(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガスカーテンにより形成される前記ガス膜と、前記液体カーテンにより形成される前記液膜との間に設けられ、前記アシストガスの前記液膜への流通を阻害する遮蔽板を、さらに備え、
前記遮蔽板は、前記レーザを通過させるレーザ通過穴を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の遮蔽装置。
前記液体カーテンは、前記液膜を複数形成する場合、表面形状が鉛直方向に亘って凹凸状に形成された前記液膜である鉛直凹凸液膜を、前記レーザの前記照射方向において、最上流側に形成することを特徴とする請求項8に記載の遮蔽装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のビーム捕捉装置では、流体ジェットを用いており、流体ジェットは、水と気泡を含んでいることから、流体ジェットにおける水の割合は、少ないものとなっている。流体ジェットにおける水の割合が少ないと、レーザビームのエネルギーを吸収する効率、すなわちレーザビームの遮蔽効率(吸収効率)が低いことから、特に、高出力レーザを用いる場合には、高出力レーザを好適に遮断することができない可能性がある。また、レーザビームは、流体ジェットの水滴によって散乱することから、散乱するレーザビームの照射方向を制御することができず、装置の筐体内部に照射される可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、レーザの散乱を抑制しつつ、レーザの遮蔽効率を向上させることができる遮蔽装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の遮蔽装置は、レーザを遮蔽する遮蔽装置において、前記レーザの周囲には、前記レーザの照射方向に沿ってアシストガスが流通しており、前記レーザ及び前記アシストガスを内部に導入する開口が形成された筐体と、前記筐体内部において、導入された前記レーザに交差する液膜を形成する液体カーテンと、前記照射方向において、前記液体カーテンの上流側の前記筐体内部に設けられ、導入された前記アシストガスに交差するガス膜を形成するガスカーテンと、を備え、前記液体カーテンにより形成される液膜は、前記レーザを遮蔽し、前記ガスカーテンにより形成されるガス膜は、前記アシストガスの前記液膜への流通を遮蔽することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、液体カーテンにより形成される液膜には、レーザが照射される。このとき、液膜は、気泡をほぼ含まないことから、液体の割合が多いものとなるため、レーザの照射エネルギーを効率よく吸収することができる。また、液膜は、水滴形状ではないことから、レーザの散乱を抑制することができる。さらに、ガスカーテンは、アシストガスの液体カーテンへの流通を遮蔽することから、アシストガスにより液膜が揺れることを抑制できるため、液膜によるレーザのエネルギーの吸収を安定的に行うことができる。なお、液体としては、例えば、水が用いられ、また、アシストガスとしては、例えば、空気、または不活性ガスが用いられるが、アシストガスにより液膜が揺れることを抑制できるものであれば、アシストガスの種類は限定されない。
【0008】
また、前記ガスカーテンは、前記ガス膜の流通方向が、前記液膜へ向かう前記アシストガスの流通方向に対して相殺する方向となるように、前記ガス膜を形成することが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、アシストガスの液膜への流入をより遮蔽することができる。
【0010】
また、前記レーザは、加工機械で用いられるkWオーダーの出力となる高出力レーザであることが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、液膜により高出力レーザのエネルギーを効率よく吸収できることから、レーザが高出力レーザであっても適用することが可能となる。
【0012】
また、前記液体カーテンにより形成される前記液膜の流速は、2m/s以上28m/s以下の範囲となっていることが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、液膜の流速を28m/s以下とすることで、液膜の流速がジェット流とはならないことから、気泡の発生を抑制すると共に、遮蔽効率の高い液膜を形成することができる。また、液膜の流速を2m/s以上とすることで、kw級高出力レーザ使用時のエネルギーにより液膜から気体が発生することを抑制することができる。なお、より低いレーザ出力においては、2m/s以下でも使用することができる。
【0014】
