特許第6971807号(P6971807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971807
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】帯電ローラおよび電子写真装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   G03G15/02 101
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-227796(P2017-227796)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-101048(P2019-101048A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】寺田 健哉
(72)【発明者】
【氏名】古川 匠
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 宏暁
(72)【発明者】
【氏名】友水 雄也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 謙一
(72)【発明者】
【氏名】下所 和弘
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−361843(JP,A)
【文献】 特開2013−200558(JP,A)
【文献】 特開2007−264491(JP,A)
【文献】 特開2016−110126(JP,A)
【文献】 特開2014−228800(JP,A)
【文献】 特開2007−334229(JP,A)
【文献】 特開2002−351231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上の弾性層とを含む帯電ローラであって、
該弾性層は、唯一の弾性層であって、かつ、単層からなり、
該弾性層は、バインダー樹脂を含み、かつ、弾性体粒子を、該帯電ローラの表面に露出した状態で保持してなり、該帯電ローラの表面は、該弾性体粒子に由来の凸部を有し、
該弾性層の長さをLとしたときの、弾性層の長手方向中央から長手方向に(3/8)L離れた部分における、表面のバインダー樹脂のマルテンス硬度をH1(N/mm)とし、
該弾性層の長手方向中央における、表面のバインダー樹脂のマルテンス硬度をH2(N/mm)とし、
該弾性体粒子のマルテンス硬度をH3(N/mm)としたとき、
H1、H2およびH3が式(1)を満たすことを特徴とする帯電ローラ:
式(1)
H1<H3<H2。
【請求項2】
H1、H2およびH3が、式(2)及び式(3)を満たす請求項1に記載の帯電ローラ:
式(2)
5≦H3−H1;
式(3)
5≦H2−H3。
【請求項3】
H1およびH2が、式(4)及び式(5)を満たす、請求項1または2に記載の帯電ローラ:
式(4)
2≦H1;
式(5)
H2≦60。
【請求項4】
H3が、式(6)を満たす請求項1〜3のいずれか一項に記載の帯電ローラ:
式(6)
10≦H3≦50。
【請求項5】
前記バインダー樹脂が、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、及びスチレン−ブタジエン−スチレンゴムからなる群から選ばれる少なくとも一つのゴムを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の帯電ローラ。
【請求項6】
前記弾性体粒子が、ウレタン樹脂及びシリコーン樹脂の少なくとも一方を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の帯電ローラ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の帯電ローラを備える電子写真装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の帯電ローラの製造方法であって、
(1)前記バインダー樹脂の原料としての未加硫ゴムと、前記弾性体粒子とを含む未加硫ゴム組成物を用意する工程;
(2)前記導電性支持体上に、該未加硫ゴム組成物を引き延ばしながら押出成形して、未加硫ゴム組成物の層を形成する工程;および、
(3)該未加硫ゴム組成物の層を加硫して前記弾性層を得る工程、を有し、
該工程(3)が、該未加硫ゴム組成物の層の長手方向の位置によって、異なる条件下で加硫する工程を含む、帯電ローラの製造方法。
【請求項9】
前記条件が、前記加硫のための、ヒートガンまたは赤外線加熱装置による加熱の条件である、請求項8に記載の帯電ローラの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の帯電ローラの製造方法であって、
(1)前記バインダー樹脂の原料としての未加硫ゴムと、前記弾性体粒子とを含む未加硫ゴム組成物を用意する工程;
(2)前記導電性支持体上に、該未加硫ゴム組成物を引き延ばしながら押出成形して、未加硫ゴム組成物の層を形成する工程;および、
(3)該未加硫ゴム組成物の層を加硫して加硫ゴム組成物の層を形成する工程、および
(4)該加硫ゴム組成物の層の表面に電子線を照射して硬化させて前記弾性層を形成する工程、を有し、
該工程(4)は、該加硫ゴム組成物の層の長手方向の位置によって、異なる照射条件の下で電子線を照射する工程を含む、帯電ローラの製造方法。
【請求項11】
前記工程(4)が、該加硫ゴム組成物の層の表面が受ける電子線の線量が、該加硫ゴム組成物の層の長手方向における中央部よりも、端部で少なくなるように電子線を照射する工程を含む請求項10に記載の帯電ローラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置等に用いられる帯電ローラ、及びこれを用いた電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザービームプリンター等の電子写真装置においては、感光体を帯電するために、弾性層を有する帯電ローラが用いられる。近年、低コスト化のために、弾性層の表面を所望の形状にするための研磨工程を無くし、製造工数の削減を図った帯電ローラ(以下、「研磨レスローラ」と表記する)が製造されている。
【0003】
しかし、研磨レスローラは、弾性層の長手方向の端部の外径を正確に制御することが困難である。そのため、研磨レスローラを帯電ローラとして用いた場合、当該研磨レスローラと感光ドラムとの当接状態が不安定となることがあった。
【0004】
特許文献1には、長手方向の中央部における、帯電ローラと感光体との間の隙間の発生を抑制するために、端部の硬度を中央部の硬度より小さくした帯電ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−361843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1に係る技術を適用した研磨レスローラを、帯電ローラとして用いることを検討した。その結果、研磨レスローラの長手方向端部における当該研磨レスローラと感光ドラムとの接触面積の増加により、両者の当接状態を安定化させることができた。しかしながら、かかる研磨レスローラを長期に亘って帯電ローラとして使用し続けたところ、得られる電子写真画像の、研磨レスローラの長手方向の中央と端部とに対応する位置において、濃度差が生じることがあった。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、高品位な電子写真画像を長期に亘って提供し得る帯電ローラとその製造方法の提供に向けたものである。
【0008】
また、本発明の他の態様は、高品位な電子写真画像の形成に資する電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、
導電性支持体と、該導電性支持体上の弾性層とを含む帯電ローラであって、
該弾性層は、唯一の弾性層であって、かつ、単層からなり、
該弾性層は、バインダー樹脂を含み、かつ、弾性体粒子を、該帯電ローラの表面に露出した状態で保持してなり、該帯電ローラの表面は、該弾性体粒子に由来の凸部を有し、
該弾性層の長さをLとしたときの、弾性層の長手方向中央から長手方向に(3/8)L離れた部分における、表面のバインダー樹脂のマルテンス硬度をH1(N/mm)とし、
