(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の複数の交番電圧の印加によって振動する第1の振動子及び第2の複数の交番電圧の印加によって振動する第2の振動子を備え、前記第1の振動子の駆動力及び前記第2の振動子の駆動力によって移動体を移動させる駆動装置であって、
前記第1の振動子の駆動方向と前記第2の振動子の駆動方向とは互いに交差するように配置されており、
前記移動体の位置を検出する検出手段と、
前記移動体を移動させるための駆動指令が示す前記移動体の移動方向と前記第1の振動子の駆動方向との相対角度に基づいて前記第1の複数の交番電圧の電圧振幅を制御し、前記移動方向と前記第2の振動子の駆動方向との相対角度に基づいて前記第2の複数の交番電圧の電圧振幅を制御する第1の制御手段と、
前記第1の制御手段により、前記第1の複数の交番電圧及び前記第2の複数の交番電圧のそれぞれが制御された状態で、前記駆動指令と前記検出手段の検出結果との偏差に基づいて前記第1の振動子及び前記第2の振動子のそれぞれを制御する第2の制御手段と、を有し、
前記移動方向と前記第1の振動子の駆動方向との相対角度が前記移動方向と前記第2の振動子の駆動方向との相対角度より大きい場合に、前記第1の制御手段は、前記第1の複数の交番電圧の電圧振幅が前記第2の複数の交番電圧の電圧振幅より小さくなるように制御することを特徴とする駆動装置。
第1の複数の交番電圧の印加によって振動する第1の振動子及び第2の複数の交番電圧の印加によって振動する第2の振動子を備え、前記第1の振動子の駆動力及び前記第2の振動子の駆動力によって移動体を移動させる駆動装置であって、
前記第1の振動子の駆動方向と前記第2の振動子の駆動方向とは互いに交差するように配置されており、
前記移動体の位置を検出する検出手段と、
前記移動体を移動させるための駆動指令が示す前記移動体の移動方向と前記第1の振動子の駆動方向との相対角度に基づいて前記第1の複数の交番電圧の電圧振幅をフィードフォワード制御し、前記移動方向と前記第2の振動子の駆動方向との相対角度に基づいて前記第2の複数の交番電圧の電圧振幅をフィードフォワード制御する第1の制御手段と、
前記駆動指令と前記検出手段の検出結果との偏差に基づいて前記第1の振動子及び前記第2の振動子のそれぞれをフィードバック制御する第2の制御手段と、を有し、
前記移動方向と前記第1の振動子の駆動方向との相対角度が前記移動方向と前記第2の振動子の駆動方向との相対角度より大きい場合、前記第1の制御手段は、前記第1の複数の交番電圧の電圧振幅が前記第2の複数の交番電圧の電圧振幅より小さくなるように制御することを特徴とする駆動装置。
前記第2の制御手段は、前記偏差に基づいて前記第1の複数の交番電圧の位相差及び周波数の少なくとも一方を制御することにより前記第1の振動子を制御し、前記偏差に基づいて前記第2の複数の交番電圧の位相差及び周波数の少なくとも一方を制御することにより前記第2の振動子を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
前記駆動指令が変更されて前記相対角度が変更した場合、前記第1の制御手段は、前記第1の複数の交番電圧及び前記第2の複数の交番電圧のそれぞれの電圧振幅を変更する制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動装置。
前記第1の制御手段は、前記移動方向と前記駆動方向の相対角度を余弦演算した結果として得られた演算値に基づいて、前記第1の複数の交番電圧及び前記第2の複数の交番電圧のそれぞれの電圧振幅を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動装置。
前記第1の振動子の駆動方向又は前記第2の振動子の駆動方向と交差する方向に前記移動体を移動する際に生じる負荷を低減する負荷低減手段が備えられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の駆動装置。
前記第1の制御手段は、前記パルス発生手段が発生させる第1のパルス信号のパルス幅を制御することにより前記第1の複数の交番電圧の電圧振幅を制御し、前記パルス発生手段が発生させる第2のパルス信号のパルス幅を制御することにより前記第2の複数の交番電圧の電圧振幅を制御することを特徴とする請求項8に記載の駆動装置。
第1の複数の交番電圧の印加によって振動する第1の振動子及び第2の複数の交番電圧の印加によって振動する第2の振動子を備え、前記第1の振動子の駆動方向と前記第2の振動子の駆動方向とが互いに交差しており、前記第1の振動子の駆動力と前記第2の振動子の駆動力とを合成した合成駆動力によって移動体を駆動する駆動装置の制御方法であって、
前記移動体を移動するための駆動指令が示す移動方向と前記第1の振動子の駆動方向との相対角度に基づいて前記第1の複数の交番電圧の電圧振幅を制御し、前記移動方向と前記第2の振動子の駆動方向との相対角度に基づいて前記第2の複数の交番電圧の電圧振幅を制御する第1の制御ステップと、
前記移動体の位置を検出する検出ステップと、
前記第1の制御ステップで前記第1の複数の交番電圧及び前記第2の複数の交番電圧のそれぞれの電圧振幅が制御されている状態で、前記駆動指令と前記検出ステップにおける検出結果との偏差に基づいて前記第1の振動子及び前記第2の振動子のそれぞれを制御する第2の制御ステップと、を有し、
