(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算部は、粒子位置を含む粒子状態に前記単一粒子干渉画像を対応付けた単一粒子状態情報中からk個(kは自然数)の前記単一粒子干渉画像を選択する組み合わせを求め、求めたそれぞれの組み合わせについて、前記計算画像を生成し、生成した前記計算画像をそれぞれ前記合成画像と比較する請求項1に記載の計測装置。
前記演算部は、前記単一粒子干渉画像中からk個の前記単一粒子干渉画像を選択する組み合わせ中に、前記合成画像に一致する前記計算画像が存在しなかった場合に、粒子数kを所定の範囲で変化させる請求項2に記載の計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる計測装置および計測方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
図1は、実施形態による計測装置の構成の一例を模式的に示す図であり、
図2は、実施形態による計算機の機能構成の一例を模式的に示すブロック図である。計測装置1は、干渉パターン生成部10と、演算部である計算機30と、を備える。干渉パターン生成部10は、レーザ光源11からのレーザ光を分離した物体光L
Oを検査対象の粒子51を含む試料50に照射して得られる散乱光L
Sおよびレーザ光源11からのレーザ光を分離した参照光L
Rによる第1干渉パターンと、散乱光L
Sによる第2干渉パターンと、を撮像する。試料50として、たとえば粒子51を含む試料などを例示することができる。
【0009】
干渉パターン生成部10は、レーザ光源11と、ビームスプリッタ12と、参照光光学系13と、物体光光学系14と、ハーフミラー15と、撮像素子16と、撮像素子17と、を備える。レーザ光源11は、コヒーレント光であるレーザ光Lを出射する。レーザ光源11として、たとえば波長405nmの半導体レーザなどを用いることができる。ビームスプリッタ12は、レーザ光源11から出射されたレーザ光Lを試料50に入射させる物体光L
Oと、試料50に入射させない参照光L
Rと、に分離する。ここでは、ビームスプリッタ12は、物体光L
Oを反射し、参照光L
Rを透過させるものとする。
【0010】
参照光光学系13は、参照光をハーフミラー15へと導く光学部品を有する。ここでは、参照光光学系13として、ビームスプリッタ12を透過してきた参照光L
Rをハーフミラー15へと反射させるミラー131が設けられる。
【0011】
物体光光学系14は、物体光L
Oを試料50に照射するとともに、試料50からの光をハーフミラー15へと導く光学部品を有する。物体光光学系14は、ミラー141と、対物レンズ142と、ビームスプリッタ143と、を有する。ミラー141は、ビームスプリッタ12で反射された物体光L
Oを試料50に照射させるために物体光L
Oの光路を変更する。対物レンズ142は、試料50中の粒子51で散乱された散乱光L
Sの波面を変換して、撮像素子16,17上に干渉パターンを形成するためのレンズである。ビームスプリッタ143は、対物レンズ142を透過した散乱光L
Sを、撮像素子17側に導く光路と、ハーフミラー15側に導く光路と、に分離する。
【0012】
ハーフミラー15は、参照光光学系13を通ってきた参照光L
Rと、物体光光学系14で試料50中の粒子51で散乱された散乱光L
Sと、を合波して、撮像素子16へと導く。ここでは、ハーフミラー15は、参照光L
Rを撮像素子16へと反射させ、散乱光L
Sを撮像素子16へと透過させる。
【0013】
撮像素子16は、散乱光L
Sと参照光L
Rとの干渉パターンである第1干渉画像を撮像し、計算機30に出力する。撮像素子17は、複数の粒子51からの散乱光L
Sによる干渉パターンである第2干渉画像を撮像し、計算機30に出力する。撮像素子16,17には、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサなどが用いられる。なお、ビームスプリッタ143と撮像素子16との間の光学距離と、ビームスプリッタ143と撮像素子17との間の光学距離とが等しくなるように、撮像素子16、撮像素子17およびハーフミラー15が設けられる。
