(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、ダイカスト品の表裏一方の面側にリブを一体成形すれば、ダイカスト品の強度及び剛性向上を図ることができる反面、リブを設けた分だけ、ダイカスト品の重量が増加し、薄肉化による軽量化の効果が減殺される問題がある。
【0006】
以上の事情に鑑み、本発明では、所要の剛性を確保しつつ、軽量化を可能とするダイカスト品を提供することを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の解決は、本発明に係るダイカスト品によって達成される。すなわち、このダイカスト品は、薄肉部を少なくとも一部に有するダイカスト品であって、薄肉部には、その表裏一方側に突出した凸部と、凸部とは表裏逆向きに突出した凹部とが設けられると共に、薄肉部をその表裏方向に切断する任意の仮想断面上に、凸部の縦方向に伸びる縦壁部と、凹部の縦方向に伸びる縦壁部とが現れるように、複数の凸部と複数の凹部とが所定のパターンで配列されている点をもって特徴付けられる。なお、ここでいう凸部の縦壁部とは、薄肉部をその表裏方向に切断する仮想断面上に現れる凸部において、薄肉部の表裏方向と、表裏方向に直交する方向のうち、表裏方向に近い向きに伸びる壁部をいうものとする。同様に、凹部の縦壁部とは、薄肉部をその表裏方向に切断する仮想断面上に現れる凹部において、薄肉部の表裏方向と、表裏方向に直交する方向のうち、表裏方向に近い向きに伸びる壁部をいうものとする。
【0008】
このように、本発明では、ダイカスト鋳造分野において、従来、成形性(湯流れ性など)の問題から着想されることのなかった薄肉部の凹凸形状に着目し、薄肉部をその表裏方向に切断する仮想断面上に、凸部の縦壁部と凹部の縦壁部とが共に現れるように、複数の凸部と複数の凹部とを所定のパターンでダイカスト品の薄肉部に配列するようにした。このように、複数の凸部と凹部を所定のパターンで薄肉部に配列することによって、薄肉部自体が剛性に優れた凹凸の立体形状となる。よって、リブ等の補強部を設けることなく薄肉部の剛性を向上させることができ、これにより単位重量当たりの剛性(剛性効率ともいう。)を向上させることが可能となる。また、任意の仮想断面上に、凸部の縦壁部と凹部の縦壁部とが現れるように、凸部と凹部の配列パターンを設定することにより、剛性に関する異方性を解消又は緩和して、ダイカスト品の総合的な剛性を高めることが可能となる。
【0009】
また、本発明に係るダイカスト品においては、凸部が断面ハット形状をなす凸状断面ハット部で、凹部が断面ハット形状をなす凹状断面ハット部であってもよい。
【0010】
薄肉部の特に曲げ剛性に関し、本発明者らが解析等による検証を行ったところ、凸部が一対の縦壁部と、これら一対の縦壁部をつなぐ横壁部とで構成される断面形状、すなわち断面ハット形状をなす場合に、非常に優れた性能(曲げ剛性)を示すことが判明した。よって、薄肉部に配列すべき複数の凸部及び凹部をともに断面ハット形状にすることで、薄肉部の剛性をさらに向上させることが可能となる。
【0011】
また、凸部と凹部が共に断面ハット形状をなす場合、本発明に係るダイカスト品においては、凸状断面ハット部の縦壁部が、凹状断面ハット部の縦壁部を兼ねていてもよい。
【0012】
このように、凸状断面ハット部の縦壁部が、凹状断面ハット部の縦壁部を兼ねるように双方の断面ハット部を配置することで、例えば凸状断面ハット部と凹状断面ハット部との間に連結用の横壁部を介在させることなく双方の断面ハット部を連続的に配置することができる。よって、例えば曲げ剛性の観点から見た場合に、凸状断面ハット部の壁部と凹状断面ハット部の壁部のうち中立軸から離れた部分(横壁部)の断面積が占める割合を多くして、これにより断面係数を効率よく高めることができる。従って、これら断面ハット部が設けられた薄肉部の剛性(特に曲げ剛性)をさらに向上させることが可能となる。
【0013】
また、凸部と凹部がそれぞれ断面ハット形状をなす場合、本発明に係るダイカスト品においては、少なくとも一部の縦壁部の厚み寸法が、縦壁部とつながる横壁部よりも大きくてもよい。
【0014】
