特許第6971903号(P6971903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971903
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】記録装置および記録ヘッドの検査方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20211111BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B41J2/14 611
   B41J2/01 451
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-64957(P2018-64957)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-171765(P2019-171765A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻 康平
(72)【発明者】
【氏名】沖田 寿夫
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−186843(JP,A)
【文献】 特開2013−154552(JP,A)
【文献】 特開2016−221716(JP,A)
【文献】 特開2011−037196(JP,A)
【文献】 特開2012−213887(JP,A)
【文献】 米国特許第06378979(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドにより記録を行う記録装置であって、
第1供給ラインを通して、前記記録ヘッドに第1電圧を供給する第1電源と、
第2供給ラインを通して、前記記録ヘッドに第2電圧を供給する第2電源と、
前記記録ヘッドの検査時に、前記第2電源から電圧を供給せずに前記第1電源から前記第1電圧を供給し、前記第2供給ラインに所定の第1閾値を越えた電圧が生じたときに電流リークに関わる処理動作を実行させる制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検査時に、前記第1供給ラインの電圧が所定の第2閾値未満であるときに前記処理動作を実行させることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記処理動作は、前記記録ヘッドに対する電圧の供給停止を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
電流リークの発生を報知する報知手段をさらに備え、
前記処理動作は、前記報知手段による電流リークの発生の報知を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1電圧は、前記第2電圧よりも低いことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
第3供給ラインを通して、前記記録ヘッドに第3電圧を供給する第3電源をさらに備え、
前記制御手段は、前記検査時に、前記第3電源から電圧を供給せずに、前記第3供給ラインに所定の第3閾値を越えた電圧が生じたときに前記処理動作を実行させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記検査時に、前記第2供給ラインおよび前記第3供給ラインのそれぞれに前記第1閾値および前記第3閾値を越えた電圧が生じなければ、前記第3電源から電圧を供給せずに前記第2電源から前記第2電圧を供給し、前記第3供給ラインに所定の第4閾値を越えた電圧が生じたときに前記処理動作を実行させることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第3電源から電圧を供給せずに前記第2電源から前記第2電圧を供給した場合に、前記第2供給ラインの電圧が所定の第5閾値未満であるときに前記処理動作を実行させることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第3電源から前記第3電圧を供給した場合に、前記第3供給ラインに所定の第6閾値未満であるときに前記処理動作を実行させることを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記第2電圧は前記第3電圧よりも低く、前記第1電圧は前記第2電圧よりも低いことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記記録ヘッドは、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項12】
記録ヘッドにより記録を行う記録装置であって、
複数の供給ラインを通して、前記記録ヘッドに異なる電圧を供給する複数の電源と、
前記記録ヘッドの検査時に、前記複数の供給ラインのうちの1つの特定供給ラインからのみ前記記録ヘッドに電圧を供給して、前記複数の供給ラインのうちの前記特定供給ラインよりも高い電圧を供給する供給ラインに、所定の閾値を越えた電圧が生じたときに電流リークの処理動作を実行させる制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記特定供給ラインを変更することを特徴とする請求項12に記載の記録装置。
【請求項14】
前記閾値は、前記特定供給ラインの前記電圧に応じて異なることを特徴とする請求項12または13に記載の記録装置。
【請求項15】
第1供給ラインおよび第2供給ラインのそれぞれを通して第1電圧および第2電圧が供給される記録ヘッドの検査方法であって、
