(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971829
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】軸力測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/07 20060101AFI20211111BHJP
G01N 29/22 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
G01N29/07
G01N29/22
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-245622(P2017-245622)
(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公開番号】特開2019-113365(P2019-113365A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000163419
【氏名又は名称】株式会社きんでん
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】江川 正人
【審査官】
小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−049860(JP,U)
【文献】
実開平02−079436(JP,U)
【文献】
特開2000−141241(JP,A)
【文献】
特開2004−291217(JP,A)
【文献】
特開平04−278429(JP,A)
【文献】
特開昭62−159041(JP,A)
【文献】
実開平06−047834(JP,U)
【文献】
国際公開第2015/118326(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/00 − B25B 23/18
G01B 17/00 − G01B 17/08
G01H 1/00 − G01H 17/00
G01L 5/00 − G01L 5/28
G01N 29/00 − G01N 29/52
G01S 1/72 − G01S 1/82
G01S 3/80 − G01S 3/86
G01S 5/18 − G01S 5/30
G01S 7/52 − G01S 7/64
G01S 15/00 − G01S 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトの軸力を測定する軸力測定装置であって、
ケーブルに接続され、前記ボルトの軸部の先端に配置されると共に当該ボルトに対して超音波を送受信する探触子と、
中空の空間に前記探触子を保持し、磁力により前記ボルトの軸部に固定されるマグネット部と、
前記探触子を前記ボルトの軸部の先端に押し付ける付勢部材と、
前記ボルトの軸部の少なくとも一部が挿入され、前記探触子と前記マグネット部と前記付勢部材とを収納する管状の探触子ホルダと、を備え、
前記探触子ホルダは、外径がナットの外径よりも小さく、内径が前記ボルトの軸部の外径よりも大きく設定され、前記ボルトの軸部の先端に対する前記探触子の位置ずれおよび傾きを抑制するように前記ボルトの軸部に嵌挿可能なものであり、
前記探触子は、前記ボルトに対する前記ナットの締め付け前後に前記ボルトの軸部の先端に対して前記超音波を付与するように構成されていることを特徴とする軸力測定装置。
【請求項2】
前記探触子ホルダ内に配置された押え軸部と前記探触子ホルダの一方端の縁部に係合された押え頭部とを有する押えボルトをさらに備え、
前記押えボルトの前記押え軸部は、前記付勢部材を前記探触子の方に押圧するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の軸力測定装置。
【請求項3】
ボルトの軸力を測定する軸力測定装置であって、
ケーブルに接続され、前記ボルトの頭部に配置されると共に当該ボルトに対して超音波を送受信する探触子と、
中空の空間に前記探触子を保持し、磁力により前記ボルトの頭部に固定されるマグネット部と、
前記探触子を前記ボルトの頭部に押し付ける付勢部材と、
前記ケーブルと前記探触子との継ぎ手として機能する回転コネクタと、
前記ボルトの頭部上に配置され、前記探触子と前記マグネット部と前記付勢部材と前記回転コネクタとを収納する管状の探触子ホルダと、
前記探触子ホルダの一方端の縁部に係合された押え頭部と前記回転コネクタを介して前記付勢部材を前記探触子の方に押圧する押え軸部とを有する押えボルトと、を備え、
前記探触子ホルダの外径は、前記ボルトの頭部の外径よりも小さく設定されており、
前記ケーブルは、前記押えボルトの前記押え頭部から前記押え軸部および前記付勢部材の内部へ前記ボルトの軸方向に挿通された状態で配置されており、
前記探触子は、ナットに対する前記ボルトの頭部の締め付け前後に前記ボルトの頭部に対して前記超音波を付与するように構成されており、
