(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記参照信号を重畳したアナログ信号のA/D変換結果と前記参照信号とは逆極性の参照信号を重畳したアナログ信号のA/D変換結果が入力に対し、同一または異なるゲインを持つように構成され、
前記判定部は、前記参照信号を重畳したアナログ信号のA/D変換結果と、前記参照信号とは逆極性の参照信号を重畳したアナログ信号のA/D変換結果に含まれる前記参照信号の成分を打ち消し合うよう、重み付け加算する演算を行う、
請求項5または6に記載のディジタル保護制御装置。
前記アナログ信号を、前記複数のA/D変換部のうち2つ以上に入力し、前記判定部にて、前記2つ以上のA/D変換部の変換結果を比較することにより前記A/D変換部に異常が生じたか否かの監視を行う、
請求項15記載のディジタル保護制御装置。
前記複数のA/D変換部は、ΔΣ型A/D変換器と、逐次変換型A/D変換器とを併用する等、少なくとも2つ以上の変換方式が異なるA/D変換部を備える、請求項1から16のうちいずれか一項に記載のディジタル保護制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態のディジタル保護制御装置を、図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態のディジタル保護制御装置1の構成図である。
図1に示すように、ディジタル保護制御装置1は、電力系統Eに接続される。ディジタル保護制御装置1は、例えば、加算器10と、参照信号付与部20と、A/D変換部30−1、30−2、…、30−N(以下、Nは自然数)と、参照信号抽出部40と、第一判定部50と、第二判定部60とを備える。以下、いずれのA/D変換部であるかを区別しないときは、単にA/D変換部30と称する。なお、
図1では、監視に関する構成のみを切り出しており、A/D変換部30の出力を利用して種々の処理を行う構成については示していない。以下、各実施形態について同様とする。
【0014】
加算器10には、電力系統Eからアナログ信号が入力される。アナログ信号とは、例えば、電力系統Eにおける電圧や電流、電力などの測定値である。さらに加算器10には、参照信号付与部20から参照信号が入力される。加算器10は、アナログ信号と参照信号を加算し、重畳済信号を出力する。重畳済信号は、A/D変換部30に出力する。A/D変換部30は、入力された重畳済信号をディジタル値に変換し出力する。
【0015】
以下、参照信号抽出部40に接続されたA/D変換部30を被接続A/D変換部と呼ぶ。
図1の例では、A/D変換部30−1が被接続A/D変換部に相当する。被接続A/D変換部は、参照信号抽出部40へディジタル値を出力する。参照信号抽出部40は、被接続A/D変換部から入力されたディジタル値から参照信号の成分を抽出し、抽出結果を第一判定部50に出力する。例えば参照信号が直流信号である場合、参照信号抽出部40は、一定期間の平均を求めることで、参照信号の示す値を抽出することが可能である。電力系統Eとディジタル保護制御装置1の間に設けられる計器用変成器(PT、CT)は、電力系統Eからの入力のうち、直流分は通過させない特性がある。そのため参照信号が直流信号である場合は、参照信号抽出部40は、電力系統Eからの入力に影響されず参照信号の示す値を抽出することが可能である。
【0016】
第一判定部50は、参照信号抽出部40から入力される抽出結果と既知の参照信号が示す値を比較することで、少なくとも被接続A/D変換部30の精度の監視を行う。第一判定部50は、参照信号抽出部40から入力される抽出結果と既知の参照信号が示す値が合致する場合、被接続A/D変換部および通過回路部(1)が正常であると判定する。ここで、通過回路部(1)とは、被接続A/D変換部に接続され、参照信号付与部20により参照信号が重畳された後の信号が通過する回路部をいう。「合致する」とは、既知の参照信号が示す値を中心として、一定範囲内に収まることをいう。また第一判定部50は、入力される抽出結果と既知の参照信号が示す値が合致しない場合、被接続A/D変換部または通過回路部(1)に異常があると判定する。
【0017】
第二判定部60は、A/D変換部30−1〜30−Nにより出力されたディジタル値を相互に比較し、外れ値があるか否かを判定する。第二判定部60は、外れ値があれば、外れ値を出力したA/D変換部30、または通過回路部(2)に異常があると判定する。ここでの通過回路部(2)とは、対象となるA/D変換部30に接続され、参照信号付与部20により参照信号が重畳された後の信号が通過する回路部をいう。A/D変換部30に入力される信号には参照信号が重畳されているため、第二判定部60は、電力系統Eからアナログ信号の入力がない場合でも、A/D変換部30の異常を判定することができる。
