(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1乃至7の何れか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
本発明者らが検討したところ、特許文献1〜5に記載の従来技術では、適切な電気抵抗を有する導電層が形成できないために、低温低湿環境下で繰り返して画像形成を行うと、電子写真感光体にリークが発生しやすくなることが判明した。
【0015】
また、電子写真感光体の感光層に入射した像露光光は、感光層の下層(像露光光が感光層を透過した先に存在している層)や支持体との界面で反射され、同時に感光層の下層の内部で散乱されうることが知られている。本発明者らが検討したところ、特許文献6に記載の従来技術では、上述の反射や散乱により、感光層への像露光光の照射範囲が実質的に広がることで潜像の精細性が低下し、結果として出力画像の精細性が低下するという技術課題が発生することが分かった。
【0016】
上記従来技術で発生していた技術課題を解決するために、本発明者らは導電層の導電材として用いる粒子(以下、「金属酸化物粒子」ともいう)に関して検討を行った。上記検討の結果、下記一般式(1)で表される粒子を用いることで、従来技術で発生していた技術課題を解決できることが分かった。
【化2】
(式(1)中、Nbはニオブ原子、Oは酸素原子、Nは窒素原子であり、0.00<Y<X≦4.00である。)
【0017】
本発明は、導電層が有する酸化ニオブ粒子が、窒素ドープ部と共に酸素欠損部を有することが特徴である。一方、酸素欠損部を有さず窒素ドープ部のみを有する場合は式(1)においてX=Yとなり、窒素ドープ部を有さず酸素欠損部のみを有する場合は式(1)においてY=0となるが、何れの場合も本発明の効果は得られない。この違いについて、本発明者らは以下の様に推定している。
【0018】
本発明において、酸化ニオブが、酸素欠損部と窒素ドープ部を有することで、還元されていない酸化ニオブとは異なる電気的性質を発現し、その結果、導電層に用いるのに好適な抵抗となっている。更に、像露光光に対する屈折率の低下と吸収率の増加の光学的変化が起きている。その結果、導電層は感光層の下層からの反射や散乱が減少し、感光層への像露光光の照射範囲の広がりが抑制されるため、潜像の精細性が高まり、出力画像の精細性が向上すると考えている。
【0019】
一方で、還元率の高い(X>4.00)酸化ニオブを用いた場合では、耐リーク性が十分に改善できない。還元率が高いと粉体抵抗が低い粒子となり、該粒子から形成された導電層中の導電パス一本あたりを流れる電荷の量が多くなる。その結果、局所的に過剰な電流が流れやすくなることが理由であると考えられる。
以上のメカニズムのように、各構成が相乗的に効果を及ぼし合うことによって、本発明の効果を達成することが可能となる。
【0020】
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、支持体と、導電層と、感光層とを有することを特徴とする。
本発明の電子写真感光体を製造する方法としては、後述する各層の塗布液を調製し、所望の層の順番に塗布して、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布、リング塗布などが挙げられる。これらの中でも、効率性及び生産性の観点から、浸漬塗布が好ましい。以下、支持体及び各層について説明する。
【0021】
<支持体>
本発明において、電子写真感光体は、支持体を有する。本発明において、支持体は導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。また、支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。また、支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理や、ブラスト処理、センタレス研磨処理、切削処理などを施してもよい。
【0022】
支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合又は被覆するなどの処理によって、導電性を付与してもよい。
【0023】
<導電層>
本発明においては、支持体の上に、導電層を設ける。導電層を設けることで、支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体表面における光の反射を制御することができる。本発明の導電層は、一般式(1)で示される粒子と、結着材料と、を含有する。
【0024】
本発明の一般式(1)で示される粒子は酸化ニオブ(例えば、五酸化ニオブ(Nb
2O
5))をアンモニアガス雰囲気中で加熱還元して得られる。酸化ニオブは、球体状、多面体状、楕円体状、薄片状、針状等、種々の形状のものを用いることができる。これらの中でも、黒ポチなどの画像欠陥が少ないという観点から、球体状、多面体状、楕円体状のものが好ましい。酸化ニオブは、球体状又は球体状に近い多面体状であることが更に好ましい。
【0025】
