特許第6971931号(P6971931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971931
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】パワー半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20211111BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20211111BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
   H01L25/04 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-140858(P2018-140858)
(22)【出願日】2018年7月27日
(65)【公開番号】特開2020-18137(P2020-18137A)
(43)【公開日】2020年1月30日
【審査請求日】2021年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】長崎 仁徳
(72)【発明者】
【氏名】田中 信太朗
(72)【発明者】
【氏名】平尾 高志
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−38848(JP,A)
【文献】 特開2018−61066(JP,A)
【文献】 特開2014−229642(JP,A)
【文献】 特開2016−36194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低電位側電極と高電位側電極とセンス電極を有するパワー半導体素子と、
前記高電位側電極と電気的に繋がる高電位側導体と、
前記低電位側電極と電気的に繋がる低電位側導体と、
前記センス電極と電気的に繋がるセンス配線と、
前記センス配線を挟んで前記低電位側導体又は前記低電位側導体と対向する第1金属部と、を備え、
前記第1金属部は、前記センス配線と前記第1金属部の配列方向から見た場合、
前記センス配線は、前記高電位側導体または前記低電位側導体と対向する対向部を有し、
前記第1金属部は、前記対向部と重なる部分に凹部を形成し、
前記凹部の深さは、当該凹部の底部と前記センス配線の距離が当該センス配線と前記高電位側導体または前記低電位側導体との距離よりも大きくなるように形成されるパワー半導体装置。
【請求項2】
請求項1にパワー半導体装置であって、
前記第1金属部の前記凹部の幅が、前記センス配線の幅よりも大きくなるように形成されるパワー半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパワー半導体装置であって、
前記センス配線と前記低電位側電極を挟んで前記第1金属部と互いに対向する第2金属部を備えたパワー半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパワー半導体装置であって、
前記第2金属部は、前記センス配線の前記対向部と重なる部分に凹部を形成し、
前記凹部の深さは、当該凹部の底面と前記センス配線の距離が当該センス配線と前記低電位側導体の距離よりも大きくなるように形成されるパワー半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載のパワー半導体装置であって、
前記第2金属部の前記凹部の幅が、前記センス配線の幅よりも大きくなるように形成されるパワー半導体装置。
【請求項6】
請求項1ないし5に記載のいずれかのパワー半導体装置であって、
前記センス配線は、負極センス配線により構成され、
前記負極センス配線とは異なる正極センス配線を備え、
前記センス配線と前記第1金属部の配列方向から見た場合、
前記負極センス配線は、前記凹部と重なり、
前記正極センス配線は凹部に重ならないように設けられるパワー半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体装置に関し、特に車載用駆動用のモータを制御するパワー半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パワー半導体装置を搭載する電力変換装置には、短絡保護機能の搭載や高放熱化が求められている。特許文献1では、短絡電流の立ち上がり時や立下り時のdi/dtが大きな場合においても、主回路端子と制御端子の磁気結合によって保護動作が確実になる手段が開示されている。また、特許文献2では、パワー半導体素子を外部金属で覆うことで放熱性を向上させる構造が開示されている。
しなしながら、パワー半導体装置の短絡保護発生時における信頼性を更に向上させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−229642号公報
【特許文献2】特開2016−36194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、パワー半導体装置の放熱性を損なうことなく過電流発生時の過電圧を抑制し、信頼性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るパワー半導体装置は、低電位側電極と高電位側電極とセンス電極を有するパワー半導体素子と、前記低電位側電極と電気的に繋がる低電位側導体と、前記センス電極と電気的に繋がるセンス配線と、前記センス配線を挟んで前記低電位側導体と対向する第1金属部と、を備え、前記第1金属部は、前記センス配線と前記第1金属部の配列方向から見た場合、前記センス配線は、前記低電位側導体と対向する対向部を有し、前記第1金属部は、前記対向部と重なる部分に凹部を形成し、前記凹部の深さは、当該凹部の底部と前記センス配線の距離が当該センス配線と前記低電位側導体の距離よりも大きくなるように形成される。