該弾性層の長手方向中央における、表面のバインダー樹脂のマルテンス硬度をH2(N/mm)とし、
該弾性体粒子のマルテンス硬度をH3(N/mm)としたとき、
H1、H2およびH3が式(1)を満たす帯電ローラが提供される:
式(1)
H1<H3<H2。
【0010】
本発明の別の態様によれば、前記帯電ローラを備える電子写真装置が提供される。
【0011】
本発明のさらに別の態様によれば、前記帯電ローラの製造方法であって、
(1)前記バインダー樹脂の原料としての未加硫ゴムと、前記弾性体粒子とを含む未加硫ゴム組成物を用意する工程;
(2)前記導電性支持体上に、該未加硫ゴム組成物を引き延ばしながら押出成形して、未加硫ゴム組成物の層を形成する工程;および、
(3)該未加硫ゴム組成物の層を加硫して前記弾性層を得る加硫工程を有し、
該工程(3)が、該未加硫ゴム組成物の層の長手方向の位置によって異なる条件下で加硫する工程を含む、帯電ローラの製造方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の態様によれば、前記帯電ローラの製造方法であって、
(1)前記バインダー樹脂の原料としての未加硫ゴムと、前記弾性体粒子とを含む未加硫ゴム組成物を用意する工程;
(2)前記導電性支持体上に、該未加硫ゴム組成物を引き延ばしながら押出成形して、未加硫ゴム組成物の層を形成する工程;および、
(3)該未加硫ゴム組成物の層を加硫して加硫ゴム組成物の層を形成する工程、および
(4)該加硫ゴム組成物の層の表面に電子線を照射して硬化させて前記弾性層を形成する工程、を有し、
該工程(4)は、該加硫ゴム組成物の層の長手方向の位置によって、異なる照射条件の下で電子線を照射する工程を含む、帯電ローラの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、高品位な電子写真画像を長期に亘って提供し得る帯電ローラを得ることができる。また、本発明の他の態様によれば、高品位な電子写真画像の形成に資する電子写真画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】帯電ローラの一例の、長手方向に直交する方向の断面を示す模式図である。
図2】帯電ローラの一例の外径形状を示す模式図である。
図3】画像濃度の中央端部差を抑制するメカニズムを説明するために、帯電ローラの感光体との当接部の表面状態を示す模式図であり、(a)は非当接時の状態を、(b)は、後述する端部Eにおける当接時の状態を、(c)は長手方向中央における当接時の状態を、(d)は当接時の当接幅内の弾性層表面の状態を示す。
図4】(a)はクロスヘッド押出成形機の一例の概略構成図であり、(b)はそのクロスヘッド押出口付近の部分的模式図である。
図5】帯電ローラを有する電子写真装置の一例を模式的に示す構成図である。
図6】凸部の好ましい形態を説明するための模式図である。
図7】電子線照射装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、帯電ローラに関して特段の断りなく「端部」と言った場合、それは弾性層の長手方向の端部を意味する。また、長手方向とは、帯電ローラの導電性支持体の中心軸と平行な方向を意味する。
【0016】
図1に、本発明に係る帯電ローラの一例の断面の模式図を示す。帯電ローラは、導電性支持体11と、導電性支持体上、特にはその導電性支持体の外周面に形成した弾性層12とを含む。帯電ローラにおいて、この弾性層は、唯一の弾性層であり、かつ、単層からなる。例えば、帯電ローラは導電性支持体と、導電性支持体の上の、ただ一層の弾性層からなることができる。
【0017】
この帯電ローラの外径形状を図2に示す。弾性層12はバインダー樹脂を含む。弾性層は、特には弾性層の外周面の全域において、弾性体粒子を、帯電ローラの表面に露出した状態で保持してなる。帯電ローラの表面は、弾性体粒子に由来の凸部21を有する。
【0018】
マルテンス硬度H1、H2及びH3を次のように定義する。なお、弾性層の長手方向の長さをLとする。
H1(N/mm):弾性層12の長手方向中央(部分C)から長手方向に(3/8)L離れた部分における、表面のバインダー樹脂のマルテンス硬度。ただしH1は、弾性層の長手方向中央から弾性層の一端に向かって(3/8)L離れた部分E1と、他端に向かって(3/8)L離れた部分E2との、二つの部分についてそれぞれ定義される。E1について定義されるH1を「H1(1)」と、E2について定義されるH1を「H1(2)」と表す。
H2(N/mm):弾性層12の、長手方向中央における、表面のバインダー樹脂のマルテンス硬度。
H3(N/mm):弾性層12に含有される弾性体粒子のマルテンス硬度。
【0019】
以下、部分E1及びE2を総称して「端部E」と呼ぶことがあり、またH1を「端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度」と呼ぶことがある。また、以下において、単に「中央部」という場合、それは弾性層の長手方向中央の部分を意味する。
【0020】
弾性層12に含有される弾性体粒子のマルテンス硬度H3は、端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1より大きく、中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2より小さい。すなわち、
式(1)
H1<H3<H2
が満たされる。式(1)は、部分E1及びE2について定義されるいずれのH1についても、すなわち、H1がH1(1)である場合も、H1がH1(2)である場合も、成立する。
【0021】
本発明者らは、本発明に係る帯電ローラによって、端部汚れの増加に起因する画像濃度の中央端部差を抑制するメカニズムについて、以下のように推定した。
図3にこの帯電ローラが感光体に当接したときの表面状態を模式的に示す。図3(a)は帯電ローラの感光体31と当接していないときの状態を、帯電ローラの長手方向に直交する方向から観察したときの模式図である。同図(b)及び(c)はそれぞれ、帯電ローラの端部E及び中央部が感光体31と当接したときの表面状態を同方向から観察したときの模式図である。また図3(d)は、帯電ローラが感光体と当接したときの当接幅内の弾性層表面の状態を示す模式図である。
【0022】
帯電ローラの端部Eでは、弾性体粒子32のマルテンス硬度H3がバインダー樹脂33のマルテンス硬度H1より大きい。そのため感光体31との当接時、図3(b)のように、バインダー樹脂33が変形して弾性体粒子32がバインダー樹脂に沈み込むため、感光体に対する各弾性体粒子の接触面積は小さい。
【0023】
帯電ローラの中央部では、弾性体粒子32のマルテンス硬度H3がバインダー樹脂33のマルテンス硬度H2より小さい。そのため図3(c)のように、弾性体粒子32が変形し、感光体に対する各弾性体粒子の接触面積が大きくなる。
【0024】
一方、帯電ローラが形成する当接幅は、図3(d)のように端部Eで中央部より広くなる。これは端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1が中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2より小さく、中央部より端部Eで弾性層の変形量が大きくなることに起因する。そのため、感光体に当接している弾性体粒子の数は、中央部より端部Eの方が多くなる。
【0025】
以上のように、端部Eの当接部34では、個々の弾性体粒子の接触面積は弾性体粒子がバインダー樹脂に沈み込むため小さいが、当接幅が広いので当接している粒子数は多い。また中央部の当接部35では、個々の弾性体粒子の接触面積は弾性体粒子が変形するため大きいが、当接幅が狭いので当接している粒子数が少ない。このような当接状態になることにより、感光体との当接幅内の接触面積の中央端部差が小さくなるため、トナーや外添剤などによる汚れの中央端部差も小さくなり、画像濃度の中央端部差が抑制できると推定される。
【0026】
弾性層表面のバインダー樹脂のマルテンス硬度は、弾性層長手方向において、中央Cから各端まで、中央部Cから離れるにしたがって減少するか一定である(増加することはない)。
【0027】
