(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視において、前記1対の最後端ピラーの各々における前記キャブの内部空間とは反対側を向いた側面は、前方から後方に向かうに従って前記キャブの前記内部空間側に位置するように構成されている、請求項2に記載の作業車両のキャブ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について図に基づいて説明する。
まず、本開示の一実施の形態における作業車両の構成について
図1を用いて説明する。以下、本開示の思想を適用可能な作業車両の一例としてホイールローダについて説明するが、本開示の作業車両はホイールローダ以外に油圧ショベル、ブルドーザなどのキャブを有する作業車両にも適用可能である。
【0010】
本例においては、キャブ10内の運転席7に着座したオペレータを基準として各部の位置関係について説明する。前後方向とは、運転席7に着座したオペレータの前後方向をいう。左右方向(幅方向)とは、運転席7に着座したオペレータの左右方向をいう。上下方向とは、運転席7に着座したオペレータの上下方向をいう。
【0011】
運転席7に着座したオペレータに正対する方向が前方向であり、前方向に対向する方向が後方向である。運転席7に着座したオペレータが正面に正対したときの右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。運転席7に着座したオペレータの足元側が下側、頭上側が上側である。
【0012】
図1は、一実施の形態におけるホイールローダの構成を示す概略側面図である。
図1に示されるように、本実施の形態のホイールローダ50は、前部フレーム42と、後部フレーム45と、作業機30と、キャブ10とを主に有している。前部フレーム42の両側部の各々には前輪43aが取付けられている。後部フレーム45の両側部の各々には後輪43bが取付けられている。
【0013】
前部フレーム42と後部フレーム45とは、センタピン(図示せず)により左右に作動自在に取付けられている。前部フレーム42と後部フレーム45とは、アーティキュレート構造の車体フレームを構成している。
【0014】
具体的には前部フレーム42と後部フレーム45とは、左右一対のステアリングシリンダ(図示せず)により連結されている。この左右のステアリングシリンダが伸縮することにより、前部フレーム42と後部フレーム45とはセンタピンを中心として左右に作動し、操向する。
【0015】
前部フレーム42の前方には作業機30が取付けられている。作業機30は、一対のブーム31と、バケット32と、一対のブームシリンダ33と、ベルクランプ34と、バケットシリンダ35と、リンク36とを有している。
【0016】
後部フレーム45には、キャブ(運転室)10と、後方構造部44とが搭載されている。後方構造部44は、キャブ10の後方に位置している。この後方構造部44は、作動油タンク44aと、エンジン室44bとを有している。エンジン室44bの前方には作動油タンク44aが配置されている。前部フレーム42、後部フレーム45および後方構造部44によりホイールローダ50の車体が構成されている。
【0017】
キャブ10は、上記車体に取り付けられている。キャブ10は、後方構造部44における作動油タンク44aの前方に配置されている。キャブ10は、オペレータが内部に入ってホイールローダ50を操作するための空間を構成している。
【0018】
次に、上記キャブ10の構成について
図2〜
図6を用いて説明する。
図2、
図3、
図4および
図5のそれぞれは、
図1に示すホイールローダに搭載されるキャブの構成を後上方から見た斜視図、前上方から見た斜視図、後方から見た背面図および上方から見た破断平面図である。また
図6は、
図4のVI−VI線に沿う概略断面図である。
【0019】
図2および
図3に示されるように、本実施の形態のキャブ10は、床板1と、複数のピラー2F、2Rと、屋根部分3と、後窓4と、前窓5と、中央側壁6と、外装パネル11F、11Rとを主に有している。
【0020】
床板1に複数のピラー2F、2Rが取り付けられている。複数のピラー2F、2Rの各々は、床板1から上方に延びている。複数のピラー2F、2Rの各々は、長手方向が上下方向に延びるように配置されている。複数のピラー2F、2Rは、1対の最前端ピラー2Fと、1対の最後端ピラー2Rとを有している。