【0006】
これにより、磁気結合を抑制する原因となっている外部金属である放熱ベースに凹部を設けることによってパワー半導体内部で主回路と制御端子を磁気結合させ、短絡保護発生時に制御端子の電圧を緩やかにオフさせることによって半導体素子の劣化の原因となる過電圧を抑制する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パワー半導体モジュールの放熱性を損なうことなく過電流発生時の過電圧を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るパワー半導体装置100の外観正面図である。
図2】本実施形態に係るパワー半導体装置100であって図1とは反対方向から見た外観正面図である。
図3図1に示されたパワー半導体装置100からモールド材405を取り除いた内部構造図である。
図4図3に示されたパワー半導体装置100から低電位側導体201U及び201Lを取り除いた内部構造図である。
図5図1に示されるA−A’断面を矢印方向から見たパワー半導体装置100の断面図である。
図6】本実施形態に係るパワー半導体装置100に対応する駆動回路の構成を示す回路図である。
図7】インバータ回路の短絡保護を発生した場合におけるインバータ回路の下アーム側の動作波形である。
図8】他の実施形態に係るパワー半導体装置200を示す外観正面図である。
図9図8に示されたパワー半導体装置200の一点鎖線を通る断面を矢印方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明に係るパワー半導体装置の実施の形態について説明する。なお、各図において同一要素については同一の符号を記し、重複する説明は省略する。本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0010】
図1は、本実施形態に係るパワー半導体装置100の外観正面図である。図2は、本実施形態に係るパワー半導体装置100であって図1とは反対方向から見た外観正面図である。図3は、図1に示されたパワー半導体装置100からモールド材405を取り除いた内部構造図である。図4は、図3に示されたパワー半導体装置100から低電位側導体201U及び201Lを取り除いた内部構造図である。図5は、図1に示されるA−A’断面を矢印方向から見たパワー半導体装置100の断面図である。図6は、本実施形態に係るパワー半導体装置100に対応する駆動回路の構成を示す回路図である。
【0011】
図4に示されるパワー半導体素子204として、例えばMOSFETまたはIGBTを用いることができる。またパワー半導体素子204は、インバータ回路の上アームを構成する上アーム側のパワー半導体素子204Uと、インバータ回路の下アームを構成する下アーム側のパワー半導体素子204Lと、により構成される。
【0012】
図4及び図6に示されるように、交流出力端子103は、下アーム側のパワー半導体素子204Lのエミッタ電極側と接続される高電位側導体205Lと接続される。中間電極207は、図3及び図6に示される低電位側導体201Uと高電位側導体205Lを接続する。中間電極206は、図3及び図6に示される低電位側導体201Lと高電位側導体205Lを接続する。高電位側導体205Uは、図6のインバータ回路の上アーム側の高電位側の導体を構成する。
【0013】
図4に示されるパワー半導体素子204U及び204Lは、正極センス電極301と、負極センス電極302と、低電位側電極303と、高電位側電極304と(パワー半導体素子204Lの裏面側)、をそれぞれ備える。これらの電極は、IGBTの場合には、正極センス電極301がゲート電極、負極センス電極302がケルビンエミッタ電極、低電位側電極303がエミッタ電極、高電位側電極304がコレクタ電極に相当する。また、MOSFETの場合には、正極センス電極301がゲート電極、負極センス電極302がケルビンソース電極、低電位側電極303がソース電極、高電位側電極304がドレイン電極に相当する。
【0014】
正極センス配線203Lは、絶縁層401に実装される。正極センス配線203Lは、正極センス端子104Lと半田材を介して接続される。正極センス電極301は、正極センス配線203Lとワイヤボンディング305を介して電気的に接続される。
【0015】
負極センス配線202Lは、絶縁層401に実装される。負極センス配線202Lは、負極センス端子105Lと半田材を介して接続される。負極センス電極302は、負極センス配線202Lとワイヤボンディング306を介して電気的に接続されている。
【0016】
同様に、正極センス配線203Uは、絶縁層401に実装される。正極センス配線203Uは、正極センス端子104Uと半田材を介して接続される。
【0017】
負極センス配線202Uは、絶縁層401に実装される。負極センス配線202Uは、負極センス端子105Uと半田材を介して接続される。
【0018】
図5に示されるように、低電位側電極303は、半田材402を介してスペーサー403と電気的に接続される。スペーサー403は、半田材402を介して低電位側導体201Lと電気的に接続される。低電位側導体201Lは、半田材を介して、図4に示される低電位側端子102と電気的に接続される。
【0019】
図5に示されるように、高電位側電極304は、絶縁層401に実装された高電位側導体205Lと電気的に接続される。高電位側導体205Lは、半田材を介して高電位側端子101と電気的に接続される。
【0020】
半田接合用導体パターン404は、絶縁層401に実装される。第1金属部106は、半田材402を介して半田接合用導体パターン404と接続される。第1金属部106は、例えばアルミニウムや銅が用いられる。
【0021】
第1金属部106は、負極センス配線202Lを挟んで、低電位側導体201Lと対向している部分に凹部406が形成される。また正極センス配線203Lは、凹部406よりパワー半導体素子204Lに近い側に配置される。