【0014】
計算機30は、第1干渉画像と第2干渉画像とを合成することによって生成した合成画像と、試料50中に単独で粒子51が存在する場合に撮像素子16で得られることが予想される干渉画像である単一粒子干渉画像を組み合わせて得られる計算画像と、を比較する。合成画像は、第1干渉画像から第2干渉画像と参照光L
R単独の光強度とを除去した画像である。単一粒子干渉画像は、試料50中に粒子51が単一で存在するとした場合に撮像素子16で得られる干渉画像であり、単一粒子の粒子状態の数だけ存在する。粒子状態としては、試料50中の粒子51の位置と、散乱光L
Sの複素振幅と、の組み合わせを例示することができる。計算機30は、合成画像と計算画像とが一致した場合には、計算画像の計算に使用された粒子の位置に粒子が存在するものと判定する。
【0015】
ここで、計算機30による試料50(液体)中の粒子51の位置の推定方法について詳細に説明する。試料50中の粒子51が十分小さければ各粒子51からの散乱光L
Sは、各々の粒子51を点光源とみなして放射される球面波の重ね合わせと考えられる。N個の粒子51で散乱された散乱光L
Sが撮像素子17上に形成する光強度分布φは、各々の粒子51からの散乱光L
Sによる電場の複素振幅をE
n(n=1,2,…,N)とすると、次式(1)で与えられる。
【数1】
【0016】
一方で、ビームスプリッタ143と撮像素子16との間の光学的距離と、ビームスプリッタ143と撮像素子17との間の光学的距離を等しくとれば、撮像素子16上の光強度分布Ψは、参照光L
Rの電場の複素振幅をE
rとすると、次式(2)で与えられる。
【数2】
【0017】
(2)式で与えられる干渉パターンは各々の粒子51による散乱光L
S同士の干渉を含み複雑である。そこでΨ−φを考えると、(1)式および(2)式から次式(3−1),(3−2)が得られる。ただし、I
rは、次式(4)で示され、I
nは、次式(5)で示される。
【数3】
I
r=E
rE
*r ・・・(4)
I
n=E
rE
*n+E
*rE
n ・・・(5)
【0018】
ここで、(3−1)式のI
rは参照光L
R単独の光強度を表し、I
nは各粒子51が単独に存在していた場合に発生する散乱光L
Sと参照光L
Rとの干渉パターンを表す。参照光L
R単独の光強度I
rは物体光L
Oを遮断してあらかじめ測定しておけば既知のパラメータとなる。そこで、(3−2)式からI
rを差し引いて得られるものを、次式(6)に示されるように合成光強度分布ηとする。
【数4】
【0019】
図3は、実際の干渉パターンから合成光強度分布を求める方法を模式的に示す図である。実際の計測では、
図3(a)に示されるように、(2)式の撮像素子16上の光強度分布Ψで表される第1干渉画像301が撮像素子16で得られる。また、
図3(b)に示されるように、(1)式の撮像素子17上の光強度分布φで表される第2干渉画像302が撮像素子17で得られる。第1干渉画像301および第2干渉画像302は計算機30に転送され、(6)式の合成光強度分布ηで表される合成画像303を上述の計算によって得る。すなわち、
図3(a)の第1干渉画像301から、
図3(b)の第2干渉画像302およびオフセット成分である参照光L
R単独の光強度I
rを引いた
図3(c)に示される合成画像303が計算機30によって算出される。
【0020】
ところで、各々の粒子51からの散乱光L
Sによる電場の複素振幅E
n(n=1,2,…,N)は、各々の粒子51の位置と、対物レンズ142の焦点距離および撮像素子16の位置と、から計算できる。
図4は、単一粒子で散乱される散乱光が対物レンズを透過する様子を模式的に示す図である。ここでは、対物レンズ142の主点を原点とし、z軸を光軸に一致させた座標系としている。粒子51の位置をPo=(x,y,zo)とし、粒子51の像の位置(像点)をPi=(x’,y’,zi)とおけば、レンズの公式から次式(7)〜(9)の関係が成り立つ。ただし、fは対物レンズ142の焦点距離であり、Mは横倍率M=zi/zoである。