また、前記ガスカーテンにより形成される前記ガス膜と、前記液体カーテンにより形成される前記液膜との間に設けられ、前記アシストガスの前記液膜への流通を阻害する遮蔽板を、さらに備え、前記遮蔽板は、前記レーザを通過させるレーザ通過穴を有することが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、遮蔽板は、レーザの通過を許容しつつ、アシストガスの液膜への流通を抑制することができる。このため、アシストガスにより液膜が揺れることをより抑制することができる。
【0016】
また、前記レーザ通過穴は、前記レーザの前記照射方向において、上流側から下流側に向かって広がる形状となっていることが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、アシストガスがレーザ通過穴を通過する場合であっても、レーザ通過穴は、上流側から下流側に向かって広がる形状となっていることから、レーザ通過穴においてアシストガスが分散し、アシストガスの流速が低下するため、アシストガスによる液膜への影響を低減できる。
【0018】
また、前記レーザは、照射方向に交差する面内において移動可能となっており、前記遮蔽板に設けられる前記レーザ通過穴を、前記レーザの移動に追従させて移動させる穴移動機構を、さらに備えることが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、レーザの移動に追従して、レーザ通過穴を移動させることができるため、レーザが遮蔽板に照射されることなく、レーザによる遮蔽板への損傷を抑制することができる。
【0020】
また、前記筐体内部のガスを排出するガス排出流路をさらに備えることが、好ましい。
【0021】
この構成によれば、筐体内部に、アシストガスおよびガス膜が導入されても、ガス排出流路を介して、ガスを好適に排出することができるため、筐体内部に滞留するガスによる液膜への影響を低減できる。
【0022】
また、前記液膜を形成する液体の供給流量を調整する流量調整部と、前記流量調整部を制御する制御部と、をさらに備え、前記制御部は、所定の周期で、前記供給流量を増減することで、前記液体カーテンは、前記液膜の表面形状を、鉛直方向に亘って凹凸状に形成することが、好ましい。
【0023】
この構成によれば、液膜によりレーザを鉛直方向に散乱させることができる。このため、レーザのエネルギー密度を低下させることができ、レーザを効率よく減衰させることができる。
【0024】
また、前記液体カーテンは、前記液膜を複数形成する場合、表面形状が鉛直方向に亘って凹凸状に形成された前記液膜である鉛直凹凸液膜を、前記レーザの前記照射方向において、最上流側に形成することが、好ましい。
【0025】
この構成によれば、最上流側において、鉛直凹凸液膜によりレーザを散乱させて、レーザのエネルギー密度を低下させ、エネルギー密度が低下したレーザを、下流側の水膜に入射させることができる。このため、レーザを効率よく減衰させることができる。
【0026】
また、前記液体カーテンは、前記液膜を形成する液体を流出させる流出口を有し、前記流出口は、前記液膜の表面形状を、水平方向に亘って凹凸状に形成する形状となっていることが、好ましい。
【0027】
この構成によれば、液膜によりレーザを水平方向に散乱させることができる。このため、レーザのエネルギー密度を低下させることができ、レーザを効率よく減衰させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0030】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る遮蔽装置を側面から見たときの模式図である。
図2は、実施形態1に係る遮蔽装置を正面から見たときの模式図である。
図3は、実施形態1に係る水カーテンの流出口に係る模式図である。
【0031】
実施形態1に係る遮蔽装置10は、加工機械に設けられるものであり、加工機械において使用される加工用の高出力レーザを遮蔽する装置となっている。ここで、遮蔽装置10によって遮蔽される高出力レーザは、kWオーダーの出力となっており、レーザの照射エネルギーが大きいことから、遮蔽装置10は、高出力レーザの照射エネルギーを効率よく吸収可能なものとなっている。また、レーザの周囲には、レーザの照射方向に沿ってアシストガスが流通している。このため、遮蔽装置10には、レーザと共にアシストガスが導入される。
【0032】
図1に示すように、遮蔽装置10は、筐体15と、水カーテン(液体カーテン)16と、ガスカーテン17と、レーザ受け板18と、水循環機構19と、制御部20と、を備えている。
【0033】
