特許第6971820号(P6971820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6971820シミュレーション装置、シミュレーション装置の制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971820
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】シミュレーション装置、シミュレーション装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/00 20060101AFI20211111BHJP
   G01N 15/14 20060101ALI20211111BHJP
   C08F 8/22 20060101ALI20211111BHJP
   C08F 2/01 20060101ALN20211111BHJP
【FI】
   G01N11/00 A
   G01N15/14 Z
   C08F8/22
   !C08F2/01
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-235495(P2017-235495)
(22)【出願日】2017年12月7日
(65)【公開番号】特開2019-100983(P2019-100983A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】安部 信也
(72)【発明者】
【氏名】田中 航介
(72)【発明者】
【氏名】神田 彰久
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/178374(WO,A1)
【文献】 特開2002−275213(JP,A)
【文献】 特開2005−098951(JP,A)
【文献】 特開2014−142334(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/075591(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00 − 11/16
G01N 15/00 − 15/14
C08F 8/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内で光反応物質を流動させながら該光反応物質に投光して進行させる光反応の反応速度を示す指標値を算出するシミュレーション装置であって、
上記光反応物質を仮想粒子とみなし、流動中の該仮想粒子の単位時間毎の位置を予想する流動予想部と、
上記予想に基づき、上記反応容器内に規定した複数の単位領域のそれぞれについて、当該単位領域を単位時間に通過する上記仮想粒子の数を、当該単位領域における光反応速度を示す指標値として算出する指標算出部と、
を備えていることを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
上記単位領域における光照射強度に応じて、該単位領域における上記仮想粒子の数を補正する補正部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
算出された上記指標値に基づいて、上記光反応が行われる設備に含まれる所定の設備要素置を特定する設備要素特定部を備え
上記所定の設備要素は、上記光反応物質に投光する光源装置であり、
上記設備要素特定部は、上記仮想粒子の数が相対的に多い上記単位領域に対応する位置を、上記光源装置の配置として特定することを特徴とする請求項1または2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
算出された上記指標値に基づいて、上記光反応が行われる設備における運転条件を決定する運転条件決定部を備え
上記複数の単位領域は、複数の光源装置の何れかに対応付けられており、
上記運転条件決定部は、上記複数の単位領域における上記指標値の合計を所定の閾値以上とするのに使用不要な上記光源装置を消灯状態とする運転条件を決定することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
反応容器内で光反応物質を流動させながら該光反応物質に投光して進行させる光反応の反応速度を示す指標値を算出するシミュレーション装置の制御方法であって、
上記光反応物質を仮想粒子とみなし、流動中の該仮想粒子の単位時間毎の位置を予想する流動予想ステップと、
上記予想に基づき、上記反応容器内に規定した複数の単位領域のそれぞれについて、当該単位領域を単位時間に通過する上記仮想粒子の数を、当該単位領域における光反応速度を示す指標値として算出する指標算出ステップと、
を含むことを特徴とするシミュレーション装置の制御方法。
【請求項6】
請求項1に記載のシミュレーション装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、上記流動予想部および上記指標算出部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反応容器内で光反応物質を流動させながら該光反応物質に投光して進行させる光反応の反応速度を示す指標値を算出するシミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光反応による生成物質を得るプロセスにおいて、光照射装置(光源)は重要なポイントである。一般的な光反応装置では槽型の撹拌装置内に光照射装置を内在していることが多い。光照射装置は反応物の反応促進に深く関係する。そのため、光照射装置の選定、形状、設置箇所等の条件の最適化は重要である。
【0003】
通常、光照射装置の好ましい条件を決めるには、実験による評価手法が用いられる。例えば、小型および中型の光反応装置の試作機を作成し、経時的に反応量を測定する。次に、反応量から反応速度を算出し、光照射装置の条件を決める。しかし、この評価手法は時間とコストとがかかる。
【0004】
また、近年では、反応装置の設計において、コンピュータによる流体解析技術が用いられている。例えば、撹拌装置の撹拌性能を評価し、反応装置における撹拌装置の選定を行う方法が知られている。特許文献1には撹拌装置内の流体の流体解析を行い、該解析から求められた速度データに応じて重合反応の進行度を予測する流体解析方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−142334号公報(2014年8月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来技術は光反応を前提とした技術ではないため、光反応の反応速度を予測できない。このため、上述の従来技術を用いても光反応の反応装置における光源の最適な位置を決めることはできない。また、既存の反応装置には、複数の光源を備えているものもあるが、上記のように従来技術では光反応の反応速度を予測できないため、光反応の進行への寄与度が低い光源を特定できなかった。つまり、既存の反応装置については、使用する光源を最適化することが困難であった。
【0007】