x’=Mx ・・・(7)
y’=My ・・・(8)
【数5】
【0021】
像空間における散乱光L
Sは、像点Piを中心とした球面波であるから、z=zsに配置された撮像素子16上の点Ps=(x”,y”,zs)における複素振幅E
nは、次式(10)で示される。ただし、kは波数であり,Aは振幅の大きさを表す複素数である。
【数6】
【0022】
一方、簡単のために一様な光強度分布を持つ参照光L
Rを仮定すれば、撮像素子16上の点Ps=(x”,y”,zs)における参照光L
Rの複素振幅E
rは、次式(11)で示される。ただし、A
rは振幅を表す複素数であり、k
rx,k
ry,k
rzは、それぞれ参照光L
Rの波数ベクトルのx,y,z成分であり、次式(12)を満たす。
【数7】
k
rx2+k
ry2+k
rz2=k
2 ・・・(12)
【0023】
(7)式〜(11)式を用いて、(6)式の合成光強度分布ηを計算すれば実際の計測結果から求められる合成画像と同じものが得られるはずである。しかし、そのためには試料50中の粒子数Nと各粒子51の位置および散乱光L
Sの複素振幅(x
i,y
i,zo
i,A
i)(i=1,2,…,N)がわからなければならない。逆に適当に各粒子51の位置(x
i,y
i,zo
i)と散乱光L
Sの複素振幅A
iとを決めて(6)式を用いて計算した合成光強度分布ηの結果が合成画像と一致すれば、その適当に決めた位置に各粒子51があると推測できる。
【0024】
そこで、まず未知数である試料50中の粒子位置Poと、散乱光L
Sの複素振幅Aと、を用いて単一粒子状態情報である単一粒子状態テーブルを作成する。単一粒子状態テーブルは、粒子位置Poと散乱光L
Sの複素振幅Aとを離散的に想定し、想定した粒子位置Poと散乱光L
Sの複素振幅Aとの組み合わせをまとめたものである。単一粒子状態テーブルには、粒子位置Poと散乱光L
Sの複素振幅Aとの組み合わせである要素(粒子状態)(x
i,y
i,zo
i,A
i)がT
size個含まれる。そして、それぞれの要素について、(7)式〜(11)式を用いて、撮像素子16上の点Psにおける複素振幅E
nおよび撮像素子16上の点Psにおける参照光L
Rの複素振幅E
rを求め、さらに、粒子51が単独に存在していた場合に発生する散乱光L
Sと参照光L
Rとの干渉パターンI
nを、(5)式を用いて計算し、単一粒子干渉画像を求める。単一粒子干渉画像は、計算の基になった粒子状態に対応付けられて、単一粒子状態テーブルに保存される。
【0025】
その後、粒子数Nを適当に決めて、単一粒子状態テーブルから選択したN個の要素に対応する単一粒子干渉画像を(6)式を適用して計算画像を合成する。
【0026】
図5は、単一粒子干渉画像から計算によって計算画像を求める方法を模式的に示す図である。たとえば、
図5(a)は、要素(x
1,y
1,zo
1,A
1)に対応する単一粒子干渉画像401を示し、
図5(b)は、要素(x
2,y
2,zo
2,A
2)に対応する単一粒子干渉画像402を示している。そして、これら2つの単一粒子干渉画像401,402を(6)式にしたがって合成すると、
図5(c)に示される計算画像403が得られる。
【0027】
合成画像と計算画像の比較には例えば画素値の残差平方和(Residual Sum of Square:RSS)を用いる。画素値の残差平方和RSSに閾値RSS
thを設定しておき、閾値RSS
thより小さな画素値の残差平方和RSSが求まるまで、単一粒子状態テーブルからN個の要素を選択する組み合わせまたは粒子数Nを変化させて、得られる計算画像と合成画像とを比較する。すなわち、画素値の残差平方和RSSが閾値RSS
thよりも大きい場合には、合成画像と計算画像とは一致していないと判定し、画素値の残差平方和RSSが閾値RSS
thよりも小さい場合には、合成画像と計算画像とは一致していると判定する。なお、画素値の残差平方和RSSが閾値RSS
thと同じである場合には、合成画像と計算画像とが一致していると判定してもよいし、一致していないと判定してもよい。
【0028】
計算画像と合成画像とが一致すれば、選択したN個の要素中の(x
k,y
k,zo