前記移動方向と前記第1の振動子の駆動方向との相対角度が前記移動方向と前記第2の振動子の駆動方向との相対角度より大きい場合に、前記第1の制御ステップでは、前記第1の複数の交番電圧の電圧振幅が前記第2の複数の交番電圧の電圧振幅より小さくなるように制御することを特徴とする制御方法。
第1の複数の交番電圧の印加によって振動する第1の振動子及び第2の複数の交番電圧の印加によって振動する第2の振動子を備え、前記第1の振動子の駆動方向と前記第2の振動子の駆動方向とが互いに交差しており、前記第1の振動子の駆動力と前記第2の振動子の駆動力とを合成した合成駆動力によって移動体を駆動する駆動装置の制御方法であって、
前記移動体を移動するための駆動指令が示す移動方向と前記第1の振動子の駆動方向との相対角度に基づいて前記第1の複数の交番電圧の電圧振幅をフィードフォワード制御し、前記移動方向と前記第2の振動子の駆動方向との相対角度に基づいて前記第2の複数の交番電圧の電圧振幅をフィードフォワード制御する第1の制御ステップと、
前記移動体の位置を検出する検出ステップと、
前記駆動指令と前記検出ステップにおける検出結果との偏差に基づいて前記第1の振動子及び前記第2の振動子のそれぞれをフィードバック制御する第2の制御ステップと、を有し、
前記移動方向と前記第1の振動子の駆動方向との相対角度が前記移動方向と前記第2の振動子の駆動方向との相対角度より大きい場合に、前記第1の制御ステップでは、前記第1の複数の交番電圧の電圧振幅が前記第2の複数の交番電圧の電圧振幅より小さくなるように制御することを特徴とする制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態による駆動装置(以下、多自由度駆動装置と呼ぶ)の一例について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、多自由度駆動装置を電子機器の1つである撮像装置の防振機構に用いた場合について説明するが、撮像装置以外の電子機器にも用いることができる。例えば、3軸方向に移動可能なステージの制御装置で用いることができる。
【0018】
図1は、本発明の実施形態による多自由度駆動装置の一例を説明するための図である。そして、
図1(a)はその構成を示す図であり、
図1(b)は側面からみた図である。
【0019】
図示の多自由度駆動装置は、複数のリニアアクチュエータを用いて、移動体をX軸方向およびY軸方向に駆動するとともに、角度θで示す方向に駆動する。なお、角度θはX軸から反時計回り方向の角度を示す。
【0020】
デジタルカメラ(以下、カメラと呼ぶ)などの撮像装置で用いられる防振機構では、2軸ジャイロセンサを用いてX軸およびY軸方向の振れ量を検知する。そして、当該振れ量を補正する位置指令信号XYを生成される。つまり、防振機構においては、位置指令信号XYに基づいて多自由度駆動装置を制御して移動体であるレンズ(防振レンズ)を駆動して防振制御を行う。
【0021】
図示の多自由度駆動装置は、ベース板101を有しており、当該ベース板1には複数の振動型モータ(振動子)103、104、105、および106が配置されている。そして、後述するように、振動型モータ(振動波モータ)103〜106の駆動によって移動体102を駆動する。なお、ここでは、移動体102は、例えば、防振レンズである。以降の説明では、複数の振動型モータ103〜106について、まとめて振動型モータ103〜106又は振動型モータ103、104、105および106と呼ぶ場合もあるが、各振動型モータを第1の振動型モータ103、第2の振動型モータ104、第3の振動型モータ105、第4の振動型モータ106と個別に呼ぶこともある。
【0022】
図示のように、振動型モータ103、104、105、および106は、XY座標系において、それぞれベース板1において駆動軸と平行な面における第3象限、第4象限、第1象限、および第2象限に配置されている。そして、第1の振動型モータ103及び第3の振動型モータ105のそれぞれの駆動方向と、第2の振動型モータ104及び第4の振動型モータ106のそれぞれの駆動方向とは、互いに交差している。
【0023】
ベース板1には位置センサ(検出手段)107、108、および109が配置され、位置センサ107によって移動体102のX方向における位置(現在の位置)を検出する。また、位置センサ108によって移動体102のY方向における位置を検出する。そして、位置センサ109によって移動体102の角度θ方向における位置を検出する。
【0024】
振動型モータ103〜106の各々は、2つの突起部を有する振動部材と圧電素子とを備える振動子であり、振動部材と圧電素子とは接着などによって一体化されている。そして、振動型モータ103〜106は、取り付け部材(図示せず)を介してベース板1に取り付けられ、突起部が移動体102に加圧接触する。
【0025】
移動体102にはスケール部107’、108’、および109’が配設されており、これらスケール部107’、108’、および109’はそれぞれ位置センサ107、108、および109の上側に位置している。これによって、例えば、移動体102の移動に応じてスケール部107’がX方向に移動すると、その移動量に応じて位置センサ107はX方向位置信号を出力する。同様に、スケール部108’のY方向の移動およびスケール部109’のθ方向の移動に応じて、それぞれ位置センサ108および109はY方向位置信号およびθ方向位置信号を出力する。
