【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。また、特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0059】
1.カプセル性能評価試験
本発明のカプセルは、(D)容易に変質する親油性成分を溶解した(C)油性成分の油中水型乳化分散液を内包することを特徴としている。従って、カプセルの性能は、カプセル製造時に乳化分散液を完全に内包できるか否かで評価されるが、乳化分散の安定性が高ければ、その乳化分散液を完全に内包できる。本発明のカプセルとそれ以外のカプセルを製造し、その性能を比較する試験を行った。
【0060】
(1)カプセル配合成分
カプセル製造時に用いた配合成分を下記に示した。
【0061】
(A)高分子ゲル化剤
(A−1):アルギン酸ナトリウム
(「キミカアルギンIL−2」(商品名);キミカ社製)
(A−2):カラギーナン(「WR−78−J」(商品名);CPケルコ社製)
(A−3):ジェランガム
(「KELCOGEL CG−LA」(商品名);CPケルコ社製)
【0062】
(B)水溶性多価金属塩
(B−1):塩化カルシウム二水和物(試薬、特級;関東化学社製)
【0063】
(C)油性成分
(C−1):スクワラン(「クラレスクワランN」(商品名);クラレ社製)
(C−2):オレフィンオリゴマー
(「ノムコートHPD−C」(商品名);日清オイリオグループ社製)
(C−3):ミリスチン酸イソプロピル
(「クロダモルIPM」(商品名);クローダジャパン社製)
(C−4):オリブ油(「クロピュアOL」(商品名);クローダジャパン社製)
(C−5):ミツロウ(「ゴールデンブランドミツロウ」(商品名);三木化成社製)
【0064】
(D)容易に変質する親油性成分
(D−1):テトラヘキシルデカン酸L−アスコルビル
(「NIKKOL VC−IP」(商品名);日光ケミカルズ社製)
(D−2):トコフェロール(ビタミンE)
(「イーミックス−D」(商品名);タマ生化学社製)
(D−3):アスタキサンチン
(「アスタリールオイル」(商品名);富士化学工業社製)
(D−4):レチノール(ビタミンA)
(「レチノール15D」(商品名);BASFジャパン社製)
(D−5):4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン
(「パルソール1789」(商品名);DSM ニュートリションジャパン社製)
(D−6):グリチルレチン酸ステアリル
(「COグレチノール(商品名);丸善製薬社製)
【0065】
(E)多糖類
(E−1):アルカシーラン(「アルカシーラン」(商品名);伯東社製)
(E−2):キサンタンガム(「ケルザンT」(商品名);三晶社製)
【0066】
(2)本発明のカプセルの製造
カプセル1〜カプセル9(実施例1〜実施例9)の製造方法を下記に示した。
【0067】
(カプセル1)
80℃の温水97.88gにアルカシーラン(E−1)0.12g、アルギン酸ナトリウム(A−1)2.0gを加え、ホモミキサー(IKA社製)を16,000rpmで回転させながら、10分間撹拌して溶解した後、50℃に冷却した。ホモミキサー(IKA社製)16,000rpmで撹拌を続けながら、前記水溶液にスクワラン(C−1)30g、オレフィンオリゴマー(C−2)20g、ミリスチン酸イソプロピル(C−3)20g、オリブ油(C−4)20g、ミツロウ(C−5)4g、テトラヘキシルデカン酸L−アスコルビル(D−1)6.0gを加え、5分間撹拌して乳化させ、乳化分散溶液を調製した。イオン交換水2000mlに塩化カルシウム二水和物(B−1)を100g溶解させた塩化カルシウム水溶液を緩やかにパドル撹拌している所に、前記乳化分散液をl00mL/分の速度で滴下した。1分間反応させた後、水で洗浄し、カプセル1を製造した。カプセル1を実施例1とする。
【0068】
(カプセル2)
テトラヘキシルデカン酸L−アスコルビル(D−1)をトコフェロール(ビタミンE)(D−2)に変更した以外は、カプセル1と同様な方法でカプセル2を製造した。カプセル2を実施例2とする。
【0069】
(カプセル3)
