(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
負極と、電解質塩とエチレンオキサイドユニットを有するポリエーテル共重合体を架橋させてゲル化させたゲル電解質組成物、そして正極とを備える電気化学キャパシタにおいて、該ポリエーテル共重合体を架橋させる光反応開始剤がアルキルフェノン系光反応開始剤であり、ゲル電解質組成物の層の厚みが5〜30μmであることを特徴とする電気化学キャパシタ。
アルキルフェノン系光反応開始剤がヒドロキシアルキルフェノン系化合物とアミノアルキルフェノン系化合物の混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気化学キャパシタ。
光反応開始剤の添加量がポリエーテル共重合体に対して100重量部に対して0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電気化学キャパシタ。
負極が負極活物質と導電助剤とバインダーとの混合物を有し、かつ、該負極活物質がグラファイトまたは活性炭であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気化学キャパシタ。
正極が正極活物質と導電助剤とバインダーとの混合物を有し、かつ、該正極活物質が活性炭であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電気化学キャパシタ。
電解質塩とエチレンオキサイドユニットを有するポリエーテル共重合体を架橋させてゲル化させたゲル電解質組成物層の厚みが5〜20μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電気化学キャパシタ。
電解質塩とエチレンオキサイドユニットを有するポリエーテル共重合体をアルキルフェノン系光反応開始剤の存在下で架橋させてゲル化させ、ゲル電解質組成物を得る工程、および
ゲル電解質組成物に正極と負極を接続する工程
を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電気化学キャパシタの製造方法。
電解質塩とエチレンオキサイドユニットを有するポリエーテル共重合体をアルキルフェノン系光反応開始剤の存在下で架橋させてゲル化させた、電気化学キャパシタ用のゲル電解質組成物であって、
ゲル電解質組成物の層の厚みが5〜30μmである、電気化学キャパシタ用のゲル電解質組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(電解質組成物)
本発明で電解質組成物として用いられるエチレンオキサイドユニットを有するポリエーテル共重合体は、主鎖または側鎖に式(B)であらわされるエチレンオキサイドの繰り返し単位を有する共重合体であり、
【化4】
さらに、下記式(C)であらわされるエチレン性不飽和基を分子中に有す構造をもった共重合体
【化5】
[式中、R
5はエチレン性不飽和基を有する基である。]
から構成される。
本発明で用いられるエチレンオキサイドユニットを有するポリエーテル共重合体は必要があれば、下記式(A)であらわされる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化6】
[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CH
2O(CR
1R
2R
3)である。R
1、R
2、R
3は水素原子または−CH
2O(CH
2CH
2O)
nR
4であり、nおよびR
4はR
1、R
2、R
3の間で異なっていてもよい。R
4は炭素数1〜12のアルキル基であり、nは0〜12の整数である。]
【0013】
例えば、本発明で用いられる式(A)、式(B)、式(C)の繰り返し単位を有する化合物は、
式(1):
【化7】
[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CH
2O(CR
1R
2R
3)である。R
1、R
2、R
3は水素原子または−CH
2O(CH
2CH
2O)
nR
4であり、nおよびR
4はR
1、R
2、R
3の間で異なっていてもよい。R
4は炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基であり、nは0〜12の整数である。]で示される単量体、及び
式(2):
【化8】
で示される単量体、及び
式(3)
【化9】
[式中、R
5はエチレン性不飽和基を有する基である。]で示される単量体を重合させて得られるポリエーテル共重合体またはその架橋物が好適に用いられる。
【0014】
式(1)の化合物は市販品からの入手、またはエピハロヒドリンとアルコールからの一般的なエーテル合成法等により容易に合成が可能である。市販品から入手可能な化合物としては、例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシヘプタン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシへキサン、グリシジルフェニルエーテル、1,2−エポキシペンタン、グリシジルイソプロピルエーテルなどが使用できる。これら市販品のなかでは、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテルが好ましく、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテルが特に好ましい。
合成によって得られる式(1)で表される単量体では、Rは−CH
2O(CR
1R
2R
3)が好ましく、R
1、R
2、R
3の少なくとも一つが−CH
2O(CH
2CH
2O)
nR
4であることが好ましい。R
4は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4がより好ましい。nは2〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。
【0015】
式(2)の化合物は基礎化学品であり、市販品を容易に入手可能である。
【0016】
式(3)の化合物において、R
5はエチレン性不飽和基を含む置換基である。エチレン性不飽和基含有のモノマー成分としては、アリルグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α−テルピニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルフェニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、4,5−エポキシ−2−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカンジエン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5−シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、ケイ皮酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、グリシジル−4−ヘキセノエートが用いられる。好ましくは、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルである。
【0017】
ここで繰り返し単位(A)及び(C)は、それぞれ2種以上の異なるモノマーから誘導されるものであってもよい。
【0018】