【0021】
1対の最前端ピラー2Fは、1対の最後端ピラー2Rよりも前方に位置している。1対の最前端ピラー2Fは、互いに左右方向に間隔をあけて配置されている。また1対の最後端ピラー2Rは、互いに左右方向に間隔をあけて配置されている。キャブ10は、1対の最前端ピラー2Fおよび1対の最後端ピラー2Rよりなる4つのピラーのみを有し、それ以外の他のピラーを有していない。
【0022】
1対の最後端ピラー2Rは、キャブ10が有する複数のピラー2F、2Rのうち最も後方に位置しており、キャブ10は1対の最後端ピラー2Rよりも後方に他のピラーを有していない。
【0023】
また1対の最前端ピラー2Fは、キャブ10が有する複数のピラー2F、2Rのうち最も前方に位置しており、キャブ10は1対の最前端ピラー2Fよりも前方に他のピラーを有していない。またキャブ10は最前端ピラー2Fと最後端ピラーとの間に他のピラーを有していない。
【0024】
屋根部分3は、キャブ10の上部に配置されており、複数のピラー2F、2Rにより床板1に対して支持されている。梁部材14(
図6)が、最前端ピラー2Fの上端部と最後端ピラー2Rの上端部との各々に接続されている。
【0025】
1対の最前端ピラー2Fの前方には、前窓5が配置されている。前窓5は、前面窓5Fと、1対の前側面窓5Sとを有している。1対の前側面窓5Sの各々は、1対の最前端ピラー2Fの各々から前方に延びるように配置されている。前面窓5Fは、1対の前側面窓5Sの各々に接続されている。前面窓5Fは、1対の最前端ピラー2Fよりも前方に位置している。
【0026】
前面窓5Fと前側面窓5Sとは、たとえばシーリング材により互いに接続されている。前面窓5Fおよび1対の前側面窓5Sの各々は、たとえばガラスよりなっている。これにより前窓5は、前面窓5Fおよび1対の前側面窓5Sからなる3面ガラスよりなっている。
【0027】
前面窓5Fの下方には、外装パネル11Fが配置されている。前側面窓5Sの下方には下方窓5Bが配置されている。なお前側面窓5Sの下方には、下方窓5Bに代えて外装パネルが配置されていてもよい。
【0028】
最前端ピラー2Fと最後端ピラー2Rとの間には中央側壁6が配置されている。中央側壁6は、窓6aを有している。また中央側壁6は、窓6aの下に下窓6bを有していてもよい。
【0029】
中央側壁6は、乗降用ドアであってもよい。中央側壁6が乗降用ドアである場合、その乗降用ドア6はたとえば最後端ピラー2Rに開閉可能に支持されている。乗降用ドア6は、ホイールローダ50を操作するオペレータの乗降口である。また中央側壁6は最前端ピラー2Fと最後端ピラー2Rとの間に嵌め込まれて固定(嵌め殺し)されていてもよい。
【0030】
1対の最後端ピラー2Rの後方には、後窓4が配置されている。後窓4は、後面窓4Rと、1対の後側面窓4Sとを有している。1対の後側面窓4Sの各々は、1対の最後端ピラー2Rの各々から後方に延びるように配置されている。後面窓4Rは、1対の後側面窓4Sの各々の後端に接続されている。後面窓4Rは、1対の最後端ピラー2Rよりも後方に位置している。
【0031】
後面窓4Rと後側面窓4Sとは、たとえばシーリング材により互いに接続されている。後面窓4Rおよび1対の後側面窓4Sの各々は、たとえばガラスよりなっている。これにより後窓4は、後面窓4Rおよび1対の後側面窓4Sからなる3面ガラスよりなっている。
【0032】
後面窓4Rは、1対の後側面窓4Sの一方である第1の後側面窓4S(4SR:
図4)から1対の後側面窓4Sの他方である第2の後側面窓4S(4SL:
図4)に亘る全体においてガラスよりなっている。1対の後側面窓4Sの間の領域およびその領域の後方には他のピラーが配置されていない。
【0033】
また1対の後側面窓4Sに挟まれるキャブ10内の領域であって、後面窓4Rの前方の領域には、他のピラーが配置されていない。またキャブ10の外部であって後面窓4Rの後方にも、他のピラーは配置されていない。またキャブ10の外部であって1対の後側面窓4Sの側方にも、キャブ10の他のピラーは配置されていない。
【0034】
後面窓4Rおよび後側面窓4Sの各々の下方には、外装パネル11Rが配置されている。
【0035】
