(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記給送ユニットは、前記第1のシートの後端が前記シート検知部を通過するタイミングが前記所定のタイミングより遅くかつ前記第1のシートを給送している際に前記負荷検知部によって検知された前記パラメータが前記閾値以上の場合、前記第1のシートに対する前記給送動作を停止する、
ことを特徴とする請求項4に記載のシート給送装置。
前記給送ユニットは、シート給送方向において前記給送回転体の下流に配置され、前記ニップ部を通過したシートを搬送する搬送回転体と、前記給送回転体を駆動する第1駆動源と、前記搬送回転体を駆動する第2駆動源と、を有し、
前記負荷検知部は、前記第1駆動源に流れる電流を検知する第1電流センサと、前記第2駆動源に流れる電流を検知する第2電流センサと、を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
前記給送ユニットは、シート給送方向において前記給送回転体の下流に配置され、前記ニップ部を通過したシートを搬送する搬送回転体と、前記給送回転体を回転可能に支持する第1回転軸と、前記搬送回転体を回転可能に支持する第2回転軸と、を有し、
前記負荷検知部は、前記第1回転軸のひずみを検知する第1ひずみゲージと、前記第2回転軸のひずみを検知する第2ひずみゲージと、を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施の形態>
以下、図面に沿って第1の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、画像形成装置を正面から視た状態(
図1の視点)を基準にして上下左右及び手前奥の位置関係を表すものとする。
【0013】
[プリンタの概略構成]
本実施の形態に係るプリンタ1は、電子写真方式のフルカラーレーザビームプリンタである。プリンタ1は、
図1に示すように、装置本体であるプリンタ本体1Aと、プリンタ本体1Aの上方に設けられ、原稿の画像データを読み取る読取装置2と、を備えている。
【0014】
プリンタ本体1Aは、シートPに画像を形成する画像形成部1B及びシートPに画像を定着させる定着部20等を備えている。読取装置2とプリンタ本体1Aとの間にはシートPが排出される排出空間SPが形成されており、この排出空間SPには、排出されたシートPが積載される排出トレイ23が設けられている。また、プリンタ本体1Aには、画像形成部1BにシートPを給送する複数(本実施の形態では4つ)のシート給送装置30が設けられている。
【0015】
画像形成部1Bは、レーザスキャナ10と、4個のプロセスカートリッジ11と、中間転写ユニット1Cと、を備えた、いわゆる4ドラムフルカラー方式の画像形成部である。これらプロセスカートリッジは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色のトナー画像を形成する。各プロセスカートリッジ11は、感光ドラム12、帯電器13、現像器14、及び不図示のクリーナ等を備えている。画像形成部1Bの上方には、各色のトナーを収容したトナーカートリッジ15が、プリンタ本体1Aに対して着脱自在に装着されている。
【0016】
中間転写ユニット1Cは、駆動ローラ16a及びテンションローラ16b等に巻き掛けられる中間転写ベルト16を有しており、中間転写ベルト16は、4つのプロセスカートリッジ11の上方に配置されている。中間転写ベルト16は、各プロセスカートリッジ11の感光ドラム12に接触するように配置されると共に、不図示の駆動部に駆動される駆動ローラ16aによって、反時計回り方向に回転駆動される。中間転写ユニット1Cは、各感光ドラム12と対向する位置において中間転写ベルト16の内周面に当接する4つの1次転写ローラ19を備えており、中間転写ベルト16と感光ドラム12との間のニップ部として1次転写部TP1が形成されている。また、画像形成部1Bは、駆動ローラ16aと対向する位置において中間転写ベルト16の外周面に当接する2次転写ローラ17を備えている。この2次転写ローラ17と中間転写ベルト16との間のニップ部として、中間転写ベルト16に担持されたトナー像がシートPに転写される2次転写部TP2が形成されている。
【0017】
上述のように構成される各プロセスカートリッジ11において、感光ドラム12の表面には、レーザスキャナ10によって静電潜像が描き込まれた後、現像器14からトナーが供給されることで負極性に帯電した各色のトナー像が形成される。これらのトナー像は、1次転写ローラ19に正極性の転写バイアス電圧が印加されることで、各1次転写部TP1において順次中間転写ベルト16へと多重転写されて、中間転写ベルト16にフルカラーのトナー像が形成される。
