(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面及び以下の記載は、本開示の特定の例示的な実施形態を説明するものである。なお、当業者であれば、本明細書には明確に記載又は図示されていないものの、本開示の原理を具現化するとともに本開示の範囲に含まれる様々な変形を創出することができるであろう。さらに、本明細書で説明されている例は、本開示の原理に対する理解を助けることを意図するものであり、本開示は、そのような具体的に説明された例や条件に限定されないと解釈されるべきである。したがって、本開示は、以下に説明する特定の実施形態又は実施例に限定されるものではなく、請求の範囲及びその均等範囲によって限定されるものである。
【0015】
図1は、例示的な実施形態における、支持体170に取り付けられたAFP装置100を示す図である。AFP装置100は、構成材料のトウ(tow)152をレイアップ(lay up)することにより、硬化して複合部品にする積層体150を形成可能な、任意のシステム又は装置を含む。AFP装置100は、エンドエフェクタ/ヘッド180を含んでおり、これが、レイアップ中に、硬化可能な構成材料(例えばCFRP部品用のプリプレグ炭素繊維テープ)のトウ152を吐出する。トウ152がレイアップされて積層体150が形成される。当該積層体は、1つ又は複数の材料層を含んでおり、これが硬化されて、単一の一体型複合部品となる。
【0016】
AFP装置100は、積層体150上にトウ152をレイアップする動作を行う。AFP装置100は、X軸166に沿って積層体150に対して真っ直ぐに近接/離間する方向に、Y軸164に沿って垂直方向上下に、及び/又は、Z軸162に沿って横方向に、移動しうる。本明細書において、AFP装置100が、ヘッド180の1回の「スウィープ(sweep)」動作中に複数のトウ152を同時にレイアップする場合、これらのトウ152をまとめて、1つの「コース(course)」と称する。連続して配置される1組の重ならないコースを、層と称することができる。積層体150に層が追加されるにつれて、得られる複合部品の強度が効果的に向上する。
【0017】
トウ152が迅速且つ効率的にレイアップされるように、AFP装置100の動作は、NCプログラムによって制御される。一実施形態において、NCプログラムは、AFP装置100の位置合わせ/位置変更、ヘッド180の移動、積層体150上へのトウ152のレイアップを行うために、コースごとに命令を与える。このようにして、NCプログラムからの命令を実行することによって、AFP装置100は、硬化して複合部品にするための積層体を製造する。
【0018】
AFP装置100は、複雑な湾曲形状を3D空間内にレイアップするものとして示されているが、このようなプロセスが常に最も効率が良いとは限らない。曲面上でAFP装置100を移動させるには、AFP装置100のヘッドを、常に位置変更及び再位置合わせする必要があり、これにより、AFP装置100の速度が低下する。このため、AFP装置100は、レイアップ設計システムと協働するように改良されている。当該設計システムは、所望の3D形状への成形(例えば型押し)を容易にするレイアップ特異部を含んだフラットな形状として、積層体をレイアップすることを可能にする(レイアップ速度を高める)ものである。本明細書において、形状、マンドレル、又は積層体の高さが、幅及び/又は長さの10パーセント未満(例えば2パーセント未満)である場合に、それらを「フラット」であるとみなす。フラットではない形状を、3D形状とみなす。
【0019】
図2は、例示的な実施形態における、フラットな積層体240をレイアップするAFP装置220と相互作用する、レイアップ設計システム210を示すブロック図である。本実施形態において、レイアップ設計システム210は、制御部212を含み、当該制御部は、フラットな積層体240をレイアップするための動作を規定するNCプログラム218を生成する。制御部212は、積層体240を現在の形状から所望の3D形状に確実に成形(例えばモールド成形/型押し成形)できるようにするレイアップ特異部(layup features)を、NCプログラム218内に含んでいる。制御部212は、例えば、カスタム回路、プログラムされた命令を実行するハードウェアプロセッサ、又はそれらの組み合わせとして、構成することができる。レイアップ設計システム210は、メモリ214をさらに含む。当該メモリは、複合部品用の所望の3D形状216を規定するデータ、ならびに、制御部212によって生成された少なくとも1つのNCプログラム218を、格納する。メモリ214は、データを格納するための任意の適当なコンピュータ可読媒体であってよい。