テトラヘキシルデカン酸L−アスコルビル(D−1)をアスタキサンチン(D−3)に変更した以外は、カプセル1と同様な方法でカプセル3を製造した。カプセル3を実施例3とする。
【0070】
(カプセル4)
テトラヘキシルデカン酸L−アスコルビル(D−1)をレチノール(ビタミンA)(D−4)に変更した以外は、カプセル1と同様な方法でカプセル4を製造した。カプセル4を実施例4とする。
【0071】
(カプセル5)
テトラヘキシルデカン酸L−アスコルビル(D−1)を4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(D−5)に変更した以外は、カプセル1と同様な方法でカプセル5を製造した。カプセル5を実施例5とする。
【0072】
(カプセル6)
テトラヘキシルデカン酸L−アスコルビル(D−1)をグリチルレチン酸ステアリル(D−6)に変更した以外は、カプセル1と同様な方法でカプセル6を製造した。カプセル6を実施例6とする。
【0073】
(カプセル7)
アルギン酸ナトリウム(A−1)をカラギーナン(A−2)に変更した以外は、カプセル1と同様な方法でカプセル7を製造した。カプセル7を実施例7とする。
【0074】
(カプセル8)
アルギン酸ナトリウム(A−1)をジェランガム(A−3)に変更した以外は、カプセル1と同様な方法でカプセル8を製造した。カプセル8を実施例8とする。
【0075】
(カプセル9)
塩化カルシウム二水和物(B−1)を10gに変更した以外は、カプセル1と同様な方法でカプセル9を製造した。カプセル9を実施例9とする。
【0076】
(3)本発明以外のカプセルの製造
カプセル10、カプセル11(比較例1、比較例2)の製造方法を下記に示した。
【0077】
(カプセル10)
アルカシーラン(E−1)をキサンタンガム(E−2)に変更した以外は、カプセル1と同様な方法でカプセル10を製造した。カプセル10を比較例1とする。
【0078】
(カプセル11)
アルカシーラン(E−1)をキサンタンガム(E−2)に変更し、テトラヘキシルデカン酸L−アスコルビル(D−1)をグリチルレチン酸ステアリル(D−6)に変更した以外は、カプセル1と同様な方法でカプセル11を製造した。カプセル11を比較例2とする。
【0079】
(4)製造したカプセルの性能評価
前述のように、製造したカプセルの性能はカプセル製造時に乳化分散液を完全に内包できるか否かで評価される。ここで、カプセルに内包される乳化分散液の乳化安定性が不良の場合は、(D)容易に変質する親油性成分を溶解した(C)油性成分は、水相と完全に分離された油滴として乳化分散液中に安定的に存在することができず、油分として水相に混入する。このような状態で乳化分散液を水溶性多価金属塩の水溶液に滴下すると、水相に混入した油分は水溶性多価金属塩水溶液側に流れ出て、カプセル形成後の該水溶液の液面上に油膜を生じる。従って、水溶性多価金属塩水溶液の液面上に油膜が生じた場合は、カプセル製造時に乳化分散液を完全に内包できなかった(×表示)、油膜が生じなかった場合は、カプセル製造時に乳化分散液を完全に内包できた(〇表示)と評価できる。実施例1〜9及び比較例1、2について評価した結果を表1に示した。
【0080】
【表1】
【0081】
表1の結果より、実施例1〜9のように、多糖類にアルカシーラン(E−1)を用いた場合、カプセルを形成した後の水溶性多価金属塩水溶液の表面に油膜を生じなかったことから、乳化分散が良好であり、全ての(C)油性成分及び(D)容易に変質する親油性成分をカプセルに内包できていることがわかった。それに対して、比較例1、2のように、多糖類にキサンタンガム(E−2)を用いた場合、カプセルを形成した後の水溶性多価金属塩水溶液の表面に油膜を生じたことから、乳化分散不良であり、(C)油性成分及び(D)容易に変質する親油性成分をカプセルに内包しきれていないことがわかった。
【0082】
2.カプセル入り化粧料の経時安定性評価試験
本発明のカプセル入り化粧料は、カプセルを、(F)分散安定化剤を含有する水溶液中に存在させたことを特徴としている。本発明のカプセル入り化粧料とそれ以外の化粧料を製造して経時安定性試験を行い、化粧料の性能、外観及び臭気を比較した。
【0083】
(1)カプセル入り化粧料配合成分
カプセル入り化粧料製造時に用いた配合成分を下記に示した。
【0084】
