(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971836
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】冷却装置、半導体製造装置および半導体製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20211111BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20211111BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
G03F7/20 521
H01L21/30 502D
H01L21/68 N
【請求項の数】21
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-250107(P2017-250107)
(22)【出願日】2017年12月26日
(65)【公開番号】特開2019-117231(P2019-117231A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2020年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野元 誠
【審査官】
冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−227528(JP,A)
【文献】
特開2004−349551(JP,A)
【文献】
特開2008−304093(JP,A)
【文献】
特表2009−543320(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/263356(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28B 1/00−11/00
F28D 15/00−15/06
G03F 7/20−7/24
9/00−9/02
H01L 21/027
21/30
21/67−21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクと、
前記タンクから液相の冷媒を取り出して冷却し前記タンクに戻すように液相の冷媒をポンプによって循環させる第1経路と、
前記第1経路から分岐した第2経路と、を備え、
前記第2経路は、前記第1経路から供給される液相の冷媒を加熱する加熱器と、前記加熱器によって加熱された冷媒の圧力を降下させる絞りと、前記絞りを通過した冷媒の少なくとも一部を冷却対象物からの熱によって気化させる気化器とを含み、前記気化器を通過した冷媒を前記タンクに戻す、
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記絞りを通過した冷媒の温度を検出する温度検出器と、
前記温度検出器の出力に基づいて前記加熱器を制御する温度制御器と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第1経路は、熱交換器を含み、前記タンクから前記ポンプによって吸い出された冷媒が前記熱交換器を通して前記タンクに戻される、
ことを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1経路からの前記第2経路の分岐点は、前記ポンプと前記熱交換器との間に配置されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記第1経路は、前記第2経路の前記分岐点と前記タンクとの間に配置された第1絞りを更に備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記タンクにおける気化した冷媒の量を検出する検出部と、
前記検出部の出力に基づいて前記熱交換器を制御する制御器と、
を更に備えることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記タンクには、前記タンクの中で気化しないガスが封入されている、
ことを特徴とする請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記ガスは、前記第2経路から前記タンクに戻される冷媒の蒸気圧と前記タンクの中の冷媒の蒸気圧との差に相当する分圧を発生する、
ことを特徴とする請求項7に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記ガスの分圧は、前記ポンプのNPSH以上である、
ことを特徴とする請求項7に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記熱交換器が排出した熱を前記加熱器に移動させるヒートポンプを更に備え、