【0020】
AFP装置220は、NCプログラム218からの命令に基づいて、マンドレル260上に、構成材料(例えば炭素繊維強化ポリマー(CFRP))のトウ244を、レイアップする。本実施形態において、AFP装置220は、アクチュエータと剛性部材との運動学的連鎖(kinematic chain)222を含み、これらは、積層体240の層242を形成するためにエンドエフェクタ242がトウ244をレイアップする際に、エンドエフェクタ224を配置する動作を行う。カメラ230も示しているが、これは、3Dカメラ、立体カメラ、又は深度カメラを含みうる。カメラ230は、AFP装置220に取り付けてもよいし、独立して制御してもよい。レイアップ中にカメラ230によって取得された画像219に基づいて、制御部212は、NCプログラム218内に保持された命令を調整することができる。レイアップが完了すると、積層体240は、マンドレル260から取り外され、例えば上型252と下型254との間で積層体240の型押しを行うなどによって、成形される。
【0021】
レイアップ設計システム210の動作の例示的な詳細について、
図3A〜3Bを参照して説明する。本実施形態に関して、設計者が、複合部品の所望の3D形状を示す入力を、レイアップ設計システム210に与えているものと仮定する。
図3Aは、後に3D形状に成形される積層体のレイアップを形成する方法300の例示的な実施形態を示すフローチャートである。方法300の工程は、
図2のレイアップ設計システム210を参照して説明するが、当業者であればわかるように、方法300は、他のシステムでも行うことができる。本明細書で説明するフローチャートの工程が、必ずしもすべて含まれるとは限らず、また、図示しない他の工程を含むこともありうる。また、本明細書で説明する工程を、別の順序で行ってもよい。
【0022】
方法300において、制御部212は、複合部品の3D形状を規定するデータをロードする(工程302)。当該データは、例えば、3Dの形状/構造物の様々な部分の寸法及び位置を、コンピュータ支援設計(CAD)ファイル又は3Dモデルファイルで示すものである。制御部212は、さらに、3D形状の寸法に基づいて、制約因子(constraints)を特定する(工程304)。制約因子は、例えば、3D形状の様々な部分(例えば角部)の半径、3D形状における異なる位置間の距離などを含む。制御部212は、(例えば、積層体としてのレイアップ、あるいは、フラットなマンドレルとしての使用のために)当該3D形状について、平面形状への扁平化をシミュレートする(工程306)。この扁平化シミュレーション又は「ロールアウト(roll out)」は、3D形状内の材料が、どのように外方に広がって、複数の平面状の層から成るフラットなパターンになるかを予測し、材料を広げることができるように材料に切り込みを入れることを伴いうる。
【0023】
ロールアウト中に、3D形状からセグメント化された2D形状を抽出し、これを用いてカッターファイル(cutter files)を形成することができる。これらのカッターファイルは、材料ロールから切り出すための1つ又は複数のフラットな2D形状を示す。例えば、カッターファイルは、3D形状を形成するために共にドレープ成形(draped)することができる、積層体の「プリプレグ」パッチ(patch)を切るための命令を与えうる。ただし、設計者が、一体型の積層体に比べて、複数片積層体を望ましくないと考える場合もありうる。
【0024】
制約因子が特定されて、3D形状の平面形状へのロールアウトが首尾よく行われると、制御部212は、制約因子に基づいて、平面形状に加えるべきレイアップ特異部を検討する。
【0025】