本発明の一態様は、光反応を行う反応装置における光源の配置の最適化、または光反応を行う反応装置において使用する光源の最適化を可能にするシミュレーション装置等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシミュレーション装置は、反応容器内で光反応物質を流動させながら該光反応物質に投光して進行させる光反応の反応速度を示す指標値を算出するシミュレーション装置であって、上記光反応物質を仮想粒子とみなし、流動中の該仮想粒子の単位時間毎の位置を予想する流動予想部と、上記予想に基づき、上記反応容器内に規定した複数の単位領域のそれぞれについて、当該単位領域を単位時間に通過する上記仮想粒子の数を、当該単位領域における光反応速度を示す指標値として算出する指標算出部と、を備えている。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシミュレーション装置の制御方法は、反応容器内で光反応物質を流動させながら該光反応物質に投光して進行させる光反応の反応速度を示す指標値を算出するシミュレーション装置の制御方法であって、上記光反応物質を仮想粒子とみなし、流動中の該仮想粒子の単位時間毎の位置を予想する流動予想ステップと、上記予想に基づき、上記反応容器内に規定した複数の単位領域のそれぞれについて、当該単位領域を単位時間に通過する上記仮想粒子の数を、当該単位領域における光反応速度を示す指標値として算出する指標算出ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、光反応を行う反応容器内における光源の配置の最適化、または光反応を行う反応容器内において使用する光源の最適化ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係るシミュレーション装置の要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係るシミュレーション装置がシミュレーションする光反応を行う光反応装置の構成の一例を示す図である。
図3】上記光反応装置が備えるLED光源装置の構成を説明する図である。
図4】本発明の実施形態1に係る流動予想部が予想した流体の流れの一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態1に係る仮想粒子頻度を算出する対象となる単位領域の設定例を示す図である。
図6】光照射装置を中心とする円周方向における照射強度の一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態1に係るシミュレーション装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態1に係るシミュレーション装置にて算出した光反応装置における仮想粒子頻度と、光反応装置にて光反応を実際に行い算出した反応速度定数との関係を示す図である。
図9図8に示すデータを算出するために用いた光反応装置の構造を示す図である。
図10】本発明の実施形態1に係る光反応装置について算出された仮想粒子頻度分布を示す分布図である。
図11】光反応装置のそれぞれについて算出した反応速度定数を示す図である。
図12】光照射条件を説明する図である。
図13】本発明の実施形態1に係る不要光源特定部の処理の一例を示す図である。
図14】本発明の実施形態1に係る不要光源特定部の処理の他の一例を示す図である。
図15】本発明の実施形態2に係るシミュレーション装置の要部構成を示すブロック図である。
図16】本発明の実施形態2に係るシミュレーション装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、図1から図6を参照して詳細に説明する。
【0013】
(シミュレーション装置1の概要)
本実施形態に係るシミュレーション装置1は、光反応装置2の撹拌槽(反応容器)21内で光反応物質を流動させながら該光反応物質に投光して進行させる光反応の反応速度を示す指標値を算出するシミュレーション装置である。
【0014】
シミュレーション装置1は、光反応物質を仮想粒子とみなし、流動中の仮想粒子の単位時間毎の位置を予想する。また、シミュレーション装置1は、仮想粒子の単位時間毎の位置の予想に基づき、撹拌槽21内に規定した複数の単位領域のそれぞれについて、単位時間に通過する仮想粒子の数を算出する。詳細については後述するが、仮想粒子の数と光反応速度とには相関関係がある。そのため、該仮想粒子の数は光反応速度を示す指標値とすることができる。
【0015】
よって、該指標値から撹拌槽21内において速い反応速度を示す単位領域が分かる。そのため、速い反応速度を示す単位領域に光を照射することによって効率的に光反応を促進することができる。したがって、ユーザは指標値を参照して、光反応装置2における光源の位置を設計することができる。また逆に、指標値から撹拌槽21内において反応速度が遅い単位領域も分かる。したがって、ユーザは、指標値を参照して、光反応装置2において光反応の促進に対する寄与度の低い光源を特定することもできる。本実施形態においては、既存の複数の光源から光反応に不要である光源を特定する例を説明する。
【0016】
(光反応装置2の構成)
はじめに、シミュレーション装置1がシミュレーションする光反応を行う光反応装置2の構成について説明する。図2は、光反応装置2の構成を示す図である。図2に示すように光反応装置2は、撹拌槽21、撹拌翼22、撹拌軸23および光照射装置25を備えている。
【0017】
本実施形態では、光反応装置2が、塩化ビニル(‐(CH2‐CHCl) m‐:PVC)と塩素(Cl)とを反応させて塩素化塩化ビニル(‐(CHCl‐CHCl)m‐:CPVC)を生成する例について説明する。なお、光反応装置2は、塩素化塩化ビニルだけではなく、塩素化塩化ビニルに類する化合物、例えば塩素化塩化ビニルの基本骨格構造を有し、塩素化塩化ビニルの一部の官能基が他の置換基と置換されたものや、共重合体等についても同様に生成可能である。
【0018】
また、光反応装置2が行う光反応は塩素化塩化ビニルを生成物とする光反応に限定されず、流体(液体、気体)の光反応であればよい。液体としては例えば水等が挙げられる。また、気体としては、例えば窒素、空気等が挙げられる。光反応としては、例えば、ベンゼンヘキサクロリド、アクリル系ポリマー等を生成する光反応にも適用することができる。また、反応に用いる光の種類も特に限定されない。また、光反応装置2が行う光反応が固体原料と原料ガスとを光反応させるものであってもよい。
【0019】
また、塩素の供給手段は特に限定されない。例えば、光反応装置2が塩素供給管を備えていてもよい。塩素供給管は、撹拌槽21に塩素を供給する管であり、例えば塩素供給管の先端部分(塩素を放出する部分)が光反応装置2内の流体に浸漬するように配置されるものであってもよい。この場合、塩素供給管によって光反応装置2内の流体の流動状態が変わるので、後述のように、塩素供給管の位置および大きさを考慮してシミュレーションを行う。なお、塩素供給管に限られず、光反応装置2内に流体の流動状態に影響を与える物が存在する場合には、その物を考慮してシミュレーションを行うことが望ましい。
【0020】
(撹拌槽21、撹拌翼22、撹拌軸23)
撹拌槽21には、光反応物質(PVC)を含む流体が充填される。光反応は撹拌槽21にて行われる。撹拌翼22は撹拌槽21に充填された流体を撹拌する。本実施形態では撹拌翼22がプロペラ形状に形成されている例を示している。なお、撹拌翼22は、流体を撹拌できるものであればよく、その形状や種類は特に限定されない。また、複数の撹拌翼22を設けてもよい。撹拌軸23は撹拌翼22と接続しており、撹拌軸23が回転することによって撹拌翼22も回転する。また、光反応装置2は撹拌槽21内の流体の流れを乱し、流体の混合を助長させる邪魔板を備えていてもよい。
【0021】
(光照射装置25)
光照射装置25は、撹拌槽21内の光反応物質に投光して光反応を進行させる。図2に示すように、光照射装置25はLED保護容器251およびLED光源装置252を備えている。LED保護容器251はLED光源装置252を保護する。LED保護容器251は透光性の材質から成り、円筒状に形成された筒状の容器である。LED保護容器251の内部にはLED光源装置252が設置されている。
【0022】
LED光源装置252は、例えば図3に示すような構成であってもよい。図3は、LED光源装置252の構成を説明する図である。図3の(a)には、LED光源装置252の側面図を示している。また、図3の(c)には、LED光源装置252を上方から見たときの投光範囲を示している。