本発明の粒子は、X−Yで示される酸素欠損部とYで示される窒素ドープ部を有する。X及びYは、0.00<Y<X≦4.00の関係を満足する必要がある。更に、Yは0.10以上であることが好ましい。また、Xは1.50以下であることが好ましい。また、X−Yは0.10以上であることが好ましい。
【0026】
本発明の粒子は、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.1°の41.8°〜42.1°にピークを有することが好ましい。該ピークの出現はNbO及びNbNからなる立方晶の結晶構造に由来する。
【0027】
本発明の粒子の平均一次粒径(D
1)は、40nm以上300nm以下であることが好ましい。本発明の粒子の平均一次粒径が40nm以上であれば、導電層用塗布液を調製した後に本発明の粒子の再凝集が起こりにくくなる。もし、本発明の粒子の再凝集が起こると、導電層用塗布液の安定性の低下や、形成される導電層の表面におけるクラックが生じる可能性がある。本発明の粒子の平均一次粒径が300nm以下であれば、導電層の表面が荒れにくくなる。もし、導電層の表面が荒れると、感光層への局所的な電荷注入が起こりやすくなり、出力画像の白地における黒点(黒ポチ)が目立ちやすくなる。
【0028】
本発明において、粒子の平均一次粒径D
1[μm]は、走査型電子顕微鏡を用いて、以下のようにして求めた。(株)日立製作所製の走査型電子顕微鏡(商品名:S−4800)を用いて測定対象の粒子を観察し、観察して得られた画像から、粒子100個の個々の粒径を測定し、それらの算術平均を算出して平均一次粒径D
1[μm]とした。個々の粒径は、一次粒子の最長辺をaとし、最短辺をbとしたときの(a+b)/2とした。
【0029】
本発明の粒子の粉体抵抗率は、2.0×10
1Ω・cm以上であることが好ましい。本発明の粒子の粉体抵抗率がこの範囲内であると、耐リーク性において好ましい。尚、本発明の粒子の粉体抵抗率は、常温常湿(23℃/50%RH)環境下において測定する。本発明においては、測定装置として、三菱化学(株)製の抵抗率計(商品名:ロレスタGP)を用いた。測定対象の本発明の粒子は、500kg/cm
2の圧力で固めて、ペレット状の測定用サンプルにする。印加電圧は100Vとする。
【0030】
本発明の粒子は、表面をシランカップリング剤などで処理してもよい。
本発明の導電層には、本発明の粒子を該導電層の全体積に対して20体積%以上50体積%以下含有することが好ましい。導電層中の本発明の粒子の含有量が導電層の全体積に対して20体積%より少ないと、本発明の粒子同士の距離が遠くなりやすい。本発明の粒子同士の距離が遠くなるほど、導電層の体積抵抗率が高くなりやすくなる。すると、画像形成時に電荷の流れが滞りやすくなり、残留電位が上昇しやすくなり、暗部電位や明部電位の変動が生じやすくなる傾向がある。導電層中の本発明の粒子の含有量が導電層の全体積に対して50体積%より多いと、本発明の粒子同士が接しやすくなる。本発明の粒子が接した部分は、局所的に導電層の体積抵抗率が低い部分となり、電子写真感光体にリークが発生しやすくなる。
【0031】
本発明の導電層には、本発明の粒子を該導電層の全体積に対して30体積%以上45体積%以下含有することが更に好ましい。
【0032】
本発明の導電層は、更に、別の導電性粒子を有しても良い。別の導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。別の導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなどの元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
【0033】
また、別の導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層に用いられる材料としては、酸化スズなどの金属酸化物が挙げられる。
【0034】
別の導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その平均粒子径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
【0035】
結着材料としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。本発明の結着材料としては、熱硬化性のフェノール樹脂又は熱硬化性のポリウレタン樹脂が好ましい。導電層の結着材料として硬化性樹脂を用いる場合、導電層用塗布液に含有させる結着材料は、該硬化性樹脂のモノマー及び/又はオリゴマーとなる。
【0036】
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子などを更に含有してもよい。
導電層の平均膜厚は、0.5μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上40μm以下であることがより好ましく、5μm以上35μm以下であることが特に好ましい。
【0037】
導電層は、上述の各材料及び溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0038】
導電層の体積抵抗率は、1.0×10
5Ω・cm以上5.0×10