接触面積の中央端部差を小さくするためには、弾性体粒子が露出した凸部を形成する必要がある。粒子が弾性体であることで、感光体と当接した場合、弾性体粒子が、端部Eではバインダー樹脂に沈み込み、中央部では変形することが可能となる。弾性体粒子が露出していることで、弾性体粒子の変形が可能となる。弾性体粒子による凸部が形成されていることで、感光体と当接したときに、弾性体粒子の変形、および弾性体粒子のバインダー樹脂への沈み込みが可能となる。
【0028】
帯電ローラの端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1(H1がH1(1)及びH1(2)のいずれの場合も)、中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2、弾性体粒子のマルテンス硬度H3は、式(2)、(3)を満たすことが好ましい。
式(2)
5≦H3−H1。
式(3)
5≦H2−H3。
【0029】
式(2)が満たされると、弾性体粒子のマルテンス硬度H3と端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1の差が5N/mmより小さい場合と比較して、感光体との当接時、端部Eにおいて弾性体粒子がバインダー樹脂に、より沈み込む。そのため、端部Eの個々の弾性体粒子による接触面積はさらに小さくなり、接触面積の中央端部差を小さくできるので、画像濃度の中央端部差をより効果的に抑制できる。
【0030】
式(3)が満たされれば、中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2と弾性体粒子のマルテンス硬度H3の差が5N/mmより小さい場合と比較して、感光体との当接時、中央部において弾性体粒子が感光体と接触して、より変形する。そのため中央部の個々の弾性体粒子による接触面積はさらに大きくなり、接触面積の中央端部差を小さくできるので、画像濃度の中央端部差をより効果的に抑制できる。
【0031】
さらに、帯電ローラの端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1(H1がH1(1)及びH1(2)のいずれの場合も)、中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2は、式(4)、(5)を満たすことが好ましい。
式(4)
2≦H1。
式(5)
H2≦60。
【0032】
H1が(従ってH2も)2N/mm以上であれば、トナーや外添剤などが端部Eのバインダー樹脂に埋め込まれて汚れが増加することによる、端部における段ムラ状の画像弊害や、画像濃度の中央端部差を効果的に抑制することが容易である。H2が(従ってH1も)60N/mm以下であれば、トナーが割れて、変形した弾性体粒子の周囲に固着して発生する円形状(以後、「ポチ状」と表記する)の画像弊害を効果的に抑制することが容易である。
【0033】
さらに、弾性体粒子のマルテンス硬度H3は、式(6)を満たすことが好ましい。
式(6)
10≦H3≦50。
【0034】
弾性体粒子のマルテンス硬度H3が10N/mm以上であれば、トナーや外添剤などが弾性体粒子に埋め込まれて汚れが増加することを容易に抑制できる。そのため、この汚れに起因する段ムラ状の画像弊害をより効果的に抑制できる。また、端部Eは当接幅が広く、当接幅内の見た目の弾性体粒子が多い端部Eで特に汚れが減少するので、画像濃度の中央端部差をより効果的に抑制できる。弾性体粒子のマルテンス硬度H3が50N/mm以下であれば、感光体と当接時、弾性体粒子によって割れたトナーによるトナー汚れが減少し、ポチ状の画像弊害をより効果的に抑制できる。また、弾性層に埋め込まれるトナーが少なくなり、特に当接幅の広い端部において汚れが減少するので、画像濃度の中央端部差をより効果的に抑制できる。
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0036】
なお、本発明の帯電ローラは、研磨レスローラとして好適であるがその限りではなく、弾性層が研磨されている帯電ローラであってもよい。いずれの場合も、前述のメカニズムが有効に働き得る。また、本発明の帯電ローラは、クラウン形状を有していても、有していなくてもよく(クラウン量がゼロ)、さらには逆クラウン形状を有していてもよい。
【0037】
<帯電ローラ>
帯電ローラは、典型的には、導電性支持体と、導電性支持体の上に形成した導電性弾性層とからなっている。以下、帯電ローラを構成する各要素について順に説明する。
【0038】
(導電性の支持体)
導電性支持体は、導電性を有し、弾性層を支持可能であって、かつ、帯電ローラとしての強度を維持し得るものであればよい。導電性支持体の導電性は、適宜設定でき、電子写真用帯電ローラの導電性支持体の導電性として公知の範囲に適宜設定することができる。
【0039】
(弾性層)
弾性層は、バインダー樹脂を含み、弾性体粒子を、帯電ローラ表面に露出した状態で保持する。弾性層は、典型的には導電性を有する。弾性層の導電性は、適宜設定でき、電子写真用帯電ローラの弾性層の導電性として公知の範囲に適宜設定することができる。
【0040】
(弾性体粒子の観察法)
帯電ローラの表面には、弾性体粒子が露出している。弾性体粒子の露出の有無は、コンフォーカル顕微鏡(製品名:OPTELICS HYBRID、レーザーテック株式会社製)を用いて、帯電ローラ表面を観察することで確認できる。このとき、対物レンズ20倍、画素数1024pixel、高さ分解能0.1μmの測定条件を採用できる。弾性層を前述の測定条件で観察したときの視野において、少なくとも1つの弾性体粒子が弾性層の表面でバインダー樹脂によって被覆されていないことを確認できればよい。この視野において、露出した弾性体粒子が、5つ以上存在することが好ましい。
【0041】
帯電ローラ表面は、弾性体粒子に由来する凸部を有する。したがって露出した弾性体粒子は、ローラ表面で凸部を形成している。凸部の高さは特に限定されない。凸部の有無は、コンフォーカル顕微鏡(製品名:OPTELICS HYBRID、レーザーテック株式会社製)で確認することができる。このとき、対物レンズ20倍、画素数1024pixel、高さ分解能0.1μmの測定条件を採用できる。図6を用いて、凸部の好ましい形態、特に好ましい高さについて、説明する。まず、凸部を形成する弾性体粒子32が存在する弾性層の表面にカミソリを入れて、当該弾性体粒子が含まれるゴム片60を切り出す。その後、弾性体粒子が弾性層表面の法線方向から切断されるように、ゴム片をカミソリで切断する。その切断面(弾性層表面の法線方向に沿う断面)を図6に模式的に示す。このような切断面において、バインダー樹脂によって形成される弾性層の表面に属する点であって、かつ当該弾性体粒子と接する2つの点61a及び61bを通る直線62を引く。この直線62から垂直に直線63を伸ばし、直線63が当該弾性体粒子の輪郭線と交わるときの、直線62から輪郭線までの距離のうちの、最も長い距離を、高さhとすることができる。前述の測定条件で観察したときの視野において、露出している全ての弾性体粒子の高さhの平均値が1.0μm以上であることが好ましい。
【0042】
弾性層は、生産工程の簡素化によるコストの削減の観点から、ただ一つ存在し、かつ単層からなることが必要である。弾性層の厚さとしては、感光体との当接幅を確保するために、0.8mm以上、4.0mm以下、特には、1.2mm以上、3.0mm以下の範囲が好ましい。
【0043】
(バインダー樹脂のマルテンス硬度の測定法)
バインダー樹脂のマルテンス硬度は、微小硬度測定装置(商品名:ピコデンターHM500、フィッシャー・インストルメンツ株式会社製)を用い、23℃かつ55%RH(相対湿度)環境において測定することができる。測定用の圧子としては、四角錘型ダイヤモンドを用いればよい。押し込み速度は式(7)の条件とする。
式(7)
dF/dt=0.1mN/10s
(Fは力、tは時間を表す。)。
【0044】
弾性層からカマボコ状(その曲面が、弾性層の外周面に対応する)のゴム片を切り取り、同ゴム片を弾性層表面に対して法線方向から切断して薄片を作成する。この薄片を形成する弾性層の部分は、ローラの回転軸にそれぞれ直交する2つの平面の間の領域として、ローラの回転軸方向の位置が規定される。そして、この薄片を形成する弾性層の部分は、これら2つの平面のそれぞれにおいて、次の要素によって囲まれる。すなわち、弾性層の外周を形成する円弧;当該円弧に対応する弦;及び、当該弦にそれぞれ直交する2つの直線。ただし、これら2つの直線がそれぞれ当該弦と交わる2つの交点は、当該弦の中点を境に対象な位置にある。
