(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971868
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20211111BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
H01L29/78 655G
H01L29/78 653A
H01L29/78 655B
H01L29/78 652D
H01L29/78 655A
H01L29/78 652K
H01L29/78 652B
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-11151(P2018-11151)
(22)【出願日】2018年1月26日
(65)【公開番号】特開2019-129269(P2019-129269A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中谷 貴洋
【審査官】
西出 隆二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−274398(JP,A)
【文献】
特開2004−158507(JP,A)
【文献】
特開2012−182212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
複数のトレンチが設けられた第1の面と、前記第1の面と反対の第2の面とを有する半導体基板を備え、前記複数のトレンチの各々は、長手方向に延在する1対の長辺と前記1対の長辺をつなぐ1対の短辺とを有する開口を前記第1の面上に有し、前記複数のトレンチは、前記長手方向と、前記長手方向に交差する交差方向とにおいて周期的に配置され、前記半導体基板は、
第1の導電型を有するドリフト層と、
前記ドリフト層上に設けられ、前記第1の導電型と異なる第2の導電型を有し、前記複数のトレンチによって貫通された第1の領域と、
前記ドリフト層から離れて前記第1の領域上に設けられ、前記第1の導電型を有し、前記ドリフト層が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有し、前記複数のトレンチの前記1対の長辺の端部から離れて前記1対の長辺に接する第2の領域と、
前記第1の領域上に設けられ、前記第2の導電型を有し、前記第1の領域が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有する第3の領域と、
を含み、前記半導体装置はさらに、
前記複数のトレンチの内面を覆う絶縁膜と、
前記複数のトレンチのそれぞれの中に前記絶縁膜を介して設けられた複数のゲート電極と、
前記半導体基板の前記第1の面上に設けられ、前記ドリフト層から離れ、前記第2の領域および前記第3の領域に接する第1の主電極と、
前記半導体基板の前記第2の面上に設けられた第2の主電極と、
を備え、
前記複数のトレンチのうち前記長手方向において隣り合うものの間には、前記第2の導電型を有する半導体領域のみが配置されており、
前記複数のゲート電極の各々は、前記長手方向に沿って3μm以上4μm以下の長さを有している、半導体装置。
【請求項2】
前記長手方向において、前記第2の領域の長さは前記ゲート電極の長さよりも短い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体領域は前記第1の領域である、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体装置であって、
複数のトレンチが設けられた第1の面と、前記第1の面と反対の第2の面とを有する半導体基板を備え、前記複数のトレンチの各々は、長手方向に延在する1対の長辺と前記1対の長辺をつなぐ1対の短辺とを有する開口を前記第1の面上に有し、前記複数のトレンチは、前記長手方向と、前記長手方向に交差する交差方向とにおいて周期的に配置され、前記半導体基板は、
第1の導電型を有するドリフト層と、
前記ドリフト層の一部の上のみに設けられ、前記第1の導電型と異なる第2の導電型を有し、前記複数のトレンチによって貫通された第1の領域と、
前記ドリフト層から離れて前記第1の領域上に設けられ、前記第1の導電型を有し、前記ドリフト層が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有し、前記複数のトレンチの前記1対の長辺に接する第2の領域と、
前記第1の領域上に設けられ、前記第2の導電型を有し、前記第1の領域が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有する第3の領域と、
を含み、前記半導体装置はさらに、
前記複数のトレンチの内面を覆う絶縁膜と、
前記複数のトレンチのそれぞれの中に前記絶縁膜を介して設けられた複数のゲート電極と、
