(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1タンクに貯留されるインクを吐出するための記録素子群を備える第1記録部を用いて、搬送方向に搬送される記録媒体上の第1領域を記録し、第2タンクに貯留されるインクを吐出するための記録素子群を備え、前記搬送方向と交差する走査方向において前記第1記録部と所定距離離間して配置された第2記録部を用いて、前記記録媒体上の前記走査方向において前記第1領域と異なる第2領域を記録する記録装置であって、
前記第1タンク内のインクの残量に関する第1情報と、前記第2タンク内のインクの残量に関する第2情報と、を取得する取得手段と、
前記第1情報および前記第2情報に基づいて、前記走査方向における前記第1領域の範囲と前記第2領域の範囲を決定する決定手段と、
前記決定手段による決定に基づいて、画像の記録を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
前記決定手段は、前記第1情報が示す値と、前記第2情報が示す値と、の差に基づいて、前記第1領域の範囲と前記第2領域の範囲を決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
前記決定手段は、前記差が所定量よりも多い場合に、前記第1タンク及び前記第2タンクのうちインクの残量を示す値が大きい方のタンク内のインクをより多く使用するように、前記第1領域の範囲及び前記第2領域の範囲を決定することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
前記決定手段は、前記第1タンク内のインクの残量を示す値が前記第2タンク内のインクの残量を示す値よりも大きく、その差が所定量よりも多い場合、前記走査方向における前記第1領域の長さを、前記走査方向における前記第2領域の長さよりも長くなるように決定し、前記第2タンク内のインクの残量を示す値が前記第1タンク内のインクの残量を示す値よりも大きく、その差が所定量よりも多い場合、前記走査方向における前記第2領域の長さを、前記走査方向における前記第1領域の長さよりも長くなるように決定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置。
前記決定手段は、前記第1情報が示す値と、前記第2情報が示す値と、の比率に基づいて、前記第1領域の範囲と前記第2領域の範囲を決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
前記決定手段は、前記比率が所定量よりも多い場合に、前記第1タンク及び前記第2タンクのうちインクの残量を示す値が大きい方のタンク内のインクをより多く使用するように、前記第1領域の範囲及び前記第2領域の範囲を決定することを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
前記第1領域は、前記第1記録部を用いて前記第2記録部を用いずに記録され、前記第2領域は、前記第1記録部を用いずに前記第2記録部を用いて記録され、互いに重複しないことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の記録装置。
前記第1領域は、前記第1記録部を用いて前記第2記録部を用いずに記録される領域と、前記第1記録部及び前記第2記録部の両方を用いて記録される重複領域と、を含み、前記第2領域は、前記重複領域と、前記第1記録部を用いずに前記第2記録部を用いて記録される領域と、を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の記録装置。
前記制御手段は、前記重複領域において、前記第1記録部及び前記第2記録部から同量ずつインクを吐出するように制御することを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
前記制御手段は、前記重複領域において、前記第1領域側の端部に近づくほど前記第1記録部からの吐出量を前記第2記録部からの吐出量よりも多くして記録し、前記第2領域側の端部に近づくほど前記第2記録部からの吐出量を前記第1記録部からの吐出量よりも多くして記録するように制御することを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
前記ジョブが複数ページの原稿を含む場合、前記制御手段は、前記複数ページの原稿の記録において、前記走査方向における前記第1領域の範囲と前記第2領域の範囲を一定とすることを特徴とする請求項11に記載の記録装置。
前記第1タンク及び前記第2タンクは無彩色のインクを貯留し、前記第1情報及び前記第2情報は前記無彩色のインクの残量に関することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1乃至12のいずれか1項に記載の記録装置。
前記第1情報は、前記第1記録部からインクを吐出した回数をカウントすることにより得られた情報であり、前記第2情報は、前記第2記録部からインクを吐出した回数をカウントすることにより得られた情報であることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の記録装置。
前記第1タンクは、前記第1記録部の記録素子が設けられたチップと一体に着脱可能であり、前記第2タンクは、前記第2記録部の記録素子が設けられたチップと一体に着脱可能であることを特徴とする請求項乃1乃至18のいずれか1項に記載の記録装置。
前記第1タンクは着脱可能であり、且つ、前記第1記録部の記録素子が設けられたチップとは別体に形成されており、前記第2タンクは着脱可能であり、且つ、前記第2記録部の記録素子が設けられたチップとは別体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の記録装置。
前記第1記録部の記録素子が設けられたチップと前記第2記録部の記録素子が設けられたチップは、別体に形成されていることを特徴とする請求項20に記載の記録装置。
第1タンクに貯留されるインクを吐出するための記録素子群を備える第1記録部を用いて、搬送方向に搬送される記録媒体上の第1領域を記録し、第2タンクに貯留されるインクを吐出するための記録素子群を備え、前記搬送方向と交差する走査方向において前記第1記録部と所定距離離間して配置された第2記録部を用いて、前記記録媒体上の前記走査方向において前記第1領域と異なる第2領域を記録する記録方法であって、
前記第1タンク内のインクの残量に関する第1情報と、前記第2タンク内のインクの残量に関する第2情報と、を取得する取得工程と、
前記第1情報および前記第2情報に基づいて、前記走査方向における前記第1領域の範囲と前記第2領域の範囲を決定する決定工程と、
前記決定工程における決定に基づいて、画像を記録する記録工程と、
を備えることを特徴とする記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタを模式的に示す図である。本実施形態のインクジェットプリンタは、記録材として複数色のインクを用いて、記録媒体上に画像を記録する記録装置である。ここでは、無彩色のインクであるブラック(K)のインクと、有彩色のインクであるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のカラーインクを用いる。図に示すように、プリンタ100は、プリンタの構造材をなすフレーム上に、記録部としての記録ヘッドを2つ備える。図中左側の記録ヘッドを101L、右側の記録ヘッドを101Rとする。記録ヘッド101Lには、記録チップが配置され、記録チップにはインクを吐出するための記録素子群が設けられている。本実施形態の記録素子は、ヒータなどの発熱体によりインクを加熱して発泡させ、インクを吐出する発熱素子であり、それぞれノズル内に設けられている。記録チップには、インク色毎にノズル列が設けられ、それぞれブラックノズル列102LK、シアンノズル列102LC、マゼンタノズル列102LM、イエローノズル列102LYである。同様に、記録ヘッド101Rにも、記録ヘッド101Lから吐出可能なインクと同色のインクを吐出するための記録素子群が設けられた記録チップが配置されている。記録ヘッド101Rの各ノズル列は、ブラックノズル列102RK、シアンノズル列102RC、マゼンタノズル列102RM、イエローノズル列102RYである。