図1に示されるように、前面窓5Fは、下方から上方へ向かうに従って後方に位置するように傾斜している。前面窓5Fは、前面窓5Fの下端から上端までの全体において、下方から上方へ向かうに従って後方に位置するように傾斜している。なお、前面窓5Fは、前面窓5Fの下端から上端までの一部において、下方から上方へ向かうに従って後方に位置するように傾斜した部分を有していてもよい。
【0036】
後面窓4Rは、下方から上方へ向かうに従って後方に位置するように傾斜している。後面窓4Rは、後面窓4Rの下端から上端までの全体において、下方から上方へ向かうに従って後方に位置するように傾斜している。なお、後面窓4Rは、後面窓4Rの下端から上端までの一部において、下方から上方へ向かうに従って後方に位置するように傾斜した部分を有していてもよい。
【0037】
図1に示す側面視における後面窓4Rの傾斜角度θ1は、前面窓5Fの傾斜角度θ2と同じであるか、または傾斜角度θ2よりも鉛直方向に近い角度である。具体的には、ホイールローダ50を水平な地面に載置した状態において、側面視における後面窓4Rの鉛直線に対する傾斜角度θ1は、前面窓5Fの鉛直線に対する傾斜角度θ2と同じか、傾斜角度θ2よりも小さい。
【0038】
なおホイールローダ50を水平な地面に載置した状態において、側面視における後面窓4Rの鉛直線に対する傾斜角度θ1は、前面窓5Fの鉛直線に対する傾斜角度θ2よりも大きくてもよい。
【0039】
後方構造部44の前方部(作動油タンク44aの収納部の前方部)とキャブ10の後端との間には隙間が設けられている。具体的には、後方構造部44の前方部と後面窓4Rとの間、および後方構造部44の前方部と外装パネル11Rとの間の各々には、隙間が設けられている。
【0040】
ホイールローダ50を水平な地面に載置した状態において、上記後方構造部44の前方部における上端P2の高さ位置は、後面窓4Rの下端P1の高さ位置よりも上方に位置している。後方構造部44の前方部は、所定の高さ位置P3(下方位置)から上端P2まで延在する傾斜部44a1を有している。傾斜部44a1は、所定の高さ位置P3から上端P2に向かうに従って後方に位置するように傾斜している。
【0041】
傾斜部44a1は、鉛直線に対して傾斜角度θ3で傾斜している。この傾斜角度θ3は、後面窓4Rの傾斜角度θ1と同じであってもよく、また後面窓4Rの傾斜角度θ1よりも大きくてもよい。また後方構造部44の前方部とキャブ10の後端との間の隙間が比較的大きい場合には、傾斜角度θ3は、後面窓4Rの傾斜角度θ1より小さくてもよい。
【0042】
図4に示されるように、キャブ10を後方から見た視点において、後面窓4Rは、略台形の形状を有している。後面窓4Rの上辺4RUと下辺4RBとは互いに略平行となっている。後面窓4Rの上辺4RUの中央部には、下側に窪んだ凹部4RAが設けられていてもよい。後面窓4Rの右辺4RRと左辺4RLとは、下方から上方へ向かうに従って互いに近づくように後面窓4Rは構成されている。具体的には、キャブ10を後方から見た視点において、後面窓4Rは下方から上方へ向かうに従って幅Wが狭くなっている。
【0043】
図5に示されるように、平面視において、第1の後側面窓4S(4SR)と第2の後側面窓4S(4SL)とは前方から後方に向かうに従って互いに近づくように配置されている。具体的には、平面視において、第1の後側面窓4S(4SR)と第2の後側面窓4S(4SL)との間の距離W2は前方から後方に向かうに従って小さくなっている。
【0044】
また平面視において、後側面窓4Sのキャブ10の外側の表面(仮想の直線Aに沿う面)は、その後側面窓4Sに連なる中央側壁6のキャブ10の外側の表面(仮想の直線Bに沿う面)に対して傾斜している。
【0045】
平面視において、1対の最後端ピラー2Rの各々においてキャブ10の内部空間とは反対側を向いた側面2RSは、前方から後方に向かうに従ってキャブ10の内部空間側に位置するように構成されている。具体的には、1対の最後端ピラー2Rの一方である第1の最後端ピラー2R(2RR)の側面2RSは、第1の後側面窓4S(4SR)のキャブ10の外側の表面と略平行である。また1対の最後端ピラー2Rの他方である第2の最後端ピラー2R(2RL)の側面2RSは、第2の後側面窓4S(4SL)のキャブ10の外側の表面(仮想の直線Aに沿う面)と略平行である。
【0046】
