(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
画像データに従ってインクを吐出する吐出口が配列された記録ヘッドを記録媒体に対し相対走査させることにより前記記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記画像データの個々の画素が有する画素信号に基づいて、第1要素に関する情報と第2要素に関する情報を含む属性データを画素ごとに生成する生成手段と、
前記第1要素に関する情報と前記第2要素に関する情報に基づいて、対応する画素を記録するための前記相対走査の形態を決定する記録動作決定手段と
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
前記記録動作決定手段は、前記単位領域のそれぞれについて、前記第1要素の情報に従って前記相対走査の方向を決定し、前記第2要素の情報に従って前記待機時間を決定することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
前記第1要素は前記単位領域に対する異なる色のインクの付与順序に起因して起こる色むらに対応し、前記第2要素は前記単位領域に対する前記複数の相対走査の時間差に起因する時間差むらに対応することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
前記生成手段は、前記画素が有する画素信号と前記属性データが対応づけられて保存されているテーブルを参照することによって、前記属性データを生成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
画像データに従ってインクを吐出する吐出口が配列された記録ヘッドを記録媒体に対し相対走査させることにより前記記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記画像データの個々の画素が有する画素信号に基づいて、第1要素に関する情報と第2要素に関する情報を含む属性データを画素ごとに生成する生成工程と、
前記第1要素に関する情報と前記第2要素に関する情報に基づいて、対応する画素を記録するための前記相対走査の形態を決定する記録動作決定工程と
を有することを特徴とするインクジェット記録方法。
前記記録動作決定工程は、前記単位領域のそれぞれについて、前記第1要素の情報に従って前記相対走査の方向を決定し、前記第2要素の情報に従って前記待機時間を決定することを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録方法。
前記第1要素は前記単位領域に対する異なる色のインクの付与順序に起因して起こる色むらに対応し、前記第2要素は前記単位領域に対する前記複数の相対走査の時間差に起因する時間差むらに対応することを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
前記生成工程は、前記画素が有する画素信号と前記属性データが対応づけられて保存されているテーブルを参照することによって、前記属性データを生成することを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1(a)および(b)は、本発明で適用可能なカラーインクジェット記録装置1の記録部の構成を示す図である。
図1(a)は記録部の斜視図、同図(b)は記録ヘッド201における吐出口202の配列構成図を示している。
【0011】
図1(a)に示すように、記録媒体Sは、給紙ローラ対104と、搬送ローラ102と補助ローラ103で構成されるローラ対の、2つのローラ対で挟持され、その平滑性が維持されている。給紙ローラ対104および搬送ローラ102は、記録媒体Sを支持しながら回転し、これをY方向に搬送する。
【0012】
これら2つのローラ対の間には、X方向に往復移動可能なキャリッジ105が配され、キャリッジ105にはインクタンク106〜109および記録ヘッド201が着脱可能に搭載されている。インクタンク106〜109には4色のインク(ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローY)がそれぞれ収容されており、キャリッジ105に搭載された状態で記録ヘッド201に接続し、記録ヘッド201にこれらインクを供給する。