前記記録ヘッドに対して前記第2供給ラインを通して電圧を供給せずに前記第1供給ラインを通して前記第1電圧を供給し、前記第2供給ラインに所定の第1閾値を越えた電圧が生じたときに電流リークの発生を検知することを特徴とする記録ヘッドの検査方法。
【請求項16】
複数の供給ラインを通して、記録ヘッドに異なる電圧が供給される記録ヘッドの検査方法であって、
前記記録ヘッドの検査時に、前記複数の供給ラインのうちの1つの特定供給ラインからのみ前記記録ヘッドに電圧を供給して、前記複数の供給ラインのうちの前記特定供給ラインよりも高い電圧を供給する供給ラインに、所定の閾値を越えた電圧が生じたときに電流リークの発生を検知することを特徴とする記録ヘッドの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドを用いて記録を行う記録装置および記録ヘッドの検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録ヘッドに接続される1つの電源供給ラインの電圧を監視することにより、記録ヘッド内における電流リークの発生を検知する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−221716号公報
【特許文献2】特開2005−22408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録ヘッドとしては、特許文献2に記載されているように、記録ヘッド駆動用とロジック回路駆動用の異なる電圧が供給されるものがあり、さらに、ドライバ駆動用の異なる電圧が供給されるものもある。また、近年の記録ヘッドにおける回路の微細化に伴って、複数の異なる電圧が供給される回路間の電流リークに対する対策を講じる必要性が高まってきている。
【0005】
本発明の目的は、複数の電圧が供給される記録ヘッドにおいて、電流リークの発生を確実に検知して対処することができる記録装置および記録ヘッドの検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、記録ヘッドにより記録を行う記録装置であって、第1供給ラインを通して、前記記録ヘッドに第1電圧を供給する第1電源と、第2供給ラインを通して、前記記録ヘッドに第2電圧を供給する第2電源と、前記記録ヘッドの検査時に、前記第2電源から前記第2電圧を供給せずに前記第1電源から前記第1電圧を供給し、前記第2供給ラインに所定の第1閾値を越えた電圧が生じたときに電流リークの処理動作を実行させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電流リークの発生を検知して対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】記録装置が待機状態にあるときの図である。
図2】記録装置の制御構成図である。
図3】記録装置が記録状態にあるときの図である。
図4】(a)〜(c)は、第1カセットから給送された記録媒体の搬送経路図である。
図5】(a)〜(c)は、第2カセットから給送された記録媒体の搬送経路図である。
図6】(a)〜(d)は、記録媒体の裏面に記録動作を行う場合の搬送経路図である。
図7】記録装置がメンテナンス状態にあるときの図である。
図8】(a)および(b)は、メンテナンスユニットの構成を示す斜視図である。
図9】記録装置における電源回路の説明図である。
図10】電流リークの検知処理を説明するためのフローチャートである。
図11】電流リークが生じていないときの検知処理を説明するためのタイムチャートである。
図12】回路の一部に電流リークが生じているときの検知処理を説明するためのタイムチャートである。
図13】回路の他の一部に電流リークが生じているときの検知処理を説明するためのタイムチャートである。
図14】回路の他の一部に電流リークが生じているときの検知処理を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る記録装置について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。また、本実施形態においては、記録装置として、インクジェット記録装置を、その一例として説明する。
【0010】
<記録装置の内部構成について>
図1は、インクジェット記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成図である。図において、x方向は水平方向、y方向は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
【0011】
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFで自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、ここではプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機を示すが、スキャナ部3を備えない形態であっても良い。図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
【0012】
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際には、いずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
【0013】
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19、およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8の上流側および下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