前記半導体基板の前記第1の面上に設けられ、前記ドリフト層から離れ、前記第2の領域および前記第3の領域に接する第1の主電極と、
前記半導体基板の前記第2の面上に設けられた第2の主電極と、
を備え、
前記第1の領域は、前記長手方向において複数の部分に分離されており、
前記長手方向における前記第1の領域の長さが、前記第1の面と前記第2の面とが互いに対向する方向における前記第1の領域の長さよりも長い、半導体装置。
【請求項5】
前記複数のゲート電極のうち前記長手方向において隣り合うものの間を接続する複数の接続電極をさらに備え、前記絶縁膜は、前記複数の接続電極と前記半導体基板との間を隔てる部分を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体装置であって、
複数のトレンチが設けられた第1の面と、前記第1の面と反対の第2の面とを有する半導体基板を備え、前記複数のトレンチの各々は、長手方向に延在する1対の長辺と前記1対の長辺をつなぐ1対の短辺とを有する開口を前記第1の面上に有し、前記複数のトレンチは、前記長手方向と、前記長手方向に交差する交差方向とにおいて周期的に配置され、前記半導体基板は、
第1の導電型を有するドリフト層と、
前記ドリフト層の一部の上のみに設けられ、前記第1の導電型と異なる第2の導電型を有し、前記複数のトレンチによって貫通された第1の領域と、
前記ドリフト層から離れて前記第1の領域上に設けられ、前記第1の導電型を有し、前記ドリフト層が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有し、前記複数のトレンチの前記1対の長辺に接する第2の領域と、
前記第1の領域上に設けられ、前記第2の導電型を有し、前記第1の領域が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有する第3の領域と、
を含み、前記半導体装置はさらに、
前記複数のトレンチの内面を覆う絶縁膜と、
前記複数のトレンチのそれぞれの中に前記絶縁膜を介して設けられた複数のゲート電極と、
前記半導体基板の前記第1の面上に設けられ、前記ドリフト層から離れ、前記第2の領域および前記第3の領域に接する第1の主電極と、
前記半導体基板の前記第2の面上に設けられた第2の主電極と、
前記複数のゲート電極のうち前記長手方向において隣り合うものの間を接続する複数の接続電極と、
を備え、
前記絶縁膜は、前記複数の接続電極と前記半導体基板との間を隔てる部分を有する、半導体装置。
【請求項7】
前記第1の領域は、前記長手方向において複数の部分に分離されている、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1の領域は、前記複数のトレンチの前記1対の長辺の一部に接し、かつ前記複数のトレンチの前記1対の短辺から離れている、請求項4から7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の領域は、前記複数のトレンチのうち前記交差方向において隣り合うものの間にのみ配置されている、請求項4から8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記複数の接続電極は、前記複数のゲート電極の材料と同じ材料からなる、請求項5から9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記複数のゲート電極の各々は、前記長手方向に沿って3μm以上4μm以下の長さを有している、請求項4から10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体基板は、前記第2の面上で前記第2の主電極に接し前記第2の導電型を有する半導体層をさらに備える、請求項1から11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、半導体基板から絶縁されたゲート電極を有するパワー半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界中で広がる省エネルギー化の動きに後押しされて、電力変換装置の低消費電力化への期待は非常に大きい。電力変換装置の中で中心的な役割を果たすのがパワーデバイスである。現在、パワーデバイスの中でも絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)が広く使用されている。特に、トレンチ型IGBTは、チャネルを高密度に配置することによって、低いオン電圧(詳しくは後述する)を得やすい。よってトレンチ型IGBTは消費電力の低減に好適である。トレンチゲート構造を有するIGBTの構成およびその動作の一例について、以下に説明する。
【0003】
IGBTの構成を得るために、p
+シリコン基板と、その上面上に設けられたn
−ドリフト層とを有するシリコンウエハが準備される。n
−ドリフト層の表層部にpベース領域が形成され、またpベース領域の表層部に選択的にn