第1の最後端ピラー2R(2RR)の側面2RSは、第1の後側面窓4S(4SR)に対して接着される部分であり、その側面2RSに接着される後側面窓4Sと略平行である。また第2の最後端ピラー2R(2RL)の側面2RSは、第2の後側面窓4S(4SL)に対して接着される部分であり、その側面2RSに接着される後側面窓4Sと略平行である。
【0047】
なお平面視とは、床板1の上面に直交する方向から見た視点を意味する。
図6に示されるように、キャブ10の内部(内部空間)には、運転席7、空気調和ユニット8、前方コンソール12などが配置されている。運転席7は、ホイールローダを操作するオペレータが着座するための部分である。なおキャブ10の内部または内部空間とは、床板1と、複数のピラー2F、2Rと、屋根部分3と、後窓4と、前窓5と、中央側壁6と、外装パネル11F、11Rとにより囲まれた部分または空間を意味する。
【0048】
運転席7は、矢印RMに沿ってチルト可能に構成されている。具体的には、運転席7の背凭れ部7aは、着座部7bに対して矢印RMに沿って傾斜させることが可能である。また運転席7は、矢印SMに沿って前後方向にスライド可能に構成されている。具体的には、運転席7の着座部7bは、着座部7bを支持する支持台13に対して矢印SMに沿って前後方向にスライドさせることが可能である。
【0049】
運転席7の前方には、前方コンソール12と、空気調和ユニット8とが配置されている。前方コンソール12は、前面操作パネル(前面操作部)を有している。前面操作パネルは、たとえばパーキングブレーキスイッチ、ECSS(Electronic Controlled Suspension System)スイッチ、作業灯スイッチ、ワイパスイッチなどを有している。
【0050】
空気調和ユニット8は、前方コンソール12の下側に配置されている。また空気調和ユニット8は、前方コンソール12の下方であって、前方コンソール12および前面窓5Fの各々の前端よりも前方側に突き出すように配置されている。
【0051】
空気調和ユニット8は、内外気切替ドア、ファン、エバポレータ、ヒータコアなどを有している。ファンが内気および外気を空気調和ユニット8内に取り入れ、エバポレータおよびヒータコアに送った後にキャブ10の内部空間に送出する。これにより、キャブ10の内部空間における空気が調和される。
【0052】
キャブ10の内部空間における後方下部にはリアカバー9が設置されている。このリアカバー9は化粧板としても機能する。リアカバー9と外装パネル11Rとの間には空間が設けられている。この空間には、配線などの電装部品などが配置されている。この空間の前後方向の寸法L2は、空気調和ユニット8の前後方向の寸法L1よりも小さい。
【0053】
また前面窓5Fの最上端P5の高さ位置は、後面窓4Rの最上端P4の高さ位置よりも高い。これによりキャブ10内で作業機30を操作するオペレータは、前面窓5Fを通じて作業機30を高い位置まで視認することが可能となり、作業の確実性が向上する。
【0054】
また後面窓4Rの最上端P4の高さ位置が前面窓5Fの最上端P5の高さ位置よりも低いため、後面窓4Rの上方における屋根部分3と天井部分との間の隙間の寸法L3を大きく確保することができる。このため、この隙間に配線などの電装部品などを配置することが容易となる。
【0055】
またキャブ10は、梁部材14をさらに有している。梁部材14は、最前端ピラー2Fの上端と最後端ピラー2Rの上端とを繋いでいる。この梁部材14は、最前端ピラー2Fおよび最後端ピラー2Rの各々と同じ太さを有していてもよく、また最前端ピラー2Fおよび最後端ピラー2Rの各々よりも太い太さを有していてもよい。これにより、キャブ10のピラーの本数を4本にしても、転倒安全規格(ROPS:Rollover Protective Structure)に適用したキャブ、いわゆるROPSキャブを実現することができる。
【0056】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
図6に示されるように、本実施の形態によれば、後面窓4Rは、下方から上方へ向かうに従って後方に位置するように傾斜している。これによりキャブ10の内部空間が上部後方において拡大し、キャブ10の車体への取り付けスペースを拡大することなく、オペレータの居住空間を拡大することができる。
【0057】
