(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属製のケース(C)内に、半導体モジュール(2)と、上記半導体モジュールを冷却するための冷却器(4)と、上記半導体モジュールに接続されるリアクトル(L1〜L3)と、DC−DCコンバータ(3)と、上記リアクトル及び上記DC−DCコンバータを冷却するための冷媒流路(51)を有する冷却部(5)とを備える電力変換装置(1)であって、
上記DC−DCコンバータは、主回路が構成されるDC−DCコンバータ本体(31)に半導体素子を含む発熱部(32、33)を有しており、
上記冷却部は、上記ケースの底壁部(C1)内に設けられた空間部(5A)を、上記ケースの一側壁(C2)側に開口する冷媒の流入口(52)及び流出口(53)を有する上記冷媒流路とし、
上記底壁部の内壁面(C3)に接して、上記一側壁側から上記リアクトル及び上記DC−DCコンバータ本体がこの順に配置されており、かつ、
上記DC−DCコンバータ本体は、上記発熱部が上記一側壁側に配置されると共に、上記発熱部を有する上記一側壁側の端部が、上記冷媒流路の直上に位置し、上記一側壁と反対側の端部は、上記冷媒流路の直上に位置しない、電力変換装置。
上記DC−DCコンバータ本体において、上記一側壁側の端部は、上記冷媒流路を上記内壁面に投影した領域(R)の内側に位置し、上記一側壁と反対側の端部は、上記領域の外側に位置する、請求項1に記載の電力変換装置。
上記発熱部は、上記主回路を構成するトランス(T)の一次側に接続される一次側半導体素子部(32)及び上記トランスの二次側に接続される二次側半導体素子部(33)を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
上記冷媒流路は、上記空間部内を区画する仕切壁(54)により上記流入口から上記流出口へ至るU字状流路として構成されており、上記一側壁と反対側の折り返し部において、上記冷媒流路は曲面状の流路壁を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
上記冷却器は、冷媒流路を形成する複数の冷却管(41)が、上記半導体モジュールと一体の積層構造体(2A)を構成し、上記積層構造体と上記底壁部の間に、上記DC−DCコンバータ本体が配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド自動車等の電動車両等において、動力源となる電動機や車両補機等を駆動するために、電力変換装置が用いられる。一般に、電力変換装置は、コンバータやインバータ等の電力変換回路、又はそれらの構成部品をユニットとして、制御回路基板等と共にケース内に収容してなる。また、ケース内には、各ユニットを冷却するための冷却部を設けて、発熱量の大きい電力変換回路の各部の温度上昇を抑制している。
【0003】
例えば、特許文献1には、直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を構成する半導体モジュールと、半導体モジュールを冷却する冷却器と、直流電源に接続したDC−DCコンバータを備える電力変換装置が開示されている。半導体モジュールは、冷却器と一体の積層構造体を構成しており、DC−DCコンバータの本体部は、ケースの内側に設けられた隔壁部上に配置されて、その内部を流れる冷媒によって冷却される。
【0004】
この電力変換装置では、例えば、ケース底部に隔壁部を配置して、DC−DCコンバータを搭載し、その直上に半導体モジュールと一体の冷却器を配置している。また、隔壁部は、ケース底壁部のほぼ全体に設けられ、半導体モジュール及びDC−DCコンバータが配置される一側壁側と反対側に、半導体モジュールに接続したリアクトル等の電子部品を搭載して、隔壁部内を流れる冷媒により冷却することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記電力変換装置の構成では、隔壁部内に形成される冷媒流路を、DC−DCコンバータが配置されるケースの一側壁側から、反対側の側面の近傍まで形成し、DC−DCコンバータとリアクトルの全体が冷却されるようにしているので、流路長が長くなりやすい。