レイアップ特異部は、平面形状を3D形状に成形する際に皺が形成されないようにするための、平面形状に加えられる物理的な変更部分である。すなわち、レイアップ特異部は、積層体が複雑な3D輪郭形状に成形される際に、皺が形成されないようにする。一実施形態において、特異部はマンドレル260に配置され、このような特異部により、積層体を3D形状に成形する際に制約因子が補償されるように、積層体をマンドレル260上にレイアップすることが可能となる。さらなる実施形態において、制御部212は、強度を向上させるために、ロールアウト積層体の個々のパッチ/片同士を結合させることもでき、この場合もなお、得られる積層体は、所望の形状に成形可能である。すなわち、制御部212の働きにより、カッターファイル内に見つけられたセグメント化された2D形状を、CADソフトウェアを用いて、大きな平面形状へと再結合することができ、当該大きな平面形状は、AFP装置220による一連の所望の動作によって後にレイアップされる積層体を表すものである。
【0026】
このように、制御部212は、2D形状を設計した後にこれを複雑な3D輪郭形状に変換しようとするのではなく、複雑な輪郭形状の3DCAD構造体からスタートし、これをデジタル空間内で扁平化し、2D積層体のレイアップを決定する。この積層体(「2.5D」レイアップ)を用いて、皺の無い3D構造物が作成される。従って、このリバースエンジニアリングアプローチは、設計プロセス全体において、3Dから2Dへ、そして再び3Dに戻す変換を用いている。
【0027】
積層体用のレイアップの作成中に、平面形状が、「2.5D」の幾何学形状に変換される。当該プロセスは、製造すべき3D幾何学形状の制約因子を把握することを伴う。すなわち、得られる積層体において材料が追加又は除去されるように、成形中の一方向性テープ/トウの皺又は亀裂が予測される位置に、平面形状に対する特異部が形成される。この当初の2.5D幾何学形状に対して、積層体に繊維を配置及び配向することを考慮した3D成形シミュレーションが行われる。3D成形シミュレーションでは、プライ(ply)の滑り/剪断に起因する皺及び成形上の問題点(例えば、重大な応力及びひずみの箇所、成形後に余分な材料が存在する箇所など)の可能性を調べるべく、得られる積層体が分析される。制御部212は、次に、この情報に基づいて、2.5D幾何学形状を調整し、3D成形シミュレーション及び2.5D幾何学形状のアップデートに関わるプロセスを、繰り返し行う。すなわち、制御部212は、マンドレルへの特異部の配置、マンドレル上にレイアップされた積層体を3D形状に成形するシミュレーションの作成、及び、シミュレーションによって示唆された予測される皺又は亀裂に基づく特異部の変更、を繰り返し行う。
【0028】
2.5D幾何学形状に対するアップデートは、所与の位置にレイアップされる材料の長さの調節、積層体の1つ又は複数の層における繊維配向の調節、マンドレルへの表面特異部の追加などを含みうる。一実施形態において、制御部212は、成形中に積層体が広がる距離を予測し、当該距離に対応するトウ長さを積層体に加えることによって、レイアップ特異部を形成する。例えば、これらの予測は、平面形状における複数の関心対象部分の各々における1つ又は複数の寸法に沿った、予想されるプライの剪断(例えばプライの滑り)を考慮したものである。このようなシミュレーションと、それに続く2.5D幾何学形状の調整とを、何回か繰り返すことによって、当該幾何学形状における、皺を回避すべき重要部分の特定を容易に行うことができる。
【0029】
メモリに格納された所望の特異部を把握した上で、制御部212は、次に、当該平面形状を有するマンドレルを準備する(工程308)。次に、制御部212は、特異部をマンドレルに配置設定するが、ここで、当該特異部は、マンドレル上にレイアップされた積層体が、積層体を3D形状に成形する際に制約因子を補償できるようにするものである(工程310)。これは、例えば、物理的な機械加工又はその他の方法で、マンドレルに変更を加えることを含みうる。
【0030】
制御部212は、さらに、フラットなマンドレル上に積層体をレイアップする際にAFP装置220に命令するNCプログラム218を作成する(工程312)。NCプログラム218は、特異部(例えば、実施形態によってマンドレル又は積層体に設けられる補償特異部)を含む平面状のマンドレル上に、積層体の層を形成するために、構成材料のトウをレイアップするための命令を含む。このことは、当初より複雑な輪郭を呈する3Dマンドレル上に積層体をレイアップさせるのではなく、フラットなマンドレル上に積層体をレイアップするための命令を、NCプログラム218が与えることを意味する。マンドレル及び/又はレイアップは、マンドレルの全体のフラットな形状を実質的に変化させない特異部を含む。例えば、加えられる特異部は、マンドレル及び積層体がフラットな状態を維持できるような、十分に小さい高さ(例えば幅又は長さの10パーセント未満)を有する。このようにして、2.5D幾何学形状は、次に、AFP装置用のレイアップパターンに変換することができ、あるいは、成形中に皺が形成されないようにする表面特異部を含むようマンドレルを修正するのに、用いることもできる。