【0018】
図2は、第1の実施形態のディジタル保護制御装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0019】
まず、参照信号付与部20が、加算器10に参照信号を出力し、信号の重畳を開始する(ステップS1000)。次に、各A/D変換部30のそれぞれが、入力された重畳済信号をディジタル値に変換し出力する(ステップS1020)。
【0020】
第一判定部50は、被接続A/D変換部により出力されたディジタル値から参照信号抽出部40が抽出した参照信号の示す値を取得する(ステップS1040)。第一判定部50は、抽出結果が既知の値と合致するか否かを判定し(ステップS1060)、合致しないと判定した場合は、被接続A/D変換部、または通過回路部(1)の異常として検知する(ステップS1080)。通過回路部(1)とは、前述した、被接続A/D変換部に接続され参照信号付与部20により参照信号が重畳された後の信号が通過する回路部である。第一判定部50は、被接続A/D変換部、および/または通過回路部(1)の異常を検知した場合、ディジタル保護制御装置1のモニタリング用デバイスに通知する。
【0021】
一方、第二判定部60は、A/D変換部30により出力されたディジタル値を相互に比較する。(ステップS1100)。第二判定部60は、相互に比較したディジタル値に外れ値がないかを判定し(ステップS1120)、外れ値があれば対象のA/D変換部30または通過回路部(2)の異常として検知する(ステップS1140)。第二判定部60は、いずれかのA/D変換部30または通過回路部(2)の異常を検知した場合、ディジタル保護制御装置1のモニタリング用デバイスに通知する。これにより本フローチャートの処理は終了する。
【0022】
なお、参照信号抽出部40と接続する被接続A/D変換部は固定的でなくてもよく、被接続A/D変換部を複数のA/D変換部30の中から任意に選択できるように構成してもよい。
図3は第1の実施形態のディジタル保護制御装置1において、参照信号付与部20と接続するA/D変換部をA/D変換部30−1からA/D変換部30−2に切り替えた様子を示す図である。切り替えは、手動により、または図示しない制御装置からの信号に基づいて切り替えスイッチが操作されることで実現される。ただし、監視中は被接続A/D変換部の切り替えを行わないものとする。
【0023】
このような構成によって、ディジタル保護制御装置1は、少なくとも被接続A/D変換部に異常が生じたか否かを判定することができ、複数のA/D変換部30により出力されたディジタル値を相互に比較することで、いずれかのA/D変換部30または通過回路部(2)に異常が生じたか否かを判定することができる。そして、これらの判定を行う際に、A/D変換部30の機能を停止する必要がないため、電力系統Eからのアナログ信号のサンプリングを欠落する事なく監視を行うことができる。
【0024】
以上説明した第1の実施形態のディジタル保護制御装置1によれば、参照信号抽出部40から入力される抽出結果と既知の参照信号が示す値を比較することで、少なくとも被接続A/D変換部、または通過回路部(1)のいずれかに異常が生じたか否かを判定する第一判定部50と、複数のA/D変換部30より出力されたディジタル値を相互に比較し、外れ値があれば、少なくとも外れ値を出力したA/D変換部30、または通過回路部(2)のいずれかに異常があると判定する第二判定部とを備えることにより、アナログ信号のサンプリングを途切れさせることなく、特性異常の監視を行うことができる。
【0025】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。
図4は、第2の実施形態のディジタル保護制御装置2の構成図である。ディジタル保護制御装置2は、第1の実施形態に係るディジタル保護制御装置1に対してアナログフィルタが付加された構成を有する。
図4に示すように、電力系統Eと接続されるディジタル保護制御装置2では、第1の実施形態と比較すると、加算器10とA/D変換部30との間にアナログフィルタ部70が設けられている。
以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態との共通点については説明を省略する。
【0026】
加算器10とA/D変換部30との間にアナログフィルタ部70が設けられている。アナログフィルタ部70は、重畳済信号を系統状態の監視に適した周波数帯域の成分を通過させ、それ以外の成分をカットする。
【0027】
第一判定部50は、アナログフィルタ部70を通過した被接続A/D変換部の変換結果に対して第1実施形態と同様の判定を行う。これによって、第一判定部50は、被接続A/D変換部、および/またはアナログフィルタ部70を含む、通過回路部(1)の特性異常の監視を行うことができる。