【0023】
図3の(a)および(c)に示すように、LED光源装置252は、円筒状の基板2522の周囲に90°の間隔にて4方向にLED素子ユニット2521を配置した構成である。なお、LED素子ユニット2521を何方向に配置するか、およびLED素子ユニット2521の間隔は特に限定されない。また、LED素子ユニット2521は、円筒形状の基板2522の高さ方向に複数段(図示の例では4段)配置している。例えば、各LED素子ユニット2521は、基板2522の高さ方向に所定の間隔(例えば、3mm間隔)にて配置してもよい。
【0024】
図3の(b)には、LED光源装置252が備えるLED素子ユニット2521の構成を示している。図示のように、LED素子ユニット2521は、発光素子である複数のLED素子25211を一列に備えている。
【0025】
なお、光照射装置25に含まれるLED素子ユニット2521の数および配置は任意であり、特に限定されない。また、LED以外の発光素子を用いてもよい。例えば、水銀灯、有機EL(Electro Luminescence)の発光素子などを適用することもできる。
【0026】
(シミュレーション装置1の構成)
次に、シミュレーション装置1の構成について説明する。図1は、シミュレーション装置1の要部構成を示すブロック図である。図1に示すように、シミュレーション装置1は、操作部11、出力部12および制御部13を備えている。
【0027】
(操作部11、出力部12)
操作部11は、ユーザからの操作を受け付ける。操作部11はユーザ操作により入力された設定(値)等を流体解析部131に送信する。例えば、操作部11は、シミュレーション装置1がシミュレーションを行う計算領域に関する設定の操作を受け付ける。例えば、ユーザは、撹拌槽21の形状およびサイズの他、撹拌翼22、撹拌軸23、光照射装置25、塩素供給管および邪魔板等の撹拌槽21の内部に配置された各種構造体の形状、サイズ、および位置を操作部11から設定する。
【0028】
また、操作部11は境界条件の設定を受け付ける。例えば、撹拌槽21の上部の流体表面をすべり壁境界とし、撹拌槽21の側壁、撹拌翼22の表面壁、撹拌軸23の表面壁等をすべりなし壁境界としてもよい。ここで、すべり壁境界とは物質間の界面で摩擦を考慮しないことを意味する。また、すべりなし壁境界とは物質間の界面で摩擦を考慮することを意味している。
【0029】
また、操作部11は流体解析における計算に必要な流体の物性値、撹拌軸23の回転数の設定を受け付ける。ここでいう流体の物性値は密度や粘度などである。
【0030】
出力部12は、シミュレーション装置1のシミュレーション結果などを出力する。例えば、出力部12はシミュレーション結果を示す画像を表示する表示装置等であってもよい。
【0031】
(制御部13)
制御部13は、シミュレーション装置1の各部を統括して制御するものである。制御部13は、流体解析部131、流動予想部132、仮想粒子数算出部(指標算出部)133、仮想粒子数補正部(補正部)134および不要光源特定部(運転条件決定部)135を備えている。
【0032】
(流体解析部131)
流体解析部131は受信した光反応装置2の構造体の設定および撹拌槽21に充填される流体の設定に応じて、シミュレーションを行う計算領域である仮想空間を直方体の微小要素に分割する。また、流体の物性値を、各微小要素に設定する。
【0033】
そして、流体解析部131は、微小要素毎の流動状態を算出する。流動状態の算出には、例えば流体解析ソフトウェアであるRFLOW(株式会社アールフロー)等を用いた定常計算を適用することができる。ここでいう定常計算とは、撹拌翼22、撹拌軸23等の回転体は回転させずに、ある時点の流動状態の算出値とその直前の時点における流動状態の算出値との誤差が規定値に収まるまで流動状態の計算を繰り返すというものである。また、ここでいう流体の流動状態とは、流体のパラメータ(以下、流体パラメータと呼ぶ)である流体速度、圧力等である。流体解析部131は流体パラメータを流動予想部132に送信する。
【0034】
(流動予想部132)
流動予想部132は、光反応物質を仮想粒子とみなし、流動中の該仮想粒子の単位時間毎の位置を予想する。詳細には、流動予想部132は流体解析部131から受信した流体パラメータである流体速度、圧力等(各微小要素内の流体速度、圧力等)に応じて、該仮想粒子の単位時間毎の位置を予想する。例えば、流動予想部132は仮想粒子を質量0、粒子径0の値とし、撹拌槽21に充填された流体に配置する。
【0035】
また、流動予想部132は、撹拌軸23が所定の回数(例えば、30回)回転するまでの期間における仮想粒子の動きを予想する。この予測には、例えば流体解析ソフトウェアを利用してもよい。具体的には、流動予想部132は、流体解析部131から受信した流体パラメータに基づき、流体の流れに沿って仮想粒子を移動させ、単位時間ごとの仮想粒子の位置を非定常計算にて予想する。非定常計算とは、撹拌軸23および撹拌翼22の回転を伴う、一定時間における仮想粒子の流動状態を計算するというものである。流動予想部132は予想した単位時間毎の位置を仮想粒子数算出部133に送信する。なお、流動予想部132は仮想粒子が均一になるまで混合した後、規定の時間の間の仮想粒子の流動を計算してもよい。
【0036】
図4は、流動予想部132が予想した流体の流れの一例を示す図である。図4においては、撹拌軸23および1つの光照射装置25を備えている撹拌槽21における、流体の流れの予想結果を示している。図4における各矢印が、流体の流れの方向および速さを示している。図4の(b)は、図4の(a)にて丸で囲んだ領域の拡大図である。この予想結果から、撹拌軸23を中心とした渦状の流動が生じること、渦の中心に近いほど流速が速いこと、光照射装置25の周囲では流速が低下すると共に、光照射装置25を巻き込むような流れが生じること等が分かる。
【0037】
(仮想粒子数算出部133)
仮想粒子数算出部133は、流動予想部132の仮想粒子の単位時間毎の位置の予測に基づき、撹拌槽21内に規定した複数の単位領域のそれぞれについて、当該単位領域を単位時間に通過する仮想粒子の数を、単位領域における光反応速度を示す指標値として算出する。例えば、仮想粒子数算出部133は、単位時間における撹拌槽21の単位領域(光照射装置25の周辺領域等)を通過する仮想粒子の総数(仮想粒子頻度)を算出する。そして、仮想粒子数算出部133は、算出した仮想粒子頻度を仮想粒子数補正部134に送信する。
【0038】
仮想粒子頻度を算出する単位領域について図5を用いて説明する。図5は、仮想粒子頻度を算出する対象となる単位領域の設定例を示す図である。図5の(a)は光照射装置25の照射領域を示し、図5の(b)は、単位領域の設定例を示している。図5では、仮想粒子をPで示している。図5の(b)に示すように、単位領域は、光照射装置25の表面からの距離が所定範囲である近接領域(実線)を、光照射装置25の位置を中心として放射状に等間隔(本例では45°間隔)で区切った領域である。つまり、図示の例では、実線と破線とで囲まれる8つの領域がそれぞれ単位領域である。なお、同図では、各破線の延伸方向を、光照射装置25の中心から撹拌軸23(図示せず)に向かう方向を0°として示している。また、図示していないが、単位領域は、同図の奥行き方向にも延在している。
【0039】
単位領域は、光照射装置25の備える複数のLED素子ユニット2521について、その投光範囲に対応するように設定することが好ましい。例えば、光照射装置25が4方向にLED素子ユニット2521を備えている場合に、図5の(b)のような8方向の単位領域を設定する場合を考える。この場合、単位領域は、各方向のLED素子ユニット2521の投光範囲が2つの単位領域でカバーされるように設定することが好ましい。
【0040】