またキャブ10の内部空間が上部後方において拡大するため、運転席7における背凭れ部7aを着座部7bに対して矢印RM方向に沿って後方に大きく傾斜させることが可能となる。また運転席7を矢印SM方向に沿って後方へ大きくスライドさせることも可能となる。このように運転席のチルト、スライドなどの可動範囲を拡大することも可能となる。
【0058】
またキャブ10の内部空間が上部後方において後方へ拡大するため、オペレータがキャブ10の後方下側をキャブ10内から覗き込むことが容易となる。
【0059】
また後面窓4Rは、1対の後側面窓4Sの一方である第1の後側面窓4S(4SR)から1対の後側面窓4Sの他方である第2の後側面窓4S(4SL)に亘る全体においてガラスよりなっている。このためオペレータは、1対の後側面窓4Sの間の後面窓4Rの全体から後方を視認することができる。よってキャブ10内のオペレータによる後方視認性が良好となる。
【0060】
また1対の後側面窓4Sの間の後面窓4Rの全体がガラスよりなっており、1対の後側面窓4Sの間の領域およびその領域の後方には他のピラーなどが配置されていない。このため、上記他のピラーによりキャブ10内の居住空間が狭くなることはなく、居住空間を広く確保することができる。また上記他のピラーによりキャブ10内のオペレータの視界が遮られることもなく、視界性も良好となる。
【0061】
上記より本実施の形態のキャブ10は、キャブ10の車体への取り付けスペースを拡大することなく、オペレータの居住空間を拡大できる。また本実施の形態のキャブ10によれば、上記のとおりオペレータの居住空間を拡大できるとともに、後方視認性が良好となる。これによりホイールローダにおける代表的な作業としてのVシェープ作業時における後方視認性が良好となる。
【0062】
このVシェープ作業においては、まず、ある位置で掘削が行われた後に、ブームが上昇されてバケット内の土砂などの積荷が持ち上げられつつ、同時に車両が後進する。その後、進行方向が後進から前進に切り替えられ、ブームがさらに上げられつつ、同時に車両が前進してダンプトラックにアプローチし、そして、バケットがダンプされることによりバケット内の積荷がダンプトラック上に排出される。
【0063】
オペレータは、Vシェープ作業における掘削後の後進のときに車両後方を視認しながら後進しなければならない。また、オペレータは、Vシェープ作業時にダンプトラックにアプローチし、バケットをダンプさせてダンプトラック上に積荷を排出するときに車両前方および車両前方上方を目視しながら前進しなければならない。よって上記Vシェープ作業時におけるオペレータの後方視認性および前方視認性の向上はホイールローダの作業において重要である。
【0064】
また本実施の形態によれば、
図1に示されるように、前面窓5Fは、下方から上方へ向かうに従って後方に位置するように傾斜している。これにより上記Vシェープ作業時においてダンプトラックにアプローチし、バケットをダンプさせてダンプトラック上に積荷を排出するときに前方上方の視界性が良好となる。
【0065】
また前面窓5Fを上記のように傾斜させることにより、キャブ10の内部空間が下部前方において拡大されている。このため
図6に示すように、オペレータの居住空間を大きく確保しつつ、キャブ10の内部空間における下部前方に前方コンソール12および空気調和ユニット8を配置することが容易となる。
【0066】
また本実施の形態によれば、
図1に示されるように、側面視における後面窓4Rの傾斜角度θ1は、前面窓5Fの傾斜角度θ2と同じか、または前面窓5Fの傾斜角度θ2よりも鉛直方向に近い角度である。これにより後面窓4Rと後方構造部44の前方部との干渉を避けながら、キャブ10の内部空間を拡大することが可能となる。
【0067】
また本実施の形態によれば、
図4に示されるように、キャブ10を後方から見た視点において、後面窓4Rは下方から上方へ向かうに従って幅Wが狭くなっている。これによりホイールローダ50による走行時および作業時に、キャブ10の上方側部が障害物と衝突などすることを抑制することができる。
【0068】
また本実施の形態によれば、
図1に示されるように、後方構造部44の前方部における上端P2の高さ位置は、後面窓4Rの下端P1の高さ位置よりも上方に位置している。これにより後面窓4Rの下端P1は後方構造部44の前方部における上端P2よりも低い位置にあるため、オペレータがこの後面窓4Rを通して後方構造部44の側方を視認することが容易となる。