12Ω・cm以下であることが好ましい。導電層の体積抵抗率が5.0×10
12Ω・cm以下であれば、画像形成時に電荷の流れが滞りにくくなり、残留電位が上昇しにくくなり、暗部電位や明部電位の変動が生じにくくなる。一方、導電層の体積抵抗率が1.0×10
5Ω・cm以上であれば、電子写真感光体の帯電時に導電層中を流れる電荷の量が多くなりすぎにくく、リークが発生しにくくなる。導電層の体積抵抗率は、1.0×10
5Ω・cm以上1.0×10
11Ω・cm以下であることが更に好ましい。
【0039】
図2及び
図3を用いて、電子写真感光体の導電層の体積抵抗率を測定する方法を説明する。
図2は、導電層の体積抵抗率の測定方法を説明するための上面図であり、
図3は、導電層の体積抵抗率の測定方法を説明するための断面図である。導電層の体積抵抗率は、常温常湿(23℃/50%RH)環境下において測定する。導電層202の表面に銅製テープ203(住友スリーエム(株)製、型番No.1181)を貼り、これを導電層202の表面側の電極とする。また、支持体201を導電層202の裏面側の電極とする。銅製テープ203と支持体201との間に電圧を印加するための電源206、及び、銅製テープ203と支持体201との間を流れる電流を測定するための電流測定機器207をそれぞれ設置する。また、銅製テープ203に電圧を印加するため、銅製テープ203の上に銅線204を載せる。銅線204が銅製テープ203からはみ出さないように銅線204の上から銅製テープ203と同様の銅線固定用銅製テープ205を貼り、銅製テープ203に銅線204を固定する。銅製テープ203には、銅線204を用いて電圧を印加する。銅製テープ203と支持体201との間に電圧を印加しないときのバックグラウンド電流値をI
0[A]とし、直流電圧(直流成分)のみの電圧を−1V印加したときの電流値をI[A]とする。また、導電層202の膜厚d[cm]、導電層202の表面側の電極(銅製テープ203)の面積をS[cm
2]とする。このとき、下記数式(I)で表される値を導電層202の体積抵抗率ρ[Ω・cm]とする。
ρ=1/(I−I
0)×S/d[Ω・cm] ・・・(I)
【0040】
この測定では、絶対値で1×10
−6A以下という微小な電流量を測定するため、電流測定機器207としては、微小電流の測定が可能な機器を用いて行うことが好ましい。そのような機器としては、例えば、横河ヒューレットパッカード社製のpAメーター(商品名:4140B)などが挙げられる。尚、導電層の体積抵抗率は、支持体上に導電層のみを形成した状態で測定しても、電子写真感光体から導電層上の各層(感光層など)を剥離して支持体上に導電層のみを残した状態で測定しても、同様の値を示す。
【0041】
<下引き層>
本発明において、導電層の上に、下引き層を設けてもよい。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
【0042】
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0043】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
【0044】
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素−炭素二重結合基などが挙げられる。
【0045】
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などを更に含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
【0046】
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0047】
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
【0048】
また、下引き層は、添加剤を更に含有してもよい。
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.2μm以上40μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0049】
下引き層は、上述の各材料及び溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0050】
<感光層>
電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層を有する。
【0051】
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。
【0052】
(1−1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0053】
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
【0054】
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
【0056】
