(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について、
図1ないし
図12を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0012】
[画像形成装置]
本実施形態の画像形成装置100は、それぞれ像担持体としての感光ドラム1を有する4つの画像形成部PY、PM、PC、PKを備えた電子写真方式のタンデム型のフルカラープリンタである。画像形成装置100は、装置本体100Aに接続された原稿読み取り装置(図示せず)又は装置本体100Aに対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどのホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材に形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。また、画像形成部PY、PM、PC、PKは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成する。
【0013】
なお、画像形成装置100が備える4つの画像形成部PY、PM、PC、PKは、現像色が異なることを除いて実質的に同一の構成を有する。したがって、代表して画像形成部PYについて説明し、その他の画像形成部については説明を省略する。
【0014】
図2に示すように、画像形成部PYには、像担持体として円筒型の感光体、即ち、感光ドラム1が配設されている。感光ドラム1は、図中矢印方向に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には帯電手段としての帯電ローラ2と、現像装置4、転写手段としての一次転写ローラ52、クリーニング手段としてのクリーニング装置7が配置されている。感光ドラム1の図中下方には露光手段としての露光装置(本実施形態ではレーザースキャナ)3が配置されている。
【0015】
各画像形成部の
図1の上方には、転写装置5が配置されている。転写装置5は、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト51が複数のローラに張設されて、矢印方向に周回移動(回転)するように構成されている。そして、中間転写ベルト51は、後述するように中間転写ベルト51に一次転写されたトナー像を担持して搬送する。中間転写ベルト51を張架するローラのうちの二次転写内ローラ53と中間転写ベルト51を挟んで対向する位置には、二次転写手段としての二次転写外ローラ54が配置され、中間転写ベルト51上のトナー像を記録材に転写する二次転写部T2を構成している。二次転写部T2の記録材搬送方向下流には定着装置6が配置される。
【0016】
画像形成装置100の下部には、記録材Sが収容されたカセット9が配置されている。カセット9から給送された記録材Sは、搬送ローラ91によりレジストレーションローラ92に向けて搬送される。そして、停止状態のレジストレーションローラ92に記録材Sの先端が突き当たり、ループを形成することで記録材Sの斜行を補正する。その後、中間転写ベルト51上のトナー像と同期してレジストレーションローラ92を回転開始させ、記録材Sを二次転写部T2に搬送する。
【0017】
上述のように構成される画像形成装置100により、例えば4色フルカラーの画像を形成するプロセスについて説明する。まず、画像形成動作が開始すると、回転する感光ドラム1の表面が帯電ローラ2によって一様に帯電される。次いで、感光ドラム1は、露光装置3から発せられる画像信号に対応したレーザー光により露光される。これにより、感光ドラム1上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。感光ドラム1上の静電潜像は、現像装置4内に収容された現像剤としてのトナーによって顕像化され、可視像となる。
【0018】
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト51を挟んで配置される一次転写ローラ52との間で構成される一次転写部T1(
図2)にて、中間転写ベルト51に一次転写される。この際、一次転写ローラ52には一次転写バイアスが印加される。一次転写後に感光ドラム1の表面に残ったトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置7によって除去される。
【0019】
このような動作をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各画像形成部で順次行い、中間転写ベルト51上で4色のトナー像を重ね合わせる。その後、トナー像の形成タイミングに合わせてカセット9に収容された記録材Sが二次転写部T2に搬送される。そして、二次転写外ローラ54に二次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト51上の4色のトナー像を、記録材S上に一括で二次転写する。二次転写部T2で転写しきれずに中間転写ベルト51に残留したトナーは、中間転写ベルトクリーナ55により除去される。
【0020】
次いで、記録材Sは定着手段としての定着装置6に搬送される。定着装置6は、内部にハロゲンヒータなどの熱源を有する定着ローラ61及び加圧ローラ62を備え、定着ローラ61と加圧ローラ62とで定着ニップ部を形成する。この定着装置6の定着ニップ部にトナー像が転写された記録材Sを通過させることで、記録材Sが加熱、加圧される。そして、記録材S上のトナーは溶融、混合されて、フルカラーの画像として記録材Sに定着される。その後、記録材Sは排出ローラ101により排出トレイ102に排出される。これにより、一連の画像形成プロセスが終了する。
【0021】
なお、本実施形態の画像形成装置100は、例えばブラック単色の画像など、所望の単色または4色のうちいくつかの色用の画像形成部を用いて、単色またはマルチカラーの画像を形成することも可能である。
【0022】
[現像装置]
次に、現像装置4の詳しい構成について、
図3及び
図4を用いて説明する。現像装置4は、非磁性トナーと磁性を有するキャリアを含む現像剤を収容する現像容器41と、現像容器内の現像剤を担持して回転する現像剤担持体としての現像スリーブ44とを有する。現像容器41内には、現像容器内の現像剤を攪拌・搬送しつつ現像容器内を循環させる現像剤搬送部材としての搬送スクリュー43a、43bが配置されている。また、現像スリーブ44の内部には、回転方向に並んだ複数の磁極を有する磁界発生手段としてのマグネットローラ44aが非回転に配置されている。更に、現像スリーブ44の表面に現像剤の薄層を形成する規制部材としての現像ブレード42が配置されている。