【0028】
図5は、第2の実施形態の他の態様であるディジタル保護制御装置2Aの構成図である。
図5に示すように、電力系統Eと接続されるディジタル保護制御装置2Aは、A/D変換部30−1〜30−Nのそれぞれに対応してアナログフィルタ部70−1〜70−Nが設けられている。
【0029】
図4で示した単一のアナログフィルタ部を含む構成は、回路規模を最小限にできるが、アナログフィルタ部70が劣化した場合に十分な監視を行うことができない可能性がある。一方、
図5で示した複数のアナログフィルタ部を含む構成は、アナログフィルタ部70−1〜70−Nの特性が急速に劣化した場合に、より迅速に特性異常を発見することができる。
【0030】
このような構成によって、ディジタル保護制御装置2、2Aは、電力系統Eの監視に適した周波数帯域に絞り込んだ状態で、各A/D変換部30、および/または、A/D変換部30に接続され参照信号付与部20により参照信号が重畳された後の信号が通過する回路部に異常が生じたか否かを判定しつつ、同時に電力系統Eからアナログ信号のサンプリングを欠落することなく監視を行うことができる。
【0031】
以上説明した第2の実施形態のディジタル保護制御装置2によれば、第1の実施形態と同様、アナログ信号のサンプリングを途切れさせることなく、特性異常の監視を行うことができる。
【0032】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。
図6は、第3の実施形態のディジタル保護制御装置3の構成図である。
図6に示すように、電力系統Eと接続されるディジタル保護制御装置3は、例えば、加算器10−1、10−2と、参照信号付与部20と、A/D変換部30−1、30−2と、アナログフィルタ部70−1、70−2と、入力変換部80と、判定部90とを備える。以下、いずれのアナログフィルタ部であるかを区別しないときは、単にアナログフィルタ部70と称する。この構成において、アナログフィルタ部70を省略してもよい。
【0033】
入力変換部80には、電力系統Eからアナログ信号が入力される。入力変換部80は、差動信号として正側差動出力(S+)、および負側差動出力(S−)を出力する。加算器10−1には、入力変換部80から正側差動出力(S+)が入力される。加算器10−2には、入力変換部80から負側差動出力(S−)が入力される。さらに加算器10−1、10−2のそれぞれには、参照信号付与部20から参照信号(Rf)が入力される。加算器10−1は、正側差動出力(S+)と参照信号(Rf)を加算し、正側重畳済信号(S++Rf)を出力する。加算器10−2は、負側差動出力(S−)と参照信号(Rf)を加算し、負側重畳済信号(S−+Rf)を出力する。アナログフィルタ部70−1には、正側重畳済信号(S++Rf)が入力される。また、アナログフィルタ部70−2には、負側重畳済信号(S−+Rf)が入力される。
【0034】
アナログフィルタ部70−1は、正側重畳済信号(S++Rf)を、監視に適した周波数帯域にした正側重畳/フィルタ済信号(S++Rf#)にして出力する。また、アナログフィルタ部70−2は、負側重畳済信号(S−+Rf)を、監視に適した周波数帯域にした負側重畳/フィルタ済信号(S−+Rf#)にして出力する。A/D変換部30−1は、入力された正側重畳/フィルタ済信号(S++Rf#)をディジタル値に変換し、判定部90に出力する。また、A/D変換部30−2は、入力された負側重畳/フィルタ済信号(S−+Rf#)をディジタル値に変換し、判定部90に出力する。判定部90は、入力されたディジタル値に対して所定の演算を行うことで、参照信号の成分を抽出する。判定部90は、所定の演算の結果を元に、A/D変換精度の監視を行う。判定部90は、異常を検知した場合、図示しないディジタル保護制御装置のモニタリング用デバイスに通知する。
【0035】
また、
図7は、ディジタル保護制御装置3の入力変換部80に関連する構成を、より具体的に示した図である。入力変換部80は、例えば、変圧器などの差動変成器を含む。入力変換部80である差動変成器は、電力系統Eからのアナログ信号を、差動信号に変換して出力する。また、参照信号付与部20とアナログフィルタ部70の間に、抵抗部100−1、100−2を備えている。以下、いずれの抵抗部であるかを区別しないときは、単に抵抗部100と称する。
【0036】
図8および
図9は、第3の実施形態の監視のための演算方法を説明するための図である。
図8は、A/D変換部30に関して特性異常が生じていない場合の各信号の推移を示す図である。
【0037】
図8(A)に示すように、アナログ信号は交流であり、
図8(B)に示すように、参照信号は直流である。