【0045】
微小硬度測定装置に備え付けの顕微鏡を用い、同薄片における弾性層表面(周面)の断面部分に弾性体粒子が存在しないことを確認する。その後、この弾性層表面の法線方向から弾性層表面を形成するバインダー樹脂に圧子を当てて、圧子が0.04mNの力で押しこまれた際の硬さ(押し込み力と圧子の埋め込まれた部分の表面積の比、N/mm)を抽出する。
【0046】
端部E(部分E1およびE2)のそれぞれにおいて、周方向の位置に偏りが無いように6箇所(周方向に60°間隔で6箇所)ずつ測定した値を平均化する。中央部(C)においても周方向の位置に偏りが無いように6箇所測定し、値を平均化する。これにより、部分E1のバインダー樹脂のマルテンス硬度H1(1)、部分E2のバインダー樹脂のマルテンス硬度H1(2)、および中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2を得る。
【0047】
(弾性体粒子のマルテンス硬度の測定法)
弾性体粒子のマルテンス硬度の測定は、バインダー樹脂のマルテンス硬度と同様の装置および測定条件を用い、圧子を帯電ローラ表面に存在する露出した弾性体粒子に当てることで行う。ただし、微小硬度測定装置に備え付けの顕微鏡を用いて弾性層表面(周面)の断面部分に弾性体粒子が存在しないことを確認する工程は不要である。
これを部分E1およびE2、中央部それぞれで露出している10個ずつの弾性体粒子に対して行い、得られた値(合計30点)を平均化することで弾性体粒子のマルテンス硬度を得ることができる。
【0048】
(弾性層の内部硬度)
また、弾性層の内部硬度を示すMD−1硬度は特に限定されないが、60°から80°程度を例示することができる。測定はマイクロ硬度計MD−1型(製品名:MD−1 capa、高分子計器株式会社製)を用い、23℃かつ55%RH環境においてピークホールドモードで測定できる。より詳しくは帯電ローラを金属製の板の上に置き、金属製のブロックを置いて帯電ローラが転がらないように簡単に固定する。そして、金属板に対する法線方向から弾性層の中心(当該法線方向から見たときの、弾性層長手方向に直交する方向における中心)に正確に測定端子を押し当て5秒間測定したときのピーク値を読み取る。これを弾性層の端部E(部分E1およびE2)、そして中央部でそれぞれ周方向位置に偏りが無いように6箇所ずつ測定し、得られた測定値の平均値を端部E(部分E1及びE2のそれぞれ)および中央部のMD−1硬度とする。
【0049】
(バインダー樹脂)
弾性層のバインダー樹脂として、例えばエラストマー組成物を用いることができる。エラストマー組成物は、原料エラストマー(加硫されていないエラストマー)に導電剤、架橋剤等の配合剤を適宜配合し、適宜加硫した組成物である。
【0050】
導電性の弾性層を得るために、導電性のエラストマー組成物を用いることができる。導電性エラストマー組成物の導電機構はイオン導電機構と電子導電機構の二つに大別される。イオン導電機構の導電性エラストマー組成物は、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムに代表される極性ゴムと、イオン導電剤を含むものが一般的である。このイオン導電剤は、前記極性ゴム中で電離し、かつその電離したイオンの移動度が高いイオン導電剤である。
【0051】
電子導電機構による導電性エラストマー組成物としては、エラストマー中に導電性粒子を分散し、複合したものが用いられる。導電性粒子の例としては、ケッチェンブラックEC(商品名:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)およびアセチレンブラックの如き導電性カーボンブラック;SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)、HAF(High Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)の如きゴム用カーボンブラック;酸化処理を施したカラー(インク)用カーボンブラック、熱分解カーボンブラック、天然グラファイト、人造グラファイト;酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、銅、銀等の金属及び金属酸化物、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0052】
これらの導電性粒子の配合量は、原料エラストマー、導電性粒子、及びその他配合剤の種類によって、導電性弾性層が所望の電気抵抗となるように、適宜選択することができる。例えば、ポリマー(原料エラストマー)100質量部に対して、0.5質量部以上、100質量部以下、好ましくは2質量部以上、60質量部以下などとすることができる。
【0053】
導電性粒子は大きな凸部とならないことが好ましく、平均粒子径が10nmから300nmであるものを用いることが好ましい。導電性粒子の平均粒子径は以下の方法によって求められる「長さ平均粒子径」である。まず、導電性粒子の断面を走査型電子顕微鏡(製品名:JEOL LV5910、日本電子株式会社製)で観察、画像撮影を実施し、撮影画像を画像解析ソフト(製品名:Image−Pro Plus、プラネトロン社製)を用いて解析する。解析は写真撮影時のミクロンバーから単位長さあたりの画素数をキャリブレーションし、写真から無作為に選択した100個の粒子について、画像上の画素数から定方向径を測定し、算術平均粒子直径を求め、導電性粒子の平均粒子径とする。
【0054】
また、エラストマー組成物中には、他の導電剤、充填剤、加工助剤、老化防止剤、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、分散剤等を含有させることができる。
【0055】
エラストマー組成物には、熱可塑性エラストマーを用いることもできるが、特にイソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム等を含むゴム組成物が好適に用いられる。これらのゴム(未加硫状態)はブタジエン骨格に由来する二重結合を有しており、上記ゴムを用いてバインダー樹脂の加硫を行う場合、二重結合の開裂に伴い加硫を効果的に進めることができる。そのため、上記ゴムを使用することは、弾性層の中央部付近を選択的に加硫した場合に、その箇所のマルテンス硬度を選択的に大きくしやすいので好ましい。
【0056】
(弾性体粒子)
弾性体粒子の例として、フェノール樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン等から選ばれる少なくとも一つの樹脂からなる樹脂粒子が例示される。特に、耐熱性が高く、熱処理してもマルテンス硬度が変わりにくい、ウレタン樹脂またはシリコーン樹脂からなる弾性体粒子が好ましい。
【0057】
弾性体粒子の配合量は、原料エラストマー(原料ゴム)の100質量部に対して、2質量部以上、70質量部以下、好ましくは5質量部以上、50質量部以下などとすることができる。
【0058】
また、弾性体粒子の平均粒子径は特に限定されないが、6μm以上、30μm以下程度が好ましい。平均粒子径が6μm以上であれば、弾性体粒子が帯電ローラ表面に露出して凸部を形成し、接触面積の中央端部差を小さくし、端部と中央部の画像濃度差を小さくすることが容易である。また、平均粒子径が30μm以下であれば、弾性体粒子の周囲にトナーが蓄積することによるポチ状の汚れを少なくすることが容易である。
【0059】
弾性体粒子の平均粒子径は「長さ平均粒子径」であり、導電性粒子の平均粒子径と同様にして測定できる。
【0060】
<帯電ローラの製造方法>
弾性体粒子が露出した凸部を有する弾性層表面として、クロスヘッド押出によって形成した弾性層の表面をそのまま用いることが、生産工程の簡素化のために好ましい。弾性層を研磨する研磨工程は不要である。具体的には、クロスヘッド押出成形機を用いて、未加硫ゴム組成物を、導電性支持体としての芯金で押しながら成形することができる。未加硫ゴム組成物は、バインダー樹脂の原料としての未加硫ゴムと弾性体粒子を含み、また適宜、導電剤や架橋剤等の配合剤を含むことができる。クロスヘッド押出成形機には、未加硫ゴム組成物と、所定の長さの芯金とが同時に送り込まれ、芯金の外周面に所定の厚さの未加硫ゴム組成物が均等に被膜された未加硫ゴムローラがクロスヘッドの出口から押し出される。