k)(kは1〜Nまでの整数)が求める各々の粒子51の位置となる。たとえば、
図3(c)の合成画像303と、
図5(c)の計算画像403と、を比較すると、両者は一致するので、
図5(c)の計算画像403を求める際に使用した単一粒子干渉画像401,402に対応付けられた要素中の位置が、試料50中の粒子51が存在する位置となる。
【0029】
以上のような方法で粒子51の位置を推測するために、
図2に示されるように、本実施形態の計算機30は、入力部31と、画像取得部32と、閾値記憶部33と、粒子数記憶部34と、単一粒子状態テーブル記憶部35と、単一粒子干渉画像生成部36と、合成画像生成部37と、計算画像生成部38と、判定部39と、位置取得部40と、これらの各処理部を制御する制御部41と、を有する。
【0030】
入力部31は、ユーザによって位置推測に必要な情報が入力される際のインタフェースである。入力部31は、キーボードなどによって構成される。入力部31から、閾値RSS
th、想定する粒子数Nの最小値N
minおよび最大値N
max、想定する粒子位置Po
iおよび散乱光の複素振幅A
iなどが入力される。画像取得部32は、撮像素子16から第1干渉画像を取得し、撮像素子17から第2干渉画像を取得する。
【0031】
閾値記憶部33は、入力部31から入力された閾値RSS
thを記憶する。粒子数記憶部34は、入力部31から入力された想定する粒子数Nの最小値N
minおよび最大値N
maxを記憶する。
【0032】
単一粒子状態テーブル記憶部35は、単一粒子状態テーブルを記憶する。単一粒子状態テーブルは、上記したように、粒子状態と、単一粒子干渉画像と、を対応付けた情報である。
図6は、単一粒子状態テーブルの一例を示す図である。この図に示されるように、単一粒子状態テーブルは、試料50中での粒子位置Po
i(x
i,y
i,zo
i)と、散乱光L
Sの複素振幅A
iと、単一粒子干渉画像と、を有する。試料50中での粒子位置と散乱光L
Sの複素振幅A
iとの組み合わせが粒子状態となる。粒子位置Po
iと、散乱光L
Sの複素振幅A
iと、単一粒子干渉画像と、の組み合わせを単一粒子状態テーブルの要素というものとすると、単一粒子状態テーブルには、T
size個の要素が含まれる。なお、ここでは、粒子状態は、粒子位置と散乱光L
Sの複素振幅A
iとの組み合わせであるが、少なくとも粒子位置が含まれていればよい。
【0033】
入力部31から入力された単一粒子干渉画像の基となる単一粒子の位置Po
iおよびこの位置Po
iの単一粒子からの散乱光L
Sの複素振幅A
iの組み合わせが、単一粒子状態テーブルの粒子状態(x
i,y
i,zo
i,A
i)に記憶される。粒子状態は、単一粒子の位置が離散的となるように設定される。なお、入力する数が多い場合には、粒子位置Po
iおよび複素振幅A
iがとれる範囲をそれぞれ入力し、その範囲の中から任意のあるいはある規則にしたがって選択される値を粒子状態としてもよい。
【0034】
図7は、x方向の位置の違いによる単一粒子干渉画像の違いの一例を示す図であり、
図8は、y方向の位置の違いによる単一粒子干渉画像の違いの一例を示す図であり、
図9は、z方向の位置の違いによる単一粒子干渉画像の違いの一例を示す図である。
【0035】
図7(a)は、単一粒子が焦点f上に存在する場合の単一粒子干渉画像を示している。この場合には、単一粒子によって所定の間隔の直線状の干渉縞が生成される。
図7(a)の状態からx方向に−a(a>0)だけ単一粒子の位置がずれると、
図7(b)に示されるように、干渉縞の間隔が広がる。また、
図7(a)の状態からx方向に+aだけ単一粒子の位置がずれると、
図7(c)に示されるように、干渉縞の間隔が狭くなる。このように、単一粒子が焦点f上からx方向に移動する場合には、干渉縞の間隔が変化する。
【0036】
図7(a)の状態からy方向に−b(b>0)だけ単一粒子の位置がずれると、
図8(a)に示されるように、干渉縞は反時計回りに回転する。また、
図7(a)の状態からy方向に+bだけ単一粒子の位置がずれると、
