(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2次エマルジョン(8)は、滴下法、混合ブレードを採用した器具を使用した剪断混合法、超音波法、フローフォーカシング法、コーフロー法(12)、T字型接合法、及び段階乳化法から選択される方法を少なくとも使用して調製される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【背景技術】
【0002】
音響絶縁用の材料は、多孔質材料から製造されることがある。例えば、連続気泡性多孔質ゴム、又は連続気泡性架橋ポリマー発泡体から製造された材料を使用することが可能である。これらの不均一な材料では、音響波は、媒質内部に分布している不均一性(空気で満たされた空洞又は孔)からの散乱のために著しく減衰される。効果的にするために、材料の必要とされる厚さは、入射波長と同程度の大きさでなくてはならない。この条件は、音響絶縁壁の製造を、それらが占有しなくてはならない空間のせいで、困難にする。
【0003】
「局所的な」共振材料と呼ばれるものでは、これらの音響損失は、材料内部に存在する含有物(又は共振体)の共振周波数に近い周波数に対して最適化されていることがある。そのような材料では、入射波長に対してサイズが小さく、かつ、単位体積当たりの質量及び/又は圧縮率の観点から周囲の媒質とは高い機械的な対比を有する含有物を挿入することにより、スペクトルバンドギャップを生成することができ、従来の材料よりも遥かに薄い厚さで、音の振幅の大きさを数桁程度減衰させることを可能にする。
【0004】
この文脈では、Liuら(Liu,Z.,Zhang,X.,Mao,Y.,Zhu,Y.Y.,Yang,Z.,Chan,C.T.,& Sheng,P.(2000),Locally resonant sonic materials.Science,289(5485),1734−1736)は、音波バンドキャップと、関連波長よりも2桁の大きさだけ小さい格子定数とを有するソニック結晶のクラスを生成している。その材料は、エポキシマトリックス中に配置された共振球体の3次元格子からなり、その材料の製造パラメータによって決定される周波数範囲において、負の単位体積当たり有効質量(ρと記される)を示すことがある。しかしながら、この実験的メタマテリアルは製造するのが難しく、工業的応用には適していない。
【0005】
音響メタマテリアルを生成するための様々なデバイス及びプロセスが提案されてきており(例えば、国際公開第2012/033599号パンフレット及び国際公開第2014/206168号パンフレットを参照)、これらのデバイス及びプロセスは、バネによって互いに結合された3次元の質量格子を生成することを可能にし、その構成は所与の周波数範囲でスペクトルバンドギャップを生成することを可能にしている。これらのデバイス及びプロセスは、精密で高価な機械的設備を必要とする。
【0006】
Brunetら(Brunet,T.,Leng,J.,Mondain−Monval,O.,2013,Soft acoustic metamaterials,Science,342,323−324)は、所与の周波数範囲において負の単位体積当たり有効質量ρ
eff及び負の有効圧縮率χ
effを同時に有する、ポリマーの多孔質ビーズで作製されたソフトな音響メタマテリアルの製造について開示している。材料の(音の)位相速度c
Lは、次式により、これら2つの機械的パラメータに関連付けられる。
【数1】
【0007】
これら2つのパラメータが同時に負である場合、位相速度も負であることを示すことが可能である。マイクロ流体法によるこれらのビーズの製造についても、開示されている。
【0008】
Brunetら(Brunet,T.,Merlin,A.,Mascaro,B.,Zimny,K.,Leng,J.,Poncelet,O.,Aristegui,C.,Mondain−Monval,O.,2015,Soft 3D acoustic metamaterial with negative index,Nature Materials 14,384−388)は、シリコーンゴムでできた多孔質マイクロビーズの音響共鳴のおかげで超音波周波数範囲において負の有効位相速度c