【0013】
記録ヘッド201には、
図1(b)に示すように、4色のインクそれぞれに対応する4列の吐出口列が設けられている。個々の吐出口202は、吐出データに従って図の-Z方向にインクを吐出する。本実施形態においては、各色について1280個の吐出口が1200dpiピッチでY方向に1列に配列している。
【0014】
以上の構成のもと、キャリッジ105が往方向又は復方向に所定の速度で相対走査する間に、記録ヘッド201が吐出データに従ってインクを吐出することにより、記録媒体に1バンド分の画像が記録される。このような記録ヘッド201による1バンド分の記録走査(相対走査)と搬送ローラ102による1バンド分に対応する距離の搬送動作を間欠的に繰り返すことにより、記録媒体に画像が形成されて行く。
【0015】
印刷コマンドの待機時や記録ヘッド201に対するメンテナンス処理を行う時、キャリッジ105は図中の点線で示したホームポジション位置hに待機する。
【0016】
なお、上記の例では、インクタンク106〜109と記録ヘッド201がキャリッジ105に対し個別に着脱可能な構成としたが、インクタンク106〜109と記録ヘッド201は、カートリッジとして一体的に構成されていても良い。
【0017】
図2(a)および(b)は、インクジェット記録装置1における制御の構成を示すブロック図である。記録制御部301は、主に、計算手段となるCPU307のほか、メモリ308、データ処理部309を備える。記録制御部301は、メモリ308に記憶された各種プログラムやパラメータに従って、装置全体を制御する。本発明の特徴的な処理に利用する後述する属性データテーブルなどもメモリ308に格納されている。
【0018】
搬送モータドライバ302は、記録制御部301の指示のもと、搬送ローラ102や給紙ローラ104を回転させるための搬送モータ304を駆動する。キャリッジモータドライバ303は、記録制御部301の指示のもと、キャリッジ105を移動させるためのキャリッジモータ305を駆動する。ヘッドドライバ306は、記録制御部301の指示のもと、記録ヘッド201を駆動して吐出動作を行わせる。
【0019】
例えば、記録制御部301は、インターフェイス310を介してホストPC500から受信した画像データに対し、メモリ308に記憶されているプログラムに従って、データ処理部309に所定の画像処理を行わせる。これにより、記録ヘッド201が記録可能な吐出データが生成される。そして、記録制御部301は、ホストPC500から受信した印刷ジョブによって指定される記録モードと、メモリ308に記憶されたプログラムに基づき、一時的に保存された吐出データを順次呼び出しながら、各種ドライバを駆動して記録動作を実行する。
【0020】
図2(b)は、記録制御部301がデータ処理部309に実行させるデータ処理のソフトウェア的な構成を説明するためのブロック図である。ホストPC500より印刷ジョブが入力されると、記録制御部301は記録すべき画像データを受信バッファ401に保存する。画像処理部406は、受信バッファ401に保存された画像データに対し所定の画像処理を施し、記録ヘッド201が記録可能な吐出データを生成する。以下、具体的に説明する。
【0021】
本実施形態において、ホストPC500より受信される画像データは、レッドR、グリーンG、ブルーBの8ビット輝度データ(256階調)が、600dpiの画素ごとに対応づけられて構成されるものとする。画像処理部406は、これら600dpiのRGB多値データに対し所定の画像処理を施し、記録解像度(1200dpi)に対応する記録(1)または非記録(0)を示す2値データを、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのそれぞれについて生成する。
【0022】
一方、属性データ生成部402は、受信バッファ401に保存された600dpiの画像データに基づいて、属性データテーブル405を参照しながら各画素の属性データを生成し、属性データ積算部403に提供する。属性データ積算部403は、各画素の属性データを所定の規則で積算し、得られた算出結果を記録動作決定部404に提供する。記録動作決定部404は、属性データ積算部403から受け取った算出結果に基づいて、記録媒体の単位領域ごとに記録動作を決定する。属性データ、属性データ生成部402が参照する属性データテーブル405の内容、属性データ積算部403における積算方法、記録動作決定部404における記録方法の決定については後に詳しく説明する。