【0018】
このような画像形成プロセスに並行して、シート給送装置30から給送されたシートPはレジストレーションローラ対(以下、レジローラ対と称する)40へ向けて搬送され、このレジローラ対40によって斜行補正される。レジローラ対40は、中間転写ベルト16に形成されたフルカラーのトナー像の転写タイミングに合わせたタイミングで、シートPを2次転写部TP2に搬送する。中間転写ベルト16に担持されたトナー像は、2次転写ローラ17に正極性の転写バイアス電圧が印加されることで、2次転写部TP2においてシートPへと2次転写される。
【0019】
トナー像を転写されたシートPは、定着部20において加熱及び加圧され、カラー画像がシートPに定着させられる。画像が定着されたシートPは、第1排出ローラ対25a又は第2排出ローラ対25bによって排出トレイ23へと排出されて積載される。なお、シートPの両面に画像を形成する場合には、シートPは定着部20を通過した後、正逆転可能な反転ローラ対22によってスイッチバックされる。そして、シートPは再搬送通路Rを介して2次転写部TP2へと再度搬送され、裏面に画像を形成される。
【0020】
[シート給送装置]
シート給送装置30は、
図2(a)(b)に示すように、プリンタ本体1A(
図1参照)に対して着脱可能なカセット106と、カセット106に収納されたシートを給送する給送ユニットとしての給送部100と、を有している。カセット106は、回動軸119aを中心に中板119を、回動軸120aを中心に昇降板120を回動可能に支持している。昇降板120は、中板119の下方に配置されると共に、昇降モータM1によって上下方向に回動される。シート積載部としての中板119は、昇降板120に下方から押されることで、
図2(a)に示す待機位置から
図2(b)に示す給送位置に上昇する。そして、中板119が給送位置に位置する際に、中板119に積載されたシートPが給送部100のピックアップローラ110に当接する。
【0021】
給送部100は、
図3及び
図4に示すように、中板119に積載されたシートを給送するピックアップローラ110と、ピックアップローラ110によって給送されたシートを1枚ずつ分離するフィードローラ111及びリタードローラ112と、を有している。給送回転体としてのフィードローラ111は、給送モータM2によって駆動されるフィードローラ軸115に回転可能に支持されており、第1回転軸としてのフィードローラ軸115には、昇降プレート113が揺動可能に支持されている。
【0022】
昇降プレート113には、アイドラ軸127及びピックアップローラ軸116が回転可能に支持されており、ピックアップローラ軸116には、上流回転体としてのピックアップローラ110が回転可能に支持されている。また、フィードローラ軸115、アイドラ軸127及びピックアップローラ軸116には、それぞれフィードギヤ124、アイドラギヤ125及びピックアップギヤ126が取り付けられている。これらフィードギヤ124、アイドラギヤ125及びピックアップギヤ126によって、給送モータM2によって駆動されるフィードローラ軸115の回転が、ピックアップローラ110が支持されるピックアップローラ軸116に伝達される。
【0023】
昇降プレート113は、ピックアップバネ114によって下方に付勢されており、このピックアップバネ114の付勢力によってピックアップローラ110は、所定の給送圧でシートと当接する。分離部材としてのリタードローラ112は、不図示のトルクリミッタを介してリタード軸112aに回転可能に支持されており、リタードバネ118によってフィードローラ111に向けて付勢されている。これにより、リタードローラ112は、ニップ部としての分離ニップ128においてフィードローラ111に圧接している。また、リタード軸112aには、不図示の駆動伝達機構を介して、給送モータM2からの駆動力が伝達されており、リタードローラ112は、給送モータM2が駆動することでシートをカセット106に戻す方向に回転しようとする。
【0024】
シート給送方向においてフィードローラ111及びリタードローラ112の下流には、内側ガイド121、外側ガイド122及び搬送ローラ対123が配置されている。搬送ローラ対123は、搬送回転体としての駆動ローラ123aと、従動ローラ123bと、を有しており、駆動ローラ123aは、第2回転軸としての回転軸123cに回転可能に支持されている。そして、回転軸123cが搬送モータM3によって駆動されることで、駆動ローラ123aが回転すると共に、従動ローラ123bが駆動ローラ123aに従動回転する。シート給送方向において駆動ローラ123a及び従動ローラ123bによって形成される搬送ニップ140の上流かつ分離ニップ128の下流には、搬送されるシートを検知するシート検知部としての搬送センサ130が配置されている。