また、ケースの一側壁側に冷媒流路の流出入口を開口させており、冷媒流路に折り返し部が形成されるので、冷媒流路がさらに長くなる。そのため、冷媒流路の圧力損失が増加して冷却効率の低下をまねいている。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、冷媒流路の圧力損失を低減して、DC−DCコンバータ及びリアクトルを効果的に冷却することができる、電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、金属製のケース(C)内に、半導体モジュール(2)と、上記半導体モジュールを冷却するための冷却器(4)と、上記半導体モジュールに接続されるリアクトル(L1〜L3)と、DC−DCコンバータ(3)と、上記リアクトル及び上記DC−DCコンバータを冷却するための冷媒流路(51)を有する冷却部(5)とを備える電力変換装置(1)であって、
上記DC−DCコンバータは、主回路が構成されるDC−DCコンバータ本体(31)に半導体素子を含む発熱部(32、33)を有しており、
上記冷却部は、上記ケースの底壁部(C1)内に設けられた空間部(5A)を、上記ケースの一側壁(C2)側に開口する冷媒の流入口(52)及び流出口(53)を有する上記冷媒流路とし、
上記底壁部の内壁面(C3)に接して、上記一側壁側から上記リアクトル及び上記DC−DCコンバータ本体がこの順に配置されており、かつ、
上記DC−DCコンバータ本体は、上記発熱部が上記一側壁側に配置されると共に、上記発熱部を有する上記一側壁側の端部が、上記冷媒流路の直上に位置し、上記一側壁と反対側の端部は、上記冷媒流路の直上に位置しない、電力変換装置にある。
【発明の効果】
【0009】
上記態様の電力変換装置は、ケース底壁部の内壁面に、冷媒の流出入側となる一側壁側からリアクトル及びDC−DCコンバータ本体を配置しており、しかもDC−DCコンバータ本体においては、発熱部を一側壁側とし、その反対側を冷媒流路の直上に位置しないようにしたので、冷媒流路となる空間部の長さをその分短縮できる。このとき、冷媒流路は、一側壁側と反対側で折り返す形状となるので、冷媒流路の流路長はより短くなり、圧力損失を低減する大きな効果が得られる。したがって、発熱量の大きいリアクトル及びDC−DCコンバータ本体の発熱部の冷却を効率よく行い、電力変換効率を向上させることができる。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、冷媒流路の圧力損失を低減して、DC−DCコンバータ及びリアクトルを効果的に冷却することが可能な電力変換装置を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1における、電力変換装置の概略構成を示す全体断面図。
【
図2】実施形態1における、電力変換装置の冷却部近傍の概略構成を示す図で、
図1のII−II線断面図。
【
図3】実施形態1における、電力変換装置の冷媒流路の構成例を示す底壁部の断面図で、
図1のIII−III線断面図。
【
図4】実施形態1における、電力変換装置の主要部構成例を示す等価回路図。
【
図5】実施形態1における、電力変換装置のDC−DCコンバータ主回路の構成例を示す等価回路図。
【
図6】実施形態1における、電力変換装置の冷媒流路による作用効果を説明するための流路模式図。
【
図7】実施形態1における、電力変換装置の冷媒流路とDC−DCコンバータの配置による作用効果を、従来の電力変換装置と比較して説明するための模式的な図。
【
図8】比較形態1における、電力変換装置の概略構成を示す全体断面図及び断面図。
【
図9】比較形態2における、電力変換装置の概略構成を示す全体断面図及び断面図。
【
図10】実施形態2における、電力変換装置の概略構成を示す全体断面図及び断面図。
【
図11】実施形態2における、電力変換装置の主要部の等価回路図。
【
図12】実施形態3における、電力変換装置の概略構成を示す全体断面図。
【
図13】実施形態3における、電力変換装置のリアクトルと冷却器の配置を示す概略構成図で、
図12のXIII−XIII線断面図。
【
図14】実施形態3における、電力変換装置の冷却部近傍の概略構成を示す断面図。
【
図15】実施形態4における、電力変換装置の概略構成を示す全体断面図及び断面図。
【
