(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態で使用するインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成図である。図において、x方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
【0011】
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFで自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。
図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
【0012】
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
【0013】
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8(プラテン9)の上流側および下流側に配され、搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、排出モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8(プラテン9)の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
【0014】
記録装置1には、上記駆動ローラを駆動するための複数のモータが設けられており、上記駆動ローラのそれぞれは、複数のモータのうちの1つに接続されている。モータと駆動ローラの対応関係については後に詳しく説明する。
【0015】
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
【0016】
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、
図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、
図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。記録ヘッド8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
【0017】
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
【0018】
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う。メンテナンス動作については後に詳しく説明する。
【0019】
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
【0020】
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
【0021】
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi−Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
【0022】
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
【0023】
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して
図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。
【0024】
搬送制御部207は、記録媒体Sの搬送状態を検知する検知部212と、複数の駆動ローラを駆動する駆動部211とに接続しており、検知部212から得られる検知結果に基づいて駆動部211を用いて記録媒体Sの搬送を制御する。検知部212は、記録媒体Sの有無を検知する検知部材20と駆動ローラの回転量を検出するエンコーダ21を有している。
【0025】
搬送制御部207によって記録媒体Sが搬送される過程で、プリントコントローラ202の指示に従って、記録ヘッド8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
【0026】
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
【0027】
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
【0028】
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。
図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