【0025】
[シート給送動作]
シート給送ジョブが入力されるかカセット106がプリンタ本体1Aに挿入されると、昇降モータM1が駆動し、中板119が上昇する。中板119に積載された最上位のシートの位置は、不図示のセンサによって検知されており、
図2(b)に示すように、中板119が給送位置に位置すると、中板119は停止する。
【0026】
この状態で、第1駆動源としての給送モータM2及び第2駆動源としての搬送モータM3が駆動し、ピックアップローラ110が中板119に積載されたシートを給送する。ピックアップローラ110によって給送されたシートは、分離ニップ128において1枚ずつに分離される。具体的には、分離ニップ128にシートが1枚だけ給送された際には、リタード軸112aとリタードローラ112との間に設けられた不図示のトルクリミッタが空転し、リタードローラ112がフィードローラ111に連れ回る。また、分離ニップ128にシートが2枚以上給送された際には、リタードローラ112は、カセット106にシートを戻す方向に回転し、2枚目以降のシートがカセット106に戻される。なお、リタードローラ112には、駆動力が入力されなくてもよく、また、リタードローラ112に代えて分離パッドを設けてもよい。
【0027】
分離ニップ128によって1枚ずつに分離されたシートは、内側ガイド121及び外側ガイド122によって搬送ローラ対123に案内され、搬送ローラ対123の搬送ニップ140によってシート給送方向における下流に搬送される。なお、本実施の形態では、ピックアップローラ110、分離ニップ128及び搬送ニップ140によるシートの搬送速度は同じに設定されているが、これに限定されない。例えば、搬送ニップ140によるシートの搬送速度をピックアップローラ110及び分離ニップ128によるシートの搬送速度よりも速くして、生産性を向上してもよい。この場合、ピックアップローラ110及びフィードローラ111には、搬送ニップ140によって搬送されるシートからの動力伝達を切断するワンウェイクラッチが内蔵される。
【0028】
[制御ブロック]
図5は、本実施の形態に係る制御部131の制御ブロック図を示す。制御部131の入力側には、搬送センサ130、第1電流センサ132及び第2電流センサ133が接続されており、制御部131の出力側には、昇降モータM1、給送モータM2及び搬送モータM3が接続されている。第1電流センサ132は、給送モータM2に流れる電流を検知し、第2電流センサ133は、搬送モータM3に流れる電流を検知する。すなわち、これら第1電流センサ132及び給送モータ電流センサ133は、給送部100に作用する搬送負荷に応じたパラメータである給送モータM2及び搬送モータM3に流れる電流を検知する負荷検知部150を構成している。また、制御部131には、記憶部134が接続されており、記憶部134は、第1電流センサ132及び給送モータ電流センサ133の検知結果を記憶することができる。
【0029】
給送部100によってシートを連続して給送する際には、先行シートの給送開始タイミングからシートサイズに応じた所定時間が経過した後、後続シートの給送動作が開始される。この時、先行シートの後端と後続シートの先端との間には、所定距離以上の間隔(以下、紙間とする)を開けることが必要となる。紙間が狭すぎると、先行シートが通過しても搬送センサ130がOFFにならず、後続シートが搬送センサ130に到達するタイミングが分からない場合がある。また、先行シートの搬送に遅れが発生した際に、先行シートと後続シートが重なってしまって、シートがジャムする虞がある。
【0030】
このため、ある程度の余裕を持って紙間を設定する必要があるが、紙間が長すぎると、複数枚のシートを連続して給送するジョブに時間がかかり、生産性が低下してしまう。たとえ紙間を長く設定してもシートの搬送速度を上げれば、ジョブにかかる時間は短縮できるが、装置の駆動音が大きくなってユーザに不快感を与える虞がある。よって、紙間は問題が起こらない範囲でなるべく短く設定するのが好ましい。
【0031】
[搬送状態の判別方法]
次に、分離ニップ128におけるシートの搬送状態の判別方法について説明する。
図6(a)に示すように、分離ニップ128にシートが1枚だけ挟まっている状態で給送を行っている状態を1枚搬送状態と呼称する。1枚搬送状態において給送部100に発生している搬送負荷R1は、以下の式で表される。