【0011】
プリンタ100は、いわゆるシリアル記録タイプのプリンタである。記録ヘッド101L及び記録ヘッド101Rには、記録媒体としての記録用紙106の幅方向(図中X方向)に対して90度交差する方向(図中Y方向)に複数のノズルが配列する。これらの記録ヘッドを、ガイド104に沿ってX方向(走査方向)に往復走査させることにより、記録用紙106上に画像を記録する。各ノズル列のノズル配置の解像度は1200dpi(dot per inch)である。すなわち、Y方向に1/1200inchの間隔でノズルが配置されている。
【0012】
記録用紙106は、図中Y方向(搬送方向)に搬送される。記録用紙106は、モータ(不図示)の駆動力によって搬送ローラ105(および他の不図示のローラ)が回転することによって搬送される。記録用紙106が給紙されると、記録データに応じて、記録ヘッド101L及び記録ヘッド101Rの各ノズルからインクが吐出され、図中Y方向のノズル列の長さに対応した1走査分の幅の画像が記録される。そして、1回の走査による記録が終わると、再びノズル列の長さに対応した幅だけ搬送され、再度記録ヘッドの走査により1走査分の幅の画像が記録される。このような記録用紙の搬送と各記録ヘッドからのインク吐出動作を繰り返すことにより、記録媒体上に画像を記録する。
【0013】
図2は、
図1に記載のプリンタ100が、記録ヘッド101Lと記録ヘッド101Rを用いて記録用紙106に画像を形成する様子を説明するための図である。図中、101L、102LK、102LC、102LM、102LY、101R、102RK、102RC、102RM、102RYは、それぞれ
図1で説明したものと同じであるため、説明を省略する。103LK、103LC、103LM、103LYは、記録ヘッド101Lに搭載された、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを貯留するインクタンクである。インクを貯留するインクタンクは、対応する色のノズルに接続され、ノズルにインクを供給する。同様に、103RK、103RC、103RM、103RYは、記録ヘッド101Rに搭載された、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクタンクである。本実施形態のインクタンクは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクのタンクが一体に構成されている。そして、この一体型のインクタンクが左右の記録ヘッドに1つずつ搭載される。従って、4色のインクのいずれかが無くなった場合には、一体型のインクタンクに他色のインクが残っていたとしても、まとめて交換する必要がある。また、本実施形態の記録ヘッドは、記録素子群が設けられた記録チップとインクタンクとが一体に構成されており、インクタンクの交換時には、記録チップも一緒に交換される。
【0014】
図2中の直線X1,X2,X3,X4は、記録用紙106の紙面上での記録ヘッドの走査方向(X方向)の位置を表している。本実施形態のインクジェットプリンタは、記録媒体上の領域を記録ヘッド101Lと記録ヘッド101Rで分担して記録する。X1は記録ヘッド101Lが記録可能な領域の左端、X2は記録ヘッド101Rが記録可能な領域の左端、X3は記録ヘッド101Lが記録可能な領域の右端、X2は記録ヘッド101Rが記録可能な領域の右端である。図中、領域A1及びA2は、記録用紙106の紙面上でのX方向の領域を表している。A1は記録ヘッド101Lを用いて記録可能な領域(第1領域)、A2は記録ヘッド101Rを用いて記録可能な領域(第2領域)である。そして、A3は記録ヘッド101Lのみが記録可能な領域、A5は記録ヘッド101Rのみが記録可能な領域である。領域A4は、領域A3及び領域A5と隣接し、記録ヘッド101Lと記録ヘッド101Rの両方を用いて記録可能な領域である。従って、領域A1は領域A3及び領域A4を含み、領域A2は領域A4及び領域A5を含む。
【0015】
ここで、領域A4の記録方法としては、例えば、以下の3つの例が考えられる。(1)記録ヘッド101Lと記録ヘッド101Rを同量ずつ用いて記録する。(2)記録ヘッド101Lを用いて領域A4中の所定のX位置よりも左側を記録し、記録ヘッド101Rを用いてX位置よりも右側を記録する。(3)領域A4において、左端であるX2に近づくほど記録ヘッド101Lを多く用いて記録し、右端であるX3に近づくほど記録ヘッド101Rを多く用いて記録するように、記録割合を段階的に変えて記録する。本発明は、上記の方法のいずれを用いてもよい。
【0016】
尚、詳しくは後述するが、本実施形態のプリンタ100は、記録ヘッド101L及び記録ヘッド101Rの両方を用いて位置X2及び位置X3の間の領域A4を記録可能である。しかし、実際に画像を記録する際には、一方の記録ヘッドのみを用いた記録が可能である。本明細書では、領域A4のうち、両方の記録ヘッドを用いて実際に画像が記録される領域、すなわち、両方の記録ヘッドからインクが吐出される領域を「重複領域」と呼び、「重複領域」は、位置X2及び位置X3の間に位置する。
【0017】
図3は、本実施形態に係る記録システムの構成例を示すブロック図である。同図に示すように、この記録システムは、
図1に示した記録装置としてのプリンタ100と、そのホスト装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)300を有して構成される。
【0018】
ホストPC300は、主に以下の要素を有して構成される。CPU301は、HDD303やRAM302に保持されているプログラムに従った処理を実行する。RAM302は、揮発性のストレージであり、プログラムやデータを一時的に保持する。また、HDD303は、不揮発性のストレージであり、同じくプログラムやデータを保持する。データ転送I/F(インターフェース)304はプリンタ100との間におけるデータの送受信を制御する。このデータ送受信の接続方式としては、USB、IEEE1394、LAN等を用いることができる。キーボード・マウスI/F305は、キーボードやマウス等のHID(Human Interface Device)を制御するI/Fであり、ユーザは、このI/Fを介して入力をすることができる。ディスプレイI/F306は、ディスプレイ(不図示)における表示を制御する。
【0019】
一方、プリンタ100は、主に以下の要素を有して構成される。CPU311は、ROM313やRAM312に保持されているプログラムに従い、
図4以降で後述する各処理を実行する。RAM312は、揮発性のストレージであり、プログラムやデータを一時的に保持する。また、ROM313は不揮発性のストレージであり、
図4以降で後述する各処理で作成されるテーブルデータやプログラムを保持することができる。
【0020】
データ転送I/F314はPC300との間におけるデータの送受信を制御する。ヘッドコントローラ315Lは、
図1に示した記録ヘッド101Lに対して記録データを供給するとともに、記録ヘッド101Lの吐出動作を制御する。具体的には、ヘッドコントローラ315Lは、RAM312の所定のアドレスから制御パラメータと記録データを読み込む構成とすることができる。そして、CPU311が、制御パラメータと記録データをRAM312の上記所定のアドレスに書き込むと、ヘッドコントローラ315Lにより処理が起動され、記録ヘッド101Lからのインク吐出が行われる。同様に、ヘッドコントローラ315Rは、