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を更に含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
【0057】
電荷発生層の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
【0058】
電荷発生層は、上述の各材料及び溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0059】
(1−2)電荷輸送層
電荷輸送層は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0060】
電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
【0061】
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
【0063】
電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10〜20:10が好ましく、5:10〜12:10がより好ましい。
【0064】
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0065】
電荷輸送層の平均膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましく、9μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0066】
電荷輸送層は、上述の各材料及び溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤又は芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0067】
(2)単層型感光層
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂及び溶剤を含有する感光層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における材料の例示と同様である。
【0068】
<保護層>
本発明において、感光層の上に、保護層を設けてもよい。保護層を設けることで、耐久性を向上することができる。
保護層は、導電性粒子及び/又は電荷輸送物質と、樹脂とを含有することが好ましい。
【0069】
導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。
【0070】
電荷輸送物質としては、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
【0071】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0072】
また、保護層は、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として形成してもよい。その際の反応としては、熱重合反応、光重合反応、放射線重合反応などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーとして、電荷輸送能を有する材料を用いてもよい。
【0073】
保護層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0074】
保護層の平均膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上7μm以下であることが好ましい。
【0075】
保護層は、上述の各材料及び溶剤を含有する保護層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0076】
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
本発明のプロセスカートリッジは、これまで述べてきた電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
【0077】
また、本発明の電子写真装置は、これまで述べてきた電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする。
【0078】
図1に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0079】
1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、帯電手段3により、正又は負の所定電位に帯電される。尚、図においては、ローラ型帯電部材によるローラ帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式などの帯電方式を採用してもよい。帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。トナー像が転写された転写材7は、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受け、電子写真装置の外へプリントアウトされる。電子写真装置は、転写後の電子写真感光体1の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。また、クリーニング手段を別途設けず、上記付着物を現像手段などで除去する、所謂、クリーナーレスシステムを用いてもよい。電子写真装置は、電子写真感光体1の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、本発明のプロセスカートリッジ11を電子写真装置本体に着脱するために、レールなどの案内手段12を設けてもよい。