(F)分散安定化剤
(F−1):カルボキシビニルポリマー(カルボマー)
(「ハイビスワコー104」(商品名);和光純薬社製)
(F−2):アルカシーラン(「アルカシーラン」(商品名);伯東社製)
(F−3):キサンタンガム(「ケルザンT」(商品名);三晶社製)
【0085】
(その他の配合成分)
・グリセリン(試薬、特級;和光純薬社製)
・1,3−ブチレングリコール(試薬、特級;和光純薬社製)
・ステアリン酸ポリグリセル
(「NIKKOL Dacaglyn 1−SV」(商品名);日光ケミカルズ社製)
・エチルアルコール(試薬、特級;和光純薬社製)
・パラオキシ安息香酸エステル(「メッキンスM」(商品名);上野製薬社製)
【0086】
(2)本発明のカプセル入り化粧料の製造
化粧料1〜化粧料7の製造方法を下記に示した。
【0087】
(化粧料1)
グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ステアリン酸ポリグリセル、エチルアルコール、パラオキシ安息香酸エステルを精製水に加え、ホモミキサー(特殊機化工業社製)で8,000rpmで70℃にて5分間撹拌した。その溶液を40℃まで冷却した後、カプセル1を加え、ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて8,000rpmで5分間撹拌した。さらに、分散安定化剤であるカルボキシビニルポリマー(カルボマー)(F−1)を加えた後に緩やかにパドル撹拌を行い、カプセル1の分散液を作成した。その後、水酸化ナトリウムまたは硫酸を用いて、pHを7に調製し、化粧料1を製造した。
【0088】
(化粧料2)
カプセル1をカプセル6に変更した以外は、化粧料1と同様な方法で、化粧料2を製造した。
【0089】
(化粧料3)
カプセル1をカプセル7に変更した以外は、化粧料1と同様な方法で、化粧料3を製造した。
【0090】
(化粧料4)
カプセル1をカプセル8に変更した以外は、化粧料1と同様な方法で、化粧料4を製造した。
【0091】
(化粧料5)
カプセル1をカプセル9に変更した以外は、化粧料1と同様な方法で、化粧料5を製造した。
【0092】
(化粧料6)
カルボキシビニルポリマー(カルボマー)(F−1)をアルカシーラン(F−2)に変更した以外は、化粧料1と同様な方法で、化粧料6を製造した。
【0093】
(化粧料7)
カルボキシビニルポリマー(カルボマー)(F−1)をキサンタンガム(F−3)に変更した以外は、化粧料1と同様な方法で、化粧料7を製造した。
【0094】
(3)本発明以外の化粧料の製造
化粧料8〜化粧料9の製造方法を下記に示した。
【0095】
(化粧料8)
カプセル1をカプセル10に変更した以外は、化粧料1と同様な方法で、化粧料8を製造した。
【0096】
(化粧料9)
カプセル1をカプセル11に変更した以外は、化粧料1と同様な方法で、化粧料9を製造した。
【0097】
化粧料1〜化粧料9の配合を表2に示した。
【0098】
【表2】
【0099】
上記化粧料以外に、特開2009−234951号公報の実施例87の化粧料を化粧料10とした。その配合を表3に示した。
【0100】
【表3】
【0101】
化粧料10の製造方法は次の通りである。
【0102】
(化粧料10)
1.区分cの多糖類(E−1)を80℃に加温後、ディスパーザを用いて水に前分散
させた(分散液1)。
2.区分aの各成分を計量し、分散液1と均一に混合、80℃にて加温溶解した
(分散液2)。
3.区分bの各成分を計量し、80℃にて加温溶解させた(混合液1)。
4.分散液2をホモジナイザー(またはホモミキサー)で8,000rpmに攪拌しな
がら、混合液1を徐々に添加した。添加後、更に10分間攪拌を行い、室温まで
冷却して化粧料10を製造した。
【0103】
(4)製造した化粧料の経時安定性評価
表2、及び表3に示した化粧料1〜化粧料10について経時安定性試験を行った。
【0104】
化粧料1〜7をそれぞれ実施例10〜16、化粧料8〜10をそれぞれ比較例3〜5とした。試験方法は次の通りである。
化粧料50gをガラス容器に入れ、密栓して、−10℃(24時間)〜50℃(24時間)のサイクル恒温槽に入れ、3ヶ月後の安定性、外観、臭気の評価と(D)容易に変質する親油性成分濃度の測定を行った。安定性と外観は目視観察、臭気は官能試験によって評価し、容易に変質する親油性成分の濃度は高速液体クロマトグラフィー法にて測定した。