【0061】
図4(a)は、クロスヘッド押出成形機4の概略構成図である。クロスヘッド押出成形機4は、芯金41をその全周にわたって未加硫ゴム組成物42で均等に被覆して、中心に芯金41が入った未加硫ゴムローラ43を製造するための装置である。
【0062】
クロスヘッド押出成形機4には、芯金41と未加硫ゴム組成物42が送り込まれるクロスヘッド44と、クロスヘッド44に芯金41を送り込む搬送ローラ45と、クロスヘッド44に未加硫ゴム組成物42を送り込むシリンダ46と、が設けられている。
【0063】
搬送ローラ45は、複数本の芯金41を軸方向に連続的にクロスヘッド44に送り込む。シリンダ46は内部にスクリュー47を備え、スクリュー47の回転により未加硫ゴム組成物42をクロスヘッド44内に送り込む。
【0064】
芯金41は、クロスヘッド44内に送り込まれると、シリンダ46からクロスヘッド内に送り込まれた未加硫ゴム組成物42に全周を覆われる。そして、芯金41は、クロスヘッド44の出口のダイス48から、表面が未加硫ゴム組成物42で被覆された未加硫ゴムローラ43として送り出される。クロスヘッドの押出口の隙間に比べ未加硫ゴム組成物の厚みが薄くなるように成形することで、つまり、未加硫ゴム組成物を引き延ばしながら押出成形することで、弾性体粒子が弾性層表面に露出し、そして帯電ローラの表面に露出し、凸部が形成される。
【0065】
図4(b)に、クロスヘッド押出口付近の部分的模式図を示す。クロスヘッド押出口のダイスの内径をD、未加硫ゴムローラの長手方向中央の外径をd、芯金の外径をdとした際に、「(未加硫ゴム組成物の長手方向中央の厚み)÷(押出口の隙間)」に相当する(d−d)/(D−d)を引取率(%)と定義する。この値は100%のとき、押出口の隙間と、未加硫ゴム組成物の厚みが同じであることを意味する。この引取率が小さいほど引き延ばしながら成形することを示し、露出した弾性体粒子による凸部が形成されやすい。引取率としては、弾性体粒子が適度に露出して凸部を形成できる値として、例えば95%以下、85%以上程度を例示することができる。
【0066】
なお、クラウン形状を示すクラウン量CRは、弾性層の中央部の外径をD2(μm)、両端部の外径をそれぞれD1(μm)及びD3(μm)とした場合に、式(8)にて算出される値である。
式(8)
CR=D2−(D1+D3)/2。
クラウン量は特に限定されないが、60μm以上280μm以下程度を例示することができる。
【0067】
引取率の調整は、搬送ローラ45による芯金送り速度と、シリンダ46からの未加硫ゴム組成物送り速度との相対比を変化させることで行うことができる。例えば、シリンダ46からクロスヘッド44への未加硫ゴム組成物42の送り速度は一定とする。そして、芯金送り速度を調節することにより、芯金41の送り速度と未加硫ゴム組成部42の送り速度の比に応じて、未加硫ゴム組成物42の肉厚が決定される。肉厚を変化させながら成形することによって、未加硫ゴム組成物をクラウン形状に成形することができる。こうして未加硫ゴムローラ43を得ることができる。
【0068】
次いで、未加硫ゴムローラを加硫して、加硫ゴムローラを得る。その際に加熱方法を工夫することで、弾性層の長手方向に硬度差を付けることができる。また加硫ゴムローラを得た後に、表面処理を工夫することでも弾性層の長手方向に硬度差を付けることができる。このような加熱処理方法もしくは表面処理方法の例として、以下の(1)、(2)、(3)の方法が挙げられる。
【0069】
(1)未加硫ゴムローラのゴム層(弾性層に対応する、未加硫ゴム組成物の層)を、その長手方向の位置によって異なる条件下で、加硫する。ここでは未加硫ゴム組成物の層を二段階に加熱することによって加硫する。一段階目の加熱では、未加硫ゴムローラのゴム層の全域を加熱する。二段階目の加熱では、ゴム層の中央部(弾性層の中央部Cに相当する部分)の加熱条件と、部分E1及びE2に相当する部分の加熱条件を、異ならせる。中央部の加硫を、より進めることによって、中央部の硬度をより高める。
【0070】
具体的には例えば以下のようにする。すなわち、未加硫ゴムローラを、熱風炉に入れ、1時間から1時間30分程度加硫を行い、加硫ゴムローラを熱風炉から取り出す。その後加硫ゴムローラを60rpmで回転させながら、10cm程度離れた位置からヒートガンで、ゴム層の中央部(弾性層の中央部Cに相当する部分)に15分から45分程度熱風を送風して追加硫を行う。このとき、ヒートガンによる熱の伝搬は、中央部から端部に向かって進む。そのため、ゴム層のマルテンス硬度分布は中央部で最も高く、端部に向かうほど小さくなる。なお、熱風の温度は熱電対を用いて、ヒートガンから10cm離れた位置で測定を行う。
【0071】
(2)未加硫ゴムローラのゴム層の全域を加熱して、加硫ゴムローラを得る。次いで、加硫ゴムローラのゴム層を、その長手方向の位置によって異なる条件下で、表面処理(電子線照射など)して硬化させる。これにより、ゴム層の一部(中央部Cに相当する部分を含む)の硬化処理の度合いを、残部(部分E1及びE2に相当する部分を含む)の硬化処理の度合いよりも、高くする。
【0072】
例えば、加硫ゴム組成物の層の表面処理を、電子線を照射することによって行う場合、該加硫ゴム組成物の層の長手方向の位置によって、異なる照射条件の下で電子線を照射する方法が挙げられる。具体的には、例えば、該加硫ゴム組成物の層の表面が受ける電子線の線量が、該加硫ゴム組成物の層の長手方向における中央部よりも、端部側が少なくなるように電子線を照射する。
【0073】
より具体的には、例えば以下の表面処理方法が挙げられる。すなわち、未加硫ゴムローラを、熱風炉に入れ、1時間程度加硫を行って加硫ゴムローラを得る。次いで、加硫ゴムローラの加硫ゴム組成物の層の表面に電子線を照射して表面処理を行う。
【0074】
まず、初めに、電子線による表面処理に用いる電子線照射装置を、図7を用いて説明する。図7に示す電子線照射装置は、電子線を発生する電子線源としてのフィラメント71を、電子線発生部70内に有している。電子線発生部70は、フィラメント71で発生した電子73が、気体分子と衝突してエネルギーを失うことを防ぐために、不図示の真空ポンプにより、通常、1×10−6Pa〜1×10−7Paの真空度に保たれている。また、電子線照射装置は、フィラメント71で発生した電子73を電子線発生部70内で加速するための加速管72を有している。さらに、電子線照射装置は、被処理対象物である加硫ゴムローラ75を処理するためのチャンバー78を具備している。被処理対象としての加硫ゴムローラ75は、チャンバー78内を、矢印76の方向に所定の速度で、かつ、矢印77の方向に回転させながら搬送される。
【0075】
チャンバー78と、電子線発生部70との間には、フィラメント71から発せられ、電子線発生部70にて加速された電子線が透過可能な箔74が設けられている。箔74は、電子線発生部70の真空雰囲気と、チャンバー78内の雰囲気とを隔てている。そのため、箔74は、電子線発生部70の真空状態を確保し得る気密性と機械的強度とを具備し、かつ、電子線が透過可能な材質である必要がある。かかる特性を満たし得る箔としては、例えば、アルミニウム箔、チタン箔およびベリリウム箔が挙げられる。かかる構成を備えた電子線照射装置としては、例えば、「EC150/45/40mA」(商品名、岩崎電子株式会社製)が挙げられる。矢印76の方向に沿う方向の箔部分の長さは、例えば、20mmである。
【0076】
このような電子線照射装置を用いて、本態様に係る帯電ローラを得る方法を以下に説明する。
【0077】
中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2を端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1より大きくするため、中央部の電子線照射の回数を、端部Eの電子線照射の回数よりも増やす。
【0078】
まず、チャンバー78内を、加硫ゴムローラ75を矢印77の方向に所定の速度、例えば、100rpmで回転させながら、矢印76の方向に所定の速度、例えば、10mm/秒で搬送させて、弾性層の長手方向、すなわち、図7における紙面の奥行方向の全域に亘って電子線を照射する(1回目の表面処理工程)。
【0079】