【0023】
現像容器41の内部は、その略中央部が紙面に垂直方向に延在する隔壁41cによって現像室41aと攪拌室41bに水平方向の左右に区画されており、現像剤は現像室41a及び攪拌室41bに収容されている。現像室41a及び攪拌室41bには、搬送スクリュー43a、43bがそれぞれ配置されている。隔壁41cの長手方向両端部(現像スリーブ44の回転軸線方向両端部、
図4の左側及び右側)には、現像室41aと攪拌室41bとの間での現像剤の通過を許す受渡し部41d、41eが設けられている。
【0024】
搬送スクリュー43a、43bは、それぞれ、軸(回転軸)の周りに、搬送部としての螺旋状の羽根を設けて形成されている。また、搬送スクリュー43bには、螺旋状の羽根に加えて、軸からその半径方向に突出し、現像剤の搬送方向に所定の幅を有する攪拌リブ43b1が設けられている。攪拌リブ43b1は、軸の回転に伴って現像剤を攪拌する。
【0025】
搬送スクリュー43aは、現像室41aの底部に現像スリーブ44の回転軸線方向に沿って配置されており、不図示のモータによって回転軸を回すことで現像室41a内の現像剤を軸線方向に沿って搬送しつつ、現像スリーブ44に現像剤を供給する。現像スリーブ44に担持され、現像工程でトナーが消費された現像剤は、現像室41aに回収される。
【0026】
また、搬送スクリュー43bは、攪拌室41b内の底部に現像スリーブ44の回転軸線方向に沿って配置され、攪拌室41b内の現像剤を搬送スクリュー43aとは反対に軸線方向に沿って搬送する。現像剤は、このようにして、搬送スクリュー43a、43bによって搬送され、受渡し部41d、41eを介して現像容器41内を循環する。
【0027】
攪拌室41bの搬送スクリュー43bの搬送方向上流端部には、現像容器41内にトナーを含む現像剤を補給するための現像剤補給口46が設けられている。現像剤補給口46は、後述する
図5に示す現像剤補給装置80の補給搬送部83に接続されている。したがって、補給用の現像剤は、現像剤補給装置80から補給搬送部83及び現像剤補給口46を介して攪拌室41b内に供給される。搬送スクリュー43bは、現像剤補給口46から補給された現像剤と、既に攪拌室41b内にある現像剤とを攪拌しつつ搬送し、トナー濃度を均一化する。
【0028】
したがって、搬送スクリュー43a、43bの搬送力により、現像工程でトナーが消費されてトナー濃度が低下した現像室41a内の現像剤が、一方の受渡し部41d(
図4の左側)を介して攪拌室41b内へ移動する。そして、攪拌室41b内に移動した現像剤は、補給された現像剤と攪拌されつつ搬送され、他方の受渡し部41e(
図4の右側)を介して現像室41aへ移動する。
【0029】
現像容器41の現像室41aには、感光ドラム1に対向した対向領域(現像領域)Aに相当する位置に開口部41hがあり、この開口部41hにおいて現像スリーブ44が感光ドラム1方向に一部露出するように回転自在に配設されている。一方、現像スリーブ44に内包されたマグネットローラ44aは非回転に固定されている。このような現像スリーブ44は、不図示のモータにより回転させられて、現像剤を対向領域Aに搬送可能で、対向領域Aにおいて現像剤を感光ドラム1に供給する。本実施形態では、現像スリーブ44は、非磁性材料として例えばアルミニウムやステンレスにより円筒状に形成されている。また、現像スリーブ44は、対向領域Aにおいて重力方向下方から上方に向かって、即ち、
図3の反時計回り方向に回転する。
【0030】
開口部41hの現像スリーブ44の回転方向上流側には、現像スリーブ44に担持された現像剤の量(層厚)を規制する規制部材としての現像ブレード42が固定されている。本実施形態では、現像スリーブ44が対向領域Aにおいて重力方向下方から上方に向かって回転するため、現像ブレード42は、対向領域Aの重力方向下方に位置する。
【0031】
マグネットローラ44aは、
図3に示すように、周方向に複数の磁極S1、S2、S3、N1、N2極の合計5極を有して、ローラ状に形成されている。このようなマグネットローラ44aは、現像スリーブ44に現像剤を担持させる磁界を発生させると共に、後述する剥離領域で現像スリーブ44から現像剤を剥離させる磁界を発生させる。即ち、現像室41a内の現像剤は、搬送スクリュー43aにより現像スリーブ44に供給される。そして、現像スリーブ44に供給された現像剤は、マグネットローラ44aの吸着用磁極S2(第2磁極)が発生する磁界により、現像スリーブ44上に所定の量が担持され、現像剤溜まりを形成する。
【0032】
現像スリーブ44上の現像剤は、現像スリーブ44が回転することによって、現像剤溜まりを通過し、規制用磁極N1(第3磁極)にて穂立ちして、規制用磁極N1と対向する現像ブレード42によって層厚が規制される。そして、層厚が規制された現像剤は、感光ドラム1と対向する対向領域Aへと搬送され、現像用磁極S1にて穂立ちして磁気穂を形成する。この磁気穂が、対向領域Aにおいて現像スリーブ44と同方向に回転する感光ドラム1に接触し、帯電したトナーによって静電潜像をトナー像として現像する。
【0033】
その後、現像スリーブ44上の現像剤は、搬送用磁極N2により、現像スリーブ44の表面に対する現像剤の吸着を維持されつつ、現像スリーブ44の回転により現像容器41内へと搬送される。そして、現像スリーブ44に担持された現像剤は、現像スリーブ44の回転方向に順に配置された同極の剥離用磁極S3(第1磁極)と吸着用磁極S2により形成された剥離領域で、現像スリーブ44の表面から剥離される。剥離された現像剤は、現像容器41の現像室41aに回収される。
【0034】
なお、現像容器41には、
図4に示すように、現像容器41内のトナー濃度を検知するトナー濃度センサとしてのインダクタンスセンサ45が設けられている。本実施形態では、インダクタンスセンサ45は、攪拌室41bの現像剤搬送方向下流側に設けられている。
【0035】
[現像剤補給装置]
次に、現像剤補給装置80について、
図5を用いて説明する。現像剤補給装置80は、補給用の現像剤を収容する収容容器8と、補給機構81と、補給搬送部83とを有する。収容容器8は、円筒状の容器の内壁に螺旋状の溝を掘った構成となっており、収容容器8自体が回転することで長手方向(回転軸線方向)へと現像剤の搬送力を発生させる。収容容器8の現像剤搬送方向下流端部には、補給機構81に接続されている。補給機構81は、収容容器8から現像剤が搬送される排出口82から排出するポンプ部81aを有する。ポンプ部81aは、蛇腹状に形成され、回転駆動されることで容積が変化して空気圧を発生し、収容容器8から搬送された現像剤を排出口82から排出する。
【0036】
