(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971939
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】超音波センサー
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-160085(P2018-160085)
(22)【出願日】2018年8月29日
(65)【公開番号】特開2020-36142(P2020-36142A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2020年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 聡史
【審査官】
大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−130795(JP,A)
【文献】
特開昭58−101600(JP,A)
【文献】
特開平4−220900(JP,A)
【文献】
特開2013−46408(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/103826(WO,A1)
【文献】
特開平4−148575(JP,A)
【文献】
特開平5−244692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部および該底部の外周に接続された筒状部を有する有底筒状のケースと、前記底部の内面に取り付けられた圧電素子と、前記ケースの開口部に固着され、当該開口部を塞いでいる基台とを備え、前記筒状部は、上側に位置する相対的に内寸が大きく厚みの薄い第1領域と、下側に位置する相対的に内寸が小さく厚みの厚い第2領域とを有し、前記第1領域の内面から前記第2領域の内面にかけて段差状の内面になっており、前記基台は、平面視したときに外周部の一部において外側に向かって突出する突起部を有しているとともに、平面視したときの前記突起部を除く外周部の外寸が前記第1領域の内寸よりも小さくなっており、前記第1領域は、平面視したときに前記突起部が嵌め込まれるように前記突起部に対応して切り欠かれた切欠き部を有しており、前記基台は、当該基台の側面と前記第1領域の内面との間に隙間を有するように、前記第2領域の上端に固定され、前記基台の前記突起部と前記第2領域の上端のうちの前記突起部に面する部位とが第1の接着剤で接合されるとともに、前記基台の前記突起部を除く前記外周部と前記第2領域の上端のうちの前記突起部に面していない部位とが第2の接着剤で接合され、前記第1の接着剤のヤング率が前記第2の接着剤のヤング率よりも大きいことを特徴とする超音波センサー。
【請求項2】
前記第2領域の上端は前記突起部に面していない部位に周方向に沿って溝を有しており、前記第2の接着剤が前記溝に埋め込まれるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の超音波センサー。
【請求項3】
前記突起部に面していない部位に周方向に沿って設けられた溝と分離されて、前記突起部に面する部位にも溝が設けられており、前記突起部に面する部位に設けられた溝に前記第1の接着剤が設けられ、前記突起部に面していない部位に設けられた溝に前記第2の接着剤が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の超音波センサー。
【請求項4】
前記ケースは平面視したときの形状が円形状であるとともに、前記基台の前記突起部を除く外周部の形状が円形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載の超音波センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、駐車補助のためのクリアランスソナーには超音波センサーが使用されている。また、今後普及が予想されている自動運転システムや自動駐車システムでは、カメラ、ミリ波レーダー、超音波センサー(クリアランスソナー)を含む複合システムが使用される。このような超音波センサーとして、底部および該底部の外周に接続された筒状部を有する有底筒状のケースと、前記底部の内面に取り付けられた圧電素子と、前記ケースの開口部に固着され、当該開口部を塞いでいる基台(蓋部)とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−244692号公報
【特許文献2】特開2007−282058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波センサーが超音波を発するとき、振動板としての底部が圧電素子からの力を受けて振動する。このとき、ケースの側面に位置する筒状部も変形するような力がかかる。ここで、ケースの開口部に基台(蓋部)が固着されていることにより、筒状部の変形は抑えられるが、ケースの底部の振幅も小さくなって音圧および感度が低下するおそれがある。
【0005】