【0080】
本発明の電子写真感光体は、レーザービームプリンター、LEDプリンター、複写機、ファクシミリ、及び、これらの複合機などに用いることができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0082】
[粒子の製造例]
(粒子1の製造例)
平均一次粒径60nmの五酸化ニオブ微粉末を、線流速3cm/secのアンモニアガス気流下で700℃にて6時間還元処理を行った。続いて得られた粉末に10%塩酸水溶液を加えて、撹拌して静置した。得られた上澄みを除去し、水によるデカンテーションを2回行い、濾別した濾物を乾燥させた。得られた濾物に粉砕処理工程を施し、平均一次粒径が60nmである粒子1の粉末を得た。得られた粒子の元素比率を下記ESCA分析によって分析した。測定条件は下記のとおりである。
【0083】
<ESCA分析>
使用装置:アルバック・ファイ社製 VersaProbeII
X線源:Al Ka1486.6eV(25W15kV)
測定エリア:φ100μm
分光領域:300×200μm、角度45°
Pass Energy:58.70eV
Step Size:0.125eV
【0084】
以上の条件により測定された各元素のピーク強度から、アルバック・ファイ社提供の相対感度因子を用いて表面原子濃度(atoms%)を算出する。採用した各元素の測定ピークトップ範囲は以下のとおりである。
O:電子軌道1s由来の光電子のエネルギー:525〜545eV
N:電子軌道1s由来の光電子のエネルギー:390〜410eV
Nb:電子軌道2p由来の光電子のエネルギー:197〜217eV
尚、表面汚染の影響を除くため、Arイオンスパッタを0.5〜4.0kVの強度で実施したのち、測定を行った。
また、得られた粒子の粉末X線回折図を
図4、5に示す。尚、粉末X線回析測定は下記条件で行った。
【0085】
<粉末X線回折測定>
使用測定機:リガク(株)製、X線回折装置Smart Lab
X線管球:Cu
管電圧:45 KV
管電流:200 mA
光学系:CBO
スキャン方法:2θ/θスキャン
モード:連続
範囲指定:絶対
計数時間:10
サンプリング間隔:0.01°
スタート角度(2θ):5.0°
ストップ角度(2θ):60.0°
IS:1/2
RS1:20 mm
RS2:20 mm
アッテネータ:Open
アタッチメント:標準Zステージ
【0086】
(粒子2〜13、C2の製造例)
粒子1の製造において、用いる基体粉末の平均一次粒径及び還元処理時の条件を変更した以外は粒子1と同様にして、表1に示すように粒子2〜13、C2の粉末を得た。
【0087】
(粒子C1の製造例)
粒子1の製造に用いた五酸化ニオブ(Nb
2O
5)微粉末を用いて粒子C1とした。C1の粉末X線回折図を
図6、7に示す。
【0088】
得られた粒子1〜13、C1、C2の粉体抵抗率を表1に示す。
【表1】
【0089】
[導電層用塗布液の調製例]
(導電層用塗布液1の調製例)
ポリオール樹脂としてのブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学工業(株)製)15部、及び、ブロック化イソシアネート樹脂(商品名:TPA−B80E、80%溶液、旭化成(株)製)15部を、メチルエチルケトン45部/1−ブタノール85部の混合溶剤に溶解させて溶液を得た。
この溶液に粒子1を78部加え、これを分散媒体として平均粒径1.0mmのガラスビーズ120部を用いた縦型サンドミルに入れ、23±3℃雰囲気下において回転数1500rpm(周速5.5m/s)の条件で4時間分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュでガラスビーズを取り除いた。ガラスビーズを取り除いた後の分散液に、レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名:SH28 PAINT ADDITIVE、東レ・ダウコーニング(株)製)0.01部、及び、表面粗さ付与材として架橋型のポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子(商品名:テクポリマーSSX−102、積水化成品工業(株)製、平均一次粒径:2.5μm)を5部添加して撹拌し、PTFE濾紙(商品名:PF060、アドバンテック東洋(株)製)を用いて加圧ろ過することによって、導電層用塗布液1を調製した。
【0090】
(導電層用塗布液2〜15、及びC1〜C5の調製例)
導電層用塗布液の調製の際に用いた粒子の種類、量(部数)を、それぞれ表2に示すように変更した以外は、導電層用塗布液1の調製例と同様の操作で、導電層用塗布液2〜15、C1〜C5を調製した。