【0031】
図3Bは、2.5D積層体の作成に関するさらなる方法350を示す。
図3Bによれば、制御部212は、マンドレル上に特異部を有する2D積層体をレイアップするよう、AFP装置220に命令するが、ここで、当該特異部は、予想される(例えば成形中の)プライ間の剪断が2D積層体にすでに組み込まれるようにプライが積層されるようにするものである(工程352)。これは、NCプログラム218に従って、行うことができる。次に、当該2D積層体が、複雑な輪郭のプリフォームに成形(例えば型押し)される(工程354)。この作業では、積層体が所望の3D形状となる際に、予想されたプライ間の剪断が生じる。すなわち、平面状マンドレルは、プライの滑り/剪断に用いられる材料を提供する特異部を有している。従って、2.5Dレイアップが3D形状に成形される際に、所望のプライの滑りを実現するのに必要な材料が存在している。
【0032】
レイアップ中においては、AFP装置220における並進ずれ(translation inconsistencies)や予想外の材料の変化などにより、トウ244のいくつかが所望の位置に配置されない可能性が依然として存在する。このため、
図4では、物理的なレイアップにおける不一致に迅速且つ効果的に対処するために、その場でNCプログラム218をアップデート及び訂正する方法400が提供される。
【0033】
方法400は、制御部212が、レイアップ中に、AFP装置220によって配置されたトウ244の画像を、(カメラ230で)取得することを含む(工程402)。制御部212は、さらに、取得された画像に基づいて、レイアップ中に、AFP装置によって配置されたトウ244の実際の位置を求める(工程404)。制御部212は、次に、トウ244の実際の位置を、NCプログラム218によって示されたトウ244の予測位置と比較する(工程406)。制御部212は、実際の位置と予測位置との不一致を検出し(工程408)、このような不一致に基づいて、レイアップ中に、NCプログラム218を変更する(工程410)。例えば、制御部212は、画像に示されているトウを特定し、当該トウをNCプログラム218内に特定されるトウと相関させ、NCプログラム218が使用している座標空間内における当該トウの実際の位置を求め、不一致があるかどうかを判定する。当該不一致が、トウ間の隙間を含む場合、制御部212は、この隙間上にトウを配置する命令を追加することによって隙間を覆うように、NCプログラムを変更することができる。不一致が、トウの実際の位置が予測位置からずれていることを含む場合、制御部212は、このずれに基づいて、他の層においてトウを配置するための命令を訂正することによって、NCプログラムを変更することができる。
【0034】
方法300及び400を、組み合わせて用いることにより、歪み、亀裂、又は、積層体内部の炭素繊維の損傷を発生させることなく、フラットな積層体を所望の3D形状に成形することができる。また、これらの方法によれば、設計者は、レイアップ中にAFP装置の動作の閉ループ制御を行うことによって、意図したように積層体をレイアップすることができる。
[実施例]
【0035】
以下の実施例においては、損傷や歪みを発生させることなく積層体を3D部品に成形することを可能にするレイアップ特異部を含む積層体に関連させて、追加のプロセス、システム、及び方法を説明する。
【0036】
図5は、例示的な実施形態における複合部品500を示す図である。複合部品500は、本体510、上側フランジ520、及び、下側フランジ530を含む。各フランジは、外側角部542及び内側角部544を含み、これらの角部が、上面550及び下面560に不整を生じさせる。
図5に示すように、フランジの縁部から外側角部までの距離(L
O)は、フランジの縁部から内側角部までの距離(L
I)より大きい。このことは、
図6に示すような大きな2D輪郭を含む平面形状620を有する、純粋にフラットな積層体の場合、複合部品500を成形するために型押し及びその後の硬化を行うと、部分610に撓み(warping)が生じうることを意味する。この問題に対処するため、
図7に示すように、