【0014】
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
【0015】
記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。記録ヘッド8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
【0016】
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。ここで4色のインクとは、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクを指す。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。記録装置1は循環型のインク供給システムを有し、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
【0017】
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う。メンテナンス動作については後に詳しく説明する。
【0018】
<記録装置の制御構成について>
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。記録装置1は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、電源ユニット400と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下、制御構成の詳細について説明する。
【0019】
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置500から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
【0020】
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置500から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi−Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置500から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナエンジンユニット300に送信する。
【0021】
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
【0022】
電源制御部110は、コントローラユニット100において、電源ユニット400から供給される電源(電力)を制御する。電源制御部110は、タイマーを実装しており、実行している処理の終了準備が完了したこと、又はタイマーにおいて所定のカウント時間(設定時間)の計測が完了したことに従って、電源を遮断するように制御する。
【0023】
なお、そのタイマーにおいて設定されるカウント時間は、プリントエンジンユニット200、スキャナエンジンユニット300等で実行している処理に応じて設定される。
【0024】
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。プリントコントローラ202の指示に従って、記録媒体Sの搬送動作に連動して記録ヘッド8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
【0025】
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17等のクリーニング機構の動作を制御する。
【0026】
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
【0027】
電源ユニット400は、各々のユニットに電源を供給するユニットである。電源ユニット400は、コントローラユニット100、スキャナエンジンユニット300に電源VC(約3.3V)を供給する。また、電源ユニット400は、コントローラユニット100、プリントエンジンユニット200、スキャナエンジンユニット300、記録ヘッド8に電源VM(約30.8V)を供給し、記録ヘッド8に電源VH(約28V)を供給する。
【0028】
<記録状態における記録装置の動作について>
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
【0029】
記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ヘッド8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
【0030】
次に、プリント部2における記録媒体Sの搬送経路について説明する。記録コマンドが入力されると、プリントコントローラ202は、まず、メンテナンス制御部210およびヘッドキャリッジ制御部208を用いて、記録ヘッド8を図3に示す記録位置に移動する。その後、プリントコントローラ202は搬送制御部207を用い、記録コマンドに従って第1給送ユニット6Aおよび第2給送ユニット6Bのいずれかを駆動し、記録媒体Sを給送する。
【0031】
図4(a)〜(c)は、第1カセット5Aに収容されているA4サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第1カセット5A内の1番上に積載された記録媒体Sは、第1給送ユニット6Aによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。図4(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、第1給送ユニット6Aに給送されて記録領域Pに到達する間に、水平方向(x方向)から、水平方向に対して約45度傾いた方向に変更される。