図16】実施形態5における、電力変換装置の概略構成を示す全体断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
上記電力変換装置に係る実施形態について、
図1〜
図5を参照して説明する。
図1、
図2に示すように、本形態の電力変換装置1は、金属製のケースCの上半部内に、半導体モジュール2と、半導体モジュール2を冷却するための冷却器4を備えている。また、ケースCの下半部内に、半導体モジュール2に接続されるリアクトルL1と、DC−DCコンバータ3と、リアクトルL1及びDC−DCコンバータ3を冷却するための冷却部5を備えている。冷却部5には、冷却水等の冷却媒体が流通する冷媒流路51が設けられる。
【0013】
半導体モジュール2と冷却器4とは、一体の積層構造体2Aを構成しており、積層構造体2Aの上方には、電力変換装置1の作動を制御するための制御回路基板6が設けられる。このような電力変換装置1は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に搭載されて、動力源となるモータや車両補機等を駆動するための電力を供給することができる。
【0014】
詳細を後述するように、半導体モジュール2とリアクトルL1は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路とその昇圧部を構成している。また、DC−DCコンバータ3は、DC−DCコンバータ主回路が構成されるDC−DCコンバータ本体31を有して、直流電力を異なる電圧の直流電力に変換する。DC−DCコンバータ本体31は、主回路を構成する半導体素子を含む発熱部32、33を有している。冷却部5は、これら発熱部32、33とリアクトルL1を主に冷却する。冷却器4及び冷却部5の構成部材には、例えば、熱伝導性の良好な金属材料が用いられる。
【0015】
冷却部5は、ケースCの底壁部C1内に設けられた空間部5Aにて、冷媒流路51を構成している。空間部5Aは、一側壁(例えば、図中の左側壁)C2側に開口し、他端側は、閉鎖端部となっている。空間部5A内は、仕切壁54によって区画されて、
図2中に矢印で示すように、U字状の流路を形成し、その両端に冷媒の流入口52及び流出口53が設けられる。これにより、一側壁側に開口する冷媒の流入口52及び流出口53を有する冷媒流路51が形成される。
【0016】
このとき、底壁部C1の内壁面C3に接して、一側壁C2側からリアクトルL1及びDC−DCコンバータ本体31が、この順に配置される。また、DC−DCコンバータ本体31において、半導体素子を含む発熱部32、33が、一側壁C2側に位置するように、すなわち、リアクトルL1に隣接する側となるように配置される。さらに、DC−DCコンバータ本体31は、発熱部32、33を有する一側壁C2側の一部のみが、冷媒流路51の直上に位置し、一側壁C2と反対側の一部は、冷媒流路51の直上に位置していない。また、DC−DCコンバータ本体31の発熱部32、33の直上には、積層構造体2Aが位置している。
【0017】
具体的には、DC−DCコンバータ本体31は、発熱部32、33を有する、一側壁C2側の半部が、冷媒流路51を内壁面C3に投影した領域Rの内側に位置する一方、発熱部32、33と反対側の半部は、領域Rの外側に位置することになる。このように、DC−DCコンバータ本体31を、発熱部32、33がリアクトルL1に隣接する側となるようにして、一側壁C2と反対側に配置することで、コンパクトな冷却部5で効率よく冷却可能となる。
【0018】
より具体的には、
図3に示すように、ケースCの底壁部C1内には、冷媒流路51の流路壁を形成する流路形成部材55と仕切壁54とが収容されている。底壁部C1は、例えば、長方形の外形を有し、その長手方向、幅方向を、それぞれX方向、Y方向としている。流路形成部材55は、内部を空間部5Aとすると共に、冷媒流路51の外形を形成し、例えば、一側壁C2側から、X方向に概略平行に延びる一対の対向壁が、円弧をなす曲面状の端部壁により接続された、U字状の外形となっている。仕切壁54は、流路形成部材55の一対の対向壁間を二分するように平行配設されており、曲面状の端部壁の内側には配置されない。好適には、仕切壁54についても、端部壁に対向する端部壁面が、角を有さない滑らかな曲面状に形成されていることが望ましい。