本実施形態では、仮想粒子数算出部133は、近接領域外から単位領域に入ってくる仮想粒子については通過する仮想粒子としてカウントする。一方で、仮想粒子数算出部133は近接領域内での仮想粒子の移動についてはカウントしない。すなわち、仮想粒子数算出部133は、単位領域に入った仮想粒子については、一旦、近接領域外に移動しなければ、再びカウントしない。例えば、図5の(b)の仮想粒子P1は、あるタイミングでは何れの単位領域にも含まれていなかったが、その単位時間後に0°方向の破線と45°方向の破線とで囲まれる単位領域に移動している。よって、この単位領域を通過した仮想粒子としてカウントする。仮想粒子P1は、この後さらに単位時間が経過すると、再び何れの単位領域にも含まれない位置に移動している。
【0041】
一方、図5の(b)の仮想粒子P2は、90°方向の破線と135°方向の破線とで囲まれる単位領域の外側(光照射装置25から遠い側)から該単位領域に移動しているので、この単位領域を通過した仮想粒子としてカウントする。また、この仮想粒子P2は、この単位領域内に移動した単位時間経過後に、180°方向の破線と225°方向の破線とで囲まれる単位領域内に移動しているが、この移動先の単位領域ではカウントしない。仮想粒子P2は、この後さらに単位時間が経過すると、何れの単位領域にも含まれない位置に移動している。
【0042】
以上のように近接領域内で移動した仮想粒子をカウントしないようにする理由は、本実施形態で想定している反応系では、光反応物質が光源付近に留まり続けても反応が進行しないからである。光反応物質が光源付近に留まり続けても反応が進行する反応系のシミュレーションを行う場合には、1つの単位領域内に留まっている仮想粒子を、留まっている単位時間に応じた反応の進行程度に相当する回数だけカウントすればよい。
【0043】
(仮想粒子数補正部134)
仮想粒子数補正部134は、単位領域における光照射強度に応じて、該単位領域における仮想粒子の数(仮想粒子頻度)を補正する。
【0044】
ここで、光照射装置25を中心とする円周方向における照射強度について説明する。図6は、光照射装置25を中心とする円周方向における照射強度の一例を示す図である。照射強度の値が最も高い箇所の値を100として、光照射装置25の周囲360°における照射強度の値を示している。
【0045】
図6に示すように、4方向照射のLED光源装置252を備えている光照射装置25は、照射方向に指向性を有する。このため、図5の(b)のように単位領域を設定した場合、照射強度が高く光反応が進行しやすい単位領域と、照射強度が低く光反応が進行しにくい単位領域が生じる。
【0046】
そこで、仮想粒子数補正部134は各単位領域における光照射強度に応じて仮想粒子頻度を補正する。詳細は省略するが、本願発明者らによる別の実験により、光照射強度と反応速度には相関関係があり、また、仮想粒子頻度と反応速度にも相関関係があることが確認されている。よって、光照射強度と仮想粒子頻度にも相関関係があるから、この相関関係に基づいて仮想粒子頻度を補正することができる。簡単に言えば、光照射強度が高いほど仮想粒子頻度が大きくなるように補正する。
【0047】
仮想粒子数補正部134は補正した仮想粒子頻度を用いて仮想粒子頻度分布を算出する。そして、仮想粒子数補正部134は算出した仮想粒子頻度分布を不要光源特定部135に送信する。また、仮想粒子数補正部134は算出した仮想粒子頻度分布を出力部12に送信してよい。出力される仮想粒子頻度分布は数値データであってもよいし、例えば数値データから生成した分布図等の画像データであってもよい。
【0048】
なお、仮想粒子数補正部134を設ける代わりに、仮想粒子数算出部133が、光反応が進行するのに足りる程度の光照射強度の単位領域を通過した仮想粒子をカウントする構成としてもよい。言い換えれば、仮想粒子数算出部133は、光反応の進行に足りない程度の光照射強度の単位領域(光照射強度が閾値未満の単位領域)を通過した仮想粒子はカウントしない構成としてもよい。このような構成であっても、光照射強度の強弱を考慮したシミュレーションが可能である。
【0049】
(不要光源特定部135)
不要光源特定部135は、複数の単位領域における仮想粒子数(仮想粒子頻度)の合計を所定の閾値以上とするのに使用不要なLED素子ユニット2521を特定する。言い換えれば、不要光源特定部135は、使用不要なLED素子ユニット2521を消灯状態とする運転条件を決定する。本実施形態においては、単位領域のそれぞれは、複数のLED素子ユニット2521のうちの何れかに対応付けられている。例えば、単位領域とLED素子ユニット2521との対応付けは、ユーザが操作部11を介して設定する構成としてもよい。不要光源特定部135は使用不要と特定したLED素子ユニット2521を出力部12に送信する。
【0050】
(シミュレーション装置1の処理の流れ)
次に図7を参照して、シミュレーション装置1の処理について説明する。図7は、シミュレーション装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。操作部11を介して流体解析部131は、計算領域、境界条件に関する設定を受け付ける(S1)。また、流体解析部131は流体の物性値、撹拌の回転数に関する設定を受け付ける(S2)。
【0051】
次に、流体解析部131は、S1およびS2で受け付けた各種設定に従って流体パラメータを算出する(S3)。続いて、流動予想部132は、S3で算出された流体パラメータに基づいて、仮想粒子の移動を予測する(S4:流動予想ステップ)。より詳細には、流動予想部132は、仮想粒子の単位時間毎の位置を予測する。続いて、仮想粒子数算出部133は、S4で予測された仮想粒子の単位時間毎の位置に基づき、単位領域ごとに単位時間に通過する仮想粒子の数、すなわち単位領域ごとの仮想粒子頻度を算出する(S5:指標算出ステップ)。続いて、仮想粒子数補正部134は、S5で算出された単位領域ごとの仮想粒子頻度を、その単位領域における光照射強度に応じて補正する(S6)。
【0052】
次に、S6の補正後の仮想粒子の数すなわち仮想粒子頻度に応じて、点灯が不要であるLED素子ユニット2521を特定する(S7)。なお、特定の方法については後述する。そして、出力部12は点灯が不要であるLED素子ユニット2521を示す情報を出力する(S8)。
【0053】
(仮想粒子数と反応速度との相関性)
ここで、仮想粒子頻度と反応速度との相関性について、図8図12を用いて説明する。図8は、光反応装置2にて実際に光反応を行い算出した反応速度定数と、シミュレーション装置1にて算出した光反応装置2における仮想粒子頻度との関係を示す図である。図8に示すように、光反応装置2における光反応の反応速度定数とシミュレーション装置1が算出した仮想粒子頻度とには相関関係があった。
【0054】
相関関係の検討には、光反応装置2を用いた。つまり、光反応装置2について、複数の異なる光照射条件で実際に光反応を行って反応速度定数を算出した。そして、各光照射条件下における仮想粒子頻度をシミュレーション装置1で算出した。これらの結果をプロットしたグラフが図8である。図8に示す〇は光反応装置2における結果を示している。以下に検討の詳細について記載する。
【0055】
(検討に用いた光反応装置2の構造)
上記相関関係を検討するために用いた光反応装置2の構造について説明する。図9は、当該検討に用いた光反応装置2の構造を示す図である。図9の光反応装置2は、3枚の撹拌翼22および1つの光照射装置25を備えている。光反応装置2が備えている1つの光照射装置25は4方向照射のLED光源装置252を備えている。光反応装置2の撹拌槽21の半径は400mmである。なお、光反応を行うための撹拌槽21の大きさ、撹拌翼22の枚数等は特に限定されず任意である。
【0056】
(仮想粒子頻度分布の算出)