筐体15は、方形の箱状に形成されており、その内部に、水カーテン16、ガスカーテン17及びレーザ受け板18を収容している。筐体15は、その内部にレーザ及びアシストガスを導入する開口25が貫通形成され、開口25は、筐体15の側面に貫通形成されている。このため、開口25を介して筐体15内部に導入されるレーザは、その照射方向が水平方向となる。また、筐体15は、内部の下部側が、水カーテン16で用いられる水(液体)を溜める水槽26となっている。この水槽26には、後述する水循環機構19が接続されている。さらに、筐体15には、内部に導入されるアシストガス及びガスカーテン17で用いられるガスを排出するためのガス排出口(ガス排出流路)27が形成される。ガス排出口27は、ガスカーテン17から噴射されるガスが吹き当たる筐体15の側面の部位、または、ガスカーテン17から噴射されるガスの流れ方向の下流側近傍の筐体15の側面の部位に貫通形成される。
【0034】
水カーテン16は、筐体15内部において、水膜(液膜)35を形成している。水カーテン16は、スリット開口(流出口)32が形成されたチャンバ31を含んで構成されている。チャンバ31は、筐体15内部の天井に取り付けられ、レーザの照射方向に対して直交する方向を長手方向とし、長手方向に延在して設けられている。チャンバ31の内部に供給される水は、チャンバ31の長手方向に亘って行き渡る。スリット開口32は、チャンバ31内に供給された水を流出させる流出口となっており、チャンバ31の下面側に設けられている。また、スリット開口32は、チャンバ31の長手方向に延在して形成されている。なお、水カーテン16では、水を用いたが、レーザの照射エネルギーを吸収可能な液体であればいずれであってもよい。この水カーテン16に、水が供給されると、水は、チャンバ31の長手方向に亘って行き渡り、スリット開口32から流出する。スリット開口32から流出した水は、レーザの照射方向に直交する面を有する、カーテン状の水膜35となる。
【0035】
水カーテン16により形成される水膜35には、レーザが照射される。水膜35は、レーザの照射エネルギーを吸収しており、鉛直方向の上方側から下方側に向かって流れる。つまり、水膜35は、筐体15内部の上部の天井側から、筐体15内部の下部の水槽26に向かって流れる。水膜35は、レーザの照射方向における厚さである膜厚が、10mm程度となっている。また、水膜35は、その流速が、2m/s以上28m/s以下の範囲となっている。ここで、下限となる水膜35の流速は、水膜35にレーザが照射されることにより水が蒸発しないような流速である。また、上限となる水膜35の流速は、ジェット流のような気泡が発生し易い流速とはなっておらず、気泡が発生し難い流速となっている。
【0036】
ガスカーテン17は、筐体15内部において、ガス膜36を形成している。ガスカーテン17は、ガスを噴射する1以上の噴射ノズル37を有している。噴射ノズル37は、
図1において、筐体15内部の天井に取り付けられる例を示しており、また、
図2において、筐体15内部の側面に取り付けられる例を示している。噴射ノズル37は、噴射するガスの流れ方向が一方向となるように設けられる。このため、噴射ノズル37を複数設ける場合には、噴射されるガス同士が対向する方向とならないように、複数の噴射ノズル37が配置される。ガスカーテン17で用いられるガスは、例えば、空気または不活性ガスである。このガスカーテン17に、ガスが供給されると、ガスは、噴射ノズル37から噴射される。噴射されたガスは、レーザの照射方向に直交する面を有するガス膜36となる。
【0037】
ガスカーテン17により形成されるガス膜36には、レーザの周囲にあるアシストガスが噴き当たる。ガス膜36は、噴き当たるアシストガスの水膜35への流入を抑制している。このガス膜36は、
図1において、鉛直方向の上方側から下方側に向かって流れ、
図2において、水平方向の一方側から他方側に向かって流れる。つまり、ガス膜36は、
図1において、筐体15内部の上部の天井側から、筐体15内部の下部の水槽26に向かって流れ、
図2において、筐体15内部の一方の側面から、筐体15内部の他方の側面に向かって流れる。
【0038】
また、水カーテン16とガスカーテン17とは、レーザの照射方向に並んで配置されており、水カーテン16が、ガスカーテン17に対して照射方向の下流側に配置され、換言すれば、ガスカーテン17が、水カーテン16に対して照射方向の上流側に配置されている。
【0039】
レーザ受け板18は、水カーテン16により減衰したレーザを受ける部材であり、例えば、金属を用いた金属板となっている。レーザ受け板18は、レーザを受けることで、筐体15内部においてレーザを遮蔽する。
【0040】
水循環機構19は、筐体15の水槽26に溜まった水を、水カーテン16に循環させる機構となっている。水循環機構19は、循環流路41と、循環流路41に設けられるポンプ42と、を有している。循環流路41は、その一方が筐体15の水槽26に接続され、その他方が水カーテン16のチャンバ31に接続されている。ポンプ42は、水槽26に溜まった水を、水カーテン16へ向けて圧送する。
【0041】
制御部20は、遮蔽装置10の作動を制御するものであり、各部の動作を制御する。具体的に、制御部20は、ポンプ42に接続されており、ポンプ42を作動させることで、水カーテン16に向けて水を供給したり、ポンプ42の作動を停止させることで、水カーテン16への水の供給を停止したりする。
