(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構造壁の延長方向における、前記プレキャストコンクリート部材の幅方向端面の位置と前記鋼構造物の前記継手部の位置が重ならないように前記プレキャストコンクリート部材が配列されていることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の構造壁。
前記第1工程において、前記鋼構造物に設けられた受け面で前記プレキャストコンクリート部材を受け止め、前記受け面と前記プレキャストコンクリート部材との間に設けられるギャップ調節機構で前記プレキャストコンクリート部材の設置高さを調節することを特徴とする、請求項11または12に記載の接続方法。
前記第3工程において、前記モルタルまたは前記コンクリートを凝固させた後、前記棒状部材の長手方向に張力を付与することを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載の接続方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る構造壁の概略構成を示す正面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る鋼構造物とプレキャストコンクリート部材の接続部を拡大した図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る構造壁の部分断面図であり、鋼構造物およびプレキャストコンクリート部材の貫通穴について説明するための図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る鋼構造物とプレキャストコンクリート部材の接続部を拡大した図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る構造壁の概略構成を示す図であり、
図2中のC−C断面に相当する図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係る構造壁の概略構成を示す図であり、
図2中のB−B断面に相当する図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る構造壁の概略構成を示す図であり、
図2中のC−C断面に相当する図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態に係る構造壁の概略構成を示す図であり、
図2中のC−C断面に相当する図である。
【
図12】本発明の第5の実施形態に係る構造壁の概略構成を示す図であり、
図2中のB−B断面に相当する図である。
【
図13】本発明の第5の実施形態に係る構造壁の概略構成を示す図であり、
図2中のC−C断面に相当する図である。
【
図14】本発明の第6の実施形態に係る構造壁の概略構成を示す図であり、
図2中のB−B断面に相当する図である。
【
図15】本発明の第6の実施形態に係る隣り合う拘束部材の連結部を拡大した図である。
【
図16】本発明の第6の実施形態に係る構造壁の概略構成を示す図であり、
図2中のC−C断面に相当する図である。
【
図17】本発明の第7の実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の設置方法の一例を示す図である。
【
図18】本発明の第7の実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の設置方法の一例を示す図である。
【
図19】本発明の第7の実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の設置方法の一例を示す図である。
【
図20】本発明の第7の実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の設置方法の一例を示す図である。
【
図21】プレキャストコンクリート部材の形状例を示す図である。
【
図22】プレキャストコンクリート部材の形状例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、基礎部として地中部に設置される鋼構造物と、地上部に設置されるプレキャストコンクリート部材の接続構造および接続方法である。また、本発明は、その接続構造を有した、鋼構造物とプレキャストコンクリート部材からなる構造壁である。この構造壁の用途としては例えば土塁壁、防潮堤、防波堤または桟橋等がある。