次に、1回目の表面処理工程を経た加硫ゴムローラについて、両端から(1/8)Lまでの領域をそれぞれアルミ箔で覆って電子線が当たらないようにした後、1回目の表面処理工程と同様にして表面処理を行う(2回目の表面処理工程)。
【0080】
さらに、2回目の表面処理工程を経た加硫ゴムローラについて、両端から(2/8)Lまでの領域をそれぞれアルミ箔で覆って電子線が当たらないようにした後、1回目の表面処理工程と同様にして表面処理を行う(3回目の表面処理工程)。
【0081】
さらにまた、3回目の表面処理工程を経た加硫ゴムローラについて、両端から(3/8)Lまでの領域をそれぞれアルミ箔で覆って電子線が当たらないようにした後、1回目の表面処理工程と同様にして表面処理を行って、本態様に係る帯電ローラを得る(4回目の表面処理工程)。
【0082】
上記の如き電子線照射装置を用いて、電子線照射条件を加速電圧80kV、電子電流を40mAとした場合、加硫ゴム組成物の層の長手方向の中央部の表面が受ける電子線の線量を、1350kGyとすることができる。
【0083】
(3)未加硫ゴムローラのゴム層を、その長手方向の位置によって異なる条件下で、加熱して加硫する。このとき、ゴム層の一部(中央部Cに相当する部分を含む)の温度が、残部(部分E1及びE2に相当する部分を含む)の温度よりも高くなるように加熱する。
【0084】
具体的には例えば以下のようにする。すなわち、未加硫ゴムローラを、赤外線加熱装置に入れる。赤外線装置内には14本の赤外線加熱ランプ(製品名:HYL25、株式会社ハイベック社製)が弾性層の長手方向に沿って等間隔に設置されている。そして、この赤外線加熱ランプは、未加硫ゴムローラをその軸に直交する方向から赤外線照射できるよう設置されている。また、弾性層の表面と赤外線加熱ランプの間隔は60mmで一定である。この赤外線ランプの出力を中央部から端部にかけて小さくし、未加硫ゴムローラを60rpmで回転させながら、10分から1時間程度赤外線照射を行う。
【0085】
これらの方法の中で(1)の方法、特に熱風炉による加硫は、製造工程が簡易であるため好ましい。
【0086】
上記の方法によれば、中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2が端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1より大きい弾性層を得ることができる。さらに、弾性層表面のバインダー樹脂のマルテンス硬度を、弾性層長手方向において、中央部Cから各端部まで、中央部Cから離れるにしたがって減少(一部一定であってよい)させることができる。
【0087】
上記の方法に好適に用いることのできるバインダー樹脂の例としては、前出のイソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム等のゴムを含むゴム組成物を挙げることができる。
【0088】
<電子写真装置>
続いて、本発明の帯電ローラを有する電子写真装置の例の構成図(図5)を用い、電子写真画像形成プロセスを説明する。被帯電体としての感光体51は、導電性支持体51bと、支持体51b上に形成した感光層51aとを有し、円筒形状を有する。そして、軸51cを中心に紙面時計周りに所定の周速度をもって駆動される。
【0089】
帯電ローラ52は感光体51に接触配置されて感光体を所定の電位に帯電する。帯電ローラ52は、導電性支持体11と、導電性支持体11上に形成した弾性層12とからなる。導電性支持体11の両端部が不図示の押圧手段で感光体51に押圧されている。電源53から摺擦電極53aを介して、導電性支持体11に所定の直流電圧が印加されることで、感光体51が所定の電位に帯電される。
【0090】
帯電された感光体51は、次いで露光装置54により、その周面に目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。その静電潜像は、次いで、現像装置55により、トナー画像として順次に可視像化される。このトナー画像は、転写材57に順次転写されていく。転写材57は、不図示の給紙手段部から感光体51の回転と同期取りされて適正なタイミングを持って感光体51と転写手段56との間の転写部へ搬送される。転写手段56は転写ローラであり、転写材57の裏からトナーと逆極性の帯電を行うことで感光体51側のトナー画像が転写材57に転写される。表面にトナー画像の転写を受けた転写材57は、感光体51から分離されて不図示の定着手段へ搬送されてトナーが定着され、画像形成物として出力される。像転写後の感光体51の周面は、弾性ブレードに代表されるクリーニング部材を備えるクリーニング装置58によって感光体51の表面に残留しているトナーなどが除去される。クリーニングされた感光体51の周面は次のサイクルの電子写真画像形成プロセスに移る。
【実施例】
【0091】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を限定するものではない。なお、以下、特に明記しない限り、試薬等で指定のないものは市販の高純度品を用いた。なお各例では、帯電ローラとして研磨レスローラを作製した。
【0092】
<粒子の準備>
実施例および比較例に係る帯電ローラの弾性層に含有させる粒子1〜粒子10を用意した。
【0093】
<粒子1の調製>
粒子1として、ポリウレタン樹脂粒子を以下の手順で作成した。水酸基価45のポリジエチレン・ブチレンアジペート100質量部にNCO%=49.2のポリイソシアネート(商品名:デュラネート24A、旭化成工業株式会社製)10質量部を添加し均一に混合した。この混合物を、フッ素処理したシリカ(商品名:WACKER HDK、大日精化工業株式会社製)5質量部をフッ素オイル(商品名:ガルデンHT135、モンテカルチーニ株式会社製)300質量部に分散した分散液に加えた。得られた混合物に、20分間超音波処理を行うことで乳化液を得た。この乳化液を90℃まで昇温し、400rpmで8時間撹拌してポリウレタンゲル粒子の分散液を得た。この分散液を真空乾燥することで、ポリウレタン粒子(平均粒子径15μm、マルテンス硬度6.5N/mm)を作成した。
【0094】
<粒子2の調製>
ポリイソシアネートの量を12.5質量部に変えた以外は、上記粒子1の製造方法と同様にして粒子2としてのポリウレタン粒子(平均粒子径15μm、マルテンス硬度8N/mm)を作成した。
【0095】
<粒子3の準備>
粒子3として、ウレタン樹脂粒子(商品名:U400−T、根上工業株式会社製)を用意した。
【0096】
<粒子4の調製>
粒子4として、シリコーン粒子を以下の手順で作製した。動粘度が600mm/sのメチルビニルポリシロキサン600gと、動粘度が30mm/sのメチルハイドロジェンポリシロキサン(オレフィン性不飽和基1個に対してヒドロキシル基が0.90個となる配合量)24gを混合した。なお、動粘度は25℃における値である。このために、これら成分を、ホモミキサーを用いて2000rpmで撹拌した。そして、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(商品名:ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、和光純薬工業株式会社製)6gと水180gを添加して5000rpmで撹拌し、粘度増加を確認した後さらに10分撹拌を続けた。次いで2000rpmで撹拌しながら、水400gを加えることで、乳化液を得た。この乳化液をガラスフラスコに移し、20℃に温度調節したのち、撹拌下に塩化白金酸−オレフィン錯体のトルエン溶液(白金含有量0.05%)0.8gとポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル1gの混合溶解物を添加した。これを、同温度で12時間撹拌することで、シリコーンエラストマー微粒子の水分散液を得た。同分散液700gに、水2500g、28質量%アンモニア水70g、および40質量%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合水溶液(商品名:MEポリマーH40W、東洋化学工業株式会社製)4gを添加した。得られた液を10℃に温度調節した後、メチルトリメトキシシラン50gを20分かけて添加し、さらに1時間撹拌した。その後加水分解と縮合反応を完了するため、60℃まで加熱して1時間撹拌を行った。同溶液に対して加圧濾過器を用いて水分を約30質量%脱水した。脱水物に水を添加し再度脱水した後、温度105℃で乾燥して、シリコーン樹脂粒子(平均粒子径15μm、マルテンス硬度54N/mm)を作成した。