図2の制御部212は、マンドレル730に配置されたレイアップ特異部710(例えば突状部)の形態で、積層体720にレイアップ特異部を加えており、これによって2.5D幾何学形状が形成されている。これらの特異部によって、部分610にレイアップされる材料の量が変化し、複合部品500の内側角部及び外側角部に対応できるよう、十分な量の材料が存在することになる。このようなレイアップ特異部710は、例えば、マンドレル730の大部分はフラットな状態でマンドレル730に一体化させてもよいし、迅速製造技術などによってマンドレル730上に着脱可能に配置してもよい。このように、プライ間の予測される剪断(すなわちプライの滑り)が、積層体の形状にすでに組み込まれた状態で、プライがレイアップされる。
【0037】
図8〜
図9は、例示的な実施形態における複合部品用レイアップにおける、方向付けされたトウを含むレイアップ特異部を示す図である。方向付けされたトウは、平面形状に成形するための完全にフラットなマンドレル730の上にレイアップすることができ、2.5D積層体810が成形中に3D曲率に対応できるように、追加の材料をもたらすことができる。本実施形態において、トウ812は、マンドレル820の表面に沿って、面内を進むように方向付けされており、従って、すべてが同じ高さを有する。
【0038】
図10は、例示的な実施形態における、積層体から形成された3D複合部品1000の図である。
図11〜
図12は、例示的な実施形態における、
図10の複合部品1000を形成するために用いられる積層体1100の図である。具体的には、
図11は、上面図であり、
図12は、
図11の矢印12に対応する断面図である。本実施形態において、積層体1100は、頂部1125を含む環状の突起/隆起部1120を含む。環状突起1120は、複合部品1000の3D形状に合致するように積層体1100を成形することを可能にする材料を含んでいる。積層体1100は、中央部1130及び余剰部(例えばスクラップ1110)をさらに含む。積層体1100を部品1000に成形する際には、中央部1130がぴんと引き伸ばされるが、環状部1120に余剰の材料があるため、亀裂が防止される。これらの種々の部分に配置される材料の量のバランスを取ることにより、皺や亀裂を発生させることなく、部品1000を形成することができる。
【0039】
より具体的に図面を参照すると、本開示の実施形態は、
図13に示す航空機の製造及び保守方法1300に関連させて、また、
図14に示す航空機1302に関連させて説明することができる。生産開始前のステップとして、例示的な方法1300は、航空機1302の仕様決定及び設計1304及び材料調達1306を含む。生産中には、航空機1302の部品及び小組立品の製造1308並びにシステムインテグレーション1310が行われる。その後、航空機1302は、認可及び納品1312の工程を経て、使用1314に入る。顧客による使用中は、航空機1302は、定例の整備及び保守1316(これは、改良、再構成、改修なども含みうる)のスケジュールに組み込まれる。本明細書において具現化されている装置及び方法は、製造及び保守方法1300における任意の1つ又は複数の適当な段階(例えば、仕様決定及び設計1304、材料調達1306、部品及び小組立品の製造1308、システムインテグレーション1310、認可及び納品1312、使用1314、整備及び保守1316)、及び/又は、航空機1302の任意の適当なコンポーネント(例えば、機体1318、システム1320、内装1322、推進系1324、電気系1326、油圧計1328、環境系1330)において、採用することができる。
【0040】
方法1300の各ステップは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実行又は実施することができる。説明のために言及すると、システムインテグレータは、航空機メーカー及び主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。第三者は、売主、下請業者、及び供給業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織などであってもよい。
【0041】
図14に示すように、例示的な方法1300によって製造される航空機1302は、複数のシステム1320及び内装1322を備える機体1318を含む。ハイレベルシステム1320の例には、駆動系1324、電気系1326、油圧系1322及び環境系1330のうちの1つ又は複数が含まれる。また、その他のシステムをいくつ含んでもよい。航空宇宙産業に用いた場合を例として説明したが、本発明の原理は、例えば自動車産業などの他の産業に適用してもよい。
