【実施例】
【0036】
図4は、本実施形態に係るハイマウントナックル11が、その設計過程において車両幅方向の幅が小さくなるように設計される様子を示す断面図である。
図5は、本実施形態に係るハイマウントナックル11の形状が決定される過程を示すグラフであって、ハイマウントナックル11の部分的な質量(第2領域11B〜第5領域11E)とひずみエネルギとの関係の第1の実施例を示すグラフである。なお、以下の実施例では、ナックル上端部115に2000Nの大きさの水平荷重Fがかかるものとする。また、水平荷重Fによって生じる各領域(第1領域11A〜第5領域11E)におけるひずみエネルギは、Abaqus(HKS社により開発された有限要素解析ソフトウェア)によって演算した。
【0037】
表1は、第1の実施例の第1領域11A〜第5領域11Eにおける質量およびひずみエネルギを示したものである。
【0038】
【表1】
【0039】
図5および表1では、ハイマウントナックル11が形状1−1から形状1−2、形状1−3と順に最適化される様子を示している。この際、
図4に示すように、ナックル上部113の第1領域11A〜第5領域11Eの断面形状のうち、車両前後方向の幅W
0がW’に縮小されることで、各領域の質量が低下される。まず、形状1−1を有するハイマウントナックル全体の重量は、約4000gである。なお、ハイマウントナックルのうちナックル下部の形状は変更されていない。そして、表1に示すように、形状1−1のナックル上部113を5等分した第1領域11A〜第5領域11Eの質量は、それぞれ100(g)〜1081(g)に分布しており、上方から下方に向かって質量は増大している。また、各領域のひずみエネルギは、14(mJ)〜134(mJ)に分布している。この結果、各領域における単位質量あたりのひずみエネルギは、0.140(J/kg)〜0.314(J/kg)に分布している。そして、第1領域11Aを除く第2領域11B〜第5領域11Eにおいて、形状1−1における単位質量あたりのひずみエネルギの最小値/最大値は、0.389(=0.122/0.314)である。
【0040】
一方、形状1−1に対して、各領域における単位質量あたりのひずみエネルギの平準化を図った形状1−2では、第1領域11A〜第5領域11Eの質量は、それぞれ128(g)〜925(g)に分布しており、上方から下方に向かって質量は増大している。また、各領域のひずみエネルギは、15(mJ)〜130(mJ)に分布している。この結果、各領域における単位質量あたりのひずみエネルギは、0.117(J/kg)〜0.258(J/kg)に分布している。そして、第1領域11Aを除く第2領域11B〜第5領域11Eにおいて、形状1−2における単位質量あたりのひずみエネルギの最小値/最大値は、0.546(=0.141/0.258)である。
【0041】
更に、形状1−2に対して、各領域における単位質量あたりのひずみエネルギの平準化を更に図った形状1−3では、第1領域11A〜第5領域11Eの質量は、それぞれ160(g)〜719(g)に分布しており、上方から下方に向かって質量は増大している。また、各領域のひずみエネルギは、19(mJ)〜131(mJ)に分布している。この結果、各領域における単位質量あたりのひずみエネルギは、0.119(J/kg)〜0.220(J/kg)に分布している。そして、第1領域11Aを除く第2領域11B〜第5領域11Eにおいて、形状1−3における単位質量あたりのひずみエネルギの最小値/最大値は、0.830(=0.182/0.220)である。
【0042】
以上のように、形状1−1から形状1−3への変化に伴って、単位質量あたりのひずみエネルギの最小値/最大値は、0.389から0.830に増加し、ひずみエネルギの体積配分(平準化)が達成された。この際、ハイマウントナックル11のナックル上部113の質量は2322(g)から2047(g)と約12%軽量化できたにもかかわらず、ナックル上部113の剛性(ひずみエネルギの合計に反比例)は、約16%増加する結果となった(1/461→1/397)。なお、