前記加熱器は、前記ヒートポンプから提供される熱を利用して、前記第1経路から供給される液相の冷媒を加熱するように構成されている、
ことを特徴とする請求項3乃至9のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記ヒートポンプは、前記温度検出器の出力に基づいて制御される、
ことを特徴とする請求項10に記載の冷却装置。
【請求項12】
前記熱交換器が排出した熱を前記加熱器に移動させるヒートポンプを更に備え、
前記加熱器は、前記ヒートポンプから提供される熱を利用して、前記第1経路から供給される液相の冷媒を加熱するように構成され、
前記ヒートポンプは、前記温度検出器の出力および前記検出部の出力に基づいて制御される、
ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項13】
前記タンクは、前記タンクの中の水平断面積よりも大きい断面積を有する部材を有し、
前記部材は、前記タンクの中の液相の冷媒および前記第2経路から戻される冷媒に接触するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項14】
前記第1経路から前記タンクに戻される冷媒は、前記部材の上方から落下するように前記タンクに戻される、
ことを特徴とする請求項13に記載の冷却装置。
【請求項15】
前記第1経路から前記タンクに戻される冷媒は、前記タンクの上方からシャワー状またはミスト状にして滴下または噴霧される、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項16】
前記加熱器によって加熱された冷媒と第2冷却対象物との間で熱交換を行う第2熱交換器を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項17】
前記第2熱交換器を通過した冷媒が前記タンクに戻される、
ことを特徴とする請求項16に記載の冷却装置。
【請求項18】
前記第2熱交換器と前記タンクとの間の経路に配置された絞りを更に備える、
ことを特徴とする請求項17に記載の冷却装置。
【請求項19】
発熱部を有する半導体製造装置であって、
請求項1乃至18のいずれか1項に記載の冷却装置を備え、
前記冷却装置は、前記冷却対象物としての前記発熱部を冷却するように構成されている、
ことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項20】
パターンを形成するパターン形成装置として構成されている、
ことを特徴とする請求項19に記載の半導体製造装置。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の半導体製造装置によって基板を処理する工程と、
前記工程で処理された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置、半導体製造装置および半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置、インプリント装置、電子線描画装置等のパターン形成装置、または、CVD装置、エッチング装置、スパッタリング装置等のプラズマ処理装置等のような半導体製造装置は、駆動機構、あるいはプラズマによって加熱される部材等の発熱部を有しうる。このような発熱部を冷却するために、半導体製造装置には冷却装置が備えられうる。冷却装置は、発熱部から熱を奪い、その熱を移動させることによって発熱部を冷却する。
【0003】
特許文献1には、部品から熱を抽出する蒸発器と、凝縮器と、ポンプと、アキュムレータと、熱交換器と、温度センサを備える冷却システムが記載されている。ここで、ポンプから出た流体が蒸発器、凝縮器を介してポンプに戻る回路が構成され、アキュミュレータは、回路と流体連通している。熱交換器は、アキュムレータ内の流体からの熱の伝達およびアキュムレータ内の流体への熱の伝達を行う。この量は、温度センサの出力に基づいて制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5313384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された冷却システムでは、ポンプから出た流体が蒸発器、凝縮器を介してポンプに戻る回路が構成され、流体を安定して循環させるためにポンプ吸い込み部でキャビテーションを回避する必要がある。このために、凝縮器、又はその下流もしくは上流に冷却器を追加し、ポンプの吸い込み部の流体温度を下げるか圧力を上げなければならない。ポンプの出口では、流体は加圧されるため、流体は気化しにくい状態で発熱部に送られる。