【0023】
図3は、インクジェット記録装置が一般的に採用する2パス双方向記録の概要を示す図である。2パス双方向記録とは、記録媒体Sの単位領域の画像を、記録ヘッド201の往路と復路の2回の記録走査によって完成させる記録方法である。個々の記録走査において、記録ヘッド201は1回の記録走査で記録可能な吐出データのうち約半分の吐出データに従って吐出動作を行い、搬送モータ304は各記録走査の間で記録ヘッド201の約半分の距離(640画素分)だけ記録媒体SをY方向に搬送する。
【0024】
このような2パス双方向記録によれば、例えば図に示す第1単位領域の画像は、往路走査である第1記録走査と復路走査である第2記録走査によって完成される。第2単位領域の画像は、復路走査である第2記録走査と往路走査である第3記録走査によって完成される。第3単位領域の画像は、往路走査である第3記録走査と復路走査である第4記録走査によって、第4単位領域の画像は、復路走査である第4記録走査と往路走査である第5記録走査によってそれぞれ完成される。すなわち、第1単位領域や第3単位領域のような奇数番目の単位領域は、最初に往路走査、次に復路走査が行われて画像が完成し、第2単位領域や第4単位領域のような偶数番目の単位領域は、最初に復路走査、次に往路走査が行われて画像が完成する。
【0025】
ここで、再度
図1(b)を参照すると、往路走査ではブラック→イエロー→マゼンタ→シアンの順に記録媒体Sにインクが付与されることになる。一方、復路走査ではシアン→マゼンタ→イエロー→ブラックの順に記録媒体Sにインクが付与されることになる。そして、このようなインクの付与順序の違いは、記録媒体Sで表現される画像に色差を生じさせ、色むらとなって認識される場合がある。
【0026】
但し、このような色むらは、視覚的に目立ちやすい色と目立ち難い色があり、そのような目立ち具合は、画像データを解析することによって予測することが出来る。例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのいずれか1色のみ用いる一次色の場合、往路走査と復路走査でインクの付与順序が変わることは無いため、色むらは発生しない。また、使用するインク色の偏りが大きい場合や、明度が高くインクの付与量自体が少ない場合も色むらは目立ち難いと言える。反対に、2色以上のインクを用いる明度の低い(濃度も高い)画像では、色むらは目立ちやすいと言える。
【0027】
本実施形態では、受信バッファ401に記憶された各画素のRGBデータに基づいて、色むらが目立ちやすい色であるか否かを各画素について解析する。そして、色むらが目立ちやすい色であると判断された画素領域は、2回の記録走査を往路走査に統一し、色むらの発生を抑えるようにする。
【0028】
一方、2パス双方向記録では、色むらとは別に時間差むらという画像弊害が問題となる場合もある。時間差むらは、単位領域に対する1回目の記録走査と2回目の記録走査の時間差が画像全域で一律でないことに起因して起こる現象であり、1種類のインクしか用いない画像でも認識される場合がある。
【0029】
ここで、
図3の破線で囲った左端領域に着目する。左端領域において、第1単位領域では、1回目の記録走査(第1記録走査)と2回目の記録走査(第2記録走査)の間に、キャリッジ105はほぼ1往復する。すなわち、1回目の記録走査(第1記録走査)と2回目の記録走査(第2記録走査)の時間差は比較的大きい。一方、左端領域において、第2単位領域では、1回目の記録走査(第1記録走査)と2回目の記録走査(第2記録走査)の間に、キャリッジ105は殆ど走査せず方向転換するのみである。よって、1回目の記録走査(第2記録走査)と2回目の記録走査(第3記録走査)の時間差は比較的小さい。
【0030】
インクジェット記録装置の場合、1回目の記録走査と2回目の記録走査の時間差が大きいほど、2回目の記録走査で付与したインクが記録媒体の表面に残りやすく発色に寄与しやすい傾向がある。よって、例えば1回目の記録走査と2回目の記録走査の時間差が大きい第1、第3、第5単位領域と、1回目の記録走査と2回目の記録走査の時間差が小さい第2、第4単位領域では発色に差が現れ、これが時間差むらとして認識される場合がある。