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<第1の実施形態>
第1の実施形態では、構造壁の基礎部を構成する鋼構造物として鋼矢板が使用されている。
図1に示すように構造壁1は、構造壁1の延長方向L(法線方向)に沿って列状に設置された複数の鋼矢板20と、それらの鋼矢板20の上部に設置された複数のプレキャストコンクリート部材50で構成されている。本実施形態におけるプレキャストコンクリート部材50は鋼矢板20の2枚分の幅を有している。
【0015】
図2および
図3に示すように鋼矢板20は地中に埋設されているが、その一部は地上に突出した状態となっている。プレキャストコンクリート部材50の下端部には、鋼矢板20の地上に突出している部分(以下、“突出部21”)を収容可能な開口部51が設けられている。開口部51はプレキャストコンクリート部材50を幅方向W(
図1)に貫通するように形成され、
図3に示すようにプレキャストコンクリート部材50の下端部は、開口部51を間に挟み、第1の端部52と第2の端部53とに分割された形状となっている。
【0016】
プレキャストコンクリート部材50は、第1の端部52と第2の端部53との間に鋼矢板20の突出部21が位置する状態で鋼矢板20の上部に設置されている。すなわち、構造壁1の側面視においては、鋼矢板20の突出部21がプレキャストコンクリート部材50の開口部51に挿入されるようにして、プレキャストコンクリート部材50が鋼矢板20の突出部21に跨るように設置されている。プレキャストコンクリート部材50の開口部51内の空隙はモルタルで充填されている。
【0017】
図4は構造壁1の部分断面図であるが、プレキャストコンクリート部材50の下端部には構造壁1の厚さ方向t(
図3)に貫通する貫通穴56が形成されている。貫通穴56はプレキャストコンクリート部材50の幅方向Wに沿って複数設けられ、貫通穴56はプレキャストコンクリート部材50の下端部において異なる高さに3つずつ形成されている。また、鋼矢板20の上部においても構造壁1の厚さ方向tに貫通する貫通穴22が形成されている。構造壁1の延長方向Lに沿って配列される鋼矢板20には、貫通穴22が異なる高さに1つずつ形成された第1の鋼矢板20aと、貫通穴22が異なる高さに2つずつ形成された第2の鋼矢板20bといった2種類の鋼矢板20があり、第1の鋼矢板20aと第2の鋼矢板20bは構造壁1の延長方向Lに沿って交互に設置されている。鋼矢板20の上部に設置されたプレキャストコンクリート部材50は、中央の貫通穴56が第1の鋼矢板20aの貫通穴22の位置に一致し、左側および右側の貫通穴56がそれぞれ異なる第2の鋼矢板20bの貫通穴22の位置に一致した状態で配列されている。すなわち、本実施形態におけるプレキャストコンクリート部材50は、1つのプレキャストコンクリート部材50が3枚の鋼矢板20の上に載るように配列されている。
【0018】
図3に示すように鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50の接続部においては、鋼矢板20の貫通穴22(
図4)およびプレキャストコンクリート部材50の貫通穴56(
図4)を通るように棒状部材2が挿入されている。なお、棒状部材2の素材は強度が大きいものであれば特に限定されず、樹脂でも金属であっても良いが、例えばPC鋼材、PC鋼棒、鉄筋、丸鋼、高強度鉄筋または鋼製ボルト等を用いることが好ましい。
【0019】
本実施形態では棒状部材2として鋼製ボルトを使用しているが、挿入された鋼製ボルトはナットで締め上げられており、棒状部材2の長手方向に張力が付与されている。棒状部材2に張力が付与されていなくても鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50を接続することは可能であるが、本実施形態のように棒状部材2に張力を付与することで、鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50の連結をより強固なものにすることができる。
【0020】
プレキャストコンクリート部材50の内部には鉄筋が埋め込まれており、
