
【請求項4】
前記発光素子が第1接合材を介して前記凹部の底部に接合されており、
前記MEMS素子および前記第1反射体が前記凹部の底部に、前記第1接合材の接合温度よりも低い接合温度を有する第2接合材を介して前記凹部の底部に接合されている請求項2または請求項記載の光学装置。
【請求項5】
前記MEMS素子は、前記可動反射面が前記第2反射体の反射面の方向に傾くように、前記凹部の底部に位置している請求項2〜請求項のいずれか1項記載の光学装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれか1項記載の光学装置を含む発光部と、
前記レーザ光を受光する受光素子を含む受光部とを備える光学モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の発光素子および反射体を含む光学装置および光学モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の検知および測距を行なうレーザ光等の光の反射を利用して、光学モジュールが知られている。光学モジュールは、レーザ光等の発光部と、発光された光を反射して光学モジュール外に位置する対象物の方向に導く反射部と、対象物で反射された光を受光する受光部とを有している。外部に放射され、対象物で反射された光を受光部が受光して、対象物の存在および対象物までの距離等を測定することができる。発光部は、例えば特許文献1に記載されているように、被測定物に対する光の有効な照射を考慮して、反射部とは別体で配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−108758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の光学モジュールにおいては、これを構成する部品数の低減および部品間の位置合せの作業性向上等が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様の光学装置は、放射部と、位置決め部を有する容器部とを備えている。放射部は、レーザ光の発光素子、可動反射面を有するMEMS素子およびそれぞれに反射面を有する複数の反射体を含んでいる。また、反射体の前記反射面が前記発光素子から放射されるレーザ光を前記MEMS素子の前記可動反射面に反射させるように位置している。容器部は、少なくとも1つの凹部を有する基体および前記凹部を塞ぐ蓋体を含んでいるとともに1つの前記凹部内における前記基体の内面および前記蓋体の下面に前記放射部の有している。前記位置決め部に近接して、前記発光素子、前記MEMS素子および前記反射体が位置決め固定されている。前記位置決め部は、前記発光素子、前記MEMS素子および前記反射体のそれぞれの固定位置を示すマーク、突出部および/または溝部を含んでおり、前記発光素子、前記MEMS素子および前記反射体は、それぞれ、対応する前記固定位置に基づいて前記容器部に固定されている。
【0006】
本発明の1つの態様の光学モジュールは、上記構成の光学装置を含む発光部と、前記レーザ光を受光する受光素子を含む受光部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1つの態様の光学装置によれば、上記構成であり、位置決め部を有する容器部に発光素子、MEMS素子および反射体が位置しているため、発光素子とMEMS素子および反射体との互いの位置合せが容易である。また、容器部内に発光素子および反射体等が位置しているため、光学モジュールを、光学装置と受光部とのみで構成することができる。したがって、部品数の低減に対しても有効である。
【0008】
本発明の1つの態様に光学モジュールによれば、上記構成の光学装置を含むことから、部品数の低減および部品間の位置合せの作業性向上等に対して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の光学装置を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態の光学装置の一部を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態の光学装置および光学モジュールを示す断面図である。
図4図1に示す光学装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の光学装置および光学モジュールについて図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものである。また、以下の説明における上下の区別は説明上の便宜的なものであって実際に光学装置および光学モジュールが使用されるときの上下を規制するものではない。また、以下の説明における「入射角」とは、説明の便宜上、光が入射する物体の表面と光の光軸とのなす角であり、0〜90度である。すなわち、物体の表面に対する垂線または法線に沿って光が入射するときの入射角を90度として定義する。