本発明のポリエーテル共重合体の合成は次のようにして行える。開環重合触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系などの配位アニオン開始剤、または対イオンにK
+を含むカリウムアルコキシド、ジフェニルメチルカリウム、水酸化カリウムなどのアニオン開始剤を用いて、各モノマーを溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10〜120℃、撹拌下で反応させることによってポリエーテル共重合体が得られる。重合度、あるいは得られる共重合体の性質などの点から、配位アニオン開始剤が好ましく、なかでも有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系が取り扱い易く特に好ましい。
【0019】
本発明のポリエーテル共重合体は、
(i)繰り返し単位(A)+繰り返し単位(B)、
(ii)繰り返し単位(B)+繰り返し単位(C)、あるいは
(iii)繰り返し単位(A)+繰り返し単位(B)+繰り返し単位(C)
によって構成されることが好ましい。
本発明のポリエーテル共重合体においては、繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)及び繰り返し単位(C)のモル比が、(A)0〜90モル%、(B)99〜10モル%、及び(C)0〜15モル%が好ましく、より好ましくは(A)0.1〜70モル%、(B)98〜30モル%、及び(C)0.1〜13モル%、更に好ましくは(A)1〜50モル%、(B)98〜50モル%、及び(C)1〜11モル%である。繰り返し単位(B)が99モル%を越えるとガラス転移温度の上昇とオキシエチレン鎖の結晶化を招き、結果的に電解質のイオン伝導性を著しく悪化させることとなる。一般にポリエチレンオキシドの結晶性を低下させることによりイオン伝導性が向上することは知られているが、本発明のポリエーテル共重合体はこの点において格段に優れている。
【0020】
本発明のポリエーテル共重合体の分子量は、良好な加工性、機械的強度、柔軟性を得るために、重量平均分子量は好ましくは1万〜250万、より好ましくは5万〜200万、更に好ましくは10万〜180万の範囲内のものが適する。
【0021】
本発明のゲル化前のポリエーテル共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体等、何れの共重合タイプでも良い。ランダム共重合体がよりポリエチレンオキシドの結晶性を低下させる効果が大きいので好ましい。
【0022】
本発明の電解質組成物は、上記のポリエーテル共重合体の架橋物に電解質塩を含有する。架橋物に電解質塩を含有させる電解質組成物は上記のポリエーテル共重合体の架橋物に対して電解質塩を含浸させてもよく、ポリエーテル共重合体を架橋させる際に、ポリエーテル共重合体及び電解質塩を含有させたものを架橋して得られるものであってもよい。
また、本発明の電解質組成物はポリエーテル共重合体及び電解質塩に対して、更に非プロトン性有機溶媒を共存させて得られる高分子電解質ゲルの形態であってもよい。ゲルを強固にするために光反応開始剤の存在下に紫外線などの活性エネルギー線を照射することによって架橋させてゲル化させてもよい。そうすることにより特別なセパレータを必要とせず、該ゲルがセパレータの役目を兼ねることが可能となる。
【0023】
光による架橋に用いる活性エネルギー線は、紫外線、可視光線、電子線等を用いることができる。特に装置の価格、制御のしやすさから紫外線が好ましい。
【0024】
本発明に用いる光反応開始剤としては、アルキルフェノン系光反応開始剤が用いられる。アルキルフェノン系光反応開始剤は、反応速度が速く電解質組成物への汚染が少ない点で非常に好ましい。
【0025】
アルキルフェノン系光反応開始剤の具体例としては、ヒドロキシアルキルフェノン系化合物である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オンや2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、などが挙げられる。またアミノアルキルフェノン系化合物である2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。その他として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が挙げられる。中でも2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォニル)フェニル]−1−ブタノンが反応速度が速く電解質組成物への汚染が少ない点で好ましい。
【0026】
また、ヒドロキシアルキルフェノン系化合物とアミノアルキルフェノン系化合物の組み合わせを用いることにより広い波長範囲で表面と内部を効果的に重合させることが可能となりゲル化の強度を上げることが可能となる。ヒドロキシアルキルフェノン系化合物とアミノアルキルフェノン系化合物の重量比は、95:5〜30:70、例えば90:10〜50:50、特に85:15〜55:45であってよい。
【0027】
その他の光反応開始剤としては、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン類、トリアジン類、ビスイミダゾール類、オキシムエステル類などが挙げられる。これらの反応開始剤をアルキルフェノン系の光反応開始剤の補助的な開始剤として添加することも可能である。
【0028】
架橋反応に用いられる光反応開始剤の量はポリエーテル共重合体100重量部に対して、0.05〜15重量部、好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.1〜4.0重量部、特に0.15〜3.0重量部であってよい。
【0029】
本発明においては、架橋助剤を光反応開始剤と併用してもよい。架橋助剤は、通常、多官能性化合物(例えば、CH
2=CH−、CH
2=CH−CH
2−、CF
2=CF−を少なくとも2個含む化合物)である。架橋助剤の具体例は、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタールアミド、トリアリルホスフェート、ヘキサフルオロトリアリルイソシアヌレート、N−メチルテトラフルオロジアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートなどである。架橋助剤の量は、ポリエーテル共重合体100重量部に対して0〜5重量部の範囲内が好ましく、更に好ましくは0.01〜3重量部である。
【0030】
架橋反応は、紫外線による場合では、キセノンランプ、水銀ランプ、高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプを用いることができ、例えば、電解質を波長365nm、光量1〜50mW/cm
2で0.1〜30分間照射することによって行うことができる。
【0031】
また、電解質塩として、常温溶融塩(イオン液体)を含有する。常温溶融塩を電解質として用いることにより一般的な有機溶媒としての効果を併せて発揮させることができる。
【0032】
常温溶融塩とは、常温において少なくとも一部が液状を呈する塩をいい、常温とは電源が通常作動すると想定される温度範囲をいう。電源が通常作動すると想定される温度範囲とは、上限が120℃程度、場合によっては60℃程度であり、下限は−40℃程度、場合によっては−20℃程度である。
【0033】