発熱部では、流体が発熱部の流体圧力下の沸点まで温度上昇するまでは気化冷却は行われないため、この間で発熱部の温度変動を許すことになり、発熱部周辺の部材が熱膨張により変形しうる。そこで、温度変動を抑えるために、流体の気液2相のアキュムレータを用いて発熱部の下流が所定温度になる様にアキュムレータへの熱量制御で流体の気液バランスを変化させ、系全体の圧力を変えることで沸点が制御される。また、発熱時は、アキュムレータから熱を回収し凝縮させ循環系の圧力を降下させるが、ポンプ吸い込み部の圧力も下がりキャビテーションのリスクが発生する。逆に発熱しない場合は、アキュムレータに熱を供給して気化させ、循環系を昇圧させることで沸点を上げる。しかし、循環系の熱収支を合わせるためには凝縮器あるいは冷却器による流体の冷却熱量制御、あるいは加熱手段を別途設けて発熱量制御を行う必要が生じ、構成並びに制御方法が複雑化しうる。
【0006】
本発明の1つの側面は、簡易な構成を有する冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、冷却装置に係り、前記冷却装置は、タンクと、前記タンクから液相の冷媒を取り出して冷却し前記タンクに戻すように液相の冷媒をポンプによって循環させる第1経路と、前記第1経路から分岐した第2経路と、を備え、前記第2経路は、前記第1経路から供給される液相の冷媒を加熱する加熱器と、前記加熱器によって加熱された冷媒の圧力を降下させる絞りと、前記絞りを通過した冷媒の少なくとも一部を冷却対象物からの熱によって気化させる気化器とを含み、前記気化器を通過した冷媒を前記タンクに戻す。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1つの側面によれば、簡易な構成を有する冷却装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態の冷却装置の構成を示す図。
【
図2】本発明の第2実施形態の冷却装置の構成を示す図。
【
図3】本発明の第2実施形態の冷却装置における冷媒の熱サイクルを例示する図。
【
図4】本発明の第3実施形態の冷却装置の構成を示す図。
【
図5】本発明の第4実施形態の冷却装置の構成を示す図。
【
図6】本発明の第5実施形態の冷却装置の構成を示す図。
【
図7】本発明の1つの実施形態の半導体製造装置の構成を示す図。
【
図8】本発明の1つの実施形態の半導体製造装置の構成を示す図。
【
図9】本発明の1つの実施形態の半導体製造装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明をその例示的な実施形態を通して説明する。
【0011】
図1には、本発明の第1実施形態の冷却装置1の構成が示されている。冷却装置1による冷却対象は、特別な対象に限定されるものではないが、例えば、半導体製造装置、特に半導体製造装置の発熱部でありうる。半導体製造装置は、例えば、露光装置、インプリント装置、荷電粒子線描画装置等のパターン形成装置、あるいは、CVD装置、エッチング装置、スパッタリング装置等のプラズマ処理装置でありうる。パターン形成装置は、基板および/または原版等の部品を高速で移動させる駆動機構を有し、該駆動機構は、物品の駆動に伴って発熱し、発熱部となりうる。プラズマ処理装置では、プラズマによって電極等の部品が加熱され、該部品が発熱部となりうる。
【0012】
冷却装置1は、発熱部等の冷却対象物80を冷却するように構成されうる。冷却装置1は、タンク10と、タンク10から液相の冷媒12を取り出して熱交換器26で冷却しタンク10に戻すように液相の冷媒12をポンプ22によって循環させる第1経路20と、第1経路20から分岐した第2経路30とを備えうる。
【0013】
第1経路20からの第2経路30の分岐点P1は、ポンプ22と熱交換器26との間に配置されうる。第1経路20は、熱交換器26とタンク10との間に配置された第1絞り24を有しうる。第1絞り24は、液相の冷媒12の圧力を降下させうる。第1絞り24は、第1経路20からの第2経路30の分岐点P1と熱交換器26の間に配置されてもよい。
【0014】
第1経路20では、冷媒12が液相の状態で循環されうる。よって、液相と気相とが混在する系におけるようなキャビテーションによってポンプがダメージを受けることを考慮する必要がない。そのため、第1実施形態によれば、第1経路20に気相の冷媒12を液相に変化させるための凝縮器を設ける必要がなく、簡易な構成の冷却装置1が実現されうる。ただし、第1経路20の設計においては、液相の冷媒12の移送におけるキャビテーションの発生が防止されるようにポンプ22の仕様等が決定されうる。例えば、最もキャビテーションが発生しやすいポンプ22の吸い込み部において、冷媒12の圧力が冷媒12の吸い込み部の温度における飽和蒸気圧とポンプ22固有のNPSH(Net Positive Suction Headの略。)との合算値より大きくなる様にポンプ22の選定並びに循環系路の流量と圧損を決定すればよい。