【0022】
凹部406の深さは、凹部406の底部と負極センス配線202Lの距離が負極センス配線202Lと低電位側導体201の距離よりも大きくなるように形成される。これにより、低電位側導体201Lとセンス配線202Lには磁気結合が促進される。
【0023】
半田接合用導体パターン404が負極センス配線202Lの下部まである場合、負極センス配線202Lと低電位側導体201の磁気結合が弱まる。負極センス配線202Lと凹部406の配列方向から見た場合、凹部406は、導体である半田接合用導体パターン404および半田材402が重ならないように構成することが望ましい。これにより、負極センス配線202Lと低電位側導体201Lが強く磁気結合することができる。
【0024】
図6に示されるように、正極センス配線203Lは、ゲート抵抗502Lと接続される。またゲート抵抗502および負極センス配線202Lは信号源501Lに接続される。
【0025】
高電位側端子101は、平滑用コンデンサ504および直流電圧源505の正極側に接続される。低電位側端子102は、平滑用コンデンサ504および直流電圧源505の負極側に接続される。交流出力端子103には負荷が接続される。
【0026】
図7は、インバータ回路の短絡保護を発生した場合におけるインバータ回路の下アーム側の動作波形である。なお、図7はパワー半導体素子204LとしてMOSFETを用いた場合を示す。IGBTの場合や、上アームの場合でも同様の波形となる。
【0027】
t1において、誤動作や故障による上下アーム短絡が発生した時、図6に示された平滑用コンデンサ504から電流が流れ、ソース電流Isが急峻に上昇する。これを短絡電流という。
【0028】
t2において、短絡電流が検知されると図6の信号源501Lからの出力される信号がOFFされる。
【0029】
信号源501Lからの出力される信号がOFFされた後のt2〜t3までのソース電流Isの立下り時のdi/dtによって負極センス配線202Lに電圧が誘導される。この誘導された電圧によってゲートソース間電圧Vgsの立下りが緩やかになり、短絡電流の急峻な減少が抑制される。短絡電流が緩やかに減少することによってドレインソース間に発生するサージ電圧Vdsが抑制され、サージ電圧による半導体素子の劣化を抑制することができる。
【0030】
図8は、他の実施形態に係るパワー半導体装置200を示す外観正面図である。図9は、図8に示されたパワー半導体装置200の一点鎖線を通る断面を矢印方向から見た断面図である。図8及び図9に示される実施形態において、図1ないし図7にて説示された構成と同じ図面番号が付された構成は、図1ないし図7にて説示された機能と同様である。
【0031】
第1金属部106は、図5にて示された構造と同様に、負極センス配線202Lや負極センス配線202Uを挟んで、低電位側導体201と対向している部分に凹部406が形成されている。
【0032】
さらに本実施形態においては、第2金属部107は、パワー半導体素子204Uや204Lを挟んで第1金属部106を対向する位置に配置される。第2金属部107は、半田接合用導体パターン404と半田材402を介して接続されている。例として、第2金属部107には、アルミニウムや銅が用いられる。
【0033】
第2金属部107は、低電位側導体201Lや201Uを挟んで、負極センス配線202Lや202Uと対向している部分に凹部407が形成される。この時、正極センス配線203Lや203Uは、凹部407より内側に配置されている必要がある。
【0034】
凹部407の深さは、この凹部407の底部と低電位側導体201L又は201Uの距離が負極センス配線202Lまたは202Uと低電位側導体201Lまたは201Uの距離よりも大きくなるように形成される。凹部407によって、負極センス配線202と低電位側導体201が磁気結合される。
【0035】
図6に示されるように、正極センス配線203Uや203Lは、ゲート抵抗502Uと電気的に接続され、ゲート抵抗502Uおよび負極センス配線202Uや203Lは信号源501Uに接続される。凹部406および凹部407により、低電位側導体201とセンス配線202には磁気結合構造が構成される。
【0036】
本実施形態によれば、図1ないし図7に示された実施形態と同様の効果に加えて、更なる放熱性の向上と過電流発生時の過電圧を抑制させることができる。
【0037】
また図1ないし図9に示された第1金属部106の凹部406の幅又は第2金属部107の凹部407の幅が、センス配線202の幅よりも大きくなるように形成される。これにより、過電流発生時の過電圧の抑制効果を更に高めることができる。
【符号の説明】
【0038】
100…パワー半導体装置、101…高電位側端子、102…低電位側端子、103…交流出力端子、104L…正極センス端子、104U…正極センス端子、105L…負極センス端子、105U…負極センス端子、106…第1金属部、107…第2金属部、200…パワー半導体装置、201L…低電位側導体、201U…低電位側導体、202L…負極センス配線、202U…負極センス配線、203L…正極センス配線、203U…正極センス配線、204L…下アーム側のパワー半導体素子、204U…上アーム側のパワー半導体素子、205L…高電位側導体、205U…高電位側導体、206…中間電極、207…中間電極、301…正極センス電極、302…負極センス電極、303…低電位側電極、304…高電位側電極、305…ワイヤボンディング、306…ワイヤボンディング、401…絶縁層、402…半田材、403…スペーサー、404…半田接合用導体パターン、405…モールド材、406…凹部、407…凹部、501L…信号源、502L…ゲート抵抗、504…平滑用コンデンサ、505…直流電圧源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9