【0105】
(安定性の評価)
O:カプセルの分散状態が保たれて、油分の浮きは無い。
△:カプセルが上面に集まっているが、油分の浮きは無い。
×:表面に油分が浮く。
【0106】
(外観の評価)
○:変色無し
×:変色有り
【0107】
(臭気の評価)
○:臭気無し
×:臭気有り
【0108】
(容易に変質する親油性成分濃度の測定)
製造直後と3ヶ月間の経時安定性試験を経た後の化粧料について、濾過によりカプセルを回収し、回収したカプセルをホモジナイザーで粉砕した後、遠心分離により、(C)油性成分、(D)容易に変質する親油性成分の回収を行った。回収した(C)油性成分、(D)容易に変質する親油性成分をエタノールにより希釈した後、下記条件にて高速液体クロマトグラフィーを行い、下記式より(D)容易に変質する親油性成分の残存率を算出した。
容易に変質する親油性成分残存率(%)=(B/A)×100
A=0日後(製造直後)の容易に変質する親油性成分濃度(mg/L)
B=3ヶ月間の経時安定性試験を経た後の容易に変質する親油性成分濃度(mg/L)
【0109】
(テトラヘキシルデカン酸Lーアスコルビルの測定条件)
カラム:NH2P−50 4E(Shodex製)
溶離液:アセトニトリル100%溶液
溶離液流量:1.0mL/min
検出器:多波長検出器
測定波長:223nm
【0110】
(グリチルレチン酸ステアリルの測定条件)
カラム:ODS(C18)(ShodeX製)
溶離液:メタノール100%溶液
溶離液流量:1.0mL/min
検出器:多波長検出器
測定波長:250nm
【0111】
3ヶ月間の経時安定性試験を経た後の化粧料の安定性、外観、臭気の評価、及び容易に変質する親油性成分の残存率を表4に示した。
【表4】
【0112】
表4の結果より、3ヶ月間の経時安定性試験を経た後の化粧料の安定性、外観、臭気、及び容易に変質する親油性成分の残存率を評価した。(C)油性成分と(D)容易に変質する親油性成分を完全に内包したカプセルを、(F)分散安定化剤を含有する水溶液中に存在させた本発明のカプセル入り化粧料の実施例である実施例10〜16では、安定性、外観及び臭気の評価において、安定性では、カプセルが上面に集まっているが油分の浮きは無いという評価(△)があるものの、外観の変色は認められず、臭気は無かった。また、テトラヘキシルデカン酸Lーアスコルビル及びグリチルレチン酸ステアリル等の容易に変質する親油性成分についても、3ヶ月後の残存率が85%以上であり、本発明のカプセル入り化粧料では、容易に変質する親油性成分の分解、化粧料の変色、及び化粧料の臭気発生を防止できることが示された。中でも、化粧料の分散安定化剤にアルカシーランを配合した場合(実施例15)、カプセルの分散状態が保たれて油分の浮きは無く、外観の変色も認められず、異臭の発生も無く、最も安定であったことから、分散安定化剤としてアルカシーランを選択すると本発明の効果が、最も得られることが示された。それに対して、(C)油性成分と(D)容易に変質する親油性成分であるテトラヘキシルデカン酸Lーアスコルビルを内包しきれていないカプセルを用いた比較例3では、安定性は同等程度であったが、外観の変色が認められ、また、臭気の発生が有り、容易に変質する親油性成分の3ヶ月後の残存率が50%以下であった。同様に、(C)油性成分と(D)容易に変質する親油性成分であるグリチルレチン酸ステアリルを内包しきれていないカプセルを用いた比較例4では、安定性は同等程度であり、外観の変色も認められず、臭気の発生も無かったが、容易に変質する親油性成分の3ヶ月後の残存率が60%以下であった。また、比較例5では、臭気は無かったが、外観の変色が認められ、容易に変質する親油性成分の3ヶ月後の残存率が70%以下であった。比較例5は、高級アルコール、油性成分、多糖類及び容易に変質する親油性成分を含有する化粧料において、融点が45℃以上の高級アルコールを2種以上含有することによって安定な乳化状態が得られる化粧料であるが、その製造方法では、容易に変質する親油性成分を80℃にて加温溶解する工程があるため、該親油性成分が熱によって分解・変質したと判断される。