図3の破線で囲った右端領域についても、時間差の大小関係が左端部と逆転するのみで同様の現象が生じる。
【0031】
このような時間差むらについても、色むらと同様、視覚的に目立ちやすい色と目立ち難い色がある。一般的には、使用するインク色の数によらず、インク付与量が多いほど目立ちやすいと言える。また、常にキャリッジ105走査の中程でインクが付与される中央領域では、いずれの単位領域でも1回目の記録走査と2回目の記録走査の時間差はほぼ一律であるため、時間差むらは現れ難い。すなわち、時間差むらについても、その目立ち具合は、画像データを解析することによってある程度予測することが出来る。
【0032】
このような時間差むらについても、片方向記録に切替えれば、1回目の記録走査と2回の記録走査の時間差を隣接する各単位領域間で揃えることが出来るので、その現象を目立たなくすることが出来る。また、時間差むらについては、双方向記録のままであっても、1回目と2回目の記録走査の間に所定の待機時間を設けることにより、その現象を目立たなくすることが出来る。
【0033】
図4は、記録媒体に対する1回目の記録走査と2回目の記録走査の時間差と、発色(濃度)の関係を示す図である。時間差が大きいほど画像の発色(濃度)が高くなっていることが分かる。これは、時間差が大きいほど2回目の記録走査で付与したインクが表面に残りやすい傾向があるためである。但し、発色(濃度)は時間差が大きくなるにつれて一定値に近づいており、ある程度以上の時間差を設ければ、時間差の違いは発色に然程影響しないことも理解される。
【0034】
例えば、単位領域の幅(X方向の長さ)を42インチ、キャリッジ105の走査速度を40インチ/秒、キャリッジ105の反転時間を0.2秒とする。このとき、左端領域において、第1単位領域における1回目の記録走査(第1記録走査)と2回目の記録走査(第2記録走査)の時間差は約2.3秒(=42/40×2+0.2)である。また、第2単位領域における1回目の記録走査(第2記録走査)と2回目の記録走査(第3記録走査)の時間差は約0.2秒である。
図3では、このような左端領域における第1単位領域と第2単位領域の色差をΔE1で示している。
【0035】
ここで、1回目の記録走査と2回目の記録走査の間に0.25秒の待機時間を設けた場合を考える。この場合、左端領域において、第1単位領域における1回目の記録走査(第1記録走査)と2回目の記録走査(第2記録走査)の時間差は約約2.55秒(=42/40×2+0.2+0.25)となる。また、第2単位領域における1回目の記録走査(第2記録走査)と2回目の記録走査(第3記録走査)の時間差は約0.45秒(=0.2+0.25)となる。
図3では、このような場合の左端領域における第1単位領域と第2単位領域の色差をΔE2で示している。ΔE1とΔE2を比べると、明らかにΔE2の方が小さく、待機時間を設けた方が時間差むらを目立ち難く出来ることが分かる。
【0036】
以上説明したように、時間差むらを目立たなくするためには、1回目の記録走査と2回目の記録走査を片方向記録に揃える方法と、1回目の記録走査と2回目の記録走査の間に所定の待機時間を設ける方法の、いずれも採用することができる。但し、上記条件のもと、1つの単位領域の画像を完成させるために必要な時間を、前者の方法と後者の方法で比較すると、明らかに後者の方が短時間であることが分かる。
【0037】
1回目の記録走査と2回目の記録走査を片方向記録に揃えた場合、単位領域の画像を完成させるために必要な時間は3.55秒(=42/40×3+0.2×2)となる。これに対し、1回目の記録走査と2回目の記録走査の間0.25秒の待機時間を設けた場合、単位領域の画像を完成させるために必要な時間は2.55秒(=42/40×2+0.2+0.25)となる。このため、本実施形態では、色むらが発生せず時間差むらのみが発生する場合には、片方向記録に切り替えず、0.45秒の待機時間を介在させた双方向記録を行い、スループットをなるべく低下させないようにする。
【0038】
図5は、ホストPC500から印刷ジョブが入力された場合に、記録制御部301が実行する記録動作決定処理を説明するためのフローチャートである。以下、
図2(b)のブロック図を参照しながら、
図5のフローチャートに沿って記録動作決定処理を説明する。
【0039】