図8(b)に示されるように、干渉縞は時計回りに回転する。このように、単一粒子が焦点f上からy方向に移動する場合には、干渉縞が回転する。
【0037】
図7(a)の状態からz方向に−c,−d(d>c>0)だけ単一粒子の位置がずれると、それぞれ
図9(a)、(b)に示されるように、曲線状の干渉縞が生成される。また、z方向へのずれ量が大きいほど、干渉縞の曲がり方が大きくなる傾向にある。このように、単一粒子が焦点f上からz方向に移動する場合には、干渉縞が曲線になる。
【0038】
なお、
図9では、粒子がz軸の負方向に沿って位置を変える場合を示したが、正方向に沿って位置を変える場合も同様の変化を示す。試料50がz方向の正の領域から負の領域にわたって焦平面を含むように配置されている場合には、得られる単一粒子干渉画像が単一粒子のz軸の正方向の位置変化によるものなのかあるいは負方向の位置変化によるものなのかの区別がつかなくなってしまう。そのため、実際の位置測定にあたっては、試料50が焦平面を跨らないように配置するとともに、試料50の位置が焦平面の物体光の進行方向側(対物レンズ側、z軸正側)にあるのか、あるいは焦平面の物体光の進行方向とは逆側(対物レンズとは反対側、z軸負側)にあるのかが定められる。
【0039】
焦平面を基準として、試料50が物体光の進行方向側に配置されている場合には、粒子51は焦平面からz軸の正方向側に位置し、負方向側には位置できないことになる。そのため、
図9の場合とはずれの位置を表す符号が逆になる。すなわち、単一粒子が焦点からz軸の正方向に沿ってcだけずれた位置にある場合には、
図9(a)の干渉縞が見られ、dだけずれた場合には、
図9(b)の干渉縞が見られる。また、焦平面を基準として、試料50が物体光の進行方向とは逆側に配置されている場合には、粒子51は焦平面からz軸の負方向側に位置し、正方向側には位置できないことになる。この場合には、
図9に示した干渉縞が用いられる。
【0040】
このように、焦点からx軸方向、y軸方向、z軸方向に単一粒子の位置がずれただけで、干渉縞は様々に変化する。そこで、単一粒子状態テーブルに、様々な粒子位置Po
i(x
i,y
i,zo
i)での干渉縞を保持しておくことで、種々の干渉縞の組み合わせを実現することが可能になる。また、ある粒子位置Po
iでも散乱光L
Sの複素振幅A
iの違いによっても干渉縞が変化するので、粒子位置Po
iと散乱光L
Sの複素振幅A
iとの様々な組み合わせが粒子状態として単一粒子状態テーブルに保持される。
【0041】
単一粒子干渉画像生成部36は、単一粒子状態テーブルに入力されたそれぞれの粒子状態について、(7)式〜(11)式を用いて、単一粒子干渉画像を生成する。単一粒子干渉画像は、選択した粒子状態を有する単一粒子が発生する散乱光L
Sと参照光L
Rとの撮像素子16上における干渉パターンである。また、単一粒子干渉画像生成部36は、
図6に示されるように、生成した単一粒子干渉画像を、この単一粒子干渉画像の生成の基となった粒子状態に対応付けて、単一粒子状態テーブルに保存する。
【0042】
合成画像生成部37は、画像取得部32で取得した第1干渉画像および第2干渉画像と、参照光L
R単独の光強度と、を用いて、合成画像を生成する。上記したように、合成画像生成部37は、第1干渉画像から第2干渉画像および参照光L
R単独の光強度を減算することによって、合成画像を生成する。なお、参照光L
R単独の光強度は、オフセット成分として定数として計算することができる。
【0043】
計算画像生成部38は、単一粒子状態テーブルから計算画像を生成する。具体的には、液体中に存在すると想定される粒子数をNとして、単一粒子状態テーブルからN個の粒子状態に対応する単一粒子干渉画像を取得し、計算画像を生成する。この計算画像の生成を、N個の粒子については、単一粒子状態テーブル中の要素数からの組み合わせを変えて行う。また、後述する判定部39で、粒子数がN個の場合のすべての組み合わせにおいて、合成画像と一致しなかった場合には、粒子数Nの最小値N
minと最大値N
maxとの間の他の粒子数Nについても同様の計算画像の生成を行う。
【0044】