【0011】
図1は本発明の実施形態の光学装置を示す断面図である。図2は、本発明の実施形態の光学装置の一部を示す平面図である。また、図3は、本発明の実施形態の光学装置および光学モジュールを示す断面図である。
【0012】
図1および図2において、光学装置10は、レーザ光を外部に放射する放射部Aと、放射部Aを所定の位置関係に保持して封止している容器部Bとを備えている。なお、図2においては、容器部を見やすくするために放射部を省略している。また、図3に示すように、光学装置10を含む発光部Cと、レーザ光を受光する受光素子11を含む受光部Dとによって光学モジュール20が基本的に構成されている。光学モジュール20は、発光部Cから外部に放射されたレーザ光が被検知物Eで反射されて戻って来たレーザ光(以下、外部反射光という)を受光部Cで受光する。この外部反射光の情報を基に、被検知物Eの存在の有無、形状、寸法、移動の速度等の情報が算出され、検知される。被検知物Eは、例えば、歩行者E1および車両E2等である。
【0013】
放射部Aは、レーザ光の発光素子1と、可動反射面2aを有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子2と、それぞれに反射面3aを有する複数の反射体3を含んでいる。複数の反射体3は、図3に示すように、それぞれの反射面3aが発光素子1から放射されるレーザ光LをMEMS素子2の可動反射面2aに反射させるように位置している。すなわち、発光素子1から放射されたレーザ光Lが、反射体3の反射面3aで2回反射されてMEMS素子2の可動反射面2aに導かれる。このレーザ光Lが可動反射面で径時的に異なる角度に反射され、光学装置10から広い角度で外部に放射される。
【0014】
容器部Bは、少なくとも1つの凹部4aを有する基体4および凹部4aを塞ぐ蓋体5を含んでいる。また、1つの凹部4a内における基体4の内面および蓋体5の下面に放射部Aの位置決め部6を有している。これらの位置決め部6に近接して、発光素子1、MEMS素子2および反射体3が位置決め固定されている。この位置決めによって、上記のようにレーザ光Lを発光素子1からMEMS素子2の可動反射面2aに容易に、かつ正確に反射させて導くことが可能になっている。
【0015】
発光素子1は、レーザ光Lを放射する半導体素子等であり、例えば半導体レーザ(レーザダイオード、laser diode)である。発光素子1は、例えばGaN(窒化ガリウム)ま
たはGa−As(ガリウム−ヒ素)等の化合物半導体材料が複数層、p層およびn層を形成して積層されて構成されている。図1等に示す例では、ブロック状の発光素子1の側面にp層とn層との界面が位置し、この部分から発光する。すなわち、発光素子1の側面を発光面とみなすことができる。発光素子1は、上記材料に限らず、Al−Ga−As、In−Ga−Al−P、In−Ga−NおよびZnO等から適宜選択された化合物半導体材料を含んでいてもよい。
【0016】
発光素子1から放射されるレーザ光Lは、可視光(例えば紫色〜青色または赤色等)に限られず、紫外線または赤外線であっても構わない。またレーザ光Lは、連続して放射されるもの(連続光)に限られず、パルス光であっても構わない。例えば、光学装置10および光学モジュール20が被検知物Eまでの距離を計測するものであれば、変調した連続光またはパルス光を発光する発光素子1を用いる。これらのレーザ光Lの選択は、光学装置10および光学モジュール20の用途、機能、被検知物Eの種類および数量、ならびに経済性等の条件に応じて、適宜決めることができる。
【0017】
発光素子1は、例えば金−スズろう材等の第1接合材7によって凹部4aの底部(図1の例では凹部4aの底面に位置する凸状のマウント部上面)に接合されて、固定されている。発光素子1がマウント部上面に接合されているため、その側面から放射されるレーザ光Lの高さ位置を凹部4aの底面から上方向に離すことができる。そのため、レーザ光Lの高さ位置を、後述する反射体2の反射面2aのほぼ中央部に合わせて位置させることができる。
【0018】
マウント部は、基体1と同じ材料からなるものでもよく、別部品が凹部4aの底面に設凹されて配置されたものでもよい。別部品としては、例えば、ペルチェ素子等の温度調整部品、金属材料からなる伝熱性部品および基体4よりも弾性率が小さい樹脂材料からなる緩衝材等が挙げられる。