常温溶融塩はイオン液体とも呼ばれており、ピリジン系、脂肪族アミン系、脂環族アミン系の4級アンモニウム有機物カチオンが知られている。4級アンモニウム有機物カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウム、トリアルキルイミダゾリウム、などのイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンなどが挙げられる。特に、イミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0034】
イミダゾリウムカチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウムイオン、トリアルキルイミダゾリウムイオンが例示される。ジアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられ、トリアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジアリルイミダゾリウムイオンなどの1−アリルイミダゾリウムイオンも使用することができる。
【0035】
テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、トリメチルエチルアンモニウムイオン、ジメチルジエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2メトキシエチル)アンモニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
アルキルピリジウムイオンとしては、N−メチルピリジウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−ブチルピリジニウムイオン、1−エチル−2メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−2,4ジメチルピリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピぺリジニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
ピロリジニウムイオンとしては、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−エチル−N−プロピルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムイオン、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
なお、これらのカチオンを有する常温溶融塩は、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いても良い。
【0039】
アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF
6−、PF
6−などの無機酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8−テトラシアノ−p−キノジメタンイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドイオン、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドイオン、4,4,5,5−テトラフルオロ−1,3,2−ジチアゾリジン−1,1,3,3−テトラオキシドイオン、トリフルオロ(ペンタフルオロエチル)ホウ素酸イオン、トリフルオロ−トリ(ペンタフルオロエチル)リン素酸イオン、などの有機酸イオンなどが例示される。
【0040】
本発明において用いることができる電解質塩は、ポリエーテル共重合体又は該共重合体の架橋体、および常温溶融塩(イオン液体)からなる混合物に相溶することが好ましい。ここで相溶とは電解質塩化合物が結晶化などして析出してこない状態を意味する。
【0041】
本発明においては、以下に挙げる電解質塩を含有してもよい。即ち、金属陽イオン、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン、及びグアニジウムイオンから選ばれた陽イオンと、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF
6−、PF
6−、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8−テトラシアノ−p−キノジメタンイオン、X
1SO
3−、[(X
1SO
2)(X
2SO
2)N]
−、[(X
1SO
2)(X
2SO
2)(X
3SO
2)C]
−、及び[(X
1SO
2)(X
2SO
2)YC]
−から選ばれた陰イオンとからなる化合物が挙げられる。但し、X
1、X
2、X
3、およびYは電子吸引基である。好ましくはX
1、X
2、及びX
3は各々独立して炭素数が1〜6のパーフルオロアルキル基又は炭素数が6〜18のパーフルオロアリール基であり、Yはニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基又はシアノ基である。X
1、X
2及びX
3は各々同一であっても、異なっていてもよい。
【0042】
金属陽イオンとしては遷移金属の陽イオンを用いる事ができる。好ましくはMn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn及びAg金属から選ばれた金属の陽イオンが用いられる。又、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca及びBa金属から選ばれた金属の陽イオンを用いても好ましい結果が得られる。電解質塩として前述の化合物を2種類以上併用することが可能である。特に、リチウムイオンキャパシタにおいて電解質塩としては、Li塩化合物が好適に用いられる。
【0043】
Li塩化合物としては、リチウムイオンキャパシタに一般的に利用されているような、広い電位窓を有するLi塩化合物が用いられる。たとえば、LiBF
4、LiPF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN[CF
3SC(C
2F
5SO
2)
3]
2などを挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
【0044】
本発明において、例えばリチウムイオンキャパシタの場合は、電解質塩化合物としてLi塩化合物と常温溶融塩が用いられる。また、電気二重層キャパシタの場合は、電解質塩化合物は常温溶融塩のみが用いられる。
【0045】
本発明において、リチウムイオンキャパシタの場合にはポリエーテル共重合体に対するLi塩化合物と常温溶融塩の合計使用量は、ポリエーテル共重合体10重量部に対して、電解質塩1〜120重量部が好ましく、更に好ましくは3〜90重量部の範囲がよい。また、電気二重層キャパシタの場合は、常温溶融塩の使用量は、ポリエーテル共重合体10重量部に対して、常温溶融塩1〜300重量部が好ましく、更に好ましくは5〜200重量部の範囲がよい。
【0046】
本発明では電解質組成物に非プロトン性有機溶媒を添加することができる。本発明の電解質組成物は、非プロトン性有機溶媒等と組み合わせることでキャパシタ作製時の粘度調整やキャパシタとしての性能を調整することが可能となる。
【0047】