判定部39は、合成画像生成部37で合成された合成画像と、計算画像生成部38で生成された計算画像と、を比較し、両者が一致するかを判定する。画像同士の比較には、たとえば上記した画素値の残差平方和が用いられる。判定部39は、両者が一致すると判定した場合には、一致したことを示す情報を計算画像生成部38および位置取得部40に通知する。これによって、計算画像生成部38では、計算画像を生成する処理が中止される。また、判定部39は、両者が一致しないと判定した場合には、一致しないことを示す情報を計算画像生成部38に通知する。これによって、計算画像生成部38では、計算画像を生成する処理が継続される。
【0045】
位置取得部40は、判定部39から合成画像と計算画像とが一致したことを示す情報を得た場合に、一致した計算画像で使用されたN個の粒子の粒子位置を単一粒子状態テーブルから取得し、これを試料50中の粒子51の位置として出力する。これは、一致した計算画像で使用されたN個の粒子の粒子位置が干渉パターン生成部10で測定された試料50中の粒子51の位置であると推測されるからである。位置取得部40は、たとえば、粒子51の位置を図示しない表示部に出力する。位置取得部40は、すべての粒子数Nの範囲のすべての組み合わせについて、判定部39から合成画像と計算画像とが一致しないことを示す情報を得た場合には、想定した粒子数Nと要素(粒子状態)の中には解がないことを示す情報をたとえば図示しない表示部に出力する。
【0046】
なお、閾値記憶部33、粒子数記憶部34および単一粒子状態テーブル記憶部35は、揮発性メモリで構成されてもよいし、不揮発性メモリで構成されてもよい。
【0047】
つぎに、上記した構成を有する計測装置1での計測方法について説明する。
図10は、実施形態による計測方法の手順の一例を示すフローチャートである。まず、レーザ光源11からレーザ光Lを出射し、試料50に照射し、試料50中の粒子51による散乱光L
Sと参照光L
Rとを干渉させた第1干渉パターンを撮像素子16で撮像し、試料50中の粒子51での散乱光L
Sによる第2干渉パターンを撮像素子17で撮像する。第1干渉パターンを撮像素子16で撮像したものが、第1干渉画像であり、第2干渉パターンを撮像素子17で撮像したものが、第2干渉画像である。計算機30の画像取得部32は、撮像素子16から第1干渉画像を取得し、撮像素子17から第2干渉画像を取得する(ステップS11)。ついで、合成画像生成部37は、第1干渉画像から第2干渉画像および参照光L
R単独の光強度を減算し、合成画像を生成する(ステップS12)。
【0048】
その後、画素値の残差平方和によって画像を比較する際に使用する閾値RSS
thがユーザによって入力部31から入力され(ステップS13)、閾値記憶部33に記憶される。また、試料50中の想定する粒子数Nの最大値N
maxと最小値N
minとがユーザによって入力部31から入力され(ステップS14)、粒子数記憶部34に記憶される。
【0049】
その後、単一粒子状態テーブル中の粒子状態と、単一粒子状態テーブル中の要素(粒子状態)の数T
sizeと、が入力される(ステップS15)。たとえば、単一粒子の位置が離散的となるように粒子位置(x
i,y
i,zo
i)と粒子位置に存在する単一粒子による散乱光L
Sの複素振幅A
iとの組み合わせが生成され、生成された組み合わせが粒子状態として単一粒子状態テーブル中に入力される。粒子状態は、計測装置1のユーザによって入力されてもよいし、計算機30で生成されてもよい。単一粒子状態テーブル中のそれぞれの粒子状態は、T[i](i=1〜T
size)と表すものとする。
【0050】
ついで、単一粒子干渉画像生成部36は、単一粒子状態テーブル中の各粒子状態T[i]に対して、(7)式〜(11)式を用いて、単一粒子干渉画像を生成する。単一粒子干渉画像生成部36は、生成した単一粒子干渉画像を、計算の基になった粒子状態T[i]に対応付けて単一粒子状態テーブルに保存する(ステップS16)。
【0051】
その後、計算画像生成部38は、想定する粒子数Nとして、ステップS14で設定した最小値N
minを設定する(ステップS17)。また、計算画像生成部38は、単一粒子状態テーブル中のT