排出口82には、補給搬送部83の上端部が接続されており、補給搬送部83の下端部は、現像装置4の現像剤補給口46に接続されている。即ち、補給搬送部83は、排出口82と現像剤補給口46とを連通させている。したがって、ポンプ部81aにより排出口82から排出された現像剤は、補給搬送部83を通って現像装置4の現像容器41内に補給される。
【0037】
なお、上述の現像装置4において、現像剤補給口46は、攪拌室41bの現像剤搬送方向上流端部で、且つ、現像室41aと攪拌室41bとで形成される現像剤の循環経路の外側に備えられている。具体的には、現像剤補給口46は、一方の受渡し部41dよりも攪拌室41bの現像剤搬送方向上流側に設けられている。したがって、現像剤補給口46の近傍は、現像剤の循環経路の現像剤は殆ど存在せず、補給用の現像剤が通過するのみである。
【0038】
このような現像剤補給装置80による補給は、自動トナー補給制御(以下、「ATR(Automatic Toner Replenisher)制御という)により行われる。このATR制御は、画像形成時の画像比率、インダクタンスセンサ45、トナー像の濃度を検知する濃度センサ103(
図1)によるパッチ画像の濃度検知結果に応じて、現像剤補給装置80の動作を制御して、現像剤を現像装置4に補給するものである。
【0039】
濃度センサ103は、
図1に示すように、中間転写ベルト51の回転方向に関し、最下流の画像形成部PKの下流で、二次転写部T2の上流に、中間転写ベルト51の表面と対向して配置されている。濃度センサ103を用いる制御では、例えば、画像形成ジョブの開始時や所定枚数の画像形成毎などのタイミングで、制御用のトナー像(パッチ画像)を中間転写ベルト51上に転写し、濃度センサ103によりパッチ画像の濃度を検知する。そして、この検知結果に基づいて、現像剤補給装置80による現像剤の補給制御を行う。
【0040】
なお、現像装置4に現像剤を補給する構成は、このような構成に限らず、従来から知られている構成を用いても良い。
【0041】
[現像剤の飛散]
ここで、現像装置から発生する現像剤の飛散について説明する。まず、画像形成装置では、出力画像の高速化や高画質化を求められると共にメンテナンスの簡略化が求められている。このメンテナンス簡略化の中の一つとして画像形成装置内部の現像剤による汚染の低減が挙げられる。画像形成装置内部が現像剤で汚染されると、出力画像の汚れなどの画像不良が発生したり、現像装置や感光ドラムユニットなどの交換時などに清掃作業が発生したりする。また、現像剤がギアなどの各駆動系に付着した場合、駆動系に滑りなどが発生する虞がある。
【0042】
このような画像形成装置内部の現像剤による汚染の原因の一つとして、現像剤が現像装置内から飛散してしまうことが挙げられる。例えば、二成分現像剤の場合、通常、現像装置内部では、トナーとキャリアとが摩擦帯電しているため、トナーとキャリアは静電気力で付着している。しかし、何らかの衝撃でこの付着が解放され、キャリアから遊離したトナーが現像装置内部から気流とともに排出されてしまう現像剤の飛散が発生する虞がある。
【0043】
このような現像剤の飛散について、
図6を用いて説明する。なお、
図6の矢印は気流の流れを、梨地部分は現像剤tを示す。現像容器41は、現像スリーブ44の上方を覆う上壁41kを備える。そして、上壁41kと現像スリーブ44とで構成される現像容器41内部と外部の連通口47には、現像スリーブ44の回転により空気が現像容器41内に流入する空気の流路が形成される。この流路は、感光ドラム1と対向した位置で開口しており、現像容器41内からの現像剤の飛散は、主としてこの流路から発生する。これは、この流路と反対側(
図6の下側)は、現像ブレード42が現像スリーブ44と近接して対向しているためである。即ち、この位置では、現像スリーブ44に担持された現像剤が現像ブレード42に層厚が規制されている状態であり、現像スリーブ44と現像ブレード42との隙間からは空気が流出しにくいためである。
【0044】
ここで、現像剤の飛散とは、現像剤の攪拌・搬送や現像剤の補給によって現像容器41内に生じる遊離トナーなどの現像剤が流路の開口を通って、現像容器41の外部に排出され、現像容器41内に回収しきれないもののことをさす。
【0045】
まず、トナー遊離について説明する。現像容器41に収容されているトナー及びキャリアは、攪拌室41b及び現像室41aにおいて摩擦帯電され、摩擦帯電により生じる静電付着力及び表面性などにより生じる非静電付着力によって、互いに付着している。このキャリアに付着しているトナーに対し衝撃やせん断力を加えられると、トナーがキャリアから引き剥がされ現像容器41内で遊離する。この時の衝撃やせん断力として、現像スリーブ44による現像剤搬送の際の現像剤挙動がある。
【0046】
現像剤は、現像スリーブ44上で、内部の磁極の磁力線に沿ったチェーン状の構造である磁気穂を形成する。この磁気穂は、現像スリーブ44の回転により、磁極直前に回転方向前方に立ち上がり、磁極上を通過すると回転方向前方に倒れる。このとき、磁気穂の回転方向は現像スリーブ44の回転方向と同一方向である。この磁気穂が倒れるときの衝撃や慣性力によって、トナーがキャリアから引き剥がされることがトナー遊離の原因となっている。
【0047】
現像スリーブ44による現像剤搬送の際にトナー遊離への寄与の大きい磁極は、吸着用磁極S2との間で反発磁界を生成する剥離用磁極S3である。この剥離用磁極S3では、現像剤を現像スリーブ44から剥離するため、磁極によって現像スリーブ44の回転方向と逆方向の磁気力を加え、搬送される現像剤の速度を落とし、現像剤を滞留させる。そして、現像スリーブ44の外周面のうち、剥離用磁極S3の磁界の大きさの現像スリーブ44の法線方向成分が極大(接線方向成分が極小)となる点を中心とした現像剤滞留部(現像剤溜り)αが形成される。このとき、現像スリーブ44の表面を搬送される現像剤流量は保存されるため、磁気穂の長さが長くなる。磁気穂が長くなると、磁気穂が倒れるときの衝撃や慣性力が大きくなり、トナー遊離量が増加する傾向がある。なお磁気穂が倒れるときの衝撃は、現像用磁極S1や搬送用磁極N2でも発生するため、剥離用磁極S3よりは少ないものの現像用磁極S1や搬送用磁極N2でもトナー遊離は発生する。
【0048】
また、現像剤補給装置80からの現像剤補給口46に現像剤が補給される際に、十分に攪拌される前に舞い上がった現像剤も、現像容器41内で遊離トナーの要因となっている。現像剤補給口46に供給されたトナーは、既に攪拌室41b内にある現像剤と攪拌されつつ搬送される。このとき、補給現像剤と既にある現像剤の混合領域では、一時的にトナーと現像剤の混合比が高くなる。トナーと現像剤の混合比が高い場合、トナーの帯電量が低下し、トナーとキャリア間の静電付着力が低下する。現像剤と混合しきれなかったトナーはそのまま、若しくは、搬送スクリュー43a、43bによる現像剤の攪拌・搬送時の衝撃で遊離され、遊離トナーが現像容器401内で舞い上がる。