R1=μp×Na+Ft+Fg ・・・(1)
μp:シート同士の摩擦係数
Na:ピックアップローラ110のシートへの当接力
Ft:トルクリミッタによって発生するせき止め力
Fg:内側ガイド121及び外側ガイド122とシートの摩擦等で発生する抵抗力
【0032】
一方、
図6(b)に示すように、分離ニップ128にシートが複数枚挟持されている状態を分離状態と呼称する。分離状態において給送部100に発生している搬送負荷R2は、以下の式で表される。
R2=μp×Na+μp×Nb+Fg ・・・(2)
Nb:フィードローラ111とリタードローラ112の当接力
【0033】
また、
図6(b)に示すように、リタードローラ112によって複数枚のシートが1枚ずつに分離されている状態では、以下の式が成り立っている。
Ft>μp×Nb ・・・(3)
よって、式(1)〜(3)により、以下の式が成り立つ。
R1>R2 ・・・(4)
【0034】
そして、例えばμp=0.4、Ft=300[gf]、Nb=300[gf]とすると、
R1−R2=180[gf]
となる。すなわち、1枚搬送状態に比べて、分離状態の方が、給送部100に発生している搬送負荷が180[gf]低いことになる。よって、この搬送負荷を検出することで、1枚搬送状態と分離状態とを判別することができる。本実施の形態では、この搬送負荷の検知を、給送モータM2又は搬送モータM3に作用する負荷トルクを検知することによって行っている。
【0035】
図7は、1枚搬送状態における給送モータM2及び搬送モータM3に作用する負荷トルクの推移を示すグラフである。そして、時間t1は、給送モータM2及び搬送モータM3の駆動が開始され、給送部100によるシートの給送動作が開始されたタイミングであり、時間t2は、シートの先端が搬送ニップ140に到達したタイミングである。時間t3は、給送モータM2の駆動がOFFとなるタイミングであり、時間t4は、シートの先端が搬送ローラ対123の次のローラ対に到達したタイミングである。
【0036】
時間t1〜t2の区間では、ピックアップローラ110及びフィードローラ111によってシートが搬送されるため、給送部100で発生する搬送負荷は全て給送モータM2が受ける。なお、時間t1〜t2の間に搬送モータM3にわずかな負荷トルクが発生しているが、これは、シートが搬送ニップ140に到達する前から搬送ローラ対123が回転しているためである。
【0037】
時間t2のタイミングで、シートの先端が搬送ニップ140に到達すると、搬送負荷が給送モータM2及び搬送モータM3に分配される。そのため、給送モータM2の負荷トルクは低下し、搬送モータM3の負荷トルクが上昇する。その後、時間t4のタイミングで、搬送ローラ対123の下流の回転体としてのローラ対(例えばレジローラ対40)にシートの先端が到達し、搬送モータM3の負荷トルクが低下する。
【0038】
図8(a)(b)は、給送モータM2の負荷トルクを示すグラフである。なお、
図8(a)(b)の実線は、1枚搬送状態における給送モータM2の負荷トルクの推移を示している。
図8(a)の破線は、シート給送動作開始時点で既に分離ニップ128にシートが複数枚突入していた場合の給送モータM2の負荷トルクの推移を示している。そして、分離状態でシート給送動作が開始されると、
図8(a)に示すように、時間t1〜t3の全域で給送モータM2の負荷トルクが1枚搬送状態に比して低くなる。
【0039】
図8(b)の破線は、シート給送動作開始時点では1枚搬送状態で、シート給送後に後続のシートが分離ニップ128に突入した場合の給送モータM2の負荷トルクの推移を示している。時間t5で分離ニップ128に後続のシートが突入すると、分離ニップ128が分離状態となり、その後の給送モータM2の負荷トルクが低くなる。
【0040】
図8(a)(b)のいずれの場合においても、時間t5〜t3の間の所定のタイミングにおける給送モータM2の負荷トルクを検知することで、1枚搬送状態又は分離状態の判別をすることができる。例えば、時間t2の直前の時間t6における給送モータM2の負荷トルクが閾値L1以上であれば1枚搬送状態であると判別し、閾値L1未満であれば分離状態であると判別することができる。
【0041】
図9(a)(b)は、搬送モータM3の負荷トルクを示すグラフである。なお、
図9(a)(b)の実線は、1枚搬送状態にける搬送モータM3の負荷トルクの推移を示している。
図9(a)の破線は、搬送ニップ140に先行シートの先端が到達した時点で、既に分離ニップ128に後続シートが突入していた場合の搬送モータM3の負荷トルクの推移を示している。そして、分離ニップ128が分離状態の際に搬送ニップ140によってシートが搬送されると、