前記回転コネクタは、前記押えボルトの前記押え軸部の前記付勢部材側に、前記締め付けの方向に回転可能に設けられていることを特徴とする軸力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトの軸力を測定する軸力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトの軸力(締付力)を測定する方法の例として、超音波を利用したものが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。これらの方法は、ボルトの軸力を、ボルトの軸方向の伸び量に関係付けている。詳しくは、ボルトを締め付けると、当該ボルトはその軸方向に伸びる。この伸び量(変化量)に応じて、締め付け前後で、超音波センサ(探触子)から送信された超音波がボルト頭部からボルト軸部先端を折り返して再び探触子に戻ってくるまでの時間が異なる。つまり、締め付け前後において超音波の往復時間の時間差が生じることとなる。この時間差を用いて、公知の算出式によって軸力が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−152734号公報
【特許文献2】特開2006−167815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、軽量化または省資源のために、ボルト頭部の頂面に凹凸が設けられたボルト(ディープリセスボルト)が生産されている。特に、屋外で使用されるボルトの頭部は、腐食を防止するため、溶融亜鉛メッキが表面に施されていることにより凹凸となっている。しかしながら、このようなボルトの軸力を上述の方法で測定する際に、ボルト頭部に対する探触子の位置がずれやすいため、超音波がボルト頭部に伝わりに難くなると共に、位置ずれに起因して超音波の往復時間が変わってくる。その結果、ボルトの軸力を正確に測定することが困難となる。また、スタッド端子台のように、軸部先端から測定する場合も、軸部先端に凹凸があり、探触子をボルト軸に対して垂直に設置できないため、ボルトの軸力を正確に測定することが困難となっている。
【0005】
これに対し、探触子をボルト頭部または軸部先端に密接させるために、ボルト頭部または軸部先端を平面状に加工するといった解決法もあるが、このような加工は手間も時間も要すると共に、切削加工によってボルト頭部または軸部先端の高さが減少するため、締め付け工具(レンチのソケット)のかかり代が確保されなくなるなどの問題が発生し、締め付け作業が困難になるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、ボルト軸部先端に対する探触子の位置またはボルト頭部に対する探触子の位置をずれ難くすることによって、ボルトの軸力を正確に測定することが可能な軸力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る軸力測定装置は、ボルトの軸力を測定する軸力測定装置であって、ケーブルに接続され、前記ボルトの軸部の先端に配置されると共に当該ボルトに対して超音波を送受信する探触子と、中空の空間に前記探触子を保持し、磁力により前記ボルトの軸部に固定されるマグネット部と、前記探触子を前記ボルトの軸部の先端に押し付ける付勢部材と、前記ボルトの軸部の少なくとも一部が挿入され、前記探触子と前記マグネット部と前記付勢部材とを収納する管状の探触子ホルダと、を備え、
前記探触子ホルダは、外径がナットの外径よりも小さく、内径が前記ボルトの軸部の外径よりも大きく設定され、前記ボルトの軸部の先端に対する前記探触子の位置ずれおよび傾きを抑制するように前記ボルトの軸部に嵌挿可能なものであり、前記探触子は、前記ボルトに対する
前記ナットの締め付け前後に前記ボルトの軸部の先端に対して前記超音波を付与するように構成されているものである。
【0008】
上記(1)の構成によれば、ボルト軸部の先端に配置される探触子を保持するマグネット部が磁力によりボルト軸部の先端に固定される。これによって、ボルト軸部先端に対する探触子の位置がずれ難くなる。また、上記探触子が付勢部材によりボルト軸部先端に押し付けられることによって、ボルト軸部先端に対する探触子のコンタクトが良好なものとなる。さらに、ボルト軸部の少なくとも一部が、探触子を収納する探触子ホルダに挿入されるので、ボルト軸部に対する探触子のセンタリングが行い易くなると共に、当該ボルト軸部に対して探触子が傾くことを防止することができる。これにより、ボルト軸部先端に対する探触子の位置がずれ難く安定することによって測定誤差が生じ難くなる。このような構成において、ボルトに対するナットの締め付け前後にボルト軸部先端に対して超音波が付与される際に、探触子の上記コンタクトの良さの効果によってボルトの軸力を正確に測定することができる。
また、上記(1)の構成によれば、ボルトに対するナットの締め付け時に、レンチのソケット(ナットの締め付け工具)の孔部に探触子ホルダを挿通させることができるので、当該探触子ホルダがソケットに対する干渉とならない。