図3に示すようにプレキャストコンクリート部材50の第1の端部52および第2の端部53の内部にはそれぞれ主鉄筋が通っている。なお、配力鉄筋については図示していない。本実施形態の構造壁1においては、プレキャストコンクリート部材50の第1の端部52および第2の端部53の内部に帯状の部材(例えば鋼材)である拘束部材3がそれぞれ設けられている。拘束部材3はプレキャストコンクリート部材50の内部にある主鉄筋54よりも外方に設けられている。換言すると、プレキャストコンクリート部材50の主鉄筋54は拘束部材3と開口部51との間に位置している。また、主鉄筋54の先端部には、本実施形態のようにコンクリートと鉄筋の密着性を向上させるための定着板55が設けられていても良い。定着板55は例えばナット等の他の部材であっても良い。
【0021】
図5および
図6に示すように拘束部材3は、長手方向がプレキャストコンクリート部材50の幅方向Wに向くようにしてプレキャストコンクリート部材50の内部に埋め込まれている。本実施形態の拘束部材3はプレキャストコンクリート部材50の幅よりも、やや短い長さを有し、1つの拘束部材3でプレキャストコンクリート部材50の幅方向Wの3つの貫通穴56を覆うことができる長さとなっている。拘束部材3には、プレキャストコンクリート部材50の貫通穴56と同様、貫通穴(不図示)が形成されており、棒状部材2はその拘束部材3の貫通穴も通るように挿入されている。本実施形態のように拘束部材3を設けることで、複数の棒状部材2が拘束部材3を介して連結されることになり、鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50の連結をより強固なものにすることができる。また、拘束部材3がプレキャストコンクリート部材50の主鉄筋54よりも外方に設けられていることにより、プレキャストコンクリート部材50に負荷がかかった際の主鉄筋54の変形を抑制することが可能となる。
【0022】
また、
図6に示すように鋼矢板20は継手部23を介して互いに連結されているが、本実施形態の構造壁1においては、プレキャストコンクリート部材50の幅方向端面50aの位置が鋼矢板20の継手部23の位置と異なる位置となるようにプレキャストコンクリート部材50が設置されている。すなわち、構造壁1の延長方向Lにおける隣り合うプレキャストコンクリート部材50の目地部と、隣り合う鋼矢板20の目地部とが互いに異なる位置となるように構造壁1が構築されている。プレキャストコンクリート部材50をこのように配列することは必須ではないが、プレキャストコンクリート部材50の目地部と鋼矢板20の目地部が重ならないようにすることで、地震発生時等における目地部のずれを抑えることができる。
【0023】
図3に示すようにプレキャストコンクリート部材50の棒状部材2の挿入箇所には、プレキャストコンクリート部材50の外面から厚さ方向tにくり抜かれたような形状を有する凹部57が設けられている。この凹部57はプレキャストコンクリート部材50の製造時に予め形成されるものである。凹部57にはモルタルが充填されており、挿入された棒状部材2が外観に現れないようになっている。なお、
図3では凹部57に充填されたモルタルを図示しているが、以降の図においては図示を省略している。
【0024】
第1の実施形態の構造壁1は以上にように構成されている。次に、鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50の接続方法について説明する。
【0025】
(第1工程)
まず、構造壁1の基礎部として複数の鋼矢板20を地中に埋設していくが、この際に一部が地上に突出した状態となるように鋼矢板20を設置する。次に、工場で予め製造されたプレキャストコンクリート部材50を鋼矢板20の上部に設置する。ここではプレキャストコンクリート部材50の下端部に形成された開口部51と、鋼矢板20の突出部21との位置を合わせ、鋼矢板20の突出部21にプレキャストコンクリート部材50を被せるようにしてプレキャストコンクリート部材50を地表面に吊り下げていく。これにより、鋼矢板20の突出部21がプレキャストコンクリート部材50の開口部51に挿入されるような状態でプレキャストコンクリート部材50が設置される。また、本実施形態においては1つのプレキャストコンクリート部材50が3枚の鋼矢板20の上に載るようにプレキャストコンクリート部材50を設置している。なお、構造壁1を防潮堤や防波堤等に使用する場合、プレキャストコンクリート部材50を海底面に設置する際には鋼構造物の周囲の仮締切を行い、排水が終了した後に作業を行う。
【0026】
(第2工程)
続いて、プレキャストコンクリート部材50の貫通穴56(
図4)および鋼矢板20の貫通穴22(