図5に示すように、ハイマウントナックル11の形状が形状1−1から形状1−2、形状1−3に変化されるにつれて、質量とひずみエネルギとの関係を示すグラフがゼロ点(原点)を通る直線の周辺に分布し、両者の相関係数が1に近づくように変化していることがわかる。
【0043】
同様に、
図6は、本実施形態に係るハイマウントナックル11の形状が決定される過程を示すグラフであって、ハイマウントナックル11の部分的な質量(第2領域11B〜第5領域11E)とひずみエネルギとの関係の第2の実施例を示すグラフである。
【0044】
また、表2は、第2の実施例の第1領域11A〜第5領域11Eにおける質量およびひずみエネルギを示したものである。
【0045】
【表2】
【0046】
図6および表2では、ハイマウントナックル11が形状2−1から形状2−2、形状2−3と順に最適化される様子を示している。この場合も、
図4に示すように、ナックル上部113の第1領域11A〜第5領域11Eの断面形状のうち、車両前後方向の幅W
0がW’に縮小されることで、各領域の質量が低下される。本実施例では、形状2−1を有するハイマウントナックル全体の重量は、約5400gである。なお、ハイマウントナックルのうちナックル下部の形状は変更しない。そして、表2に示すように、形状2−1のナックル上部113を5等分した第1領域11A〜第5領域11Eの質量は、それぞれ141(g)〜1459(g)に分布しており、上方から下方に向かって質量は増大している。また、各領域のひずみエネルギは、21(mJ)〜229(mJ)に分布している。この結果、各領域における単位質量あたりのひずみエネルギは、0.149(J/kg)〜0.300(J/kg)に分布している。そして、第1領域11Aを除く第2領域11B〜第5領域11Eにおいて、形状2−1における単位質量あたりのひずみエネルギの最小値/最大値は、0.523(=0.157/0.300)である。
【0047】
一方、形状2−1に対して、各領域における単位質量あたりのひずみエネルギの平準化を図った形状2−2では、第1領域11A〜第5領域11Eの質量は、それぞれ142(g)〜1337(g)に分布しており、上方から下方に向かって質量は増大している。また、各領域のひずみエネルギは、20(mJ)〜265(mJ)に分布している。この結果、各領域における単位質量あたりのひずみエネルギは、0.141(J/kg)〜0.300(J/kg)に分布している。そして、第1領域11Aを除く第2領域11B〜第5領域11Eにおいて、形状2−2における単位質量あたりのひずみエネルギの最小値/最大値は、0.661(=0.198/0.300)である。
【0048】
更に、形状2−2に対して、各領域における単位質量あたりのひずみエネルギの平準化を更に図った形状2−3では、第1領域11A〜第5領域11Eの質量は、それぞれ142(g)〜1218(g)に分布しており、上方から下方に向かって質量は増大している。また、各領域のひずみエネルギは、20(mJ)〜285(mJ)に分布している。この結果、各領域における単位質量あたりのひずみエネルギは、0.141(J/kg)〜0.291(J/kg)に分布している。そして、第1領域11Aを除く第2領域11B〜第5領域11Eにおいて、形状2−3における単位質量あたりのひずみエネルギの最小値/最大値は、0.805(=0.234/0.291)である。
【0049】
以上のように、形状2−1から形状2−3への変化に伴って、単位質量あたりのひずみエネルギの最小値/最大値は、0.523から0.805に増加し、ひずみエネルギの体積配分(平準化)が達成された。この際、ハイマウントナックル11のナックル上部113の質量は3141(g)から2761(g)と約12%軽量化できたにもかかわらず、ナックル上部113の剛性(ひずみエネルギの合計に反比例)は、ほぼ同等の結果となった(1/682→1/696)。なお、
図6に示すように、ハイマウントナックル11の形状が形状2−1から形状2−2、形状2−3に変化されるにつれて、質量とひずみエネルギとの関係を示すグラフがゼロ点(原点)を通る直線の周辺に分布し、両者の相関係数が1に近づくように変化していることがわかる。
【0050】
図7は、本実施形態に係るハイマウントナックル11の形状が決定される過程における質量の変化(質量比)と単位体積あたりのひずみエネルギ比(最小値/最大値)との関係を示すグラフである。より詳しくは、