【0009】
(2) 上記(1)の軸力測定装置は、前記探触子ホルダ内に配置された押え軸部と前記探触子ホルダの一方端の縁部に係合された押え頭部とを有する押えボルトをさらに備え、前記押えボルトの前記押え軸部は、前記付勢部材を前記探触子の方に押圧するように配置されていてもよい。
【0010】
上記(2)の構成によれば、簡易な構成によって探触子をボルト軸部の先端に押圧することができる。
【0013】
(
3) 本発明に係る軸力測定装置は、ボルトの軸力を測定する軸力測定装置であって、ケーブルに接続され、前記ボルトの頭部に配置されると共に当該ボルトに対して超音波を送受信する探触子と、中空の空間に前記探触子を保持し、磁力により前記ボルトの頭部に固定されるマグネット部と、前記探触子を前記ボルトの頭部に押し付ける付勢部材と、前記ケーブルと前記探触子との継ぎ手として機能する回転コネクタと、前記ボルトの頭部上に配置され、前記探触子と前記マグネット部と前記付勢部材と前記回転コネクタとを収納する管状の探触子ホルダと、
前記探触子ホルダの一方端の縁部に係合された押え頭部と前記回転コネクタを介して前記付勢部材を前記探触子の方に押圧する押え軸部とを有する押えボルトと、を備え、
前記探触子ホルダの外径は、前記ボルトの頭部の外径よりも小さく設定されており、前記ケーブルは、前記押えボルトの前記押え頭部から前記押え軸部および前記付勢部材の内部へ前記ボルトの軸方向に挿通された状態で配置されており、前記探触子は、ナットに対する前記ボルトの頭部の締め付け前後に前記ボルトの頭部に対して前記超音波を付与するように構成されて
おり、前記回転コネクタは、前記押えボルトの前記押え軸部の前記付勢部材側に、前記締め付けの方向に回転可能に設けられているものである。
【0014】
上記(
3)の構成によれば、ボルト頭部に配置される探触子を保持するマグネット部が磁力によりボルト頭部に固定される。これによって、ボルト頭部に対する探触子の位置がずれ難くなる。また、上記探触子が付勢部材によりボルト頭部に押し付けられることによって、ボルト頭部に対する探触子のコンタクトが良好なものとなる。これにより、ボルト頭部に対する探触子の位置がずれ難く安定することによって測定誤差が生じ難くなる。このような構成において、ナットに対するボルトの締め付け前後にボルト頭部に対して超音波が付与される際に、探触子の上記コンタクトの良さの効果によってボルトの軸力を正確に測定することができる。さらに、上記回転コネクタを採用していることによって、ボルトの締め付け時に探触子が回転する際に、上記回転に起因して当該回転コネクタよりも上流側のケーブルが捩れることがない。
また、上記(3)の構成によれば、ナットに対するボルトの締め付け時に、レンチのソケットの孔部に探触子ホルダを挿通させることができるので、当該探触子ホルダがソケットに対する干渉とならない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ボルト軸部先端に対する探触子の位置又はボルト頭部に対する探触子の位置をずれ難くすることによって、ボルトの軸力を正確に測定することが可能な軸力測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る軸力測定装置を示す断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る軸力測定装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る軸力測定装置について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係る軸力測定装置100は、超音波センサである探触子(プローブ)10、マグネット部11、例えばコイルスプリング等である付勢部材12、および管状の探触子ホルダ13を備えている。
【0021】
探触子ホルダ13の一方端(下端)にはボルト軸部20の少なくとも一部が挿入されている。したがって、探触子ホルダ13の内径はボルト軸部20の外径(ネジ山の外径)よりも大きく設定されているが、探触子ホルダ13の傾きを抑制するために、上記内径と上記外径との差は、ボルト軸部20を探触子ホルダ13に挿入することが困難とならない程度で僅かとなっている。なお、探触子ホルダ13の外径はナット21の外径よりも小さく設定されている。
【0022】
上記のように探触子ホルダ13の一方端にボルト軸部20が挿入された状態で、探触子ホルダ13内には、探触子10、マグネット部11および付勢部材12が収容されている。探触子10は、ケーブル14の一端に接続され、ボルト軸部20の先端に配置されている。そして、探触子10はボルト軸部20の先端に対して超音波の送受信を行う。なお、ケーブル14の他端は図示しない超音波計測器本体に接続されている。
【0023】