【0042】
上述したように、本明細書において具現化されている装置及び方法は、製造及び保守方法1300における、1つ又は複数のどの段階において採用してもよい。例えば、製造工程1308に対応する部品又は小組立品は、航空機1302の使用中に製造される部品又は小部品と同様に組み立て又は製造することができる。また、1つ又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又は、それらの組み合わせを、例えば生産工程1308及び1310で用いることにより、実質的に航空機1302の組み立て速度を速めたりコストを削減したりすることもできる。同様に、1つ又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又は、それらの組み合わせを、航空機1302の使用中に、例えば、限定するものではないが、整備及び保守1316に用いてもよい。例えば、本明細書で説明した技術及びシステムを、工程1306、1308、1310、1314、及び/又は、1316で用いてもよいし、機体1318及び/又は内装1322に用いてもよい。これらの技術及びシステムを、さらには、例えば推進系1324、電気系1326、油圧計1328、及び/又は環境系1330を含め、システム1320に用いてもよい。
【0043】
一実施形態において、積層体240は、硬化されることにより機体1318の一部を含む複合部品になるものであり、部品及び小組立品の製造工程1308において製造される。次に、当該複合部品は、システムインテグレーション1310において航空機に組み付けられ、摩耗により使用不可能となるまで、使用段階1314において使用される。次に、整備及び保守1316において、当該複合部品は、廃棄され、新たに製造された部品と交換される。本明細書で説明した高度化されたレイアップ設計技術を、追加の複合部品を製造するために、部品及び小組立品の製造工程1308にて用いてもよい。
【0044】
図示又は明細書中で説明した様々な制御要素(例えば電気又は電子部品)は、いずれも、ハードウェア、ソフトウェアを実現するプロセッサ、ファームウェアを実現するプロセッサ、又は、これらのいずれかの組み合わせとして、実現することができる。例えば、ある要素を、専用ハードウェアとして実現することができる。専用ハードウェア要素を、「プロセッサ」、「コントローラ」、又は、他の同様の用語で称する場合がある。プロセッサの形で設けられる場合、機能は、単一の専用プロセッサ、単一の共有プロセッサ、又は、共有可能なものを一部に含む複数の個別プロセッサにより提供される。更に、「プロセッサ」又は「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行可能なハードウェアのみに言及すると解釈されるべきではなく、限定されることなく、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)若しくは他の回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアの保存用の読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性記憶装置、論理回路、又は、他の物理的なハードウェア部品若しくはモジュールを暗黙的に含みうる。
【0045】
また、制御要素は、当該要素の機能を果たすための、プロセッサ又はコンピュータにより実行可能な命令として実現することもできる。命令の例をいくつか挙げると、ソフトウェア、プログラムコード、及び、ファームウェアがある。命令は、プロセッサにより実行されると稼働して、当該プロセッサに対して要素の機能を果たすように命令する。命令は、プロセッサによる読み取りが可能な記憶装置に保存してもよい。記憶装置の例としては、デジタル若しくはソリッドステートメモリ、磁気ディスクや磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハードドライブ、又は、光学的に読み取り可能なデジタルデータ記憶媒体などが挙げられる。
[付記]
【0046】
本発明について、以下の付記においても言及するが、これらは特許請求の範囲と混同されるべきではない。
【0047】