【0069】
また本実施の形態によれば、
図1に示されるように、後方構造部44の前方部は、所定の高さ位置P3(下方位置)から上端P2まで延在する傾斜部44a1を有している。この傾斜部44a1は、所定の高さ位置P3から上端P2に向かうに従って後方に位置するように傾斜している。これにより、後面窓4Rが後方構造部44の前方部と干渉することが抑制される。
【0070】
なお後面窓4Rと後方構造部44の前方部との干渉を避けるという意味においては、後方構造部44の前方部における傾斜部44a1の傾斜角度θ3は、後面窓4Rの傾斜角度θ1以上であることが好ましい。
【0071】
また本実施の形態によれば、
図6に示されるように、後面窓4Rの最上端P4の高さ位置は、1対の後側面窓4Sの各々の前端における上端P6の高さ位置よりも高い。これにより上端P6真上における屋根部分3と天井部分との間の隙間の寸法L3を大きく確保することができるとともに、後面窓4Rの高さを高くすることができる。このため上記隙間への電装部品などの配置が容易になるとともに、後方視認性が良好となる。
【0072】
また本実施の形態によれば、
図5に示されるように、平面視において、第1の後側面窓4S(4SR)と第2の後側面窓4S(4SL)との間の距離W2は前方から後方に向かうに従って小さくなる。これにより第1の後側面窓4S(4SR)と後面窓4Rとの接合角度および第2の後側面窓4S(4SL)と後面窓4Rとの接合角度が直角(90°)より大きくなる。このため第1の後側面窓4S(4SR)と後面窓4Rとを安定して接合できるとともに、第2の後側面窓4S(4SL)と後面窓4Rとを安定して接合することができる。
【0073】
また本実施の形態によれば、
図5に示されるように、平面視において、1対の最後端ピラー2Rの各々においてキャブ10の内部空間とは反対側を向いた側面2RSは、前方から後方に向かうに従ってキャブ10の内部空間側に位置するように構成されている。これにより、最後端ピラー2Rの側面2RSと後側面窓4Sの面とを略平行にすることができる。このため最後端ピラー2Rの側面2RSと後側面窓4Sの面との接着面を確保することができる。
【0074】
また本実施の形態によれば、
図6に示されるように、空気調和ユニット8は、運転席7の前方に配置されている。空気調和ユニット8が運転席7の後方に配置された場合、空気調和ユニット8が運転席7の前方に配置される場合と比較して、運転席7はキャブ10の内部において前方側に配置されることになる。この場合、大柄のオペレータが運転席7に着座すると、オペレータの足元空間が狭くなる。
【0075】
これに対して
図6に示されるように空気調和ユニット8が運転席7の前方に配置された場合、運転席7はキャブ10の内部において後方側に寄せて配置することができる。このため大柄のオペレータが運転席7に着座しても、オペレータの足元空間を広く確保することができる。
【0076】
また空気調和ユニット8は、前方コンソール12の下方であって、前方コンソール12および前面窓5Fの各々の前端よりも前方側に突き出すように配置されている。このため前方コンソール12の真下領域のほとんどを避けて、空気調和ユニット8が配置されている。よって大柄のオペレータが運転席7に着座しても、空気調和ユニット8がオペレータの足元空間を狭めることを抑制可能である。
【0077】
また運転席7がキャブ10の内部において後方側に寄せて配置されても、上記のとおり後面窓4Rが傾斜することによりキャブ10の内部空間が上部後方において拡大されている。これにより、オペレータの後頭部付近の空間が広がるため、大柄のオペレータであっても運転席7をチルトさせることができ、オペレータが運転・作業操作時に窮屈な姿勢となることが抑制される。
【0078】
また空気調和ユニット8が運転席7の前方に配置されるため、リアカバー9と外装パネル11Rとの間にある空間の前後方向の寸法L2を、空気調和ユニット8の前後方向の寸法L1よりも小さくすることができる。これにより運転席7をキャブ10内の後方側に配置することができ、かつ運転席7の背凭れ部7aをより後方に傾斜させることができる。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。