(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971878
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】発光素子の点灯制御回路
(51)【国際特許分類】
H05B 45/50 20200101AFI20211111BHJP
H05B 45/38 20200101ALI20211111BHJP
【FI】
H05B45/50
H05B45/38
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-28523(P2018-28523)
(22)【出願日】2018年2月21日
(65)【公開番号】特開2019-145339(P2019-145339A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2021年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村田 茂
【審査官】
田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−186159(JP,A)
【文献】
特開2017−21954(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0188015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/00
H05B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と当該発光素子に対して並列接続された保護素子とを含む光源の点灯制御を行うための装置であって、
電源に繋がる電流経路に一端が接続された誘導性素子と、
前記誘導性素子の他端と基準電位端の間に接続されたスイッチング素子と、
前記誘導性素子の他端と前記基準電位端の間に接続された容量性素子と、
一端が前記電源に繋がる電流経路及び前記発光素子のカソードに接続され、他端が前記容量性素子と前記発光素子のアノードに接続されたバイパス用ダイオードと、
を含む、点灯制御装置。
【請求項2】
前記保護素子は、ツェナーダイオードであり、当該ツェナーダイオードは、アノードが前記発光素子のカソードと接続し、カソードが前記発光素子のアノードと接続するように並列接続される、
請求項1に記載の点灯制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の点灯制御装置と、当該点灯制御装置によって制御される光源とを含む、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDなどの発光素子の点灯状態を制御するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用灯具など種々の照明装置においてLEDなどの発光素子が広く用いられている。発光素子の点灯状態の制御には、例えばDC−DCコンバータを含んだ昇降圧回路が用いられる(例えば、特許文献1参照)。また、過電流からの保護のため、発光素子に対して並列に保護素子(例えばツェナーダイオード)が接続される場合もある。
【0003】
ところで、昇降圧回路を用いて発光素子の点灯状態を制御する場合に、電源投入時に発光素子と並列接続された保護素子に対して過電流が流れ、保護素子を破損する場合がある。これは、電源投入時に昇降圧回路の出力側に接続されるコンデンサの電荷がチャージされていないため、電源から保護素子を伝ってコンデンサへ至る電流経路が形成され、突入電流が生じてしまうことに起因する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−109939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、発光素子の点灯制御装置において、電源投入時における保護素子への突入電流が生じるのを抑制可能な技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る一態様の点灯制御装置は、(a)発光素子と当該発光素子に対して並列接続された保護素子とを含む光源の点灯制御を行うための装置であって、(b)電源に繋がる電流経路に一端が接続された誘導性素子と、(c)前記誘導性素子の他端と基準電位端の間に接続されたスイッチング素子と、(d)前記誘導性素子の他端と前記基準電位端の間に接続された容量性素子と、(e)一端が前記電源に繋がる電流経路及び前記発光素子のカソードに接続され、他端が前記容量性素子と前記発光素子のアノードに接続されたバイパス用ダイオードと、を含む、点灯制御装置である。
[2]本発明に係る一態様の照明装置は、上記の点灯制御装置と、当該点灯制御装置によって制御される光源とを含む、照明装置である。
【0007】
なお、本明細書において「接続」とは、ある回路要素と別の回路要素とが直接的に接続されている場合のほか、他の要素を介在させて間接的に接続されている場合も含む概念である。
【0008】
上記構成によれば、発光素子の点灯制御装置において、電源投入時における保護素子への突入電流が生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態の車両用灯具の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の点灯制御回路の詳細構成を示す回路図である。
【
図3】