【0029】
記録ヘッド8を
図1に示す待機位置から
図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を
図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ヘッド8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
【0030】
次に、プリント部2における記録媒体Sの搬送経路について説明する。記録コマンドが入力されると、プリントコントローラ202は、まず、メンテナンス制御部210およびヘッドキャリッジ制御部208を用いて、記録ヘッド8を
図3に示す記録位置に移動する。その後、プリントコントローラ202は搬送制御部207を用い、記録コマンドに従って第1給送ユニット6Aおよび第2給送ユニット6Bのいずれかを駆動し、記録媒体Sを給送する。
【0031】
図4(a)〜(c)は、第1カセット5Aに収容されているA4サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第1カセット5A内の1番上に積載された記録媒体Sは、第1給送ユニット6Aによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
図4(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、第1給送ユニット6Aに給送されて記録領域Pに到達する間に、水平方向(x方向)から、水平方向に対して約45度傾いた方向に変更される。
【0032】
記録領域Pでは、記録ヘッド8に設けられた複数の吐出口から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。インクが付与される領域の記録媒体Sは、プラテン9によってその背面が支持されており、吐出口面8aと記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された後の記録媒体Sは、搬送ローラ7と拍車7bに案内されながら、先端が右に傾いているフラッパ11の左側を通り、ガイド18に沿って記録装置1の鉛直方向上方へ搬送される。
図4(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、水平方向に対し約45度傾いた記録領域Pの位置から、搬送ローラ7と拍車7bによって鉛直方向上方に変更されている。
【0033】
記録媒体Sは、鉛直方向上方に搬送された後、排出ローラ12と拍車7bによって排出トレイ13に排出される。
図4(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。排出された記録媒体Sは、記録ヘッド8によって画像が記録された面を下にした状態で、排出トレイ13上に保持される。
【0034】
図5(a)〜(c)は、第2カセット5Bに収容されているA3サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第2カセット5B内の1番上に積載された記録媒体Sは、第2給送ユニット6Bによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
【0035】
図5(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。第2給送ユニット6Bに給送されて記録領域Pに到達するまでの搬送経路には、複数の搬送ローラ7とピンチローラ7aおよびインナーガイド19が配されることで、記録媒体SはS字上に湾曲されてプラテン9まで搬送される。
【0036】
その後の搬送経路は、
図4(b)および(c)で示したA4サイズの記録媒体Sの場合と同様である。
図5(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。
図5(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
【0037】
図6(a)〜(d)は、A4サイズの記録媒体Sの裏面(第2面)に対して記録動作(両面記録)を行う場合の搬送経路を示す。両面記録を行う場合、第1面(表面)を記録した後に第2面(裏面)に記録動作を行う。第1面を記録する際の搬送工程は
図4(a)〜(c)と同様であるので、ここでは説明を省略する。以後、
図4(c)以後の搬送工程について説明する。
【0038】
記録ヘッド8による第1面への記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、プリントコントローラ202は、搬送ローラ7を逆回転させて記録媒体Sを記録装置1の内部へ搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が左側に傾くように制御されるため、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)はフラッパ11の右側を通過して鉛直方向下方へ搬送される。