【0091】
尚、C3〜C5には下記粒子を用いた。
C3:テイカ社製酸化チタン(品番:JR405)
C4:三菱マテリアル社製チタンブラック(品番:13M)
C5:リンドープ酸化スズ
【0092】
【表2】
【0093】
(導電層用塗布液16の調製例)
結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ−325、DIC(株)製、樹脂固形分:60%)80部を、溶剤としての1−メトキシ−2−プロパノール80部に溶解させて溶液を得た。
この溶液に粒子1を142部加え、これを分散媒体として平均粒径1.0mmのガラスビーズ200部を用いた縦型サンドミルに入れ、分散液温度23±3℃、回転数1000rpm(周速3.7m/s)の条件で4時間分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュでガラスビーズを取り除いた。ガラスビーズを取り除いた後の分散液に、レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名:SH28 PAINT ADDITIVE、東レ・ダウコーニング製)0.015部、及び、表面粗さ付与材としてシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、平均粒径:2μm)15部を添加して攪拌し、PTFE濾紙(商品名:PF060、アドバンテック東洋(株)製)を用いて加圧ろ過することによって、導電層用塗布液1を調製した。
【0094】
(導電層用塗布液17〜30の調製例)
導電層用塗布液の調製の際に用いた粒子の種類、量(部数)を、それぞれ表3に示すように変更した以外は、導電層用塗布液1の調製例と同様の操作で、導電層用塗布液17〜30を調製した。
【0095】
【表3】
【0096】
(粒子S1の製造例)
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンスラリーをアルカリ水溶液で洗浄した。
次に、前記含水酸化チタンのスラリーに塩酸を添加して、pHを0.7に調整してチタニアゾル分散液を得た。
前記チタニアゾル分散液2.0モル(酸化チタン換算)に対し、1.1倍モル量の塩化ストロンチウム水溶液を加えて反応容器に入れ、窒素ガス置換した。更に、酸化チタン濃度で1.0モル/Lになるように純水を加えた。
次に、撹拌混合し、85℃に加温した後、超音波振動を加えながら、5N水酸化ナトリウム水溶液800mLを20分かけて添加し、その後、20分間反応を行った。反応後のスラリーに5℃の純水を加えて30℃以下になるまで急冷した後、上澄み液を除去した。更に、前記スラリーにpH5.0の塩酸水溶液を加えて1時間撹拌した後、純水で洗浄を繰り返した。更に、水酸化ナトリウムにて中和して、ヌッチェで濾過を行い、純水で洗浄した。得られたケーキを乾燥し、粒子Sを得た。
上記、製造した粒子SのX線回折測定を行ったところ、CuKαのX線回折スペクトルにおいて2θ=32.20±0.20の位置に最大ピークを有し(θはブラッグ角)、該最大ピークの半値幅は、0.28degであった。また、粒子Sの平均一次粒径は、50nmであった。
次に、製造した粒子S、100部をトルエン500部と撹拌混合し、これにシランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:KBM602、信越化学工業(株)製)2部を添加し、6時間攪拌させた。その後、トルエンを減圧留去して、130℃で6時間加熱乾燥し、表面処理された粒子S1を得た。
【0097】
(導電層用塗布液X1の調製例)
ポリオール樹脂としてのブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学工業(株)製)15部、及び、ブロック化イソシアネート樹脂(商品名:TPA−B80E、80%溶液、旭化成(株)製)15部を、メチルエチルケトン45部/1−ブタノール85部の混合溶剤に溶解させて溶液を得た。
この溶液に粒子1を78部、粒子S1を32部加え、これを分散媒体として平均粒径1.0mmのガラスビーズ120部を用いた縦型サンドミルに入れ、23±3℃雰囲気下において回転数1500rpm(周速5.5m/s)の条件で4時間分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュでガラスビーズを取り除いた。ガラスビーズを取り除いた後の分散液に、レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名:SH28 PAINT ADDITIVE、東レ・ダウコーニング(株)製)0.01部、及び、表面粗さ付与材として架橋型のポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子(商品名:テクポリマーSSX−102、積水化成品工業(株)製、平均一次粒径:2.5μm)を5部添加して撹拌し、PTFE濾紙(商品名:PF060、アドバンテック東洋(株)製)を用いて加圧ろ過することによって、導電層用塗布液1を調製した。
【0098】
(導電層用塗布液X2の調製例)