このように、少なくとも一部の縦壁部を、当該縦壁部とつながる横壁部よりも厚く形成することにより、種々の方向からの荷重に対する剛性をさらに高めることが可能となる。また、縦壁部のみを肉厚に形成するだけであるから、ダイカスト品全体としての軽量化を阻害する心配もない。以上より、本構成によれば、薄肉部の剛性効率をさらに向上させることができる。さらに言えば、本発明のようにダイカスト品であれば、金型(キャビティ)の形状設定次第で上述のような部分的な肉厚の変更が比較的容易であり、また、溶湯の流れ方向が変化する縦壁部を肉厚にすることで、鋳造時の湯流れ性を効果的に改善することも可能となる。よって、ダイカスト品全体としての薄肉化を図りつつも、ダイカスト品の鋳造品質を確保することが可能となる。
【0015】
また、凸部と凹部がそれぞれ断面ハット形状をなす場合、本発明に係るダイカスト品においては、少なくとも一部の縦壁部と、縦壁部とつながる横壁部との間の角部の厚み寸法が、横壁部よりも大きくてもよい。
【0016】
このように、少なくとも一部の縦壁部と横壁部との間の角部を、横壁部よりも厚く形成することによっても、種々の方向からの荷重に対する剛性をさらに高めることが可能となる。また、一部の壁部(角部)のみを肉厚に形成するだけであるから、ダイカスト品全体としての軽量化を阻害する心配もない。以上より、本構成によれば、薄肉部の剛性効率をさらに向上させることができる。また、ダイカスト品であれば、金型の形状設定次第で上述のような部分的な肉厚の変更が比較的容易であり、溶湯の流れ方向が変化する縦壁部と横壁部との間の角部を肉厚にすることで、鋳造時の湯流れ性を改善することも可能となる。よって、ダイカスト品全体としての薄肉化を図りつつも、ダイカスト品の鋳造品質を確保することが可能となる。
【0017】
また、凸部と凹部がそれぞれ断面ハット形状をなす場合、本発明に係るダイカスト品においては、正方領域を二分割した領域の各々に、凸状断面ハット部と凹状ハット部が一つずつ並列に配置されてなる凹凸パターンを最小単位として、正方領域を四分割した領域の各々に、凹凸パターンをその表裏方向軸線まわりに90°ずつ回転してなる四種類の凹凸パターンが一つずつ配置されてなる高剛性パターンが、薄肉部上に整列配置されていてもよい。
【0018】
このように、本構成では、凸状断面ハット部と凹状断面ハット部とが一つずつ並列に配置されてなる凹凸パターンを最小パターンとして、正方領域を四分割した領域の各々に、凹凸パターンの向き(各断面ハット部の長手方向の向き及び相対的な位置関係)が相互に異なる四種類の凹凸パターンを一つずつ配置してなる高剛性パターンを、薄肉部上に整列配置した。このように、一対の凸状断面ハット部と凹状断面ハット部からなる凹凸パターンを最小単位として、この凹凸パターンの向きを互いに90°ずつ異ならせた四種類の凹凸パターン各一個で正方領域を構成するパターン(高剛性パターン)を形成した場合、各種荷重に対して非常に優れた剛性を示すことがわかった。よって、上記構成の高剛性パターンを薄肉部上に整列配置することにより、薄肉部の更なる剛性向上を図ることが可能となる。
【0019】
また、上記構成の高剛性パターンが薄肉部上に整列配置される場合、本発明に係るダイカスト品においては、正方領域を四分割した領域の各々に、高剛性パターンが何れも同じ姿勢で一つずつ配置されてなる同一姿勢パターンが、薄肉部上に整列配置されていてもよい。
【0020】
あるいは、正方領域を四分割した領域の各々に、高剛性パターンと、高剛性パターンをその表裏方向軸線まわりに90°ずつ回転してなる三種類の高剛性パターンとが一つずつ配置されてなる回転パターンが、薄肉部上に整列配置されていてもよい。
【0021】
あるいは、正方領域を四分割した領域の各々に、高剛性パターンと、高剛性パターンを上下に反転、左右に反転、及び上下かつ左右に反転してなる三種類の高剛性パターンとが一つずつ配置されてなる反転パターンが、薄肉部上に整列配置されていてもよい。
【0022】
このように四つの高剛性パターンを同じ向き(姿勢)で配置してなるパターンや、90°ずつ回転して配置してなるパターン、あるいは上下又は左右等に反転して配置してなるパターンを整列配置することによっても、薄肉部の各種荷重に対する総合的な剛性を高めることが可能となる。