【0026】
図示の多自由度駆動装置では、振動型モータ103〜106の駆動力をベクトル合成した方向に移動体102を駆動する。
【0027】
図2は、
図1に示す振動型モータの駆動を説明するための図である。そして、
図2(a)は振動型モータの構成の一例を示す斜視図であり、
図2(b)は
図2(a)に示す圧電素子の電極パターンを示す図である。また、
図2(c)は振動型モータに生じる駆動モードの一例を示す斜視図であり、
図2(d)は振動型モータに生じる駆動モードの他の例を示す斜視図である。
【0028】
なお、
図2においては、移動体を参照番号201で示す。また、ここでは、振動型モータ103〜16の構成は同一であるので、振動型モータ103に注目してその構成を説明する。
【0029】
図2(a)に示すように、振動型モータ103は、圧電素子204を有しており、当該圧電素子204は弾性体203に接着されている。そして、圧電素子204に交番電圧(駆動信号)を印加することによって、例えば、
図2(c)および
図2(d)に示す2つの振動モードが発生して、突起部202に加圧接触する移動体201が矢印で示す方向に移動する。
【0030】
図2(b)に示すように、圧電素子204には電極パターンが形成されており、例えば、圧電素子204には、長手方向に2等分された電極領域が形成されている。そして、電極領域における分極方向は同一方向(+)とされる。2つの電極領域のうち右側に位置する電極領域には交番電圧V1が印加され、左側に位置する電極領域には交番電圧V2が印加される。
【0031】
交番電圧V1およびV2を第1の駆動モード(Aモード)の共振周波数付近の周波数で、かつ同位相の交番電圧とする。このような交番電圧を印加すると、圧電素子204(2つの電極領域)はある瞬間には伸び、そして、他の瞬間には縮むことになる。この結果、振動型モータ103には、
図2(c)に示すAモードの振動が発生する。
【0032】
一方、交番電圧V1およびV2を第2の駆動モード(Bモード)の共振周波数付近の周波数で、かつ位相が180度ずれた交番電圧とする。このような交番電圧を印加すると、圧電素子204では右側の電極領域がある瞬間には縮み、左側の電極領域が延びる。そして、他の瞬間には逆の関係となる。この結果、振動型モータ103には、
図2(d)に示すBモードの振動が発生する。
【0033】
この2つの振動モードを合成することによって、移動体201は
図2(a)に示す矢印の方向に駆動される。なお、AモードおよびBモードの発生比は2等分された電極に入力する交番電圧の位相差を変えることによって変更可能である。そして、振動型モータ103においては、AモードおよびBモードの発生比を変更することによって移動体201の速度を変更することができる。
【0034】
図3は、
図1に示す多自由度振動波駆動装置で用いられる制御系の一例を説明するためのブロック図である。多自由度振動波駆動装置は、第1の制御部としてのパルス幅制御部309と、第2の制御部320と、を有する。
【0035】
コントローラ(図示せず)からXYθ偏差算出部301に位置指令(駆動指令)X、Y、およびθが与えられる。一方、XYθ偏差算出部301には、後述するXYθ座標変換部308で求められた検出位置x、y、およびθが与えられる。そして、XYθ偏差算出部301は位置指令と検出位置との差分を求めて、X、Y、およびθに係る偏差信号をPID補償部302に送る。
【0036】
PID補償部302は、X、Y、およびθに関するPID補償器302a、302b、および302cを有している。これらPID補償器302a、302b、および302cはそれぞれX、Y、およびθに係る偏差信号に基づいてX、Y、およびθに係る制御信号(制御量)を出力する。なお、PID補償器は、比例(P)、積分(I)、および微分(D)の処理によって得られた出力を加算するためのものである。PID補償器は、制御対象の位相遅れおよびゲインを補償して、安定してかつ高精度の制御を行う際に用いられる。
【0037】
PID補償部302の出力である制御信号は制御量演算部303に与えられる。制御量演算部303は、これら制御信号に基づいて、X、Y、およびθの制御量を行列演算によって4つの振動型モータ103〜106の制御量に変換する。これら制御量は振動型モータの制御パラメータである周波数および位相差を示す情報であり、パルス発生部304に送られる。パルス発生部304は、4つのパルス発生回路304a〜304dを有しており、制御量に応じて周波数および位相差が変化するパルス信号を発生する。なお、パルス発生回路304a〜304dの各々として、例えば、デジタル分周回路又はVCO(電圧制御発振器)などが用いられる。
【0038】
このように、第2の制御部320は、偏差算出部301、PID補償部302、及び制御量演算部303を有する。
【0039】
図示のように、パルス発生部304にはパルス幅制御部(第1の制御部)309からパルス幅情報が与えられる。パルス幅制御部309は位置指令X、Y、およびθに基づいて移動体102の移動方向を求めて、複数の振動型モータ103〜106を制御するパルス信号のパルス幅を当該移動方向に基づいて変更する。そして、パルス発生部304はパルス幅情報に基づいてパルス幅を変更する。パルス信号のパルス幅を制御することにより、各振動型モータ103〜106に印加する交番電圧の電圧振幅を制御される。移動体102の移動方向に基づいてパルス信号のパルス幅を制御すれば、各振動型モータ103〜106に印加する交番電圧が制御され、各振動型モータ103〜106における不要な駆動力の発生を低減して、省電力化を図ることができる。