導電層用塗布液X1の調製において、メチルエチルケトン45部/1−ブタノール85部の混合溶剤を、メチルエチルケトン36部/1−ブタノール68部の混合溶剤に変更した。更に、粒子S1の使用量を32部から4部に変更した。それ以外は、導電層用塗布液X1と同様にして、粒子導電層用塗布液X2を調製した。
【0099】
<電子写真感光体の製造例>
(電子写真感光体1の製造例)
押し出し工程及び引き抜き工程を含む製造方法により製造された、長さ257mm、直径24mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を支持体とした。
【0100】
常温常湿(23℃/50%RH)環境下で、導電層用塗布液1を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間170℃で乾燥及び熱硬化させることによって、膜厚が20μmの導電層を形成した。導電層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、2×10
8Ω・cmであった。得られた導電層の膜厚及び体積抵抗率を表4に示す。
【0101】
次に、N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス(株)製)4.5部及び共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)1.5部を、メタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶剤に溶解させることによって下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を6分間70℃で乾燥させることによって、膜厚が0.85μmの下引き層を形成した。
【0102】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)10部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部及びシクロヘキサノン250部を、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、分散処理時間3時間の条件で分散処理を行った。次に、酢酸エチル250部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0103】
次に、下記式(CT−1)で示されるアミン化合物(電荷輸送物質)6.0部、
【化3】
及び、下記式(CT−2)で示されるアミン化合物(電荷輸送物質)2.0部、
【化4】
ビスフェノールZ型のポリカーボネート(商品名:Z400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部、ならびに、下記式(B−1)で示される繰り返し構造単位及び下記式(B−2)で示される繰り返し構造単位を有し、下記式(B−3)で示される末端構造を有するシロキサン変性ポリカーボネート((B−1):(B−2)=95:5(モル比))0.36部
【化5】
を、o−キシレン60部/ジメトキシメタン40部/安息香酸メチル2.7部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間125℃で乾燥させることによって、膜厚が16.0μmの電荷輸送層を形成した。以上の様にして、電荷輸送層が表面層である電子写真感光体1を製造した。
【0104】
(電子写真感光体2〜38、X1〜4及びC1〜C6の製造例)
電子写真感光体の製造の際に用いた導電層用塗布液、導電層の膜厚、及び下引き層の有無を表3に示すようにした以外は、電子写真感光体1の製造例と同様の操作で、電荷輸送層が表面層である電子写真感光体2〜38、X1〜4及びC1〜C6を製造した。導電層の体積抵抗率は、電子写真感光体1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
電子写真感光体1〜38及びX1〜4を本発明の実施例、電子写真感光体C1〜C6を比較例とした。
【0105】
〈電子写真感光体の導電層の分析〉
導電層分析用の電子写真感光体1〜38、X1〜4及びC1〜C6のそれぞれから、5mm四方に切断した片をそれぞれ5つ得て、その後、それぞれの片の電荷輸送層及び電荷発生層をクロロベンゼン、メチルエチルケトン及びメタノールで剥ぎ取り、導電層を露出させた。このようにして、観察用サンプル片を、各電子写真感光体につき、5つずつ用意した。
【0106】
先ず、各電子写真感光体について、それぞれ1つのサンプル片を用いて、上記と同様にしてESCA分析によって元素比率を分析した。
【0107】
続いて、各電子写真感光体について、それぞれ1つのサンプル片を用いて、粉末X線回折測定を行った。CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.1°の41.8°〜42.1°におけるピークの有無は、粒子を測定した場合と同様であった。
【0108】