非プロトン性有機溶媒としては、非プロトン性のニトリル類、エーテル類及びエステル類が好ましい。具体的には、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、ビニルカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルモノグライム、メチルジグライム、メチルトリグライム、メチルテトラグライム、エチルモノグライム、エチルジグライム、エチルトリグライム、エチルメチルモノグライム、ブチルジグライム、3−メチル−2−オキサゾリドン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4,4−メチル−1,3−ジオキソラン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等が挙げられ、中でも、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、ビニルカーボネート、エチレンカーボネート、メチルトリグライム、メチルテトラグライム、エチルトリグライム、エチルメチルモノグライムが好ましい。これらの2種以上の混合物を用いても良い。
【0048】
常温溶融塩および必要な電解質塩化合物等をポリエーテル共重合体に混合する方法に特に制限はないが、常温溶融塩および必要な電解質塩化合物等を含む溶液にポリエーテル共重合体を長時間浸漬して含浸させる方法、常温溶融塩および必要な電解質塩化合物等をポリエーテル共重合体へ機械的に混合させる方法、ポリエーテル共重合体および必要な電解質塩化合物を常温溶融塩に溶かして混合させる方法あるいはポリエーテル共重合体を一度他の溶剤に溶かした後、常温溶融塩および必要な電解質塩化合物を混合させる方法などがある。他の溶媒を使用して製造する場合の他の溶媒としては各種の極性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が単独、或いは混合して用いられる。他の溶媒は、ポリエーテル共重合体を架橋する場合には、架橋前、架橋する間または架橋した後に除去できる。
本発明の趣旨に従い、セパレータを要しない程度の電解質組成物のゲルとしての不流動状態を維持するためには、該電解質組成物の粘度がその電池の使用環境において8Pa・s以上あればよい。
【0049】
本発明の電解質組成物には、架橋させた後のゲル電解質に強度を持たせるためや、イオン透過性をより高めるなどの目的で、無機微粒子、樹脂微粒子および樹脂製の極細繊維よりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含有させてもよい。
【0050】
無機微粒子としては、電気化学的に安定で、かつ電気絶縁性のものであればよく、例えば、酸化鉄(Fe
xO
y;FeO、Fe
2O
3など)、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、BaTiO
2、ZrO
2などの無機酸化物の微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物の微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム、炭化カルシウムなどの難溶性のイオン結晶の微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶の微粒子;モンモリロナイトなどの粘土の微粒子;などが挙げられる。ここで、前記無機酸化物の微粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物などの微粒子であってもよい。また、金属、SnO
2、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの導電性酸化物、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質材料などで例示される導電性材料の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の無機酸化物など)で被覆することにより電気絶縁性を持たせた粒子であってもよい。
【0051】
樹脂微粒子としては、耐熱性および電気絶縁性を有しており、常温溶融塩等に対して安定であり、更に、キャパシタの作動電圧範囲において酸化還元されにくい電気化学的に安定な材料により構成された微粒子が好ましく、このような材料としては、例えば、樹脂架橋体が挙げられる。より具体的には、スチレン樹脂〔ポリスチレン(PS)など〕、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル樹脂〔ポリメチルメタクリレート(PMMA)など〕、ポリアルキレンオキシド〔ポリエチレンオキシド(PEO)など〕、フッ素樹脂〔ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など〕およびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂の架橋体;尿素樹脂;ポリウレタン;などが例示できる。樹脂微粒子には、前記例示の樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、有機微粒子は、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤などを含有していても構わない。
【0052】
樹脂製の極細繊維としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、アラミド、ポリプロピレン(PP)、塩素化PP、PEO、ポリエチレン(PE)、セルロース、セルロース誘導体、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などの樹脂や、これらの樹脂の誘導体で構成された極細繊維が挙げられる。
【0053】
前記例示の無機微粒子、樹脂微粒子、および樹脂製の極細繊維の中でも、Al
2O
3、SiO
2、ベーマイト、PMMA(架橋PMMA)の各微粒子が特に好ましく用いられる。
【0054】
無機微粒子および樹脂微粒子の形状は、球状、板状、板状以外の多面体形状などいずれの形状であってもよい。
【0055】
ゲル電解質層の厚みは、薄いほど電気化学キャパシタの容量が大きくなるため有利であり出来るだけ薄い方が好ましいが薄すぎると電極同士がショートしてしまう可能性があるため適当な膜厚が必要となる。具体的には1〜50μm、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜20μmである。
【0056】
(電極の製造方法)
本発明の電気化学キャパシタ用電極は、電極基板となる集電体に正極または負極の活物質、電解質層と良好なイオンの授受を行う導電助剤、正極または負極活物質を電極基板となる集電体に固定するためのバインダーを有することが好ましく、この活物質、導電助剤、バインダーからなる電気化学キャパシタ用電極組成物を電極基板となる集電体上に形成させることにより得られる。
具体的には、シート状に成形した電気化学キャパシタ用電極組成物を、集電体上に積層する方法(混練シート成形法);ペースト状の電気化学キャパシタ用電極組成物を集電体上に塗布し、乾燥する方法(湿式成形法);電気化学キャパシタ用電極組成物の複合粒子を調製し、集電体上にシート成形、ロールプレスし得る方法(乾式成形法)などが挙げられる。中でも、湿式成形法、乾式成形法が好ましく、湿式成形法がより好ましい。
【0057】
(集電体)