本処理が開始されると、記録制御部301は、まずステップS701において、受信した画像データを受信バッファ401に展開する。続くステップS702において、記録制御部301は、属性データ生成部402を用いて個々の画素の属性データを取得し、ステップS703でこれら取得した属性データを受信バッファ401とは異なるメモリに記憶する。
【0040】
図6(a)および(b)は、ステップS701において受信バッファ401に展開された画像データの一例と、ステップS703における属性データの保存状態を示す図である。既に説明したように、本実施形態の画像データは個々の画素Pが画素信号としてRGBの8ビット輝度データ(0〜255)を有しており、記録制御部301は、これらRGBの輝度データを、
図6(a)に示すように単位領域(640画素幅)ごとに管理する。ここでは、第1単位領と第2単位領域域と、第5単位領域の全域に(RGB)=(128,128,128)の輝度データが入力され、第3単位領と第4単位領域域の全域に(RGB)=(0,0,255)の輝度データが入力された場合を示している。
【0041】
再度
図2(b)を参照する。属性データ生成部402は、属性データテーブル405を参照することにより、
図6(a)に示す個々の画素Pの輝度データに対応する属性データを生成する。
【0042】
図7(a)および(b)は、属性データテーブル405の記憶内容と属性データの構成を説明するための図である。属性データテーブル405には、
図7(a)に示すようにRGBの信号値の組み合わせと、2ビットの属性データとが対応づけて記憶されている。ここでは、RGBの信号値が0〜63の場合の引数をA、64〜127の場合の引数をB、128〜191の場合の引数をC、192〜255の場合の引数をDとして示している。例えば、(RGB)=(128,128,128)の場合、引数は(C, C, C)となり、属性データは「00」となる。また、(RGB)=(0,0,255)の場合、引数は(A, A,D)となり、属性データは「10」となる。
【0043】
本実施形態の属性データは、
図7(b)に示すように2ビットで構成されている。上位ビットは色むらの程度を示すために用いられ、色むらが懸念される場合に「1」となり、そうでない場合は「0」となる。一方、下位ビットは時間差むらの程度を示すために用いられ、時間差むらが懸念される場合に「1」となり、そうでない場合は「0」となる。例えば、(RGB)=(128,128,128)の場合に、
図7(a)を参照して設定される属性データは「00」であるが、これは色むらも時間差むらも懸念されないことを意味している。一方、(RGB)=(0,0,255)の場合、属性データは「10」となり、これは色むらが懸念され時間差むらは懸念されないことを意味している。
【0044】
属性データ生成部402は、
図7(a)に示す属性データテーブル405を参照し、個々の画素の輝度データ(RGB)に対応する2ビットの属性データを生成する。そして、
図6(b)に示すようにそれぞれの画素に対応づけた状態で、受信バッファ401とは異なるメモリに記憶する。
【0045】
図5のフローチャートに戻る。ステップS704において、記録制御部301は画像領域を複数の積算単位領域600に区分し、ステップS705では、色むらと時間差むらのそれぞれについて判定領域を設定する。積算単位領域600および判定領域について、
図6(b)と
図3を参照して説明する。
【0046】
本実施形態において、積算単位領域600とは、色むらや時間差むらが視覚的に認識可能な最小の領域に相応し、色むらや時間差むらを判断するための最小単位とする。具体的には、縦640画素、横1200画素の768000画素領域を積算単位領域600としている。一方、判定領域は、色むらと時間差むらそれぞれが発生し得る位置にある積算単位領域であり、色むらと時間差むらについて個別に設定される。本実施形態では、色むらについては全ての画像領域で認識される懸念があるため、記録制御部301は全ての積算単位領域を判定領域に設定する。一方、時間差むらについては左端領域および右端領域では認識される懸念があるが中央領域では認識される懸念が低いため、記録制御部301は左端領域および右端領域に含まれる積算領域のみを判定領域に設定する。具体的には、両端約10インチに含まれる積算単位領域を判定領域に設定する(
図3参照)。
【0047】