図8(C)に示すように、正側重畳済信号(S++Rf)はアナログ信号と参照信号を加算したものとなり、
図8(D)に示すように、負側重畳済信号(S−+Rf)は逆極性のアナログ信号と参照信号を加算したものとなる。
図8(E)に示すように、正側A/D変換結果は、正側重畳済信号(S++Rf)をディジタル値に変換したものである(図では曲線で示しているが、実際はサンプリング期間ごとの点列である)。また、
図8(F)に示すように、負側A/D変換結果は、負側重畳済信号(S−+Rf)をディジタル値に変換したものである(
図8(E)と同様に、実際はサンプリング期間毎の点列である)。
【0038】
判定部90は、正側A/D変換結果(E)と負側A/D変換結果(F)の差(G)を求めることにより、参照信号の成分を打ち消したアナログ信号変換結果を得ることができる。この信号は、本来の用途である、アナログ信号のサンプリングに使用することができる。また、判定部90は、正側A/D変換結果(E)と負側A/D変換結果(F)の和(H)を求めることにより(所定の演算の一例)、アナログ信号の成分が打ち消された判定用信号を求める。
図8の例では、判定用信号が参照信号の示す値と合致することから、A/D変換部30および通過回路部が正常であると判定する。通過回路部とは、A/D変換部30に接続され、参照信号付与部20により参照信号が重畳された後の信号が通過する回路部をいい、例えばアナログフィルタ部70である。
【0039】
図9は、A/D変換部30に関して特性異常が生じた場合の各信号の推移を示す図である。
図9の例では、正側A/D変換結果(E)と負側A/D変換結果(F)の和(H)が参照信号(B)と合致しないことから、少なくともA/D変換部30または通過回路部が異常であると判定する。
【0040】
このような構成によって、ディジタル保護制御装置3は、電力系統Eからのアナログ信号を差動信号に変換して入力された2つのA/D変換部30により出力されたA/D変換結果のディジタル値の差を求め、既知の参照信号と合致するか否かを判定することで、少なくともA/D変換部30または通過回路部に異常が生じたか否かを判定しつつ、同時に電力系統Eからアナログ信号のサンプリングを欠落することなく監視を行うことができる。
【0041】
なお、A/D変換部30−1とA/D変換部30−2のゲインが異なる場合も想定される。以下、A/D変換部30−1のゲインをG−1、A/D変換部30-2のゲインをG−2と称する。判定部90は、正側A/D変換結果(E)にゲインG−2を乗算した値と、負側A/D変換結果(F)にゲインG−1を乗算した値との和を求めることにより(所定の演算の他の一例)、アナログ信号の成分が打ち消された判定用信号を求める。
【0042】
このようにすれば、ディジタル保護制御装置4は、A/D変換部30−1とA/D変換部30−2のそれぞれで異なるゲイン調整を行うことができる。この場合、ディジタル保護制御装置4は、例えば、A/D変換部30−1を小さい信号範囲へ対応させ、他方のA/D変換部30−2を大きい信号範囲へ対応させることで、ディジタル保護制御装置4が対応できるダイナミックレンジを広げることができる。
【0043】
以上説明した第3の実施形態のディジタル保護制御装置3によれば、入力変換部80により、電力系統Eからのアナログ信号を差動信号に変換して2つのA/D変換部30に入力することによって得られるディジタル値の一部、または全てに対し所定の演算を行うことにより、アナログ信号のサンプリングを途切れさせることなく、特性異常の監視を行うことができる。
【0044】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について説明する。
図10に示すように、第4の実施形態のディジタル保護制御装置4は、電力系統Eに接続されるディジタル保護制御装置4は、例えば、加算器10−1、10−2と、参照信号付与部20と、逆極性参照信号付与部20Aと、A/D変換部30−1、30−2と、アナログフィルタ部70−1、70−2と、判定部90とを備える。この構成において、アナログフィルタ部70を省略してもよい。
【0045】
加算器10−1、10−2には、電力系統Eからアナログ信号が入力される。さらに、加算器10−1には、参照信号付与部20から参照信号が入力され、加算器10−2は、逆極性参照信号付与部20Aから、逆極性の参照信号が入力される。アナログフィルタ部70−1には、加算器10−1から、アナログ信号と参照信号を加算した、重畳済信号が入力される。また、アナログフィルタ部70−2には、加算器10−2から、アナログ信号と逆極性の参照信号を加算した、逆極性重畳済信号が入力される。A/D変換部30−1には、アナログフィルタ部70−1から、重畳済信号を監視に適した周波数帯域にした重畳/フィルタ済信号が入力される。また、A/D変換部30−2には、アナログフィルタ部70−2から逆極性重畳済信号を監視に適した周波数帯域にし、逆極性重畳/フィルタ済信号が入力される。判定部90には、A/D変換部30−1から、重畳/フィルタ済信号を変換したディジタル値を入力され、A/D変換部30−2から、逆極性重畳/フィルタ済信号を変換したディジタル値を入力される。判定部90は、ディジタル値に対し所定の演算を行うことで、参照信号を抽出し、A/D変換精度の監視を行う。判定部90は、異常を検知した場合、図示しないディジタル保護制御装置のモニタリング用デバイスに通知する。