本発明の電気化学キャパシタ用電極に用いる集電体の材料としては、例えば、金属、炭素、導電性高分子などを用いることができ、好適には金属が用いられる。集電体用金属としては、通常、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、銅、その他の合金等が使用される。リチウムイオンキャパシタ用電極に用いる集電体としては導電性、耐電圧性の面から銅、アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用するのが好ましい。
【0058】
本発明の電気化学キャパシタ用電極に用いる集電体の形状は、金属箔、金属エッヂド箔などの集電体;エキスパンドメタル、パンチングメタル、網状などの貫通する孔を有する集電体が挙げられるが、電解質イオンの拡散抵抗を低減しかつ電気化学キャパシタの出力密度を向上できる点で、貫通する孔を有する集電体が好ましく、その中でもさらに電極強度に優れる点で、エキスパンドメタルやパンチングメタルが特に好ましい。
【0059】
本発明の電気化学キャパシタ用電極に好適に用いる貫通する孔を有する集電体の孔の割合は、10〜80面積%が好ましく、より好ましくは20〜60面積%、更に好ましくは30〜50面積%である。貫通する孔の割合がこの範囲にあると、電解液の拡散抵抗が低減し、リチウムイオンキャパシタの内部抵抗が低減する。
【0060】
本発明の電気化学キャパシタ用電極に用いる集電体の厚みは、5〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜70μm、特に好ましくは20〜50μmである。
【0061】
(活物質)
本発明の電気化学キャパシタ用電極の正極に用いる電極活物質としては、具体的には、通常、炭素の同素体が用いられ、電気二重層キャパシタで用いられる電極活物質が広く使用できる。炭素の同素体の具体例としては、活性炭、ポリアセン(PAS)、カーボンウィスカ及びグラファイト等が挙げられ、これらの粉末または繊維を使用することができる。この中でも、活性炭が好ましい。活性炭は、具体的にはフェノール樹脂、レーヨン、アクリロニトリル樹脂、ピッチ、およびヤシ殻等を原料とする活性炭を挙げることができる。また、炭素の同素体を組み合わせて使用する場合は、平均粒径又は粒径分布の異なる二種類以上の炭素の同素体を組み合わせて使用してもよい。また、正極に用いる電極活物質として、上記物質の他に、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって、水素原子/炭素原子の原子比が0.50〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(PAS)も好適に使用できる。
【0062】
本発明の電気化学キャパシタ用電極の負極に用いる電極活物質としては、カチオンを可逆的に担持できる物質であればよい。具体的には、リチウムイオン二次電池の負極で用いられる電極活物質が広く使用できる。中でも、黒鉛、難黒鉛化炭素等の結晶性炭素材料、ハードカーボン、コークス等の炭素材料、上記正極の電極活物質としても記載したポリアセン系物質(PAS)が好ましい。これらの炭素材料及びPASは、フェノール樹脂等を炭化させ、必要に応じて賦活され、次いで粉砕したものが用いられる。
【0063】
電気化学キャパシタ用電極組成物に用いる電極活物質の形状は、粒状に整粒されたものが好ましい。粒子の形状が球形であると、電極成形時により高密度な電極が形成できる。
【0064】
電気化学キャパシタ用電極組成物に用いる電極活物質の体積平均粒子径は、正極、負極ともに通常0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは1〜20μmである。これらの電極活物質は、それぞれ単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
(導電助剤)
本発明の電気化学キャパシタ用電極組成物に用いる導電助剤は、黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベル ケミカルズ ベスローテン フェンノートシャップ社の登録商標)などの導電性カーボンブラック、カーボン繊維等の粒子または繊維状の導電助剤が挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラックおよびファーネスブラックが好ましい。
【0066】
本発明の電気化学キャパシタ用電極組成物に用いる導電助剤の体積平均粒子径は、電極活物質の体積平均粒子径よりも小さいものが好ましく、その範囲は通常0.001〜10μm、好ましくは0.005〜5μm、より好ましくは0.01〜1μmである。導電助剤の体積平均粒子径がこの範囲にあると、より少ない使用量で高い導電性が得られる。これらの導電助剤は、単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。導電助剤の量は、電極活物質100重量部に対して通常0.1〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜15重量部、更に好ましくは1〜10重量部の範囲である。導電助剤の量がこの範囲にあると、得られる電気化学キャパシタ用電極を使用した電気化学キャパシタの容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる。
【0067】
(バインダー)
本発明の電気化学キャパシタ用電極に用いるバインダーは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、又はスチレンブタジエンゴム(SBR)等の非水系バインダーまたはアクリル系ゴム等の水系バインダー等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0068】
本発明の電気化学キャパシタ用電極用組成物に用いるバインダーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは−40〜0℃である。バインダーのガラス転移温度(Tg)がこの範囲にあると、少量の使用量で結着性に優れ、電極強度が強く、柔軟性に富み、電極形成時のプレス工程により電極密度を容易に高めることができる。
【0069】
本発明の電気化学キャパシタ用電極用組成物の水系バインダーの数平均粒子径は、格別な限定はないが、通常は0.0001〜100μm、好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.01〜1μmの数平均粒子径を有するものである。バインダーの数平均粒子径がこの範囲であるときは、少量の使用でも優れた結着力を分極性電極に与えることができる。ここで、数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだバインダー粒子100個の径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径である。粒子の形状は球形、異形、どちらでもかまわない。これらのバインダーは単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。バインダーの量は、電極活物質100重量部に対して、通常は0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。バインダーの量がこの範囲にあると、得られる電極組成物層と集電体との密着性が充分に確保でき、電気化学キャパシタの容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる。
【0070】
なお、本発明において、正極・負極の作製に対しては、集電体シートに、上記正極・負極活物質、導電助剤、バインダーを溶媒に添加してスラリーとしたものを塗布し、これを乾燥した後、圧力0〜5ton/cm