【0032】
記録領域Pでは、記録ヘッド8に設けられた複数の吐出口から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。インクが付与される領域の記録媒体Sは、プラテン9によってその背面が支持されており、吐出口面8aと記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された後の記録媒体Sは、搬送ローラ7と拍車7bに案内されながら、先端が右に傾いているフラッパ11の左側を通り、ガイド18に沿って記録装置1の鉛直方向上方へ搬送される。図4(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、水平方向に対し約45度傾いた記録領域Pの位置から、搬送ローラ7と拍車7bによって鉛直方向上方に変更されている。
【0033】
記録媒体Sは、鉛直方向上方に搬送された後、排出ローラ12と拍車7bによって排出トレイ13に排出される。図4(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。排出された記録媒体Sは、記録ヘッド8によって画像が記録された面を下にした状態で、排出トレイ13上に保持される。
【0034】
図5(a)〜(c)は、第2カセット5Bに収容されているA3サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第2カセット5B内の1番上に積載された記録媒体Sは、第2給送ユニット6Bによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
【0035】
図5(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。第2給送ユニット6Bに給送されて記録領域Pに到達するまでの搬送経路には、複数の搬送ローラ7とピンチローラ7aおよびインナーガイド19が配されることで、記録媒体SはS字上に湾曲されてプラテン9まで搬送される。
【0036】
その後の搬送経路は、図4(b)および(c)で示したA4サイズの記録媒体Sの場合と同様である。図5(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。図5(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
【0037】
図6(a)〜(d)は、A4サイズの記録媒体Sの裏面(第2面)に対して記録動作(両面記録)を行う場合の搬送経路を示す。両面記録を行う場合、第1面(表面)を記録した後に第2面(裏面)に記録動作を行う。第1面を記録する際の搬送工程は図4(a)〜(c)と同様であるので、ここでは説明を省略する。以後、図4(c)以後の搬送工程について説明する。
【0038】
記録ヘッド8による第1面への記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、プリントコントローラ202は、搬送ローラ7を逆回転させて記録媒体Sを記録装置1の内部へ搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が左側に傾くように制御されるため、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)はフラッパ11の右側を通過して鉛直方向下方へ搬送される。図6(a)は、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)が、フラッパ11の右側を通過する状態を示す。
【0039】
その後記録媒体Sは、インナーガイド19の湾曲した外周面に沿って搬送され、再び記録ヘッド8とプラテン9の間の記録領域Pに搬送される。この際、記録ヘッド8の吐出口面8aに、記録媒体Sの第2面が対向する。図6(b)は、第2面の記録動作のために、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。
【0040】
その後の搬送経路は、図4(b)および(c)で示した第1面を記録する場合と同様である。図6(c)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。図6(d)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
【0041】
<記録ヘッドに対するメンテナンス動作について>
次に、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作について説明する。図1でも説明したように、メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングにこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。
【0042】
図7は、記録装置1がメンテナンス状態にあるときの図である。記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から図7における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0043】
一方、記録ヘッド8を図3に示す記録位置から図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0044】