【0015】
第2経路30は、例えば、加熱器32と、絞り(第2絞り)34と、気化器36とを含み、気化器36を通過した冷媒をタンク10に戻すように構成されうる。加熱器32は、第1経路20から供給される液相の冷媒12を所定の温度に加熱する。絞り32は、加熱器32によって所定の温度に加熱された冷媒12の圧力を所定の温度下における飽和蒸気圧近傍まで降下させ、冷媒12を沸騰しやすい状態にする。気化器36は、絞り34を通過した冷媒12の少なくとも一部を冷却対象物80からの熱によって沸騰気化させる。気化器36を通過した気液2相混合状態の冷媒12は、タンク10に戻され、第1経路20で冷却された液相の冷媒12との混合によって冷却され、気相から液相に変化しうる(即ち、凝縮しうる)。冷却装置1は、絞り34を通過した冷媒12の温度を検出する温度検出器42と、温度検出器42の出力に基づいて加熱器32を制御する温度制御器44とを更に備えうる。これにより、目標温度に設定された冷媒12が気化器36に供給されうる。
【0016】
第1実施形態によれば、冷却装置1は、冷媒12の相変化が気化器36とタンク10の2箇所に限定され、更に、温度差が異なる冷媒12の混合によって液相の冷媒12を凝縮させる。よって、冷却装置1で回収された熱を系外に排出する手段は熱交換器26の一つでよい。これによって、簡易な構成の冷却装置1が実現されうる。
【0017】
図2には、第2実施形態の冷却装置1の構成が示されている。第2実施形態の冷却装置1は、第1実施形態の冷却装置1の改良型であり、第2実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。第2実施形態の冷却装置1は、タンク10における気化した冷媒12の量を検出する検出部52と、検出部52の出力に基づいて熱交換器26(における熱交換)を制御する制御器54とを追加的に備えうる。タンク10における気化した冷媒12の量は、タンク10の中の圧力に依存する。したがって、検出部52は、タンク10の中の圧力を検出することによって、タンク10における気化した冷媒12の量を検出することができる。タンク10における気化した冷媒12の量(換言すると、タンク10の中の圧力)は、タンク10の中の液相の冷媒12の温度にも依存する。したがって、検出部52の出力に基づいて制御器54が熱交換器26(における熱交換)を制御することによって、第1経路20を循環する液相の冷媒12の温度を制御することができ、更には、気化した冷媒12の凝縮量を制御することができる。
【0018】
冷媒12の凝縮量を制御するには、タンク10の内部で常に気相の冷媒12が存在しなければならない。これを実現するために、タンク10には、タンク10の温度下で凝縮しないガス72が封入されうる。ガス72は、冷媒12と反応しないガスである。
【0019】
図3は、冷却装置1における冷媒12の相図である。
図3には、飽和蒸気圧線と熱サイクルが例示され、飽和蒸気圧線より上側では冷媒12は液相であり、飽和蒸気圧線より下側では冷媒12が気相である。第1経路20では、液相の冷媒12はポンプ22によってタンク10から吸い出されて加圧されて状態S2となり、熱交換器26で冷却されて状態S5になり、更に絞り24で減圧されて状態S6となってタンク10に戻される。
【0020】
第2経路30では、状態S2における冷媒12は、加熱器32によって加熱されて状態S3になり、その後、絞り34で減圧されて状態S4となり、熱交換器26を通してタンク10に戻される。ガス72は、タンク10に戻される冷媒12の蒸気圧と、タンク10の中の(温度が制御された)液相の冷媒12の蒸気圧との差に相当する分圧(「ガス分圧」)を与えるようにタンク10内に所定量封入されている。これにより、第2経路30を通してタンク10に戻った冷媒12は、状態S1の温度下における飽和蒸気圧分の気体として存在することができる。ここで、ガス72による分圧がないと、冷媒12は、状態S1において飽和蒸気圧線の上側の状態、即ち液相状態となってしまう。ガス72の分圧をポンプ22のNPSH以上にすることは、キャビテーションの発生を防ぐことと等価である。よって、ガス72の分圧は、ポンプ22のNPSH以上とされうる。
【0021】
冷却対象物80が発熱すると、第2経路30の気化器36で冷媒12が気化して潜熱として熱を吸収しタンク10に戻され、タンク10内の圧力が上昇する。その上昇分が検出器52で検出され、常にタンク10の圧力が所定の圧力、即ち状態S4の温度における冷媒12の飽和蒸気圧になる様に、制御器54が第1経路20の冷媒12の温度を下げる方向に制御する。逆に、冷却対象物80の発熱がなくなると、第2経路30の気化器36で冷媒12が気化しなくなり、タンク10内の圧力が降下する。その上昇分が検出器52で検出され、常にタンク10の圧力が所定圧力、即ち状態S4の温度における冷媒12の飽和蒸気圧になる様に、制御器54が第1経路20の冷媒12の温度を上げる方向に制御する。