【0097】
<粒子5〜粒子10の準備>
粒子5〜粒子10として下記の粒子を用意した。
【0098】
【表1】
【0099】
粒子1〜10の平均粒子径およびマルテンス硬度を下記表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
〔実施例1〕
(弾性層用の未加硫ゴム組成物の調製)
下記の表3に示す材料を混合してA練りゴム組成物を得た。混合機は、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、トーシン社製)を用いた。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、16分間とした。
【0102】
【表3】
【0103】
次いで、表4に示す材料を混合し、未加硫ゴム組成物−1を得た。混合機は、ロール径12インチ(0.30m)のオープンロール(製品名:12×30テストロール、関西ロール製)を用いた。混合条件は、前ロール回転数10rpm、後ロール回転数8rpmで、ロール間隙2mmとして合計20回左右の切り返しを行った後、ロール間隙を0.5mmとして10回薄通しを行った。
【0104】
【表4】
【0105】
(加硫ゴム層の成形)
まず、加硫ゴム層を接着する接着層を有する芯金を得るため、次の操作を行った。すなわち、直径5mm、長さ249mmの円柱形の導電性芯金(鋼製、表面はニッケルメッキ)の軸方向の中央部236mmに導電性加硫接着剤(商品名:メタロックU−20、東洋化学研究所製)を塗布し、80℃で30分間乾燥した。
【0106】
図4に示す構成を有するクロスヘッド押出成形機を用い、この接着層を有する芯金を、表面層用の未加硫ゴム組成物−1で被覆し、クラウン形状の未加硫ゴムローラを得た。このとき、成形温度は100℃、スクリュー回転数は10rpmとして、芯金の送り速度を変えながら成形した。未加硫ゴムローラの軸方向を平均した引取率は92%とした。クロスヘッド押出成形機のダイス内径はΦ(直径)7.8mm、未加硫ゴムローラのゴム層の、軸方向の中央の外径は7.6mm、軸方向の端部の外径は7.5mmであった。また、軸方向の中央の外径寸法の振れは10μm、軸方向の端部の外径寸法の振れは50μmであった。
【0107】
押出成形後、未加硫ゴムローラを熱風炉に入れ、195℃で80分加硫を行い、加硫ゴムローラを熱風炉から取り出した。その後、加硫ゴムローラから10cm離れた位置からヒートガン(製品名:HAKKO882、白光株式会社製)で、ゴム層の長手方向中央に向けて210℃の熱風を15分送風し、追加硫を行った。その後、加硫ゴム層の両端部を切断し、軸方向の長さを223mmとして弾性層を得た。
【0108】
(弾性体粒子の観察)
前述の弾性体粒子の観察法に従って、帯電ローラの弾性層表面を観察した。
【0109】
(バインダー樹脂のマルテンス硬度の測定)
前述のバインダー樹脂のマルテンス硬度の測定法に従って、端部E(部分E1及びE2)及び中央部におけるバインダー樹脂のマルテンス硬度H1(1)、H1(2)、及びH2をそれぞれ測定した。
【0110】
(弾性体粒子のマルテンス硬度の測定)
前述の弾性体粒子のマルテンス硬度の測定法に従い、ウレタン粒子のマルテンス硬度H3を測定した。なお、表3−1の「H3−H1(1)」の行には、硬度H3と硬度H1(1)との差の値を示し、「H3−H1(2)」の行には、硬度H3と硬度H1(2)との差の値を示す。
【0111】
(画像評価1)画像濃度の中央端部差の評価
作製した帯電ローラを、電子写真装置(商品名:LBP7600C、キヤノン株式会社製、A4紙縦出力用)のブラックカートリッジに装着した。この電子写真装置により、15℃/10%RHの環境下で、画像の出力を行った。
【0112】
具体的には、まずA4紙の画像形成領域の1面積%にランダムに印字した画像を使用し、1枚画像を出力すると電子写真装置を停止させ、10秒後また画像形成動作を再開するという動作を繰り返し3万枚の画像出力耐久試験を行った。
【0113】
そして3万枚耐久後の評価用画像として、ハーフトーン画像(感光体の回転方向に直交する方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く、中間濃度の画像)を1枚出力した。この画像を縦にして、横方向(A4紙の短辺方向)における端部と中央部を目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、二つの画像端部で画像濃度差が発生した場合は、より画像濃度の濃い画像端部と中央部を観察し、評価を行った。
【0114】
ここで、画像の端部とは、A4紙の画像形成領域のそれぞれの端から50mmの位置とした。また画像の中央部とは、A4紙の画像形成領域の端部から80mmから130mmまでの位置とした。
ランクA:画像濃度の中央端部差がなかった。
ランクB:ごく軽微な画像濃度の中央端部差があった。
ランクC:軽微な画像濃度の中央端部差があった。
ランクD:画像濃度の中央端部差があった。
【0115】
(画像評価2)段ムラ状の画像ムラの評価
評価1で作成した評価用画像を目視で観察し、下記の基準に基づき段ムラ状の画像ムラについて評価した。
ランクA:段ムラ状の画像ムラが認められなかった。
ランクB:ごく軽微な段ムラ状の画像ムラが認められた。
ランクC:軽微な段ムラ状の画像ムラが認められた。
ランクD:顕著な段ムラ状の画像ムラが認められた。
【0116】
(画像評価3)ポチ状の画像ムラの評価
作製した帯電ローラを、電子写真装置(商品名:LBP7600C、キヤノン株式会社製、A4紙縦出力用)のブラックカートリッジに装着した。このときブラックカートリッジに装備されるクリーナーブレードを、国際ゴム硬さが65°のクリーナーブレードに入れ替えた。これにより、クリーナーブレードの感光体に対する当接圧を小さくし、クリーナーブレードと感光体との間をトナーがすり抜けやすくした。この改造機により、15℃/10%RH(相対湿度)の環境下で、画像の出力を行った。
【0117】
具体的には、A4紙の画像形成領域の1面積%にランダムに印字した画像を使用し、1枚画像を出力すると電子写真装置を停止させ、10秒後また画像形成動作を再開するという動作を繰り返して、3万枚の画像を出力した。
【0118】
次いで、評価用画像として、ハーフトーン画像(感光体の回転方向に直交する方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く、中間濃度の画像)を1枚出力した。得られた評価用画像を目視で観察し、下記の基準に基づきポチ状の画像ムラについて評価した。
ランクA:ポチ状の画像ムラが認められなかった。
ランクB:ごく軽微なポチ状の画像ムラが認められた。
ランクC:軽微なポチ状の画像ムラが認められた。
ランクD:顕著なポチ状の画像ムラが認められた。
【0119】
〔実施例2〜16〕
粒子および加硫条件を表5−1に記載した通りに変更した以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを作成した。
【0120】
〔実施例17〕
熱風炉の加硫条件を230℃で85分に変更し、ヒートガンによる加硫の代わりに電子線照射処理を施した以外は実施例14と同じ操作で帯電ローラを作成し、同様の評価を行った。
【0121】
なお、電子線照射処理は、前記した通り、4回の電子線処理工程を施すことによって行った。電子線照射条件としては、加速電圧80kV、電子電流を40mAとした。また、加硫ゴムローラの図7中、矢印76方向への搬送速度は、10mm/秒、矢印77方向への回転速度は、100rpmとした。さらに、箔74のチャンバー78側の表面と被処理面との最短距離は、10mmとなるように設定した。これにより、加硫ゴム組成物の層の長手方向の中央部の表面、すなわち、アルミ箔で覆わなかった表面が受けた電子線の線量は、1350kGyとなった。
【0122】
〔実施例18〕
実施例15と同様にして帯電ローラを作製した。次いで、この帯電ローラの端部近傍E2について、ヒートガンを用いて加硫温度160℃、加硫時間5分で更なる加硫を行って本実施例に係る帯電ローラを作製した。
【0123】
〔比較例1〕