【0023】
また、前記課題の解決は、本発明に係るダイカスト品の製造方法によっても達成される。すなわち、この製造方法は、薄肉部を少なくとも一部に有し、薄肉部には、その表裏一方側に突出した凸部と、凸部とは表裏逆向きに突出した凹部とが設けられると共に、薄肉部をその表裏方向に切断する任意の仮想断面上に、凸部の縦方向に伸びる縦壁部と、凹部の縦方向に伸びる縦壁部とが現れるように、複数の凸部と複数の凹部とが所定のパターンで配列されているダイカスト品の製造方法であって、ダイカスト品を成形するキャビティが設けられた成形金型の型締め方向を、成形金型により成形されるダイカスト品の薄肉部の表裏方向に設定した状態で、前記キャビティに溶湯を射出する点をもって特徴付けられる。
【0024】
このように、本発明に係るダイカスト品の製造方法においても、本発明に係るダイカスト品と同様、薄肉部をその表裏方向に切断する仮想断面上に、凸部の縦壁部と、凹部の縦壁部とが共に現れるように、複数の凸部と複数の凹部とを所定のパターンでダイカスト品の薄肉部に配列するようにした。このように、複数の凸部と凹部を所定のパターンで薄肉部に配列することによって、リブ等の補強部を設けることなく薄肉部の剛性を向上させることができる。従って、単位重量当たりの剛性(剛性効率)を向上させることが可能となる。また、任意の仮想断面上に、凸部の縦壁部と凹部の縦壁部とが現れるように、凸部と凹部の配列パターンを設定することにより、剛性に関する異方性を解消又は緩和して、ダイカスト品の総合的な剛性を高めることが可能となる。
【0025】
また、ダイカスト品を成形するキャビティが設けられた成形金型の型締め方向を、成形金型により成形されるダイカスト品の薄肉部の表裏方向に設定した状態で、キャビティに溶湯を射出することによって、キャビティを形成する成形金型の可動型と固定型とで、薄肉部を成形することができる。よって、薄肉部のうち上述した凸部と凹部とが設けられる領域にアンダーカット部が生じる事態を防止して、高品質のダイカスト品を安定的に製造することが可能となる。
【0026】
また、本発明に係るダイカスト品の製造方法においては、薄肉部が円盤形状をなすダイカスト品を射出成形するに際し、キャビティに溶湯を射出するための射出用ゲートを、キャビティの薄肉部に対応する領域の半径方向中央側に開口するようにしてもよい。
【0027】
このように、薄肉部が円盤形状をなすダイカスト品を射出成形する場合には、射出用ゲートを、キャビティの薄肉部に対応する領域の半径方向中央側に開口するよう成形金型に取付けるのがよい。上述の位置に射出用ゲートを取付けることによって、例えばキャビティの薄肉部に対応する領域の半径方向外側端部に射出用ゲートが開口する場合と比べて、射出された溶湯がキャビティ全域に行き渡るのに必要な移動距離を短くすることができる(例えば、後述する
図9を参照)。そのため、上述のように薄肉部に凸部と凹部とを設けた分、薄肉部の表面積が増加した場合であっても、射出用ゲートからの溶湯の移動距離を均等にして最長移動距離を短縮することができる。あるいは、全体的なダイカスト品の薄肉化により射出される溶湯の熱容量が小さくなった場合であっても、射出後の移動距離が従来に比べて短くなることで、キャビティ内を移動中の溶湯の温度低下を抑制して、湯回り不良等による品質低下を防止することができる。以上より、本構成によれば、ダイカスト品の軽量化と高剛性化を共に達成しつつも、溶湯の湯流れ性を改善して、優れた鋳造品質のダイカスト品を安定的に得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明に係るダイカスト品によれば、所要の剛性を確保しつつ、軽量化を可能とするダイカスト品を提供することが可能となる。また、本発明に係るダイカスト品の製造方法によれば、ダイカスト品の軽量化と高剛性化を共に達成しつつも、鋳造品質に優れたダイカスト品を安定的に提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の第一実施形態に係るダイカスト品及びその製造方法の内容を図面に基づき説明する。