【0049】
更に、ポンプ部81aによって発生する空気圧で排出される現像剤補給装置80を用いた場合、その空気圧が補給搬送部83を通じて伝搬し、現像剤補給口46から現像容器41に空気の流入を生じる場合がある。このとき流入した気流は、現像剤補給口46近傍のトナーと現像剤の混合比が高い部分での遊離トナーを現像容器41内に巻き上げる。また、この現像容器41への空気圧伝搬は、現像剤補給口46から攪拌室41bにかけて非定常な気圧の上昇を生じさせる。この気圧の上昇は、後述するように、遊離トナーを現像容器41の外部に流出させる要因になる。特に、このような現像剤補給による流入空気は、現像容器41の長手方向(現像スリーブ44の回転方向と交差する方向、回転軸線方向)に関し、現像剤補給口46を含む側の端部における現像剤の飛散の原因の一つとなる。
【0050】
次に、現像装置4の内部及び近傍の気流について説明する。現像装置4の近傍において気流を生成するのは、現像スリーブ44及び感光ドラム1である。ここではそれぞれ説明する。まず、現像スリーブ44の回転及び磁極上の磁気穂挙動により、現像スリーブ44の回転方向と略同方向に気流が生成される。この現像スリーブ44の回転方向と略同方向に生成される気流は、現像容器41内部と現像容器41外部の連通口47から現像容器41内部に空気を取り込む。また、現像容器41には現像剤の補給によっても空気が流入する。
【0051】
現像容器41を略閉空間と仮定すると、空気は流体であるため連続の方程式が適用できる。空気の流速をv、密度をρとすると、次の式(1)が成り立つ。
【数1】
【0052】
更に、定常状態を考えると、内圧が大気圧より高い状態で一定で安定するため、現像容器41内の各領域において密度ρは時間変化がないとみなせ、式(1)は次の式(2)のように記述できる。
【数2】
【0053】
この式(2)から、空気の流量ρvは保存される。現像装置4近傍の長手方向の断面では流量ρvの収支は0となり、現像スリーブ44と補給によって流入する空気流量と同一の量を、現像装置4外に排出することになる。ここで、現像容器41の上壁41kと現像スリーブ44とで構成される連通口47を通して現像スリーブ44の回転に伴い現像容器41内に流入する空気流量をIa(スリーブ流入)とする。また、現像容器41内部と現像容器41外部の連通口47から排出される空気流は、この連通口47から取り込まれる流れに対向するように上壁41k側を通る。このように排出される空気流量をIb(スリーブ排出)とする。更に、現像装置4への補給に伴って流入する空気流量をId(補給流入)とすると、次の式(3)の関係が成り立つ。
【0054】
Ia(スリーブ流入)+Id(補給流入)=Ib(スリーブ排出)・・・(3)
現像スリーブ44によって取り込まれ、現像スリーブ44に沿って流れる気流は、現像容器41内で折り返して排出される。この際、剥離用磁極S3の現像剤滞留部αで、現像スリーブ44から剥離した現像剤を含んで、気流が折り返されると、その気流は、現像容器41内で発生した遊離トナーなどの現像剤を多く含んで排出方向に向かうことになる。
【0055】
[現像装置の長手方向における気流]
次に、
図7を用いて、現像装置4近傍の長手方向における気流について説明する。
図7の矢印は、現像装置4内における気流の流れを示している。上述のように現像容器41の内圧が上昇した状態で気流収支の均衡が保たれる。この気流収支の均衡において、現像容器41内の上壁41k側を通って排出される空気流量Ibに対して、反発磁界を生成する剥離用磁極S3近傍で滞留している現像剤(
図6の現像剤滞留部α)が気流の流路を制限し圧力損失を生じている。
【0056】
この剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの現像剤量は、現像容器41の長手方向の位置によって異なる。
図7のL1で示す位置である現像容器41の長手方向中央部においては、剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの現像剤量が多い。観察用に用いた現像装置(後述する検証実験に用いたものと同様のもの)では、現像剤滞留部αと現像容器41の距離が約2mmとなっていた。一方、
図7のL2、L3で示す位置である現像容器41の長手方向両端部における剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの現像剤量は、長手方向中央部に比べて少ない。そのため、現像剤滞留部αと現像容器41の距離が約3mmとなっていた。
【0057】
なお、現像剤滞留部αと現像容器41の距離とは、次のように形成された現像剤滞留部αの先端と、この先端と対向する現像容器41の壁部41fとの最短距離である。壁部41fは、現像スリーブ44の感光ドラム1と反対側で、且つ、隔壁41c及び現像室41aの上方に配置され、上端部が上壁41kと連続する壁である。現像剤滞留部αと現像容器41の距離を測る際には、後述する検証実験と同様に、現像装置4を通常使用される角度(例えば、水平)で設置した状態で所定時間(例えば、A4用紙1枚以上)駆動して停止する。このとき、現像スリーブ44の周面に担持されている現像剤のうち、剥離用磁極S3近傍に、
図6に示すように、現像剤滞留部αが現像スリーブ44に担持された状態で形成される。現像スリーブ44と現像容器41との距離は既知であるため、現像剤滞留部αの高さを計測することで、現像剤滞留部αと現像容器41との距離を測ることができる。
【0058】
一般的には、
図8に示すように、マグネットローラ44aの隣り合う同極の磁極(ここでは、剥離用磁極S3と吸着用磁極S2)の磁力線は交叉しないように伸びることが知られている。内部にマグネットローラ44aが配置される現像スリーブ44の長手方向中央部においては、磁界が長手方向に均一であるので、剥離用磁極S3からの磁力線はマグネットローラ44aの中心線に直交する断面内に留まる。
【0059】
しかし、現像スリーブ44の長手方向両端部においては、マグネットローラ44aの端面の外側には磁極が存在しないため、剥離用磁極S3からの磁力線はマグネットローラ44aの中心線に直交する断面内に留まらない。そして、剥離用磁極S3からの磁力線は、3次元的に現像スリーブ44の端部方向に向けて伸びる。このため、剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの磁気穂は、磁力線の影響で現像スリーブ44の端部方向に流れる。
【0060】