【0022】
これにより、冷却対象物80の発熱状態に追従して、冷却対象物80を状態S4の一定温度で冷媒12の気化潜熱で熱を回収し熱交換器26で系外部へ排出することができる。
ここで、第2経路の冷媒12が気液2相流となる気化器26とタンク10との間の管は、管径を大きくし、圧力損出を極力小さくし気化器26とタンク10の差圧を小さくすることが好ましい。これにより、冷却対象物80の発熱量変化による温度変動を抑えることができる。
【0023】
図4には、第3実施形態の冷却装置1の構成が示されている。第3実施形態の冷却装置1は、第2実施形態の冷却装置1の改良型であり、第3実施形態として言及しない事項は、第1、第2実施形態に従いうる。第3実施形態の冷却装置1では、タンク10は、タンク10の中の水平断面積よりも大きい断面積を有する部材14を有する。部材14は、タンク10の中の液相の冷媒12および第2経路30から戻される冷媒12に接触するように配置されうる。部材14は、例えば、表面に凹凸を有する部材、メッシュ状の部材、複数の孔を有する部材、または、多孔質部材でありうる。第1経路20からタンク10に戻される液相の冷媒12は、部材14の上方から落下するようにタンク10に戻されうる。あるいは、第1経路20からタンク10に戻される液相の冷媒12をシャワー状またはミスト状にしてタンク10の上部から滴下または噴霧させてもよい。
【0024】
これにより、第1経路20において熱交換器26によって冷却された低温の液相の冷媒12と、第2経路30から戻ってくる高温の冷媒12との接触面積が増加し、第2経路30から戻ってくる高温の冷媒12を凝縮させる効率が改善しうる。
【0025】
図5には、第4実施形態の冷却装置1の構成が示されている。第4実施形態の冷却装置1は、第1乃至第3実施形態の冷却装置1の改良型であり、第4実施形態として言及しない事項は、第1乃至第3実施形態に従いうる。
【0026】
第4実施形態の冷却装置1は、第1経路20に設けられた熱交換器26が排出した熱を第2経路30に設けられた加熱器32に移動させるヒートポンプ92を更に備えうる。加熱器32は、ヒートポンプ92から提供される熱を利用して、第1経路20から分岐して供給される第2経路30の液相の冷媒12を加熱するように構成されうる。ヒートポンプ92は、例えば、温度検出器42の出力に基づいて制御されうる。あるいは、ヒートポンプ92は、温度検出器42の出力および検出部52の出力に基づいて制御されうる。
【0027】
第4実施形態によれば、第1経路20の熱交換器26が排出した熱を利用して第2経路30の加熱器32が冷媒12を加熱することによってエネルギー消費を低減することができる。
【0028】
図6には、第5実施形態の冷却装置1の構成が示されている。第5実施形態の冷却装置1は、第1乃至第4実施形態の冷却装置1の改良型であり、第5実施形態として言及しない事項は、第1乃至第4実施形態に従いうる。第5実施形態の冷却装置1は、加熱器32によって加熱された冷媒12と第2冷却対象物82との間で熱交換を行う第2熱交換器96を更に備える。第2熱交換器96を通過した冷媒12は、タンク10に戻されうる。第2熱交換器96とタンク10との間の経路には、絞り98が配置されうる。加熱器32と第2冷却対象物82との間には、絞りが配置されないことが好ましい。これは、冷媒12の圧力が高い状態で第2冷却対象物82へ供給することにより冷媒12の相変化をさせずに第2冷却対象物82の熱回収を行うことができるためである。これにより、冷媒12の相変化時に発生する微振動が第2冷却対象物82に伝達しなくなる。
【0029】
第5実施形態の冷却装置1は、例えば、発熱量が相対的に大きく、振動に対する許容度が相対的に高い冷却対象物(第1冷却対象物)80と、発熱量が相対的に小さく、振動に対する許容度が相対的に小さい第2冷却対象物82とを冷却するために有用である。そのような第1冷却対象物80および第2冷却対象物82を有する装置としては、例えば、粗動機構おおよび微動機構を備える位置決め装置(ステージ装置)を挙げることができる。ここで、粗動機構は、微動機構を粗駆動し、微動機構は、位置決め対象物(例えば、基板、または、基板ステージ)を微駆動するように構成されうる。粗駆動機構のアクチュエータは、第1冷却対象物80でありうる。微動機構のアクチュエータは、第2冷却対象物82でありうる。
【0030】
以下、
図7、
図8および
図9を参照しながら上記の冷却装置1が適用された半導体製造装置について例示的に説明する。