【0046】
図11および
図12は、第4の実施形態の監視のための演算方法を説明するための図である。
図11は、A/D変換部30−1、30−2に関して特性異常が生じていない場合の各信号の推移を示す図である。
【0047】
図11(A)に示すように、アナログ信号は交流であり、
図8(B)および(C)に示すように、参照信号は直流である。
図11(D)に示すように、A/D変換部30−1のA/D変換結果はアナログ信号と参照信号を加算したものとなり、
図8(E)に示すように、A/D変換部30−2のA/D変換結果はアナログ信号と逆極性参照信号を加算したものとなる。
図8(F)に示すように、A/D変換部30−1のA/D変換結果は、重畳済信号をディジタル値に変換したものである(図では曲線で示しているが、実際はサンプリング期間ごとの点列である)。また、
図8(G)に示すように、A/D変換部30−2のA/D変換結果は、逆極性重畳済信号をディジタル値に変換したものである(
図8(F)と同様に、実際はサンプリング期間ごとの点列である)。
【0048】
判定部90は、A/D変換部30−1のA/D変換結果(E)とA/D変換部30−2のA/D変換結果(F)の差(H)を求めることにより、電力系統Eからの入力信号の成分を打ち消した、判定用信号を求める。
図11の例では、判定用信号が参照信号の示す値と合致することから、A/D変換部30および通過回路部が正常であると判定する。
また判定部90は、A/D変換部30−1のA/D変換結果(F)とA/D変換部30−2のA/D変換結果(G)の和(I)を求めることにより、参照信号の成分と逆極性参照信号の成分を打ち消したアナログ信号変換結果を得ることができる。このアナログ信号変換結果は、入力信号(A)の振幅が2倍の波形として得ることができ、本来の用途である。
【0049】
図12は、A/D変換部30に関して特性異常が生じた場合の各信号の推移を示す図である。
図12の例では、A/D変換部30−1のA/D変換結果(F)とA/D変換部30−2のA/D変換結果(G)の差(H)が参照信号(B)と合致しないことから、少なくともA/D変換部30または通過回路部が異常であると判定する。
【0050】
このような構成によって、電力系統Eからのアナログ信号を2つのA/D変換部30に入力して、一方のA/D変換部30に参照信号を重畳し、他方のA/D変換部30に逆極性の参照信号を重畳した後、2つのA/D変換結果に対して所定の演算を行うことで、参照信号の成分のみを抽出することができるか否かを判断基準として、特性異常の監視を行うことができる。
【0051】
以上説明した第4の実施形態のディジタル保護制御装置4によれば、参照信号を重畳した第1のA/D変換部30のA/D変換結果のディジタル値と、逆極性の参照信号を重畳した第2のA/D変換部30のA/D変換結果のディジタル値の、一部または全てに対し所定の演算を行うことにより、アナログ信号のサンプリングを途切れさせることなく、特性異常の監視を行うことができる。
【0052】
なお、第1から4の実施形態で重畳する参照信号を、電力系統Eからのアナログ信号より高い周波数の高調波信号とすると、アナログフィルタ部70にて、参照信号を含めた高調波帯域の信号がカットされる。判定部90は、入力された信号の高調波成分を例えばFFT(Fast Fourier Transform)処理によって抽出し、十分に減衰されているか否かを判定することで、アナログフィルタ部70の劣化を容易に発見することができる。
【0053】
また、第1から4の実施形態で重畳する参照信号を、直流と、電力系統Eからのアナログ信号より高い周波数の高調波信号の両方から構成される信号とすると、入力信号を一定期間計測することで電力系統Eからの入力に影響されず参照信号の高感度な監視を行うことができ、かつ、アナログフィルタの劣化を容易に発見することが可能となる。
【0054】
また、第1から4の実施形態で重畳する参照信号に高調波信号を用いる場合、電力系統Eの周波数の51倍以上の高い周波数とする。一般的な電力系統のノイズカットのための高調波計測は、周波数が入力波の周波数の50倍までの高調波を計測対象とすることが多い。参照信号は、電力系統Eの周波数の51倍以上の高い周波数とすることで、電力系統Eに由来するノイズの影響を受けることなく、正確に測定される。また、電力系統Eのアナログ信号は、参照信号として電力系統Eの周波数の51倍以上の高周波信号を用いられることで、参照信号である高周波信号の電圧変動の影響を受ける事なく、正確に測定され他の構成に出力される。