【0019】
MEMS素子2は、シリコン基板等の半導体基板の表面に、微細な回路導体および機械的な可動機構が形成されたものである。この実施形態の例におけるMEMS素子は、機械的な可動機構として上記の可動反射面2aを有している。可動反射面2aは、半導体集積回路の形成医術を応用して作製されたマイクロミラーである。MEMS素子2の上面にマイクロミラーが配置されている。マイクロミラーは、半導体基板に設けられた2軸の保持部、いわゆるはり(梁)で保持され、軸の傾きに応じて傾くことができる。マイクロミラーは,MEMS素子2の上面等に位置する回路導体を介して伝送される電気信号等の情報に応じて、上記のように反射面が動く(反射角を変える)ことができる。すなわち、径時的に反射角を変化させて、入射するレーザ光Lを反射させることができる。言い換えれば、MEMS素子2は、光学装置10の外部を広い角度で走査させるようにレーザ光Lを放射させることを可能にしている。
【0020】
MEMS素子2は、上記のようにシリコン基板等の半導体基板の上面等の露出面にフォトリソグラフ等の、集積回路を形成するのと同様の微細加工技術を施すことによって、製作することができる。また、MEMS素子2は、第1接合材7よりも接合温度が低い第2接合材8によって凹部4aの底部(図1の例では底面)に接合されて固定されていてもよい。この場合には、第2接合材8による接合時には第1接合材7が溶融しないので、先に固定した発光素子1の位置ずれ等が発生しにくい。すなわち、放射部Aとしての位置精度向上に有効である。第2接合材8としては、例えば金属のサブミクロンレベルの微粒子(いわゆるナノ粒子)を有機バインダと混合した接合材を挙げることができる。なお、図3および後で参照する図4においては、簡単のため、上記第1接合材7および第2接合材8を省略している。
【0021】
前述したように、それぞれに反射面3aを有する複数の反射体3は、それらの反射面3aが、発光素子1から放射されるレーザ光LをMEMS素子2の可動反射面2aに反射させるように位置している。発光素子1から放射されるレーザ光をMEMS素子2の可動反射面2aに反射させるような反射面3aの位置とは、例えば次の説明のとおりである。
【0022】
図1図3に示す例において、複数の反射体3が、発光素子1に隣り合って位置してい
るとともに蓋体5の方向にレーザ光Lを反射させる反射面3aを有する第1反射体3(3A)と、蓋体5の下面に位置しており、第1反射体3(3A)の反射面3aと斜めに対向している反射面3aを有する第2反射体3(3B)とを含んでいる。なお、以下において、第1反射体3(3A)、第2反射体3(3B)を、単に第1反射体3A、第2反射体3Bと言う。また、これらの反射体3(3A、3B)を特に区別せず、単に反射体3という場合もある。
【0023】
第1反射体3Aは、発光素子1の発光面に隣接して位置している。第1反射体3Aの反射面3aは、発光面に対して斜めになっていて、蓋体5に斜めに対向している。これによって、発光素子1の側面から放射されたレーザ光Lを蓋体5の方向に反射させることができるようになっている。第1反射体3Aから蓋体5の方向に反射されてレーザ光Lは、その光軸が蓋体5とに対して斜めになっている。
【0024】
第2反射体3Bは、第1反射体3Aの反射面3aと斜めに対向している。これにより、蓋体5の下面に対して斜めに進むレーザ光Lを正反射させて、第2反射体3Bの斜め下に位置するMEMS素子2の方向に反射させることができる。すなわち、それぞれの反射面3aが、発光素子1から放射されるレーザ光LをMEMS素子2の可動反射面2aに反射させるように位置している。
【0025】
発光素子1から複数の反射体3で反射されてMEMS素子2に届いたレーザ光Lは、前述したように、可動反射面2aで反射されて発光装置10および発光モジュール20の外部に放射される。放射されるレーザ光Lは、上記のように径時的に放射の角度が変化するため、外部をレーザ光Lで走査して、被検知物Eに関する情報を含む外部反射光LBを得ることができる。
【0026】
第1反射体3Aは、例えばミラーであり、凹部4aの底部に第2接合材8によって固定されている。ミラー最表面の鏡面部分が反射面3aになっている。第2接合材8は、MEMS素子8接合用の第2接合材8と同様の材料を用いることができる。また、第2反射体3Bは、例えばレーザ光Lの反射効率が高い金等の金属材料からなる薄膜層(いわゆる薄膜ミラー)である。第2反射体3Bは、例えば蒸着等の薄膜法で蓋体5の下面に設けることができる。薄膜ミラーである第2反射体3Bは、反射面3aと本体とが一体化したものとみなすことができる。
【0027】