【0040】
このように、本実施形態では、PID補償部302と制御量演算部303による、位置指令と検出位置との偏差に基づくフィードバック制御に加えて、パルス幅制御部309による、移動体102の移動方向に基づく交番電圧の電圧振幅のフィードフォワード制御を組み合わせる。ここで、フィードバック制御は、位置指令と検出位置との偏差の大小に応じて制御量が変化するのに対し、フィードフォワード制御は位置検出回路307の検出結果によらず、位置指令による移動体102の移動方向に応じて設定される点が異なる。つまり、交番電圧の電圧振幅をフィードフォワード制御は、位置検出回路307での検出に先んじて各振動型モータ103〜106に必要な駆動力を発生させることができ、結果として省電力化に貢献できる。
【0041】
本実施形態では、フィードバック制御により交番電圧の位相差及び周波数の少なくとも一方の制御を行い、フィードフォワード制御により電圧振幅の制御を行う。そのため、ある位置指令が出ている場合、位置指令に基づいて決まる移動体102の移動方向と複数の振動型モータ103〜106のそれぞれの駆動方向との相対角度に基づいて、複数の振動型モータ103〜106のそれぞれに印加する交番電圧の電圧振幅を制御し、移動方向に基づいた電圧振幅に制御した状態で位置指令と検出結果との偏差に基づいたフィードバック制御を行う。異なる位置指令が出て移動体102の移動方向が変われば、パルス幅制御部309によりパルス信号のパルス幅が変更され、結果として交番電圧の電圧振幅を制御する。
【0042】
パルス幅制御部309で行われるパルス幅制御は移動体102の駆動に寄与しない不要な電力を極力排するために行われる。そして、速度又は移動方向の制御は基本的に周波数と位相差とによって行われる。前述のように、周波数および位相差を示す情報は制御量演算部303から出力され、後述するようにして、振動型モータ103〜104の移動方向と速度とが制御される。
【0043】
パルス発生部304の出力である第1〜第4のパルス信号は駆動部305に送られる。駆動部305は4つの駆動回路305a〜305dを有している。駆動回路305a〜305dはそれぞれ第1〜第4のパルス信号に応じて、電源306から与えられる電圧を、位相が0〜120°の範囲で変化する2相の第1〜第4の交番電圧を出力する。
【0044】
駆動回路305a〜305dの各々は、トランスを用いた昇圧回路又はLC共振を用いた昇圧回路などを備えており、それぞれ第1〜第4パルス信号のタイミングでスイッチング動作を行って、電源306から供給されるDC電圧を所望の電圧に昇圧する。
【0045】
本実施形態のパルス発生部304及び駆動部305を有する交番電圧生成手段の構成について、
図15を参照して説明する。
【0046】
図15は、パルス発生部304及び駆動部305の構成を説明する図である。
図15(a)は、パルス発生部304から出力される2相の交流パルス信号を示す。なお、
図15では、1個の振動子を駆動するためのパルス発生部及び駆動部の回路を示し、本実施形態では同様の回路が4個分設けられる。
【0047】
具体例として、交番電圧生成手段の、A相の圧電素子に印加される交番電圧を生成する部分について説明する。B相の圧電素子に印加する交番電圧を生成する部分についても、同様の構成を用いることができる。パルス発生部304は、制御量演算部303から出力された位相差及び周波数に関する制御パラメータに応じた位相差及び周波数を各々有する、第1のA相パルス信号及び第1のA相反転パルス信号を生成する。入力パルス信号である第1のA相パルス信号及び第1のA相反転パルス信号は、駆動部305の駆動回路に入力される。駆動部305は、電源1501から供給された直流電圧を入力パルス信号のタイミングでスイッチング動作させ、矩形波の交番電圧信号を生成する。
【0048】
昇圧回路1502は、例えば、コイル1503とトランス1504とを有し、矩形波の交番電圧信号が入力され、所定の駆動電圧に昇圧されたSIN波の交番電圧をA相の圧電素子に印加する。また、同様にして、所定の駆動電圧に昇圧されたSIN波の交番電圧がB相の圧電素子に印加される。
【0049】
駆動部305の出力である第1〜第4の交番電圧はそれぞれ振動型モータ103、104、105、および106(以下それぞれM1、M2、M3、およびM4ともいう)の圧電素子に印加される。これによって、振動型モータ103〜106はそれぞれ第1〜第4の交番電圧に応じて個別に駆動する。そして、振動型モータ103〜106の駆動力をベクトル合成した方向に移動体102が移動する。
【0050】
移動体102の位置は位置センサ107、108、および109によって検出される。位置センサ107、108、および109のそれぞれが移動体102の位置を検出することにより、移動体102と振動型モータ103〜106のそれぞれとの相対位置が検出される。そして、前述のように、位置センサ107、108、および109はそれぞれ位置検出信号X、Y、およびθを出力する。位置検出回路307は、3つの位置検出部307a〜307cを有しており、位置検出信号X、Y、およびθはそれぞれ位置検出部307a、307b、および307cに与えられる。