次に、光反応装置2について、光照射装置25の周囲に設定した各単位領域における仮想粒子頻度分布を算出し、各単位領域における光照射強度に応じて補正した。仮想粒子頻度分布は、8つの光照射条件で算出した。光照射条件の詳細は図12に基づいて後述する。
【0057】
図10は光反応装置2について算出された仮想粒子頻度分布を示す分布図である。また、光照射装置25の円周方向については、撹拌軸23と対向する方向(光照射装置25の中心から撹拌軸23に向かう方向)を0°とした。また、図示のように円周方向を時計回りに定義した。
【0058】
図10の(c)は、光照射装置25の周囲の仮想粒子頻度分布を示す分布図である。縦軸は光反応装置2の高さの位置を示し、横軸は光反応装置2の円周方向の位置を示している。つまり、これらの分布図では、光照射装置25の外面全周における仮想粒子頻度分布を示している。
【0059】
図10の(c)において、円周方向の0°(360°)、90°、180°、および270°の各位置で仮想粒子頻度が高いことが示されている。つまり、これらの位置では光反応が速やかに進行しているとのシミュレーション結果となっている。これは、図10の(b)に示したLED素子ユニットの配置と整合している。
【0060】
また、分布図では、円周方向が同一であっても高さ方向の位置が異なれば仮想粒子頻度も異なっている。これにより、光照射装置25の高さ方向の何れの位置で光反応の進行度合いが相対的に低いかを特定することができる。そして、そのような位置のLED素子ユニットを、光反応の進行への寄与の低いものと特定することができる。
【0061】
(光反応装置2における反応速度定数)
図11は、光反応装置2について算出した反応速度定数を示す図である。また、図11では、LED素子ユニット2521に供給した電流値についても併せて示している。
【0062】
光反応装置2の反応速度定数は、8つの光照射条件のそれぞれについて算出したものである。これらの光照射条件は、「照射番号」欄で示している。
【0063】
なお、詳細は省略するが、本願発明者らによる別の実験により、反応時間と反応率との関係が線形となる(光反応が一次反応である)ことが確認されている。このことから、少なくともPVCと塩素とを光反応させる反応系については、一次反応によるモデル化が妥当であると言える。
【0064】
また、図11に示すように、光反応を行ったときのLED素子ユニット2521に供給した電流値は、0.62と0.5の2通りである。この電流値の差異は、LED素子ユニット2521の発する光強度に影響を及ぼし、またこれにより反応速度定数の値にも影響を及ぼす。このため、図11の例では、電流値の差異による影響がキャンセルされるように反応速度定数を補正している。詳細は省略するが、本願発明者らによる別の実験により、LED素子ユニット2521に供給される電流値と反応速度定数とが相関していることが確認されているので、この相関関係に応じた補正により電流値の差異による影響をキャンセルすることができる。
【0065】
図8のグラフは、以上のようにして算出した反応速度定数と、光反応装置2について各光照射条件下における仮想粒子頻度をシミュレーション装置1で算出した結果とを用いて作成したものである。
【0066】
図12の(a)および(b)は、光照射条件を説明する図である。図12の(a)に示すように、光反応装置2の光照射装置25が4方向に備えるLED素子ユニットのうち、撹拌軸23と対向する方向(光照射装置25の中心から撹拌軸23に向かう方向)に向いたLED素子ユニットによる照射を照射番号(2)で示し、その反対に向いたLED素子ユニットによる照射を照射番号(4)で示している。また、残り2つのLED素子ユニットによる照射をそれぞれ照射番号(1)(3)で示している。光照射装置25の円周方向のうち、撹拌軸23と対向する照射方向を0°とすれば、照射番号(2)、(1)、(4)、(3)のLED素子ユニットはそれぞれ0°、90°、180°、270°の方向に向いていると言える。さらに、図12の(b)は、照射番号(4)’を示している。例えば光照射装置25を周方向に回転させる等により、照射番号(4)に対応するLED素子ユニットの位置を変更することにより、照射番号(4)’の位置から光照射することができる。照射番号(4)’のLED素子ユニットは、概ね220°の方向に向いている。
【0067】
図11の「照射番号」は、上記の照射番号(1)〜(4)および(4)’に対応している。例えば、図11において「照射番号」が「(1)」である反応速度定数は、光反応装置2において、照射番号(1)に対応するLED素子ユニットを点灯させ、他のLED素子ユニットは消灯するという光照射条件で行った光反応の結果に基づいている。
【0068】
(不要光源特定部135の処理例1)
次に、不要光源特定部135による不要光源を特定する処理の詳細について、図13を参照して説明する。なお、図13の(a)に示すグラフは、図8のグラフと同じである。反応速度定数と仮想粒子頻度との間には相関があるので、不要光源特定部135は、この相関関係に基づいて、要求される反応速度定数に対応する仮想粒子頻度を算出する。
【0069】
例えば、要求される反応速度定数が7.00×10-5[s-1]であれば、不要光源特定部135は、図13の(a)に点線で示すように、この反応速度定数に対応する仮想粒子頻度を算出する。反応速度定数と仮想粒子頻度の相関関係を数式化しておけば、このような算出が可能である。
【0070】
続いて、不要光源特定部135は、仮想粒子頻度分布を参照して、仮想粒子頻度の合計を所定の閾値以上とするのに使用不要な複数のLED素子ユニット2521を特定する。例えば、不要光源特定部135は、複数のLED素子ユニット2521のそれぞれについて、その投光範囲に含まれる単位領域を特定する。そして、各LED素子ユニット2521の投光範囲に含まれる単位領域の仮想粒子頻度を合計して、LED素子ユニット2521毎の仮想粒子頻度を算出する。次に、不要光源特定部135は、算出した各合計値を、その値が大きい順に、反応速度定数に対応する仮想粒子頻度の値を超えるまで加算する。そして、加算の対象とならなかった合計値に対応するLED素子ユニット2521を、不要光源であると特定する。なお、相対的に仮想粒子頻度が低い領域に投光するLED素子ユニット2521を不要光源として特定すればよく、その特定方法は上記の例に限られない。
【0071】
図13の(b)は、仮想粒子頻度分布において、LED素子ユニット2521の配置が不要であると特定された領域の一例を示す図である。図13の(b)において、白枠(点線)で示している領域は仮想粒子頻度が相対的に低く、LED素子ユニット2521の配置が不要である領域(削減光源箇所)を示している。すなわち、不要光源特定部135は、当該領域に光を照射するLED素子ユニット2521を不要光源と特定している。
【0072】
(不要光源特定部135の処理例2)
次に、不要光源特定部135の他の処理例について、図14を参照して説明する。図14の(a)は本処理例において用いた光反応装置2bの構造を示している。図14の(a)に示すように、光反応装置2bは、撹拌翼22および2つの光照射装置25を備えている。なお、図14の(a)に示すように、2つの光照射装置25を区別するためにA、Bの符号を付している。また、図14の(a)に示すように、光照射装置25は、4方向および4段階(I〜IV)の高さにLED素子ユニット2521を備えている。A、B何れの光照射装置25についても、円周方向は、撹拌軸23と対向する方向(光照射装置25の中心から撹拌軸23に向かう方向)を0°として規定している。
【0073】
図14の(b)、(c)は、A、Bの光照射装置25のそれぞれについて、その周囲の単位領域における仮想粒子頻度分布を示した図である。図示のように、0°付近、90°付近、180°付近、270°付近、および360°付近を中心として縦長の帯状に仮想粒子頻度分布が高い領域が見られる。これは、同図の(a)に示されるLED素子ユニット2521の配置と整合している。
【0074】