この結果、現像スリーブ44の長手方向両端部における剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの現像剤量が、長手方向中央部における剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの現像剤量より相対的に少なくなる。このように現像剤滞留部αの現像剤量が少ない長手方向両端部の領域は、現像スリーブ44が現像剤を担持する担持領域(コート領域)の両端から、それぞれ長くてもコート領域の長さの10%以下(例えば、40mm以下)の領域である。なお、コート領域は、現像スリーブ44の表面上に現像剤が担持される領域であり、例えば、現像スリーブ44の両端部に現像剤の担持領域を規制する規制板(例えば磁性板)がある場合には、この規制板の位置が、コート領域の両端となる。
【0061】
このように現像剤滞留部αの現像剤量が長手方向両端部で中央部よりも少ないと、
図7に矢印で示すように、長手方向両端部における現像スリーブ44の長手方向(回転軸線)に直交する断面の流路は中央部に比べて広くなる。したがって、長手方向中央部では相対的に現像容器41の内圧の上昇に対して気流を排出しづらく、長手方向両端部では気流を排出しやすい。そして、現像容器41内の現像スリーブ44の回転方向に関して剥離用磁極S3よりも下流の空間において、長手方向中央部から両端部に向かう横流れの気流が発生する。この結果、現像容器41内部と現像容器41外部の連通口47(
図6)から排出される気流は、現像容器41の長手方向両端部の方が中央部よりも大きくない、長手方向両端部におけるトナー飛散が増加する。
【0062】
[現像容器と現像スリーブとの距離]
そこで、本実施形態では、現像容器41の長手方向において、現像容器41と現像スリーブ44との距離を変更するようにしている。この点について、
図9ないし
図12を用いて説明する。ここで、
図9は、後述するように現像装置4を壁部41fから突出する突部48a、48bを含むように水平方向に切断した断面図である。また、
図10(a)は
図7のL3位置における断面図、
図10(b)は
図7のL1位置における断面図、
図10(c)は
図7のL2位置における断面図である。
図11は、
図7のL1、L3位置におけるマグネットローラ44aの磁力線を模式的に示した図であり、
図12は、本実施形態の別例で、
図7のL1、L3位置におけるマグネットローラ44bの磁力線を模式的に示した図である。なお、
図12に示す別例の現像装置4Bは、マグネットローラ44bの磁力線が異なるだけで、他の構成は、本実施形態の現像装置4と同じである。
【0063】
上述のように、現像装置4の長手方向両端部では、剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの現像剤量が中央部よりも少なく、圧力損失が小さいため、排出気流が大きくなる。そこで、本実施形態では、この領域の流路を狭くすることで圧力損失を大きくし、この領域から飛散するトナーの量を低減するようにしている。即ち、剥離用磁極S3近傍の現像スリーブ44の表面と、それに対向する現像容器41の壁部41fとの距離Gを、長手方向両端部で中央部に対して近接させることで、流路を狭くしている。
【0064】
具体的には、現像容器41は、現像スリーブ44が現像剤を担持する担持領域(コート領域)の剥離用磁極S3近傍において、一対の端部領域440a、440bとの距離を、中央領域441との距離よりも小さくしている。一対の端部領域440a、440bの範囲については後述する。また、中央領域441は、長手方向に関して一対の端部領域440a、440bよりも中央側の領域である。
【0065】
このために本実施形態では、現像容器41は、一対の端部領域440a、440bと対向する部分に、中央領域441と対向する部分よりも現像スリーブ44に向かって突出する突部48a、48bを有する。即ち、
図10(a)、(c)、
図11及び
図12に示すように、一対の端部領域440a、440bと対向する部分である現像容器41の壁部41fの長手方向両端部に、現像スリーブ44に向けて突出する突部48a、48bを形成する。一方、
図10(b)に示すように、中央領域441と対向する部分である壁部41fの長手方向中央部には、このような突部を形成しない。
【0066】
上述の剥離用磁極S3近傍の領域は、現像スリーブ44の表面のうち、現像スリーブ44の回転方向に関して少なくとも剥離用磁極S3(第1磁極)の磁界の大きさの現像スリーブ44の法線方向成分が極大となる点(ピーク位置)を含む領域である。即ち、
図11及び
図12に示すように、突部48a、48bは、現像スリーブ44の表面のうち、少なくとも剥離用磁極Sのピーク位置(破線)を含む領域と、現像スリーブ44の径方向に対向するように形成されている。
【0067】
また、現像容器41の一対の端部領域440a、440bとの距離が中央領域441よりも小さい領域、即ち、突部48a、48bの領域は、現像スリーブ44の断面方向に関して、剥離用磁極S3の磁力の半値幅を含む領域とすることが好ましい。即ち、突部48a、48bは、現像スリーブ44の回転方向に関して、剥離用磁極S3の磁力の半値幅を含む領域と対向することが好ましい。
【0068】
この理由を説明する。まず、現像スリーブ44の回転方向に関しては、剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの最も穂立ちしている部分を覆うように、現像容器41と現像スリーブ44とを近接させることが望ましい。現像容器41と現像スリーブ44を近接させる場合、現像剤の滞留の発生や、部品公差による現像スリーブ44と現像容器41との接触などが懸念される。例えば、現像容器41の開口部41hと現像スリーブ44との隙間を小さくした場合、部品公差により現像スリーブ44と現像容器41とが接触しやすくなる。また、この場合、現像スリーブ44に担持された現像剤が現像容器41内と容器外とに別れて、現像剤が容器外に飛散する虞もある。このため、開口部41hと現像スリーブ44との隙間を小さくしにくい。
【0069】
一方、剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの最も穂立ちしている部分は、現像剤滞留部αにおいて、剥離用磁極S3の磁界の大きさの現像スリーブ44の法線方向成分が極大となる点である。このため、この部分に現像容器41を近接させるようにすれば、現像容器41を現像スリーブ44にそれ程近づけなくても、現像剤滞留部αの最も穂立ちしている部分と現像容器41とで、気流が流れる流路の圧力損失を大きくできる。また、現像容器41と現像スリーブ44との距離をある程度確保できれば、部品公差により現像容器41と現像スリーブ44とが接触することを抑制できる。
【0070】