+エミッタ領域が形成される。n
+エミッタ領域の表面からpベース領域を貫通してn
−ドリフト層に達するトレンチがストライプ状に形成される。トレンチの内部には、ゲート酸化膜を介して、多結晶シリコンからなるゲート電極が充填される。ゲート電極の上部を覆うように層間絶縁膜が形成される。層間絶縁膜の上部には、シート状のエミッタ電極が、n
+エミッタ領域およびpベース領域に接触するように設けられる。またp
+シリコン基板の下面上にシート状のコレクタ電極が設けられる。
【0004】
エミッタ電極の電位を基準として、コレクタ電極に、高い正電圧が印加される。ゲート電極の電圧が閾値よりも低いとき、IGBTはオフ状態にある。IGBTをオン状態とするためには、ゲート駆動回路からゲート抵抗を介して、閾値より高い電圧がゲート電極に印加される。これによりゲート電極には電荷が蓄積される。この蓄積によって、pベース領域のうち、ゲート酸化膜を介してゲート電極に対峙している部分の導電型がn型に反転する。その結果、pベース領域の一部にチャネル領域が形成される。これにより電子電流が、エミッタ電極から、n
+エミッタ領域と、pベース領域のチャネル領域とを通って、n
−ドリフト層に注入される。注入された電子により、p
+シリコン基板とn
−ドリフト層との間が順バイアス状態とされて、コレクタ電極からの正孔の注入が生じ得る。これによりIGBTがオン状態となる。オン状態におけるエミッタ電極とコレクタ電極との間の電圧降下がオン電圧である。
【0005】
IGBTをオン状態からオフ状態とするには、エミッタ電極とゲート電極との間の電圧が閾値以下とされる。これによって、ゲート電極に蓄積されていた電荷はゲート抵抗を介してゲート駆動回路へ放電される。その際、pベース領域のうちn型に反転していた領域であるチャネル領域がp型に戻る。これによってチャネル領域が消失する。その結果、n
−ドリフト層への電子の供給が停止される。これにより正孔の注入も停止される。その後、n
−ドリフト層内に蓄積されていた電子および正孔のそれぞれがコレクタ電極およびエミッタ電極に吐きだされるか、またはこれらが互いに再結合することにより、電流が消滅する。すなわち、IGBTがオフ状態になる。
【0006】
前述のように、オン状態とオフ状態との間のスイッチングには、ゲート電極とエミッタ電極との間の容量の充放電が必要である。この容量が大きい場合には、スイッチング動作のための充放電に要する時間が増加し、その結果、IGBTの電力損失が増加する。パワーデバイスの総損失は、オン電圧で決定される定常損失だけでなく、オン状態とオフ状態との間でのスイッチング損失をも含む。よって総損失を抑えるためには、定常損失だけでなくスイッチング損失も抑える必要があり、そのためには上記容量を低減することが重要である。
【0007】
特開2006−210547号公報(特許文献1)によれば、ストライプ状に設けられたトレンチを有するIGBTにおいて、トレンチ間で延びる半導体領域、すなわちメサ領域、の各々のpベース領域が、平面視において、互いに分離された複数の部分に分割されている。そして、この分割されたpベース領域にn
+エミッタ領域が設けられている。上記公報によれば、ゲート電極がエミッタ構造に面している領域が減ることからゲートとエミッタとの間の容量を低減することができる、と主張されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−210547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記公報に記載の技術によれば、エミッタ構造が設けられる領域が減るため、定常損失増大につながるオン電圧増大という犠牲をともなう。もしも、この犠牲に比して容量低減の効果が十分に大きければ、定常損失の増大よりもスイッチング損失の低減の方が十分に大きいことにより、総損失を十分に低減することができる。しかしながら本発明者の検討によれば、上記公報に記載の技術では、ゲート電極のうちチャネル領域の形成に寄与しない部分に関連しての容量が十分に抑えられない結果として、スイッチング損失の低減の効果を十分に得ることができない。
【0010】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、オン電圧の大きな増加を避けつつスイッチング損失を低減することによって総損失を低減することができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の局面に従う半導体装置は、半導体基板と、絶縁膜と、ゲート電極と、第1の主電極と、第2の主電極とを含む。半導体基板は、複数のトレンチが設けられた第1の面と、第1の面と反対の第2の面とを有している。複数のトレンチの各々は開口を第1の面上に有している。開口は、長手方向に延在する1対の長辺と、1対の長辺をつなぐ1対の短辺とを有している。複数のトレンチは、長手方向と、長手方向に交差する交差方向とにおいて周期的に配置されている。