【0019】
ケースCの一側壁C2には、Y方向に並ぶ一対の管状部材が取付けられて、冷媒流路51の両端に接続され、X方向に延びる冷却媒体の流入口52及び流出口53を形成している。流入口52には、図示しない外部の冷却媒体循環流路から、冷却媒体が導入され、冷媒流路51を通過した後に、流出口53から導出される。このように、冷媒流路51は、流入口52側から反対側へ向かい、曲面状の端部壁に沿って折り返して、流出口53へ戻る一連なりのU字流路となっている。底壁部C1の内壁面C3(例えば、
図1参照)には、X方向にこの順で、リアクトルL1及びDC−DCコンバータ本体部3が載置され、冷却媒体は、冷媒流路51を通過する間に、これらリアクトルL1及びDC−DCコンバータ本体部3と熱交換を行う。
【0020】
図示するように、冷媒流路51は、U字流路の全長にわたって、概略一定の幅で形成されることが望ましい。また、好適には、冷媒流路51の流路面の複数箇所に、互いに平行なフィン56が形成される。これらフィン56は、例えば、流入口52側及び流出口53側の端部を除いて、流路幅方向に等間隔で配置され、それぞれ流路形状に沿うU字状に形成される。これにより、冷媒流路51の流路表面積が向上すると共に、複数のフィン56に沿って冷却媒体が流れやすくなり、折り返し部においてもスムーズな流れが形成されるので、熱交換効率が向上する。
【0021】
図4に主要部の回路構成例を示すように、電力変換装置1は、外部に設置されるバッテリBと、バッテリBに接続されるリアクトルL1と、リアクトルL1と共に昇圧部を形成する半導体モジュール2を有し、バッテリ電圧を昇圧して、図示しない公知のインバータ回路へ供給する。バッテリBとリアクトルL1の間には、フィルタコンデンサ11とDC−DCコンバータ3が接続され、半導体モジュール2とインバータ回路の間には、平滑コンデンサ12が接続される。半導体モジュール2は、半導体スイッチング素子S1、S2の直列接続体を含んで構成され、半導体スイッチング素子S1、S2には、それぞれフリーホイールダイオードD1、D2が、逆並列に接続される。
【0022】
半導体モジュール2は、例えば、半導体スイッチング素子S1、S2を樹脂モールド成形し電気接続用の端子が露出させたパワーカードにて構成されている。半導体スイッチング素子S1、S2としては、例えば、IGBT(すなわち、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が用いられる。IGBTの他に、MOSFET(すなわち、電界効果トランジスタ)、バイポーラトランジスタ等の電力用半導体スイッチング素子を用いることもできる。
【0023】
インバータ回路は、例えば、DC−DCコンバータ3と同様の複数の半導体モジュール2にて構成され、昇圧された直流電力を交流電力に変換して、三相交流モータ等を駆動する。
図1に示すように、DC−DCコンバータ3とインバータ回路を構成する複数の半導体モジュール2は、冷却器4となる複数の偏平な冷却管41と交互に積層されて積層構造体2Aを形成する。複数の半導体モジュール2は、それぞれ、樹脂モールドされた本体部から露出する端子部にて、制御回路基板6と接続される。複数の冷却管41は、冷媒導入管42及び冷媒導出管43により互いに接続されて、内部に冷媒流路を形成しており、隣接する半導体モジュール2を両側から冷却する。なお、
図1中には、冷媒導入管42及び導出管43の一方を示している。これら冷媒導入管42と冷媒導出管43は、ケースCの一側壁C2に開口しており、例えば、冷却部5への流入口52及び流出口53と接続されて、冷却媒体循環流路の一部を構成することができる。
【0024】
図5に回路構成例を示すように、DC−DCコンバータ3は、主回路を構成するトランスTおよび複数の半導体素子と、バッテリBに接続される入力回路部34と、負荷に接続される出力回路部35とを有している。複数の半導体素子は、DC−DCコンバータ3における発熱部32、33となる。すなわち、トランスTの一次側に接続される複数の半導体スイッチング素子S3〜S6を含む一次側半導体素子部3Aが、発熱部32であり、トランスTの二次側に接続される複数のダイオードD3〜D4を含む二次側半導体素子部3Bが、発熱部33となっている。入力回路部34は、コイル341、342とコンデンサ343で構成され、出力回路部35は、コイル351とコンデンサ352、353で構成されて、ノイズ成分を除去する。