粒子を添加せず、加硫条件を表5−2に記載した通りとした以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製した。
【0124】
〔比較例2〜5、7〕
粒子および加硫条件を表5−2に記載した通りとした以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを作製した。
【0125】
〔比較例6〕
ヒートガンの位置を中央部から両端部にして、ヒートガンによる加硫を両端部のみに施した。両端部のヒートガンによる加硫条件は、加硫温度を170℃で15分に変更した以外は実施例14と同様にして帯電ローラを作製した。
【0126】
〔比較例8〕
NBRをエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)(商品名:JSR EP33、JSR株式会社製)に変更した以外は実施例1と同じ操作で帯電ローラを作製した。
【0127】
【表5-1】
【0128】
【表5-2】
【0129】
実施例1〜18および比較例1〜8に係る帯電ローラを、実施例1に記載の評価に供した。その結果を表6−1及び6−2に示す。なお、表6−1および6−2の「粒子の露出」の行に「有」と記載される場合、前述の弾性体粒子の観察法に従って、粒子が帯電ローラ表面に露出していることが確認されたことを意味する。また、「露出した粒子による凸部(平均高さ1μm以上)」の行に「有」と記載される場合、凸部の存在が確認され、かつ、観察時の視野において露出している全ての粒子の高さhの平均値が1.0μm以上であったことを意味する。
【0130】
なお、比較例1に係る帯電ローラは、弾性層中に粒子を含有していないため、凸部が形成されていない。それ故、「露出した粒子による凸部(平均高さ1μm以上)」の評価結果は、「無」と記載した。
【0131】
【表6-1】
【0132】
【表6-2】
【0133】
実施例1〜18では、画像濃度の中央端部差がA〜C評価であった。これは、端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1が弾性体粒子のマルテンス硬度H3より小さく、中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2が弾性体粒子のマルテンス硬度H3より大きいことで、接触面積の中央端部差を小さくできたためである。
【0134】
実施例1〜18では、段ムラ状の画像ムラがA〜C評価であった。これは中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2が端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1より大きく、中央部と比べて端部Eの当接幅を大きくできるためである。また、弾性体粒子のマルテンス硬度H3が10N/mm以上、端部E及び中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H1及びH2が2N/mm以上であると、トナーや外添剤などが弾性層に埋め込まれることを抑制しやすいので、好ましい。
【0135】
実施例1〜18では、ポチ状の画像ムラがA〜C評価であった。弾性体粒子のマルテンス硬度H3が50N/mm以下であるか、端部Eのバインダー樹脂および中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H1及びH2が60N/mm以下であり、トナー割れを抑制できたためである。これらの条件が両方とも満たされると、より好ましい。
【0136】
比較例1は画像濃度の中央端部差がD評価であった。これは弾性体粒子が添加されておらず、端部Eと中央部の接触面積差を小さくできなかったためである。
【0137】
比較例2は画像濃度の中央端部差がD評価であった。これは弾性体粒子のマルテンス硬度H3が中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2より大きく、感光体との当接時、端部Eと中央部において弾性体粒子がバインダー樹脂に沈み込み、接触面積の中央端部差を小さくできなかったためである。
【0138】
比較例3は画像濃度の中央端部差がD評価であった。これは弾性体粒子のマルテンス硬度H3が端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1より小さく、感光体との当接時、端部Eと中央部において弾性体粒子が感光体に押しつぶされ、接触面積の中央端部差を小さくできなかったためである。
【0139】
比較例4は画像濃度の中央端部差がD評価であった。これは弾性体粒子のマルテンス硬度H3が端部E及び中央部における硬度H1及びH2より小さく、感光体との当接時、端部Eと中央部で弾性体粒子が感光体に押しつぶされ、接触面積の中央端部差を小さくできなかったためである。また、段ムラ状の画像ムラがD評価であった。これは中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2が端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1と等しく、中央部の接触ムラを抑制できなかったためである。また、弾性体粒子のマルテンス硬度が10N/mmより小さく、バインダー樹脂のマルテンス硬度H1及びH2が2N/mmより小さいことで、トナーや外添剤などが弾性層に埋め込まれたためである。
【0140】
比較例5は画像濃度の中央端部差がD評価であった。これは弾性体粒子のマルテンス硬度H3が端部E及び中央部における硬度H1及びH2より大きく、感光体との当接時、端部Eと中央部で弾性体粒子がバインダー樹脂に沈み込み、接触面積の中央端部差を小さくできなかったためである。また、段ムラ状の画像ムラがD評価であった。これは中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2が端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1と等しく、中央部の当接ムラを抑制できなかったためである。
【0141】
比較例6は画像濃度の中央端部差がD評価であった。これは弾性体粒子のマルテンス硬度H3が、端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1より小さく、中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2より大きいため、感光体との当接時、接触面積の中央端部差が大きくなったためである。また、段ムラ状の画像ムラがD評価であった。これは端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1が中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2より大きく、端部Eの当接幅を大きくできず、中央部の当接ムラを抑制できなかったためである。
【0142】
比較例7は画像濃度の中央端部差がD評価であった。これは弾性体粒子の代わりに無機粒子を添加しており、感光体との当接時、無機粒子が変形せず、接触面積の中央端部差を小さくできなかったためである。
【0143】
比較例8は画像濃度の中央端部差がD評価であった。これは弾性体粒子のマルテンス硬度H3が端部E及び中央部における硬度H1及びH2より大きく、感光体との当接時、端部Eと中央部で弾性体粒子がバインダー樹脂に沈み込み、接触面積の中央端部差を小さくできなかったためである。また、段ムラ状の画像ムラがD評価であった。本例では、中央部でヒートガンによる熱風の送風を行っても、耐熱性の高いEPDMでは加硫が進まなかった。そのため、中央部のバインダー樹脂のマルテンス硬度H2を端部Eのバインダー樹脂のマルテンス硬度H1より大きくできなかったことで、中央部の当接ムラを抑制できなかったためである。
【符号の説明】
【0144】
11 導電性支持体
12 弾性層
21 凸部
L 弾性層の長手方向の長さ
C 弾性層の長手方向中央の部分
E1 弾性層の長手方向中央から一端に向かって(3/8)L離れた部分
E2 弾性層の長手方向中央から他端に向かって(3/8)L離れた部分
31 感光体
32 弾性体粒子
33 バインダー樹脂
34 端部Eの当接部
35 中央部の当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7