マグネット部11は、中空状に形成されており、その中空の空間に探触子10を保持する。この場合、マグネット部11の下面と探触子10の下面とがほぼ面一となっている。また、探触子10を保持した状態のマグネット部11は、磁力によりボルト軸部20の先端に固定されている。このことによって、ボルト軸部20の先端に対する探触子10の下面のコンタクトが良好となる。
【0024】
探触子ホルダ13の他方端には押えボルト15が挿入されている。押えボルト15は、探触子ホルダ13内に配置された押え軸部17と、当該探触子ホルダ13の他方端の縁部に係合配置された押え頭部16とを有している。押えボルト15には、その軸心において挿通孔(図示略)が形成されており、当該挿通孔にケーブル14が挿通されている。
【0025】
付勢部材12は押えボルト15の押え軸部17と探触子10との間に配置されている。付勢部材12が押え軸部17により下方側に押え付けられていることで、探触子10がボルト軸部20の方に押圧されている。これによって、ボルト軸部20の先端に対する探触子10のコンタクトがさらに良好になっている。なお、ケーブル14の先端部付近は、付勢部材12内に付勢部材12軸方向に挿通された状態で配置されている。
【0026】
このような構成において、最初に、ボルト軸部20に対するナット21の締め付けを行う前に、超音波の往復時間(探触子10により付与された超音波がボルト軸部20の先端からボルト頭部(
図1では略)を折り返して再び探触子10まで戻ってくるまでの時間)を測定する。
【0027】
次に、ボルト軸部20に対するナット21の締め付けを行った後、上記と同じ要領で、探触子10による超音波の往復時間を測定する。具体的には、
図1の状態の探触子ホルダ13を、締め付け工具であるレンチのソケットの孔部に挿通させた状態で、当該ソケットによりナット21の締め付けを行った後、探触子10により超音波をボルト軸部20に付与することによって当該超音波の往復時間を測定する。なお、締め付け後にはボルト軸部20に伸びが生じているため、締め付け後の超音波の往復時間は、締め付け前の超音波の上記往復時間よりも長くなる。
【0028】
ボルトの軸力は公知の算出式により算出される。具体的には、締め付け前の上記往復時間と締め付け後の上記往復時間との時間差をΔtとする場合、軸力Fは、F=Δt×V×A×E/(2×K×L)により算出される。なお、上記算出式において、Vは音速であり、Aはボルトの有効断面積であり、Eはボルトのヤング率であり、Kはボルトの材料定数であり、Lはボルトの長さである。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る軸力測定装置100によれば、ボルト軸部20の先端に配置された探触子10を保持するマグネット部11が磁力によりボルト軸部20の先端に固定される。これによって、ボルト軸部20の先端に対する探触子10の位置がずれ難くなる。また、探触子10が付勢部材12によりボルト軸部20の先端に押し付けられることによって、ボルト軸部20の先端に対する探触子10のコンタクトが良好なものとなる。さらに、ボルト軸部20の少なくとも一部が、探触子10を収納する探触子ホルダ13に挿入されるので、ボルト軸部20に対する探触子10のセンタリングが行い易くなると共に、当該ボルト軸部20に対して探触子10が傾くことを防止することができる。これにより、ボルト軸部20の先端に対する探触子10の位置がずれ難く安定することによって測定誤差が生じ難くなる。このような構成において、ボルト軸部20に対するナット21の締め付け前後にボルト軸部20先端に対して超音波が付与される際に、探触子10の上記コンタクトの良さの効果によってボルトの軸力を正確に測定することができる。
【0030】
また、本実施形態では、押えボルト15の押え軸部17により付勢部材12が探触子10の方に押圧されていることによって、簡易な構成によって探触子10をボルト軸部20の先端に押圧することができる。
【0031】
さらに、本実施形態では、探触子ホルダ13の外径はナット21の外径よりも小さく設定されている。これにより、ボルト軸部20に対するナット21の締め付け時に、レンチのソケット(ナット21の締め付け工具)の孔部に探触子ホルダ13を挿通させることができるので、当該探触子ホルダ13が上記ソケットに対する干渉とならない。
【0032】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係る軸力測定装置について、図面を参照しながら説明する。なお、上記第1実施形態と下2桁が同じ符号の部位は、特に示す場合を除き、上記第1実施形態で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
【0033】
図2に示すように、本実施形態に係る軸力測定装置200は、探触子110、マグネット部111、例えばコイルスプリング等である付勢部材112、および管状の探触子ホルダ113を備えている。
【0034】
探触子ホルダ113の一方端(下端)はボルト頭部122上に配置されている。探触子ホルダ113の外径はボルト頭部122の外径よりも小さい。この探触子ホルダ113内には、探触子110、マグネット部111、付勢部材112、および回転コネクタ30が収容されている。