図8(a)はメンテナンスユニット16が待機ポジションにある状態を示す斜視図であり、図8(b)はメンテナンスユニット16がメンテナンスポジションにある状態を示す斜視図である。図8(a)は図1に対応し、図8(b)は図7に対応している。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、メンテナンスユニット16は図8(a)に示す待機ポジションにあり、キャップユニット10は鉛直方向上方に移動しており、ワイピングユニット17はメンテナンスユニット16の内部に収納されている。キャップユニット10はy方向に延在する箱形のキャップ部材10aを有し、これを記録ヘッド8の吐出口面8aに密着させることにより、吐出口からのインクの蒸発を抑制することができる。また、キャップユニット10は、キャップ部材10aに予備吐出等で吐出されたインクを回収し、回収したインクを不図示の吸引ポンプに吸引させる機能も備えている(キャップ吸引)。
【0045】
一方、図8(b)に示すメンテナンスポジションにおいて、キャップユニット10は鉛直方向下方に移動しており、ワイピングユニット17がメンテナンスユニット16から引き出されている。ワイピングユニット17は、ブレードワイパユニット171とバキュームワイパユニット172の2つのワイパユニットを備えている。
【0046】
ブレードワイパユニット171には、吐出口面8aをx方向に沿ってワイピングするためのブレードワイパ171aが吐出口の配列領域に相当する長さだけy方向に配されている。ブレードワイパユニット171を用いてワイピング動作を行う際、ワイピングユニット17は、記録ヘッド8がブレードワイパ171aに当接可能な高さに位置決めされた状態で、ブレードワイパユニット171をx方向に移動する。この移動により、吐出口面8aに付着するインクなどはブレードワイパ171aに拭き取られる。
【0047】
ブレードワイパ171aが収納される際のメンテナンスユニット16の入り口には、ブレードワイパ171aに付着したインクを除去するとともにブレードワイパ171aにウェット液を付与するためのウェットワイパクリーナ16aが配されている。ブレードワイパ171aは、メンテナンスユニット16に収納される度にウェットワイパクリーナ16aによって付着物が除去されウェット液が塗布される。そして、次に吐出口面8aをワイピングしたときにウェット液を吐出口面8aに転写し、吐出口面8aとブレードワイパ171a間の滑り性を向上させている。
【0048】
一方、バキュームワイパユニット172は、y方向に延在する開口部を有する平板172aと、開口部内をy方向に移動可能なキャリッジ172bと、キャリッジ172bに搭載されたバキュームワイパ172cとを有する。バキュームワイパ172cは、キャリッジ172bの移動に伴って吐出口面8aをy方向にワイピング可能に配されている。バキュームワイパ172cの先端には、不図示の吸引ポンプに接続された吸引口が形成されている。このため、吸引ポンプを作動させながらキャリッジ172bをy方向に移動すると、記録ヘッド8の吐出口面8aに付着したインク等は、バキュームワイパ172cによって拭き寄せられながら吸引口に吸い込まれる。この際、平板172aと開口部の両端に設けられた位置決めピン172dは、バキュームワイパ172cに対する吐出口面8aの位置合わせに利用される。
【0049】
ワイピングユニット17は、ブレードワイパユニット171によるワイピング動作を行いバキュームワイパユニット172によるワイピング動作を行わない第1のワイピング処理と、両方のワイピング処理を順番に行う第2のワイピング処理を実施できる。第1のワイピング処理を行う際、プリントコントローラ202は、まず、記録ヘッド8を図7のメンテナンス位置よりも鉛直方向上方に退避させた状態で、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16から引き出す。そして、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8をブレードワイパ171aに当接可能な位置まで鉛直方向下方に移動させた後、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16内へ移動させる。この移動により、吐出口面8aに付着するインク等はブレードワイパ171aに拭き取られる。すなわち、ブレードワイパ171aは、メンテナンスユニット16から引き出された位置からメンテナンスユニット16内へ移動する際に吐出口面8aをワイピングする。
【0050】
ブレードワイパユニット171が収納されると、プリントコントローラ202は、次にキャップユニット10を鉛直方向上方に移動させ、キャップ部材10aを記録ヘッド8の吐出口面8aに密着させる。そして、プリントコントローラ202は、その状態で記録ヘッド8を駆動して予備吐出を行わせ、キャップ部材10a内に回収されたインクを吸引ポンプによって吸引する。
【0051】
一方、第2のワイピング処理を行う際、プリントコントローラ202は、まず、記録ヘッド8を図7のメンテナンス位置よりも鉛直方向上方に退避させた状態で、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16からスライドさせて引き出す。そして、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8をブレードワイパ171aに当接可能な位置まで鉛直方向下方に移動させた後、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16内へ移動させる。これにより、ブレードワイパ171aによるワイピング動作が吐出口面8aに対して行われる。次に、プリントコントローラ202は、再び記録ヘッド8を図7のメンテナンス位置よりも鉛直方向上方に退避させた状態で、ワイピングユニット17をメンテナンスユニット16からスライドさせて所定位置まで引き出す。続いて、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を図7に示すワイピング位置に下降させながら、平板172aと位置決めピン172dを用いて吐出口面8aとバキュームワイパユニット172の位置決めを行う。その後、プリントコントローラ202は、上述したバキュームワイパユニット172によるワイピング動作を実行する。プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向上方に退避させ、ワイピングユニット17を収納した後、第1のワイピング処理と同様に、キャップユニット10によるキャップ部材内への予備吐出と回収したインクの吸引動作を行う。