【0031】
図1は、本実施形態に係るダイカスト品1の全体形状を示す斜視図、
図2は、ダイカスト品1の薄肉部2を平面視した図である。
図1及び
図2に示すように、このダイカスト品1は、円盤形状をなす薄肉部2と、薄肉部2とその半径方向外側でつながる筒状部3、及び筒状部3とつながるフランジ部4とを一体に有する。フランジ部4は、薄肉部2に比べて肉厚に形成されている。以下、薄肉部2の形状を中心に説明する。
【0032】
薄肉部2には、その表裏方向(
図2でいえば紙面に直交する向き)の一方側に突出した凸部5と、凸部5とは表裏方向で逆向きに突出した凹部6とが設けられている。ここで、凸部5の形状は任意であり、本実施形態では、
図3及び
図4に示すように、所定の方向(
図3でいえば上下方向)に沿って直線状に伸び、一対の縦壁部7,7と、一対の縦壁部7,7同士をつなげる横壁部8とからなる断面ハット形状をなす。凹部6の形状についても任意であり、本実施形態では、凸部5と同様、
図3及び
図4に示すように、所定の方向に沿って直線状に伸び、一対の縦壁部9,9と、一対の縦壁部9,9同士をつなげる横壁部10とからなる断面ハット形状をなす。また、本実施形態では、凸部5の縦壁部7が、凹部6の縦壁部9を兼ねている。言い換えると、凸部5と凹部6とで一つの縦壁部7(9)を共有している。これにより、凸部5と凹部6とはその短手方向(
図3でいえば左右方向)で最接近した状態にある。
【0033】
上記構成の凸部5と凹部6は、例えば
図3に示すように、正方領域S1を二分割した領域(分割領域S11,S12)の各々に、互いに並列に配置してなる凹凸パターン11を構成する。この場合、凸部5の長手方向寸法L1と、凹部6の長手方向寸法L2とは同じである。また、凸部5の短手方向寸法D1と、凹部6の短手方向寸法D2とは同じである。
【0034】
また、
図4に示すように、凹凸パターン11の断面における中立軸Xから凸部5の横壁部8までの距離y1と、中立軸Xから凹部6の横壁部10までの距離y2はそれぞれ任意であるが、断面係数の観点からは等しいことが望ましい。また、横壁部8(10)の厚み寸法t1(t2)と距離y1(y2)との関係について、距離y1(y2)はそれぞれ、同じく断面係数の観点から、厚み寸法t1(t2)との比で2.0以上に設定され、好ましくは3.0以上に設定され、さらに好ましくは4.0以上に設定される。なお、この場合、横壁部8(10)の厚み寸法t1(t2)は、2.0mm以下に設定され、軽量化の観点から、好ましくは1.5mm以下に設定され、より好ましくは1.0mm以下に設定される。もちろん、上記数値範囲は一例にすぎず、例えば距離y1(y2)を厚み寸法t1(t2)との比で2.0未満に設定してもよく、また、横壁部8(10)の厚み寸法t1(t2)を2.0mmより大きく設定してもよい。
【0035】
また、
図4に示すように、縦壁部7(9)の勾配(ここでは、中立軸Xに直交する方向に対して縦壁部7(9)がなす角度θ)は、断面係数の最大化のためには0°とするのが好ましいが、一方で、縦壁部7(9)の勾配が小さいほど、離型抵抗が増加する傾向にある。以上の観点より、縦壁部7(9)の勾配は、10°以上でかつ20°以下とするのが好ましく、12°以上でかつ18°以下とするのがより好ましい。
【0036】
上記構成の凹凸パターン11は、薄肉部2をその表裏方向に切断する任意の仮想断面上に、それぞれ一つ以上の凸部5の縦壁部7と、凹部6の縦壁部9とが現れるように、所定のパターンで薄肉部2上に配列される。以下、当該配列パターンの例を挙げて説明する。
【0037】
図5は、
図3に示す複数の凹凸パターン11を所定の態様で配置してなる高剛性パターン12の平面図を示している。この高剛性パターン12は、上述した正方領域S1より四倍大きい正方領域S2を四分割した領域(分割領域S21〜S24)の各々に、凹凸パターン11をその表裏方向(
図3でいえばその紙面に直交する方向であり、