半導体基板は、ドリフト層と、第1の領域と、第2の領域と、第3の領域とを含む。ドリフト層は第1の導電型を有している。第1の領域は、ドリフト層上に設けられており、第1の導電型と異なる第2の導電型を有しており、複数のトレンチによって貫通されている。第2の領域は、ドリフト層から離れて第1の領域上に設けられており、第1の導電型を有しており、ドリフト層が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有しており、複数のトレンチの1対の長辺の端部から離れて1対の長辺に接している。第3の領域は、第1の領域上に設けられており、第2の導電型を有しており、第1の領域が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有している。絶縁膜は複数のトレンチの内面を覆っている。複数のゲート電極は複数のトレンチのそれぞれの中に絶縁膜を介して設けられている。第1の主電極は、半導体基板の第1の面上に設けられており、ドリフト層から離れており、第2の領域および第3の領域に接している。第2の主電極は半導体基板の第2の面上に設けられている。
複数のトレンチのうち長手方向において隣り合うものの間には、第2の導電型を有する半導体領域のみが配置されている。複数のゲート電極の各々は、長手方向に沿って3μm以上4μm以下の長さを有している。
【0012】
本発明の他の局面に従う半導体装置は、半導体基板と、絶縁膜と、ゲート電極と、第1の主電極と、第2の主電極とを含む。半導体基板は、複数のトレンチが設けられた第1の面と、第1の面と反対の第2の面とを有している。複数のトレンチの各々は開口を第1の面上に有している。開口は、長手方向に延在する1対の長辺と、1対の長辺をつなぐ1対の短辺とを有している。複数のトレンチは、長手方向と、長手方向に交差する交差方向とにおいて周期的に配置されている。半導体基板は、ドリフト層と、第1の領域と、第2の領域と、第3の領域とを含む。ドリフト層は第1の導電型を有している。第1の領域は、ドリフト層の一部の上のみに設けられており、第1の導電型と異なる第2の導電型を有しており、複数のトレンチによって貫通されている。第2の領域は、ドリフト層から離れて第1の領域上に設けられており、第1の導電型を有しており、ドリフト層が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有しており、複数のトレンチの1対の長辺に接している。第3の領域は、第1の領域上に設けられており、第2の導電型を有しており、第1の領域が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有している。絶縁膜は複数のトレンチの内面を覆っている。複数のゲート電極は複数のトレンチのそれぞれの中に絶縁膜を介して設けられている。第1の主電極は、半導体基板の第1の面上に設けられており、ドリフト層から離れており、第2の領域および第3の領域に接している。第2の主電極は半導体基板の第2の面上に設けられている。第1の領域は、前記長手方向において複数の部分に分離されている。長手方向における第1の領域の長さが、第1の面と第2の面とが互いに対向する方向における第1の領域の長さよりも長い。
あるいは、本発明の他の局面に従う半導体装置は、半導体基板と、絶縁膜と、ゲート電極と、第1の主電極と、第2の主電極と
、複数の接続電極とを含む。半導体基板は、複数のトレンチが設けられた第1の面と、第1の面と反対の第2の面とを有している。複数のトレンチの各々は開口を第1の面上に有している。開口は、長手方向に延在する1対の長辺と、1対の長辺をつなぐ1対の短辺とを有している。複数のトレンチは、長手方向と、長手方向に交差する交差方向とにおいて周期的に配置されている。半導体基板は、ドリフト層と、第1の領域と、第2の領域と、第3の領域とを含む。ドリフト層は第1の導電型を有している。第1の領域は、ドリフト層の一部の上のみに設けられており、第1の導電型と異なる第2の導電型を有しており、複数のトレンチによって貫通されている。第2の領域は、ドリフト層から離れて第1の領域上に設けられており、第1の導電型を有しており、ドリフト層が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有しており、複数のトレンチの1対の長辺に接している。第3の領域は、第1の領域上に設けられており、第2の導電型を有しており、第1の領域が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有している。絶縁膜は複数のトレンチの内面を覆っている。複数のゲート電極は複数のトレンチのそれぞれの中に絶縁膜を介して設けられている。第1の主電極は、半導体基板の第1の面上に設けられており、ドリフト層から離れており、第2の領域および第3の領域に接している。第2の主電極は半導体基板の第2の面上に設けられている。