【0052】
<電流リークの検知について>
図9は、記録ヘッド8内における電流リーク(電流の回り込み)を検知するための構成の説明図である。
【0053】
記録ヘッド8は、ヒータ/サブヒータ部83、ドライバ駆動部82、ロジック部81を有する。ヒータ/サブヒータ部83は、吐出口からインクを吐出するための吐出エネルギー発生素子としてのヒータ(電気熱変換素子)、および記録ヘッド8の温度調整するためのサブヒータを含む。吐出エネルギー発生素子としてのヒータを発熱させることによりインクが発泡され、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクが吐出される。吐出エネルギー発生素子としては、ヒータの他、ピエゾ素子などの種々の素子を用いることができる。ドライバ駆動部82は、ヒータおよびサブヒータを駆動させるための駆動トランジスタを含み、ロジック部81は、その駆動トランジスタを制御するためのロジック回路を含む。ヘッドインターフェイス(ヘッドIF)206に含まれるヘッド電源制御ユニット600は、記録ヘッド8に供給(印加)される3系統の電源電圧VH、VHT、HVDDを生成する。電源電圧VH(第3電圧)は28Vであり、ヒータおよびサブヒータの駆動用としてヒータ/サブヒータ部83に供給される。電源電圧VHT(第2電圧)は5Vであり、ヒータおよびサブヒータのドライバの駆動用としてドライバ駆動部82に供給される。電源電圧HVDD(第1電圧)は3.3Vであり、ロジック回路の駆動用としてロジック部81に供給される。
【0054】
電源回路駆動用電源401は、ヘッド電源制御ユニット600内の第1電源回路604、第2電源回路605、および第3電源回路606に電源電圧を供給する。第1電源回路604は、電源ユニット400の電源401から供給された32Vの電圧をDCDCコンバータにより降圧して3.3VのHVDDを生成し、そのHVDDを第1供給ラインL1を通してロジック部81に供給する。第2電源回路605は、電源401から供給された32Vの電圧をDCDCコンバータにより降圧して6Vを生成し、さらに、その6Vをレギュレータにより降圧して5VのVHTを生成する。そして、そのVHTが第2供給ラインL2を通してドライバ駆動部82に供給される。第3電源回路606は、電源401から供給された32Vの電圧を特殊ICにより降圧して28VのVHを生成し、そのVHを第3供給ラインL3を通してヒータ/サブヒータ部83に供給する。HVDDは、第1分圧回路601によって3.3Vまで分圧され、その分圧された電圧(第1モニタ電圧)がプリントコントローラ202によって監視される。VHTは第2分圧回路602によって3.3Vまで分圧され、その分圧された電圧(第2モニタ電圧)がプリントコントローラ202によって監視される。VHは第3分圧回路603によって3.3Vまで分圧され、その分圧された電圧(第3モニタ電圧)がプリントコントローラ202によって監視される。後述するように、プリントコントローラ202は、これらの分圧された電圧を監視することにより、電流リークが発生しているか否かを判定する。また、このような分圧により、HVDD、VHT、およびVHの供給時および電流リークの発生時に、プリントコントローラ202に高電圧が入力されることを防止して、プリントコントローラ202を保護することができる。なお、不図示ではあるが、ヘッドIF206と記録ヘッド8の間には複数のGNDが配線されている。
【0055】
図10は、プリントコントローラ202による電流リークの検知処理を説明するためのフローチャートである。図10に示される一連の処理は、CPUがROMに記憶されているプログラムコードをRAMに展開して実行することにより行われる。あるいはまた、図10におけるステップの一部または全部の機能をASICまたは電子回路等のハードウェアによって実現してもよい。なお、各処理の説明における記号「S」は、ステップであることを意味する。
【0056】
プリントコントローラ202は、まず、第1供給ラインL1を特定供給ラインとして、ロジック部81に電圧HVDD(3.3V)を供給する(S1)。その後、電圧HVDDの立ち上がりに必要な時間(T1)の経過を待ってから(S2)、電圧HVDDが所定の閾値H1(図11参照)以上であるか否かを判定する(S3)。具体的には、プリントコントローラ202は、第1分圧回路601から入力された第1モニタ電圧が所定のHレベル(閾値H1に対応)以上であるか否かを判定する。なお、S3は、ロジック部81の電源回路とGNDとの間の電流リークを検知するために実行される。プリントコントローラ202は、電圧HVDDが閾値H1以上であると判定した場合には、電圧VHTが所定の閾値L2(図11参照)以下であるか否かを判定する(S4)。具体的には、プリントコントローラ202は、第2分圧回路602から入力された第2モニタ電圧が所定のLレベル(閾値L2に対応)以下であるか否かを判定する。なお、S4は、ロジック部81の電源回路とドライバ駆動部82の電源回路との間の電流リークを検知するために実行される。プリントコントローラ202は、電圧VHTが閾値L2以下であると判定した場合には、電圧VHが所定の閾値L3(図11参照)以下であるか否かを判定する(S5)。具体的には、第3分圧回路603から入力された第3モニタ電圧が所定のLレベル(閾値L3に対応)以下であるか否かを判定する。なお、S5は、ロジック部81の電源回路とヒータ/サブヒータ部83の電源回路との間の電流リークを検知するために実行される。