図6(a)は、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)が、フラッパ11の右側を通過する状態を示す。
【0039】
その後記録媒体Sは、インナーガイド19の湾曲した外周面に沿って搬送され、再び記録ヘッド8とプラテン9の間の記録領域Pに搬送される。この際、記録ヘッド8の吐出口面8aに、記録媒体Sの第2面が対向する。
図6(b)は、第2面の記録動作のために、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。
【0040】
その後の搬送経路は、
図4(b)および(c)で示した第1面記録の場合と同様である。
図6(c)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。
図6(d)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
【0041】
次に、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作について説明する。
図1でも説明したように、本実施形態のメンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングにこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。
【0042】
図7は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。記録ヘッド8を
図1に示す待機位置から
図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から
図7における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0043】
一方、記録ヘッド8を
図3に示す記録位置から
図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0044】
図8は、記録装置1における複数のモータと駆動ローラの対応関係を示す図である。第1給送モータ22は、第1カセット5Aから記録媒体Sを給送するための第1給送ユニット6Aを駆動する。第2給送モータ23は、第2カセット5Bから記録媒体Sを給送するための第2給送ユニット6Bを駆動する。第1搬送モータ24は、第1給送ユニット6Aにより給送された記録媒体Sを最初に搬送する第1中間ローラ71Aを駆動する。第2搬送モータ25は、第2給送ユニット6Bにより給送された記録媒体Sを最初に搬送する第2中間ローラ71Bを駆動する。
【0045】
主搬送モータ26は、プラテン9の上流側に配され主に記録中の記録媒体Sを搬送する主搬送ローラ70を駆動する。また主搬送モータ26は、プラテン9の下流側に配され主搬送ローラ70により搬送される記録媒体Sを更に下流側に搬送する2つの搬送ローラ7を駆動する。
【0046】
第3搬送モータ27は、第1面に記録が行われた記録媒体Sを下方に搬送する2つの搬送ローラ7を駆動する。また、第3搬送モータ27は、インナーガイド19に沿って配された2つの搬送ローラ7を駆動する。これら2つの搬送ローラ7は、第2カセット5Bから給送され第2中間ローラ71Bによって搬送された記録媒体S、又は第1面に記録が行われ表裏が反転された記録媒体S、を記録ヘッド8に向けて搬送する搬送ローラである。
【0047】
第4搬送モータ28は、記録動作が行われた後の記録媒体Sを上方または下方に搬送する2つの搬送ローラ7を駆動する。排出モータ29は、記録が行われた記録媒体Sを排出トレイ13へ排出する排出ローラ12を駆動する。このように、2つの給送モータ22、23、5つの搬送モータ24〜28、および排出モータ29のそれぞれは、1つ以上の駆動ローラに対応づけられている。
【0048】
一方、搬送経路に沿った8箇所には、記録媒体Sの有無を検知するための検知部材20が配されている。個々の検知部材20は搬送経路を挟んで配置されたセンサとミラーによって構成され、搬送経路の一方側に発光部と受光部を有するセンサが配置され、搬送経路の他方側であってセンサと対向する位置にミラーが配置される。センサの発光部から発せられた光がミラーで反射し受光部がこれを検知したか否かによって、記録媒体Sの有無すなわち先端または後端の通過を判別する。
【0049】
搬送制御部207は、複数の検知部材20それぞれの検知結果および各駆動ローラの回転量を検知するエンコーダの出力値に基づいて、給送モータ22、23、搬送モータ24〜28、および排出モータ29を個別に駆動し、装置全体の搬送を制御する。