図4でいえば上下方向)軸線まわりに90°ずつ回転してなる四種類の凹凸パターン11a〜11dが一つずつ配置されて成っている。なお、本実施形態では、ある一つの凹凸パターン11(例えば左上の凹凸パターン11a)を構成する凸部5と、この凹凸パターン11aに隣接する他の凹凸パターン(例えば左下の凹凸パターン11c)を構成する凸部5とは、縦壁部7を介することなく横壁部8,8同士が連続した形態をなしている。凹部6についても同様に、ある一つの凹凸パターン(例えば左上の凹凸パターン11a)を構成する凹部6と、この凹凸パターン11aに隣接する他の凹凸パターン(例えば右上の凹凸パターン11b)を構成する凹部6とは、縦壁部9を介することなく横壁部10,10同士が連続した形態をなしている。
【0038】
上記構成の高剛性パターン12は、例えば
図6に示す態様で配置してなる反転パターン13を構成する。この反転パターン13は、上述した正方領域S2より四倍大きい正方領域S3を四分割した領域(分割領域S31〜S34)の各々に、
図5に示す姿勢の高剛性パターン12(12a)と、この高剛性パターン12aを左右に反転、上下に反転、及び左右かつ上下に反転してなる三種類の高剛性パターン12b〜12dとが一つずつ配置されて成っている。なお、この配列パターンにおいても、本実施形態では、ある一つの高剛性パターン12(例えば左上の高剛性パターン12a)を構成する凸部5と、この高剛性パターン12aに隣接する他の高剛性パターン(例えば右上の高剛性パターン12b)を構成する凸部5とは、縦壁部7を介することなく横壁部8,8同士が連続している。凹部6についても同様に、ある一つの高剛性パターン12(例えば左上の高剛性パターン12a)を構成する凹部6と、この高剛性パターン12(例えば左下の高剛性パターン12c)を構成する凹部6とは、縦壁部9を介することなく横壁部10,10同士が連続している。
【0039】
上記構成をなす複数の反転パターン13は、
図1及び
図2に示すように、ダイカスト品1の薄肉部2上に整列配置される。これにより、薄肉部2をその表裏方向に切断する任意の仮想断面上に、それぞれ一つ以上の凸部5の縦壁部7と、凹部6の縦壁部9とが現れるように、薄肉部2自体が、所定パターンの凹凸形状をなす。この場合、薄肉部2の表裏一方の面に現れる凸部5と凹部6の配列パターンと、薄肉部2の表裏他方の面に現れる凸部5と凹部6の配列パターンとは、凹凸を反転した状態で同じになる。
【0040】
このように、本発明に係るダイカスト品1においては、その少なくとも一部をなす薄肉部2をその表裏方向に切断する仮想断面上に、凸部5の縦壁部7と凹部6の縦壁部9とが共に一つ以上現れるように、複数の凸部5と複数の凹部6とを所定のパターンで薄肉部2に配列するようにした。この構成によれば、薄肉部2自体が剛性に優れた立体的な凹凸形状となるので、リブ等の補強部を設けることなく薄肉部2の剛性を向上させることができる。従って、薄肉部2の単位重量当たりの剛性を向上させることが可能となる。また、任意の仮想断面上に、凸部5の縦壁部7と凹部6の縦壁部9とが共に一つ以上現れるように、凸部5と凹部6の配列パターンを設定することにより、剛性に関する異方性を解消又は緩和して、ダイカスト品1の総合的な剛性を高めることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、凸部5を、断面ハット形状をなす凸状断面ハット部とし、かつ凹部6を、同じく断面ハット形状をなす凹状断面ハット部とした(
図4を参照)。これにより、薄肉部2の剛性をさらに向上させることが可能となる。また、凸部5と凹部6が共に断面ハット形状をなす場合、凸部5の縦壁部7が、凹部6の縦壁部9を兼ねるように凸部5と凹部6とを隣接配置することで、各一個の凸部5と凹部6とからなる凹凸パターン11の断面係数を効率よく高めることができる。従って、これら凹凸パターン11を所定の態様で配列してなる薄肉部2の剛性(特に曲げ剛性)をさらに向上させることが可能となる。具体的には、
図5に示す高剛性パターン12を、
図6に示す態様で整列配置することで、薄肉部2の曲げ剛性を含む総合的な剛性を向上させることが可能となる。
【0042】
なお、本実施形態では、薄肉部2上に配置される凸部5と凹部6の配列パターンとして、
図6に示す態様で高剛性パターン12を整列配置したもの(反転パターン13)を例示したが、もちろんこれ以外の配列態様をとることも可能である。