複数の接続電極は、複数のゲート電極のうち長手方向において隣り合うものの間を接続している。絶縁膜は、複数の接続電極と半導体基板との間を隔てる部分を有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一の局面によれば、複数のトレンチの各々は、長手方向において離散的に配置されている。これにより、そのような配置でない場合に比して、トレンチ内に設けられたゲート電極と、半導体基板とが対向する面積が減少する。よってゲート電極とエミッタ電極との間の容量を抑えることができる。また第2の領域は、複数のトレンチの1対の長辺の端部から離れている。これにより、第2の領域を、複数のトレンチの1対の短辺から離れて配置することができる。よって、短辺近傍において、高不純物濃度で第1の導電型を有する第2の領域がpn接合を形成することが避けられる。よって、このpn接合に起因しての容量が形成されることが避けられる。よって、ゲート電極とエミッタ電極との間の容量をより抑えることができる。このように容量を抑えることによって、オン電圧の大きな増加を避けつつスイッチング損失を低減することができる。これにより半導体装置の総損失を低減することができる。
【0014】
本発明の他の局面によれば、複数のトレンチの各々は、長手方向において離散的に配置されている。これにより、そのような配置でない場合に比して、トレンチ内に設けられたゲート電極と、半導体基板とが対向する面積が減少する。よってゲート電極とエミッタ電極との間の容量を抑えることができる。また第1の領域は、ドリフト層の一部の上のみに設けられている。これにより、第1の領域がドリフト層の全体の上に設けられている場合に比して、第1の領域とドリフト層との間のpn接合の面積を抑えることができる。よって、このpn接合に起因しての容量が形成されることが避けられる。よって、ゲート電極とエミッタ電極との間の容量をより抑えることができる。このように容量を抑えることによって、オン電圧の大きな増加を避けつつスイッチング損失を低減することができる。これにより半導体装置の総損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態1における半導体装置の活性領域における構成を概略的に示す部分斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を、
図1における一部の構成の図示を省略しつつ示す、部分斜視図である。
【
図4】
図1の線IV−IVに沿う部分断面図である。
【
図5】比較例の半導体装置の構成を
図3と類似の視野で示す部分平面図である。
【
図6】実施例における、ゲート電極の長さLgと、ゲート電極とエミッタ電極との間の容量Cgeとの関係の例を示すグラフ図である。
【
図8】実施例における、ゲート電極の長さLgと、飽和電圧Vsatとの関係の例を示すグラフ図である。
【
図9】本発明の実施の形態2における半導体装置の活性領域における構成を概略的に示す部分斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態2における半導体装置の構成を、
図9における一部の構成の図示を省略しつつ示す、部分斜視図である。
【
図12】
図9の線XII−XIIに沿う部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、実施の形態においては、第1の導電型がn型であり、かつ、第1の導電型と異なる第2の導電型がp型である場合について詳しく説明する。このような導電型の選択が通常は好適である。しかしながら、第1の導電型がp型でありかつ第2の導電型がn型であってもよい。
【0017】
<実施の形態1>
(構造)
図1は、本実施の形態1におけるIGBT91(半導体装置)の活性領域における構成を概略的に示す部分斜視図である。なお
図1において、図を見やすくするために、ゲート絶縁膜5の図示を、半導体基板10の上面P1の平坦部上においては省略している。
図2は、IGBT91の構成を、上記平坦部を含む平面よりも上方の構成の図示を省略しつつ示す、部分斜視図である。
図3は、
図2の上面を示す部分平面図である。
図4は、
図1の線IV−IVに沿う部分断面図である。
【0018】
本実施の形態1のIGBT91は、半導体基板10と、ゲート絶縁膜5(絶縁膜)と、ゲート電極21と、エミッタ電極31(第1の主電極)と、コレクタ電極32(第2の主電極)とを含む。またIGBT91は複数の接続電極22を含んでいてよい。半導体基板10は、上面P1(第1の面)と、下面P2(第1の面と反対の第2の面)とを有している。半導体基板10は、例えばシリコンからなる。
【0019】
上面P1には複数のトレンチTRが設けられている。複数のトレンチTRの各々は上面P1上に開口OP(
図3)を有している。開口OPは、長手方向に延在する1対の長辺SLと、1対の長辺SLをつなぐ1対の短辺SSとを有している。複数のトレンチTRは、長手方向と、長手方向に交差する交差方向とにおいて周期的に配置されている。交差方向は、長手方向に直交する方向、すなわち直交方向、であることが好ましい。