図9(a)に示すように、時間t2以降の全域で搬送モータM3の負荷トルクが1枚搬送状態に比して低くなる。
【0042】
図9(b)の破線は、搬送ニップ140に先行シートの先端が到達した時点では1枚搬送状態で、その後、後続のシートが分離ニップ128に突入した場合の搬送モータM3の負荷トルクの推移を示している。時間t7で分離ニップ128に後続のシートが突入すると、分離ニップ128が分離状態となり、その後の搬送モータM3の負荷トルクが低くなる。
【0043】
図9(a)(b)のいずれの場合においても、時間t7〜t4の間の所定のタイミングにおける搬送モータM3の負荷トルクを検知することで、1枚搬送状態又は分離状態の判別をすることができる。例えば、時間t4の直前の時間t8における搬送モータM3の負荷トルクが閾値L2以上であれば1枚搬送状態であると判別し、閾値L2未満であれば分離状態であると判別することができる。
【0044】
以上のように、給送モータM2又は搬送モータM3のいずれかの負荷トルクを検知することができれば、分離ニップ128が1枚搬送状態か分離状態かを判別することができる。本実施の形態では、給送モータM2及び搬送モータM3は、DCモータであり、速度フィードバック制御を用いることで、所望の速度で動作するように制御している。この場合、モータにかかる負荷の大きさに伴って、モータに流れる電流値が変化する。本実施の形態ではこれを利用し、給送モータM2及び搬送モータM3の駆動電流を、それぞれ第1電流センサ132及び第2電流センサ133(
図5参照)によって検知することで、給送モータM2及び搬送モータM3の負荷トルクを検知している。なお、第1電流センサ132及び第2電流センサ133は、電流計、マルチメータ及びクランプメータ等のいずれの電流センサから構成されてもよい。また、ステッピングモータを用いて、モータに流れる電流を、トルクを発生する成分と、磁束を発生させる成分とに分解し、それぞれの電流を独立に制御するベクトル制御を採用し、トルク発生成分の電流値から負荷トルクを検知してもよい。
【0045】
[シート給送制御]
次に、
図10を参照して、本実施の形態における給送部100のシート給送制御を説明する。シート給送ジョブが開始されると(ステップS1)、制御部131は、先行シート搬送時に測定された給送モータM2又は搬送モータM3の負荷トルクが所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS2)。例えば、
図8(a)(b)に示すように、制御部131は、時間t6における給送モータM2の負荷トルクが閾値L1以上であるか否かを判定する。また、例えば、
図9(a)(b)に示すように、制御部131は、時間t8における搬送モータM3の負荷トルクが閾値L2以上であるか否かを判定する。なお、シート給送ジョブにおける1枚目のシートの給送の場合には、ステップS2をスキップしてステップS4に進む。
【0046】
先行シート搬送時に測定された給送モータM2又は搬送モータM3の負荷トルクが所定の閾値以上の場合(ステップS2:YES)、制御部131は、先行シート搬送時には分離ニップ128が1枚搬送状態であったと判断する。すなわち、後続シートの給送動作の開始時に、後続シートの先端が分離ニップ128を通過しておらず、制御部131は、通常タイミングで給送モータM2及び搬送モータM3を駆動させる(ステップS4)。すなわち、制御部131は、第1の給送タイミングとしての通常タイミングで後続シートの給送動作を実行する。ここで、先行シートの給送開始から後続シートの給送開始タイミングまでの間隔を給送間隔と定義する。そして、通常タイミングで後続シートの給送動作が実行された際の給送間隔を、第1の給送間隔と呼称する。給送間隔を適宜設定することにより、先行シートと後続シートとの紙間が決定される。
【0047】
一方で、先行シート搬送時に測定された給送モータM2又は搬送モータM3の負荷トルクが所定の閾値未満の場合(ステップS2:NO)、制御部131は、先行シート搬送時には分離ニップ128が分離状態であったと判断する。すなわち、
図11に示すように、後続シートP2の給送動作の開始時に、後続シートP2の先端P2aが分離ニップ128を通過していることとなる。この状態で第2のシートとしての後続シートP2の給送動作をスタートすると、後続シートP2の先端P2aの分離ニップ128からの飛び出し量によっては、第1のシートとしての先行シートP1との紙間が十分に取れなくなる可能性がある。従来は、この飛び出し量も見越して、紙間を広めに設定していた。