また、剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの最も穂立ちしている部分は、現像スリーブ44の表面の現像剤搬送力が強く、且つ、現像剤の嵩密度も低い。このため、この部分の隙間を小さくしても現像剤の滞留が発生しにくい。これに対して、剥離用磁極S3の現像剤滞留部αの最も穂立ちしている部分よりも現像スリーブ44の回転方向下流側で吸着用磁極S2の影響で現像スリーブ44の回転中心方向への磁力が0N以下となる部分では、現像スリーブ44の現像剤搬送力が得られない。即ち、この部分では、現像スリーブ44から離間方向に斥力として磁気力が働く状態となり、現像剤が現像スリーブ44から離間した後では、現像スリーブ44の現像剤搬送力の効果を得ることができない。このため、この部分で現像容器41を現像スリーブ44に近づけすぎると、現像剤が滞留してしまう可能性がある。
【0071】
そこで、現像容器41を現像スリーブ44に近接させる位置は、反発領域の影響で現像スリーブ44の回転中心方向への磁力が0N以下となる点よりも現像スリーブ44の回転方向上流で現像スリーブ44上に現像剤を担持した状態である点が好ましい。更に、現像スリーブ44上で最も穂立ちする部分は、剥離用磁極S3近傍によって生じる磁力線が現像スリーブ44に対してほぼ垂直(現像スリーブ44の回転による移動方向に対して垂直)となる部分である。
【0072】
現像スリーブ44上の磁界の大きさを現像スリーブ44の接線方向成分と法線方向成分に分けた場合、磁界の大きさの法線方向が極大となる点、即ち、接線方向成分が極小になる点で現像剤が最も穂立ちする。したがって、現像容器41を現像スリーブ44に近接させる位置、即ち、突部48a、48bを形成する位置は、現像スリーブ44の回転方向に関して、少なくとも剥離用磁極S3の磁界の大きさの法線方向成分が極大となる点を含む領域が良いことがわかる。この領域で現像スリーブ44と現像容器41を近接させることにより、この部分を流れる気流の圧力損失を効果的に大きくできる。
【0073】
また、突部48a、48bの現像スリーブ44の回転方向の長さ、説明の便宜上、
図10(a)、(c)、
図11及び
図12の上下方向の長さは、次のようにしている。
図10(a)、(c)
図11及び
図12では、突部48a、48bの上方には、上壁41kとの間に空間49が形成されているが、突部48a、48bは、上壁41kと連続するように形成しても良い。また、突部48a、48bの
図10(a)、(c)
図11及び
図12の下端は、壁部41fの下端と同じとしているが、この下端の位置は、上述の条件を満たせば、この位置よりも上であっても下であっても良い。
【0074】
但し、この下端の位置は、吸着用磁極S2のピーク位置(吸着用磁極S2の磁界の大きさの現像スリーブ44の法線方向成分が極大となる位置)までとする。本実施形態では、吸着用磁極S2のピーク位置を通る水平線を含み、この水平線よりも上方に、突部48a、48bの下端が位置するようにする。
【0075】
このように突部48a、48bの上端及び下端を規制するのは、できるだけ突部48a、48bの上下方向(現像スリーブ44の回転方向)の長さを大きくするためである。また、これと共に、現像スリーブ44から剥離した現像剤ができるだけ吸着用磁極S2近傍に落下しないようにするためである。前者の理由は、現像容器41と現像スリーブ44とを組み付ける際に、製造誤差などにより突部48a、48bと現像スリーブ44の上下方向の位置が若干ずれても、突部48a、48bを一対の端部領域440a、440bに対向させるためである。
【0076】
後者の理由は、現像スリーブ44から剥離した現像剤が吸着用磁極S2近傍に落下した場合、そのまま吸着用磁極S2に吸着される虞があるためである。現像スリーブ44から剥離した現像剤は、現像によりトナーが消費されトナー量が少ない状態であるため、この状態のまま現像スリーブ44に吸着されて、再度、現像に使用された場合、画像濃度に影響を与えてしまう。このため、突部48a、48bの下端の位置は、吸着用磁極S2のピーク位置を通る水平位置までとしている。
【0077】
なお、突部48a、48bの現像スリーブ44と対向する面は、図示の例の場合、鉛直方向と略平行な平坦面としているが、鉛直方向に傾斜した傾斜面などとしても良い。平坦面とした場合、製造誤差などにより突部48a、48bと現像スリーブ44の上下方向の位置が若干ずれても、後述するように、現像容器41と現像スリーブとの間の最も塞ぎたい位置である剥離用磁極S3のピーク位置を含む領域と対向させ易い。また、傾斜面とした場合、例えば、下方に向かう程、現像スリーブ44から離れるように傾斜させれば、剥離用磁極S3のピーク位置を含む領域との距離を短くしつつ、吸着用磁極S2に近い位置で現像スリーブ44との距離を大きくできる。これにより、現像スリーブ44から剥離した現像剤が、すぐに現像スリーブ44に吸着されにくくしやすい。
【0078】
また、突部48a、48bの現像スリーブ44と対向する面を、湾曲面としたり、傾斜が異なる複数面により構成したりして、現像スリーブ44の周囲の一部を覆うようにしても良い。この場合、剥離用磁極S3の現像スリーブ44の回転方向上流の搬送用磁極N2のピーク位置を含むようしても良い。但し、現像スリーブ44と上壁41kとの隙間が小さくなり過ぎないようにすることが好ましく、少なくとも突部が現像容器41の開口部41hに到達しないようにする。
【0079】
次に、現像容器41を現像スリーブ44に近接させる位置、即ち、突部48a、48bを形成する長手方向の位置及び領域について説明する。現像スリーブ44の長手方向においては、上述したように、現像スリーブ44の長手方向両端部における剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの現像剤量が少ない領域から内圧が抜ける傾向がある。これは、上述した通り、現像スリーブ44の長手方向両端部では、磁力線が端部方向に流れ込み、現像剤の剥離方向が磁力線に引っ張られて端部側に流れるためである。このため、現像スリーブ44と現像容器41を近接させる領域は、剥離領域において剥離された現像剤の落下方向が端部側に流れている領域に対応する領域とすることが好ましい。
【0080】
ここで、現像スリーブ44から剥離された現像剤の落下方向が端部側に流れている領域とは、以下の通りである。まず、現像剤が剥離して落下する面に対して、剥離領域(磁力の現像スリーブ44回転中心方向成分が0N以下の領域)を投影した範囲の現像剤挙動を観察する。このとき、剥離した現像剤の移動速度の方向成分を重力方向とそれに垂直な長手方向に分けた場合、長手方向1mm当たりの平均速度が重力方向成分に対し、長手方向端部に向かう長手端部方向に3%以上の割合を持つ領域を指す。即ち、剥離領域において剥離した現像剤が長手方向に1mm移動する所定時間(例えば、5〜10秒)における平均速度を、重力方向成分と、長手方向に関して現像スリーブ44の端部方向に向かう長手端部方向成分に分ける。この場合に、一対の端部領域440a、440bは、長手端部方向成分が重力方向成分に対して3%以上の割合を有する領域である。