【0057】
プリントコントローラ202は、S5において電圧VHが閾値L3以下であると判定した場合には、第2供給ラインL2を特定供給ラインとして、ドライバ駆動部82に電圧VHT(5V)を供給する(S6)。その後、プリントコントローラ202は、電圧VHTの立ち上がりに必要な時間(T2)の経過を待ってから(S7)、電圧VHTが所定の閾値H2(図11参照)以上か否かを判定する(S8)。具体的には、プリントコントローラ202は、第2分圧回路602から入力された第2モニタ電圧が所定のHレベル(閾値H2に対応)以上であるか否かを判定する。なお、S8は、ドライバ駆動部82の電源回路とGNDとの間の電流リークを検知するために実行される。プリントコントローラ202は、電圧VHTが閾値H2以上であると判定した場合には、電圧VHが所定の閾値L3以下であるか否かを判定する(S9)。具体的には、プリントコントローラ202は、第3分圧回路603から入力された第3モニタ電圧が所定のLレベル(閾値L3に対応)以下であるか否かを判定する。なお、S9は、ドライバ駆動部82の電源回路とヒータ/サブヒータ部83の電源回路との間の電流リークを検知するために実行される。プリントコントローラ202は、S9において電圧VHが閾値L3以下であると判定した場合には、第3供給ラインL3を特定供給ラインとして、ヒータ/サブヒータ部83に電圧VH(28V)を供給する(S10)。その後、プリントコントローラ202は、電圧VHの立ち上がりに必要な時間(T3)の経過を待ってから(S11)、電圧VHが所定の閾値H3(図11参照)以上であるか否かを判定する(S12)。具体的には、プリントコントローラ202は、第3分圧回路603から入力された第3モニタ電圧が所定のHレベル(閾値H3に対応)以上であるか否かを判定する。なお、S12は、ヒータ/サブヒータ部83の電源回路とGNDとの間の電流リークを検知するために実行される。
【0058】
プリントコントローラ202は、S12において電圧VHが閾値L3以上であると判定した場合には、電流リークが生じていないと判定する(S13)。一方、S3,S4,S6,S8,S9,またはS12において否定判定した場合、プリントコントローラ202は、ヒータ/サブヒータ部83、ドライバ駆動部82、およびロジック部81の相互間の少なくとも1つに電流リークが生じたと判定する(S14)。プリントコントローラ202は、このように電流リークが生じたと判定した場合には、記録ヘッド8への電圧の供給を停止してから(S15)、ユーザに対して、電流リークが生じたことを通知(エラー通知)する(S16)。
【0059】
図11は、電流リークが発生しない場合の検知処理の具体例を説明するためのタイミングチャートである。
【0060】
時刻t1のタイミングにおいて、プリントコントローラ202から第1コントロール信号(CTRL1信号)が出力される。第1電源回路604は、その第1コントロール信号により起動され、電圧HVDD(3.3V)を生成してロジック部81に供給する(S1)。その後、電圧HVDDが安定するまでの所定時間(T1)の経過を待つ(S2)。その後、S3,S4,S5のそれぞれにおいて肯定判定されたことを条件として、時刻t2のタイミングにおいて、プリントコントローラ202が第2コントロール信号(CTRL2)を出力する。すなわち、電圧HVDDが閾値H1以上、電圧VHTが閾値L2以下、電圧VHが値L3以下であることを条件として、第2コントロール信号が出力される。第2電源回路605は、その第2コントロール信号に基づいて起動され、電圧VHT(5V)を生成してドライバ駆動部82に供給する(S6)。
【0061】
その後、電圧VHTが安定するまでの所定時間(T2)の経過を待つ(S7)。その後、S8,S9のそれぞれにおいて肯定判定されたことを条件として、時刻t3のタイミングにおいて、プリントコントローラ202が第3コントロール信号(CTRL3)を出力する。すなわち、電圧VHTが閾値H2以上、電圧VHが閾値L3以下であることを条件として、第3コントロール信号が出力される。第3電源回路606は、その第3コントロール信号に基づいて起動され、電圧VHを生成してヒータ/サブヒータ部83に供給する(S10)。その後、電圧VHが安定するまでの所定時間(T3)の経過を待ってから(S11)、電圧VHが閾値H3以上であることを条件として、電流リークが生じていないと判定する(S12,S13)。
【0062】
このように本実施形態においては、記録ヘッドの検査時に、まずは、最も低電圧のHVDD(第1電圧)が記録ヘッドに供給される。このときに、プリントコントローラ202は、第1電源回路604の第1供給ラインの電圧を閾値H1(第2閾値)と比較し、第2電源回路605の第2供給ラインの電圧を閾値L2(第1閾値)と比較し、第3電源回路606の第3供給ラインの電圧を閾値L3(第3閾値)と比較する。これらの比較結果から電流リークが検出されない場合には、VHT(第2電圧)が記録ヘッドに供給される。このとき、プリントコントローラ202は、第2電源回路605の第2供給ラインの電圧を閾値H2(第5閾値)と比較し、第3電源回路606の第3供給ラインの電圧を閾値L3(第4閾値)と比較する。これらの比較結果から電流リークが検出されない場合には、最も高電圧のVH(第3電圧)が記録ヘッドに供給される。このとき、プリントコントローラ202は、第3電源回路606の第3供給ラインの電圧を閾値H3(第6閾値)と比較して、電流リークを検出する。第3閾値および第4閾値は、本例のように同じ閾値L3に設定する必要はなく、記録ヘッドの供給するHVDD(第1電圧)とVHT(第2電圧)に応じて異なる閾値であってもよい。また、HVDD(第1電圧)、VHT(第2電圧)、VH(第3電圧)を低い電圧から先に記録ヘッドに供給するため、電流リークが生じた場合のダメージを最小限に抑えるように、記録ヘッドの電流リークの検査を実施することができる。