size個の粒子状態T[i]の中からN個を選ぶ組み合わせの数j
maxを計算する(ステップS18)。組み合わせの数j
maxは、次式(13)によって計算される。
【数8】
【0052】
ついで、単一粒子状態テーブル中のT
size個の粒子状態T[i]からN個の粒子状態T[i]を選ぶ組み合わせを配列S[j]に入力する(ステップS19)。ここで、単一粒子状態テーブル中の各要素(粒子状態)を示すインデックスをi
k[j](k=1〜N)としたときに、配列S[j]は、次式(14)で表される。また、jは、T
size個の粒子状態T[i]からN個を選ぶ組み合わせに付されるインデックスであり、最大値はj
maxとなる。
S[j]=(i
1[j],i
2[j],・・・,i
N[j]) ・・・(14)
【0053】
その後、計算画像生成部38は、j
max個の組み合わせの中から1番目の組み合わせ(j=1)を設定し(ステップS20)、配列S[j]に対応する単一粒子干渉画像を単一粒子状態テーブルから取得し、(6)式を用いて計算画像を生成する(ステップS21)。具体的には、計算画像生成部38は、配列S[j](この場合には配列S[1]となる)に含まれるインデックス(この場合には、i
1[1],i
2[1],・・・,i
N[1])を取得し、それぞれのインデックスに対応付けられる単一粒子干渉画像を単一粒子状態テーブルから取得する。(6)式は、N個の単一粒子干渉画像を加算したものが計算画像であることを示している。なお、単一粒子干渉画像は、参照光L
Rと単一粒子が存在していた場合に発生する散乱光L
Sとの干渉パターンI
nである。
【0054】
ついで、判定部39は、ステップS12で生成した合成画像と、ステップS21で生成した計算画像と、を比較し、両者が一致するかを判定する。具体的には、判定部39は、合成画像と計算画像とを比較して画素値の残差平方和RSSを取得し(ステップS22)、画素値の残差平方和RSSがステップS13で設定した閾値RSS
thより小さいかを判定する(ステップS23)。
【0055】
画素値の残差平方和RSSが閾値RSS
thより大きい場合(ステップS23でNoの場合)には、計算画像は合成画像とは異なることを示している。そのため、判定部39は、現在のjに1を加算したものを新たなjとし(ステップS24)、新たなjがj
max以下であるかを判定する(ステップS25)。ここでの処理は、今まで計算していたj番目の組み合わせ(ここでは、j=1)の場合には、計算画像は合成画像とは異なるので、j+1番目の組み合わせで新たな計算を行うことを示している。また、j+1番目の組み合わせがj
max以下であることも確認している。新たなjがj
max以下である場合(ステップS25でYesの場合)には、ステップS21以降の処理が繰り返し実行される。
【0056】
また、新たなjがj
maxよりも大きい場合(ステップS25でNoの場合)には、現在の粒子数Nについて、すべての組み合わせについて計算したことになり、得られた合成画像は、現在設定されている粒子数Nの粒子からなるものではないことになる。そのため、計算画像生成部38は、現在の粒子数Nに1を加算したものを新たな粒子数Nとし(ステップS26)、新たな粒子数NがN
max以下であるかを判定する(ステップS27)。新たなNがN
max以下である場合(ステップS27でYesの場合)には、ステップS18以降の処理が実行される。
【0057】
ステップS23で画素値の残差平方和RSSが閾値RSS
thよりも小さい場合(ステップS23でYesの場合)には、計算画像は合成画像と一致することを示している。そのため、判定部39はステップS21での計算画像の生成に使用した配列S[j]を位置取得部40に渡し、位置取得部40は、渡された配列S[j]に含まれるN個のインデックスに対応付けられる粒子位置を単一粒子状態テーブルから取得する(ステップS28)。そして、位置取得部40は、この取得したN個の粒子の位置を、たとえば表示部などに出力し(ステップS29)、処理が終了する。
【0058】
また、ステップS27で新たなNがN