Lを有する流体メタマテリアルの製造について開示している。これらの共振体は、ビンガム流体(剪断速度ゼロでは固体として振る舞い、剪断閾値よりも高い剪断速度では粘性の流体として振る舞う、剪断減粘性流体)に組み込まれる。それらは、1次エマルジョンから液滴で製造され、1次エマルジョンの内相の体積は、典型的には、共振体の全体積の20〜40%の間に含まれる。
【0009】
共振体から出来る限り高い共振振幅を得るためには、共振体での位相速度と共振体を保持するマトリックスでの位相速度との差異が可能な限り高くなくてはならない。当の共振体での位相速度は、共振体の密度及び圧縮率の両方が増加するにつれて、低下する。共振体での音の速度を最小にし、かつ従来技術で開示されたものよりもより効果的な絶縁デバイスを製造するために、技術的な問題は、単位体積当たりの高い質量及び高い係数の圧縮率の両方を有する材料を製造するという問題になる。
【0010】
前述の2つの刊行物は、位相速度が最小にされた共振体、即ち、最大圧縮率及び最大有効密度の両方を有する共振体を製造する方法を開示していない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、共振体1を製造するために使用される流体デバイスの図である。本発明の一実施形態の一例では、まず、1次エマルジョン9が、一方で水性の第1の相と、他方で少なくとも1種類のモノマー及び1つの好適な界面活性剤を含む第2の相との間で調製される。この第1のエマルジョンは、以下のステップを含むことがある既知の乳化プロセスを用いて製造されることができる。
− Rayneri(登録商標)ミキサー若しくはUltraturrax(登録商標)ミキサーなどの混合ブレードを採用した器具で、又は2つの流体相の剪断混合を可能にする任意の機械装置で、2つの流体相を剪断混合するステップ
− 超音波プローブを介して2つの液相に超音波を印加するステップ
【0032】
選択される界面活性剤は、エマルジョンを生成するために選択されるモノマー相に依存する。有利にも、界面活性剤は、低い親水性親油性バランス(HLB)数を有する。この種類の界面活性剤は、逆エマルジョンと呼ばれるもの、即ち連続脂質相中の水相の液滴が優先的に形成されることを可能にする。連続モノマー相中にこのようにして形成された水相の液滴の直径は、0.2〜100μmの間、好ましくは0.2〜10μmの間で変動することがある。残りの説明では、1次エマルジョン混合物の例を含む。
【0033】
第2のステップは、一方で1次エマルジョン9と他方で水性の第3の相5との間で2次エマルジョン8を調製することにある。本発明の一実施形態の一例では、この2次エマルジョンは、流体、ミリ流体、又はマイクロ流体のデバイスを使用して調製される。本発明の一実施形態の一例では、コーフロー(co−flow)12を使用して2次エマルジョンを形成する。1次エマルジョン9及び水性の第3の相5が、予め注射器内に配置されている。1次エマルジョンは、
図1の例では、(過フッ素化エチレンプロピレンでできており、500μmの内径及び800μmの外径を有する)第1の可撓性を有する毛細管に、注射器ポンプ(例えば、Harvard PHD 22/2000、登録商標)によって制御された流速で注入される。水性の第3の相5は、圧力制御装置(AF 1 1600、Elveflow、登録商標)によって、(過フッ素化エチレン・プロピレン、1mmの内径及び1.6mmの外径の)第2の毛細管に注入される。第1の毛細管は、コーフローを達成することを可能にするために、第2の毛細管に挿入される。
図1の挿入写真は、コーフロー12により液滴が形成される位置での毛細管の写真である。この写真の左側では、1次エマルジョン9の円筒噴流が水性の第3の相5によって取り囲まれている。プラトー・レイリー(Plateau−Rayleigh)不安定性は、(写真の中央及びその右側の例のように)液滴の形成をひき起こす。