外部反射光LBに対して、MEMS素子2は、これを再度反射させて、外部に位置する受光素子11に外部反射光LBを受光させる機能も有している。すなわち、外部反射光LBが可動反射面2aに正反射されて、蓋体5を通過して外部の受光素子11により受光される。この場合にも、MEMS素子2の反射面が可動であるため、互いに異なる角度で戻って来る外部反射光LBを、随時受光素子11の方向に反射させることができる。
【0028】
基体4は、上面に凹部4aを有し、この凹部4a内に上記の放射部Aを収容する、容器本体としての機能を有している。基体4は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、窒化ケイ素質焼結体、ムライト質焼結体またはガラスセラミック焼結体等のセラミック材料によって形成されている。基体4は、例えば酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば次のようにして製作することができる。まず。酸化アルミニウム、酸化ケイ素および酸化カルシウム等の原料粉末を適当な有機溶剤およびバインダとともに混練してスラリーを作製する。次に、このスラリーをドクターブレード法等の方法でシート状に成形した後に所定の形状(凹部4aとなる開口を有する形状等)および寸法に切断して複数のシートを作製する。その後、これらのシートを積層し、焼成することにより、基体1を製作することができる。
【0029】
また、基体4は、上記のセラミック原料をプレス加工等の方法で所定の基体4の形状に成形し、焼成する方法で製作することもできる。また、基体4は、エポキシ樹脂等の有機樹脂からなるものでもよい。この場合には、例えば未硬化のエポキシ樹脂等の樹脂材料を成型金型等の手段で所定形状に成形した後に、加熱硬化させる方法で基体4を製作することができる。
【0030】
なお、基体1は、放射部Aが実装される1つの凹部4a以外に、他の凹部(図示せず)を有するものでもよい。他の凹部としては、例えば、基体4の下面に位置する、チップコンデンサ、抵抗素子またはアンテナ素子等の種々の電子部品を収容するものが挙げられる。このような他の凹部の開口寸法は、凹部4aの開口寸法よりも小さい。
【0031】
蓋体5は、凹部4aを塞いで放射部A(特に発光素子1およびMEMS素子2)を気密に封止する機能を有している。また、蓋体5は、このような気密封止を可能にしながら、放射部Aから外部へのレーザ光Lができるようにするため、レーザ光Lの透過が可能な材料により形成されている。図1図3に示す例では、透光性のガラス材料によって蓋体5が形成されている。図1図3において、透光性の材料からなる蓋体5にはハッチングを施していない。
【0032】
容器部Bが有する位置決め部6は、前述したように、放射部Aの容器部Bにおける位置決めを容易かつ高精度のものとする機能を有している。位置決め部6としては、例えば図2に示す例のように、凹部4aの底面に位置するマーク6aおよび溝部6b等が挙げられる。マーク6aは、例えば金属層であり、メタライズ層、めっき層、金属箔および薄膜層等の形態で凹部4a内および蓋体5の下面等に設けることができる。位置決め部6は、これらの例に限らず、突出部でもよく、複数種を組み合わせたものでもよい。
【0033】
マーク6aは、実装されるMEMS素子2の実装範囲の角部に対応する位置を示している。このマーク6aの位置にMEMS素子2の4つの角部を位置合せすることで、MEMS素子2を凹部4a底面の所定位置に実装することができる。
【0034】
溝部6bは、発光素子1のマウントおよびミラー(第1反射体)の接続位置に合わせて設けられている。この溝部6bのマウントおよびミラーをそれぞれはめ込むことで、凹部4a内に発光素子1および第1反射体3Aを位置決めして固定することができる。
【0035】
なお、蓋体5の下面にも、上記と同様のマーク等の位置決め部(図示せず)が設けられていてもよい。これにより、蓋体5の下面に対する第2反射体3Bとなる薄層層の形成時の位置決めが容易に、かつ高精度で行なわれる。また、第2反射体3Bは、蓋体5の上面に位置していてもよく、この場合には、蓋体5の上面に位置決め部を設けてもよい。、第2反射体3Bが蓋体5の上面に位置している場合でも、蓋体5を透過したレーザ光LをMEMS素子2の方向に反射させ、再度蓋体5を透過させてMEMS素子2に送ることはできる。また、位置決め部6が蓋体5の下面または上面に位置しているときに、それ反対側の面(上面または下面)に位置決め部6を配置させてもよい。
【0036】
このような光学装置10によれば、位置決め部6を有する容器部Bに発光素子1、MEMS素子2および反射体3が位置しているため、発光素子1とMEMS素子2および反射体3との互いの位置合せが容易である。また、容器部B内に発光素子1および反射体3等が位置しているため、光学モジュール20を、光学装置10と受光部Dとのみで構成することができる。したがって、部品数の低減に対しても有効である。