図1〜
図4に示されている例においては、複数のトレンチTRは、ストライプ状に配置された複数の直線状パターンを部分的に欠損させたパターンを有している。具体的には、各直線状パターンが、その延在方向の途中において欠損することによって、互いに離れた複数の部分に分割されている。言い換えれば、ストライプ状に配置された複数の直線状パターンのうち、その延在方向における一部にのみ選択的にトレンチTRが設けられている。
図3に示されているように、長辺SLだけでなく短辺SSも直線状であってよい。その場合、開口OPの形状は長方形であってよい。
【0020】
半導体基板10は、ドリフト層11と、p型ベース領域12(第1の領域)と、n型エミッタ領域13(第2の領域)と、p型コンタクト領域14(第3の領域)と、p型コレクタ層16(半導体層)とを含む。半導体基板10はさらにn型バッファ層15を含んでよい。
【0021】
p型ベース領域12はドリフト層11上に設けられている。本実施の形態においては、活性領域において、p型ベース領域12はドリフト層11の全体の上に設けられていてよい。p型ベース領域12は、ドリフト層11へ達する複数のトレンチTRによって貫通されている。
【0022】
n型エミッタ領域13は、ドリフト層11から離れてp型ベース領域12上に設けられている。n型エミッタ領域13は、複数のトレンチTRの1対の長辺SLの端部から離れて1対の長辺SLに接している。n型エミッタ領域13は、複数のトレンチTRの1対の短辺SSから離れていてよい。n型エミッタ領域13は、ドリフト層11が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有している。
【0023】
p型コンタクト領域14はp型ベース領域12上に設けられている。p型コンタクト領域14は、p型ベース領域12が有する不純物濃度よりも高い不純物濃度を有している。
【0024】
p型コレクタ層16は、下面P2の少なくとも一部をなしており、下面P2上でコレクタ電極32に接している。p型コレクタ層16はn型バッファ層15を介してドリフト層11の下面上に設けられている。n型バッファ層15の不純物濃度はドリフト層11の不純物濃度よりも高い。なおn型バッファ層15は省略されてもよい。
【0025】
ゲート絶縁膜5はトレンチTRの内面を覆っている。ゲート絶縁膜はさらに、トレンチTRの外において、半導体基板10の上面P1を部分的に覆っていてよい。
【0026】
複数のゲート電極21は複数のトレンチTRのそれぞれの中にゲート絶縁膜5を介して設けられている。ゲート電極21はトレンチTR内においてゲート絶縁膜5を介してn型エミッタ領域13およびp型ベース領域12に接している。エミッタ電極31は半導体基板10の上面P1上に設けられている。エミッタ電極31は、ドリフト層11から離れており、n型エミッタ領域13およびp型コンタクト領域14に接している。コレクタ電極32は半導体基板10の下面P2上に設けられている。
【0027】
複数のゲート電極21の各々は、長手方向に沿って3μm以上4μm以下の長さLgを有していることが好ましい。好ましくは、n型エミッタ領域13は長手方向(
図3における縦方向)において複数の部分に分離されており、長手方向において、これらの部分の中心位置と、長さLgの中心位置とが、同じである。
【0028】
IGBT91はさらに、複数のゲート電極21のうち長手方向において隣り合うものの間を接続する複数の接続電極22を含んでよい。この場合、ゲート絶縁膜5は、
図4に示されているように、接続電極22と、半導体基板10の上面P1との間を隔てる部分を有している。複数のゲート電極21と複数の接続電極22とによって複合電極20が構成されている。複合電極20は、平面視(
図3)において、ストライプ状に配置された複数の直線状パターンを有していてよい。接続電極22は、ゲート電極21の材料と同じ材料からなっていることが好ましい。
【0029】
IGBT91においては、複数のトレンチTRのうち長手方向において隣り合うものの間の領域RS(
図3)には、p型を有する半導体領域のみが配置されている。具体的には、この半導体領域として、p型ベース領域12が配置されている。一方、比較例のIGBT91C(
図5)においては、上述した領域RS(
図3)に相当する領域の一部にn型エミッタ領域13が配置されている。その結果、上述した領域RS(
図3)に相当する領域において、面内方向でp型領域およびn型領域が対向するpn接合JC(
図5)が形成されている。pn接合JCに起因しての容量が形成されることによって、ゲート電極21とエミッタ電極31との間の容量が、より大きくなる。これにより、比較例のIGBT91Cにおいてはスイッチング損失が増大する。
【0030】
なお、IGBT91の活性領域(
図1〜