【0034】
例えば、高いHLB数の界面活性剤など、エマルジョンを形成するのに適した組成の界面活性剤を含有する水性の第3の相5に逆エマルジョンを剪断混合することにより、2次エマルジョンを調製することも可能である。
【0035】
図1に示した本発明の実施形態では、コーフローから形成される液滴は、形成後に直接的に架橋されることがある。この架橋は、コーフロー流出口毛細管のまさにその位置で、線上で、即ち液滴ごとに、行われることがある。この重合は、使用する化合物及び有機の第2の相に応じて、熱的に又は紫外線照射により行われることがある。従って、コーフローから形成される液滴の重合によりこのようにして生成された共振体1は、一般的に、ポリマー材料から作製される。
【0036】
本発明の一実施形態の一例では、有機の第2の相は、油Silcolease UV 200(登録商標Bluestar Silicones)、4重量%の触媒Silcolease UV cata 211(登録商標Bluestar Silicones)、20重量%の界面活性剤DC3225C(Dow Corning)、200ppmのGenocure ITX(Rahn)を含む。生理食塩水性の第1の相は、1.5重量%のNaClからなる。共振体の多孔率は、有機の第2の相に混合された水性の第1の相の量に依存する。水性の第3の相は、この例では、グリセリン溶液である。液滴の形成後、液滴形成の下流の毛細管に配置された紫外線照射11(BlueWave 200ランプ、Dymax)で形成された液滴を重合させることが可能である。
【0037】
本発明の一実施形態の別の例では、有機の第2の相は、64%のエチルヘキシル・アクリレート、5.5%のスチレン、10.5%のジビニルベンゼン、及び20重量%の界面活性剤SPAN80を含む。水性の第1の相は、25mMの塩化ナトリウム及び5mMの過硫酸カリウムの溶液からなる。前述の例と同様に、共振体の多孔率は、有機相に混合された水性の第1の相の量に依存する。
図1に示した流体プロセスを使用した第2のエマルジョンの調製中に、コーフロー流出口毛細管の筒を60℃に局所的に加熱することにより、液滴を重合させる。次いで、製造されたビーズを、アセトン、次いでエタノールで洗浄することがある。
【0038】
本発明の最後の製造ステップでは、製造されたビーズ共振体を収集し、次いで乾燥させる。共振体を乾燥させるために、例えば、共振体を外気に曝すか、又はさらに40℃のオーブンに置くことが可能である。このステップについては、図面を参照して以下で詳細に説明する。
【0039】
本発明の他の実施形態では、1次エマルジョンを、滴下で、又は混合ブレードを採用した器具を使用した剪断混合によって、又は超音波的に、又はフローフォーカシングにより、又はT接合を使用して、又は段階乳化により、調製することが可能である。
【0040】
本発明の他の実施形態では、2次エマルジョンを、滴下で、又は混合ブレードを採用した器具を使用した剪断混合によって、又は超音波的に、又はフローフォーカシングにより、又はT接合を使用して、又は段階乳化により、調製することが可能である。
【0041】
図2は、本発明とは異なる共振体の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図2のパネルaは、上述の乾燥ステップの前の共振体の断面の顕微鏡写真を示す。図示されたスケールバーは、100μmを表す。
図2のパネルbは、パネルa内の黒枠で囲まれた、パネルaの顕微鏡写真の詳細を示す。
図2の顕微鏡写真は、
図1を参照して説明したプロセスに従って製造されたビーズ共振体を示し、乾燥ステップの前のこのビーズ共振体の多孔率は30%である。乾燥前の共振体の孔同士は接続されていないことが、
図2のパネルbから分かる。1つの孔から次の孔へ気体又は液体が運ばれるのを可能にする接続部は稀にしか存在しない。
【0042】
図3は、