図1に示した記録ヘッド101Rに対して記録データを供給するとともに、記録ヘッド101Rの吐出動作を制御する。画像処理アクセラレータ316は、ハードウェアによって構成され、CPU311よりも高速に画像処理を実行するものである。具体的には、画像処理アクセラレータ316は、RAM312の所定のアドレスから画像処理に必要なパラメータとデータを読み込む構成とすることができる。そして、CPU311が上記パラメータとデータをRAM312の上記所定のアドレスに書き込むと、画像処理アクセラレータ316が起動され、所定の画像処理が行われる。尚、画像処理アクセラレータ316は必ずしも必要な要素ではく、プリンタの仕様などに応じて、CPU311による処理のみで上記のテーブルパラメータの作成処理および画像処理を実行してもよい。通常、プリンタ100は、ディスプレイ等に表示された画像において上部から順に画像処理を行い、記録媒体への記録を行うように設定されている。
【0021】
図4は、各インクタンクのインクの残量の遷移を示す図である。
図4(a)は,記録ヘッド101Lと記録ヘッド101Rを、記録装置であるプリンタ100に装着した直後の状態を表している。ブラックインクタンク103LK、シアンインクタンク103LC、マゼンタインクタンク103LM、イエローインクタンク103LYのそれぞれのタンク内のインクの残量は、ほぼ満杯である。同様に、ブラックインクタンク103RK、シアンインクタンク103RC、マゼンタインクタンク103RM、イエローインクタンク103RYのそれぞれのタンク内のインクの残量は、ほぼ満杯である。
【0022】
ここで、
図4(a)の状態から、記録ヘッド101Lと記録ヘッド101Rを用いて、記録媒体に向かって右側、すなわち記録ヘッド101Rの記録領域により多くのコンテンツが含まれる原稿(画像データ)を一定量記録した場合について考える。このとき、図中V1及びV2で示す遷移が生じ、
図4(b)の状態となる。本図の例では、記録ヘッド101R側のインクであるブラックインク(103RK)、シアンインク(103RC)、マゼンタインク(103RM)、イエローインク(103RY)の残量は、記録ヘッド101L側のインクと比べると残量が少ない。以下、本明細書において、左右の記録ヘッドにそれぞれ対応するインクタンクの残量の差が大幅に大きい場合、その状態を「片減り」していると呼ぶ。この片減りが生じている状態でこのまま記録を続けると、記録ヘッド101R側のインクのいずれかがインク切れとなる可能性が高い。一方、
図4(c)は、本発明において目標とするインク残量の一例を示している。記録ヘッド101Rの各タンク(103RK、103RC、103RM、103RY)のインクの残量は、対応する色の記録ヘッド101Lの各タンク(103LK、103LC、103LM、103LY)のインクの残量と同程度である。従って、
図4(c)の状態から記録を続けると、記録ヘッド101Rのブラックインクとカラーインクのうちのいずれかがインク切れとなった際に、対応する色の記録ヘッド101Lのインクもほぼ使い切っている可能性が高い。従って、
図4(b)の状態から、図中V3及びV4で示す遷移を生じさせ、
図4(c)の状態に移行し、左右のヘッドに対応するタンク内のインクの残量の差を低減する必要がある。
【0023】
これに対し、本実施形態では、
図4(b)の状態から記録ヘッド101Lの使用比率を上げることで、記録ヘッド101Rとのインク残量の差を低減する。これにより、搭載されたタンク内のインクを有効に使い、これらのタンクを用いて記録可能な量を増加させることができる。
【0024】
尚、
図4(a)の状態から、記録媒体に向かって左側、すなわち記録ヘッド101Lの記録領域側により多くのコンテンツが含まれる原稿(画像データ)を一定量記録した場合には、
図4(b)に示したインクタンク内のインクの残量が左右逆の関係となる。記録ヘッド101L側のタンクのインクの残量が少なく、記録ヘッド101R側のタンクのインクの残量が多くなる場合である。従って、このケースにおいては、記録ヘッド101Rに対応するタンクのインクの使用比率を上げることで
図4(c)の状態に遷移するように制御を行う必要がある。
【0025】
さらに、
図4(b)のように、左右のインクタンクのうち一方のインクの残量が他方のインクの残量に対して大幅に少なくなってしまった状況では、インク切れ以外の要因で画質を低下させてしまう可能性がある。それは、「インク中の水分の蒸発に伴う濃縮」である。タンク内のインクの体積に対する空気の体積の比率が大きくなればなるほど、インク中の水分の蒸発が促進される。つまり、
図4(b)の状態においては、記録ヘッド101R側からの蒸発の方が多くなり、その結果、記録画像における濃度が高くなってしまうという課題も生ずる。本実施形態は、左右のインクタンクのインク残量を近づけることを目的としているため、蒸発量の差に起因する左右の記録ヘッドそれぞれの記録画像の色味の差を抑制するという効果も得ることができる。
【0026】
本実施形態では、記録ヘッド101Lと記録ヘッド101Rのブラックインクに注目し、記録ヘッド101Lに対応するブラックインクのタンクと、記録ヘッド101Rに対応するブラックインクのタンクを用いて記録可能な量を増加させる。
【0027】
図5に、本実施形態の処理フローを示す。本フローは、
図1に示すプリンタ100に搭載されている記録ヘッド101L及び記録ヘッド101Rで分担記録を行う際の分割時の処理フローである。本処理は、
図3に示したCPU311により実行され、ジョブ単位で本フローが行われる。通常、1つのジョブには1ページもしくはそれ以上のページ数の原稿が含まれる。
【0028】
印字フローがSTARTすると、ステップs5001aで、記録装置に搭載された記録ヘッド101Lが新品であるかどうかを判断する。新品ヘッドであると判断された場合にはステップs5002aに進み、当該ヘッドでこれまでに吐出した回数をカウントした数(Dot数)をリセットし、ステップs5001bに進む。ステップs5001aで新品ヘッドでは無く、継続使用のヘッドであると判断された場合は、これまで吐出したDot数を継続して用いるため、そのままステップs5001bに進む。
【0029】
ステップs5001bで、記録装置に搭載された記録ヘッド101Rが新品であるかどうかを判断する。新品ヘッドであると判断された場合にはステップs5002bに進み、当該ヘッドから吐出された回数をカウントした数(Dot数)をリセットし、ステップs5003に進む。ステップs5001bで新品ヘッドでは無く、継続使用のヘッドであると判断された場合は、これまで吐出したDot数を継続して用いるため、そのままステップs5003に進む。
【0030】
ステップs5003では、以下の式を用いて、左右の記録ヘッドそれぞれのブラックインクの残存率を算出する。
【0031】
Rem_LK=(Max_K−Dot_LK)/Max_K
Rem_RK=(Max_K−Dot_RK)/Max_K
ここで、Rem_LKは、記録ヘッド101L側のブラックインクの残存率を表し、1.0が満杯、0.0がインク切れを表す。Rem_RKは、記録ヘッド101R側のブラックインクの残存率を表し、同様に1.0が満杯、0.0がインク切れを表す。
【0032】
Max_Kは、ブラックインクのインクタンクが満杯の場合に、記録できる最大画素数、すなわち吐出できる最大Dot数を表す定数であり、インクタンクの大きさと記録ヘッドの吐出量等によって決定される。本実施形態においては、Max_Kは記録ヘッド101L及び記録ヘッド101Rで共通である。
【0033】
Dot_LKは、インクタンクと一体に形成された記録ヘッド101Lが新品で装着されてから判断時までに吐出したブラックインクのDot数である。同様に、Dot_RKは、記録ヘッド101Rが新品で装着されてから判断時までに吐出したブラックインクのDot数である。
【0034】