また、(d)において白枠(点線)で示している領域は、不要光源特定部135が特定した、(c)で示す仮想粒子頻度分布における配置不要なLED素子ユニット2521の投光領域を示している。なお、(d)において、破線領域は左端と右端の2つに分かれているが、これら2つの破線領域は、高さ方向に一列に並んだLED素子ユニット2521に対応している(同図において左端(360°)と右端(0°)の位置は同じ位置であるため)。
【0075】
このような領域を特定する場合、不要光源特定部135は、まず、高さ方向に一列に並んだLED素子ユニット2521に対応した領域を特定する。本例では、1つの光照射装置25にLED素子ユニット2521は4列配されているから、不要光源特定部135は、A、Bの光照射装置25のそれぞれについて4列の領域を特定する。次に、不要光源特定部135は、特定した領域(全8領域)のうち、仮想粒子頻度の合計値が最も少ない領域を特定する。そして、不要光源特定部135は、全領域の仮想粒子頻度の合計から、当該領域の仮想粒子頻度の合計値を引いた値が、所定の閾値以上であれば、当該領域のLED素子ユニット2521を不要光源であると特定する。なお、所定の閾値未満であれば、不要光源特定部135は、不要光源はないと判定する。また、不要光源特定部135は、不要光源を特定した後、上記と同様の処理により、さらなる不要光源を特定してもよい。
【0076】
本例では、上記領域のLED素子ユニット2521の数は4であった。該4ユニットのLED素子ユニット2521を含めないことにより、光照射装置25の製造コストを低減することができる。本例では、上記4ユニットのLED素子ユニット2521を含める場合と比べて12.5%のコストダウンとなった。
【0077】
本例のように、まとまった領域の光源について要否を判定することにより、その判定結果に基づく光照射装置25の点灯制御が容易になる。なお、領域をどのように設定するかは、光照射装置25の点灯制御の方式や、各LED素子ユニット2521の接続態様に応じて決めておけばよい。例えば、横一列に並んだLED素子ユニット2521について、まとめて点灯/消灯を切り替える構成であれば、横一列に並んだLED素子ユニット2521に対応する各領域を予め設定しておき、それらの領域の光源について要否を判定すればよい。
【0078】
なお、シミュレーション装置1は、光反応装置の設計、製造、運用等に利用することができる。シミュレーション装置1が算出した仮想粒子頻度分布に従い、仮想粒子頻度が相対的に低い領域を避けて決定した位置に光源を備えた光反応装置も本発明の範疇に含まれる。また、シミュレーション装置1が算出した仮想粒子頻度分布に従い、仮想粒子頻度が相対的に低い領域の光源を消灯する制御を行う光反応装置も本発明の範疇に含まれる。
【0079】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図15および図16を参照して説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0080】
実施形態1に係るシミュレーション装置1においては、既定の複数の設置位置のLED素子ユニット2521のうち使用不要であるものを特定する構成について例示した。一方で、本実施形態に係るシミュレーション装置1aは、LED素子ユニット2521の好ましい設置位置を特定する。シミュレーション装置1aは、光反応装置の設計あるいは製造に好適に利用できる。
【0081】
(シミュレーション装置1aの構成)
はじめに、シミュレーション装置1aの構成について説明する。図15は、シミュレーション装置1aの要部構成を示すブロック図である。図15に示すように、シミュレーション装置1aは、操作部11、出力部12および制御部13aを備えている。制御部13aは、シミュレーション装置1aの各部を統括して制御するものである。制御部13aは、仮想粒子数補正部134と不要光源特定部135の代わりに、光源設置部(設備要素特定部)134aを含む点が図1の制御部13との相違点である。
【0082】
光源設置部136aは、仮想粒子の数が相対的に多い単位領域に対応する位置を、光源(光源装置、所定の設備要素)の設置位置として決定する。詳細には、光源設置部136aは、仮想粒子数算出部133が算出した各単位領域の仮想粒子頻度すなわち仮想粒子頻度分布から、仮想粒子の数が相対的に多い領域を特定し、その領域を光源の設置位置として決定する。そして、光源設置部136aは、決定した設置位置を示す情報を出力部に出力させる。
【0083】
例えば、LED素子ユニット2521を光源として用いることが決まっている場合、そのLED素子ユニット2521の投光範囲に相当する形状および広さの領域を規定する。そして、その領域に含まれる各単位領域の仮想粒子頻度の合計値が最大化されるように、反応槽内における当該領域の位置を特定してもよい。
【0084】
(シミュレーション装置1aの処理の流れ)
次に、図16を用いて、シミュレーション装置1aが行う処理の流れについて説明する。S1からS5については、実施形態1にて説明した処理と同様である。なお、LED光源装置252の位置が全く決まっていなければ、S5では反応槽の内部領域を均等に区切るなどして設定した単位領域について仮想粒子数を算出すればよい。一方、LED光源装置252の位置(図2に基づいて説明したLED保護容器251の位置)が決まっている場合には、実施形態1と同様にLED光源装置252の周囲に設定した単位領域について仮想粒子数を算出すればよい。
【0085】
S5に続き、光源設置部136aは仮想粒子数の数に応じて、LED素子ユニット2521(光源)の設置位置を決定する(S11)。続いて、出力部12はLED素子ユニット2521の設置位置を出力する(S8)。
【0086】
シミュレーション装置1aは、光反応装置の設計あるいは製造に利用することができ、シミュレーション装置1aが決定した位置に光源を備えた光反応装置も本発明の範疇に含まれる。
【0087】
〔実施形態3〕
本実施形態に係るシミュレーション装置1は、算出された仮想粒子頻度に基づいて、光反応が行われる設備に含まれる所定の設備要素について、所定の条件を充足する配置および構成の少なくとも何れかを特定する設備要素特定部を備えている。これにより、シミュレーション装置1を、光反応が行われる設備の設計の最適化に利用することができる。なお、設備要素特定部は、制御部13(図1参照)に含まれる。
【0088】
上記所定の設備要素は、その配置および構成の少なくとも何れかが反応の進行に関与するものであればよく、特に限定されない。例えば、上記実施形態で説明した光源装置の他、撹拌槽(反応容器)21、撹拌翼22、撹拌軸23、塩素供給管等の反応を進行させるために必要な化合物の供給部、邪魔板等の撹拌槽21の内部に配置された各種構造体を上記所定の設備要素としてもよい。また、例えば、所定の温度条件下で進行させる反応を行う設備であれば、ヒーター等の調温装置を上記所定の設備要素としてもよい。
【0089】
また、上記所定の条件は、反応の効率的な進行、設計する設備に求められる性能、またはコスト等の観点に基づいて予め設定すればよい。例えば、反応の効率的な進行という観点から、撹拌槽21における仮想粒子頻度が相対的に高いという条件を設定してもよい。この場合、設備要素特定部は、反応の進行に必要な要素を供給する設備要素の配置を特定することができる。例えば、上記実施形態で説明した光源装置の配置を特定できる他、塩素供給管の配置を特定することができる。また、撹拌槽21における仮想粒子頻度が相対的に低いという条件を設定してもよい。この場合、設備要素特定部は、撹拌槽21における仮想粒子頻度が相対的に低い領域を、例えば追加の撹拌翼22の配置として特定することができる。
【0090】
一方、性能やコスト等については、複数の異なる条件で仮想粒子頻度を算出することにより、好適な配置および構成を特定可能である。以下では、シミュレーション装置1が撹拌翼22の好適な種類を出力する例について説明する。つまり、本例における「複数の異なる条件」は、撹拌翼22の種類が異なるという条件である。