【0051】
位置検出部307a、307b、および307cは、位置検出信号X、Y、およびθに応じてセンサ位置における移動体102の駆動位置を示す位置情報(検出結果)Ex、Ey、およびEθを出力する。当該位置情報Ex、Ey、およびEθはXYθ座標変換部308に入力される。XYθ座標変換部308は、位置情報Ex、Ey、およびEθを座標変換処理して位置情報x、y、およびθをXYθ偏差算出部301に送って、フィードバック制御が行われる。
【0052】
図4は、
図3に示すPID補償部302の構成についてその一例を示すブロック図である。
【0053】
PID補償部302に備えられたPID補償器302a、302b、および302cはそれぞれゲイン部401、402、および403とPID補償器404、405、および406とを有している。X、Y、およびθに係る偏差信号にはそれぞれゲイン部401、402、および403によって所定のゲインが乗算される。そして、PID補償器404、405、および406はゲイン乗算後の偏差信号に対してPID補償処理を行って、制御量ΔX、ΔY、およびΔθを出力する。
【0054】
なお、ゲインX、およびゲインY、およびゲインθは各方向における制御ゲインの比を調整するために用いられる。また、PID補償器404〜406には振動型モータ103〜16の伝達特性に基づいて最適化された制御ゲインが設定されている。
【0055】
図5は、
図3に示す制御量演算部の構成についてその一例を示すブロック図である。
【0056】
制御量演算部303は、多入力多出力行列演算部501を備えている。多入力多出力行列演算部501には、前述の制御量ΔX、ΔY、およびΔθと位置情報(検出位置ともいう)x、y、およびθが入力される。そして、多入力多出力行列演算部501は、制御量ΔX、ΔY、およびΔθと検出位置x、y、およびθとに基づいて、行列演算を行って振動型モータ103〜106の制御量を求める。そして、当該制御量に基づいて、振動型モータ103〜106が制御される。
【0057】
図6は、
図5に示す多入力多出力行列演算部で行われる行列演算を説明するための図である。そして、
図6(a)は振動型モータの制御量を示す図であり、
図6(b)は回転行列を示す図である。また、
図6(c)は
図6(b)に示す回転行列による演算を示す図である。
【0058】
前述の振動型モータ103〜106(M1〜M4)に係る制御量M1〜M4は
図6(a)で示される。ここでは、振動型モータ103〜106のそれぞれの駆動方向がXY軸に対して45度の傾きをもって配置されているので、係数COS(45deg)が乗算される。そして、第1項は制御量ΔX、第2項は制御量ΔY、第3項は制御量Δθを示す。
【0059】
なお、第1項と第2項とにおいて、ベクトルのXおよびY成分で符号が異なるのは、同位相の駆動信号を印加した場合に振動型モータの駆動方向が全て左回転方向になるよう設定されているためである。
【0060】
図6(b)には、制御量θ成分を演算する際に用いられる回転行列Rθが示されている。
図6(c)に示す中心点から振動型モータ103〜106までのX座標およびY座標軸の距離d3を用いて、回転行列Rθによって中心点を基準として制御量Δθの回転量が求められる。なお、移動体102がXおよびY方向に移動すると、振動型モータ103〜106に対する相対的な中心座標がずれるので、検出位置xおよびyがオフセット成分として考慮される。
【0061】
図7は、
図1に示すXYθ座標
変換部で行われる座標変換処理を説明するための図である。そして、
図7(a)は座標変換処理に用いられる式を示す図であり、
図7(b)は移動体の位置検出を示す図である。
【0062】
図7(b)に示すように、移動体102の位置は位置センサ107〜109によって検出される。いま、中心点から位置センサ107〜109までの距離をd1とする。前述のように、位置検出部307a、307b、および307cはセンサ位置における位置情報Ex、Ey、Eθを出力する。XYθ座標
変換部308は、
図7(a)に示す式を用いて、位置情報Ex、Ey、およびEθを位置情報x、y、およびθに座標変換する。座標変換の際には、XYθ座標
変換部308は、X方向については位置情報Exと回転角、Y方向については位置情報Eyと回転角、θ方向については位置情報EyとEθとの差分を用いて座標変換を行う。
【0063】
ここで、
図3に示すパルス幅制御部309の構成およびパルス幅制御について説明する。ここでは、移動体102の移動方向に基づいてパルス幅を制御することによって、移動体102の駆動に寄与しない不要な電力を極力低減する。前述のように、速度又は移動方向の制御については、振動型モータの周波数と位相差とを制御することによって行われる。
【0064】
図8は、
図3に示すパルス幅制御部の構成および制御を説明するための図である。そして、
図8(a)はパルス幅制御部の構成を示す図であり、
図8(b)はパルス幅制御部の出力を示す図である。
【0065】
図8(a)に示すように、パルス幅制御部30
9は、移動体移動方向算出部310およびパルス幅演算回路311を有している。そして、パルス幅演算回路311は4つのパルス幅演算部311a〜311dを備えている。
【0066】