図4)の外側の領域、典型的には外周領域、には、耐圧構造(図示せず)が設けられていてよい。耐圧構造は、例えば、ガードリング、フィールドプレート、およびリサーフ等を組み合わせることによって構成されている。
【0031】
(シミュレーション)
図6は、実施例における、ゲート電極21の長さLg(
図3)と、ゲート電極21とエミッタ電極31との間の容量Cgeとの関係のシミュレーション例を示すグラフ図である。
図7は、
図6の縦軸の一部を拡大したグラフ図である。矢印A(
図6)に示すように、長さLgが3μm以上とされることによって、容量Cgeが顕著に抑制される。また矢印B(
図7)に示すように、長さLgが4μm以下とされることによって、容量Cgeが抑制される。このように容量Cgeが抑制されることによって、スイッチング動作時にゲート電極21へ電荷を蓄積するための時間が短くなる。これにより、スイッチング損失が抑制される。
【0032】
図8は、実施例における、ゲート電極21の長さLgと、飽和電圧Vsatとの関係のシミュレーション例を示すグラフ図である。図中、矢印Cに示すように、長さLgが3μm以上とされることによって、飽和電圧Vsat(オン電圧)が抑制される。これによりIGBTの定常損失が抑制される。
【0033】
以上のシミュレーション結果から、長さLgを3μm以上4μm以下とすることによって、オン電圧の大きな増加を避けつつスイッチング損失を低減する効果が、より十分に得られる。
【0034】
(製造方法)
次に、IGBT91の製造方法の一例について説明する。まず、ドリフト層11となる部分を含むn型の半導体基板10が用意される。
【0035】
次に半導体基板10の上面P1側の構造が形成される。具体的には、半導体基板10の上面P1側の表層部に選択的に各種不純物がイオン注入によって添加される。これにより、p型ベース領域12、n型エミッタ領域13、およびp型コンタクト領域14が形成される。続いて、半導体基板10の上面P1を選択的にエッチングすることによってトレンチTRが形成される。そして、トレンチTRが設けられた上面P1上において絶縁膜が、例えば熱酸化法によって形成される。次にこの絶縁膜上に多結晶シリコンが、例えば化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法によって形成される。この絶縁膜および多結晶シリコンを写真製版およびエッチングによってパターニングすることで、ゲート絶縁膜5および複合電極20が形成される。そして、n型エミッタ領域13およびp型コンタクト領域14に接するように選択的にエミッタ電極31が形成される。
【0036】
続いて半導体基板10の下面P2側の構造が形成される。具体的には、半導体基板10の下面P2側を研磨またはエッチングすることによって、半導体基板10の厚みが低減される。そして、下面P2上へのイオン注入によって、n型バッファ層15およびp型コレクタ層16が形成される。その後、半導体基板10の下面P2上に、コレクタ電極32として、スパッタ法により、例えばAl/Ti/Ni/Auの積層膜が形成される。
【0038】
(効果)
本実施の形態1によれば、複数のトレンチTRの各々は長手方向(
図3における縦方向)において離散的に配置されている。これにより、そのような配置でない場合に比して、トレンチTR内に設けられたゲート電極21と半導体基板10とがゲート絶縁膜5を介して対向する面積が減少する。よってゲート電極21とエミッタ電極31との間の容量Cgeを抑えることができる。またn型エミッタ領域13は、複数のトレンチTRの1対の長辺SL(
図3)の端部から離れている。これにより、n型エミッタ領域13を、複数のトレンチTRの1対の短辺SS(
図3)から離れて配置することができる。よって、短辺SS近傍で、高不純物濃度でn型を有するn型エミッタ領域13がpn接合JC(
図5)を形成することが避けられる。よって、pn接合JCに起因しての容量が形成されることが避けられる。よって、ゲート電極21とエミッタ電極31との間の容量Cgeをより抑えることができる。このように容量Cgeを抑えることによって、オン電圧の大きな増加を避けつつスイッチング損失を低減することができる。これによりIGBTの総損失を低減することができる。
【0039】
複数のトレンチTRのうち長手方向(
図3における縦方向)において隣り合うものの間には、p型を有する半導体領域のみが配置されており、具体的にはp型ベース領域12のみが配置されている。これにより、複数のトレンチTRのうち長手方向において隣り合うものの間にpn接合を形成しないようにすることができる。よって、このpn接合に起因しての容量が形成されることが避けられる。よって、ゲート電極21とエミッタ電極31との間の容量Cgeをより抑えることができる。
【0040】
複数のゲート電極21の各々は、長手方向に沿って3μm以上4μm以下の長さLgを有していることが好ましい。この場合、
図6および
図7より、ゲート電極21とエミッタ電極31との間の容量Cgeをより確実に抑えることができる。また