図4)をそれぞれ通るように棒状部材2を挿入する。本実施形態においては鋼製ボルトを挿入し、ナットを締めることにより棒状部材2の長手方向に張力を付与する。これにより鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50をより強固に接続することができる。なお、プレキャストコンクリート部材50の貫通穴56は、プレキャストコンクリート部材50の製造時に予め形成するようにしても良いし、プレキャストコンクリート部材50の製造後の加工によって形成するようにしても良い。
【0027】
(第3工程)
その後、プレキャストコンクリート部材50に設けられたモルタル注入穴(不図示)を介してプレキャストコンクリート部材50の開口部51内の空隙にモルタルを充填する。そして、充填されたモルタルが凝固することにより鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50とが接続される。このとき、本実施形態においては、プレキャストコンクリート部材50の第1の端部52と第2の端部53との間に鋼矢板20の突出部21が位置し、鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50が重なった状態にあるため、両者がより強固に接続される。特に、構造壁1を防潮堤等の海岸付近で使用する際には、津波などの発生時に海側から陸上側に向かって大きな回転モーメントを受けることになるため、鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50とを重ねて接続することが有用である。
【0028】
以上の方法で鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50を接続すれば、鋼矢板20の突出部21がプレキャストコンクリート部材50に覆われることになる。したがって、この接続構造を有する構造壁1においては鋼矢板20の突出部21が外観に現れないため、施工時における鋼矢板20の防食処理を省略することができる。これにより工期を短縮することが可能となる。
【0029】
また、この接続構造においては鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50との間に棒状部材2が挿入された状態でモルタルが充填されているため、地震の発生時等において棒状部材2に引抜き抵抗力または押込み抵抗力を発生させることができる。加えて、棒状部材2が挿入されていることによって、鋼矢板20およびプレキャストコンクリート部材50との間で摩擦力を発生させることができる。すなわち、本実施形態の接続構造によれば、それらの力の作用により構造壁1としての剛性を高めることが可能となる。また、本実施形態では、1つのプレキャストコンクリート部材50が複数枚の鋼矢板20に接続されるように各プレキャストコンクリート部材50が配列されているため、構造壁1の剛性をより向上させることができる。
【0030】
また、複数の棒状部材2が貫通する拘束部材3がプレキャストコンクリート部材50の主鉄筋54よりも外方に設けられていることにより、プレキャストコンクリート部材50に負荷がかかった際の主鉄筋54の変形を抑制することも可能となる。
【0031】
さらに本実施形態では、隣り合うプレキャストコンクリート部材50の目地部と隣り合う鋼矢板20の目地部とが重ならないように両者が接続されているため、地震発生時等における鋼矢板20の目地部のずれや、プレキャストコンクリート部材50の目地部のずれを抑えることができる。このような接続構造の場合、鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50の接続部において曲げ、せん断または軸力を受けた際には、プレキャストコンクリート部材50で受けた力が各鋼矢板20に伝達され、鋼矢板20で受けた力が各プレキャストコンクリート部材50に伝達されるため、構造壁1としての剛性を高めることができる。また、この接続構造の場合、鉛直方向からの荷重に対する抵抗力も大きくすることができる。
【0032】
本実施形態の構造壁1は、以上の第1〜第3工程を繰り返し行うことで構築される。なお、上記の第3工程の終了後においては、棒状部材2の挿入箇所に相当するプレキャストコンクリート部材50外面の凹部57がモルタルで埋められる。
【0033】