【0055】
また、第1から4の実施形態で重畳する参照信号を、時系列で値(電圧)が変化する直流信号から構成される信号とすると、A/D変換部30の直流オフセットが大きい場合でも、その影響を受けずにA/D変換のゲインについて高感度の監視を行うことができる。同時に、この構成では、特定の入力範囲で精度異常となるようなモードの不良の検出確率を高める効果も期待できる。
【0056】
また、第1から4の実施形態で重畳する参照信号を、電力系統Eの周波数より低い低周波信号(直流でない)とした場合、電力系統Eからの入力に影響されず高感度な監視を行うことができ、さらにA/D変換部30の直流オフセットが大きい場合でも、その影響を受けずにA/D変換のゲインについて高感度の監視を行うことができる。低周波信号は、交流信号に限らず、三角波等でもよい。例えば、低周波信号を通しにくい計器用変成器(PT、CT)などは、ディジタル保護制御装置内の参照信号付与部より上流に取り付けることが想定される。従って、アナログ信号は、低周波成分がカットされた状態でディジタル保護制御装置に入力される。このため、低周波信号を参照信号とすると、A/D変換部30にて、参照信号だけを高感度に抽出することができ、結果として高感度な監視が可能を行うことができる。
【0057】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について説明する。
図13は、第5の実施形態のディジタル保護制御装置5の構成図である。
図13に示すように、電力系統Eに接続されるディジタル保護制御装置5は、例えば、参照信号付与部20と、A/D変換部30−1、30−2と、判定部90と、マルチプレクサ110−1、110−2とを備える。以下、いずれのマルチプレクサであるかを区別しないときは、単にマルチプレクサ110と称する。
【0058】
マルチプレクサ110には、電力系統Eよりアナログ信号が入力される。さらに、マルチプレクサ110には、参照信号付与部20より参照信号が入力される。A/D変換部30は、マルチプレクサ110から、アナログ信号または参照信号のいずれかが選択的に入力され、あるいは、アナログ信号と参照信号の両方が入力される。なお、少なくとも1つ以上のA/D変換部30には、アナログ信号が入力されるように制御または手動で切り替えると好適である。こうすれば、あるA/D変換部30が参照信号を入力しているときも、アナログ信号のサンプリングが途切れないようにすることができる。
【0059】
判定部90は、A/D変換部30により、A/D変換結果のディジタル値を入力される。判定部90はマルチプレクサ110を制御し、その状態を把握している。判定部90は、A/D変換部30から入力された信号が、アナログ信号に基づくものであるか、参照信号に基づくものであるかを把握しているため、アナログ信号に基づく信号は、本来のA/D変換結果として他の構成に出力する。また、判定部90は、参照信号に基づく信号が所定の範囲にあるか否かに基づいて、A/D変換回路の健全性監視を行う。判定部90は、所定の演算結果が所定の範囲にない場合に異常と検知し、図示しないディジタル保護制御装置のモニタリング用デバイスに通知する。
【0060】
また、判定部90は、アナログ信号を全てのA/D変換部30に接続することも可能である。判定部90は、A/D変換部30のアナログ信号の変換結果を相互に比較し、外れ値があれば、少なくともA/D変換部30の異常の検知を行うことができる。A/D変換部30のいずれかに不具合がある場合、2つのA/D変換結果に差が出るため、早期に異常を検知することができる。
【0061】
このような構成によって、電力系統Eからのアナログ信号と参照信号を、マルチプレクサ110により選択的に切り替えて複数のA/D変換部30へ出力することで、アナログ信号のサンプリングを継続しつつ、A/D変換部30の異常の監視を行うことができる。
【0062】
以上説明した第5の実施形態のディジタル保護制御装置5によれば、電力系統Eからの同一チャンネルのアナログ信号と参照信号を選択的にA/D変換部30へ入力することで、アナログ信号を連続してサンプリングしつつ、A/D変換部30の特性異常の監視を行うことができる。
【0063】
(第6の実施形態)
図14は、第6の実施形態のディジタル保護制御装置6の構成図である。
図14に示すように、電力系統Eに接続されるディジタル保護制御装置6は、例えば、参照信号付与部20と、A/D変換部30−1、30−2と、判定部90と、抵抗部100−1、100−2と、切り替えスイッチ部120とを備える。