【0063】
図12は、ドライバ駆動部82の電源回路とロジック部81の電源回路との間(HVDD―VHT間)に電流リークが発生した場合の、電流リークの検知処理の具体例を説明するためのタイミングチャートである。例えば、インクの付着やゴミの付着等に起因して,ドライバ駆動部82の電源回路とロジック部81の電源回路とが接続されてしまうことにより電流リークが発生する。第1コントロール信号(CTRL1信号)が出力されることにより、第1電源回路604が電圧HVDD(3.3V)をロジック部81に供給する(S1)。その後、S2にて所定時間(T1)の経過を待ってから、S3において電圧HVDDが閾値H1以上であると判定され、S4において電圧VHTが閾値L2を越えたと判定される。この結果、S14において、ドライバ駆動部82とロジック部81との間に電流リークが発生したと判定され、S15において、記録ヘッド8に対する全ての電源電圧の供給を停止する。
【0064】
図13は、ロジック部81の電源回路とグランド(GND)との間(HVDD−GND間)に電流リークが発生した場合の検知処理を説明するためのタイミングチャートである。例えば、インクの付着やゴミの付着等に起因して、ロジック部81の電源回路とGNDとが接続されてしまうことにより、電流リークが発生する。第1コントロール信号(CTRL1信号)が出力されることにより、第1電源回路604が電圧HVDD(3.3V)をロジック部81に供給する(S1)。その後、S2にて所定時間(T1)の経過を待ってから、S3において電圧HVDDが閾値H1未満と判定される。このように電圧HVDDが所定の閾値未満のときは、S14において、ロジック部81の電源回路とグランドとの間に電流リークが発生したと判定され、S15において、記録ヘッド8に対する全ての電源電圧の供給を停止する。
【0065】
図14は、ドライバ駆動部82の電源回路とヒータ/サブヒータ部83の電源回路との間(VHT−VH間)に電流リークが発生した場合の検知処理を説明するためのタイミングチャートである。例えば、インクの付着やゴミの付着等に起因して、ドライバ駆動部82の電源回路とヒータ/サブヒータ部83の電源回路とが接続されてしまうことにより、電流リークが発生する。第1コントロール信号(CTRL1信号)が出力されることにより、第1電源回路604が電圧HVDD(3.3V)をロジック部81に供給する(S1)。その後、S2にて所定時間(T1)の経過を待ってから、S3において電圧HVDDが閾値H1以上であると判定され、S4において電圧VHTが閾値L2以下であると判定され、S5において電圧VHが閾値L3以下であると判定される。第2コントロール信号(CTRL2信号)が出力されることにより、第2電源回路605が電圧VHT(5V)をドライバ駆動部82に供給する(S6)。その後、S7にて所定時間(T2)の経過を待ってから、S8において電圧VHTが閾値H2以上であると判定され、S9において電圧VHが閾値L3を越えたと判定される。この結果、S14において、ドライバ駆動部82とヒータ/サブヒータ部83との間に電流リークが発生したと判定され、S15において、記録ヘッド8に対する全ての電源電圧の供給を停止する。
【0066】
以上のように、本実施形態においては、記録ヘッドに3系統の回路によって電源電圧が供給される場合に、それらの電源電圧に対応する回路間の電流リークの発生の有無を確認する。そして、電流リークの発生時には、記録ヘッドへの全ての電源電圧の供給を停止することにより、記録ヘッドの二次故障の発生を防ぐことができる。本実施形態の処理を実施することにより、例えば、28Vを必要とするヒータ/サブヒータ部83から、3.3Vを必要とするロジック部81に対して28Vの電圧の回り込みが発生して、ロジック部が不具合を起こす等の問題を未然に防ぐことが可能となる。
【0067】
(他の実施形態)
電源電圧を供給する回路は3系統に限定されず、2系統もしくは4系統以上の回路によって電源電圧を供給する構成に対しても本発明を適用することができる。この場合には、電流リークが生じた場合のダメージを最小限に抑えるために、記録ヘッドの検査時に、複数の異なる電源電圧を低い方から順に記録ヘッドに供給することが望ましい。また、電流リークが検出されたときの処理動作は、電圧の供給停止(S15)とエラー表示(S16)に限定されず、音などによって電流リークの発生を報知する動作等、種々の関連動作を実行することができる。また、図10のような電流リークの検知処理は、記録装置の立ち上げ時(電源投入時)の他、記録装置の運用中の所定のタイミングで実施してもよく、その実施のタイミングは特定されない。例えば、電流リークの発生が予想されたときに、電流リークの検知処理を実施してもよい。
【0068】
本発明は、種々の液体を吐出可能な液体吐出ヘッドを用いる液体吐出装置に対しても広く適用することができる。例えば、本発明は、液体を吐出可能な液体吐出ヘッドを用いて、種々の媒体(シートなど)に対して種々の処理(記録、加工など)を施す液体吐出装置に対して適用可能である。また、本発明は、記録ヘッド以外の装置に対して適用することも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 記録装置
8 記録ヘッド
202 プリントコントローラ
400 電源ユニット
600 ヘッド電源制御ユニット
HVDD 第1電圧
VHT 第2電圧
VH 第3電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14