次に、ステップs5005a〜s5009aにおいて、左右の記録ヘッドの両方で記録可能な領域A4のうち、実際に記録する際に両方を用いる重複領域の位置を示す「繋ぎ位置情報」を設定する。ステップs5005aでは、記録ヘッド101L側のブラックインクの残量が、記録ヘッド101R側のブラックインクの残量の所定倍よりも多いかどうかを判定する。本実施形態では、以下の式を用いて、記録ヘッド101L側のブラックインクの残量が、記録ヘッド101R側のブラックインクの残量の1.2倍よりも多いかどうかを判定する。
Rem_LK>Rem_RK * 1.2
ここで、判定結果がYesの場合、例えば記録ヘッド101L側のブラックインクの残量が記録ヘッド101R側のブラックインクの残量の1.5倍の量である場合、記録ヘッド101R側のブラックインクが大幅に少なくなっている状況である。このとき、ステップs5006aへ進み、重複領域の位置を示す繋ぎ位置情報を、「記録ヘッド101Lを多く使う繋ぎ位置」に設定し、ステップs5010に進む。
【0035】
一方、ステップs5005aにおける判定結果がNoの場合、ステップs5006aへ進む。
ステップs5006aでは、記録ヘッド101R側のブラックインクの残量が、記録ヘッド101L側のブラックインクの残量の所定倍よりも多いかどうかを判定する。本実施形態では、以下の式を用いて、記録ヘッド101R側のブラックインクの残量が、記録ヘッド101L側のブラックインクの残量の1.2倍よりも多いかどうかを判定する。
Rem_RK>Rem_LK * 1.2
ここで、判定結果がYesの場合、例えば記録ヘッド101R側のブラックインクの残量が記録ヘッド101L側のブラックインクの残量の1.5倍の量である場合、記録ヘッド101L側のブラックインクが大幅に少なくなっている状況である。このとき、ステップs5009aへ進み、重複領域の位置を示す繋ぎ位置情報を、「記録ヘッド101Rを多く使う繋ぎ位置」に設定し、ステップs5010に進む。
【0036】
ステップs5006aでの判定結果がNoの場合、記録ヘッド101L側のブラックインクの残量と記録ヘッド101R側のブラックインクの残量は、互いに他方の1.2倍以下の関係にある。すなわち、左右のインクタンクのブラックインクの残量がほぼ同等である場合で、残量の差が小さい状況である。このとき、ステップs5008aへ進み、重複領域の位置を示す繋ぎ位置情報を、「標準の繋ぎ位置」に設定し、ステップs5010に進む。
【0037】
以上の、繋ぎ位置情報を決定する処理により、左右のブラックインクのタンクの残量の差が所定量よりも多い場合に、残量が多い方のタンクのブラックインクをより多く使うように、重複領域の範囲を設定する。具体的には、残量が多い方のタンクに対応する記録ヘッドのみで記録する領域の走査方向における長さを、残量が少ない方のタンクに対応する記録ヘッドのみで記録する領域の走査方向における長さよりも長くなるように、繋ぎ位置が決定される。
【0038】
尚、ステップs5005a及びステップs5006aにおいて判定に用いた定数1.2や判定式は一例であり、他の定数や判定方法を用いてもよい。本図の例では、左右のブラックインクのタンクの残量の比率で判定したが、例えば、残量の差が所定量以下であるかどうかを判定してもよい。
例えば、ステップs5005aで以下の式を上述した式の代わりに用いても良い。
Rem_LK−Rem_RK>Th
ここで、Thは残量差の閾値であり、例えばTh=Max_K/2と設定することができる。
上記ステップs5005a〜s5009aにおいて、繋ぎ位置が決定すると、ステップs5010に進む。ステップs5010〜ステップs5015においては、実際に原稿の画像データに対する画像処理を行う。ステップs5010では、原稿のRGB画像を入力する。ステップs5011では、原稿のRGBの色を、記録に好適なRGB値に変換する色補正処理を行う。この色補正処理は既知の好適な処理を用いて構わない。ステップs5012では、RGB値を記録ヘッド101L及び記録ヘッド101Rそれぞれのブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクの付与量に変換する、LRヘッド色分解処理及びLRヘッドデータ分割処理を行う。ここで、色分解処理の手法としては既知の好適な処理を用いて構わない。本実施形態においては、理解を簡単にする為、色分解処理の入力値をRin、Gin、Binとする。そして、記録ヘッド101Lの出力値をLKout、LCout、LMout、LYout、記録ヘッド101Rの出力値をRKout、RCout、RMout、RYoutとし、以下の計算式に従って処理を行う。ここで、Rin、Gin、Bin及びLKout、LCout、LMout、LYout、RKout、RCout、RMout、RYoutはそれぞれ8bitの値であり、その値域は0〜255とする。
【0039】
C=255−Rin
M=255−Gin
Y=255−Bin
K=min(C,M,Y)
C’=C−K
M’=M−K
Y’=Y−K
ここから、
図2中の領域A3、A4、A5のそれぞれに対して処理が異なるため、詳細に説明する。以下、領域A3に対するインクの付与量を算出する計算式である。
【0040】
LKout=LK_Table[K]
LCout=C’+LC_Table[K]
LMout=M’+LM_Table[K]
LYout=Y’+LY_Table[K]
(RKout,RCout,RMout,RYout=0)
ここで、LK_Table、LC_Table、LM_Table、LY_Tableはそれぞれ、グレー画像の必要濃度Kを実現するために、K、C、M、Yの各インクの付与量を設定するための、記録ヘッド101L用の色分解テーブルである。本実施形態では、
図7に記載の色分解テーブルを用いる。
【0041】
以下、領域A5に対する付与量を算出する計算式である。
【0042】
RKout=RK_Table[K]
RCout=C’+RC_Table[K]
RMout=M’+RM_Table[K]
RYout=Y’+RY_Table[K]
(LKout,LCout,LMout,LYout=0)
ここで、RK_Table、RC_Table、RM_Table、RY_Tableはそれぞれ、グレー画像の必要濃度Kを実現するためにK、C、M、Yの各インクの付与量を設定する記録ヘッド101R用の色分解テーブルである。本実施形態では、
図13に記載の色分解テーブルを用いる。
【0043】
以下、領域A4に対する付与量を算出する計算式である。
【0044】
LKout=LK_Table[K] x a1
+RK_Table[K] x b1
LCout=(C’+LC_Table[K]) x a2
+(C’+RC_Table[K]) x b2
LMout=(M’+LM_Table[K]) x a3
+(M’+RM_Table[K]) x b3
LYout=(Y’+LY_Table[K]) x a4
+(Y’+RY_Table[K]) x b4
RKout=LK_Table[K] x c1
+RK_Table[K] x d1
RCout=(C’+LC_Table[K]) x c2
+(C’+RC_Table[K]) x d2
RMout=(M’+LM_Table[K]) x c3
+(M’+RM_Table[K]) x d3
RYout=(Y’+LY_Table[K]) x c4
+(Y’+RY_Table[K]) x d4
ここで、a1〜a4、b1〜b4、c1〜c4、d1〜d4はそれぞれ係数であり、領域A4を記録ヘッド101Lと記録ヘッド101Rでどのように記録するかによって適宜決定される。
【0045】
領域A4の記録方法として3種類の例を上述したが、それぞれに対しては、例えば以下のように設定する事で、好適な記録が行える。
【0046】
まず、上述の(1)の、重複領域において、各記録ヘッドを使用する割合を50%ずつとする方法である。a1〜a4=0.25、b1〜b4=0.25、c1〜c4=0.25、d1〜d4=0.25、と設定することで、記録インク量を左右ヘッドで均等にすることが出来る。
【0047】