図2は、比較例の点灯制御回路の詳細構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、一実施形態の車両用灯具の全体構成を示すブロック図である。図示の車両用灯具は、バッテリ3から電力供給を受けて光照射を行うものであり、制御基板1と光源2を含んで構成されている。バッテリ3と制御基板1の間にはリレー4が接続されている。光源2は、1つ以上の発光素子(例えばLED)を含んで構成されている。
【0011】
制御基板1は、入力コネクタ11、逆接保護回路12、入力フィルタ13、点灯制御回路(点灯制御装置)14および電流検出回路15を含んで構成されている。入力コネクタ11は、制御基板11とバッテリ3を接続するためのコネクタである。逆接保護回路12は、バッテリ3と点灯制御回路14の間に接続されており、バッテリ3に対して点灯制御回路14が逆接続された際に点灯制御回路14を保護するために電圧を遮断するものである。入力フィルタ13は、雑音成分等が点灯制御回路14に入力されないようにするフィルタ回路である。
【0012】
点灯制御回路14は、バッテリ3から電力供給を受けて光源2に含まれる発光素子の点灯状態を制御するためのものであり、DC−DCコンバータ等を含んで構成されている。電流検出回路15は、光源2の発光素子に流れる電流を検出する。点灯制御回路14は、この電流検出回路15により検出される電流の大きさが一定となるように点灯制御を行う。
【0013】
図2は、一実施形態の点灯制御回路の詳細構成を示す回路図である。なお、説明を簡素化するために電流検出部15については図示を省略している。図示の点灯制御回路14は、コイル(誘導性素子)21、ダイオード22、トランジスタ23、コンデンサ(容量性素子)24、バイパス用ダイオード25を含んで構成されている。これらのうち、少なくともコイル21、トランジスタ23、コンデンサ24を含んで昇圧回路(DC−DCコンバータ)が構成されている。
【0014】
コイル21は、一端側がバッテリ3に繋がる電流経路に接続され、他端側がダイオード22のアノードおよびトランジスタ23のドレインと接続されている。ダイオード22は、アノード側がコイル21の他端およびトランジスタ23のドレインと接続され、カソード側がコンデンサ24の一端側および光源2の発光素子31のアノード側と接続されている。
【0015】
トランジスタ23は、ゲートが図示しない制御部と接続され、ドレインがコイル21とダイオード22の中間接続点と接続されており、ソースが基準電位端(接地端)と接続されている。ゲートには制御部から制御信号が与えられる。なお、ここではスイッチング素子の一例として電界効果型トランジスタを用いているが、バイポーラトランジスタを用いてもよい。
【0016】
コンデンサ24は、一端側がダイオード22と光源2の発光素子31の中間接続点と接続され、他端側が基準電位端と接続されている。バイパス用ダイオード25は、一端側がバッテリ3に繋がる電流経路に接続され、他端側がダイオード22の他端側およびコンデンサ24の一端側と接続されている。
【0017】
光源2は、発光素子31と、この発光素子31に対して並列接続されたツェナーダイオード(保護素子)32を含んで構成されている。発光素子31は、アノード側が点灯制御回路14と接続され、カソード側がバッテリ3に繋がる電流経路に接続されている。
【0018】
ツェナーダイオード32は、アノード側が発光素子31のカソード側と接続され、カソード側が発光素子31のアノード側と接続されている。別言すると、ツェナーダイオード32は、アノード側がバッテリ3に繋がる電流経路に接続され、カソード側が点灯制御回路14と接続されている。
【0019】
このような点灯制御回路14の電源投入時における電流の流れは図中に太い点線で示したような流れとなる。具体的には、バッテリ3に繋がる電流経路から流れる電流は、バイパス用ダイオード25を通ってコンデンサ24に至り、コンデンサ24に電荷をチャージする。コンデンサ24に電荷がチャージされることで、光源2のツェナーダイオード32の両端の電位差がなくなるので、ツェナーダイオード32に過電流が流れるのを防止することができる。
【0020】
図3は、比較例の点灯制御回路の詳細構成を示す回路図である。上記の実施形態の点灯制御回路との違いはバイパス用ダイオード25が含まれていないことである。このような比較例の点灯制御回路14aの電源投入時における電流の流れは図中に太い点線で示したような流れとなる。具体的には、バッテリ3に繋がる電流経路から流れる電流は、光源2のツェナーダイオード32を通ってコンデンサ24に至り、コンデンサ24に電荷をチャージする。コンデンサ24に電荷がチャージされるまでの間、ツェナーダイオード32には瞬間的に過電流が流れることになり、破損等の可能性が高まる。
【0021】
以上のような実施形態によれば、発光素子の点灯制御装置において、電源投入時における保護素子(ツェナーダイオード)への突入電流が生じるのを抑制することができる。
【0022】
なお、本発明は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態で示した点灯制御回路における昇圧回路の構成は一例であり、これに限定されない。また、光源に含まれる発光素子は複数であってもよい。また、照明装置の一例として車両用灯具を示していたが照明装置の用途はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0023】
1:制御基板
2:光源
3:バッテリ
14:点灯制御回路
21:コイル
22:ダイオード
23:トランジスタ
24:コンデンサ
25:バイパス用ダイオード
31:発光素子
32:ツェナーダイオード