A1. 複合部品の3次元(3D)形状を規定するデータをロードすること(302)、
前記3D形状の寸法に基づいて制約因子を特定すること(304)、
前記3D形状の、平面形状への扁平化をシミュレートすること(306)、
前記平面形状を有するマンドレルを準備すること(308)、
前記マンドレルに積層体をレイアップするにあたり、前記積層体を前記3D形状に成形する際の前記制約因子を補償できるようにするための特異部を前記マンドレルに配置すること(310)、
前記積層体をレイアップする自動繊維配置(AFP)装置に命令する数値制御(NC)プログラムであって、前記積層体の層を形成するために、前記特異部を有する前記マンドレルに、構成材料のトウをレイアップするための命令を含むNCプログラムを生成すること(312)、を含む、方法。
【0048】
A2. さらに、前記NCプログラムに従って前記平面状のマンドレルに前記積層体をレイアップすることを含む、付記A1に記載の方法。
【0049】
A3. さらに、レイアップが完了した後に前記積層体を成形することを含む、付記A2に記載の方法。
【0050】
A4. 前記積層体を成形することは、
相補状の成形ツールの間に前記積層体を配置すること、
前記成形ツールを互いに向けて動かすことによって、前記積層体を成形すること、を含む、付記A3に記載の方法。
【0051】
A5. さらに、前記AFP装置によって配置されたトウの画像をレイアップ中に取得すること(402)、
前記画像に基づいて、前記AFP装置によって配置されたトウの実際の位置をレイアップ中に求めること(404)、
トウの前記実際位置を、前記NCプログラムによって示されたトウの予測位置と比較すること(406)、
前記実際位置と前記予測位置との不一致を検出すること(408)、
前記不一致に基づいて、レイアップ中に前記NCプログラムを変更すること(410)、を含む、付記A2に記載の方法。
【0052】
A6. 不一致は、トウ間の隙間を含み、
前記NCプログラムを変更することは、前記隙間上にトウを配置する命令を追加することを含む、付記A5に記載の方法。
【0053】
A7. 不一致は、トウの実際の位置が、予測位置からずれていることを含み、
前記NCプログラムを変更することは、前記ずれに基づいて、他の層においてトウを配置するための命令を修正することを含む、付記A5に記載の方法。
【0054】
A8. トウの実際の位置を求めることは、カメラの位置及び配向に基づいて、前記画像内のトウを前記NCプログラムの座標空間内に配置することを含む、付記A5に記載の方法。
【0055】
A9. さらに、前記積層体を硬化して前記複合部品にすることを含む、付記A2に記載の方法。
【0056】
A10. さらに、反復的に、
前記マンドレルへの前記特異部の配置をシミュレートすること、
前記マンドレルにレイアップされた積層体を前記3D形状に成形するシミュレーションを作成すること、
前記シミュレーションによって示唆された予測される皺又は亀裂に基づいて、前記特異部を変更すること、を含む、付記A1に記載の方法。
【0057】
本発明のさらなる側面によれば、以下が提供される。
【0058】
B1. プロセッサによって実行された際に方法を遂行させるための命令プログラムが記録された非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
平面状のマンドレルに積層体をレイアップするにあたり、前記積層体を3D形状に成形する際の、前記3D形状に対応する制約因子を補償できるようにするための特異部を前記マンドレルに配置すること(310)、
前記積層体をレイアップする自動繊維配置(AFP)装置に命令する数値制御(NC)プログラムであって、前記積層体の層を形成するために、前記マンドレルに配置された前記特異部を含む前記平面状のマンドレルに、構成材料のトウをレイアップするための命令を含むNCプログラムを生成すること(312)、
前記NCプログラムに従って前記積層体をレイアップすること(352)、
前記積層体を前記3D形状に成形すること(354)、を含む、媒体。
【0059】
B2. 前記方法は、さらに、
前記3D形状を規定するデータをロードすること、
前記3D形状の寸法に基づいて制約因子を特定すること、
前記3D形状を平面形状に扁平化すること、
前記平面形状に従って前記マンドレルを作製すること、を含む、付記B1に記載の媒体。
【0060】
B3. 前記特異部を配置することは、前記マンドレルの表面に変更を加えることを含む、付記B1に記載の媒体。