次に上述の(2)の、領域A4の所定のX位置よりも左側を、記録ヘッド101Lを用いて記録し、所定のX位置よりも右側を記録ヘッド101Rを用いて記録し、重複領域の幅を0とする方法である。所定のX位置よりも左側の画素においては、a1〜a4=1.00、b1〜b4=0.00、c1〜c4=0.00、d1〜d4=0.00である。所定のX位置よりも右側の画素においては、a1〜a4=0.00、b1〜b4=0.00、c1〜c4=0.00、d1〜d4=1.00である。
【0048】
次に上述の(3)の、重複領域の中心から左側にかけて左端に寄る程、記録ヘッド101Lを多く用い、重複領域の中心から右側にかけて右端に寄る程、記録ヘッド101Rを多く用いる様に、記録割合を段階的に変えて記録する方法である。
【0049】
a1〜a4=(w−x)/w * (w−x)/w,
b1〜b4= x /w * (w−x)/w
c1〜c4= x /w * x /w,
d1〜d4=(w−x)/w * x /w
ここで、wは領域A4の幅(画素数)、xは処理対象画素の画素位置であり、領域A4の左端からの画素位置(画素数)である。従って、領域A4の左端において、x=0であり、領域A4の右端において、x=wである。
【0050】
ステップs5012の処理結果として、記録ヘッド101Lの出力データとして、
図2中の領域A1(A3+A4)のLKout、LCout、LMout、LYoutが出力される。また、記録ヘッド101Rの出力データとしては
図2中の領域A2(A4+A5)のRKout、RCout、RMout、RYoutが出力される。
【0051】
上述の説明において、係数a1〜a4、b1〜b4、c1〜c4、d1〜d4は、記録用紙106上にドットが理想的に配置され、インク滲みが十分に少ない場合に記録領域A4を好適に記録する場合の例を説明した。実際にプリンタ100を用いて記録する場合には、ドットの記録状態のばらつきやインク滲みに対して、適宜好適な係数を設定することができる。また、本実施形態では係数a1〜a4、b1〜b4、c1〜c4、d1〜d4を用いて出力値を適宜計算して出力する例を説明したが、それらの係数を反映した入力→出力変換テーブルを記録画素位置毎に予め計算しておいて処理を行っても良い。
【0052】
図7は、本実施形態の色分解処理で用いる変換テーブルの例を説明する図である。この色分解処理により、入力された画像データに基づいて、各インクの付与量を示すデータが生成される。各変換用データは、必要濃度0から必要濃度255へのグレー画像への色分解するための変換テーブルである。数値が小さいほど低濃度、数値が大きいほど高濃度のグレー色であり、255が最高濃度である。本図の説明において、記録ヘッド101L用の色分解テーブルと記録ヘッド101R用の色分解テーブルは共通のテーブルが適用可能であるため、K_Table、C_Table、M_Table、Y_Tableとして説明する。尚、ここで説明する色分解テーブルは、CMYK値の入力に対してCMYK値を出力する変換テーブルであり、ここで示す横軸は、0〜255の256階調のブラック(K)の値である。これは、C=M=Y=0であるグレー画像である。縦軸は、C、M、Y、Kの出力値であり、各インクの付与量に関する値である。尚、色分解テーブルの入力値はCMYK値に限るものではなく、RGB値であってもよい。RGB値の入力の場合は、グレー画像はR=G=Bの場合であり、横軸はR、G、Bのいずれかの値を用いればよい。
【0053】
横軸は、グレー画像における必要濃度Kであり、縦軸は、グレー画像において必要濃度Kを実現するために用いるブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクの付与量を表している。
図7では、グレー必要濃度0から128の低階調側では、シアン、マゼンタ、イエローのカラーインクのみでグレーを実現し、その量は単調増加する。このとき、ブラックインクの付与量は0である。必要濃度129〜254はブラックインク+カラーインクでグレーを実現し、必要濃度255はブラックインクのみでグレーを実現している。そして、中間濃度からブラックインクの付与量が0より大きくなる。必要濃度129から254までは、ブラックインクとカラーインクの両方を用いてグレー画像を実現する。高階調側では、ブラックインクの付与量が単調増加し、カラーインクの付与量が単調減少する。最高濃度である必要濃度255は、カラーインクを用いずにブラックインクのみでグレー画像を実現する。
【0054】
図8〜
図10は、繋ぎ処理を行う重複領域において、記録ヘッド101L及び記録ヘッド101Rを記録に用いる割合を説明するための図である。それぞれの場合において、ステップs5005a〜5009aで設定された、「L多め繋ぎ位置」、「標準繋ぎ位置」、「R多め繋ぎ位置」の3つの繋ぎ位置情報の例について説明する。
【0055】
図8は、領域A4の一部の領域を記録ヘッド101Lと記録ヘッド101Rの両方を用いて記録する重複領域とし、重複領域において各記録ヘッドを同量使用する場合である。すなわち、左右の記録ヘッドに50%ずつ記録データが分配されるように処理を行う。
図8(a)が「標準繋ぎ位置」、
図8(b)が「R多め繋ぎ位置」、
図8(c)が「L多め繋ぎ位置」の例である。図中、横軸は、記録紙面上のx方向の位置を表している。
図2中の記録領域と対応付けると、記録ヘッド101Lの記録領域の左端が位置X1、領域A4の左端が位置X2、領域A4の右端が位置X3、記録ヘッド101Rの記録領域の右端が位置X4に対応する。本図の例においては、繋ぎ処理を行う重複領域は、記録ヘッドの走査方向において領域A4の半分の幅とする。
【0056】
図8(a)の「標準繋ぎ位置」の場合、左右の記録ヘッド両方を用いて繋ぎ処理を行う重複領域は、領域A4の中央に位置し、「X2+A4幅/4」〜「X3−A4幅/4」である。従って、領域A1のX方向の長さと、領域A2のX方向の長さは同じである。ステップs5011の演算で用いる係数a1〜a4、b1〜b4、c1〜c4、d1〜d4の設定例を以下に示す。
【0057】
対象位置が「X2+A4幅/4」より左側である場合
a1〜a4=1.00
b1〜b4=0.00
c1〜c4=0.00
d1〜d4=0.00
対象位置が「X2+A4幅/4」より右側で、「X3−A4幅/4」より左側である場合
a1〜a4=0.25
b1〜b4=0.25
c1〜c4=0.25
d1〜d4=0.25
対象位置が「X3−A4幅/4」よりも右側である場合
a1〜a4=0.00
b1〜b4=0.00
c1〜c4=0.00
d1〜d4=1.00
同様に、
図8(b)の「R多め繋ぎ位置」の場合、左右の記録ヘッド両方を用いて繋ぎ処理を行う重複領域は、位置X2から領域A4の中央までの左半分の領域である。従って、領域A2のX方向の長さが、領域A1のX方向の長さよりも長い。ステップs5011の演算で用いる係数a1〜a4、b1〜b4、c1〜c4、d1〜d4の設定例を以下に示す。
【0058】
対象位置が「X2+A4幅/2」より左側である場合
a1〜a4=0.25
b1〜b4=0.25
c1〜c4=0.25
d1〜d4=0.25
対象位置が「X2+A4幅/2」よりも右側である場合
a1〜a4=0.00
b1〜b4=0.00
c1〜c4=0.00
d1〜d4=1.00
同様に、
図8(c)の「L多め繋ぎ位置」の場合、左右の記録ヘッド両方を用いて繋ぎ処理を行う重複領域は、領域A4の中央から位置X3までの右半分の領域である。従って、領域A1のX方向の長さが、領域A2のX方向の長さよりも長い。ステップs5011の演算で用いる係数a1〜a4、b1〜b4、c1〜c4、d1〜d4の設定例を以下に示す。
【0059】
対象位置が「X2+A4幅/2」より左側である場合
a1〜a4=1.00
b1〜b4=0.00
c1〜c4=0.00
d1〜d4=0.00
対象位置が「X2+A4幅/2」よりも右側である場合
a1〜a4=0.25
b1〜b4=0.25
c1〜c4=0.25
d1〜d4=0.25