図7には、半導体製造装置、より詳しくはパターン形成装置の一例としての露光装置100の構成が模式的に示されている。露光装置100は、原版101のパターンを、感光材層を有する基板102の該感光材層に対して投影光学系140によって転写するように構成されうる。露光装置100は、原版101を照明する照明光学系150と、投影光学系140と、基板位置決め機構SPMとを備えうる。また、露光装置100は、原版101を位置決めする原版位置決め機構(不図示)を備えうる。基板位置決め機構SPMは、基板102を保持する基板チャックを有する基板ステージ110と、基板ステージ110を駆動する駆動機構120と、駆動機構120を支持するベース部材130とを含みうる。駆動機構120は、基板ステージ110とともに移動する可動子122と、ベース部材130に固定された固定子124とを含むアクチュエータを有しうる。固定子124は、冷却対象物80としてのコイル列を含みうる。冷却装置1は、冷却対象物80としてのコイル列を冷却するように構成されうる。
【0031】
図8には、半導体製造装置、より詳しくはパターン形成装置の一例としてのインプリント装置200の構成が模式的に示されている。インプリント装置200は、基板102の上のインプリント材に原版101のパターンを転写するように構成されうる。インプリント装置200は、原版101を駆動する原版駆動機構160と、基板102を駆動する基板駆動機構SPMと、基板102の上に配置されたインプリント材を硬化させる硬化部170とを備えうる。
【0032】
原版駆動機構160および基板駆動機構SPMの少なくとも一方によって基板102のショット領域と原版101のパターン領域とのアライメントを行うことができる。原版駆動機構160および基板駆動機構SPMの少なくとも一方によって、基板102の上に配置されたインプリント材と原版101のパターン領域との接触、および、インプリント材とパターン領域との分離を行うことができる。基板102の上に配置されたインプリント材と原版101のパターン領域とを接触させた状態で、硬化部170によってインプリント材が硬化される。その後、硬化したインプリント材と原版101のパターン領域とが分離される。これにより、基板102の上にインプリント材の硬化物からなるパターンが形成される。つまり、基板102の上のインプリント材には、原版101のパターン領域が転写される。
【0033】
基板位置決め機構SPMは、基板102を保持する基板チャックを有する基板ステージ110と、基板ステージ110を駆動する駆動機構120と、駆動機構120を支持するベース部材130とを含みうる。駆動機構120は、基板ステージ110とともに移動する可動子122と、ベース部材130に固定された固定子124とを含むアクチュエータを有しうる。固定子124は、冷却対象物80としてのコイル列を含みうる。冷却装置1は、冷却対象物80としてのコイル列を冷却するように構成されうる。
【0034】
図9には、半導体製造装置の一例としてのプラズマ処理装置300の構成が模式的に示されている。プラズマ処理装置300は、例えば、CVD装置、エッチング装置またはスパッタリング装置でありうる。プラズマ処理装置300は、チャンバ330と、チャンバ330の中に配置された1または複数の冷却対象物80a、80bとしての電極構造を備えうる。
図9の例では、基板302は、冷却対象物80aによって支持されうる。チャンバ330の中には、プラズマを発生させるためのガスが供給されうる。プラズマ処理装置300がCVD装置として構成される場合、チャンバ330の中には、成膜用のガスが供給されうる。プラズマ処理装置300がエッチング装置として構成される場合、チャンバ330の中には、エッチング用のガスが供給されうる。プラズマ処理装置300がスパッタリング装置として構成される場合、チャンバ330の中には、プラズマを発生させるためのガスが供給され、また、冷却対象物80bとしての電極構造には、ターゲットが取り付けられうる。冷却装置1は、冷却対象物80a、80bを冷却するように構成されうる。
【0035】
本発明の1つの側面としての半導体製造方法は、上記の露光装置100、インプリント装置200およびプラズマ処理装置300に代表される半導体製造装置によって基板を処理する工程と、該工程によって処理された基板を加工する工程と、を含みうる。半導体製造装置によって基板を処理する工程は、例えば、基板にパターンを形成する工程、基板に膜を形成する工程、または、基板またはその上に形成された膜をエッチングする工程でありうる。基板を加工する工程は、例えば、基板にパターンを形成する工程、基板に膜を形成する工程、または、基板またはその上に形成された膜をエッチングする工程でありうる。あるいは、基板を加工する工程は、基板を分割(ダイシング)する工程、または、基板を封止する工程でありうる。