図8より、飽和電圧(オン電圧)をより確実に抑えることができる。
【0041】
複数の接続電極22(
図1)は、複数のゲート電極21のうち長手方向において隣り合うものの間を接続している。これにより、複数のゲート電極21のうち長手方向において隣り合うものの電位がほぼ均一化される。よって、IGBT91内での特性ばらつきを抑制することができる。複数の接続電極22が複数のゲート電極21の材料と同じ材料からなる場合、これらを形成する工程を簡素化することができる。
【0042】
<実施の形態2>
(構造)
図9は、本実施の形態2におけるIGBT92(半導体装置)の活性領域における構成を概略的に示す部分斜視図である。なお
図9において、図を見やすくするために、ゲート絶縁膜5の図示を、半導体基板10の上面P1の平坦部上においては省略している。
図10は、IGBT92の構成を、上記平坦部を含む平面よりも上方の構成の図示を省略しつつ示す、部分斜視図である。
図11は、
図10の上面を示す部分平面図である。
図12は、
図9の線XII−XIIに沿う部分断面図である。
【0043】
本実施の形態2のIGBT92(半導体装置)においては、活性領域において、p型ベース領域12はドリフト層11の一部の上のみに設けられている。p型ベース領域12は、長手方向(
図11における縦方向)において複数の部分に分離されていてよい。p型ベース領域12は、複数のトレンチTRの1対の長辺SL(
図11)の一部に接し、かつ複数のトレンチTRの1対の短辺SS(
図11)から離れていてよい。p型ベース領域12は、複数のトレンチTRのうち交差方向(
図11における横方向)において隣り合うものの間にのみ配置されていてよい。活性領域において、上面P1のうち、ドリフト層11上にp型ベース領域12が設けられていない部分は、ドリフト層11からなっていてよい。
【0044】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0045】
(効果)
本実施の形態2によれば、複数のトレンチTRの各々は、長手方向(
図11における縦方向)において離散的に配置されている。これにより、そのよう配置でない場合に比して、トレンチTR内に設けられたゲート電極21と、半導体基板10とがゲート絶縁膜5を介して対向する面積が減少する。よってゲート電極21とエミッタ電極31との間の容量Cgeを抑えることができる。またp型ベース領域12は、活性領域において、ドリフト層11の一部の上のみに設けられている。これにより、p型ベース領域12がドリフト層11の全体の上に設けられている場合に比して、p型ベース領域12とドリフト層11とが厚み方向において対向することによって形成されるpn接合の面積を抑えることができる。よって、このpn接合に起因しての容量が形成されることが避けられる。よって、ゲート電極21とエミッタ電極31との間の容量Cgeをより抑えることができる。このように容量Cgeを抑えることによって、オン電圧の大きな増加を避けつつスイッチング損失を低減することができる。これによりIGBTの総損失を低減することができる。
【0046】
p型ベース領域12は、長手方向(
図11における縦方向)において複数の部分に分離されていてよい。この場合、当該部分の間において、p型ベース領域12とドリフト層11とが厚み方向に対向するpn接合JD(
図4)が形成されないようにすることができる(
図12参照)。
【0047】
p型ベース領域12は、複数のトレンチTRの1対の長辺SL(
図11)の一部に接し、かつ複数のトレンチTRの1対の短辺SS(
図11)から離れていてよい。これにより、長辺SLにIGBT92の電流経路を形成しつつ、短辺SS近傍でp型ベース領域12とドリフト層11とによるpn接合が形成されないようにすることができる。よって、十分な電流経路を確保することによりオン電圧をより抑制しつつ、pn接合に起因しての容量増大を抑えることによりスイッチング損失をより低減することができる。
【0048】
p型ベース領域12は、複数のトレンチTRのうち交差方向(
図11における横方向)において隣り合うものの間にのみ配置されていてよい。この場合、p型ベース領域12とドリフト層11とが厚み方向で対向するpn接合の面積をより小さくすることができる。よって、pn接合に起因しての容量をより抑えることができる。
【0049】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
P1 上面(第1の面)、P2 下面(第2の面)、OP 開口、SL 長辺、TR トレンチ、SS 短辺、5 ゲート絶縁膜、10 半導体基板、11 ドリフト層、12 p型ベース領域(第1の領域)、13 n型エミッタ領域(第2の領域)、14 p型コンタクト領域(第3の領域)、15 n型バッファ層、16 p型コレクタ層(半導体層)、20 複合電極、21 ゲート電極、22 接続電極、31 エミッタ電極(第1の主電極)、32 コレクタ電極(第2の主電極)、91,92 IGBT(半導体装置)。