【0025】
DC−DCコンバータ3の一次側半導体素子部3Aは、半導体スイッチング素子S3〜S6がフルブリッジ回路を構成している。これら半導体スイッチング素子S3〜S6のオンオフを交互に切り換えることにより、入力回路部34からの入力電圧が交流電圧に変換されて、トランスTの一次側に入力される。トランスTの二次側から出力される変圧された交流電圧は、ダイオードD3〜D4が整流回路を構成する二次側半導体素子部3Bにおいて、直流電圧に変換され、出力回路部35を経て、負荷へ供給される。半導体スイッチング素子S3〜S6としては、例えば、IGBT、MOSFET、バイポーラトランジスタ等の電力用半導体スイッチング素子を用いることができる。
【0026】
次に、本形態による作用効果を説明する。上記したDC−DCコンバータ3の動作による発熱は、主に、一次側半導体素子部3A、二次側半導体素子部3Bにおける半導体スイッチング素子S3〜S6、ダイオードD3〜D4への通電により発生する。そこで、これら発熱部32、33をより効率よく冷却するために、冷却部5の冷媒流路51の流路長を短くし、圧力損失を低減することが有効となる。
図6に示すように、一般に、直径d、管長Lの円管に流体が流れる場合の圧力損失ΔPは、下記式で表される。
式:ΔP=λ×(L/d)×(ρ×v
2/2), λ=64/Re
式中、λ:摩擦係数、ρ:流体密度、v:平均流速、Re:レイノルズ数
上記式より、圧力損失ΔPは、管長Lに比例するので、管長Lを短くすることで、圧力損失ΔPを低減することができる。
【0027】
圧力損失ΔPと流路長Lの比例関係は、円管以外の形状の流路にも適用されるので、
図7の上図に示す従来構成の電力変換装置7に対し、下図に示す本形態の電力変換装置1の圧力損失ΔPが大きく低減する。すなわち、従来構成の電力変換装置7は、DC−DCコンバータ3とリアクトルL1がこの順で冷媒流路71の流入口72、流出口73側から配置され、冷媒流路71は、DC−DCコンバータ3とリアクトルL1の全体を冷却する長さLが必要となる。これに対して、本形態の電力変換装置1は、DC−DCコンバータ3の発熱部32、33側を有する主回路側半部のみが、冷媒流路51の端部の直上に位置する。すなわち、入力回路部34、出力回路部35が配置される反対側半部は、冷媒流路51の外側に位置するので、その長さ分、冷媒流路51の流路長Lが短くなる。例えば、流路長Lの1/5の長さが短縮された場合には、上記式より、圧力損失ΔPは4/5となるので、冷却効率が向上する。
【0028】
さらに、上記
図3に示したように、冷媒流路51を略一定幅のU字状とし、折り返し部を滑らかな曲面で構成して流路抵抗を小さくし、また、冷媒流路51にフィン56を設けることにより、スムーズな流れを形成することができる。これらにより、上記式における平均流速vを大きくして、さらなる圧力損失の低減が可能になる。したがって、冷却効率がより向上し、電力変換効率を高めることができる。
【0029】
一方、
図8に比較形態1として示すように、従来構成の電力変換装置7において、単純にDC−DCコンバータ3とリアクトルL1の配置順を入れ替えても、発熱部32、33の配置が考慮されない場合、図示するようにDC−DCコンバータ3の発熱部32、33が外側に位置すると、冷媒流路7を短縮することができない。また、
図9に比較形態2として示すように、冷媒流路7を短縮しても、図示するようにDC−DCコンバータ3の発熱部32、33が外側に位置する場合には、冷媒流路7による冷却効果が得られない。
【0030】
(実施形態2)
電力変換装置に係る実施形態2について、
図10、
図11を参照して説明する。本形態の電力変換装置1の基本構成は、上記実施形態1と同様であり、以下、相違点を中心に説明する。上記実施形態では、冷却部5により、リアクトルL1とDC−DCコンバータ3とを冷却する構成としたが、
図10に示すように、複数のリアクトルL1、L2を有する構成に適用することもできる。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0031】
この場合、