【0037】
発光装置10および発光モジュール20は、上記の例のように、複数の反射体3が、発光素子1に隣り合って位置しているとともに蓋体5の方向にレーザ光Lを反射させる反射面3
aを有する第1反射体3Aと、蓋体5の下面または上面に位置しており、第1反射体3Aの反射面3aと斜めに対向している反射面3aを有する第2反射体3Bとを含んでいるときに、以下のような形態をさらに備えるものでもよい。すなわち、発光装置10および発光モジュール20は、上記構成において、蓋体5の上面に対向して見たときに、第2反射体3Bの中央部がMEMS素子2の可動反射面2aと第1反射体3Aの反射面3aとの間に位置しているものでもよい。
【0038】
この場合には、MEMS素子2の可動反射面2aおよび第1反射体3Aの反射面3aのそれぞれから、第2反射体3Bの中央部までの距離の差を効果的に低減できる。そのため第2反射体3Bの反射面3aで正反射されたレーザ光Lが可動反射面2aに効率よく届く。そのため、外部に放射されるレーザ光Lの強度向上について有効である。
【0039】
また、この場合には、蓋体5の上面に対向して見たときに、第2反射体3BとMEMS素子2の可動反射面2aとが重なり合うことが低減されている。また、可動反射面2aから第2反射体3Bを見たときの見かけの大きさが、互いに正対し合うときに比べて小さい。そのため、被検知物Eで反射されて戻ってきた外部反射光LBが可動反射面2aで再度反射されて蓋体5から受光部Dの方向に出射されるときに、その出射が第2反射体3Bで妨げられる可能性を効果的に低減することができる。
【0040】
また、蓋体5の上面に対向して見たときに、第2反射体3Bの中央部がMEMS素子2の可動反射面2aと第1反射体3Aの反射面3aとの間に位置している場合において、第2反射体3Bの外縁がMEMS素子2の可動反射面2aの外周部よりも外側に位置しているときには、上記のような外部反射光LBの外部への出射を容易に、かつ効率よく行なわせる効果をより確実に得ることができる。
【0041】
図4は、図1に示す光学装置10の変形例を示す断面図である。図4において図1〜3と同様の部位には同様の符号を付している。この光学装置10を用いて、上記と同様に光学モジュール20を製作することもできる。この変形例の光学装置10において、MEMS素子2は、可動反射面2aが第2反射体3Bの反射面3aの方向に傾くように、凹部4aの底部に位置している。第2反射体3Bの反射面3aの方向に傾くとは、可動反射面2aのうち第2反射体から遠い方の端部分が近い方の端部分よりも上方に位置するように可動反射面2aが傾くことをいう。
【0042】
なお、図4に示す例では、凹部4aの底面の一部が傾斜面になり、この傾斜面にMEMS素子2が搭載されて、可動反射面2aが第2反射体3Bの方向に傾いている。これに限らず、平面状の凹部4aの底面にMEMS素子を傾斜させるようなマウント材を配置してもよく、傾斜面が多少湾曲していてもよい。なお、図4では、可動反射面2aが1つの軸(前述した「梁」の1つ)回りに傾いたときの位置を破線で模式的に示している。
【0043】
このような場合には、MEMS素子2を凹部4a底面に投影したときの投影面積が、傾いていないときに比べて小さい。また、可動反射面2aで反射されて蓋体5に入射するレーザ光Lである反射光(以下、単に反射光Lともいう)の走査範囲を蓋体5の平面視における中央方向に変位させることができる。そのため、可動反射面2aに対して小さい角度で反射された反射光L(例えば図4におけるL1)を、蓋体5の範囲内で、蓋体5まで届け、外部に放射させることができる。言い換えれば、反射光Lの蓋体5透過を可能にする目的で、蓋体5をMEMS素子2に対して平面視で外方向に大きく広げる、というような必要がない。したがって、平面視における蓋体5、つまりは光学装置10の小型化に対して有利である。
【0044】
なお、図4に示す例において、上記の反射光L1の蓋体5に対する入射角Lθは約30度
である。また、可動反射面2aに対して比較的深い角度で反射された反射光L(例えば図4におけるL2)の蓋体5に対する入射角Lθは約90度である。つまり、可動反射面2aと蓋体5との間の距離を、例えば図1に示す例よりも小さくしても(つまり、光学装置10の厚みを低減しても)、反射光Lの蓋体5に対する入射角Lθを90度まで確保でき、外部への放射光量を容易に確保できる。したがって、この変形例の光学装置10は、薄型化に対しても有効である。
【0045】