また、超音波センサーには、より遠距離の障害物を測定できることが求められている。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたもので、音圧および感度に優れ、より遠距離まで検知可能な超音波センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の超音波センサーは、底部および該底部の外周に接続された筒状部を有する有底筒状のケースと、前記底部の内面に取り付けられた圧電素子と、前記ケースの開口部に固着され、当該開口部を塞いでいる基台とを備えている。前記筒状部は、上側に位置する相対的に内寸が大きく厚みの薄い第1領域と、下側に位置する相対的に内寸が小さく厚みの厚い第2領域とを有し、前記第1領域の内面から前記第2領域の内面にかけて段差状の内面になっている。前記基台は、平面視したときに外周部の一部において外側に向かって突出する突起部を有しているとともに、平面視したときの前記突起部を除く外周部の外寸が前記第1領域の内寸よりも小さくなっている。前記第1領域は、平面視したときに前記突起部が嵌め込まれるように前記突起部に対応して切り欠かれた切欠き部を有している。前記基台は、当該基台の側面と前記第1領域の内面との間に隙間を有するように、前記第2領域の上端に固定され、前記基台の前記突起部と前記第2領域の上端のうちの前記突起部に面する部位とが第1の接着剤で接合されるとともに、前記基台の前記突起部を除く前記外周部と前記第2領域の上端のうちの前記突起部に面していない部位とが第2の接着剤で接合されていて、前記第1の接着剤のヤング率が前記第2の接着剤のヤング率よりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の超音波センサーによれば、音圧および感度を上昇させ、より遠距離まで物体検知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】超音波センサーの一例を示す一部透過概略平面図である。
【
図2】
図1に示すII−II線で切断した概略断面図である。
【
図3】超音波センサーの他の例を示す一部透過概略平面図である。
【
図4】
図3に示すIV−IV線で切断した概略断面図である。
【
図5】超音波センサーの他の例を示す一部透過概略平面図である。
【
図6】
図5に示すVI−VI線で切断した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、超音波センサーの実施形態を説明する。
【0011】
図1および
図2に示す超音波センサーは、底部11および底部11の外周に接続された筒状部12を有する有底筒状のケース1と、底部11の内面に取り付けられた圧電素子2と、ケース1の開口部に固着され、当該開口部を塞いでいる基台3(蓋部)とを備えている。ケース1の開口部とは、基台3によって塞がれる前の状態のことを意味するものである。
【0012】
なお、本実施形態におけるケース1は平面視したときの形状が円形状であるとともに、基台3の突起部31を除く外周部の形状が円形状であるが、特にこの形状に限定されるものではない。
【0013】
ケース1を構成する筒状部12は、例えば円筒状の形状であり、底部11の外周を支持する支持体として機能する。筒状部12の高さ(長さ)は、例えば2mm〜15mmである。また、筒状部12の内径(後述の第2領域122の内径)は例えば5mm〜30mmであり、筒状部12の厚み(後述の第2領域122の厚み)は例えば0.5mm〜3.0mmである。この筒状部12は、例えばアルミニウム、チタン、マグネシウムなどの金属材料、またはABS樹脂、PBT樹脂、PPS樹脂などの樹脂材料からなる。
【0014】
底部11の内面には圧電素子2が取り付けられていて、底部11は圧電素子2の振動によって振動する振動板として機能する。また、底部11は、圧電素子2から超音波を発する際に、圧電素子2と空間との音響インピーダンスを整合する音響整合層として機能する。ここで、
図2では底部11と筒状部12とが一体に表されているが、一体に形成されたものでなくてもよい。例えば、筒状部12の開口部に底部11が挿着された構成とすることができる。底部11は、圧電素子2の貼り付けられた面に垂直な方向の厚みが例えば0.5mm〜5mmとされる。底部11の材質としては、例えば上述の合成樹脂の他、ゴム状弾性体、カーボン材料などを用いることができる。なお、底部11が筒状部12に挿着される場合の固定方法としては、底部11を開口部に押し込むことによる圧縮力,摩擦力による固定の他、接着剤による固定などが挙げられる。
【0015】
基台3は、例えば筒状部12と同様の材料からなる。基台3には、例えば2本の端子4が挿通されていて、この端子4および配線を経て圧電素子2の表面電極と外部回路とが電気的に接続されている。端子4は、例えば直径0.2mm〜3.0mm、長さ5.0mm〜15.0mmの金属製の棒状体である。
【0016】
圧電素子2は、例えば接着剤を介して底部11に貼り付けられている。圧電素子2は、例えば平面視長方形状、正方形状、円形状などの形状をした板状体である。例えば、平面視したときに一辺が4.0mm〜6.0mmの正方形状で、厚み0.1mm〜3.0mm
のものを用いることができる。
【0017】
この圧電素子2は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などの圧電セラミックスからなる単板の圧電体と、当該圧電体の上面および下面に設けられた銀などの金属からなる表面電極とを備えたものでよい。また、圧電素子2は、例えば圧電体層と内部電極層とが積層された積層体と、当該積層体の上面および下面に設けられた表面電極とを備えたものでもよい。接着剤には、例えばエポキシ系、アクリル系などの接着剤を用いることができる。
【0018】
筒状部12は、上側に位置する相対的に内寸が大きく厚みの薄い第1領域121と、下側に位置する相対的に内寸が小さく厚みの厚い第2領域122とを有している。そして、第1領域121の内面から第2領域122の内面にかけて段差状の内面になっている。ここで、第2領域122の上端の径方向の幅((第1領域121の内径−第2領域122の内径)/2)との差は、例えば0.25mm〜2.0mmとされる。