【0091】
(本実施形態における処理の流れ)
本実施形態に係るシミュレーション装置1には、複数種類の撹拌翼22について、その種類(構成)を特定するためのデータが操作部11を介してそれぞれ入力される。撹拌翼22の種類を特定するためのデータとしては、例えば、撹拌翼の型(4枚羽のプロペラ型など)やサイズ、メーカー等が挙げられる。
【0092】
次に、シミュレーション装置1は、各種類の撹拌翼22を用いた場合について、実施形態1にて説明したS1〜S6(図7)の処理を行うことによって、撹拌翼22の種類ごとの仮想粒子頻度を算出する。なお、算出する仮想粒子頻度は、全ての単位領域における仮想粒子頻度の合計値であり、この合計値は、シミュレーション対象である光反応装置2の全体における反応速度を示す指標となる。
【0093】
続いて、設備要素特定部は、算出された仮想粒子頻度のうち最も値が大きかった仮想粒子頻度に対応する撹拌翼22の種類を特定する。そして、設備要素特定部は、特定した種類を出力部12に送信し、出力部12は当該種類を示す情報を出力する。これにより、何れの種類の撹拌翼22を使用することが望ましいかをユーザに認識させることができる。また、同様にして撹拌翼22の最適なサイズや配置を特定することもできる。
【0094】
なお、設備要素特定部は、算出された各仮想粒子頻度と所定の閾値とをそれぞれ比較し、仮想粒子頻度が閾値以上であった種類を特定してもよい。この場合、光反応装置2の全体において反応速度が所定値以上となる撹拌翼22の種類をユーザに認識させることができる。また、仮想粒子頻度が閾値以上である種類が複数特定された場合、設備要素特定部は、例えば価格が安いあるいは消費電力が低いなどの所定の評価基準に従って最適な種類を特定してもよい。
【0095】
なお、「複数の異なる条件」は、各条件において仮想粒子頻度が異なるものとなり得る条件であればよい。例えば、撹拌槽21の形状が異なる各条件について、シミュレーションを行い、最適な形状を特定することもできる。同様に、撹拌槽21のサイズが異なる各条件についてシミュレーションを行い、最適なサイズを特定することもできる。また、同様にして、邪魔板等の撹拌槽21の内部に配置された各種構造体の最適な形状、サイズ、配置等を特定することもできる。
【0096】
このように、本実施形態のシミュレーション装置1によれば、光反応装置2が備える各構成要素を最適に設計することが可能になる。なお、本実施形態のシミュレーション装置1が特定した配置に所定の設備要素を備えているか、または当該シミュレーション装置1が特定した構成の所定の設備要素を備えている光反応装置2も本発明の範疇に含まれる。
【0097】
また、シミュレーション装置1は、光反応装置2を稼働させる際の運転条件の決定にも利用することができる。この場合、シミュレーション装置1は、算出された仮想粒子頻度に基づいて、所定の条件を充足するように、光反応が行われる設備における運転条件を決定する運転条件決定部を備えている。なお、運転条件決定部は、制御部13(図1参照)に含まれる。
【0098】
上記運転条件は、反応の進行に関与するものであればよく、特に限定されない。例えば、上記実施形態で説明した、何れの光源装置を点灯または消灯とするか、の他、撹拌槽(反応容器)21内の液量、撹拌翼22の回転速度、塩素ガスの導入速度、塩素ガスの流量、光源装置からの光の照射タイミング、照射箇所(照射方向)等が挙げられる。また、例えば、所定の温度条件下で進行させる反応を行う設備であれば、設定温度や温度制御のタイミング等を上記運転条件としてもよい。
【0099】
また、上記所定の条件は、反応速度を重視するか、ランニングコストを重視するか等の観点に基づいて予め設定すればよい。例えば、ランニングコストを重視するという観点から、上記実施形態で説明したように、撹拌槽21における仮想粒子頻度の合計が所定の閾値以上となる範囲で、できるだけ多数の光源装置を消灯するという条件を設定してもよい。
【0100】
また、運転条件決定部は、複数の異なる条件で算出された仮想粒子頻度に基づいて運転条件を決定してもよい。この場合、「複数の異なる条件」は、光反応装置2を稼働させる際の初期設定(例えば撹拌槽21内の液量等)や、運転内容(例えば運転時における撹拌翼22の回転速度)等とすればよい。例えば、「複数の異なる条件」を撹拌翼22の回転数がそれぞれ異なるという条件とすることにより、所望の反応速度を担保するために必要な回転数を運転条件決定部に決定させることができる。また、例えば、「複数の異なる条件」を、撹拌槽21内の反応液の液量がそれぞれ異なるという条件とすることにより、どの程度の液量であれば所望の反応速度が担保されるかを運転条件決定部に決定させることができる。また、運転条件決定部は、同様にして、所望の反応速度が担保される範囲で、光源装置からの光の照射タイミングや、光源装置の照射箇所(照射方向)を決定することもできる。
【0101】
また、シミュレーション装置1は、運転開始して所定時間が経過した時点における仮想粒子頻度を算出することも可能である。このため、シミュレーション装置1は、仮想粒子頻度の算出結果が、反応速度が低下することを示している場合に、反応速度を上げるための所定の制御を行う光反応装置制御部を備えていてもよい。
【0102】
例えば、光反応装置制御部は、運転開始からT2時間後の反応速度が、運転開始からT1(T1<T2)時間後の反応速度よりも有意に低下するか否かを判定してもよい。この場合、例えば、光反応装置制御部は、運転開始からT2時間後の運転条件から算出した仮想粒子頻度と、運転開始からT1時間後の運転条件から算出した仮想粒子頻度の差を算出し、その差が有意差であるか否かを判定してもよい。そして、光反応装置制御部は、有意に低下すると判定した場合、運転開始からT1時間からT2時間までの間に、撹拌翼22の回転速度を上げる等の所定の制御を行ってもよい。なお、回転速度をどの程度上げるかは、上記算出した仮想粒子頻度の差に基づいて決めてもよい。以上の制御により、反応速度を低下させることなく、光反応装置2を稼働させることが可能になる。
【0103】
この他、光反応装置2に対する塩素ガスの供給量、供給速度、供給位置等も考慮してシミュレーションを行うことも可能である。これにより、塩素ガスの供給量、供給速度、供給位置も最適化することが可能になる。
【0104】
〔光反応装置の他の例〕
光反応装置は、反応容器内で光反応物質を流動させながら該光反応物質に投光して光反応を進行させるものであればよい。例えば、反応容器内の固体原料に原料ガスを噴射することによって固体原料を撹拌して流動させ、流動する固体原料に投光して、固体原料と原料ガスとを光反応させるものであってもよい。このような光反応装置(設備)には、例えば、上記実施形態で説明したような光照射装置の他、原料ガスの噴出部、反応容器内の温度を調節するための調温装置等の設備要素が含まれていてもよい。
【0105】
このような光反応装置(設備)についても、上記各実施形態で説明したようなシミュレーションにより、設備要素の配置や構成、運転条件等を決定することが可能である。例えば、所望の反応速度で反応が行われるようにするために、原料ガスの噴出部におけるガス噴出孔の形状、数、噴出方向等をどのようにすべきか等を決定することも可能である。また、調温に用いる伝熱管の形状や反応容器内における配置等を決定することも可能である。
【0106】
〔製造方法〕
シミュレーション装置1が実施形態3に示した処理によって決定した運転条件を適用して、光反応が行われる設備を稼働させ、光反応物質を光反応させることにより、光反応生成物を生成するステップを含むことを特徴とする光反応生成物の製造方法も本発明の範疇に含まれる。
【0107】