図2に示した共振体と同じプロセスに従って製造された共振体の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図3のパネルaは、上述の乾燥ステップの後の共振体の断面の顕微鏡写真を示す。図示されたスケールバーは、200μmを表す。
図3のパネルbは、パネルa内の黒枠で囲まれた、パネルaの顕微鏡写真の詳細を示す。図示されたスケールバーは、50μmを表す。パネルcは、パネルb内の黒枠で囲まれた、パネルbの顕微鏡写真の詳細を示す。図示されたスケールバーは、10μmを表す。本発明とは異なる、提示された共振体の多孔率は、乾燥ステップの後では実質的にゼロである。
【0043】
図4は、本発明とは異なる共振体の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図4のパネルaは、上述の乾燥ステップの後の6つの共振体の顕微鏡写真を示す。図示されたスケールバーは、200μmを表す。同一の共振体の場合、共振体の多孔率は、
図1のプロセスにおいて説明した乾燥ステップの前では70%である。この多孔率は、第1のエマルジョンの調製中に、水性の第1の相の割合を調節することによって得られる。パネルaの共振体は、乾燥ステップの前はビーズ形状を有するが、乾燥ステップの間に徐々に変形し、パネルaに見られるような形状で終わる。
図4のパネルbは、
図4のパネルaで示された共振体と同じプロセスに従って製造された共振体の断面の顕微鏡写真である。図示されたスケールバーは、50μmを表す。
図4のパネルcは、
図4のパネルaで示された共振体と同じプロセスに従って製造された共振体の断面の詳細を示す顕微鏡写真である。図示されたスケールバーは、10μmを表す。
図4のパネルcに示された共振体は、高い割合の閉じた孔を含む。乾燥の間にビーズが受ける収縮効果の下で、共振体の閉じた孔は変形し、非球形になる。従って、初期の高い多孔率は、孔の大部分が閉じるので、非常に低くなる。
【0044】
図5は、本発明の一実施形態による1次エマルジョン9の光学顕微鏡写真である。1次エマルジョンは、1.5重量%の塩化ナトリウムを含む水性生理食塩水の第1の相6と、油Silcolease UV POLY200(登録商標、Bluestar Silicones)、4重量%の触媒(ヨードニウムホウ酸塩)、200ppmの紫外線に感受性のある化合物(イソプロピルチオキサントン、ITX)、及び0.4重量%の界面活性剤PDMS(ポリ(エチレン酸化物)(PEO)−ブロック−PDMS、Silube J208−812、Siltech、登録商標)を含む有機の第2の相7との間で調製される。水性生理食塩水の第1の相は、粉砕機内で大ばさみの下で、有機の第2の相に少しずつ導入される。水相の最終的な体積分率は、例えば、この方法を使用して5〜80%の間に、好ましくは20%〜40%の間になるように選択されることがある。有機の第2の相中の水相の液滴は、互いに対して接着挙動を有する。それらの液滴は、有機相中の水相の体積分率が幾らであっても、特性時間の後で、ふさを形成する傾向がある。内部エマルジョン9の液滴の平均的な直径は、使用する乳化法(Rayneri(登録商標)ミキサー若しくはUltraturrax(登録商標)ミキサーなどの混合ブレードを採用した器具を使用した2つの流体相の剪断混合、又は、2つの流体相を剪断混合するのを可能にする任意の機械装置、又は、超音波プローブを使用した2つの液相への超音波の印加による)に応じて、0.2〜100μmの間に含まれる。
【0045】
Zimnyら(Zimny,K.,Merlin,A.,Abdoulaye,B.S.,Aristegui,C.,Brunet,T.,Mondain−Monval,O.,2015,Soft porous silicon rubbers as key elements for the realization of acoustic metamaterials,Langmuir)は、
図5を参照して説明したエマルジョンから、直径約10cmのウェハ内に多孔質材料を製造するための方法を開示している。
【0046】