【0081】
したがって、長手方向に関しては、少なくともこの領域に対応する回転方向上流の剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αに現像容器41を近接させることが良い。更に、公差などを含み十分な効果を発揮するには、この範囲から長手方向内側に5mm以上の領域を近接させることが好ましい。このために本実施形態では、一対の端部領域440a、440bは、現像スリーブ44の長手方向に関し、コート領域の両端からそれぞれコート領域の長さの3%以上(例えば、10mm以上)の長さを有する領域としている。
【0082】
一方、長手方向において現像容器41を現像スリーブ44に近接させる範囲が長すぎる場合は、現像装置内の内圧の上昇が顕著になり、上述のような対策を行っても端部から気流が流出する可能性がある。このため、近接させる長手方向の範囲は、コート領域の長手方向全体の長さの1/5以下にする。
【0083】
本実施形態では、一対の端部領域440a、440bのコート領域の両端からの長手方向の長さは、それぞれコート領域の長手方向の長さの10%以下(例えば、40mm以下)とすることが好ましい。これは、上述したように、剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの現像剤量が少ない長手方向両端部の領域は、コート領域の両端から、それぞれ長くてもコート領域の長さの10%以下(例えば、40mm以下)の領域であるためである。したがって、突部48a、48bは、長手方向に関しては、このような長さを有する一対の端部領域440a、440bと対向する位置及び長さとしている。
【0084】
また、このように現像容器41を現像スリーブ44に近接させる領域の圧力損失を大きくするためには、現像スリーブ44の表面とそれに対向する部分である現像容器41の突部48a、48bとの距離Gは、近いほど効果的である。更に圧力損失を最大にする、即ち、流路を遮断するように現像剤と剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αと現像容器41が接触している状態が望ましい。即ち、現像容器41は、一対の端部領域440a、440bと対向する部分(突部48a、48b)が、現像スリーブ44に担持された現像剤と接触するように形成されていることが好ましい。特に、剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの最も穂立ちしている部分が突部48a、48bに接触するようにすることが好ましい。
【0085】
ここで、現像剤が接触している状態とは、後述する検証実験と同様に、現像装置4を通常使用される角度で設置した状態で駆動し、所定時間後に停止した状態で、現像スリーブ44に担持された現像剤が突部48a、48bに接触している状態をさす。一方、現像剤を現像容器41に接触させる場合、現像スリーブ44表面とそれに対向する現像容器41の距離が近すぎると現像剤の滞留が発生する。そのため、この領域の現像剤の規制を、現像ブレード42と規制用磁極N1(第3磁極)での層厚規制よりも緩和することが好ましい。
【0086】
層厚規制時の磁気穂は、磁場の強さに依存する。ここで、一対の端部領域440a、440bと現像容器41の突部48a、48bとの距離をG1、剥離用磁極S3の磁力をH1、現像ブレード42と現像スリーブ44との距離をG2、規制用磁極N1の磁力をH2とする。この場合に、G1×H1>G2×H2を満たすことが好ましい。
【0087】
上述のように本実施形態では、現像容器41は、現像スリーブ44のコート領域の剥離用磁極S3近傍において、一対の端部領域440a、440bとの距離を、中央領域441との距離よりも小さくしている。このため、剥離用磁極S3近傍の現像剤滞留部αの現像剤量が中央部よりも少ない、現像装置4の長手方向両端部における圧力損失を大きくでき、長手方向両端部からの現像剤の飛散を抑制できる。
【0088】
[検証実験]
次に、上述の実施形態の効果を確認するために行った検証実験について説明する。検証では、上述の第1の実施形態の構成の現像装置4を用いて、現像装置4の駆動時の現像容器41の開口部近傍からのトナー飛散量の測定を実施した。現像装置4の条件は、以下の通りである。
【0089】
まず、現像スリーブ44の回転方向については、現像スリーブ44の表面から0.1mmの磁場を測定し、成分を現像スリーブ44の接線方向と法線方向に分けた。そして、剥離領域の上流、且つ、剥離用磁極S3近傍で接線方向成分が極小となる領域(法線方向成分が極大となる領域)から現像スリーブ44回転方向上流に6mm、下流に4mmとなる領域に、現像容器41の突部48a、48bを近接させた。
【0090】
現像スリーブ44の長手方向については、現像容器41を外し、現像スリーブ44から剥離した現像剤を撮影し、PIV(粒子追跡法)を用いて速度成分を導出した。その結果、コート領域の両端より約4mmの部分で長手方向1mm当たりの現像剤の平均速度が、重力方向成分に対し長手端部方向成分が3%以上の割合を持っていた。このため、コート領域の両端からそれぞれ10mmの領域に、現像容器41の突部48a、48bを近接させた。
【0091】
また、検証実験で用いた現像装置4は、現像ブレード42と現像スリーブ44表面との距離G2が300μm、規制用磁極N1の磁力H2が65mT、剥離用磁極S3の磁力H1が35mTであった。G1×H1>G2×H2の関係を満たすため、一対の端部領域440a、440bと現像容器41の突部48a、48bとの距離G1を1mmとした。
【0092】
次に、今回の検証実験で採用したトナー飛散量の計測方法の概略について述べる。現像装置4の飛散トナーは、上壁41kのドラム対向領域と感光ドラム1との間である気流を通過し外部へ飛散する。そこで、現像スリーブ44や感光ドラム1と垂直になるように気流の略中央に対してラインレーザーを照射した。ラインレーザーとは、一定の線幅を持つライン状に照射され扇形の2次元平面の光路を形成するレーザーであり、通常ドットレーザーをシリンドリカルレンズによって一定方向に散乱させることによって作成する。ラインレーザーの光路上を飛翔している飛散トナーは、レーザー光を散乱させる。そのためラインレーザーの照射方向と略垂直な方向からハイスピードカメラなどで観察することにより、レーザーを照射した範囲に存在する飛散トナーの個数や軌跡を計測することが可能である。
【0093】
ラインレーザーは、光源として日本レーザー社製のYAGレーザーを使用し、シリンドリカルレンズをライン幅が0.5mmとなるように調整し照射した。観察は、フォトロン社製のハイスピードカメラSA−3を使用し、ラインレーザー上の飛散トナーが観察できるようにハイスピードカメラの設定値(フレームレートや露光時間)や光学系(レンズなど)を選定した。