また、図4に示す例において、外部反射光LBの蓋体5に対する入射角LBθは、レーザ光(反射光)Lの入射角Lθと同様に30〜90度である。このような外部反射光LBが可動反射面2aで再反射され、蓋体5を透過して受光部(図4では図示せず)に届き、受光素子で受光される。
【0046】
前述したように、実施形態の発光モジュール20は、上記いずれかの構成の光学装置10を含む発光部Cと、レーザ光(外部反射光LB)を受光する受光素子11を含む受光部とを備えている。発光部Cで外部の放射されたレーザ光が被検知物Eで反射されて戻り、受光部Dで検知される。このレーザ光の戻りの有無、反射された位置(放射された方向によるレーザ光の戻りの有無)、放射から受光までの所要時間等に基づいて、被検知物Eの存在の有無、存在位置および形状、ならびに被検知物Eまでの距離等の情報が算出され、測定される。
【0047】
この場合、受光部Dにおける受光情報の演算処理に必要な演算部(半導体集積回路素子等)が光学モジュールに含まれていてもよい。また、発光部Cと受光部Dとの間で電気信号の送受が可能な電気回路が配置されていてもよい。このような電気的な接続のための端子12が配置されていてもよい。
【0048】
また、光学装置10において、発光素子10に対する電力の供給、MEMS素子2の可動反射面2a(マイクロミラー)の傾き等の作動に必要な電力および電気信号の供給のための配線導体(図示せず)が、基体4等に設けられていてもよい。配線導体は、基体4のうち凹部4a内に位置する表面(凹部4a内面)および基体4内部等の所定位置に、所定パターンに設けられる。
【0049】
上記配線導体の一例として、凹部4aの底面から基体4の下面または外側面にかけて位置するものが挙げられる。配線導体のうち凹部4aの底面に位置する部分にMEMS素子2および発光素子1等がボンディングワイヤまたははんだ等の導電性接続材によって電気的に接続される。配線導体のうち基体4の下面または外側面に位置する部分が外部電気回路にはんだまたは導電性接着剤等の導電性接続材によって電気的に接続される。これにより、MEMS素子2および発光素子1が外部電気回路都電気的に接続され、電力または電気信号等の送受が可能になる。
【0050】
配線導体は、例えば、タングステン、モリブデン、マンガン、銅、銀、パラジウム、金、白金、チタン、ニッケルおよびコバルト等の金属材料またはこれらを主成分とする合金の金属材料によって形成することができる。また、配線導体は、メタライズ層、めっき層および薄膜層等の種々の形態で形成することができる。配線導体は、例えばタングステンのメタライズ層からなる場合であれば、タングステンの粉末を有機溶剤およびバインダとともに混練して作製した金属ペーストを、基体4になるシートの所定部位に印刷して、焼成する方法で形成することができる。このメタライズ層の露出表面を、ニッケルおよび金等のめっき層で被覆するようにしてもよい。
【0051】
光学モジュール20で検知される被検知物Eは、例えば前述したように歩行者E1および車両E2等である。この場合の光学モジュール20は、いわゆるLIDAR(Light Detect
ion and Ranging)であり、車両に搭載して、運転に必要な、歩行者の有無、他の車両お
よび障害物の位置ならびに道路の白線の位置等の情報を検知、計測させることができる。このような情報は、車両の運転支援および自動運転に利用することができる。
【0052】
なお、本発明は以上の実施の形態の限定されるものではなく本発明の要旨内であれば種々の変更は可能である。例えば、光学装置10および光学モジュール20は、車両の運転支援および自動運転等の用途に限らず、レーダ(電波)による検知等が難しい非金属物の検知等に用いることができる。例えば、発光装置10および光学モジュール20は、航空機またはドローン等から地形または植生等の観察を行なう用途で用いることができる。
【0053】
また、3つ以上の反射体によって反射部が構成されている発光装置および光学モジュールでもよく、凹部4aの底部および蓋体5の下面以外の部位、例えば凹部4aの内側面等にも反射体が位置している発光装置および光学モジュールでもよい。
【符号の説明】
【0054】
1・・・発光素子
2・・・MEMS素子
2a・・・可動反射面
3・・・反射体
3A・・・第1反射体
3B・・・第2反射体
3a・・・反射面
4・・・基体
4a・・・凹部
5・・・蓋体
6・・・位置決め部
6a・・・マーク
6b・・・溝部
7・・・第1接合材
8・・・第2接合材
10・・・光学装置
11・・・受光素子
12・・・端子
20・・・光学モジュール
A・・・放射部
B・・・容器部
C・・・発光部
D・・・受光部
E・・・被検知物
E1・・・歩行者
E2・・・車両
L・・・レーザ光(反射光)
L1、L2・・・反射光
LB・・・外部反射光
図1
図2
図3
図4