【0019】
第1領域121の外面と第2領域122の外面とは通常は面一にされるが、特に限定はない。また、第1領域121の厚みt1は、第2領域122の厚みt2の例えば30〜70%の範囲で設定され、第2領域122の厚みt2と第1領域121の厚みt1との差(t2−t1)は例えば0.15〜2.1mmとされる。
【0020】
基台3は、平面視したときに外周部の一部において外側に向かって突出する突起部31を有しているとともに、平面視したときの突起部31を除く外周部の外寸が第1領域121の内寸よりも小さくなっている。また、第1領域121は、平面視したときに突起部31が嵌め込まれるように突起部31に対応して切り欠かれた切欠き部1210を有している。さらに、基台3は、当該基台3の側面と第1領域121の内面との間に隙間を有するように、第2領域122の上端に固定されている。突起部31は、基台3の周方向に沿った幅が例えば2.0mm〜4.0mmとされ、突出距離が例えば0.5mm〜3.0mmとされる。
【0021】
ここで、基台3は第2領域122の上端に固定されることから、基台3の突起部31を除く外周部の外径は、第1領域121の内径よりも短く、第2領域122の内径よりも長くなっている。基台3の側面と第1領域121の内面との間に形成される隙間は、例えば第2領域122の厚みと第1領域121の厚みとの差の5〜50%の幅とされる。
【0022】
そして、基台3の突起部31と第2領域122の上端のうちの突起部31に面する部位とが第1の接着剤51で接合されている。また、基台3の突起部31を除く外周部と第2領域122の上端のうちの突起部31に面していない部位とが第2の接着剤52で接合されている。さらに、第1の接着剤51のヤング率が第2の接着剤52のヤング率よりも大きい。
【0023】
従来、基台3(蓋部)の側面と第1領域121の内面との間には隙間がなく、基台3を側面から押さえ込む構造とした従来の超音波センサーにおいては、ケースの変形を妨げるような構造であった。
【0024】
これに対し、基台3の側面と第1領域121の内面との間に隙間を有し、基台3の外周部と第2領域122の上端とを接着剤で接合する構造の超音波センサーは、ケースの変形を妨げにくい構造となる。ところが、基台3の側面と第1領域121の内面との間に隙間を有し、基台3の外周部と第2領域122の上端とを接着剤で接合する構造においては、接合強度が低く、外れやすいという問題もある。
【0025】
そこで、基台3の外周部の一部において外側に向かって突出する突起部31を有し、突
起部31と切欠き部1210とを対応させて接合させ、その部分だけ他の部分よりもヤング率の大きな(硬い)接着剤で接合することで、部分的に強固な接合にして接合強度を高められるとともに、それ以外の部位を変形しやすくすることができる。
【0026】
相対的にヤング率の大きな硬化後に硬い第1の接着剤51としては、例えばエポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などを用いることができる。第1の接着剤51としては、例えばヤング率が1GPa以上のものを用いるのがよい。
【0027】
一方、相対的にヤング率の小さな硬化後に柔らかい第2の接着剤52としては、例えばブチルゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、変性シリコーン系接着剤などを用いることができる。第2の接着剤52としては、例えばヤング率が100MPa以下のものを用いるのがよい。
【0028】
ここで、
図3および
図4に示すように、第2領域122の上端は突起部31に面していない部位に周方向に沿って第1の溝1221を有しており、第2の接着剤52が第1の溝1221に埋め込まれるように設けられていてもよい。このとき、第2の接着剤52が第1の溝1221に埋め込まれるとともに、第1の溝1221の周囲に当該第1の溝1221に沿って設けられるのがよい。第1の溝1221の開口幅(径方向の幅)は、例えば0.1mm〜1.8mmとされる。また、第1の溝1221の深さは、例えば0.1mm〜1.5mmとされる。
【0029】
第1の溝1221に第2の接着剤52が埋め込まれるように設けられることにより、ヤング率の小さな硬化後に柔らかい第2の接着剤52をより多く設けることができ、またケース1を変形させやすくすることができる。
【0030】
また、
図5および
図6に示すように、突起部31に面していない部位に周方向に沿って設けられた第1の溝1221と分離されて、突起部31に面する部位にも第2の溝1222が設けられており、突起部31に面する部位に設けられた第2の溝1222に第1の接着剤51が設けられ、突起部31に面していない部位に設けられた第1の溝1221に第2の接着剤52が設けられていてもよい。第2の溝1222の開口幅(径方向の幅)は、例えば0.1mm〜2.5mmとされる。また、第2の溝1222の深さは、例えば0.1mm〜1.5mmとされる。
【0031】
この構成により、第1の接着剤51の設けられる領域と第2の接着剤52の設けられる領域とを区画でき、ヤング率の大きな硬い接着剤とヤング率の小さな柔らかい接着剤とが混ざり合うのを抑制し、より変形ばらつきのない精度が高い超音波センサーを実現することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ケース
11 底部
12 筒状部
121 第1領域
122 第2領域
1221 第1の溝
1222 第2の溝
2 圧電素子
3 基台
31 突起部
4 端子
51 第1の接着剤
52 第2の接着剤