2、特に0〜2ton/cm
2で圧着し、200℃以上、好ましくは250〜500℃、更に好ましくは250〜450℃で、0.5〜20時間、特に1〜10時間焼成したものを用いることが好ましい。
【0071】
本発明の電気化学キャパシタにおいて、予め正極および/または負極にリチウムイオンを吸蔵させる、所謂ドーピングをさせてもよい。正極および/または負極へのドーピングの手段は特に限定されない。例えば、リチウムイオン供給源と正極又は負極との物理的な接触によるものでもよく、電気化学的にドーピングさせてもよい。
【0072】
負極電極または正極電極の上に、電気化学キャパシタ用電極用組成物を塗布、必要な架橋を施した転写シート状の膜を転写させて電解質組成物層を形成した後、正極電極または負極電極を重ね合わせることによっても電気化学キャパシタが組み上げられる。
【0073】
また、電解質組成物に沸点の高い非プロトン性有機溶媒や常温溶融塩を含有させることにより、ゲル状にしたものを負極電極と正極電極の間に含浸または注入することによっても電気化学キャパシタが組み立てられる。
【0074】
本発明の電気化学キャパシタの製造方法の一例としては、
(A)式(1):
【化10】
[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CH
2O(CR
1R
2R
3)である。R
1、R
2、R
3は水素原子または−CH
2O(CH
2CH
2O)
nR
4であり、nおよびR
4はR
1、R
2、R
3の間で異なっていてもよい。R
4は炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基であり、nは0〜12の整数である。]で示される単量体から誘導される繰り返し単位0〜90モル%、及び
式(2):
【化11】
で示される単量体から誘導される繰り返し単位99〜10モル%、及び
式(3)
【化12】
[式中、R
5はエチレン性不飽和基を有する基である。]で示される単量体から誘導される繰り返し単位0〜15モル%で示される単量体を、重合させて得られるポリエーテル共重合体を得る工程と、
(B)前記ポリエーテル共重合体、光反応開始剤、電解質塩化合物が含まれる組成物(未架橋電解質組成物)を、負極材料および正極材料の間に注入する工程と、
(C)前記注入された組成物を架橋してゲル化する工程と、
を含む製造方法が例示される。
【0075】
重合工程(A)においては、上記式(1)、式(2)及び式(3)で示される単量体を重合させてポリエーテル共重合体を得る。開環重合触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系などの配位アニオン開始剤、または対イオンにK
+を含むカリウムアルコキシド、ジフェニルメチルカリウム、水酸化カリウムなどのアニオン開始剤を用いて、各モノマーを溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10〜120℃、撹拌下で反応させることによってポリエーテル共重合体が得られる。重合度、あるいは得られる共重合体の性質などの点から、配位アニオン開始剤が好ましく、なかでも有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系が取り扱い易く特に好ましい。
【0076】
塗布工程(B)においては、ポリエーテル共重合体、光反応開始剤、電解質塩を負極材料および正極材料の間に注入する。
塗布工程(B)では、負極材料または正極材料の一方における1つの表面に電解質組成物を塗布してもよく、また、負極材料または正極材料の両方の表面に電解質成物を塗布してもよい。
【0077】
架橋工程(C)において、注入した電解質組成物を架橋させてゲル化させ、該電解質組成物のゲル電解質層を電極材料の上に形成させる。架橋は、非プロトン性有機溶媒の存在下または不存在下に、活性エネルギー線を照射することによって行える。活性エネルギー線の具体例は、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線である。
【0078】
架橋工程(C)によりゲル化された電解質組成物を用いて、負極材料/電解質組成物/正極材料の構成の電気化学キャパシタを得る。
【0079】
本発明において、電解質組成物フィルムを電極材料に適用することによって電気化学キャパシタを製造しても良い。電解質組成物フィルムは、電解質組成物を製造し、該電解質組成物を例えば剥離シートに塗布し、剥離シート上で架橋させ、剥離シートから剥離することによって製造することができる。
【0080】
実施例
本発明を実施するための具体的な形態を以下に実施例を挙げて説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、負極材料と、非水電解質と、正極材料とからなる電気化学キャパシタにおいて、キャパシタの容量、維持率を比較するために以下の実験を行った。
【0081】
[合成例(ポリエーテル共重合用触媒の製造)]
撹拌機、温度計及び蒸留装置を備えた3つ口フラスコにトリブチル錫クロライド10g及びトリブチルホスフェート35gを入れ、窒素気流下に撹拌しながら250℃で20分間加熱して留出物を留去させ残留物として固体状の縮合物質を得た。以下の重合例で重合触媒として用いた。
【0082】
ポリエーテル共重合体のモノマー換算組成は
1H NMRスペクトルにより求めた。
ポリエーテル共重合体の分子量測定にはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を算出した。GPC測定は(株)島津製作所製RID−6A、昭和電工(株)製ショウデックスKD−807、KD−806、KD−806MおよびKD−803カラム、および溶媒にDMFを用いて60℃で行った。
【0083】
[重合例1]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに重合触媒として触媒の合成例で示した縮合物質1gと水分10ppm以下に調整したグリシジルエーテル化合物(a):
【化13】
158g、アリルグリシジルエーテル22g、及び溶媒としてn−ヘキサン1000gを仕込み、化合物(a)の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド125gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、10時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー280gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0084】
[重合例2]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに触媒として触媒の製造例で示した縮合物質2gと水分10ppm以下に調整したメタクリル酸グリシジル50g及び溶媒としてn−ヘキサン1000g及び連鎖移動剤としてエチレングリコールモノメチルエーテル0.06gを仕込み、エチレンオキシド195gはメタクリル酸グリシジルの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー223gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0085】
[重合例3]