【0050】
本実施形態の搬送制御部207は、ページごとに設定された搬送速度と搬送形態に基づいて、それぞれのページを支持している駆動ローラに接続された駆動モータを個別に駆動する。そして、上記ページごとの搬送速度と搬送形態は、プリントコントローラ202が、受信した印刷ジョブを解析することによってページごとに設定し、RAM204で管理する。以下、搬送速度と搬送形態の設定方法について説明する。
【0051】
記録ヘッド8に配列する複数の吐出口において、同時に吐出動作を行う吐出口数や個々の吐出口における吐出(駆動)周波数は、画像データに応じて変化する。そして、これらの値が大きくなるほど、消費電力が記録装置の電源容量を超えてしまうおそれが高くなる。
【0052】
このため、本実施形態では、記録ヘッド8の駆動周波数を画像データに応じてページごとに設定し、設定された駆動周波数に相応するように記録媒体Sの搬送速度もページごとに変化させる。例えば、ブラックインクのみ用いてモノクロ文書を記録するような場合は、記録ヘッド8の駆動周波数を比較的高い値に設定し、記録媒体Sの搬送速度を比較的速い速度に設定する。一方、4色のインクを用いるカラー画像を高濃度に記録するような場合は、記録ヘッド8の駆動周波数を比較的低い値に設定し、記録媒体Sの搬送速度を比較的遅い速度に設定する。
【0053】
図9は、プリントエンジンユニット200が印刷ジョブを受信した際に、プリントコントローラ202が実行する搬送形態設定処理を説明するためのフローチャートである。この搬送形態設定処理によって、同じ印刷ジョブに含まれる複数のページのそれぞれについて、搬送速度と搬送形態が個別に設定される。なお、本処理は、プリントコントローラ202が、ROM203に記憶されているプログラムに従って、RAM204をワークエリアとして使用しながら実行するものである。
【0054】
本処理が開始されると、ステップS10において、プリントコントローラ202は処理対象ページを設定する。本ステップが最初である場合、1ページ目が処理対象ページとして設定される。
【0055】
ステップS11において、プリントコントローラ202は処理対象ページについてのドットカウント処理を行う。具体的には、個々の画素についてドットの記録(1)又は非記録(0)が設定された記録データを検査し、記録(1)が設定されている画素の数をカウントする。更にステップS12において、プリントコントローラ202は、ステップS11で取得したカウント値に基づいて処理対象ページの搬送速度Vbを決定する。
【0056】
図10(a)〜(c)は、ステップS11のドットカウント処理で取得するカウント値の種類と、それぞれのカウント値と搬送速度Vの対応関係を示す図である。
図10(a)はページ全体におけるカウント値と搬送速度Vの対応関係、
図10(b)はインク色ごとのカウント値と搬送速度Vの対応関係、
図10(c)は単位領域ごとのカウント値と搬送速度Vの対応関係をそれぞれ示している。
【0057】
ページ全体におけるカウント値DCとは、ページ全体における全インク色についてのトータルのカウント値である。本実施形態では、
図10(a)に示すように、2つの閾値AおよびBを用意する。そして、カウント値DCがDC≦Aを満たす場合は搬送速度をV=26ips(インチ/秒)に、A<DC≦Bを満たす場合はV=14.5ipsに、B<DCを満たす場合はV=8ipsに、仮設定する。図では、搬送速度V=14.5ipsが仮設定された状態を示している。
【0058】
インク色ごとのカウント値DCとは、ページ全体におけるインク色それぞれについてのカウント値である。本実施形態では、
図10(b)に示すように、それぞれのインク色について、2つの閾値CおよびDを用意する。そして、個々のインク色について、カウント値DCがDC≦Cを満たす場合は搬送速度をV=26ipsに、C<DC≦Dを満たす場合はV=14.5ipsに、D<DCを満たす場合はV=8ipsに、仮設定する。図では、シアンの搬送速度がV=26ipsに、マゼンタの搬送速度がV=26ipsに、イエローの搬送速度がV=26ipsに、ブラックの搬送速度がV=14.5ipsに、それぞれ仮設定された状態を示している。
【0059】
単位領域ごとのカウント値DCとは、ページ全体を搬送方向に等分割して得られる単位領域における全インク色についてのトータルのカウント値である。単位領域のドットカウント値は単位時間当たりの消費電力に相応する。本実施形態では、
図10(c)に示すように、2つの閾値EおよびFを用意する。そして、カウント値DCがDC≦Eを満たす場合は搬送速度をV=26ipsに、E<DC≦Fを満たす場合はV=14.5ipsに、F<DCを満たす場合はV=8ipsに、仮設定する。図では、搬送速度V=8ipsが仮設定された状態を示している。なお、このような搬送速度Vは単位領域ごとに設定される。