【0061】
B4. 前記方法は、さらに、相補状の成形ツールの間に前記積層体を配置すること、
成形中に前記成形ツールを互いに向けて動かすこと、を含む、付記B1に記載の媒体。
【0062】
本発明のさらなる態様によれば、以下が提供される。
【0063】
C1. 複合部品の3次元(3D)形状を規定するデータ(216)を保存するメモリ(214)と、
前記データをロードし、前記3D形状の寸法に基づいて制約因子を特定し、前記3D形状を平面形状(620)に扁平化し、前記平面形状に特異部(710)を配置する、制御部(212)と、を含み、前記特異部は、積層体をレイアップするにあたり、前記積層体を前記3D形状に成形する際の制約因子を補償できるようにするためのものであり、
前記制御部は、前記積層体をレイアップする自動繊維配置(AFP)装置(100)に命令する数値制御(NC)プログラム(218)を生成し、前記NCプログラムは、前記積層体の層(242)を形成するために、構成材料のトウ(244)をレイアップするための命令を含む、システム。
【0064】
C2. 前記制御部は、さらに、前記積層体を硬化して前記複合部品にすることを命令する、付記C1に記載のシステム。
【0065】
C3. 前記特異部は、前記積層体がレイアップされる平面状マンドレルの表面に対する変更を含む、付記C1に記載のシステム。
【0066】
C4. 前記特異部は、前記積層体における材料の量を増やすために、前記積層体の層(242)内で方向付けられたトウ(244)を含む、付記C1に記載のシステム。
【0067】
C5. 前記制御部は、成形中に前記平面形状の一部が広がる距離(L
O−L
I)を予測し、前記距離に対応するトウの長さを前記平面形状に加えることによって、前記特異部を追加する、付記C1に記載のシステム。
【0068】
C6. 前記AFP装置によって配置されたトウ(244)の画像(219)をレイアップ中に取得するカメラ(230)をさらに含み、
前記制御部は、前記画像に基づいて、前記AFP装置によって配置されたトウの実際の位置をレイアップ中に求めることと、トウの前記実際位置を、前記NCプログラムによって示されたトウの予測位置と比較することと、前記実際位置と前記予測位置との不一致を検出することと、前記不一致に基づいて、レイアップ中に前記NCプログラムを変更することと、を含むフィードバック制御ループを実行する、付記C1に記載のシステム。
【0069】
C7. 不一致は、トウ間の隙間を含み、
前記制御部は、前記隙間上にトウを配置する命令を追加することによって、前記隙間を覆うように、前記NCプログラムを変更する、付記C6に記載のシステム。
【0070】
C8. 不一致は、トウの実際の位置が、予測位置からずれていることを含み、
前記制御部は、前記ずれに基づいて、他の層においてトウを配置するための命令を修正することによって、前記NCプログラムを変更する、付記C6に記載のシステム。
【0071】
C9. 前記制御部は、前記カメラの位置及び配向に基づいて、前記画像内のトウを前記NCプログラムの座標空間内に配置することによって、トウの実際の位置を求める、付記C6に記載のシステム。
【0072】
本発明のさらなる態様によれば、以下が提供される。
【0073】
D1. 複合部品を形成する方法であって、
マンドレルに、予想されるプライ間の剪断が2次元(2D)積層体にすでに組み込まれるようにプライが積層されるようにするための特異部を有する2D積層体をレイアップすること(352)、
前記予想されたプライ間の剪断を生じさせることも含めて、前記2D積層体を複雑な輪郭のプリフォームに成形すること(354)、を含む、方法。
【0074】
D2. 前記特異部は、前記積層体における材料の量を増やすように、前記積層体の層内で方向付けられたトウを含む、付記D1に記載の方法。
【0075】
D3. 前記特異部は、増加されたトウ長さを含む、付記D1に記載の方法。
【0076】
D4. 前記積層体を成形することは、相補状の成形ツールの間で前記積層体を型押しすることを含む、付記D1に記載の方法。
【0077】
D5. 前記2D積層体はフラットであり、前記特異部は、2D積層体における垂直方向の変位部である、付記D1に記載の方法。
【0078】
本明細書において特定の実施形態を説明したが、本開示の範囲は、これら特定の実施形態に限定されない。本開示の範囲は、以下の請求の範囲及びその均等範囲によって規定される。