【0035】
探触子110を保持した状態のマグネット部111は、磁力によりボルト頭部122上に固定されている。このことによって、ボルト頭部122に対する探触子110のコンタクトが良好となる。
【0036】
探触子110は、ケーブル114の一端に接続され、ボルト頭部122上に配置されている。探触子110はボルト頭部122に対して超音波の送受信を行う。一方、ケーブル114の他端は、後記の押え軸部117に対して回転可能に当該押え軸部117の外周面に設けられた回転コネクタ30に接続されている。
【0037】
探触子ホルダ113の他方端には押えボルト115が挿入されている。押えボルト115は、探触子ホルダ113内に配置された押え軸部117と、当該探触子ホルダ113の他方端の縁部に係合配置された押え頭部116とを有している。押えボルト115には、その軸心において挿通孔(図示略)が形成されており、当該挿通孔にケーブル114aが挿通されている。このケーブル114aの一端は、回転コネクタ30における上記ケーブル114と電気的に導通されている。つまり、回転コネクタ30は、ケーブル114が接続された探触子110とケーブル114aとの継ぎ手として機能している。なお、ケーブル114aの他端は図示しない超音波計測器本体に接続されている。
【0038】
付勢部材112は押えボルト115の押え軸部117と探触子110との間に配置されている。付勢部材112が押え軸部117により下方側に押え付けられていることで、探触子110がボルト頭部122の方に押圧されている。これによって、ボルト頭部122に対する探触子110のコンタクトがさらに良好になっている。なお、ケーブル114は付勢部材112に挿通された状態で配置されている。
【0039】
このような構成において、上述の第1実施形態と同じように、最初に、ナット(図示略)に対するボルト頭部122の締め付けを行う前に、超音波の往復時間を測定する。次に、上記ナットに対するボルト頭部122の締め付けを行った後、同じ要領で、超音波の往復時間を測定する。具体的には、
図2の状態の探触子ホルダ113を、締め付け工具であるレンチのソケットの孔部に挿通させた状態で、当該ソケットによりボルト頭部122の締め付けを行った後、探触子110により超音波を付与することによって当該超音波の往復時間を測定する。
【0040】
このように、本実施形態に係る軸力測定装置200においては、ボルト頭部122に配置される探触子110を保持するマグネット部111が磁力によりボルト頭部122上に固定される。これによって、ボルト頭部122に対する探触子110の位置がずれ難くなる。また、探触子110が付勢部材112によりボルト頭部122に押し付けられることによって、ボルト頭部122に対する探触子110のコンタクトが良好なものとなる。これにより、ボルト頭部122に対する探触子110の位置がずれ難く安定することによって測定誤差が生じ難くなる。このような構成において、ボルト頭部122の締め付け前後にボルト頭部122に対して超音波が付与される際に、探触子110の上記コンタクトの良さの効果によってボルトの軸力を正確に測定することができる。さらに、上記回転コネクタ30を採用していることによって、ボルト頭部122の締め付け時に探触子110が回転する際に、この回転に起因して回転コネクタ30よりも上流側のケーブル114aが捩れることがない。
【0041】
また、本実施形態では、探触子ホルダ113の外径はボルト頭部122の外径よりも小さく設定されている。これによって、ナットに対するボルト頭部122の締め付け時に、レンチのソケットの孔部に探触子ホルダ113を挿通させることができるので、当該探触子ホルダ113がソケットに対する干渉とならない。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0043】
上記実施形態では、付勢部材12、112の一例としてコイルスプリングを採用することとしたが、これに限定されるものではなく、例えばクッション材などの他の付勢部材を採用してもよい。
【0044】
また、付勢部材12、112による付勢力を探触子10、110に対してさらに均一に付与するために、付勢部材12、112を筒体に収容するようにしてもよい。これにより、付勢部材12、112の傾きおよび捩れが防止されるので、付勢力が探触子10、110に均一に伝わる。このことによって、ボルト軸部20先端に探触子10の測定面をより均一に密接させることができ、また、ボルト頭部122に探触子110の測定面をより均一に密接させることができる。
【符号の説明】
【0045】
10、110 探触子
11、111 マグネット部
12、112 付勢部材
13、113 探触子ホルダ
14、114、114a ケーブル
15、115 押えボルト
16、116 押え頭部
17、117 押え軸部
20、120 ボルト軸部
21 ナット
30 回転コネクタ
100、200 軸力測定装置
122 ボルト頭部