図6は、本発明の一実施形態による共振体の電子走査顕微鏡写真を示す。パネルaは、本発明の一実施形態による共振体の断面の顕微鏡写真である。この共振体は、
図5を参照して説明したエマルジョンを用いて、
図1を参照して説明したプロセスを使用して調製された。図示されたスケールバーは、100μmを表す。パネルbは、パネルa中の黒枠で示された、パネルaの詳細を示す。図示されたスケールバーは、50μmを表す。本発明者らは、共振体を調製するためのこのプロセス及び
図5を参照して説明したエマルジョンを使用すると、共振体の孔2の大部分は、密接してかつ相互接続されることを発見した。一般的に、本発明による共振体1の半径は、1μm〜10mmの間、好ましくは100μm〜1mmの間に含まれることがある。共振周波数は、共振体1のサイズに反比例する。例えばビンガム流体などのマトリックス4によって囲まれた100μmに等しい半径の共振体1の共振周波数は、例えば200kHzであり、1mmに等しい半径の共振体の共振周波数は20kHzである。一般的に、共振体1の共振周波数は、2kHz〜20MHzの間に含まれる。
【0047】
架橋の前では、2つの隣接する液滴は液相によって分離される。本発明者らは、架橋及び乾燥のステップにより、後天的に観察される、孔同士の相互接続が可能になることを発見した。本発明のこの実施形態では、全ての製造ステップの後での多孔率は、導入された水性の第1の相の体積分率、即ち、(
図2及び
図3に示した共振体とは異なり)30%に等しいままである。
【0048】
共振体の最終的な多孔率は、次の2つの効果又はパラメータ間の組み合わせに起因する。
− 共振体の構造が(
図4の共振体の乾燥中のように)乾燥ステップの間にそれ自体で崩壊しないように共振体を製造可能にするように十分に低い水性の第1の相の体積分率。
− 孔の互いに対する相互接続及び共振体の外部との相互接続により、直接的な、即ち、共振体の外部と水相との間の、即ち、ポリマー膜を通過しない、乾燥メカニズムが可能になる。この乾燥メカニズムは、
図3又は
図4の実施形態とは対照的に、水性の第1の相が、共振体の外部から生じる気体によって置換されることを可能にする。
【0049】
より一般的には、本発明者らは、
図5の実施形態で使用される界面活性剤と共振体の乾燥との間の関係性を発見した。
図5で使用される界面活性剤(Silube)は、液滴が互いに対して接着挙動を有することを可能にする。次いで、それらの液滴は、液滴のふさを形成することがある。より一般的には、液滴を1次エマルジョンにおいて類似の態様で振る舞わせる任意の他の界面活性剤を使用することが可能である。使用する界面活性剤は、有機の第2の相の架橋の前に、液滴の配列を決定する。これにより、共振体が、互いに対して相互接続された、またこの架橋の後では共振体の外部と相互接続された、孔のネットワークを含むことが可能になる。この製造方法は、有機の第2の相に高い割合の水性の第1の相(典型的には、70%以上)を導入する(その目的は、有機相の架橋中に孔の相互接続を促進するために、水性液滴を互いに圧縮することである)必要性を回避することを可能にする。この実施形態では、共振体の密度及びその圧縮率は、共に最適化されている。
【0050】
本発明の様々な実施形態では、共振体を製造するために使用されるポリマーは、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、ポリアクリル酸塩とポリスチレンとのブレンド、アガロース・ゲル、及びアクリルアミド・ゲルから選択されることがある。より一般的には、低剪断弾性率のポリマーが使用されることがある。
【0051】
図7は、本発明とは異なる複数のビーズ共振体の機械的特性付けである。ビーズ共振体は、鋼板の上に置かれている。共振体は、直径D、ポアソン係数ν、及び剪断弾性率Gを有する。Hは、ビーズの上に位置するドライバと鋼板とを隔てる距離である。垂直抗力Fが、ドライバによってビーズに印加される。
【0052】
δは次式によって定義される。
δ=D−H (2)
また、ヤング率Eは、次式による。