【0042】
上記の遮蔽装置10において、加工機械で使用される高出力レーザ等のレーザが照射されると、照射されたレーザは、レーザの周囲のアシストガスと共に、筐体15の開口25を介して、筐体15内部に導入される。筐体15内部に導入されたレーザ及びアシストガスは、先ず、ガスカーテン17により形成されるガス膜36と交差する。アシストガスは、ガス膜36と交差することで、水膜35への流通が阻まれる。一方で、レーザは、ガス膜36を通過する。ガス膜36を通過したレーザは、水カーテン16により形成される水膜35と交差する。レーザは、水膜35と交差することで、照射エネルギーが吸収されることで減衰する。減衰したレーザは、レーザ受け板18に入射し、レーザ受け板18により遮蔽される。
【0043】
以上のように、実施形態1によれば、ほぼ気泡を含まない水膜35により、レーザの照射エネルギーを効率よく吸収することができる。また、水膜35は、水滴形状ではないことから、レーザの散乱を抑制することができる。さらに、ガスカーテン17は、アシストガスの水カーテン16への流通を遮蔽することから、アシストガスにより水膜35が揺れることを抑制できるため、水膜35によるレーザのエネルギーの吸収を安定的に行うことができる。
【0044】
また、実施形態1によれば、水膜35によるレーザの遮蔽効率が高いことから、高出力レーザを適用することが可能である。
【0045】
また、実施形態1によれば、水膜35の流速を2m/s以上28m/s以下の範囲とすることで、水膜35における気泡の発生を抑制し、また、レーザの照射による水蒸気の発生を抑制できる。
【0046】
また、実施形態1によれば、筐体15内部に、アシストガスおよびガス膜36が導入されても、ガス排出口27を介して、ガスを好適に排出することができるため、筐体内部に滞留するガスによる水膜35への影響を低減できる。
【0047】
[実施形態2]
次に、
図4を参照して、実施形態2に係る遮蔽装置50について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図4は、実施形態2に係る遮蔽装置を側面から見たときの模式図である。
【0048】
実施形態2の遮蔽装置50は、ガスカーテン17により形成されるガス膜36が、実施形態1のガス膜36と異なっている。具体的に、遮蔽装置50に設けられる噴射ノズル37は、噴射ノズル37から噴射されるガスの流れ方向が、つまり、ガス膜36の形成される方向が、アシストガスの流れ方向に対して、相殺する方向に傾いた方向となっている。具体的に、ガス膜36の流れ方向は、アシストガスの流れ方向の下流側から上流側に向かうベクトルと、鉛直方向のベクトルとを合成した方向となっている。
【0049】
以上のように、実施形態2によれば、ガス膜36によりアシストガスの流れをより好適に阻害できるため、アシストガスの水膜35への流入をより遮蔽することができる。
【0050】
[実施形態3]
次に、
図5から
図9を参照して、実施形態3に係る遮蔽装置60について説明する。なお、実施形態3でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1及び2と異なる部分について説明し、実施形態1及び2と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図5は、実施形態3に係る遮蔽装置を側面から見たときの模式図である。
図6は、実施形態3に係る遮蔽装置の遮蔽板を示す斜視図である。
図7は、遮蔽板のレーザ通過穴を鉛直方向に切ったときの断面図である。
図8は、レーザ通過穴の移動に関する説明図である。
図9は、レーザ通過穴の大きさの変化に関する説明図である。
【0051】
実施形態3の遮蔽装置60は、実施形態1の遮蔽装置10に加えて、遮蔽板61と、穴移動機構62と、をさらに備えた装置となっている。
【0052】
遮蔽板61は、アシストガスの水膜35への流通を阻害する板となっており、その板面が、レーザの照射方向に直交するように配置されている。遮蔽板61は、ガスカーテン17により形成されるガス膜36と、水カーテン16により形成される水膜35との間に設けられている。遮蔽板61は、レーザを通過させるレーザ通過穴65が貫通して設けられている。
【0053】
穴移動機構62は、遮蔽板61に設けられるレーザ通過穴65を移動させる機構となっている。ここで、加工機械において用いられるレーザは、照射方向を変えずに、水平方向に平行移動可能となっている。このため、穴移動機構62は、レーザの移動に追従させてレーザ通過穴65を水平方向に移動させている。
【0054】
レーザ通過穴65は、断面円形状となっており、
図7に示すように、レーザの照射方向において、上流側から下流側に向かって拡径するテーパ形状となっている。
【0055】