【0048】
本実施の形態では、先行シートP1の搬送時に測定された給送モータM2又は搬送モータM3の負荷トルクが所定の閾値未満の場合(ステップS2:NO)、後続シートP2の給送動作の開始タイミングを通常タイミングよりもΔt1遅らせる(ステップS3)。そして、制御部131は、通常タイミングよりもΔt1遅い第2の給送タイミングで給送モータM2及び搬送モータM3を駆動させ(ステップS4)、駆動中の給送モータM2及び搬送モータM3の負荷トルクの測定を開始する(ステップS5)。このように、後続シートの給送開始タイミングを通常タイミングよりもΔt1遅く設定した場合の給送間隔を、第2の給送間隔と呼称する。すなわち、第2の給送間隔は、第1の給送間隔よりも
長く、給送モータM2及び搬送モータM3は、第1の給送間隔で制御された場合に比較して、第2の給送間隔で制御された場合の方が、駆動開始タイミングが遅くなる。
【0049】
制御部131は、搬送センサ130がOFFからONに変化してから所定時間後、すなわち
図7の時間t3において給送モータM2の駆動を停止する(ステップS6,S7)。更に、搬送センサ130がONからOFFに変化すると(ステップS8)、制御部131は、シート給送ジョブが終了したかを判断する(ステップS9)。シート給送ジョブが終了していないと判断された場合(ステップS9:NO)、ステップS2〜S8の処理を繰り返し、シート給送ジョブが終了したと判断された場合(ステップS9:YES)、シート給送制御が終了する。
【0050】
ステップS3におけるΔt1の値は、あまり大きすぎると、所望のタイミングで2次転写部TP2にシートを搬送することができなくなる可能性がある。よって、Δt1は、所望のタイミングで2次転写部TP2にシートが到達可能な範囲内に設定される。
【0051】
以上のように、シート給送時にシートの先端が分離ニップ128を超えているか否かによってシートの給送動作の開始タイミングを変更するので、先行シートと後続シートとの紙間のマージンを低減することができ、紙間を短くすることができる。このため、シートの搬送速度は従来のままで、生産性を向上することができる。若しくは、生産性は従来のままで、シートの搬送速度を低減でき、装置の駆動音を低減することができる。
【0052】
紙間に設定されるマージンは、給送するシートの先端の位置を精度良く判定できるほど、小さくすることができる。本実施の形態では、給送モータM2又は搬送モータM3の負荷トルクの検出によって分離ニップ128の搬送状態を判断していたが、この精度は、搬送方向における分離ニップ128のニップ幅に依存する。ローラ硬度にも依るが、分離ニップ128のニップ幅は、おおむね2[mm]以下である。このため、例えばシートの先端によって押圧されて回動するフラグを用いたフラグセンサに比して、本実施の形態は、給送するシートの先端の位置を精度良く判定することができる。
【0053】
また、フラグセンサは、シートの斜行を防ぐために搬送路の幅方向における中央部にフラグを設ける必要がある。このように、フラグセンサは、配置の自由度が低く、装置が大型化する要因となっていた。一方で、本実施の形態のように給送モータM2又は搬送モータM3の負荷トルクを検知する電流センサは、搬送路内に設ける必要もなく、配置の自由度が高い。
【0054】
<第2の実施の形態>
次いで、本発明の第2の実施の形態について説明するが、第2の実施の形態は、第1の実施の形態の負荷トルクの閾値を随時更新するものである。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0055】
分離ニップ128の搬送状態が1枚搬送状態及び分離状態のいずれであるかを判別するための負荷トルクの閾値は、予め固定値として設定していてもよいが、その場合、シートの種類やサイズによる搬送負荷のバラつきは無視されてしまう。すなわち、シートの種類やサイズによって、内側ガイド121及び外側ガイド122とシートの摩擦等で発生する抵抗力Fgがバラつくことが有り、給送されるシートの種類やサイズ毎に負荷トルクの閾値を用意する必要がある。また、給送部100による給送動作を継続するにつれて、駆動系の摺動負荷が変化していくこともある。このように、閾値が固定値として設定されると、分離ニップ128の搬送状態を判別することが困難となる可能性があるため、閾値は随時修正していくのが望ましい。
【0056】
図12は、閾値を修正するシート給送制御を示すフローチャートである。なお、
図12のステップS11〜S19は、
図10のステップS1〜S9と同様であるため、説明を省略する。制御部131は、