図5のフローチャートに戻る。ステップS706において記録制御部301は、複数の積算単位領域のうちの1つを処理対象の積算単位領域として設定する。ステップS707では、処理対象の積算単位領域が色むらの判定領域に設定されているか否かを判断する。本実施形態の場合、全ての積算単位領域が判定領域に含まれているため、ステップS708に進む。
【0048】
ステップS708において、記録制御部301は、処理対象の積算単位領域に含まれる全ての画素を検索し、属性データの上位ビットが「1」である画素の数C1をカウントする。そして、続くステップS709において、記録制御部301は、カウント値C1が予め定められている閾値T1よりも大きいか否かを判定する。閾値T1は、特に限定されるものではないが、積算単位領域に含まれる768000個の画素のうち、属性データの上位ビットが「1」である画素がいくつ以上存在すると当該領域の色むらが認識されるようになるかを示す値であれば良い。記録制御部301は、ステップS708において、C1>T1であると判定した場合はステップS710に進み、処理対象の積算単位領域が含まれる単位領域の上位ビット用フラグをONにする。一方、C1<T1の場合はステップS711にジャンプする。なお、上位ビット用フラグはデフォルトでOFFに設定されている。
【0049】
ステップS711において、記録制御部301は、処理対象の積算単位領域が時間差むらの判定領域に設定されているか否かを判断する。時間差むらの判定領域に設定されていない場合は、そのままステップS715にジャンプする。一方、処理対象の積算単位領域が時間差むらの判定領域に設定されている場合、ステップS712に進む。
【0050】
ステップS712において、記録制御部301は、処理対象の積算単位領域に含まれる全ての画素を検索し、属性データの下位ビットが「1」である画素の数C2をカウントする。そして、続くステップS713において、記録制御部301は、カウント値C2が予め定められている閾値T2よりも大きいか否かを判定する。閾値T2は、特に限定されるものではないが、積算単位領域に含まれる768000個の画素のうち、属性データの下位ビットが「1」である画素がいくつ以上存在すると当該領域の時間差むらが認識されるようになるかを示す値であれば良い。記録制御部301は、ステップS711において、C2>T2の場合はステップS714に進み、処理対象の積算単位領域が含まれる単位領域の下位ビット用フラグをONにする。一方、C2<T2の場合はステップS715にジャンプする。なお、下位ビット用フラグはデフォルトでOFFに設定されている。
【0051】
ステップS715では、全ての積算単位領域について、ステップS707〜S714の判定処理が行われたか否かを判断する。判定処理が行われていない積算単位領域が未だ残っていると判断した場合は、次の積算単位領域についての判定処理を行うためにステップS706に戻る。全ての積算単位領域について判定処理が行われたと判断した場合はステップS716に進む。
【0052】
ステップS716において、記録制御部301は、上位ビット用のフラグと下位ビット用のフラグを確認し、個々の単位領域についての記録動作を決定する。
【0053】
図8は、ステップS716において、記録制御部301が参照するテーブルを示す。本テーブルには、色むらが懸念される場合にONとなる上位ビットフラグと、時間差むらが懸念される場合にONとなる下位ビットフラグの組み合わせと、単位領域の記録動作との対応関係が記憶されている。例えば、上位ビットフラグも下位ビットフラグもOFFである即ち色むらも時間差ムラも懸念されない単位領域については、待機時間なしの双方向記録が設定される。上位ビットフラグがOFFで下位ビットフラグがONである即ち色むらは懸念されないが時間差むらが懸念される単位領域については、待機時間有りの双方向記録が設定される。上位ビットフラグがONで下位ビットフラグがOFFのとき即ち色むらは懸念されるが時間差むらは懸念されない単位領域については、待機時間なしの片方向記録が設定される。上位ビットフラグも下位ビットフラグもONである即ち色むらも時間差ムラも懸念される単位領域については、待機時間なしの片方向記録が設定される。
【0054】
図9は、
図6(a)のような画像データが入力された場合の、第1単位領域〜第5単位領域に対する記録動作を示す図である。
図6(a)のような画像データが入力された場合、各単位領域の上位ビットフラグと下位ビットフラグの設定状態は