E=2G(1+ν) (3)
ヘルツの理論を適用すると、ビーズに印加される垂直抗力Fは、次式によって、δと関連付けられる。
【数2】
ここで、有効剪断力G
*及び有効ヤング率E
*は、次式により関連付けられる。
【数3】
【0053】
微小ひずみ領域では、Fは比率(δ/D)
3/2で線形に変化する。
【0054】
図7は、
図3に示した共振体(その多孔率は実質的にゼロである)と類似の様々な共振体について、比率(δ/D)
3/2の関数として、(3/2)D
2で正規化された、印加される垂直抗力における変動を示す。各曲線は、1つの共振体の特性付けに対応する。上述したモデルによると、曲線の傾斜が急であるほど、共振体はより剛性である。小さなひずみが仮定される場合には、有効ヤング率E
*を傾斜から推定することが可能である。
【0055】
直線(a)は、有効剪断弾性率が1.2MPaである共振体の数値シミュレーションに対応する。直線(b)は、有効剪断弾性率が2.8MPaである共振体の数値シミュレーションに対応する。これらの2本の直線は、異なる図面に対する比較点として働くことがある。
【0056】
図8は、本発明とは異なる複数のビーズ共振体の機械的特性付けである。この図は、本発明とは異なる、
図4に示した共振体(その多孔率は乾燥前には70%である)と類似の様々な共振体について、比率(δ/D)
3/2の関数として、(3/2)D
2で正規化された、印加される垂直抗力における変動を示す。各曲線は、1つの共振体の特性付けに対応する。直線(a)は、有効剪断弾性率が1.2MPaである共振体の数値シミュレーションに対応する。直線(b)は、有効剪断弾性率が2.8MPaである共振体の数値シミュレーションに対応する。
【0057】
図9は、本発明の一実施形態による複数のビーズ共振体の機械的特性付けである。この図は、本発明の一実施形態による
図6に示した共振体(その多孔率は40%である)と類似の様々な共振体について、比率(δ/D)
3/2の関数として、(3/2)D
2で正規化された、印加される垂直抗力における変動を示す。各曲線は、1つの共振体の特性付けに対応する。直線(a)は、有効剪断弾性率が1.2MPaである共振体の数値シミュレーションに対応する。直線(b)は、有効剪断弾性率が2.8MPaである共振体の数値シミュレーションに対応する。
【0058】
図10は、所与の有効ヤング率間隔の関数として特徴付けられる共振体の数のヒストグラムである。このヒストグラムは、説明したビーズの3つの母集団のヤング率の分布を示す。母集団(a)(左下から右上へ斜線を付したバー)は、
図6を参照して説明した本発明の一実施形態による共振体に対応する。母集団(b)(グレーに陰影をつけられたバー)は、
図4に対応する、本発明とは異なる実施形態による共振体に対応する。母集団(c)(右下から左上へ斜線を付したバー)は、
図3に対応する、本発明とは異なる一実施形態による共振体に対応する。
【0059】
非多孔質の共振体(c)は、実質的に6MPaに等しい有効ヤング率を有し、一方、本発明の一実施形態による多孔質共振体(a)は、実質的に2MPaに等しい有効率を有する。後者は、はるかに柔らかい。共振体(c)で行われた測定結果は、乾燥時の最初の多孔質構造の重要性、その結果として最終的な材料の多孔質構造の重要性を示している。共振体が、互いに付着しないエマルジョンの液滴を用いて、ビーズ(c)を生成するのに使用されたプロセスを用いて調製された場合、重合材料の孔同士は接続されない。乾燥中に、水が孔から漏れ出ると、孔は閉じていることが観察され、初めは30%の多孔率を有したビーズは、乾燥の終了時には、はるかに高密度で圧縮性がより低くなる。この効果は、
図7及び
図9に示されている。共振体(c)で行われた測定結果に対応する傾斜は、共振体(a)に対応する測定結果に対して、平均でより高くなっている。
【0060】
図11は、本発明の一実施形態による音響デバイス3の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0061】