【0060】
ステップS11において、プリントコントローラ202は、以上のようなページ全体におけるカウント値DC、インク色ごとの4つのカウント値DC、単位領域の数に対応する複数の単位領域カウント値DC、のように複数のカウント値を取得する。そして、ステップS12において、複数のカウント値それぞれに対応する搬送速度Vを
図10のテーブルに基づいて仮設定し、更に仮設定された複数の搬送速度Vの中で最小の値を処理対象ページの搬送速度Vbとして決定する。決定された搬送速度Vbは、処理対象ページに対応づけて保存される。
【0061】
このように、搬送速度や駆動周波数を決定する際に参照するドットカウント値を複数種類用意しておけば、局所的に消費電力が高い吐出口列(インク色)や単位領域が存在しても、所定の電源容量の範囲に収まるように記録動作を制御することができる。なお、本実施形態において、
図10に示すようなテーブルは、プリントエンジンユニット200のROM203に予め記憶されているものとする。
【0062】
図9に戻る。ステップS13において、プリントコントローラ202は、処理対象ページが2ページ目以降であるか否かを判断する。1ページ目である場合はステップS16にジャンプし、2ページ目以降である場合はステップS14に進む。
【0063】
ステップS14において、プリントコントローラ202は、処理対象ページの搬送速度Vbが、先行ページの搬送速度Vaと同値であるか否か(Vb=Va)を判定する。Vb=Vaである場合、プリントコントローラ202はステップS15に進み、処理対象ページの搬送形態を「連続搬送」に設定する。一方、Vb≠Vaの場合、プリントコントローラ202はステップS16に進み、処理対象ページの搬送形態を「単独搬送」に設定する。
【0064】
続くステップS17において、プリントコントローラ202は、処理対象ページの搬送速度Vbを、先行ページの搬送速度Vaとして更新し、メモリに保存する。また、ステップS18において、プリントコントローラ202は、処理対象ページが印刷ジョブに含まれる最終ページであるか否かを判定する。最終ページではない場合、プリントコントローラ202はステップS10に戻り、次のページを処理対象ページに設定し、新たな処理対象ページのために上述した一連の処理を実行する。一方、ステップS18において、処理対象ページは最終ページであると判定した場合、本処理は終了する。
【0065】
ここで、搬送形態の種類である「単独搬送」と「連続搬送」について説明する。「単独搬送」とは先行するページの排出処理が完了した後に、処理対象ページの搬送動作を開始する搬送形態を示す。再度
図8を参照して具体的に説明する。処理対象ページが「単独搬送」に設定されている場合、搬送制御部207は、排出ローラ12の直上流にある検知部材20が先行ページの後端を検出するまで、処理対象ページのために第1搬送モータ24や第2搬送モータ25を駆動しない。そして、排出ローラ12の直上流にある検知部材20が先行するページの後端を検出した後に、処理対象ページのために第1搬送モータ24や第2搬送モータ25を駆動し、処理対象ページの搬送を開始する。なお、処理対象ページの給送動作については、先行ページの記録動作中に行っていてもよいし、第1搬送モータ24や第2搬送モータ25の駆動と共に行っても良い。
【0066】
一方、「連続搬送」とは先行するページの搬送動作中に処理対象ページの搬送動作を開始する搬送形態を示す。
【0067】
図11(a)および(b)は「連続搬送」の様子を示す図である。ここでは、処理対象ページを記録する記録媒体を後続シートS2、処理対象ページの直前に記録されるページを記録する記録媒体を先行シートS1として示している。いずれも、第1のカセット5Aから供給されるシートとして示している。
【0068】
処理対象ページが「連続搬送」に設定されている場合、搬送制御部207は、主搬送ローラ70の直上流にある検知部材20が先行シートS1の後端を検出した時点で、第1給送ユニット6Aを用い、後続シートS2を給送する。そして、第1中間ローラ71Aによって後続シートS2の先端をニップした状態で第1搬送モータ24を停止し、後続シートS2を待機させておく。
【0069】
一方、搬送制御部207は、先行シートS1のために設定された搬送速度に従って、主搬送モータ26、第4搬送モータ28および排出モータ29を駆動し、先行シートS1の搬送動作を継続する。この際、搬送制御部207は、上記検知部材20が先行シートS1の後端を検出した時点から先行シートS1が搬送された距離を、エンコーダ21のカウント値に基づいてカウントする。そして、上記搬送距離が所定の距離PLに到達した時点で、搬送制御部207は第1搬送モータ24を駆動し、後続シートS2の搬送動作を開始する。
図11(a)は、後続シートS2の搬送動作が開始された時点の搬送状態を示す。
【0070】
図11(b)は、