重合例2の仕込みにおいてアリルグリシジルエーテル30g、エチレンオキシド100g、及びn−ブタノール0.02gを仕込んで重合した以外は同様の操作を行い、ポリマー125gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0086】
[重合例4]
重合例2の仕込みにおいてメタクリル酸グリシジル30g、エチレンオキシド260g、及びエチレングリコールモノメチルエーテル0.08g、を仕込んで重合した以外は同様の操作を行い、ポリマー252gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0088】
[実施例1] 負極/電解質組成物1/正極で構成されたキャパシタの作製
<負極の作製1>
負極活物質として、体積平均粒子径が4μmであるグラファイト100重量部、分子量3万のカルボキシメチルセルロースナトリウムの1.5%水溶液((株)ダイセル化学工業製)を固形分相当で2重量部、導電助剤としてアセチレンブラック5重量部、数平均粒子径が0.15μmのSBRバインダーの40%水分散体を固形分相当で3重量部、およびイオン交換水を全固形分濃度が35%となるように混合、分散させて負極用の電極塗布液を調整した。
【0089】
この負極用の電極塗布液を厚さ18μmの銅箔の上にドクターブレード法で塗布し、仮乾燥した後、圧延し、電極サイズが10mm×20mmとなるように切り取った。電極の厚みは、約50μmであった。セルの組み立て前に、真空中で120℃、5時間乾燥した。
【0090】
<負極へのリチウムのドーピング>
上記のようにして得られた負極に、以下のようにしてリチウムをドーピングさせた。乾燥雰囲気中、負極とリチウム金属箔を挟み、電解液としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド1mol/Lの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド溶液をその間に微量注入することで、所定量のリチウムイオンを約10時間かけて負極に吸蔵させた。リチウムのドープ量は、上記負極容量の約75%とした。
【0091】
<正極の作製1>
正極活物質には、フェノール樹脂を原料とするアルカリ賦活活性炭である体積平均粒子径が8μmの活性炭粉末を用いた。この正極活物質100重量部に対して、分散剤として分子量3万のカルボキシメチルセルロースナトリウムの1.5%水溶液((株)ダイセル化学工業製)を固形分相当で2重量部、導電助剤としてアセチレンブラックを5重量部、バインダーとして数平均粒子径が0.15μmのSBRバインダーの40%水分散体を固形分相当で3重量部、およびイオン交換水を全固形分濃度が30%となるように分散機を用いて混合、分散させて正極用の電極塗布液を調整した。
【0092】
この正極用の電極塗布液を厚さ15μmのアルミ箔集電体上にドクターブレード法で塗布し、仮乾燥した後、圧延し、電極サイズが10mm×20mmとなるように切り取った。電極の厚みは50μmであった。
【0093】
<電解質組成物1の作製>
重合例1で得られた共重合体を10重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1重量部、光反応開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン0.2重量部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部に溶解させて電解質組成物1を作製した。
【0094】
<電解質組成物層の形成>
正極の作製1で得られた正極シートの上に、上記電解質組成物1をドクターブレードで塗布し、厚さ10μmの電解質組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm
2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上に電解質組成物層が一体化された正極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmの電解質組成物層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0095】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内においてラミネートカバーを外して貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0096】
[実施例2] 負極/電解質組成物2/正極で構成されたキャパシタの作製
負極、正極の作製は実施例1と同様に行なった。
【0097】
<電解質組成物2の作製>
重合例1で得られた共重合体を10重量部、光反応開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン0.2重量部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1 0.05重量部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部に溶解させて電解質組成物2を作製した。
【0098】
<電解質組成物層の形成>
正極の作製1で得られた正極シートの上に、上記電解質組成物2をドクターブレードで塗布し、厚さ10μmの電解質組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm
2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上に電解質組成物層が一体化された正極/電解質シートを作製した。負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmの電解質組成物層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmの電解質組成物層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0099】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内においてラミネートカバーを外して貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0100】
[実施例3] 負極/電解質組成物3/正極で構成されたキャパシタの作製
負極、正極の作製は実施例1と同様に行なった。
【0101】
<電解質組成物3の作製>
重合例2で得られた共重合体を10重量部、光反応開始剤1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン0.2重量部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1 0.1重量部と樹脂微粒子(MZ−10HN:綜研化学(株)社製)3重量部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部に溶解、分散させて電解質組成物3を作製した。
【0102】
<電解質組成物層の形成>
正極の作製1で得られた正極シートの上に、上記電解質組成物3をドクターブレードで塗布し、厚さ15μmの電解質組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm
2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上に電解質組成物層が一体化された正極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmの電解質組成物層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0103】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内においてラミネートカバーを外して貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0104】
[実施例4] 負極/電解質組成物4/正極で構成されたキャパシタの作製
負極、正極の作製は実施例1と同様に行なった。
【0105】
<電解質組成物4の作製>
重合例3で得られた共重合体を10重量部、光反応開始剤1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン0.3重量部と樹脂微粒子(エポスターMA1010:日本触媒(株)社製)2部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部に溶解させて電解質組成物4を作製した。
【0106】
<電解質組成物層の形成>
正極の作製1で得られた正極シートの上に、上記電解質組成物4をドクターブレードで塗布し、厚さ15μmの電解質組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm
2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上に電解質組成物層が一体化された正極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmの電解質組成物層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0107】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内において貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0108】
[実施例5] 負極/電解質組成物5/正極で構成されたキャパシタの作製
負極、正極の作製は実施例1と同様に行なった。
【0109】
<電解質組成物5の作製>
重合例4で得られた共重合体を10重量部、光反応開始剤1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン0.2重量部、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォニル)フェニル]−1−ブタノン0.15重量部、シリカ微粒子(ハイプレシカFQ8μ:宇部日東化成(株)社製)4重量部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部に溶解させて電解質組成物5を作製した。
【0110】
<電解質組成物層の形成>
正極の作製1で得られた正極シートの上に、上記電解質組成物5をドクターブレードで塗布し、厚さ15μmの電解質組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm
2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上に電解質組成物層が一体化された正極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmの電解質組成物層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0111】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内において貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0112】
[比較例1] 負極/電解質組成物6/正極で構成されたキャパシタの作製
負極、正極の作製は実施例1と同様に行なった。
【0113】
<電解質組成物6の作製>
重合例1で得られた共重合体を10重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1重量部、光反応開始剤ベンゾフェノン0.2重量部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液、90重量部に溶解させて電解質組成物6を作製した。
【0114】
<電解質組成物層の形成>
正極の作製1で得られた正極シート上に上記の電解質組成物6をドクターブレードで塗布し、厚さ10μmの電解質組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm
2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上に電解質組成物層が一体化された正極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmの電解質組成物層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0115】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内において貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0116】
<ゲル電解質の特性評価>
上記で試作したキャパシタセルについてゲル電解質の形成段階での塗工性、保液性、膜強度を評価した。
評価方法は以下の通りである。
【0117】
評価方法
電解質を塗布し、光硬化させた後、カバーフィルムを剥がして表面の状態を観察した。
塗工性
○・・・電解質が均一に形成できておりムラがない。
×・・・電解質がやや不均一でムラがある。
保液性
○・・・電解質の表面に電解液が出ていない。
×・・・初期は出ていないが経時により電解質の表面に電解液が染み出してくる。
膜強度
膜強度は、測定対象物に分散液等を塗布後温風乾燥し外観評価と厚みを測定した。
○・・・軽く押しても電解液が出てこない。
×・・・軽く押すと微少部で電解液が出てくる。
【0119】
<キャパシタセルの電気化学的評価>
上記のラミネートセルについて、電気化学的評価を行った。
【0120】
放電容量は、所定の電流で4.0Vまで定電流充電し、充電時と同じ電流で2.0Vまで定電流放電したときの5サイクル目の放電容量とした。充放電電流は、セル容量を1時間で放電できる電流を基準(1C)として、1C及び100C(1Cレートの100倍の電流値で充放電する。)とした。表2には、1Cの充放電電流で測定した5サイクル目の放電容量を、「放電容量」として示した。また、「1Cに対する100Cの時の放電容量維持率」を、以下の式により算出し、その値を表3に示した。
【0121】
1Cに対する100Cの時の放電容量維持率(%)=(100Cの時の5サイクル目の放電容量)÷(1Cの時の5サイクル目の放電容量)×100。
また、10Cでサイクル試験を行った。充放電サイクル試験は、10Cで4.0Vまで定電流で充電し、10Cで2.0Vまで定電流で放電し、これを1サイクルとして、10000サイクルの充放電を行った。初期の放電容量に対する10000サイクル後の放電容量を、容量維持率として、表3に示した。
なお、測定はいずれも25℃で行った。
【0123】
表3において、実施例1〜5においては、放電容量が高く、100Cの時の放電容量維持率が高くなっており、また、10000サイクル後の容量維持率も高くなっている。これは、セパレータを入れなくても安定的な特性が得られるためと考えられる。