また、穴移動機構62は、水平方向の一方側に設けられる一方側プレート68aと、水平方向の他方側に設けられる他方側プレート68bと、からなる一対のプレート68を含んで構成されている。一対のプレート68が突き合わされる部位には、それぞれ切り欠きが形成されており、また、遮蔽板61には、水平方向に延在するスリット69が形成されている。一対のプレート68は、遮蔽板61のスリット69を覆うように配置され、一対のプレート68の切り欠きによって、スリット69が覆われない部位がレーザ通過穴65となっている。
【0056】
上記の穴移動機構62は、一対のプレート68をそれぞれ水平方向に移動させることで、
図8に示すように、レーザ通過穴65を水平方向に移動させたり、
図9に示すように、レーザ通過穴65の水平方向における径を変更したりすることが可能となっている。
図8に示すように、レーザ通過穴65を水平方向に移動させる場合には、一対のプレート68同士の間を維持した状態で、一対のプレート68を水平方向に移動させる。また、
図9に示すように、レーザ通過穴65の水平方向における径を変更する場合には、一対のプレート68同士の間を変更する。
【0057】
そして、制御部20は、穴移動機構62に接続されており、レーザ通過穴65がレーザの移動に追従するように、穴移動機構62を制御する。
【0058】
以上のように、実施形態3によれば、遮蔽板61は、レーザの通過を許容しつつ、アシストガスの水膜35への流通を抑制することができる。このため、アシストガスにより水膜35が揺れることをより抑制することができる。
【0059】
また、実施形態3によれば、アシストガスがレーザ通過穴65を通過する場合であっても、レーザ通過穴65は、拡径するテーパ形状となっていることから、レーザ通過穴65においてアシストガスが分散し、アシストガスの流速が低下するため、アシストガスによる水膜35への影響を低減できる。
【0060】
また、実施形態3によれば、レーザの移動に追従して、レーザ通過穴65を移動させることができるため、レーザが遮蔽板61に照射されることなく、レーザによる遮蔽板61への損傷を抑制することができる。
【0061】
また、実施形態3によれば、レーザのスポット径に応じて、レーザ通過穴65の径を適切に変更できるため、レーザの通過を許容しつつ、アシストガスの水膜35への流通をより抑制することが可能となる。
【0062】
[実施形態4]
次に、
図10から
図12を参照して、実施形態4に係る遮蔽装置70について説明する。なお、実施形態4でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1から3と異なる部分について説明し、実施形態1から3と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図10は、実施形態4に係る遮蔽装置の水カーテンを正面から見たときの模式図である。
図11は、実施形態4に係る遮蔽装置の水カーテンを側面から見たときの模式図である。
図12は、水カーテンに供給される水の供給流量の変化を示すグラフである。
【0063】
実施形態4の遮蔽装置70は、実施形態1の遮蔽装置10に加えて、水膜35を形成する水の供給流量を調整する流量調整部71をさらに備えた装置となっている。
【0064】
図10に示すように、遮蔽装置70は、流量調整部71により水カーテン16へ供給する水の供給流量を調整することで、表面形状が鉛直方向において波状の凹凸形状となる水膜(鉛直凹凸液膜)35を形成している。流量調整部71は、水循環機構19の循環流路41に設けられる流量調整弁75を含んで構成されており、流量調整弁75は、制御部20によって制御されている。
【0065】
制御部20は、
図12に示すように、所定の周期Tで、流量調整弁75の開度を大きくしたり小さくしたりすることで、水の供給流量が時間に応じて波状に増減するように制御している。ここで、制御部20は、水カーテン16によって形成される水膜35の流速が、実施形態1と同様に、2m/s以上28m/s以下の範囲となるように制御している。つまり、
図12に示す下限の供給流量Qminは、水膜35の流速が2m/s以上となる供給流量であり、上限の供給流量Qmaxは、水膜35の流速が28m/s以下となる供給流量となっている。
【0066】
また、制御部20は、水膜35の表面形状を、下記の形状となるように、流量調整弁75を制御している。波状の凹凸形状となる水膜35は、その厚み方向が最大となる頂部35aと、厚み方向が最小となる底部35bと、有している。頂部35aにおける水膜35の膜厚Cは、実施形態1と同様に、10mm程度となっている。また、底部35bから頂部35aに突出する突出高さBは、最大で1mm程度とすることがよい。突出高さBは、レーザを散乱させるにあたって、効果の高いミー散乱を生じさせることが可能な高さとなっている。そして、頂部35a同士の間の間隔をピッチAとすると、「突出高さB:ピッチA=1:2」の関係となっている。
【0067】