図6(b)の右側に示すようになり、記録制御部301は、
図8に示すテーブルに基づいて各単位領域の記録動作を決定する。色むらも時間差むらも懸念されない第1単位領域、第2単位領域および第5単位領域は、デフォルトの記録動作すなわち2パス双方向記録で画像が記録される。一方、色むらは懸念されるが時間差むらは懸念されない第2単位領域と第3単位領域は、2パス片方向記録で画像が記録される。結果、画像領域全域について色むらも時間差むらも目立たない一様な画像を出力することができる。
【0055】
図10(a)および(b)は、本実施形態のインクジェット記録装置に入力される画像データと当該画像データに対応する属性データの別例を示す図である。ここでは、第1単位領と第2単位領域域と、第5単位領域の全域に(RGB)=(128,128,128)の輝度データが入力され、第3単位領と第4単位領域域の全域に(RGB)=(32,32,32)の輝度データが入力された場合を示している。
【0056】
このような画像データの場合、属性データ生成部402は、
図7(a)に示す属性データテーブル405を参照し、第1単位領域、第2単位領域、第5単位領域については全て画素に対し属性データ「00」を生成する。また、第3単位領域および第4単位領域についてはすべての画素に対し、属性データ「01」を生成する。そして、個々の単位領域における上位ビットフラグと下位ビットフラグは
図10(b)の右側に示す設定状態となる。
【0057】
図11は、
図10(a)のような画像データが入力された場合の、第1単位領域〜第5単位領域に対する記録動作を示す図である。色むらも時間差むらも懸念されない第1単位領域、第2単位領域および第5単位領域は2パス双方向記録で画像が記録される。一方、色むらは懸念されないが時間差むらは懸念される第2単位領域と第3単位領域は、2回の記録走査の間に0.45秒の待機時間を設けた2パス双方向記録で画像が記録される。結果、画像領域全域について色むらも時間差むらも目立たない一様な画像を出力することができる。
【0058】
なお、以上では、単位領域に対する全ての画素に同じ信号値の画素データが入力される場合を例に説明してきたが、無論このような画像データは一例に過ぎない。本実施形態においては、単位領域に含まれる複数の積算単位領域のうちカウント値C1が閾値T1を超えるものが一つでも存在すれば、当該単位領域の上位ビット用フラグはステップS710でONに設定され、当該単位領域全体に対して色むら対策が施される。同様に、単位領域に含まれる複数の積算単位領域のうち、カウント値C2が閾値T2を超えるものが一つでも存在すれば、当該単位領域の下位ビット用フラグはONに設定され、当該単位領域全体に対して時間差むら対策が施される。すなわち、どのような画像データが入力された場合であっても、色むらや時間差むらが懸念される箇所が存在する場合は、当該箇所における色むらと時間差むらのいずれもが目立たないように当該箇所が含まれる単位領域全体の記録動作が設定される。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、同一の画像データから色むらと時間差むらの懸念状況を判断し、それぞれの画像弊害を緩和できるように単位領域ごろに記録動作を制御することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
本実施形態においても第1の実施形態と同様、
図1〜
図2に示したインクジェット記録装置を用い、記録制御部301は
図5に示したフローチャートに従って記録動作決定処理を実行する。本実施形態において、第1の実施形態と異なる点は、属性データと属性データテーブルの内容である。
【0061】
図12(a)および(b)は、
図5のステップS702において属性データ生成部402が参照する属性データテーブル405と、属性データの構成を示す図である。
図12(a)に示すように、本実施形態の属性データテーブル405も第1の実施形態と同様、RGBの信号値の組み合わせと2ビットの属性データとが対応づけて記憶されている。
【0062】