図11(a)の状態から更に搬送が進んだ状態を示している。先行シートS1は第4搬送モータ28と排出モータ29の駆動によって搬送され、後続シートS2は、第1搬送モータ24と主搬送モータ26の駆動によって搬送されている。先行シートの後端と後続シートの先端の距離は、両者の搬送速度が等しければ、基本的に上記所定の距離PLが維持されている。
【0071】
このように、「連続搬送」とは、搬送経路に先行シートS1が搬送されている状態において、先行シートS1との距離を一定以上に保ちながら、後続シートS2の搬送動作を開始する搬送動作のことを言う。
【0072】
図12(a)〜(c)は、
図9で示した搬送形態設定処理によって、ページごとに設定された搬送速度と搬送形態に基づいて、搬送制御部207が行う搬送例を示す図である。
【0073】
図12(a)は、印刷ジョブに含まれる4ページの全てについて搬送速度が同値(26ips)に設定された場合を示している。この場合、1ページ目については、ステップS16にて「単独搬送」が設定される。2ページ目以降の全てのページについては、ステップS15で「連続搬送」が設定される。
【0074】
すなわち、
図11(a)および(b)に示すように、26ipsの搬送速度で1ページ目の搬送動作が行われる中、2ページ目の搬送動作が距離PLをおいて同じ速度で開始され、同様に3ページ目、4ページ目の搬送動作が連続して行われる。結果、4つのページが等間隔且つ等速に搬送されることになり、紙詰まりなどが生じる懸念は少ない。
【0075】
図12(b)は、印刷ジョブに含まれる4ページのうち、1ページ目と2ページ目については26ipsの搬送速度が設定され、3ページ目と4ページ目については8ipsの搬送速度が設定された場合を示している。この場合、1ページ目と3ページ目については、ステップS16にて「単独搬送」が設定される。2ページ目と4ページ目ページについては、ステップS15で「連続搬送」が設定される。
【0076】
すなわち、26ipsの搬送速度で1ページ目の搬送動作が行われる中、2ページ目の搬送動作が距離PLをおいて同じ速度で開始される。その後、2ページ目の搬送動作が終了した後、3ページ目の搬送動作が8ipsの搬送速度で開始され、その搬送動作の最中に、4ページ目の搬送動作が距離PLをおいて8ipsの搬送速度で開始される。つまり、2つのページが等間隔で等速に搬送される工程が完了した後に、別の2つのページが等間隔で等速に搬送される工程が行われることになり、紙詰まりなどが生じる懸念は少ない。
【0077】
図12(c)は、印刷ジョブに含まれる3ページのうち、1ページ目と3ページ目については26ipsの搬送速度が設定され、2ページ目については8ipsの搬送速度が設定された場合を示している。この場合、1〜3の全ページについて、ステップS16にて「単独搬送」が設定される。
【0078】
すなわち、26ipsの搬送速度で1ページ目の搬送動作が完了した後、2ページ目の搬送動作が8ipsの搬送速度で開始され、2ページ目の搬送動作が完了した後、3ページ目の搬送動作が26ipsの搬送速度で開始される。このように、3つのページに対応する3つのシート全てが「単独搬送」で搬送されるため、紙詰まりなどが生じる懸念は少ない。
【0079】
以上説明したように、本実施形態によれば、順番に搬送されるシートの搬送速度が互いに異なる状況においても、紙詰まりなどを起すことなく、個々のシートを効率的に連続印刷することができる。
【0080】
(第2の実施形態)
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、
図1〜8に示したインクジェット記録装置を用いる。
【0081】
図13は、本実施形態のプリントコントローラ202が実行する搬送形態設定処理を説明するためのフローチャートである。本処理において、
図9で説明した第1の実施形態と異なる点は、ステップS19が追加されていることである。
【0082】
ステップS14において、Vb≠Vaの場合、プリントコントローラ202はステップS19に進み、処理対象ページの搬送速度Vbが、先行ページの搬送速度Vaよりも小さいか否か(Vb<Va)を判定する。Vb<Vaの場合、より遅い搬送速度Vbの後続シートS2が、より速い搬送速度の先行シートS1に追いつく可能性は低いので、ステップS15に進み、処理対象ページを「連続搬送」に設定する。一方、Vb>Vaの場合、より速い搬送速度Vbの後続シートS2が、より遅い搬送速度の先行シートS1に追いつく可能性は高いので、プリントコントローラ202はステップS16に進み、処理対象ページを「単独搬送」に設定する。他のステップは
図9と同様である。
【0083】
図14は、