【0064】
抵抗部100−1には、電力系統Eからアナログ信号が入力される。また、抵抗部100−2には、電力系統Eからアナログ信号が入力される。A/D変換部30−1には、抵抗部100−1からゲイン調整されたアナログ信号が入力される。また、A/D変換部30−2には、抵抗部100−2からゲイン調整されたアナログ信号が入力される。A/D変換部30−1、30−2のいずれか一方には、参照信号付与部20から参照信号が入力される。判定部90は、参照信号をA/D変換部30−1、30−2のどちらに入力するか、切り替えスイッチ部120にて制御する。参照信号は、参照信号付与部20側の出力インピーダンスを、A/D変換部30より低くしておくことで、電力系統Eからのアナログ信号の影響を受ける事なく、参照信号をA/D変換部30に入力する事ができる。
【0065】
判定部90は、A/D変換部30により、A/D変換結果のディジタル値を入力される。判定部90は切り替えスイッチ部120を制御し、その状態を把握している。判定部90は、A/D変換部30から入力された信号が、アナログ信号に基づくものであるか、アナログ信号に参照信号が重畳された信号に基づくものであるかを把握しているため、アナログ信号に基づく信号は、本来のA/D変換結果として他の構成に出力する。また、判定部90は、アナログ信号に基づく信号のA/D変換結果と、アナログ信号に参照信号が重畳された信号に基づく信号のA/D変換結果の差を求めることで、参照信号の成分の抽出を行う。判定部90は、抽出結果が所定の範囲にあるか否かに基づいて、A/D変換回路の健全性監視を行う。判定部90は、所定の演算結果が所定の範囲にない場合に異常と検知し、図示しないディジタル保護制御装置のモニタリング用デバイスに通知する。
【0066】
このような構成によって、電力系統Eからのアナログ信号を複数のA/D変換部30にて入力しつつ、切り替えスイッチ部120により参照信号を一つのA/D変換部30へ選択的に出力することで、アナログ信号のサンプリングを継続しつつ、A/D変換部30の異常の監視を行うことができる。
【0067】
以上説明した第6の実施形態のディジタル保護制御装置6によれば、電力系統Eからのアナログ信号と参照信号の両方と接続するA/D変換部30のA/D変換結果と、電力系統Eからのアナログ信号と接続するA/D変換部30のA/D変換結果に所定の演算を行うことで、アナログ信号を連続してサンプリングしつつ、複数のA/D変換部30のうち少なくとも一つ以上のA/D変換部30にて、参照信号を入力して特性異常の監視を行うことができる。
【0068】
(第7の実施形態)
以下、第7の実施形態について説明する。
図15は、第7の実施形態のディジタル保護制御装置7の構成図である。
図15に示すように、電力系統E−1、E−2に接続されるディジタル保護制御装置7は、例えば、参照信号付与部20と、A/D変換部30−1、30−2、30−3と、判定・信号制御部90#と、マルチプレクサ110−1、110−2、110−3とを備える。以下、第5の実施形態との相違点を中心に説明し、第5の実施形態との共通点については説明を省略する。
【0069】
マルチプレクサ110には、電力系統E−1からアナログ信号1を、電力系統E−2からアナログ信号2を、参照信号付与部20から参照信号が入力される。A/D変換部30は、マルチプレクサ110から、アナログ信号1またはアナログ信号2または参照信号のいずれかが選択的に入力される。
【0070】
例えばディジタル保護制御装置7では、A/D変換部30−1で参照信号、A/D変換部30−2でアナログ信号1、A/D変換部30−3でアナログ信号2のサンプリングを開始し、一定時間経過後に、A/D変換部30−1でアナログ信号1、A/D変換部30−2で参照信号、A/D変換部30−3でアナログ信号2を入力するように切替を行い、サンプリングを継続する。ディジタル保護制御装置7は、さらに一定時間経過後に、A/D変換部30−1でアナログ信号1、A/D変換部30−2でアナログ信号2、A/D変換部30−3で参照信号を入力するように切替を行い、サンプリングを継続する。ディジタル保護制御装置7は、このように入力チャンネルを切り替えていくことにより、参照信号によるA/D変換部30のA/D変換精度の監視を行いながら、アナログ信号1、2のサンプリングを継続することができる。判定・信号制御部90#は、A/D変換部30から入力された信号が、アナログ信号に基づくものであるか、参照信号に基づくものであるかを把握している。判定・信号制御部90#は、参照信号に基づく信号の判定結果が所定の範囲にあるか否かに基づいて、A/D変換回路の健全性監視を行う。また、判定・信号制御部90#は、第1〜第5の実施形態の判定部90とは異なり、アナログ信号に基づく信号を、本来のA/D変換結果として他の構成に出力する。なお、このような機能は、他の実施形態において設けられてもよい。A/D変換部30は、第5の実施形態で同様の検証を行う場合、最小でもアナログ信号チャンネル数の2倍の個数が必要である。一方、A/D変換部30は、第7の実施形態では、最小で(アナログ信号チャンネル数+1)個あれば良く、A/D変換部30の必要個数を削減することができる。なお、