図11のパネルaは、音響デバイス3の断面の顕微鏡写真である。
図6を参照して説明した本発明の一実施形態に従って調製された複数の共振体1は、マトリックス4によって囲まれている。本発明のこの実施形態では、マトリックス4中の音の伝搬速度は速い。有利にも、マトリックス中の音の伝搬速度は、500ms
−1よりも速い。有利にも、マトリックス中の音の伝搬速度は、1000ms
−1に実質的に等しい。本発明のこの特定の実施形態では、マトリックスは架橋されたPDMSからできている。図示されたスケールバーは、300μmに相当する。
【0062】
マトリックスのPDMS中の音の伝搬速度は、1000ms
−1に実質的に等しい。加えて、
図6の共振体を生成するために使用した多孔質PDMS中の音の伝搬速度は、実質的に80ms
−1に等しい。有利にも、マトリックス中の音の速度と共振体中の音の速度との比は、5よりも大きく、より有利には10よりも大きい。
【0063】
図11のパネルbは、パネルaの黒枠に対応する、
図11のパネルaの詳細の顕微鏡写真である。図示されたスケールバーは、100μmに相当する。
【0064】
図11のパネルcは、パネルbの黒枠に対応する、
図11のパネルbの詳細の顕微鏡写真である。図示されたスケールバーは、20μmに相当する。
【0065】
マトリックス4は、とりわけ、ビーズ共振体の沈降を防止することができる。共振体の調製後、共振体の分散を準備するために、共振体はマトリックス4に導入される。PDMSからできているマトリックスの場合、沈降を止めるために、共振体の混合の後でPDMSを架橋することが可能である。一般的に、マトリックスは、低剪断弾性率を有する固体である。本発明の別の実施形態では、ビンガム流体がマトリックスとして使用されることがある。
【0066】
本発明の様々な実施形態において、carbopol(登録商標)、(天然又は合成起源のポリイソプレンなどの)ラテックス、ポリアクリルアミド・ゲル、アガロース・ゲル、グアール(多糖)に基づくゲル、又はエラストマーを含むマトリックスを使用することが可能である。一般的に、マトリックスの材料は、有利にも、0.1MPa〜1GPaの間、好ましくは0.1MPa〜10MPaの間に含まれる低剪断弾性率を有する。
【0067】
本発明の実施形態に従って、共振体をマトリックスに取り込むために、マトリックスは流体特性を有していなければならない。しかしながら、これらの特性は、圧縮性の共振体を使用する必要性と矛盾することがある。流体は、外部と接続された孔に流入し、従って、共振体の圧縮率を低下させることがある。本発明者らは、有利にも100μmよりも小さい、好ましくは200μmよりも小さい直径の孔を使用することにより、ラプラス圧が、共振体への流体の浸透速度を遅くするほど、又は停止させるほど、十分に高くなることを発見した。これらの条件は、マトリックスを生成するために使用する流体に依存する。マトリックスとして架橋可能なポリマーを使用する場合、流体の浸透は、共振体の分散とマトリックスの架橋とを分離する時間の間のみ、十分に遅くなることがある。
【0068】
図12は、音響デバイス3の一実施形態の写真である。図示されたスケールバーは、2cmを表す。本発明のこの実施形態では、白点は、PDMSマトリックス中に分散した複数の共振体に相当する。
【0069】
図13は、音響デバイスに関連した伝搬損失を示す。この伝搬損失は、降伏応力流体(ここでは、carbopolベースの水相)でできているマトリックス中で共振体を分散させることにより達成される。実線により示される、音響デバイスの伝搬損失PLは、次式で定義される。
【数4】
但し、P
tは伝達される圧力の振幅であり、P
0は入射圧力の振幅である。伝搬損失は、材料によって吸収され、散乱され、反射されるものを定量化する。伝搬損失は、外部媒質と材料との間の音響インピーダンスにおける変化を考慮に入れている。伝搬損失は、外部媒質に依存する。従来技術による様々な市販の音響デバイスの伝搬損失の直線あてはめ結果が、破線により、(a)Alberich Tile(登録商標)、(b)Alberich SF5048(登録商標)、(c)Alberich F48(登録商標)、(d)Alberich F28(登録商標)として、示されている。