次に、各電子写真感光体について、それぞれ残りの4つのサンプル片を用いて、FIB−SEMのSlice&Viewで導電層の2μm×2μm×2μmの3次元化を行った。FIB−SEMのSlice&Viewのコントラストの違いから、本発明の粒子を特定し、該粒子の体積及び導電層内での比率を求めることができる。比較例に用いた粒子の場合も同様にして体積及び導電層内での比率を求めることができる。Slice&Viewの条件としては本発明では以下のようにした。
分析用試料加工:FIB法
加工及び観察装置:SII/Zeiss製NVision40
スライス間隔:10nm
観察条件
加速電圧:1.0kV
試料傾斜:54°
WD:5mm
検出器:BSE検出器
アパーチャー:60μm、high current
ABC:ON
画像解像度:1.25nm/pixel
解析領域は縦2μm×横2μmで行い、断面ごとの情報を積算し、縦2μm×横2μm×厚み2μm(V
T=8μm
3)当たりの体積Vを求める。また、測定環境は、温度:23℃、圧力:1×10
−4Paである。
【0109】
尚、加工及び観察装置としては、FEI製のStrata400S(試料傾斜:52°)を用いることもできる。尚、断面ごとの情報は、特定した本発明の粒子又は比較例に用いた粒子の面積を画像解析して得た。画像解析は画像処理ソフト:Media Cybernetics製、Image−Pro Plusを用いて行った。得られた情報を基に、4つのサンプル片のそれぞれにおいて、2μm×2μm×2μmの体積(単位体積:8μm
3)中の本発明の粒子又は比較例に用いた粒子の体積(V[μm
3])を求めた。そして、((V[μm
3]/8[μm
3])×100)を算出した。4つのサンプル片における((V[μm
3]/8[μm
3])×100)の値の平均値を、導電層の全体積に対する導電層中の本発明の粒子又は比較例に用いた粒子の含有量[体積%]とした。
【0110】
また、4つのサンプル片のそれぞれにおいて、前述のようにして、本発明の粒子又は比較例に用いた導電材粒子の平均一次粒径を求めた。4つのサンプル片における本発明の粒子又は比較例に用いた導電材粒子の平均一次粒径の平均値を、導電層中の本発明の粒子又は比較例に用いた粒子の平均一次粒径(D
1)とした。結果を表4に示す。
【0111】
【表4】
【0112】
[評価]
(電子写真感光体の通紙耐久試験)
通紙耐久試験用の電子写真感光体1〜38、X1〜4及びC1〜C6を、それぞれ、キヤノン(株)製のレーザービームプリンター(商品名:LBP7200C)に装着して、低温低湿(15℃/10%RH)環境下にて通紙耐久試験を行った。通紙耐久試験では、印字率2%の文字画像をレター紙に1枚ずつ出力する間欠モードでプリント操作を行い、25000枚の画像出力を行った。そして、通紙耐久試験開始時ならびに15000、25000枚画像出力終了に、各1枚の画像評価用のサンプル(1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像)を出力した。画像の評価の基準は以下のとおりである。結果を表5に示す。
A:リークの発生は全くなし。
B:リークが小さな黒点としてわずかに観測される。
C:リークが大きな黒点としてはっきり観測される。
D:リークが大きな黒点と短い横黒筋として観測される。
E:リークが長い横黒筋として観測される。
【0113】
(電子写真感光体の印字画像精細性評価)
電子写真感光体1〜38、X1〜4及びC1〜C6を、常温常湿環境下(温度23℃、相対湿度50%)にて、下記要領で画像濃度を測定することで、孤立ドット再現性の評価を行った。評価用の電子写真装置として、ヒューレットパッカード社製のレーザービームプリンター(商品名:Color LaseJet Enterprise M552)の改造機を用いた。改造点として、帯電条件とレーザー露光量は可変で作動するようにした。また、上記製造した電子写真感光体をブラック色用のプロセスカートリッジに装着して、ブラック色用のプロセスカートリッジのステーションに取り付けた。更に、他の色(シアン、マゼンタ、イエロー)用のプロセスカートリッジをレーザービームプリンター本体に装着しなくても作動するようにした。
電子写真感光体の表面電位の測定には、プロセスカートリッジの現像位置に電位プローブ(商品名:model6000B−8、トレック・ジャパン製)を装着したものを用い、電子写真感光体の長手方向中央部の電位を表面電位計(商品名:model344、トレック・ジャパン製)を使用して測定した。
【0114】
画像の出力に際しては、ブラック色用のプロセスカートリッジのみをレーザービームプリンター本体に取り付け、ブラックトナーのみによる単色画像を出力した。
評価画像は、上記装置の帯電電位Vdを−600V、露光電位Vlを−200V、現像電位Vcdcを−400Vに設定し、露光1ドットにつき3ドット間隔を設けて露光した画像パターン(
図6)を出力したものを用いた。
濃度の測定には、「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)を用い、測定した印字プリントアウト画像の白地部分の白色度とドットパッチの白色度の差から、濃度[%]を算出した。フィルターは、アンバーフィルターを用いた。本願においては、印字プリントアウト画像の濃度8.0%以上が、露光した孤立ドットが明瞭に再現できている基準とした。
【0115】
結果を表5に示す。
【表5】