以上のように、実施形態4によれば、鉛直方向において表面が凹凸形状となる水膜35によりレーザを鉛直方向に散乱させることができる。このため、レーザのエネルギー密度を低下させることができ、レーザを効率よく減衰させることができる。
【0068】
[実施形態5]
次に、
図13を参照して、実施形態5に係る遮蔽装置80について説明する。なお、実施形態5でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1から4と異なる部分について説明し、実施形態1から4と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図13は、実施形態5に係る遮蔽装置を側面から見たときの模式図である。
【0069】
実施形態5の遮蔽装置80は、水カーテン16により形成される水膜35が複数並べて設けられている。複数の水膜35は、レーザの照射方向に並べて設けられている。なお、複数の水膜35を設ける場合、実施形態4の表面が凹凸形状となる水膜35を、レーザの照射方向において、最上流側に配置している。また、表面が凹凸形状となる水膜35に対して、下流側に配置される水膜35は、実施形態1の水膜であってもよいし、後述する実施形態6の水膜35であってもよい。
【0070】
以上のように、実施形態5によれば、最上流側において、表面が凹凸形状となる水膜35によりレーザを散乱させて、レーザのエネルギー密度を低下させ、エネルギー密度が低下したレーザを、下流側の水膜35に入射させることができる。このため、レーザを効率よく減衰させることができる。
【0071】
[実施形態6]
次に、
図14から
図18を参照して、実施形態6に係る遮蔽装置90について説明する。なお、実施形態6でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1から5と異なる部分について説明し、実施形態1から5と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図14は、実施形態6に係る遮蔽装置の水カーテンを正面から見たときの模式図である。
図15は、実施形態6に係る遮蔽装置の他の水カーテンを正面から見たときの模式図である。
図16は、実施形態6に係る遮蔽装置の他の水カーテンを正面から見たときの模式図である。
図17は、実施形態6に係る水カーテンの流出口に係る模式図である。
図18は、実施形態6に係る他の水カーテンの流出口に係る模式図である。
【0072】
実施形態6の遮蔽装置90は、実施形態1の水カーテン16に、複数の流出口91をさらに加えた構成となっている。水カーテン16は、複数の流出口91を設けることで、表面が水平方向において波状の凹凸形状となる水膜(水平凹凸液膜)35を形成している。水カーテン16は、スリット開口32が形成されたチャンバ31に、複数の流出口91を形成している。なお、チャンバ31は、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。複数の流出口91は、
図17に示すように、チャンバの長手方向に並べて設けられ、流出口91同士の間の間隔は、所定の間隔となっている。なお、循環流路41は、下流側が複数に分岐して、チャンバ31及び流出口91のそれぞれに接続される。
【0073】
この水カーテン16により形成される水膜35は、スリット開口32から流出する水によって形成される少量部位35L、1つの流出口91から流出する水によって形成される中量部位35M、複数の流出口91から流出する水が重なり合うことで形成される多量部位35Hを有する。そして、水膜35は、水の供給流量の少ない方から順に、少量部位35L、中量部位35M、多量部位35Hとなっている。
【0074】
表面が水平方向において波状の凹凸形状となる水膜35は、
図15においては、流出口91の数、及び流出口91同士の間隔を調整することで、少量部位35L、中量部位35M及び多量部位35Hを含む凹凸形状を調整している。また、表面が水平方向において波状の凹凸形状となる水膜35は、
図16においては、流出口91の開口面積、及び水の供給流量を調整することで、少量部位35L、中量部位35M及び多量部位35Hを含む凹凸形状を調整している。
【0075】
なお、実施形態6の遮蔽装置90では、表面が水平方向において波状の凹凸形状となる水膜35を形成すればよいことから、例えば、
図18に示す構成としてもよい。
図18に示す水カーテン16は、チャンバ31の形成されるスリット開口32が、長手方向において波状に形成されている。そして、このスリット開口32から流出する水により形成される水膜35は、長手方向に波打つ水膜35となっている。
【0076】
以上のように、実施形態6によれば、水平方向において表面が凹凸形状となる水膜35によりレーザを鉛直方向に散乱させることができる。このため、レーザのエネルギー密度を低下させることができ、レーザを効率よく減衰させることができる。