図7はその一例を示すもので、同図に示す凸部5と凹部6の配列パターンである同一姿勢パターン14は、上述した正方領域S3を四分割した領域(分割領域S31〜S34)の各々に、四つの高剛性パターン12が何れも同じ姿勢で一つずつ配置されて成っている。従い、上記構成をなす−数の同一姿勢パターン14を薄肉部2上に整列配置することによっても、薄肉部2の剛性を確保しつつ、ダイカスト品1の軽量化を図ることが可能となる。
【0043】
あるいは、高剛性パターン12は、
図8に示す態様で整列配置することもできる。同図に示す凸部5と凹部6の配列パターンである回転パターン15は、上述した正方領域S3を四分割した領域(分割領域S31〜S34)の各々に、高剛性パターン12と、高剛性パターン12をその表裏方向軸線まわりに90°ずつ回転してなる三種類の高剛性パターン12(12e〜12g)とが一つずつ配置されて成っている。従い、上記構成をなす複数の回転パターン15を薄肉部2上に整列配置することによっても、薄肉部2の剛性を確保しつつ、ダイカスト品1の軽量化を図ることが可能となる。
【0044】
以上の説明に係るダイカスト品1は、例えば
図9に示す鋳造装置を用いて製造することが可能である。以下、鋳造装置50の構成を説明し、次いで鋳造装置50を用いたダイカスト品1の製造工程の一例を説明する。
【0045】
図9に示す鋳造装置50は、固定プラテン51と、可動プラテン52と、固定プラテン51に固定される中間型53と、中間型53に取付けられる固定金型54(固定入子)と、可動プラテン52に取付けられる可動金型55(可動入子)と、固定金型54と可動金型55との型締めにより双方の金型54,55間に形成されるキャビティ56と、中間型53に設けられ、キャビティ56の所定位置に開口する射出用ゲート57と、射出用ゲート57とつながり、固定プラテン51を型締め方向に沿って貫通するように固定プラテン51に装着される射出用スリーブ58と、射出用スリーブ58と摺動可能に嵌り合うプランジャー59とを主に備える。
【0046】
ここで、キャビティ56のうちダイカスト品1の薄肉部2に対応する領域56aは、固定金型54と可動金型55のみで区画形成されており、また固定金型54と可動金型55との型締め方向を、これら固定金型54と可動金型55により成形されるダイカスト品1の薄肉部2の表裏方向(
図9でいえば左右方向)に一致させている。これにより、鋳造後の型開き動作により、ダイカスト品1と可動金型55との干渉が回避され得る。もちろん、薄肉部2(のうち上述した凸部5と凹部6の配列パターンが設けられる領域)との干渉が回避される限りにおいて、図示は省略するが、固定金型54と可動金型55の一方又は双方に、スライドコアなど固定金型54と可動金型55との型締め方向と異なる向きに移動可能な構造を設けてもかまわない。
【0047】
また、本実施形態では、射出用ゲート57が、キャビティ56のうち、ダイカスト品1の薄肉部2の半径方向中央側(ダイカスト品1が例えば
図1に示す形態であれば、薄肉部2の半径方向中央に設けた孔部の周囲)に開口するよう、中間型53及び固定金型54に射出用ゲート57が取付けられている。
【0048】
上記構成の鋳造装置50を用いたダイカスト品1の鋳造成形は、例えば以下のようにして行われる。まず、射出用スリーブ58の上方に設けた開口部(図示は省略)を通じてアルミニウムなどの溶湯が射出用スリーブ58に注湯され、注湯された状態の溶湯をプランジャー59の押圧動作により射出用ゲート57を介してキャビティ56へと送り出すことで、キャビティ56内に溶湯が射出される。この際、射出用ゲート57は、キャビティ56のうち薄肉部2に対応する領域56aの半径方向中央側に開口しているため、射出用ゲート57を通じてキャビティ56内に射出された溶湯は、キャビティ56の半径方向中央側から半径方向外側に向けて移動する(
図9中、破線矢印で示す向き)。これにより、薄肉部2に対応する領域56aを含むキャビティ56の全域が漏れなく充填され、冷却によりキャビティ56に対応した形状のダイカスト品1が成形される。
【0049】