maxよりも大きい場合(ステップS27でNoの場合)には、想定した粒子数Nと想定した粒子状態T[i]の中には、合成画像に一致する解(粒子数および粒子状態)がないことを出力し(ステップS30)、処理が終了する。
【0059】
なお、計算画像を求めて合成画像と比較する処理は、互いに独立であるので、並列に処理することもできる。この場合には、処理が高速化される。たとえば、ステップS17で設定した粒子数Nにおけるj番目の組み合わせについて計算画像を生成し、合成画像と比較する処理を、複数並行して実行することができる。
【0060】
上記した計測装置および計測方法は、液体中の異物の位置を計測する場合、気体中の異物を計測する場合、あるいは固体中の異物を計測する場合に適用することができる。たとえば、上記した計測装置および計測方法は、インプリント処理で使用されるレジストを貯蔵する容器でのレジスト中の異物の位置計測などに用いられる。
【0061】
つぎに、実施形態の計測装置における計算機30のハードウェア構成について説明する。
図11は、計算機のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態の計算機30は、CPU(Central Processing Unit)311と、ROM(Read Only Memory)312と、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)313と、HDD(Hard Disk Drive)またはCD(Compact Disc)ドライブ装置などの外部記憶装置314と、ディスプレイ装置などの表示部315と、キーボードまたはマウスなどの入力部316と、を備えており、これらがバスライン317を介して接続された、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0062】
本実施形態の計測装置1の計算機30で実行されるプログラムは、
図10に示される方法を実行するものであり、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0063】
また、本実施形態の計測装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態の計測装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0064】
また、本実施形態のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0065】
本実施の形態の計測装置1で実行されるプログラムは、上述した各部(画像取得部32、単一粒子干渉画像生成部36、合成画像生成部37、計算画像生成部38、判定部39、位置取得部40)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、画像取得部32、単一粒子干渉画像生成部36、合成画像生成部37、計算画像生成部38、判定部39、位置取得部40が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0066】
実施形態では、試料50中の粒子51で散乱された散乱光L
Sと参照光L
Rとの干渉によって得られる第1干渉画像と、試料50中の粒子51で散乱された散乱光L
Sの干渉によって得られる第2干渉画像と、を撮像し、第1干渉画像と第2干渉画像とから合成画像を求める。また、試料50中にある粒子状態で単一粒子が存在すると仮定したときの散乱光L
Sと参照光L
Rとの干渉によって得られる単一粒子干渉画像を想定される粒子状態毎に記憶した単一粒子状態テーブルから取得し、組み合わせて得られる計算画像を求める。そして、合成画像と計算画像とを比較し、一致する場合に、計算画像の算出に使用した単一粒子干渉画像に対応付けられる粒子位置を試料50中の粒子51の位置とした。これによって、DHPIVでのホログラムの再生に要する複雑な計算に比して、単純な計算によって粒子位置を特定することができるという効果を有する。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。