図13で示した搬送形態設定処理よって、ページごとに設定された搬送速度と搬送形態に基づいて、搬送制御部207が行う搬送例を示す図である。ここでは、印刷ジョブに含まれる5ページのうち、1ページ目と2ページ目と5ページについては26ipsの搬送速度が設定され、2ページ目と3ページ目については8ipsの搬送速度が設定された場合を示している。この場合、1ページ目と4ページ目については、ステップS16にて「単独搬送」が設定される。2ページ目と3ページ目ページと5ページ目については、ステップS15で「連続搬送」が設定される。
【0084】
すなわち、26ipsの搬送速度で1ページ目の搬送動作が行われる中、2ページ目の搬送動作が距離PLをおいて8ipsの搬送速度で開始される。その後、8ipsの搬送速度で2ページ目の搬送動作が行われる中、更に3ページ目の搬送動作が距離PLをおいて8ipsの搬送速度で開始される。その後、3ページ目の搬送動作が終了した後、4ページ目の搬送動作が26ipsの搬送速度で開始され、その搬送動作の最中に、5ページ目の搬送動作が距離PLをおいて26ipsの搬送速度で開始される。
【0085】
このように、本実施形態によれば、後続シートの搬送速度が先行シートと同じ又は遅い場合は、後続シートが先行シートに追いつく可能性が低いので、後続シートを「連続搬送」に設定する。そして、後続シートの搬送速度が先行シートよりも速い場合は、後続シートが先行シートに追いつく可能性が高いので、後続シートを「単独搬送」に設定する。結果、第1の実施形態と同じ効果を得ながら、第1の実施形態よりも更に効率的に連続印刷を行うことが可能となる。
【0086】
(第3の実施形態)
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、
図1〜8に示したインクジェット記録装置を用いる。但し、本実施形態では基本的に全てのページの搬送形態を「連続搬送」とし、先行シートと後続シートの搬送速度の相対関係に基づいて、両シート間の距離を調整するものとする。
【0087】
図15は、本実施形態のプリントコントローラ202が実行する搬送形態設定処理を説明するためのフローチャートである。ステップS10〜ステップS13までの工程は第1の実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0088】
ステップS13において、処理対象ページが2ページ目以降であると判断した場合、プリントコントローラ202は、ステップS20に進み、処理対象ページの搬送速度Vbと先行シートの搬送速度Vaに基づいて、ページ間距離PLを設定する。
【0089】
図16は、ステップS20においてプリントコントローラ202が参照するページ間距離PL設定テーブルを示す図である。本実施形態において、このようなテーブルは、プリントエンジンユニット200のROM203に予め記憶されている。
【0090】
例えば、後続シートの搬送速度Vbと先行シートの搬送速度Vaが共に26ipsのとき、ページ間距離PLはPL1に設定される。また、後続シートの搬送速度Vbと先行シートの搬送速度Vaが共に14.5ipsのとき、ページ間距離PLはPL2に設定される。更に、後続シートの搬送速度Vbと先行シートの搬送速度Vaが共に8ipsのとき、ページ間距離PLはPL3に設定される。PL1、PL2、PL3は、シート(記録媒体)のサイズや種類によって調整可能な値であるが、基本的にPL1>PL2>PL3の関係を有する。具体的には、例えばシートがA4サイズの場合、PL1は約87mm、PL2は約62mm、PL3は約48mm程度である。
【0091】
図11(a)や(b)で示したように、搬送速度経路において2つのシートが同時に搬送されるとき、シート間の距離PLは、各種搬送モータの駆動力や搬送ローラの径のばらつきなどに依存して変動する場合があり、その変動は搬送速度が速いほど大きい。そして、シート間の距離PLは、このような変動が起こっても後続シートが先行シートに追いつかない程度に十分大きな距離であることが望まれる。その一方で、シート間距離PLを余り大きく設定してしまうと、連続搬送を行ってもスループットの向上が図れなくなってしまう。よって、本実施形態では、先行シートと後続シートの搬送速度が同値である(Va=Vb)場合のシート間距離PLを搬送速度ごとに設定し、搬送速度が遅い場合はシート間距離PLをなるべく小さくして、スループットの向上を図っている。
【0092】
一方、先行シートと後続シートの搬送速度が異なる場合、プリントコントローラ202は
図16に示す計算式に基づいて、ページ間距離PLを設定する。例えば、後続シートの搬送速度Vbが先行シートの搬送速度Vaよりも遅い場合、後続シートが先行シートに追いつく可能性は小さいので、ページ間距離PLは先行シートと後続シートの搬送速度が同値である場合よりも小さい値に設定される。反対に、後続シートの搬送速度Vbが先行シートの搬送速度Vaよりも速い場合、後続シートが先行シートに追いつく可能性は大きいので、ページ間距離PLは先行シートと後続シートの搬送速度が同値である場合よりも大きな値に設定される。このように、ステップS20においては、先行シートと後続シートの搬送速度の組み合わせに応じて、適切なページ間距離PLが設定される。