なお、鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50の接続方法に関し、本実施形態では第2工程で棒状部材2に張力を付与することとしたが、第2工程ではなく第3工程で棒状部材2に張力を付与することにしても良い。この場合、例えば棒状部材2として鋼製ボルトを使用する際には、鋼製ボルトを予め樹脂等で被覆しておくことで、凝固したモルタルとの間で滑りが生じやすくなり、鋼製ボルトを回転させることができる。ただし、棒状部材2に張力を付与せずにモルタルを注入すると、棒状部材2に撓みが生じることがあるため、より強固に鋼矢板20とプレキャストコンクリート部材50を接続するためには、第2工程で棒状部材2に張力を付与することが好ましい。
【0034】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では拘束部材3の形状が第1の実施形態と異なっている。
図7に示すように第2の実施形態の拘束部材3の上端部および下端部には、プレキャストコンクリート部材50の内方、すなわち開口部51側に突出するフランジ部3aがそれぞれ形成されている。
図8に示すように拘束部材3のフランジ部3aには、拘束部材3の長手方向に沿って間隔をおいて貫通穴3bが形成されている。各貫通穴3bにはプレキャストコンクリート部材50の主鉄筋54が通っている。
【0035】
このような第2の実施形態の構造壁1においては、拘束部材3のフランジ部3aに主鉄筋54が通っていることにより、拘束部材3を介してコンクリートと鉄筋の密着性を高めることができる。これに加え、複数の主鉄筋54の拘束力を高めることができ、プレキャストコンクリート部材50に負荷がかかった際の主鉄筋54の変形抑制効果を高めることができる。すなわち、第2の実施形態の構造壁1では棒状部材2、拘束部材3および主鉄筋54とが互いに連結されることになり、三者の組み合わせによる相乗効果で、鋼構造物とプレキャストコンクリート部材の接続をより一層強固なものにすることができる。なお、拘束部材3に設けられるフランジ部3aの数や位置は特に限定されない。例えば拘束部材3の上端部または下端部のいずれか一箇所にフランジ部3aが設けられていても良いし、棒状部材2に干渉しなければ拘束部材3の中央部にフランジ部3aが設けられていても良い。
【0036】
<第3の実施形態>
第3の実施形態では鋼構造物として鋼管矢板30が使用されている。
図9および
図10に示すように鋼管矢板30は構造壁1の延長方向Lに沿って複数配列されており、各鋼管矢板30は
図10に示すように継手部31を介して連結されている。第3の実施形態では1つのプレキャストコンクリート部材50に対して3本の鋼管矢板30が接続されている。また、プレキャストコンクリート部材50は、幅方向端面50aが鋼管矢板30の継手部31の位置と重ならないように配列されている。これにより隣り合うプレキャストコンクリート部材50の目地部のずれの発生を抑えることが可能となる。
【0037】
第3の実施形態のように鋼構造物として鋼管矢板30が使用される場合も、プレキャストコンクリート部材50を鋼管矢板30の地上に突出した部分に跨るように設置することで、第1の実施形態と同様に構造壁1を構築する際に鋼構造物とプレキャストコンクリート部材50をより一層強固に接続することができる。
【0038】
<第4の実施形態>
第4の実施形態では鋼構造物として鋼管杭40と鋼矢板20を組み合わせた構造物が使用されている。
図11に示すように、鋼矢板20は第1の実施形態と同様に構造壁1の延長方向Lに沿って複数配列され、各鋼矢板20は継手部23を介して連結されている。また、鋼管杭40は、構造壁1の延長方向Lに沿って間隔をおいて複数設置されている。鋼管杭40は、平面視において曲面部の一部が鋼矢板20の凹部24(ウェブとフランジに囲まれる部分)に入りこむようにして鋼矢板20に隣接して設置されている。鋼管杭40と鋼矢板20は例えば拘束具で結束されることで連結されている。
【0039】
第4の実施形態の構造壁1では、1つのプレキャストコンクリート部材50に挿入される3本の棒状部材2のうち、両側の棒状部材2がそれぞれ鋼管杭40および鋼矢板20の両者を貫通し、中央の棒状部材2は鋼矢板20のみを貫通した状態となっている。また、プレキャストコンクリート部材50は、幅方向端面50aが鋼矢板20の継手部23の位置と重ならないように配列されている。これにより隣り合うプレキャストコンクリート部材50の目地部のずれを抑えることが可能となる。さらに第4の実施形態においては、プレキャストコンクリート部材50の幅方向端面50aの位置、すなわち隣り合うプレキャストコンクリート部材50の目地部の位置に鋼管杭40が設置されている。これにより鋼管杭40がプレキャストコンクリート部材50の目地部のずれを抑える効果がさらに向上する。