移動体移動方向算出部310は位置指令X、Y、およびθに基づいて、移動体102の移動方向をDirとして求める。そして、移動方向Dirはパルス幅演算部311a〜311dに与えられる。パルス幅演算部311a〜311dは移動方向Dirに基づいて、振動型モータM1〜M4のパルス幅pw1〜pw4を算出する。
【0067】
なお、移動方向Dirはコントローラの制御周期に応じて逐次算出される。よって振動型モータM1〜M4に係るパルス幅も制御周期毎に変更されることになる。
【0068】
図8(b)には、移動体102の移動方向に応じて出力されるパルス幅の一例が示されており、ここでは、振動型モータM1およびM3に係るパルス幅が実線で示され、振動型モータM2およびM4に係るパルス幅が破線で示されている。
【0069】
図示の例では、移動体102の移動方向に基づいて連続的にパルス幅を変化させるが、離散的にパルス幅を変化させてもよい。ここでは、XYの2次元平面動作において、振動型モータM1〜M4のパルス幅を均等に設定する移動方向(−180度、−90度、0度、90度)がある。さらには、振動型モータM1およびM3のパルス幅をゼロとする移動方向(−135度、45度)又は振動型モータM2およびM4のパルス幅をゼロとする移動方向(−45度、135度)がある。つまり、振動型モータM1〜M4の駆動方向と移動体102の移動方向との相対角度に応じて、振動型モータM1〜M4の電圧を変化させる。相対角度に応じて電圧を変化させれば、後述するように振動型モータに備えられたかわし機構によって駆動電圧がゼロの場合でも負荷を低減可能な方向を混在させることができる。言い換えると、振動型モータのかわし量に応じてパルス幅、即ち、電圧を変化させる。
【0070】
上述のかわし量は、移動体の移動方向と振動型モータM1〜M4のそれぞれの駆動方向軸との相対角度によって決まる。相対角度が大きい場合には、振動型モータに印加される小判電圧の電圧振幅が小さくなるように制御される。これは、相対角度が大きい場合はかわし量が大きくなるので、電圧振幅を小さくすることで駆動負荷が低減されるためである。このように、かわし量の変化に着目した駆動負荷の低減には、位置偏差を用いたフィードバック制御ではなく、移動方向に基づくパルス幅制御部309による電圧のフィードフォワード制御を行うことが有効である。従来のフィードフォワード制御に加えて、電圧のフィードフォワード制御を行うことで、各振動型モータのかわし量に応じた駆動力を発生した状態で位相差又は周波数の位置フィードバック制御を行うことができるため、制御性の低下を抑制しつつ、省電力化を図ること可能となる。
【0071】
図9は、
図3に示すパルス幅制御部によるパルス幅制御の際に用いられるパルス幅算出式の一例を説明するための図である。そして、
図9(a)は位置指令XおよびYを用いて移動体の移動方向Dirを算出する式を示す図である。また、
図9(b)は移動体の移動方向Dirを用いて振動型モータM1〜M4のパルス幅pw1〜pw4を算出する式を示す図である。
【0072】
パルス幅制御部30
9において、移動体移動方向算出部310は、位置指令XおよびYのアークタンジェント演算を行って、移動体102の移動方向Dirを算出する(
図9(a)参照)。
【0073】
図9(b)を参照すると、ここでは、パルス幅演算部311a〜311dは、振動型モータM1〜M4の駆動方向と移動方向Dirとの相対角度についてコサイン演算(余弦演算)を行う。そして、パルス幅演算部311a〜311dは、最大パルス幅を50%として、コサイン演算値に最大パルス幅を乗算してパルス幅pw1〜pw4を算出する。
【0074】
例えば、相対角度が0度の場合には、パルス幅は50%となり、相対角度が90度の場合には、パルス幅は0%となる。そして、相対角度が0度以上から90度未満の範囲では、パルス幅は0〜50%の範囲でサイン曲線で変化する。
【0075】
なお、
図9に示す算出式は一例であり、移動体102の移動方向と振動型モータM1〜M4の駆動方向との相対角度に基づいてパルス幅を変化させるようにすれば、
図9に示す算出式以外の算出式を用いるようにしてもよい。例えば、振動型モータM1〜M4を配置する際にその駆動方向を変えた場合には、相対角度の算出式が変更される。また、パルス幅を移動方向Dirに対して離散的に設定してするようにしてもよい。さらには、パルス幅の最大値および最小値の変更、閾値の設定、部分的にオフセットを付与するようにしてもよい。
【0076】
図10は、
図3に示すパルス発生部の出力であるパルス信号のパルス幅の変化を説明するための図である。そして、
図10(a)はパルス幅が50%である場合のA相およびB相におけるパルス信号の時間変化を示す図である。また、
図10(b)はパルス幅が25%である場合のA相およびB相におけるパルス信号の時間変化を示す図である。
図9、
図10に示すように、パルス幅制御部309は、駆動方向と移動方向との相対角度が相対的に大きい振動型モータに印加する交番電圧の電圧振幅が、相対角度が相対的に小さい振動型モータに印加する交番電圧の電圧振幅より小さくなるように、パルス幅を制御する。
【0077】
パルス幅を0〜50%の範囲で変化させることによって、サイン波(正弦波)の交番電圧の振幅を調整することができる。
図10(a)において、時刻t0〜時刻t4は振動型モータM1〜M4を駆動する際の1周期を示す。A相およびB相のパルス信号は周期の50%に相当する期間においてHレベル(ハイレベル)となる。また、位相差の設定が+90度である場合、A相におけるパルス信号を時刻t0で立ち上げる。そして、B相におけるパルス信号を時刻t1で立ち上げる。