このように、キャビティ56のうちダイカスト品1の薄肉部2に対応する領域56aを、固定金型54と可動金型55のみで区画形成し、かつ固定金型54と可動金型55の型締め方向を、薄肉部2(に対応する領域56a)の表裏方向に設定した状態で、キャビティ56に溶湯を射出することによって、薄肉部2のうち上述した凸部5と凹部6とが設けられる領域にアンダーカット部が生じる事態を防止して、高品質のダイカスト品1を安定的に製造することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態のように、薄肉部2が円盤形状をなすダイカスト品1を射出成形する場合には、射出用ゲート57を、キャビティ56の薄肉部2に対応する領域56aの半径方向中央側に開口するよう、中間型53に取付けることによって、例えば図示は省略するが、薄肉部2に対応する領域56aの半径方向外側端部に射出用ゲート57を設ける場合と比べて、射出された溶湯がキャビティ56全域に行き渡るのに必要な移動距離を短くすることができる(
図9を参照)。そのため、上述のように薄肉部2に凸部5と凹部6とを設けた分、薄肉部2の表面積が増加した場合であっても、射出用ゲート57からの溶湯の移動距離を均等にして最長移動距離を短縮することができる。あるいは、全体的なダイカスト品1の薄肉化(特に薄肉部2の薄肉化)により射出される溶湯の熱容量が小さくなった場合であっても、射出後の移動距離が従来に比べて短くなることで、キャビティ56内を移動中の溶湯の温度低下を抑制して、湯回り不良等による品質低下を防止することができる。従って、本実施形態に係る鋳造装置50によれば、ダイカスト品1の軽量化と高剛性化を共に達成しつつも、溶湯の湯流れ性を改善して、優れた鋳造品質のダイカスト品1を安定的に得ることが可能となる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態(第一実施形態)について述べたが、本発明に係るダイカスト品及びその製造方法は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0052】
例えば上記実施形態では、ともに断面ハット状をなす凸部5と凹部6を構成する壁部(ここでは縦壁部7,9と横壁部8,10)の厚み寸法t1〜t4が一定である場合を例示したが(
図4を参照)、必要に応じて、凸部5又は凹部6を構成する一部の壁部を、残りの壁部よりも肉厚に形成してもよい。
図10はその一例(本発明の第二実施形態)に係るダイカスト品1の薄肉部2の要部拡大断面図を示している。同図に示すように、本実施形態に係るダイカスト品1においては、薄肉部2に設けられる凸部5の縦壁部7と凹部6の縦壁部9のうち、少なくとも一部の縦壁部7,9の厚み寸法t3,t4が、各縦壁部7,9とつながる横壁部8,10の厚み寸法t1,t2よりも大きい。具体的には、各縦壁部7,9の厚み寸法t3,t4はそれぞれ、横壁部8,10の厚み寸法t1,t2との比で、1.5以上に設定され、好ましくは2.0以上に設定される。なお、縦壁部7,9を横壁部8,10に比べて肉厚に設定する領域は、一部の縦壁部7,9でよく、例えば凸部5と凹部6の凹凸パターン11が、
図5に示す高剛性パターン12を形成する場合、相対的に剛性が低くなり易い高剛性パターン12の中央領域B(言い換えると、各凹凸パターン11a〜11dの凸部5又は凹部6の長手方向端部が四方から交わる部分)を構成する縦壁部7,9のみを横壁部8,10よりも肉厚に形成すればよい。
【0053】
このように、一部の縦壁部7,9を横壁部8,10よりも厚く形成することにより、種々の方向からの荷重に対する薄肉部2の剛性をさらに高めることが可能となる。また、一部の縦壁部7,9のみを肉厚に形成するだけの場合、ダイカスト品1全体としての軽量化を阻害する心配もない。以上より、本構成によれば、薄肉部2の剛性効率をさらに向上させることができる。さらに言えば、ダイカスト品1であれば、キャビティ56(固定金型54と可動金型55)の形状設定次第で上述のような部分的な肉厚の変更が比較的容易であり、また、溶湯の流れ方向が変化する縦壁部7,9を肉厚にすることで、鋳造時の湯流れ性を効果的に改善することも可能となる。よって、ダイカスト品1全体としての薄肉化を図りつつも、ダイカスト品1の鋳造品質を確保することが可能となる。