【0040】
第4の実施形態のように鋼構造物として鋼管杭40と鋼矢板20を組み合わせた構造物が使用される場合も、プレキャストコンクリート部材50をその組み合わせ構造物の地上に突出した部分に跨るように設置することで、第1の実施形態と同様に構造壁1を構築する際に鋼構造物とプレキャストコンクリート部材50をより一層強固に接続することができる。
【0041】
<第5の実施形態>
第5の実施形態では鋼構造部として鋼管杭40のみが使用されている。
図12および
図13に示すように鋼管杭40は、構造壁1の延長方向Lに沿って間隔をおいて複数設置されている。第5の実施形態では第1の実施形態と異なり、1つのプレキャストコンクリート部材50に対して棒状部材2が5本挿入されている。また、プレキャストコンクリート部材50の幅は、第1の実施形態のプレキャストコンクリート部材50の幅よりも長くなっている。第5の実施形態では、1つのプレキャストコンクリート部材50に挿入される5本の棒状部材2のうち、中央の棒状部材2の両隣にある2本の棒状部材2がそれぞれ異なる鋼管杭40を貫通している。
【0042】
第5の実施形態のように鋼構造物として鋼管杭40が使用される場合も、プレキャストコンクリート部材50を鋼管杭40の地上に突出した部分に跨るように設置することで、第1の実施形態と同様に構造壁1を構築する際に鋼構造物とプレキャストコンクリート部材50をより一層強固に接続することができる。
【0043】
<第6の実施形態>
上記の第5の実施形態においては鋼構造物として鋼管杭40を使用したが、隣り合うプレキャストコンクリート部材50の目地部に鋼管杭40が設置されない場合、隣り合うプレキャストコンクリート部材50はモルタルでのみ連結されることになる。第6の実施形態では、そのような場合であっても隣り合うプレキャストコンクリート部材50を連結することができる構造壁1について説明する。
【0044】
図14〜
図16に示すように第6の実施形態のプレキャストコンクリート部材50は、下端部に切り欠きが設けられており、下端部の幅はそれ以外の部分の幅よりも短くなっている。第6の実施形態では、プレキャストコンクリート部材50の内部に埋め込まれた拘束部材3の幅がプレキャストコンクリート部材50と同一の幅を有しており、隣り合う拘束部材3の端面同士が突き合わされた状態となっている。第6の実施形態においては拘束部材3の幅方向両端部にそれぞれ添接板4が設けられている。隣り合う拘束部材3の添接板4同士は例えば溶接やボルト締結等で固定されている。
【0045】
第6の実施形態の構造壁1を構築する際には、プレキャストコンクリート部材50を鋼管杭40の上部に配列した後に隣り合う拘束部材3の添接板4同士を互いに固定する。その後、プレキャストコンクリート部材50の前面側および背面側に型枠を構築し、プレキャストコンクリート部材50の開口部51内の空隙にモルタルを充填する。これにより、隣り合うプレキャストコンクリート部材50の目地部において、添接板4を介して隣り合う拘束部材3が互いに連結された状態で、構造壁1が構築される。その結果、隣り合うプレキャストコンクリート部材50の連結がより強固なものとなる。
【0046】
なお、第6の実施形態では、添接板4を用いて隣り合う拘束部材3を連結することとしたが、その他の方法で連結しても良い。また、鋼構造物として鋼管杭40以外のものを使用する場合であっても、隣り合う拘束部材3を互いに連結することで、隣り合うプレキャストコンクリート部材50の連結をより強固なものとすることができる。
【0047】
<第7の実施形態>
上記の第1〜第6の実施形態では鋼構造物とプレキャストコンクリート部材50の接続方法として、プレキャストコンクリート部材50を地表面に降下させることを前提に説明したが、第7の実施形態ではプレキャストコンクリート部材50を設置する際に、鋼構造物に設けられた受け面にプレキャストコンクリート部材50を降下させる例について説明する。
【0048】
例えば