図9は、領域A4において所定のX位置よりも左側を記録ヘッド101L、右側を記録ヘッド101Rで記録し、重複領域の幅を0とする場合である。領域A4中の所定のX位置よりも左側は記録ヘッド101Lを用いて記録し、所定のX位置よりも右側は記録ヘッド101Rを用いて記録する場合である。すなわち、左右の記録ヘッド両方を用いて記録する重複領域はなく、どちらか一方のみで記録する領域となる。
図9(a)が「標準繋ぎ位置」、
図9(b)が「R多め繋ぎ位置」、
図9(c)が「L多め繋ぎ位置」の例である。横軸等は
図8と同様なので説明を省略する。
【0060】
図9(a)の「標準繋ぎ位置」の場合、領域A4の中心位置を繋ぎ位置として、用いる記録ヘッドを切り替える。ステップs5011の演算で用いる係数a1〜a4、b1〜b4、c1〜c4、d1〜d4の設定例を以下に示す。
【0061】
対象位置が「X2+A4幅/2」より左側である場合
a1〜a4=1.00
b1〜b4=0.00
c1〜c4=0.00
d1〜d4=0.00
対象位置が「X2+A4幅/2」よりも右側の場合
a1〜a4=0.00
b1〜b4=0.00
c1〜c4=0.00
d1〜d4=1.00
同様に、
図9(b)の「R多め繋ぎ位置」の場合、領域A4の左端である位置X2を繋ぎ位置として、用いる記録ヘッドを切り替える。ステップs5011の演算で用いる係数a1〜a4、b1〜b4、c1〜c4、d1〜d4の設定例を以下に示す。
【0062】
a1〜a4=0.00
b1〜b4=0.00
c1〜c4=0.00
d1〜d4=1.00
同様に、
図9(c)の「L多め繋ぎ位置」の場合、領域A4の右端である位置X3を繋ぎ位置として、用いる記録ヘッドを切り替える。ステップs5011の演算で用いる係数a1〜a4、b1〜b4、c1〜c4、d1〜d4の設定例を以下に示す。
【0063】
a1〜a4=1.00
b1〜b4=0.00
c1〜c4=0.00
d1〜d4=0.00
図10は、領域A4の一部の領域を、記録ヘッド101Lと記録ヘッド101Rの両方を用いて記録する重複領域とし、重複領域において各記録ヘッドを使用する割合を段階的に変える場合である。本例では、繋ぎ処理を行う重複領域は、領域A4の半分の幅の領域とする。領域A4の中央から重複領域の左端、すなわち領域A3側の端部に近づくほど、記録ヘッド101Lを記録ヘッド101Rよりも多く用いるように、走査方向において割合を段階的に変える。同様に、領域A4の中央から重複領域の右端、すなわち領域A5側の端部に近づくほど、記録ヘッド101Rを記録ヘッド101Lよりも多く用いるように、走査方向において割合を段階的に変える。
図10(a)が「標準繋ぎ位置」、
図10(b)が「R多め繋ぎ位置」、
図10(c)が「L多め繋ぎ位置」の例である。横軸等は
図8および
図9と同様なので説明を省略する。
【0064】
図10(a)の「標準繋ぎ位置」の場合、左右の記録ヘッド両方を用いて繋ぎ処理を行う重複領域は、領域A4の中心に位置し、「X2+A4幅/4」〜「X3−A4幅/4」である。ステップs5011の演算で用いるa1〜a4、b1〜b4、c1〜c4、d1〜d4の設定例を以下に示す。
【0065】
対象位置が「X2+A4幅/4」より左側である場合
a1〜a4=1.00
b1〜b4=0.00
c1〜c4=0.00
d1〜d4=0.00
対象位置が「X2+A4幅/4」より右側で「X3−A4幅/4」より左側である場合
a1〜a4=(w−x)/w * (w−x)/w
b1〜b4= x /w * (w−x)/w
c1〜c4= x /w * x /w
d1〜d4=(w−x)/w * x /w
ここで、wは、領域A4の幅(画素数)の半分、xは、処理対象画素の「X2+A4幅/4」からの画素位置(画素数)である。従って、「X2+A4幅/4」の位置において、x=0であり、「X3−A4幅/4」の位置において、x=wである。
【0066】
対象位置が「X3−A4幅/4」よりも右側の場合
a1〜a4=0.00
b1〜b4=0.00
c1〜c4=0.00
d1〜d4=1.00
同様に、
図10(b)の「R多め繋ぎ位置」の場合、左右の記録ヘッド両方を用いて繋ぎ処理を行う重複領域は、位置X2から領域A4の中央までの左半分の領域である。ステップs5011の演算で用いる係数a1〜a4、b1〜b4、c1〜c4、d1〜d4の設定例を以下に示す。
【0067】
対象位置がX2+A4幅/2より左側の場合
a1〜a4=(w−x)/w * (w−x)/w
b1〜b4= x /w * (w−x)/w
c1〜c4= x /w * x /w
d1〜d4=(w−x)/w * x /w
ここで、wは、領域A4の幅(画素数)の半分、x、処理対象画素の位置X2からの画素位置(画素数)である。従って、位置X2において、x=0であり、「X2+A4幅/2」の位置において、x=wである。
【0068】
対象位置が「X2+A4幅/2」よりも右側の場合
a1〜a4=0.00
b1〜b4=0.00
c1〜c4=0.00
d1〜d4=1.00
同様に、
図10(c)の「L多め繋ぎ位置」の場合、左右の記録ヘッド両方を用いて繋ぎ処理を行う重複領域は、領域A4の中央から位置X3までの右半分の領域である。ステップs5011の演算で用いる係数a1〜a4、b1〜b4、c1〜c4、d1〜d4の設定例を以下に示す。
【0069】
対象位置が「X2+A4幅/2」より左側の場合
a1〜a4=1.00
b1〜b4=0.00
c1〜c4=0.00
d1〜d4=0.00
対象位置が「X2+A4幅/2」より右側の場合
a1〜a4=(w−x)/w * (w−x)/w
b1〜b4= x /w * (w−x)/w
c1〜c4= x /w * x /w
d1〜d4=(w−x)/w * x /w
ここで、wは、領域A4の幅(画素数)の半分、xは、処理対象画素の「X2+A4幅/2」からの画素位置(画素数)である。従って、「X2+A4幅/2」の位置において、x=0であり、位置X3において、x=wである。
【0070】
ここで
図5の処理フローの説明に戻る。ステップs5013aでは、記録ヘッド101L側のインク付与量を示す、LKout、LCout、LMout、LYoutの各データを、実際に記録するDotの有無にDotデータに変換する量子化処理を行う。このDotの有無が、記録ヘッド101Lの各ノズルからのインクの吐出または非吐出の指示を示している。同様に、ステップs5013bでは、記録ヘッド101R側のインク付与量を示す、RKout、RCout、RMout、RYoutを、実際に記録するDotの有無を示すDotデータに変換する量子化処理を行う。このDotの有無が、記録ヘッド101Rの各ノズルからのインクの吐出または非吐出の指示を示している。尚、量子化処理は、既知の誤差拡散処理やディザ処理等、いかなる手法を用いても構わない。量子化されたDotデータが記録ヘッドに送られて、記録ヘッドの1走査分のDotデータの準備が完了したら、記録用紙106上に記録ヘッド101Lと記録ヘッド101Rを用いた実際の画像記録が行われる。
【0071】
ステップs5014aでは、記録ヘッド101L用に量子化されたDotデータに基づいて、以下の演算式により、Dot数をカウントして累積処理を行う。尚、Count_LKは、記録ヘッド101Lのブラックインクの記録Dot数である。
【0072】
Dot_LK+Count_LK
同様に、ステップs5014bでは、記録ヘッド101R用に量子化されたDotデータに基づいて、以下の演算式により、Dot数をカウントして累積処理を行う。尚、Count_RKは、記録ヘッド101Rのブラックインクの記録Dot数である。
【0073】
Dot_RK+=Count_RK
本実施形態では、画像の記録を目的として記録用紙106上に吐出する際のインク以外のインク消費については便宜上考慮していない。しかし、記録媒体外に吐出する所謂予備吐出等、画像の記録を目的としないインク消費を考慮することにより、インク残量の推定精度をさらに高めることができる。
【0074】