【0078】
図10(b)において、時刻t5〜時刻t9は振動型モータM1〜M4を駆動する際の1周期を示す。A相およびB相のパルス信号は周期の25%に相当する期間においてHレベルとなる。また、位相差の設定が+90度である場合、A相におけるパルス信号を時刻t5で立ち上げる。そして、B相におけるパルス信号を時刻t6で立ち上げる。
【0079】
このようにして、パルス信号のパルス幅を変化させることによって、振動型モータM1〜M4に印加する電圧を変化させることができる。
【0080】
図11は、
図3に示す多自由度駆動装置における動作パターンの一例を説明するための図である。そして、
図11(a)は移動体を右斜め下方向(−45度)に駆動する場合の駆動パターンを示す図であり、
図11(b)は移動体を右斜め上方向(+45度)に駆動する場合の駆動パターンを示す図である。また、
図11(c)は移動体をX方向に駆動する場合の駆動パターンを示す図であり、
図11(d)は移動体をY方向に駆動する場合の駆動パターンを示す図である。
【0081】
前述のように、移動体102は振動型モータ103〜106の駆動力をベクトル合成して得られた駆動力に応じて駆動される。
図11(a)に示すように、移動体102を右斜め下方向(−45度)に駆動する場合には、移動体102の移動方向と振動型モータ103および105の駆動方向は一致している。よって、振動型モータ103および105は同一方向の駆動力を発生させるので、振動型モータ103および105に係るパルス幅は50%に設定される。
【0082】
一方、振動型モータ104又は106の駆動方向と移動体102の移動方向との相対角度は90度であり、右斜め下方向の駆動力は発生せず、後述するかわし機構により振動型モータ104および106の伝達部がスライドするのみである。よって、振動型モータ104又は106に係るパルス幅は0%に設定されることが好ましい。
【0083】
このように、特に、かわし機構を有する多自由度駆動装置においては、かわし動作が行われる振動子の駆動電圧を低減することができる。
【0084】
かわし機構を備えない場合には、振動型モータの駆動方向と移動体の移動方向とが交差する際には定在波を励起させて移動体との摩擦負荷を低減する手法がある。この場合、パルス幅は20〜50%程度に設定する。一方、図示の例では、後述するかわし機構を備えているので、定在波を励起させることなく摩擦負荷を低減することができる。つまり、かわし量が大きい振動型モータの駆動電圧が低減して、投入する電力を移動体の移動方向に応じて最適化することができる。
【0085】
なお、かわし機構を備えない場合であっても、振動型モータの駆動方向と移動体の移動方向との相対角度に基づいて駆動電圧を変化させれば電力を低減することができるので、同様にして本発明を適用することができる。この際、定在波による負荷低減を考慮して、最小パルス幅を0%ではなく、例えば、20%にオフセットするようにすればよい。なお、かわし機構を有する場合でも、制御性の向上のために、最小パルス幅を0%ではなく、適当な値に設定してもよい。
【0086】
図11(b)に示すように、移動体102を右斜め上方向(+45度)に駆動する場合には、移動体102の移動方向と振動型モータ104および106の駆動方向とは一致している。よって、振動型モータ104および106は同一方向の駆動力を発生させるので、振動型モータ104および106に係るパルス幅は50%に設定される。
【0087】
一方、振動型モータ103又は105の駆動方向と移動体102の移動方向との相対角度は90度であり、右斜め上方向の駆動力は発生せず、よって、振動型モータ103又は105パルス幅は0%に設定される。
【0088】
図11(c)に示すように、移動体102をX方向に駆動する場合には、振動型モータ103〜106の駆動力を合成して移動体を駆動する。この場合、振動型モータ103および105の合成ベクトル(つまり、合成駆動力)と振動型モータ104および106の合成ベクトルとの大きさが同一であれば、X方向に合成ベクトルが生じる。そして、振動型モータ103〜106の駆動方向と移動体102の移動方向との相対角度は全て45度である。つまり、振動型モータ103〜106は全て同一の駆動力を発生するとともに、移動体102の移動量に対して均等にかわし量が発生する。よって、駆動電圧の配分は均等となって、振動型モータ103〜106のパルス幅は全て35%に設定される。
【0089】
図11(d)に示すように、移動体102をY方向に駆動する場合には、
図11(c)の場合と同様に、振動型モータ103〜106の駆動力を合成して移動体を駆動する。この場合、振動型モータ103〜106の駆動方向と移動体102の移動方向との相対角度は全て45度である。よって、振動型モータ103〜106のパルス幅は全て35%に設定される。
【0090】
振動型モータ103〜106の駆動ベクトルの回転方向を全て同一とすることによって、移動体を回転させることができる。この場合、振動型モータ103〜106にパルス幅は全て同一に設定する。このように、移動体102をXY方向に駆動することに加えて、回転を制御することができるので、移動体102のロック動作などに利用することができる。
【0091】
図12は、
図1に示す多自由度駆動装置で用いられるかわし機構の一例を説明するための図である。
【0092】