【0094】
以上の方法で、現像装置4からの飛散トナー数を測定し、ライン幅と観察時間からA4用紙1枚当たりに相当する飛散トナー数に換算した。
【0095】
検証実験において、現像装置4は、Canon製imageRUNNER ADVANCE C3530の現像装置を改装し、第1の実施形態の構成(実施例1)とし、第1の実施形態のような突部48a、48bがない構成を比較例とした。トナーは、ポリエステルを母体とした中心粒径6.6μmのものに外添剤としてシリカや酸化チタンを加え流動性や帯電量を調整したものを使用した。キャリアは、フェライトをアクリル樹脂でコートした中心粒径35μmのものを使用した。トナー濃度は、現像剤の総量に対してトナー重量が10%となるように調整した。
【0096】
現像装置4と感光ドラム1をimageRUNNER ADVANCE C3530本体と同様な位置関係で保持・駆動できる切り出し実験機を製作し、感光ドラムを線速度264mm/sで駆動した。室温23度、湿度50%の環境のもと、画像濃度40%で100枚出力した後、上述の条件で検証実験を行った。
【0097】
図13に検証実験の結果を示す。
図13の横軸は現像スリーブ44のコート領域の長手方向位置で、縦軸がA4用紙1枚当たりに相当する飛散トナー数である。
図13から明らかなように、比較例では、長手方向中央部に比べて両端部における飛散トナー数が極端に多かった。実施例1の構成では、長手方向両端部(片端部、他端部)での飛散トナー数が比較例に比べて減少し、中央部では微増した。以上より、実施例1の構成は、比較例の構成と比較して、汚れの主要因である長手方向両端部からのトナー飛散を抑制できることがわかった。
【0098】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について、
図14及び
図15(a)、(b)を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、突部48a、48bの上方の空間49を形成する突部48a、48bの上面(空間を形成する底面)は、略水平に形成した。これに対して本実施形態では、この底面を傾斜せるようにした。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様であるため、同じ構成については同じ符号を付して説明及び図示を省略又は簡略にし、以下、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0099】
本実施形態の現像装置4Aも、現像容器41Aは、現像スリーブ44のコート領域の剥離用磁極S3近傍において、一対の端部領域440a、440bとの距離を、中央領域441との距離よりも小さくしている。このために現像容器41Aは、一対の端部領域440a、440bと対向する部分に、中央領域441と対向する部分よりも現像スリーブ44に向かって突出する突部48Aa、48Abを有する。そして、突部48Aa、48Abの上方には、上壁41kとの間に空間49Aが形成されている。
【0100】
この空間49Aは、次のような理由で、現像容器41から飛散する現像剤の量を低減し得る。即ち、現像容器41内から外に空気が排出される際に、空間49A内で現像剤を含んだ空気が循環することで、現像剤があまり含まれていない状態で排出される。このため、現像容器41から飛散する現像剤の量を低減し得る。但し、この空間49Aには、現像剤の滞留などによって現像剤が溜まる可能性がある。そして、空間49Aを形成する底面50a、50b(突部48Aa、48Abの上面)に現像剤が溜まると、この溜まった現像剤が一気に崩れたときに、現像剤を現像スリーブから十分に剥離できず、剥離不良として出力画像に現れる。そこで、本実施形態では、第1の実施形態の構成の機能を持たせたまま、この部分に現像剤を溜めにくい構成としている。
【0101】
具体的には、空間49Aを形成する底面50a、50bは、
図14に示すように、現像スリーブ44に向かう程下方に、水平方向に対して角度θ1で傾斜している。そして、現像剤の安息角をαとした場合に、θ1>αを満たすようにしている。これにより、底面50a、50bに堆積した現像剤を崩れやすくし、底面50a、50b上に現像剤を溜まりにくくしている。
【0102】
一方、底面50a、50b上に堆積した現像剤が崩れて流れ落ちる際に、現像スリーブ44の長手方向両端側に流れると、長手方向端部のトナー飛散が増加する虞がある。このため、本実施形態では、底面50a、50bは、
図15(b)に示すように、長手方向に関して中央に向かう程下方に、水平方向に対して角度θ2で傾斜している。これにより、底面50a、50bから流れ落ちる現像剤が長手方向中央側に流れ、端部側に流れることを抑制できる。
【0103】
但し、θ2が大きすぎる場合には、中央側に現像剤が集中して現像スリーブ44からの現像剤の剥離不良が生じる虞がある。このため、θ2<αを満たすようにしている。まとめると、底面50a、50bは、0<θ2<αを満たし、更には、θ1>α>θ2>0を満たす。
【0104】
このように本実施形態では、突部48Aa、48Abの上方に空間49Aがあっても、空間49Aを形成する底面50a、50bを上述のように傾斜させている。このため、底面50a、50b上に現像剤が溜まることを抑制し、剥離不良による画像不良の発生を抑制できる。
【0105】
なお、本実施形態の構成(実施例2)についても、上述の実施例1と同様に検証実験を行った。検証実験の条件は、上述した場合と同じである。検証実験で使用したトナーとキャリアの組み合わせの現像剤は、使用後の安息角が約40度だった。このため、検証実験で使用した実施例2の構成では、θ1を45度、θ2を30度とした。
【0106】
この検証実験の結果を、上述の
図13に示す。実施例2の構成においても、実施例1とほぼ同等な効果を示した。以上より、実施例2の構成も実施例1の構成と同様に、比較例の構成と比較して、汚れの主要因である長手方向両端部からのトナー飛散を抑止できることがわかった。
【0107】
<他の実施形態>
上述の各実施形態では、画像形成装置としてプリンタを用いた場合について説明したが、本発明は、プリンタ以外に、複写機、ファクシミリ、複合機などの画像形成装置にも適用可能である。
【0108】
また、上述の各実施形態では、現像装置として、現像室から現像スリーブに現像剤を供給し、現像スリーブから剥離された現像剤を現像室で回収する構成について説明した。但し、本発明は、現像スリーブに現像剤を供給する現像室と、現像スリーブから現像剤を回収する回収室とを分けた、所謂、機能分離型の構成にも適用可能である。