ステップs5015では、記録すべき原稿の画像データの全ての画素について処理が完了したかを判定する。判定結果がYesの場合には本印字フローは終了する。これまで累積計算されたDot_LK情報およびDot_RK情報はROM313に記憶され、次にジョブが入力された場合の印字フローに用いられる。ステップs5015での判定結果がNoの場合にはステップs5010に戻り、原稿の続きを処理する。以後、原稿が終了するまで、ステップs5010〜ステップs5015の処理を繰り返す。
【0075】
以上、説明したように、記録ヘッド101L及び記録ヘッド101Rのブラックインクの消費量を積算し、それぞれのインク残量を推定する。そして、それぞれの記録ヘッドのブラックインクの残量の差に応じて、相対的に残量の多い方をより多く使うように左右の記録ヘッドの繋ぎ位置を決定する。これにより、それぞれの記録ヘッドに対応するブラックインクのインクタンクの残量の差を低減することができる。このような制御を行うことにより、記録ヘッド101Lに対応するブラックインクのタンクと、記録ヘッド101Rに対応するブラックインクのタンクと、を用いた記録量を増加させることができる。
【0076】
尚、本実施形態では、ブラックインクを主使用インクとして判断の対象としたが、ブラックインクに限定されるものではなく、いずれの色のインクを用いて判定しても良い。また、全てのインク色について、色毎に左右のインクタンクの残量の差を検出し、その差の最大値が所定量よりも多い場合に、繋ぎ処理を行う位置を変更する制御を行ってもよい。
【0077】
(第2の実施形態)
前述の第1の実施形態では、記録ヘッド101L、記録ヘッド101Rそれぞれに対してブラックインクの残量に基づいて繋ぎ処理を制御することにより、残量差を低減する方法について説明した。本実施形態では、記録ヘッド101Lと記録ヘッド101Rのブラックとカラーの全てのインク残量に基づいて繋ぎ処理を行う方法について説明する。
【0078】
図6は、本実施形態における処理フローである。まず、印字フローがSTARTすると、ステップs6001aで、使用しているヘッド101Lについて、新品であるかどうかを判断する。新品ヘッドであると判断された場合には、ステップs6002aに進み、当該ヘッドでこれまでに吐出したカウントした回数(Dot数)をリセットし、ステップs6001bに進む。ステップs6001aで、新品ヘッドでは無く、継続使用のヘッドであると判断された場合は、これまで吐出したDot数を継続して用いるため、そのままステップs6001bに進む。
【0079】
ステップs6001bで、使用しているヘッド101Rが新品であるかどうかを判断する。新品ヘッドであると判断された場合には、ステップs6002bに進み、当該ヘッドでこれまでに吐出した回数をカウントした数(Dot数)をリセットし、ステップs6003に進む。ステップs6001bで新品ヘッドでは無く、継続使用のヘッドであると判断された場合は、これまで吐出したDot数を継続して用いるため、そのままステップs6003に進む。ステップs6003は、
図5中のステップs5003と同一の処理であるため、説明を省略する。
【0080】
次に、ステップs6004では、カラーインクの残存率を計算する。
【0081】
Rem_LCol=min((Max_C−Dot_LC)/Max_C,(Max_M−Dot_LM)/Max_M,(Max_Y−Dot_LY)/Max_Y)
Rem_RCol=min((Max_C−Dot_RC)/Max_C,(Max_M−Dot_RM)/Max_M,(Max_Y−Dot_RY)/Max_Y)
ここで、Rem_LColは、記録ヘッド101L側のカラーインクの残存率を表し、1.0が満杯、0.0がインク切れを表す。同様に、Rem_RColは、記録ヘッド101R側のカラーインクの残存率を表し、同様に1.0が満杯、0.0がインク切れを表す。
【0082】
Max_C、Max_M、Max_Yはシアン、マゼンタ、イエローインクが満杯の場合に、各色で記録できる最大画素数、すなわち吐出できる最大Dot数を表す定数であり、インクタンクの大きさと記録ヘッドの吐出量等によって決定される。本実施形態においては、Max_C、Max_M、Max_Yは、記録ヘッド101L及び記録ヘッド101Rで共通である。
【0083】
Dot_LC、Dot_LM、Dot_LYは、インクタンクと一体に形成された記録ヘッド101Lが新品で装着されてから判断時までに吐出した各インク色のDot数である。本実施形態において、Rem_LColは、シアン、マゼンタ、イエローのインク残存率の最小値であり、最もインク残量の少ないインク色の残存率である。同様に、Dot_RC、Dot_RM、Dot_RYは、インクタンクと一体に形成された記録ヘッド101Rが新品で装着されてから判断時までに吐出した各インク色のDot数である。本実施形態において、Rem_RColは、シアン、マゼンタ、イエローのインク残存率の最小値であり、最もインク残量の少ないインク色の残存率である。
【0084】
続いて、ステップs6005a〜ステップs6009aは、
図5中のステップS5004〜ステップs5008と同一の処理なので説明を省略するが、実際に記録する際に両方のヘッドを用いる重複領域の位置を示す「Black繋ぎ位置情報」を設定する。上記ステップs6005a〜s6009aが終了すると、ステップs6005bに進む。ステップs6005b〜s6009bは、ステップs6005a〜s6009aと同様の処理である。ここでは、記録ヘッド101Lに対応するカラーインクのうち残量が最も少ないインクの残存率(Rem_LCol)と、記録ヘッド101Rに対応するカラーインクのうち残量が最も少ないインクの残存率(Rem_RCol)と、を比較する。そして、その差が所定量よりも多いか否かを判定し、実際に記録する際に両方のヘッドを用いる重複領域の位置を示す「Color繋ぎ位置情報」を設定する。本実施形態では、一方が他方に対して1.2倍よりも多いかどうかを判定する。尚、ここでの比較は、同色のインク同士になるとは限らない。
【0085】
各ステップでは、以下の判定式を用いる。
【0086】
ステップs6005b:Rem_LCol>Rem_RCol * 1.2
ステップs6006b:Rem_RCol>Rem_LCol * 1.2
ここで、ステップs6007bに進んだ場合は、記録ヘッド101R側のカラーインクのうち最も残量が少ないインク色の残量が、記録ヘッド101L側のカラーインクのうち最も残量が少ないインク色の残量に比べて大幅に少ない状況である。このとき、記録ヘッド101L側と記録ヘッド101R側の繋ぎ位置を、「記録ヘッド101Lを多く使う繋ぎ位置」に設定する。
【0087】
同様に、ステップs6009bに進んだ場合は、記録ヘッド101L側のカラーインクのうち最も残量が少ないインク色の残量が、記録ヘッド101R側のカラーインクのうち最も残量が少ないインク色の残量に比べて大幅に少ない状況である。このとき、記録ヘッド101L側と記録ヘッド101R側の繋ぎ位置を、「記録ヘッド101Rを多く使う繋ぎ位置」に設定する。
【0088】
ステップs6008bに進んだ場合は、記録ヘッド101L側のカラーインクのうち最も残量が少ないインク色の残量と、記録ヘッド101R側のカラーインクのうち最も残量が少ないインク色の残量に大きな差がない状況である。このとき、このとき、記録ヘッド101L側と記録ヘッド101R側の繋ぎ位置を、「標準の繋ぎ位置」に設定する。
【0089】
上記ステップs6005b〜s6009bが終了すると、ステップs6010に進む。ステップs6010〜ステップs6011は、
図5中のステップs5010〜ステップs5011と同一の処理なので説明を省略する。
【0090】
ステップs6012では、ステップs5012と異なり、ブラックインク用の繋ぎ位置と、カラーインク用の繋ぎ位置をそれぞれ設定する。従って、ブラックインクの演算を行うa1、b1、c1、d1を算出する際には、ステップs6007a〜s6009aで設定した「Black繋ぎ位置情報」を用いて計算する。そして、カラーインクの演算を行うa2〜a4、b2〜b4、c2〜c4、d2〜d4を算出する際には、ステップs6007b〜s6009bで設定した「Color繋ぎ位置情報」を用いて計算する。