本実施形態の属性データは、第1の実施形態と同様に2ビットで構成されるが、上位ビットと下位ビットの示す内容が第1実施形態と異なっている。第1の実施形態では、上位ビットと下位ビットを異なる画像弊害に対応づけていたが、本実施形態では記録動作を構成する異なる要素に対応づけている。具体的には、属性データの上位ビット(第1要素)は記録走査方向に対応し、双方向記録を推奨する場合に「0」、片方項記録を推奨する場合に「1」が設定される。下位ビット(第2要素)は、走査開始前の待機時間の有無に対応し、待機時間を設けない場合に「0」、待機時間を設ける場合に「1」が設定される。
【0063】
このため、
図12(a)に示す本実施形態の属性テーブルにおいては、RGBの引数と、そのRGB値の画像を色むらも時間差むらも目立たせないようにする記録動作(走査方向と待機時間の有無)が、対応づけて記憶されている。例えば、色むらと時間差むらのどちらもが懸念されるRGB値(例えば(A, B, A))については、第1の実施形態で説明した
図7(a)では属性が「11」であったのに対し、本実施形態では「10」になっている。これは、色むらと時間差むらのどちらもが懸念される画像(A, B, A)の場合、片方向記録を採用すれば、待機時間を設けなくても色むらと時間差むらの両方を目立たなくすることができるためである。
【0064】
他の工程は、第1の実施形態と同様である。記録制御部301は、カウント値C1が閾値T1より大きいと判断すると(S709)、上位ビットフラグをONに設定し(S710)、カウント値C2が閾値T2より大きいと判断すると(S713)、下位ビットフラグをONに設定する(S714)。そして、ステップS716において記録制御部301は、第1の実施形態と同様、
図8に示すテーブルに基づいて個々の単位領域についての記録動作を決定する。
【0065】
以上説明した本実施形態においても、結果として第1の実施形態と同様の記録動作を実現することができる。すなわち、
図6(a)の画像データが入力された場合は
図9に示す記録動作で画像を記録する。また、
図10(a)の画像データが入力された場合は
図11に示す記録動作で画像を記録する。すなわち、本実施形態においても、第1の実施形態と同様、同一の画像データに基づいて、色むらと時間差むらのいずれも緩和するように単位領域ごとに記録動作を制御することができる。
【0066】
なお、以上説明した実施形態では、
図5のフローチャートを用い、複数の単位領域に対する記録動作決定処理を1つの印刷ジョブの単位で行う内容で説明した。しかし、記録動作決定処理については、単位領域ごとに行うこともできる。例えば、1単位領域分の画像データを受信バッファに展開した時点で、当該単位領域に対してステップS702〜S716の処理を行い、次の1単位領域分の画像データを展開した時点で、当該単位領域に対して再び同じ処理を行うようにしても良い。
【0067】
また、積算単位領域の大きさや判定領域、待機時間、また閾値T1やT2についても、上記実施形態に示した値に限定されるものではない。色むらや時間差むらの目立ち方は、記録媒体の種類やサイズ、インクの物性、記録解像度、キャリッジスピードなど様々な要因に応じて変化する。上記のような値は、色むらや時間差むらが目立ち難くなることを目的に上記様々な要因に応じて適切に調整されることが好ましい。
【0068】
更に、本発明が解消する画像弊害は色むらや時間差むらに限定されるものでもない。画像データを解析することによってその目立ち方を予想し、記録動作によってその目立ち具合を調整ことができれば、色むらや時間差むら以外の画像弊害を抑えることを目的に本発明を応用することはできる。この場合、例えば上位ビットや下位ビットの一方を、色むらや時間差むらと異なる画像弊害のために用いても良いし、3つ目の画像弊害のために3ビット目を新たに追加しても良い。
【0069】
また、記録動作を切替える要素についても、記録方向と待機時間の2つに限定されるものではない。例えば、待機時間の代わりにキャリッジスピードや搬送速度を変えても良い。また、量子化処理で用いるディザパターンやインデックスパターンを切替えても良いし、マルチパス記録で使用するマスクパターンやマルチパス数(単位領域に対する記録走査の回数)を切替えても良い。
【0070】
いずれにしても、受信した画像データを解析することにより、複数種類の画像弊害情報が記憶された属性データを生成し、属性データに基づいて記録動作を適切に調整することができれば、本発明は有効に機能させることができる。
【0071】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。