また、シミュレーション装置1が決定した運転条件で上記設備を稼働させ、光反応物質を光反応させることにより、光反応生成物を生成するステップを含む光反応生成物の製造方法も本発明の範疇に含まれる。
【0108】
これらの製造方法によって製造される光反応生成物は特に限定されず、例えば上記実施形態で説明した塩素化塩化ビニルや、それに類する化合物等であってもよい。
【0109】
〔ソフトウェアによる実現例〕
シミュレーション装置1、1aの制御ブロック(特に制御部13および13a)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0110】
後者の場合、シミュレーション装置1、1aは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0111】
〔付記事項〕
本発明に係るシミュレーション装置1、1aは、反応容器(撹拌槽21)内で光反応物質を流動させながら該光反応物質に投光して進行させる光反応の反応速度を示す指標値を算出するシミュレーション装置であって、上記光反応物質を仮想粒子とみなし、流動中の該仮想粒子の単位時間毎の位置を予想する流動予想部132と、上記予想に基づき、上記反応容器内に規定した複数の単位領域のそれぞれについて、当該単位領域を単位時間に通過する上記仮想粒子の数を、当該単位領域における光反応速度を示す指標値として算出する指標算出部(仮想粒子数算出部133)と、を備えている。
【0112】
上記仮想粒子の数と光反応速度との対応関係を検討した結果、相関関係があることが分かった。よって、上記の構成によれば、指標値から反応容器内において速い反応速度を示す単位領域が分かる。速い反応速度を示す単位領域に光を照射することによって光反応を促進することができる。そのため、上記指標値を用いることにより、反応容器の最適な位置に光源を配置することができる。また、上記指標値を用いることにより、複数の光源が配置済みの反応容器について、反応速度への寄与度の低い光源を特定して、使用する光源を最適化することができる。
【0113】
上記シミュレーション装置1は、上記単位領域における光照射強度に応じて、該単位領域における上記仮想粒子の数を補正する補正部(仮想粒子数補正部134)を備えていてもよい。上記の構成によれば、照射強度を加味した反応速度を予測できる。
【0114】
上記シミュレーション装置1は、算出された上記指標値に基づいて、上記光反応が行われる設備に含まれる所定の設備要素について、所定の条件を充足する配置および構成の少なくとも何れかを特定する設備要素特定部を備えていてもよい。この構成によれば、反応容器内においてどのような反応速度で反応が進行するかを示す指標値に基づいて、設備要素の配置や構成を最適化することが可能になる。
【0115】
上記所定の設備要素は、上記光反応物質に投光する光源装置であってもよく、上記設備要素特定部は、上記仮想粒子の数が相対的に多い上記単位領域に対応する位置を、上記光源装置の配置として特定してもよい。この構成によれば、特定された配置に従って、光源装置の設置位置を設計することができる。
【0116】
上記シミュレーション装置1は、算出された上記指標値に基づいて、所定の条件を充足するように、上記光反応が行われる設備における運転条件を決定する運転条件決定部を備えていてもよい。この構成によれば、反応容器内においてどのような反応速度で反応が進行するかを示す指標値に基づいて、所定の条件を充足する運転条件を決定することができる。
【0117】
上記複数の単位領域は、複数の光源装置の何れかに対応付けられていてもよく、上記運転条件決定部は、上記複数の単位領域における上記指標値の合計を所定の閾値以上とするのに使用不要な上記光源装置を消灯状態とする運転条件を決定してもよい。上記の構成によれば、必要な反応速度を実現しつつ、不要な光源装置を消灯状態として、省電力化を実現することができる。
【0118】
本発明の一態様に係る光反応装置は、上記シミュレーション装置が特定した配置に所定の設備要素を備えているか、または当該シミュレーション装置が特定した構成の所定の設備要素を備えている構成であってもよい。この構成によれば、反応容器内においてどのような反応速度で反応が進行するかを示す指標値に基づいて特定された配置や構成の設備要素を備えているため、例えば必要な反応速度で光反応を進行させることができる等の効果を奏する。
【0119】
本発明に係るシミュレーション装置の制御方法は、反応容器内で光反応物質を流動させながら該光反応物質に投光して進行させる光反応の反応速度を示す指標値を算出するシミュレーション装置の制御方法であって、上記光反応物質を仮想粒子とみなし、流動中の該仮想粒子の単位時間毎の位置を予想する流動予想ステップ(S4)と、上記予想に基づき、上記反応容器内に規定した複数の単位領域のそれぞれについて、当該単位領域を単位時間に通過する上記仮想粒子の数を、当該単位領域における光反応速度を示す指標値として算出する指標算出ステップ(S5)と、を含む。
【0120】
上記仮想粒子の数と光反応速度との対応関係を検討した結果、相関関係があることが分かった。よって、上記の構成によれば、指標値から反応容器内において速い反応速度を示す単位領域が分かる。速い反応速度を示す単位領域に光を照射することによって光反応を促進することができる。そのため、上記指標値を用いることにより、反応容器の最適な位置に光源を配置することができる。また、上記指標値を用いることにより、複数の光源が配置済みの反応容器について、反応速度への寄与度の低い光源を特定して、使用する光源を最適化することができる。
【0121】
本発明に係るシミュレーション装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記シミュレーション装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記シミュレーション装置をコンピュータにて実現させるシミュレーション装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0122】
本発明の一態様に係る光反応生成物の製造方法は、光反応が行われる設備に含まれる所定の設備要素について、その配置および構成の少なくとも何れかが、上記シミュレーション装置が決定したものとなっている上記設備を稼働させ、光反応物質を光反応させることにより、上記光反応生成物を生成するステップを含む。
【0123】
上記シミュレーション装置によれば、設備要素の配置や構成を最適化することが可能であるから、上記の構成によれば、配置や構成が最適化された設備要素を含む設備によって、光反応生成物を生成することが可能になる。
【0124】
本発明の一態様に係る光反応生成物の製造方法は、上記シミュレーション装置が決定した運転条件で上記設備を稼働させ、光反応物質を光反応させることにより、上記光反応生成物を生成するステップを含む。
【0125】
上記シミュレーション装置によれば、所定の条件を充足する運転条件を決定することが可能であるから、上記の構成によれば、所定の条件を充足する運転条件で光反応生成物を生成することが可能になる。
【0126】
上記光反応生成物の製造方法では、上記光反応生成物は、塩素化塩化ビニルであってもよい。これにより、配置や構成が最適化された設備要素を含む設備によって塩素化塩化ビニルを生成することや、所定の条件を充足する運転条件で塩素化塩化ビニルを生成することが可能になる。
【0127】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
1、1a シミュレーション装置
21 撹拌槽(反応容器)
132 流動予想部
133 仮想粒子数算出部(指標算出部)
134 仮想粒子数補正部(補正部)
135 不要光源特定部
136a 光源設置部
S4 流動予想ステップ
S5 指標算出ステップ
図1
図2
図3
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