ステップs6013a及びs6013bは、
図5中のステップs5013a〜ステップs5013bと同一の処理であるため、説明を省略する。 ステップs6014aでは、記録ヘッド101L用に量子化されたDotデータから、以下の式によりDot数をカウントし、累積処理を行う。
【0091】
Dot_LK+=Count_LK
Dot_LC+=Count_LC
Dot_LM+=Count_LM
Dot_LY+=Count_LY
ここで、Count_LK、Count_LC、Count_LM、Count_LYは記録ヘッド101L側のそれぞれのインク色の記録Dot数である。
【0092】
同様に、ステップs6014bでは、記録ヘッド101R用に量子化されたDotデータから、以下の式によりDot数をカウントして累積処理を行う。
【0093】
Dot_RK+=Count_RK
Dot_RC+=Count_RC
Dot_RM+=Count_RM
Dot_RY+=Count_RY
ここで、Count_RK、Count_RC、Count_RM、Count_RYは記録ヘッド101R側のそれぞれのインク色の記録Dot数である。
【0094】
ステップs6015では、記録すべき画像データの全ての画素について処理が完了したかを判定する。判定結果がYesの場合には本フローは終了する。そして、これまで累積計算されたDot_LK、Dot_LC、Dot_LM、Dot_LY情報およびDot_RK、Dot_RC、Dot_RM、Dot_RY情報は、ROM313に記憶され、次の原稿の印字命令が入った際に用いられる。ステップs6015での判定結果がNoの場合には、ステップs6010に戻り、原稿の続きを処理することとなる。以後、最後の画素まで、ステップs6010〜ステップs6015が繰り返される。
【0095】
以上説明したように、記録ヘッド101L及び記録ヘッド101Rのインクの消費量を色毎に積算して、対応するタンク内のインクの残量を推定する。そして、左右のインクタンクの残量の差が大きく、片減りが生じているインク色があると判定された場合に、相対的に残量の多い方をより多く使うように繋ぎ処理を行う。これにより、残量の差が生じているインク色における消費率を近付け、タンク内のインクの残量の差を低減することができ、各タンクを用いた記録量を増加させることができる。
【0096】
また、本実施形態では、カラー3色のインク残量率の最小値を用いて、カラー3色を一括で制御する例を説明したが、本発明の効果はこの組み合わせに限る訳では無く、カラーを各色に独立に制御する等の処理としてもよい。このような制御を行うことにより、記録ヘッド101Lに対応するインクタンク及び記録ヘッド101Rに対応するインクタンクを用いて記録可能な量を増加させることができる。また、有彩色のインクは、シアン、マゼンタ、イエローのうち少なくとも1色搭載していればよく、これらの色に限られるものではない。
【0097】
また、本実施形態では、左右の記録ヘッドにそれぞれ対応する3色のカラーインクのうち、左右それぞれで最も少ないインクを特定し、それらの残量を比較することにより繋ぎ位置を設定する例を説明した。この例に限らず、インク色毎に、左右の残量の差を判定し、残量の差が所定量よりも多い場合に残量の多い方のインクをより多く使うような繋ぎ位置を設定する処理を行ってもよい。
【0098】
(その他の実施形態)
上述の実施形態において、設定する繋ぎ位置の候補として3つの例を説明したが、3より多い数の候補から選択する形態であってもよい。その場合には、左右ヘッドのインクの消費比率の制御をより細かく行うことができる。また、
図5及び
図6の処理フローでは、ジョブ単位で繋ぎ位置を設定し、ステップs5014及びステップs6015においてジョブが終了するまで同一の繋ぎ位置を継続して用いた。これに対し、繋ぎ位置を設定するタイミングは、1ジョブ単位、ページ単位、ページ内のオブジェクト単位、といずれの単位をあてはめても良く、それぞれメリットが存在する。1ジョブ単位で切り替える場合には、1ジョブ内に同一原稿が複数ページ含まれる場合に、それら複数ページの原稿の記録画質を均質に保ちつつ、記録量を増加させることができる。1ページ単位で切り替える場合には、ページ間での繋ぎ位置の差による違いが生じるが、ジョブの途中でのインク切れの可能性を低減しつつ、ページ内は記録画質を均質に保つことが可能となる。また、ページ内のオブジェクト単位で切り替える場合には、ページ内での繋ぎ位置の差による違いが生じるが、ページ内でのインク切れの可能性を低減し、インク切れ直前の状態でも記録可能とすることができる。このように、繋ぎ位置情報を設定するタイミングは種々の設定が可能であり、ユーザの手動設定やプリンタ本体の状況等によって自動設定によって適宜好適な物を適用することができる。
【0099】
また、
図5及び
図6に示した各処理、すなわち、残量に関する情報の取得、及び、その情報を用いた繋ぎ処理を決定する工程を、プリンタ100において実行する形態について説明した。これらの工程をホストPC300側において行う形態であってもよく、ホストPC300とプリンタ100で各処理を分担して行う形態であってもよい。
【0100】
また、前述の実施形態では、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの複数色のインクタンクが一体に設けられた構成を示した。本発明は、各インクのタンクが別体に設けられた構成であってもよく、いずれか複数のインクタンクのみが一体に設けられた構成であってもよい。また、前述の実施形態では、記録素子が設けられた記録チップとインクタンクとが一体に形成され、記録装置から着脱可能に構成された記録ヘッドの形態について説明した。本発明はこの形態に限らず、記録装置からインクタンクのみを外して交換する形態であってもよい。この場合、
図5のステップs5001a及びステップs5001b、
図6のステップs6001a及びステップs6001bにおいて、記録ヘッドではなく、インクタンクが新品であるかどうか、もしくは、タンク内のインクが満杯であるかどうかを判定すればよい。記録チップとインクタンクが一体型の構成の場合は、いずれかの色のインクが無くなった場合、インクタンクだけでなく記録チップを含む記録ヘッドごと交換しなければならないため、本発明の効果がさらに顕著なものとなる。また、左右の記録ヘッドは別体に形成されていてもよく、一体に形成されたものであってもよく、左右のチップが一体に形成されたものであってもよい。その場合、領域A1と領域A2を記録する同色のインクの記録素子の距離が、
図2のX方向において位置X1と位置X2の距離に相当する所定距離離間していればよい。ここでの所定距離とは、左右の記録ヘッドが記録媒体上のX方向に並ぶ領域を分担して記録するものであればよく、その距離は記録装置の構成及び記録媒体のサイズによって適宜決定することができる。
【0101】
また、記録ヘッド101L及び記録ヘッド101Rのそれぞれから吐出されたDot数をカウントした値は、プリンタ100が保持する形態であってもよい。また、交換可能なインクタンクもしくはインクタンクと一体に形成された記録ヘッドが保持する形態であってもよい。交換可能なインクタンクもしくは記録ヘッドがカウント値を保持する場合、
図5のステップs5001a及びs5001b、
図6のステップs6001a及びs6001bに示した、記録ヘッドが新品であるか否かの判定のステップは省略してよい。尚、インクタンクもしくはインクタンクと一体に構成された記録ヘッドがカウント値を保持する場合には、使用途中のヘッドを別の異なる記録装置本体に付け替えた場合にも本発明の効果を得ることができる。
【0102】
また、上述の実施形態では、量子化された2値の記録データに基づいて、記録Dot数をカウントすることにより残量を推定する方法を用いたが、残量を取得する手段としてはこの方法に限るものではない。例えば、センサを用いて残量を検出する方法であってもよく、インクタンク内のインク残量を推定できるものであれば他の手段を用いてもよい。