図11に示すように、インバータ回路に接続される昇圧部は、第1リアクトルL1に接続される第1半導体モジュール21と、第2リアクトルL2に接続される第2半導体モジュール22とを有する。第1半導体モジュール21と、第2半導体モジュール22は、実施形態1における半導体モジュール2と同様の構成であり、同様にしてインバータ回路を構成する半導体モジュール2と共に冷却管41と積層されて、積層構造体2Aを構成する。インバータ回路についても、例えば、複数の三相交流モータを駆動する複数のインバータを設けることができる。
【0032】
上記構成においても、冷却部5の冷媒流路51の上方に、複数のリアクトルL1、L2とDC−DCコンバータ3とを、一側壁C2側からこの順で配置する。そして、流路長Lを、DC−DCコンバータ3の発熱部32、33側の半部が冷却可能な長さに調整し、領域Rの外側に、発熱部32、33と反対側の半部を配置することで、圧力損失を最小限とすることができる。したがって、冷却効率を向上させる同様の効果が得られる。
【0033】
(実施形態3)
電力変換装置に係る実施形態3について、
図12〜
図14を参照して説明する。本形態の電力変換装置1の基本構成は、上記実施形態1と同様であり、以下、相違点を中心に説明する。上記実施形態1では、昇圧部を構成するリアクトルL1が高さの低い偏平な形状を有しており、DC−DCコンバータ3と共に、積層構造体2Aの下方に配置したが、リアクトルL1の形状や大きさは任意であり、
図12、
図13に示すように、より高さが高い縦長形状のリアクトルL1を有することがある。この場合には、ケースCの高さを変更せずに、積層構造体2Aの冷媒導入管42と冷媒冷導出管43の間に、リアクトルL1が配置されるように、積層構造体2Aの形状を変更することができる。
【0034】
具体的には、積層構造体2Aの冷媒導入管42及び冷媒導出管43は、リアクトルL1の幅よりも広い間隔で、リアクトルL1の長さよりも長くなるように、ケースC内方に延出される。このとき、冷媒導入管42と冷媒導出管43の間にリアクトルL1を位置させて、スペースを有効に活用することができる。また、
図13、
図14に示すように、冷媒流路51の長さ方向において、リアクトルL1の長さを調整し、例えばDC−DCコンバータ3より短くすることで、冷媒流路51の流路長Lをより短くすることができる。したがって、流路長Lの短縮により圧力損失をさらに低減することができ、また、冷媒導入管42と冷媒導出管43が必要以上に長くなることがない。よって、よりコンパクトな構成で、冷却効率を向上させることができる。
【0035】
(実施形態4)
図15に実施形態4として示すように、上記実施形態1の構成において、DC−DCコンバータ3をより高さが高い縦長形状とすることもできる。DC−DCコンバータ3の発熱部32、33が、リアクトルL1側の冷媒流路51の直上に配置される構成は同様である。この場合には、ケースCの積層構造体2Aの側方のスペースを有効利用することができ、他の部品構成や配置を変更することなく、冷却効率を向上させる同様の効果が得られる。
【0036】
(実施形態5)
図16に実施形態5として示すように、上記実施形態1の構成において、ケースCの底壁部C1を、冷媒流路51の形状に沿う変形形状とすることもできる。DC−DCコンバータ3の発熱部32、33と反対側の端部においては、下方に冷媒流路51が形成されないので、その部位の底壁部C1を薄壁化して凹部C4を有する形状としてもよい。それ以外の構成は実施形態1と同様である。この場合には、例えば、凹部C4により外部に形成されるスペースに、他の車載部品等を配置することで、スペースを有効利用することができる。
【0037】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、冷媒流路51は、流入口52及び流出口53の両方がケースCの一側壁C2に開口している必要はなく、一側壁C2側に流入口52及び流出口53が設けられ、一側壁C2と反対側が閉鎖端部となっていればよい。その他の冷媒流路51やフィン56の形状、DC−DCコンバータ3や半導体モジュール2の回路構成、冷却器4を含む積層構造体2Aの構造等は、任意に変更することができる。また、上記実施形態では、電動車両等に用いられる電力変換装置として説明したが、車両に限らず電動駆動される機械、装置等に適用することもできる。