図12に示すように、ステップS16の処理の後に、搬送センサ130がONとなるタイミングが所定のタイミングよりも遅いか否かを判断する(ステップS21)。
【0057】
すなわち、
図11に示すように、後続シートP2の給送開始時に後続シートP2の先端が分離ニップ128を通過している場合、カセット106からシートが搬送される場合に比して搬送センサ130がONとなるタイミングが早い。このため、所定のタイミングよりも早く搬送センサ130がONとなっていれば、先行シートP1の給送時に分離ニップ128が分離状態であったことが分かる。また、所定のタイミングよりも遅く搬送センサ130がONとなっていれば、先行シートP1の給送時に分離ニップ128が1枚搬送状態であったことが分かる。
【0058】
このため、搬送センサ130がONとなるタイミングが所定のタイミングよりも遅い場合(ステップS21:YES)、制御部131は、先行シートP1搬送時の負荷トルクを、1枚搬送状態の負荷トルクとして記憶部134(
図5参照)に記憶させる。そして、制御部131は、記憶部134に記憶された負荷トルクに基づいて、閾値の更新及び修正を行う(ステップS23)。例えば、制御部131は、記憶部134に記憶された10個の1枚搬送状態の負荷トルクの平均値から、一定の値を引いた値を新しい閾値として設定する。搬送センサ130がONとなるタイミングが所定のタイミングよりも早い場合(ステップS21:NO)、又はステップS23の処理が終了すると、ステップS17に進む。
【0059】
以上のように、モータの負荷トルクの閾値を随時更新することで、シートの種類やサイズ、駆動系の摺動負荷の変化等の影響を受けず、精度良く分離ニップ128の搬送状態を判別することができる。これにより、給送されるシートの先端の位置を高精度で把握することができ、紙間を短くすることができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、1枚搬送状態の負荷トルクを用いて閾値の更新及び修正を行ったが、これに限定されない。例えば、分離状態の負荷トルクを記憶しておき、これに対して一定の値を加えた値を新しい閾値として設定してもよい。
【0061】
<第3の実施の形態>
次いで、本発明の第3の実施の形態について説明するが、第3の実施の形態は、第1の実施の形態のシート給送制御を一部変更したものである。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0062】
後続シートP2の給送動作の開始前に、搬送センサ130がONである場合は、次の2パターンの状況が考えられる。1つは、
図13(a)に示すように、先行シートの給送時に後続シートP2が大幅に連れ送られてしまい、後続シートP2を搬送センサ130が検知している場合である。もう1つは、
図13(b)に示すように、先行シートP1の給送中にジャムが発生し、ジャムした先行シートP1を搬送センサ130が検知している場合である。搬送センサ130のみの情報だと、上述したどちらの状況か分からないが、給送モータM2又は搬送モータM3の負荷トルクを検知することで、どちらの状況かを判別することができる。
【0063】
本実施の形態における給送部100のシート給送制御を、
図14に示すフローチャートを参照しながら説明する。
図14に示すように、シート給送ジョブが開始されると(ステップS40)、制御部131は、先行シートP1搬送時において搬送センサ130がONからOFFとなるタイミングが所定のタイミングより早いか否かを判断する(ステップS41)。搬送センサ130がOFFとなるタイミングが所定のタイミングより早い場合(ステップS41:YES)、ステップS32に進むが、ステップS32〜S39については、
図10のステップS2〜S9と同じであるため説明を省略する。
【0064】
搬送センサ130がOFFとなるタイミングが所定のタイミングより遅い場合(ステップS41:NO)、制御部131は、先行シートP1搬送時に測定された負荷トルクが所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS42)。例えば、
図8(a)(b)に示すように、制御部131は、時間t6における給送モータM2の負荷トルクが閾値L1以上であるか否かを判定する。また、例えば、
図9(a)(b)に示すように、制御部131は、時間t8における搬送モータM3の負荷トルクが閾値L2以上であるか否かを判定する。
【0065】
先行シートP1搬送時に測定された給送モータM2又は搬送モータM3の負荷トルクが所定の閾値以上の場合(ステップS42:YES)、後続シートP2が分離ニップ128に到達していないため、