【0070】
図14は、音響デバイスに関連した減衰係数を示す。本発明のこの実施形態では、音響デバイスは、降伏応力流体(carbopolベースの水相)中に分散された共振体からなる。音響減衰は、入射波の周波数の関数として示されている。減衰係数αは、次式により定義される。
P
t=P
0f(Z)e
−αx (7)
但し、xは通過する音響デバイスの厚さであり、f(Z)は、外部材料の音響インピーダンスZ
extと音響デバイスのインピーダンスZ
effの関数である。
【数5】
【0071】
媒質の音響インピーダンスは、Z=ρ.c
Lと書くことができ、ここで、ρは当の媒質の体積密度であり、c
Lは同じ材料内の長手方向の位相速度である。
【0072】
測定された減衰係数は、
図6を参照して説明した共振体に対応する本発明の実施形態に対しては暗い線(a)により、また、
図4に対応する本発明とは異なる実施形態に対しては明るい線(b)により、
図14に示されている。
【0073】
減衰は、材料内部で吸収されるものについてのみ定量化し、外部媒質と実際の材料との間のインピーダンスにおける変動の効果は定量化しない。従って、この量は、デバイスと外部媒質との間の様々な界面での反射によって消散されるエネルギーの量に依存してはいない。従って、これは実際の材料の固有の特性である。
【0074】
図15は、共振体の多孔率の測定結果を示す。多孔率は、共振体への水銀の侵入度を測定することにより決定した。曲線(a)(長い破線)は、共振体1及び水銀を含むシステムに印加される圧力の関数としての、本発明の一実施形態による共振体1への水銀の侵入度に対応する。曲線(b)(短い破線)は、本発明とは異なる共振体及び水銀を含むシステムに印加される圧力の関数としての、本発明とは異なる共振体への水銀の侵入度に対応する。曲線(a)及び(b)に対応する共振体は、PDMSから作製された。
【0075】
曲線(a)で測定される共振体は、
図6に示した共振体に対応する。Silubeと呼ばれる界面活性剤を使用してそれらの共振体を生成した。曲線(b)で測定される共振体は、
図4に示した共振体に対応する。OH457と呼ばれる界面活性剤を使用してそれらの共振体を生成した。水銀の侵入の比容積は、0.1MPa〜10MPaの間に含まれる圧力に対して共振体の多孔率にあわせて変化した。10MPaより大きな圧力に対するこの2つの曲線の傾斜の増加は、PDMSの圧縮に対応する。
【0076】
水銀の侵入度の測定により、孔同士が相互接続されている場合の共振体の多孔率を計算することが可能になる。本発明の一実施形態による共振体1の場合(曲線(a))、本発明者らは、水性の第1の相6の体積分率に等しい多孔率を、この例では30%に等しいと計算した。
【0077】
図16は、2種類の共振体の相互接続孔の直径の分布を示す。曲線(a)は、本発明の一実施形態による共振体(例えば、界面活性剤Silureを使用して生成された
図6に示した共振体1)に対応し、曲線(b)は、本発明とは異なる実施形態による共振体(例えば、界面活性剤OH457を使用して生成された
図4に示した共振体)に対応する。曲線(a)に対応する共振体1の相互接続孔の測定された平均直径は5μmである。
【0078】
図17は、様々な共振体の質量密度分布を示す。
図17のヒストグラムの斜線を引かれたバー(a)は、本発明の一実施形態による共振体1で行われた密度測定結果に対応する。
図17のヒストグラムの陰影をつけられたバー(b)は、例えば
図4に示した種類の、本発明とは異なる共振体で行われた密度測定結果に対応する。
図17は、本発明の一実施形態による共振体1の密度の最適化を示している。この例では、密度は500〜850kgm
−3の間に含まれる。一般的に、本発明の一実施形態による共振体1の密度は、厳密に200kgm
−3より高く、好ましくは厳密に400kgm
−3より高く、好ましくは600kgm
−3より高い。