【0054】
また、上記実施形態では、断面ハット状をなす凸部5と凹部6の縦壁部7,9と横壁部8,10との間の角部16,17の厚み寸法t5,t6が、縦壁部7,9の厚み寸法t3,t4や横壁部8,10の厚み寸法t1,t2と等しい場合を例示したが(
図4を参照)、必要に応じて、角部16,17の厚み寸法t5,t6を横壁部8,10の厚み寸法t1,t2よりも積極的に大きくしてもよい。
図11はその一例(本発明の第三実施形態)に係るダイカスト品1の薄肉部2の要部拡大断面図を示している。同図に示すように、本実施形態に係るダイカスト品1においては、少なくとも一部の角部16,17の厚み寸法t5,t6が、横壁部8,10の厚み寸法t1,t2より大きい。具体的には、角部16,17の厚み寸法t5,t6はそれぞれ、横壁部8,10の厚み寸法t1,t2との比で、1.5以上に設定され、好ましくは2.0以上に設定される。なお、
図11では、凸部5の角部16において、その内側R面の曲率半径を外側R面の曲率半径に比べて同一にし、又は大きくし、凹部6の角部17において、その内側R面の曲率半径を外側R面の曲率半径に比べて同一にし、又は大きくしている。
【0055】
このように、少なくとも一部の縦壁部7,9と横壁部8,10との間の角部16,17を、横壁部8,10よりも厚く形成することによっても、種々の方向からの荷重に対する薄肉部2の剛性をさらに高めることが可能となる。また、一部の壁部(角部16,17)のみを肉厚に形成するだけであるから、ダイカスト品1全体としての軽量化を阻害する心配もない。以上より、本実施形態に係るダイカスト品1であれば、剛性効率をさらに向上させることができる。また、ダイカスト品1であれば、キャビティ56の形状設定次第で上述のような部分的な肉厚の変更が比較的容易であり、溶湯の流れ方向が変化する縦壁部7,9と横壁部8,10との間の角部16,17を肉厚にすることで、鋳造時の湯流れ性を改善することも可能となる。よって、ダイカスト品1全体としての薄肉化を図りつつも、ダイカスト品1の鋳造品質を確保することが可能となる。
【0056】
なお、上記実施形態では、縦壁部7,9のみを横壁部8,10よりも肉厚に形成する場合(
図10を参照)と、角部16,17のみを横壁部8,10よりも肉厚に形成する場合を例示したが、もちろん、縦壁部7,9と角部16,17を共に、横壁部8,10よりも肉厚に形成してもかまわない。
図12はその一例(本発明の第四実施形態)に係るダイカスト品1の薄肉部2の要部拡大断面図を示している。同図に示すように、本実施形態に係るダイカスト品1においては、少なくとも一部の縦壁部7,9の厚み寸法t3,t4が、横壁部8,10の厚み寸法t1,t2より大きい。また。少なくとも一部の角部16,17の厚み寸法t5,t6が、横壁部8,10の厚み寸法t1,t2より大きい。この場合、例えば縦壁部7,9の厚み寸法t3,t4と、角部16,17の厚み寸法t5,t6とは同じ大きさに設定することができる。
【0057】
また、以上の説明では、正方領域S1を二分割した領域S11,S12の各々に、凸部5と凹部6が一つずつ並列に配置されてなる凹凸パターン11を最小単位として、高剛性パターン12や、高剛性パターン12を構成単位とする反転パターン13、同一姿勢パターン14、あるいは回転パターン15を例示したが、もちろん本発明はこれに限定されない。薄肉部2をその表裏方向に切断する任意の仮想断面上に、凸部5の縦壁部7,9と、凹部6の横壁部8,10とがそれぞれ一つ以上現れるように、複数の凸部5と複数の凹部6とが所定のパターンで配列されている限りにおいて、凹凸パターン11は任意の形態、すなわち
図3に示す以外の形態をとり得る。
【0058】
また、以上の説明では、平板状でかつ円盤形状をなす薄肉部2に凸部5と凹部6とが所定のパターンで配置される場合を例示したが、もちろん薄肉部2の形態はこれには限られない。例えば何れも図示は省略するが、曲面状でかつ円盤形状をなす薄肉部に本発明に係る凹凸形状を適用してもよいし、平板状でかつ矩形状をなす薄肉部に本発明に係る凹凸形状を適用してもよい。