図13(b)に示すように先行シートP1はジャムしている。このため、制御部131は、先行シートP1の搬送動作を停止すると共に、シート給送ジョブを中止する(ステップS43)。これにより、駆動系の部品に過負荷がかかったり、シートが機内の隙間に潜り込んでしまったりすることを防止できる。
【0066】
先行シートP1搬送時に測定された給送モータM2又は搬送モータM3の負荷トルクが所定の閾値未満の場合(ステップS42:NO)、後続シートP2が分離ニップ128に到達しているため、
図13(a)に示すように、後続シートP2が連れ送られている。このため、制御部131は、後続シートP2の給送動作の開始タイミングを通常タイミングよりもΔt2遅らせる(ステップS44)。そして、制御部131は、通常タイミングよりもΔt2遅い第3の給送タイミングで、後続シートP2の給送動作を開始する(ステップS34)。このように、後続シートの給送開始タイミングを通常タイミングよりもΔt2遅く設定した場合の給送間隔を、第3の給送間隔と呼称する。すなわち、第3の給送間隔は、第2の給送間隔よりも
長い。これにより、後続シートP2が大幅に分離ニップ128を通過した状態から給送されても、シートのジャムを防止することができる。なお、後続シートP2の先端P2aの分離ニップ128からの飛び出し量は、
図11よりも大きいので、Δt2の値は、Δt1の値よりも大きく設定される(Δt2>Δt1)。
【0067】
以上のように、搬送センサ130の情報と、給送モータM2又は搬送モータM3の負荷トルクの情報と、を組み合わせることで、先行シートP1がジャムしているのか後続シートP2が大幅に連れ送られているのかを判別することができる。そして、この判別結果に応じて制御を変更することで、シートのジャムを防止したり、部品の破損を防止したりすることができる。
【0068】
なお、既述のいずれの形態においても、第1電流センサ132及び第2電流センサ133の両方を設けたが、第1電流センサ132及び第2電流センサ133の少なくともいずれか一方を設ければよい。また、給送モータM2及び搬送モータM3の負荷トルクは、それぞれ第1電流センサ132及び第2電流センサ133によって検知された電流値に基づいて検知されたが、これに限定されない。例えば、
図15に示すように、内部に第1ひずみゲージ161が搭載されているトルクセンサを、フィードローラ軸115に取り付け、トルクセンサから出力される電圧により、フィードローラ111の負荷トルクを検知してもよい。同様にして、搬送ローラ対123の駆動ローラ123aの回転軸123c(
図3参照)に第2ひずみゲージ162が搭載されているトルクセンサを取付け、搬送ローラ対123の負荷トルクを検知してもよい。これら第1ひずみゲージ161及び第2ひずみゲージ162は、負荷検知部160を構成する。
【0069】
また、既述のいずれの形態においても、ピックアップローラ110によって中板119に積載されたシートを給送していたが、これに限定されない。例えば、ピックアップローラ110を省き、フィードローラ111によって中板119に積載されたシートを給送してもよい。また、第1電流センサ132及び第2電流センサ133によって測定される電流値及び設定される閾値は、制御部131の内部処理でプラスの値及びマイナスの値のいずれに設定するかは自由である。既述のいずれの形態においては、これら電流値及び閾値をプラスの値としていたが、これらをマイナスの値とした場合には、上述したフローチャートの閾値の判定は、「以上」と「未満」とが逆となる。
【0070】
また、既述のいずれの形態においても、給送開始時に後続シートP2の先端が分離ニップ128を超えていた場合、給送動作の開始タイミングを遅らせていたが、紙間が適正な値になるのであれば、他の方法を用いてもよい。例えば、給送開始時に後続シートP2の先端が分離ニップ128を超えていた場合、給送動作の開始タイミングは通常タイミングのままで、給送モータM2の駆動速度を遅くしてもよい。すなわち、先行シートP1を給送した際の第1電流センサ132又は第2電流センサ133の検知結果に応じて、第1の給送速度又は第1の給送速度よりも遅い第2の給送速度で、後続シートP2に対して給送動作を実行してもよい。
【0071】
また、既述のいずれの形態においても、電子写真方式のプリンタ1を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ノズルからインク液を吐出させることでシートに画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置にも本発明を適用することが可能である。