図7では、先の第1実施例および第2実施例における、表1の形状1−1、1−2および1−3、または表2の形状2−1、2−2、2−3における各領域の質量の合計がそれぞれ縦軸にプロットされ、単位質量あたりのひずみエネルギの最小値/最大値の比が横軸にプロットされている。なお、縦軸は、形状1−1または形状2−1に対する質量比で示されている。
図7に示すように、単位質量あたりのひずみエネルギの最小値/最大値の比が0.70以上となるようにナックル上部113の形状が設定されることで、ハイマウントナックル11のナックル上部113が10%以上軽量化される。
【0051】
以上、本発明の一実施形態に係るハイマウントナックル11(車両用ナックル)について説明した。このようなハイマウントナックル11によれば、ハイマウントナックル11の車両幅方向外側から内側に向かう力に対する剛性を向上するとともに、ハイマウントナックル11を軽量化することが可能となる。なお、ハイマウントナックル11がアルミニウム合金素材の熱間鍛造によって成形されることで、車両用ハイマウントナックルの材料組織の信頼性および強度を高めることができる。また、ハイマウントナックル11の引張試験における0.2%耐力が350MPa以上であることが望ましい。この場合、車両用ハイマウントナックルの軽量化を促進することができる。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明として、以下のような変形実施形態が可能である。
【0052】
(1)上記の実施形態では、本発明に係る車両用ナックルとして、ハイマウントナックル11をもとに説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記のハイマウントナックル11とは異なる形状(長さ)を有する、アルミニウム合金製の車両用ナックルにも、本発明が適用可能とされる。なお、車両用ナックルの剛性を向上するとともに当該車両用ナックルを軽量化するためには、前述のように
図2の5つの領域11A〜11Eを含む領域の長さHが150mm〜400mmの範囲に設定されることが望ましい。
【0053】
(2)上記の実施形態では、ハイマウントナックル11のナックル上部113が5つの領域に等分分割される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ナックル上部113は、6つ以上の領域に等分分割される態様でもよい。
【0054】
(3)上記の実施形態では、ナックル上部113の各領域における単位質量あたりのひずみエネルギが平準化されるにあたって、
図4に示すように、ナックル上部113の断面形状における前後方向の幅が縮小される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図8は、本発明の一実施形態に係るハイマウントナックル11が、車両前後方向の幅および車両幅方向の厚みが小さくなるように設計される様子を示す断面図である。
図8に示すように、ハイマウントナックル11のナックル上部113は、断面U字形状を備え、車両前後方向における幅がW
0からW’に縮小され、車両幅方向における厚みがT
W0からT
W’に縮小されることで、各領域における単位質量あたりのひずみエネルギが平準化されてもよい。
【0055】
また、上記のように、本発明に係るハイマウントナックル11は、自動車の車両本体に装着された姿勢において、ナックル上部113を鉛直方向に沿って5つ以上の領域に等分分割し、軸受支持部111の中心が固定されるとともにナックル上端部115に車両幅方向外側から内側に向かう水平荷重Fを加えた場合の、前記5つ以上の領域のうちナックル上端部115を含み最も上方に位置する領域(第1領域11A)を除く他の領域のそれぞれにおけるひずみエネルギを対応する各領域の質量で除した値の最小値が最大値の0.70以上となるように設計されている。当該設計方法によれば、アルミニウム合金製のハイマウントナックル11(車両用ナックル)における、車両幅方向外側から内側に向かう力に対する剛性を向上するとともに、ハイマウントナックル11を軽量化することが可能となる。