図示の例では、移動体には光学レンズが取り付けられており、丸棒形状のガイド部材が4つ移動体に備えられている。ガイド部材は、移動体の中心からX方向又はY方向に延在している。そして、振動型モータ1401〜104は移動体に接触し、さらに、振動型モータ1401〜104にはガイド部材の一端が配置されている。振動型モータ1401〜1404の各々はレンズ鏡筒に固定されている。
【0093】
振動型モータ1401および1402の駆動方向はX方向である。移動体をX方向に移動する場合、被駆動伝達部およびガイド部材がX方向にスライドするかわし機構によって、振動型モータ1403および1404は摩擦負荷を逃がすことができる。一方、移動体をY方向に移動する場合、振動型モータ1401および1402はかわし機構によって同様にY方向にスライドする。
【0094】
このようなかわし機構を用いれば、制御性を損なうことなく、多自由度駆動装置をより省電力化することができる。
【0095】
図13は、
図3に示す多自由度駆動装置における振動型モータの駆動信号の時間変化の一例を示す図である。
【0096】
図13において、横軸は時間を示し、縦軸はXおよびY方向の位置指令を示す。なお、位置指令は、振幅が±1mmで周波数が5Hzであるものとする。また、ここでは、移動体の移動方向が変化する時刻t0〜時刻t4において、振動型モータM1〜M4の駆動信号における電圧振幅の変化の様子が示されている。
【0097】
図示のように、パルス幅50%の場合には120Vpp、パルス幅35%の場合には100Vpp、パルス幅0%の場合には0Vppのサイン波の交番電圧が圧電素子に印加される。時刻t0〜時刻t1において、移動体は±X方向に往復動作する。この場合、振動型モータM1〜M4の駆動電圧として100Vppが出力される。
【0098】
時刻t1〜時刻t2において、移動体は+45度/−135度方向に往復動作する。この場合、振動型モータM1およびM3はかわし機構によって伝達部がスライドするので、駆動電圧として0Vppが出力される。一方、振動型モータM2およびM4については駆動電圧として120Vppが出力される。
【0099】
時刻t2〜時刻t3において、移動体は±Y方向に往復動作する。この場合、振動型モータM1〜M4の駆動電圧として100Vppが出力される。時刻t3〜時刻t4において、移動体は+135度/−45度方向に往復動作する。この場合、振動型モータM2およびM4はかわし機構によって伝達部がスライドするので、駆動電圧として0Vppが出力される。一方、振動型モータM1およびM3については駆動電圧として120Vppが出力される。
【0100】
ここで、+45度/−135度方向に移動体を往復動作する場合に、振動型モータM1〜M4で消費される電力を従来の多自由度駆動装置と比較する。
【0101】
従来の多自由度駆動装置において、駆動電圧を全て120Vppに設定したとする。この場合、消費電力は2.1Wであった。一方、実施の形態による多自由度駆動装置においては、1.1Wであり、消費電力が48%低減した。また、制御性は同等の結果が得られた。そして、かわし機構により伝達部がスライドする振動型モータの最小パルス幅は必ずしも0%とする必要はなく、18%に設定した場合においても消費電力は1.6Wに低減することができた。
【0102】
上述の多自由度駆動装置をカメラの防振機構に用いれば、ジャイロセンサ(図示せず)からの位置指令(つまり、振れ量)に基づいて防振動作を行うことができる。そして、2次元平面内の移動方向に基づいて4つの振動型モータのパルス幅が逐次変化するように制御を行うので、防振動作における省電力化を図ることができる。
【0103】
このように、本発明の実施の形態では、移動体の移動方向に基づいて振動型モータの駆動電圧を変更するようにしたので、制御性を損なうことなく消費電力を低減することができる。
【0104】
なお、本発明は上記の実施の形態で説明した構成に限定されるものではなく、複数の振動型モータを用いて多方向に移動体を駆動する場合に、適用することができる。例えば、3つの振動型モータを用いてXYθ方向に移動体を駆動する場合、そして、2つの振動型モータ子を用いて移動体をXY方向に駆動する場合に適用することができる。
【0105】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0106】
例えば、上記の実施の形態の機能を制御方法として、この制御方法を多自由度駆動装置に実行させるようにすればよい。また、上述の実施の形態の機能を有するプログラムを多自由度駆動装置が備えるコンピュータに実行させるようにしてもよい。なお、プログラムは、例えば、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録される。
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0107】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0108】
例えば、上述の実施形態では、振動型モータを
図2に示すように2つの電極を有する構成としたが、本発明は振動型モータの構成が限定されるものではなく、振動により駆動力を発生する振動型モータであれば別の構成のものでも実現できる、振動型モータの一例としては、例えば、特開平6−311765明細書に記載の2以上の電極を有する振動型モータ等がある。