図17に示すように鋼構造物の地表面近傍に平板状の基礎コンクリート部材5を設け、この基礎コンクリート部材5にプレキャストコンクリート部材50を降下させるようにしても良い。この際、基礎コンクリート部材5の上面に所定の高さを有するスペーサー6を設けることが好ましい。鋼構造物を設置する際には隣り合う鋼構造物で設置高さにずれが生じることがあるが、高さの異なるスペーサー6を適宜設けることにより、プレキャストコンクリート部材50を設置高さを揃えることができる。これにより構造壁1としての景観を良好なものにすることができる。また、プレキャストコンクリート部材50の設置高さの調節が可能であれば、鋼構造物の貫通穴とプレキャストコンクリート部材50の貫通穴56の位置を一致させることができるよう微調整することもできる。なお、基礎コンクリート部材5とプレキャストコンクリート部材50との間にはパッキン7が設けられており、後に充填されるモルタルが漏出しないようになっている。
【0049】
上記の
図17に示す例では、プレキャストコンクリート部材50と、そのプレキャストコンクリート部材50の底面に接する鋼構造物の受け面との間に設けられたギャップ調節機構として、高さの異なる複数のスペーサー6を用いることとしたが、ギャップ調節機構はスペーサー6を用いることに限定されない。例えば
図18に示すように、プレキャストコンクリート部材50の下端部に高さ調節用ボルト8を設けるようにしても良い。
図18に示す例では、プレキャストコンクリート部材50の下端面から突出するボルトの高さを調節することで、プレキャストコンクリート部材50の設置高さを調節することができる。
【0050】
また、プレキャストコンクリート部材50を地表面から離れた位置に設置する際には、
図19に示すように鋼構造物にブラケット9を取り付けるようにしても良い。
図19に示す例では、ブラケット9の上面にプレキャストコンクリート部材50の幅方向Wに延びる底型枠10を設置し、
図17に示す例のようにスペーサー6によってプレキャストコンクリート部材50の設置高さを調節する。なお、プレキャストコンクリート部材50の設置後のブラケット9については、構造壁1の設置個所の地表面を周囲の地表面と同じ高さになるように土で埋めても良いし、ガス切断により除去しても良い。また、
図20に示すように、ギャップ調節機構として
図18に示す例のような高さ調節用ボルト8を設けても良い。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0052】
例えば鋼構造物の形状や設置位置等は前述の実施形態で説明したものに限定されない。同様に、プレキャストコンクリート部材50の形状は前述の実施形態で説明したものに限定されない。例えば
図21に示すように側面視において左右非対称形状であっても良いし、
図22に示すように高さが低い形状であっても良い。すなわち、プレキャストコンクリート部材50の形状は構造壁1の用途によって適宜変更される。また、プレキャストコンクリート部材50の開口部51の形状は、使用する鋼構造物の形状、設置位置等において適宜変更される。
【0053】
また、前述の実施形態では、1つのプレキャストコンクリート部材50に対して、拘束部材3を棒状部材2の挿入箇所に合わせて2つ設けることとしたが、例えば
図23に示すように1つの拘束部材3で全ての棒状部材2を連結できるようにしても良い。また、そのような平板状の拘束部材3と、前述の実施形態の帯状の拘束部材3とを組み合わせて使用しても良い。なお、構造壁1を構築する際には、棒状部材2の挿入箇所に相当するプレキャストコンクリート部材50の凹部57をモルタルで埋めることになるため、この観点からは拘束部材3のサイズは大きすぎないことが好ましい。
【0054】
また、前述の実施形態においては、拘束部材3が内部に埋め込まれた状態でプレキャストコンクリート部材50を製造することとしたが、例えばプレキャストコンクリート部材50の設置後に、プレキャストコンクリート部材50外面の凹部57に拘束部材3を取り付けるようにしても良い。この場合、拘束部材3を凹部57に取り付けた後に、棒状部材2を拘束部材3、プレキャストコンクリート部材50および鋼構造物を通るように挿入する。このように拘束部材3を後から取り付ける場合、例えば
図24に示すように隣り合うプレキャストコンクリート部材50に掛け渡されるように拘束部材3を取り付けても良い。これにより、隣り合うプレキャストコンクリート部材50の連結がさらに強固なものとなり、プレキャストコンクリート部材50の目地部のずれをさらに抑制することができる。なお、拘束部材3を後から取り付ける場合においても、プレキャストコンクリート部材50外面の凹部57はモルタルで埋められることになるため、構造壁1としての景観は損なわれない。
【0055】
以上の説明では、プレキャストコンクリート部材50の開口部51内の空隙や、プレキャストコンクリート部材50外面の凹部57にモルタルを充填することにしているが、モルタルに代えてコンクリートを充填することにしても良い。