図15では、2つのアナログ信号を3つのA/D変換部30を介して監視および判定する例を示したが、本実施形態の構成を限定するものではない。例えば、3つ以上のアナログ信号を任意の数のA/D変換部30を介して監視および判定するような応用例が想定される。
【0071】
このような構成によって、電力系統Eからアナログ信号のサンプリングを複数のA/D変換部30で行うことで、参照信号にて各A/D変換部30の異常監視を行いつつ、ディジタル保護系統装置内のアナログ信号チャンネルを継続してサンプリングできる。
【0072】
以上説明した第7の実施形態のディジタル保護制御装置7によれば、電力系統Eからの同一チャンネルのアナログ信号を複数のA/D変換部30に接続可能であり、各A/D変換部30には異なるアナログ信号チャンネルを接続が可能な装置を設けることで、装置全体でのA/D変換部30の個数を(アナログチャンネル数+1)個に抑制することができる。
【0073】
なお、第1から7の実施形態で用いるA/D変換部30において、複数設けるA/D変換部30は、少なくとも1つは逐次比較型A/D変換器を、少なくとも他の1つはΔΣ型A/D変換器を含むものとしてよい。ΔΣ型A/D変換器は、逐次比較型A/D変換器に比べて高分解能だが、A/D変換速度が遅い。またΔΣ型A/D変換器は応答性が遅く、マルチプレクサ110等で頻繁に入力信号を切り替える処理には向かない。一方、逐次比較型A/D変換器は、ΔΣ型A/D変換器に比べて、分解能が低いが、変換速度が速くて応答性も高く、マルチプレクサ110等で頻繁に入力信号を切り替える処理にも対応できる。そのため、装置内のA/D変換部30は、逐次比較型A/D変換器とΔΣ型A/D変換器の両方を用いることで、各型の利点を活かした計測・監視を実現する。また、ΔΣ型A/D変換器は、内部に帰還回路を有しているため、入力に対し過渡的に不安定な応動を示す場合がある。そのため、ΔΣ型A/D変換器の出力結果と逐次比較型A/D変換器の出力結果との比較を行うことで、ΔΣ型A/D変換器が不安定な応動となっていないかの監視を行うことができる。
【0074】
また、第1から7の実施形態で用いるA/D変換部30において、複数のΔΣ型A/D変換器が不安定な応動となっていないかの監視は、同じゲイン調整の条件下で、同じチャンネルのアナログ信号を入力しても、結果が同じになり、異常を発見することができない。一方、複数設けるA/D変換部30は、異なるゲイン調整の条件下で、同じチャンネルのアナログ信号を入力されると、ゲインの高い方のΔΣ型A/D変換器に比べて、ゲインの低い方のΔΣ型A/D変換器が安定する傾向にある。そのため、判定部90は、ゲインの高い方のA/D変換器とゲインの低い方のA/D変換器が異なる応動となった場合に、異常と判定できる。
【0075】
また、第1から7の実施形態のディジタル保護制御装置が、入力信号が小さいチャンネルと、入力信号が大きいチャンネルからなる複数のアナログ信号と接続する場合、アナログ信号が小さい場合はゲインの大きい方のA/D変換部30を使用し、アナログ信号が大きい場合はゲインの小さい方のA/D変換部30を使用することで、ダイナミックレンジの高いA/D変換が可能となる。
【0076】
また、第1から7の実施形態で用いるA/D変換部30において、少なくとも1つはオーバーサンプリング型A/D変換器を備えるものとしてよい。オーバーサンプリング型A/D変換器は、入力信号を連続してサンプリングする必要があるが、第1から7の実施形態のディジタル保護制御装置では、入力信号を途切れさせることなくサンプリングが可能である。また、前述の通り、第1から7の実施形態のディジタル保護制御装置では、A/D変換部30は、参照信号を監視することができる。そのため、第1から7の実施形態のディジタル保護制御装置では、オーバーサンプリング型A/D変換器が使用可能となる。
【0077】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、ディジタル保護制御装置は、複数のA/D変換部30を持ち、その一部のA/D変換部30に、参照信号をアナログ信号に重畳させて入力することで、ディジタル保護制御装置自体の高感度な異常監視を行うことができ、また同時に電力系統Eからの入力アナログ信号のサンプリングを連続的に行うことができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。