【0093】
ステップS20でページ間距離PLが設定されるとステップS21に進み、プリントコントローラ202は、ステップS20で設定されたページ間距離PLが、予め設定されている最小ページ間距離PLminよりも小さいか否かを判定する。ここで、最小ページ間距離PLminとは、先行ページと後続ページの搬送を個別に制御できる最小の距離に相当し、搬送ローラ7や検知部材20のレイアウトによって決まる値である。具体的には、最小ページ間距離PLminは、隣接する2つの検知部材20の組み合わせのうち、最も離れた組み合わせの距離よりも大きい値であることが求められる。また、共通の搬送モータで駆動される複数の搬送ローラで、先行シートと後続シートの両方を搬送するような状況が発生しないような距離が求められる。
【0094】
ステップS21において、PL<PLminと判定された場合、現在設定されているページ間距離PLでは正常な搬送制御を行うことが出来ない。よって、プリントコントローラ202はステップS22に進み、ページ間距離PLを最小ページ間距離PLminに変更しステップS17に進む。一方、ステップS21において、PL≧PLminと判定された場合は現在のページ間距離PLを維持したままステップS17に進む。以下の処理は第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0095】
図17は、
図15で示した搬送形態設定処理によって、ページごとに設定された搬送速度とページ間距離に基づいて、搬送制御部207が行う搬送例を示す図である。ここでは、印刷ジョブに含まれる3ページのうち、1ページ目と3ページ目については26ipsの搬送速度が設定され、2ページ目については8ipsの搬送速度が設定された場合を示している。本実施形態の場合、全ての場合において「連続搬送」が行われるが、ページ間距離PLの大きさが、先行ページと後続ページの搬送速度によって調整される。図では、1ページ目と2ページ目の間のページ間距離PLは、2ページ目の搬送速度が1ページ目よりも遅い分だけPL1よりも小さな値に調整されている。また、2ページ目と3ページ目の間のページ間距離PLは、3ページ目の搬送速度が2ページ目の搬送速度よりも速い分だけPL3よりも大きな値に調整されている。
【0096】
このように、本実施形態によれば、全ての場合において「連続搬送」を行いながらも、先行シートと後続シートの間のページ間距離PLを、先行シートと後続シートの搬送速度の組み合わせに応じて適切に調整している。結果、上記実施形態と同じ効果を得ながらも、更に効率的に連続印刷を行うことが可能となる。
【0097】
なお、以上では消費電力が、記録装置が備える所定の電源容量を超えないことを目的に、記録ヘッドの駆動周波数と記録媒体の搬送速度を調整したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、インクジェット記録ヘッドにおいては、個々の吐出口で正常な吐出動作を行うための駆動周波数(リフィル周波数)に限界値が存在することが知られている。よって、この限界値を超えないような範囲で記録ヘッドの駆動周波数と記録媒体の搬送速度を調整しても良い。また、記録ヘッドの温度や記録媒体の種類が、ページ単位で変化するような場合も、それら温度や種類に応じて記録ヘッドの駆動周波数と記録媒体の搬送速度を調整しても良い。いずれにしても、複数のページを連続印刷する際に搬送速度がページ単位で設定されるような状況であれば、本発明はその効果を十分に発揮することが出来る。
【0098】
また以上では、プリントエンジンユニット200のプリントコントローラ202が各ページの搬送速度と搬送形態やページ間距離を設定し、その設定値に基づいて、搬送制御部207が搬送制御を行う形態で説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記フローチャートを用いて説明した搬送形態設定処理は、コントローラユニット100のメインコントローラ101や画像処理部108が行うようにしても良い。この場合、ジョブに含まれる複数のページそれぞれについての搬送速度と搬送形態などが、複数のページそれぞれについての記録データと共にプリントエンジンユニットに転送されることになる。
【0099】
また、以上ではプリントコントローラ202が全ページについての搬送速度と搬送形態を設定した後、搬送制御部207が設定された設定値に基づいて、全ページについての搬送制御を連続的に行う形態で説明したが、本発明はこれに限定されるものでもない。プリントコントローラ202が任意のページの搬送速度と搬送形態を設定したことをトリガとして、搬送制御部207が当該ページについての給送動作および搬送制御を開始する形態としても良い。